わがしかし B

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/17(土) 20:43:25.85 ID:OHSBiwA20
【シカダ駄菓子にて】


ヨウ「…なん…だと…?」

ココノツ(…………?)

ココノツ「えっと、ちょっとコンビニ行ってくるね」

ヨウ「なん…だとぅ…!?」

ココノツ「……?」

ココノツ「コンビニ行って…」

ヨウ「なん……だとっ……!?」

ココノツ「…店番頼むね」

ヨウ「もう!ココノツのいけずゥ…!」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1521287005
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/17(土) 20:44:25.70 ID:OHSBiwA20
第3菓子「また会う日まで」

ttp://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira151563.jpg
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/17(土) 20:45:04.06 ID:OHSBiwA20
ココノツ「なんなんだよ一体…」

ヨウ「何だもなにもないよ…」

ヨウ「終わるんだよ…っ…ついに!」

ココノツ「えっ…」

ヨウ「…クソぅ…せっかくここまでやってきたってのに…」

ヨウ「こんなのってありかよ…!」

ココノツ「え、ちょっと待って…」

ココノツ「終わるって…えっ、まさか…」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/17(土) 20:45:38.84 ID:OHSBiwA20
ココノツ(…う、うそだよね…いくら最近の売り上げが悪いからって…こんな…)

ココノツ(こんな…急に…?)

ヨウ「クソッ…こんなことになるなら…」

ココノツ「父さん…本当に終わるの…?」

ヨウ「…あぁ、終わる…」

ココノツ「…………!」

ヨウ「今年度いっぱいで…」

ヨウ「TBSラジオのエキサイトベースボールが…終わっちゃうだよォ!!!」

ココノツ「………え?」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/17(土) 20:46:19.71 ID:OHSBiwA20
【その辺の河原道】


ココノツ「ったくあのクソ親父…紛らわしいことを…」

ココノツ「てっきり今度こそ本当に店が閉店になるのかと…」


「あら、ココノツくんじゃない」


ココノツ「あれ、ほたるさん」

ほたる「こんなところで会うなんて奇遇ね」

ココノツ「そ、そうですね」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/17(土) 20:47:14.41 ID:OHSBiwA20
ほたる「どこかへお出かけかしら?」

ココノツ「ええ、ちょっとコンビニで買い物でもと…」

ほたる「ふゥん…」

ココノツ「えっと、ほたるさんは…?」

ほたる「ん?ココノツくんに会うためにここで待ち伏せしていたところよ」

ココノツ「え……?」

ココノツ(いや、さっき「奇遇ね」って言ってたじゃ…って、そんなことはどうでもいい)

ココノツ(僕に会うために待ち伏せ…?一体何のために…?)
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/17(土) 20:47:52.52 ID:OHSBiwA20

ほたる「…………」

ttp://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira151564.jpg

ココノツ「…………」ドキン

8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/17(土) 20:48:18.69 ID:OHSBiwA20

『何だろう…この空気…』

『この感じ…前にもあったな』

『あのときは、確か夏の終わりで…』

『夏の終わりと一緒に…ほたるさんが…』
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/17(土) 20:48:53.59 ID:OHSBiwA20
ほたる「…ねえココノツくん、彼岸花って知ってる?」

ttp://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira151565.jpg

ココノツ「…え、あ…はい」

ココノツ「えっと…不吉って言われてる赤い花…ですよね」

ココノツ「確か…秋頃に咲く」

ほたる「うん、大体合ってるわね」

ほたる「でも、だいぶ間違っているわ」

ココノツ「え…?」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/17(土) 20:49:40.05 ID:OHSBiwA20
ほたる「彼岸花はその毒性の強さや、墓場でよく見かけられることからも、“不吉な花”というイメージが強いけれども…」

ほたる「墓場に植えられているのは、その毒性で野生の動物を寄せ付けさせないため…という理由があるわ」

ほたる「お供えものや遺骨を荒らされないために…ね」

ココノツ「へ、へぇ…」

ほたる「そして、彼岸花の花言葉は…」

ほたる「“あなたを想う”…そして…」

ほたる「…“また会う日まで”…」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/17(土) 20:50:14.58 ID:OHSBiwA20
ほたる「…どう?この花言葉を聞くと、ただ不吉ってだけのイメージではなくなるでしょ?」

ココノツ「…えぇ、まあ…」

ほたる「…ま、今は3月だから、彼岸花の季節ではないのだけれど」

ココノツ「…………」

ほたる「…ねえココノツくん、いつも側にあったものが、ある日突然消えてしまったって経験…ない?」

ココノツ「…あります」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/17(土) 20:50:47.94 ID:OHSBiwA20

『…ずっと、頭の片隅では予感していたんだ…』

『いつか、楽しい時間も終わりが来るんじゃないか…って』

『…でも、考えないようにしていたんだ』

『だって…僕は…』

『……………』
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/17(土) 20:51:19.17 ID:OHSBiwA20
ほたる「…ねえココノツくん」

ほたる「ココノツくん、ココノツくん」

ココノツ「……っへ!?な、なんですか…?」

ほたる「いや、だからね…」

ほたる「ちょっと行きたいところがあるから、付き合ってくれないかって」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/17(土) 20:52:07.73 ID:OHSBiwA20
【シカダ駄菓子】


ほたる「うーん、やっぱりここは落ち着くわねぇ」

ほたる「あら…ヨウさんは?」

ココノツ「え、店番頼んだはずなんですけど…」

ココノツ「…あのクソ親父、また店ほっぽらかして…」

ほたる「そう…ええっと、どこにしまったかしら」ガサゴソ

ココノツ「ほ、ほたるさん…?」

ほたる「…あ、あった!」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/17(土) 20:52:45.77 ID:OHSBiwA20
ほたる「じゃじゃ〜ん!」

ココノツ「あ、彼岸花…」

ほたる「ふふ、造花だけどね」

ほたる「今日は、これをシカダ駄菓子に届けにきたのよ」

ココノツ「え…」

ほたる「やっぱり、お別れにはこの花かなと思ってね」

ココノツ「………!」

ほたる「これ、しばらくお店で飾ってくれないかしら?」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/17(土) 20:53:12.74 ID:OHSBiwA20
ココノツ「…ほたるさん、えっと…」

ほたる「また会う日まで…っと」

ほたる「それじゃ、今日はもう帰るわ」

ほたる「さようなら」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/17(土) 20:53:43.19 ID:OHSBiwA20

『…言え、言うんだ…』

『今度こそ、ほたるさんは本当にいなくなるつもりなのかもしれない…』

『いなくなってからじゃ…会えなくなってからじゃ…』

『もう…遅いんだ…!』
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/17(土) 20:54:14.88 ID:OHSBiwA20
ココノツ「あの!ほたるさん」

ほたる「え?」

ココノツ「いなくなるのは…もう会えなくなるのは嫌です!」

ココノツ「たとえそれが仕方のないことだとしても、僕は嫌です…!」

ココノツ「ずっと…ここにいてほしいんです!」

ほたる「…………」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/17(土) 20:54:40.43 ID:OHSBiwA20

『たとえ、それが必然だったとしても…』

『やっぱり、いなくなってから後悔したくない…』

『大切なものは、いつだって…』
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/17(土) 20:55:26.51 ID:OHSBiwA20
ほたる「ココノツくん…あなたは…」

ココノツ「…………」

ほたる「あなたは、やっぱり私が見込んだ通りの人だわ」

ココノツ「え…」

ほたる「そうよね、ココノツくんだって…嫌よね」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/17(土) 20:56:12.17 ID:OHSBiwA20
ココノツ「……………」

ほたる「ココノツくんだって…」

ほたる「梅ジャムが消えるなんて…絶対に嫌よね…」

ttp://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira151566.jpg

ココノツ「……はい」

ココノツ「……はい?」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/17(土) 20:56:45.51 ID:OHSBiwA20
ほたる「前からずっと危惧はしていたのよ…近いうちに梅ジャムがなくなってしまうんじゃないかって…」

ココノツ「…ん、んん…?」

ほたる「ココノツくんも知ってるでしょうけど」

ほたる「梅ジャムは“梅の花本舗”の社長である高林博文社長が一人でレシピを考え…」

ほたる「製造、販売に至るまでの全てを、70年間たった一人で行ってきた、伝説の駄菓子よ」

ほたる「その社長が、つい先日体調の不良を理由に勇退…その歴史に幕を閉じたわ」

ほたる「以前からレシピの引き継ぎは一切しないって話していたから、いつかこんな日が来るんじゃないかって思っていたけれど…」

ほたる「やっぱり、いざなくなってしまうと…寂しいわね」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/17(土) 20:58:00.63 ID:OHSBiwA20
ココノツ「…………」

ほたる「そういうわけで、梅ジャムを偲んでこれ(彼岸花)を置きに来たわけなのだけれど…って、ココノツくん?」

ココノツ「……へ?……」

ほたる「なんだか、言葉では言い表しにくい表情をしているわね…」

ココノツ「…え、えーっと…」

ほたる「…もしかして」

ほたる「違うこと想像してた?」

ココノツ「………!」ドキッ

ほたる「……ふふっ、まあいいわ」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/17(土) 20:59:02.70 ID:OHSBiwA20
ほたる「あ、そうだ。ココノツくんにもこれあげる」


スッ


ココノツ「あ、梅ジャム…」

ほたる「もう殆ど出回ってないから、探すのに苦労したわ」

ほたる「また、いつか会えるといいのだけれど」

ココノツ「…そうですね」

ほたる「それじゃあ、今度こそお暇するわ」

ほたる「またね」

ココノツ「…はい、また」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/17(土) 21:00:13.11 ID:OHSBiwA20
ココノツ「…………」


「おい〜っす」


ココノツ「あ…サヤちゃん」

サヤ「あれ、ヨウさんは?」

ココノツ「ああ、どこかでプラプラしてると思うけど…」

サヤ「ふ〜ん、大変だねぇ。店長代理も」

サヤ「…あっ、彼岸花だ」

ココノツ「ああ、それはさっきほたるさんが…」

サヤ「ほたるちゃん?」
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