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北上「我々は猫である」

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767 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/28(月) 05:19:20.52 ID:dpWG6V4B0
頑張れシリアス。
違って当たり前の人間が共通点を探すように、同一人物がいて当たり前の艦娘は非共通点を探してそうだなって。

やはり機動部隊かなと計画を立てていたら妙高さんと雪風が1/4スナイプを共に決めてくれました。コミケ友軍後に1/4ですから状況はお察しです。可能性がゼロじゃなければ勝てちゃうのいいですよね。
アドバイスありがとうございます。
768 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/28(月) 05:26:49.63 ID:kkk+BsgN0
おつ
イベントも乙、自分も嵐に3択で決めてもらいました
769 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/28(月) 12:26:25.88 ID:D3hmQVmro
おつかーレ
770 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/28(月) 22:46:08.51 ID:P+zQGS980
>>767
勝てば最適解 おめ
うちは旗艦のみ残しでメシマズの魚雷カットインで仕留めた
機動は不確定要素少ないから仕留め切れるかは同航戦以上引けるか次第だった
油6万食いつぶす間ラスダン反航戦しかでなかない嫌がらせほんとやめろ
771 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/29(火) 09:30:20.99 ID:KzkaWbJmO
感覚的には生き別れの双子みたいな感じかな
川端康成の古都みたいな
772 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/29(火) 09:53:04.85 ID:qC0gTO5DO
更新乙です
うちは旗艦残しが続いて最後に旗艦のみになって
妙高さん、雪風で行くかと思ったら連撃でアシスト予定の妙高さんが
叩き割ったなぁ、豆で5−5行ったけどレカスは本当嫌いだわ
773 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/04(月) 04:19:57.07 ID:syE/uFsm0
74匹目:シュレーディンガーの猫



よく聞く言葉だ。なので意味を調べて見たことがある。

さっぱり分からなかった。これに比べれば艦娘だとか妖精だとかの方がまだわかりやすいんじゃないかとすら思えた。

だからとりあえず思ったのは猫をそんな事に使うなと。

箱。

開けるまでどちらか分からない箱。

もし開けたら犬がいたなんて事になったら、どうなんのかな。
774 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/04(月) 04:20:31.23 ID:syE/uFsm0
北上「ただいま〜」カチャリ

吹雪「」
提督「」

提督室の扉を開けてあえて普通に帰還を報告してみたところ、空気が止まった。

二人で同じパソコンの画面を見て何やら話し合っていたようだったが、今はお互い私の事をまるで幽霊でも見たような顔で凝視している。
775 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/04(月) 04:21:31.16 ID:syE/uFsm0
吹雪「い、いつのまに戻ってたんですか!?しかもそんな軽い感じで!」
提督「バス乗る時連絡しろって言ったろ!」

北上「いやバイクで来たから」

吹雪「は?」
提督「は?」

二人並んでそっくりな反応をする。兄妹みたいだな。

北上「向こうの私にバイクで送ってもらった」

提督「北上がバイクに北上乗せてきたのか?」

北上「うん」

吹雪「タチの悪い冗談としか思えないんですけどバイクって事は多分本当ですね」

提督「あのジジイバイク好きだもんなあ…」

吹雪「だからってなんの護衛もなしでここまで送りますか普通…」

北上「その意見には概ね賛成だけどね。あでもバイクはすっごい気持ちよかった。私も乗ろうかなって」

提督「これ以上心配事増やすな頼むから」
776 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/04(月) 04:22:45.30 ID:syE/uFsm0
吹雪「それで、一体なんの用だったんですか」

自然な、ごくごく自然な感じで吹雪が聞いてくる。

白々しい。まさか予想がついていない訳じゃあないだろう。

提督「そうだぜ。そこが一番の謎だったんだ」

提督はどうなんだろうか。自分の復讐を邪魔される可能性については警戒しているのだろうか。

北上「前に話したでしょ?街でもう一人の私と出会ったって」

提督「あー聞いたな。ん、じゃあそいつが今回の北上なのか?」

北上「YES」

吹雪「あの人またそうやって勝手に外出許可を…」

北上「外出自体は提督の判断で別にいいんじゃないの?」

吹雪「元帥ですよ元帥。国内でも選りすぐりの戦力。北上と言えばその中でもさらに特筆すべき実力者と聞きます。当然扱いも私達なんかとは比べ物になりませんよ」

北上「なる、ほど。あれ、なんか改めて考えると凄いやばい事してたな私達」

提督「やべぇってレベルじゃねぇぞ、マジで。でその北上がどうしたって」

北上「会いたかったんだって」

提督「はい?」

北上「私にまた会いたくなったんだってさ」

提督「何考えてんだ北上」

北上「私じゃないよ。私だけど、でも私ならそうは考えない」
777 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/04(月) 04:23:33.80 ID:syE/uFsm0
提督「何話したんだ?わざわざお出迎えまでして」

北上「色々だよ。向こうの提督と一緒に、色々とね」

チラと吹雪を見る。特に普段と変わったところはない。でも吹雪も結構狸だしなあ。

提督「おっさんとも話してたのか?どんな?」

提督が先に食いついてきた。

北上「どんなって、まあ色々と聞かれたよ」

提督「それで…お前は答えたのか?」

やはり警戒しているのかな。少し目が変わった。

また吹雪を見る。こちらはやはり反応はない。

北上「うん。隠すようなこともないし。なんか提督の事凄く心配してたよ」

提督「あぁ…だろうな…」

提督も元帥のじいちゃんが自分を止めようとしているのは気づいているはずだ。私が何をどこまで言ったか、聞きたくて仕方なかろう。提督の中では私は何も知らない新人のはずだが。

吹雪は、微動だにしない。

やれやれ。私はこういう駆け引きみたいなのよく分からないんだけどねえ。
778 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/04(月) 04:24:14.22 ID:syE/uFsm0
北上「提督の目的ってなんなの?」

我慢できずに口を開いたと言うべきか、私は提督だけを見て問いを投げかけた。

提督「…それ改めて聞くことか?」

北上「ああいや、そういうんじゃなくてさ。究極的には深海棲艦を倒す事、ひいては海の平和を取り戻す事ってのはわかるよ。

でもそれって提督というより海軍という組織の目的であって、その目的にそう提督になる理由ってのはまた違うじゃん?

例えば治安維持が目的の警察官に正義感を持って入ることは別に不思議でもないけど、それ以外にも憧れとか親が警察官とか逮捕したいやつがいるとか刑事ドラマに憧れてたとかとかとか。

ともかく何か理由があるのかなって思ったんだ」

提督「なんで、なんで今それを聞くんだ」

提督はわけがわからないという感じで私を見ている。私の意図を測り兼ねているのだろう。

北上「なんとなく、かな」

提督「北上はたまに核心的なとこ突いてくるよなあ」
779 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/04(月) 04:25:28.89 ID:syE/uFsm0
提督「復讐だよ。特に深いものは無い」

北上「両親の?」

提督「やっぱ聞いてたか。おっさんも、なんでまた北上に話したんだか」

北上「それについては本当にただの偶然って感じなんだけどね」

提督「おっさんはなんて?」

北上「提督はどんな様子かって聞いてきた」

提督「それで返答は」

北上「…迷ってるんじゃないかって。そう言ってきた」

提督「迷ってる?」

北上「うん」

提督「俺が?」

北上「うん」

提督「…なんで」

北上「うーん、なんとなく?」

大井っちのせい、とは流石に言えない。

提督「適当過ぎないかそれ」

北上「なんとなくだよ。でも、適当じゃない」
780 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/04(月) 04:26:45.96 ID:syE/uFsm0
提督「そっか」

北上「うん」

やけにあっさりと納得された。図星だっ?

吹雪「迷ってるじゃないですか、実際」

提督「まあ、そうだな」

吹雪が唐突に口を開いた。

吹雪「それで、北上さんは何処まで話したんですか?」

北上「今言った通りだよ。私が話せるのなんてそれくらいでしょ」

吹雪「そうですか。そうですよね」

残念そうにも、安堵したようにも見えない。

私が何も話してないなら提督は復讐できるかもしれない。

私が洗いざらい話していたら提督は復讐することはできなくなるかもしれない。

吹雪はどっちを望んでいるのだろうか。

彼女にとって前任の提督は大切な人だったはずだ。なら復讐したいというのは自然に思える。

でもその大切な人にこの鎮守府を、皆を任されているなら、破滅を呼びかねない提督の行動を止めようとするのもまた不自然ではない。
781 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/04(月) 04:29:16.29 ID:syE/uFsm0
提督「俺は追ってるんだ。親父を殺した奴を。そいつが誰かを」

誰かを提督は知っている。

私はそれを知っている。

私が知っているのを提督は知らない。

ここに来てもまだそれを私に秘密にしたがるのは元帥のじいちゃんと同じ理由からだろうか。私を関わらせたくないという。

提督「なりふり構わず、何をしてでも。そう思ってたんだがな」

提督が少し下を向く。提督がいつも使っている机。残念ながら仕事だけに使っているわけではなさそうだが、そこにはきっとこれまでの思い出があるのだろう。

提督「親父がなんで躊躇してたのかわかる気がするよ。お前らといるうちに、俺も変わってた」

いつもの優しげな目を私に向ける。以前は、私が知らない提督は、違う目をしていたのだろうか。

提督「一人、置いて行きたくないやつがいてな」

吹雪「!」

ここで初めて吹雪が動揺を見せた。慌てて提督の方を見ている。

いや私も驚いたさ。なんなら大井っちに対する思いを自覚してないんじゃないかとすら思ってたし。
782 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/04(月) 04:30:28.28 ID:syE/uFsm0
提督「でも、やめる訳にはいかないんだよ。復讐に変わりはない。ただもうあんな事が起こらないようにとは思ってるけどな」

やめる気はないか。そっか。

提督「なあ北上。お前はどう思った?おっさんの話を聞いて。今の話を聞いて」

なら、私は提督を止めよう。私はみんなでここにいたい。大井っちとも、提督とも。

北上「…ねぇ、親父さんってどんな人だったの?」

私は決めた。

復讐なんて私には分からない。でもきっとそれは全てを不意にして良いものじゃ無いはずだ。

提督「ん?そうだなあ」

身を屈めて机の引き出しを弄り出す。鍵がかけてあるのかカチャカチャと音がした。

提督「頑固もんだったよ。しかも母さんに夢中でな。俺の事も見ろって昔はよくきれたよ」

今度はガサゴソと紙を漁るような音がした。写真でも探しているのかな。

それにしても元帥のじいちゃんと言い方は真逆だな。現してる人柄は同じだけど捉え方でこうも違うとは。
783 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/04(月) 04:31:02.40 ID:syE/uFsm0
一歩一歩、提督の机に向かってゆく。

吹雪「北上さん?」

目と目が合った。流石秘書艦、直ぐに私が決意したことを察したようだった。

それでも何も言わなかった。結局何が目的なのかさっぱり分からなかったや。

期待に添えてるのかは分からない。でも私はパンドラの箱の開け方を決めた。

世界平和なんてどうでもいい。私にとって世界とはこの鎮守府でしかないんだ。

提督「あったあった。これが親父だ。俺が産まれる前のだけどな」

一枚の古びた写真が机の上に置かれた。
784 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/04(月) 04:31:33.71 ID:syE/uFsm0
この時確かにパンドラの箱は開けられた。

私の手ではなく、誰の手でもない。

強いて言うなら神とか悪魔とか。そういった何かに。

中身はもう猫でも犬でもない。はっきりと観測されてしまった。

もしかしたらと、そう思う事がなかったわけじゃない。むしろだからこそ私はそれに蓋をしていたんだ。

でももう遅い。

災厄は撒き散らされた。
785 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/04(月) 04:32:21.20 ID:syE/uFsm0
北上「提督は、復讐するとして、どうやるつもりだったの」

提督「今はもう皆を巻き込むつもりはねえよ。ここには親父の時から居て俺に着いてきてくれた奴がいてな。何人か仇討ちに協力するってのもいたんだ」

北上「誰と」

提督「ん、飛龍と日向、だけなんだけどな。随分と無謀な話だろ」

北上「そうだね」

吹雪「北上、さん?」

北上「提督」

提督「おう」

北上「なら私が三人目だ」

提督「は?」
吹雪「へ?」



北上「私も協力する」
786 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/04(月) 04:33:11.09 ID:syE/uFsm0
写真に写っていたのはかつて神社で見た、金髪でこそなかったが、確かに私の探していた人物だった。

私が愛した人。恩を受けた人。会いたかった人。

提督の瞳に映る自分を見て理解した。

きっと昔の提督もこんな眼をしたのだろう。

思考が徐々に薄れる。

身体の中を何か黒くて熱い、少し心地よいもので満たされていくのを感じた。

箱の中に、もはや希望はなかった。
787 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/04(月) 04:41:39.50 ID:syE/uFsm0
セッツブーン
5-5には絶対に行かない

吹雪は長女感と妹感と芋感が絶妙にブレンドされていてカワイイ。
そろそろ可愛い大井っちも書きたい。

「古都」調べてみると非常に興味を唆られる内容だったので機会があれば読んでみようと思います。
788 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/04(月) 06:01:52.16 ID:X56Oeuay0
おつ、なるほどそう来るか……という感じだ
789 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/04(月) 10:31:37.61 ID:qYyR+IglO
北闇さんか……
790 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/04(月) 21:22:21.11 ID:lKUOgf7S0
やっぱ親父殿が飼い主だったか
猫は家に憑くというし北上にも秘密あるかな
791 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/19(火) 04:57:28.40 ID:ZdCPTCn50
76匹目:like a cat on a hot tin roof

熱いブリキ屋根の上の猫。

熱い砂浜なんかを裸足で歩いてみたらどうなるか。そんなの猫でなくても慌てて足を動かしながらパタパタと駆けて行くことになるだろう。

故にイライラしている、落ち着かない様子を表す。

でもこの時私は非常に落ち着いていた。

苛立って、内心グチャグチャだったけど、いつも通り、いやいつも以上に落ち着いていた。
792 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/19(火) 04:58:03.85 ID:ZdCPTCn50
北上「はあ」

あれから三日経った。

考えさせてくれ。それが提督の出した答えだった。

そりゃ驚いてたもんね。あの吹雪ですらフリーズしてたし。

そういや提督が置いてきたくないやつがいるーって言った時も驚いてたな。アレはなんだったんだろ。私と同じで提督は無自覚だと思ってたのかな。

大井「きーたかーみさん」

まあ何にせよ三日経った。何があっても時間というのはあっさり進んでいくものだ。アインシュタインの嘘つき。

あれから提督とも吹雪ともまともに話していない。殆ど日課になっていた提督室にも行っていない。

でも大して変わらなかった。任務はやってるし出撃もしてる。僅かな事務的な会話だけで淡々と日々が過ぎていく。

大井「北上さーん」

提督だけじゃない。結局のところ私も保留にしてしまっている。

現実を、心を。

でもひょっとしたら、このまま何も変わらず、何も進まず始まらず終わらずにずっといた方が
大井「北上さんっ!!」
北上「うわっ!?」ガッ
793 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/19(火) 04:58:51.36 ID:ZdCPTCn50
北上「ったぁ…」

仰向けになって読んでいた本が驚いた拍子に顔に落ちてきた。

まあ実際のところ読んではいなかったというか、頭に全然入ってこなかったんだけど。

大井「もぉ、どうしたんですか最近。死んだ秋刀魚みたいな目になってますよ」

北上「そりゃまた美味しそうだね」

大井「そうとらえますか…」

大井っちを見る。制服姿だ。髪も少し乱れてる。そういえば今日は出撃だったんだっけ。

北上「お疲れさん」

大井「ありがとうございます」

私の横に座る大井っち。

ふむ。胸はデカい。腰にはクビレがあるが決して痩せてるという程ではない丁度いい肉付き。顔は美女揃いの艦隊の中でも中々に綺麗な方だし、髪もツヤツヤだ。あ、髪は皆そうか。

そりゃ提督も惚れるわけだ。でも何がきっかけなんだろう。最初はケンカばっかりだと聞いたけど。
794 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/19(火) 04:59:39.32 ID:ZdCPTCn50
大井「北上さん」

北上「何?」

大井「提督と何かありましたね」ジトー

北上「疑問形ですらない」

しかも深海棲艦を見る時より冷たい目をしておる。

北上「まあそうなんだけどね」

流石に大井っちには隠せないな。

大井「三日。三日間ですよ。まさかなんの進展もないとは思いませんでした」

三日というのも分かってるのか。流石大井っち。略して流っち。

大井「どうせ提督が悪いんでしょうけど」

北上「いや、それが違うんだ。今回ばかりは私も悪い」

大井「そうなんですか?」

北上「うん…その、なんていうかな」

大井っちに全部言う訳にはいかないしなあ。

北上「お互い保留にしちゃってるんだ。決めなきゃいけない事を決めずに、言えずに」

大井「お互い、に?」ジトー

北上「えっと、主に提督が…」
795 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/19(火) 05:00:28.48 ID:ZdCPTCn50
大井「やっぱりあの人ですか」スッ

流れるように立ち上がる。ってまさかこのまま提督のとこに行くつもりじゃ!?

大井「ちょっと提督に一発入れてきます」

北上「待て待て待て落ち着いて!提督はただ、考えさせてくれって、なんでかそのままで…」

大井「…そうですか」スッ

あっさり座る大井っち。あ、さては私を焦らせるために立ったな。

大井「北上さん。あの人は馬鹿です」

北上「え」

大井「間抜けです。意気地無しです。空気も読めないし私達の心も読めません。そのくせ自分では分かった気になってる無能です」

聞いてるだけでこっちまでダメージを受けそうなくらい容赦も躊躇もなく罵詈雑言を並べていく。提督がこれ聞いたらどう思うか…

大井「でも考えなしじゃありません。的外れで空回りしてばかりですけれどそれでもあの人なりに考えがあるんです。あの人なりに私達の事を考えてはいるんです」

北上「…うん」

凄い、凄い説得力だ。

大井「でもどんな考えであれ北上さんをこんなに待たせるなんて許せないので一発殴ってきます」

北上「結局そこ!?」
796 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/19(火) 05:01:32.67 ID:ZdCPTCn50
またしても大井っちが立ち上がる。誘いとわかっていても乗らない訳には行かない。

北上「ストップ!」ガシッ

寝転んでいた状態からなんとか起き上がり大井っちの腰にしがみつく。

大井「まだ何かありますか?」

無反応。真面目モードの大井っちだ。これは手強い。

北上「大井っちに、大井っちに解決されたら嫌だ」

口をついてでたのは子供みたいな言い訳だった。

大井「北上さん。物事の解決に時間が必要な時は多いです。でも時間が全てを解決することはありません」

北上「ご最もです…」
797 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/19(火) 05:02:19.94 ID:ZdCPTCn50
大井「本当にわかっていますか?」クルリ

大井っちが体を回して私の方をむく。

北上「分かってるよ。分かってるから、無理なんだ」

大井「ほら、しゃんとしてください!」
北上「うわっ」

無理やり正面に立たされる。大井っちの鋭い眼差しが私の目に泳ぐことを許さない。

大井「こんな風にちょっとあの人のけつを引っぱたいてくるだけです。後はお二人で好きにしてください」

北上「…分かったよ。こーさん。大井っちに任せる」

大井「ええ、任せてください!あの人の事はよぉく分かってますから」

意気揚々と、自信満々に部屋を出ていく。

北上「はあ」

適わないなあ。

でもまあ確かに、大井っちの方が適任だろう。なんせ

北上「いてっ」

痛みが走る。さっき本を顔に落とした時傷でも出来たかな?

気が緩んでまたゴロンと寝転ぶ
798 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/19(火) 05:02:51.44 ID:ZdCPTCn50
提督はどうするだろうか。

私はまだまだ練度の足りない新兵だ。危険な相手に、まして三人で挑むなんて自殺行為だ。当然止めたいだろう。

でも迷った。保留にした。

それだけ提督にも復讐心があったからだろう。提督も引く訳にはいかないのだろう。

それは私も同じだ。

心にぽっかりと穴が、なんてありふれた表現がしかしピッタリと当てはまってしまう。

これまで私を支えていた希望はあっさり折られた。私はきっとそれを許せない。

そうする事が、きっと今私にできる唯一の恩返しだ。
799 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/19(火) 05:03:29.03 ID:ZdCPTCn50
大井っちが知ったらなんて言うだろう。

多分大井っちは提督から聞き出すだろう。首を突っ込んだからには大井っちは絶対に諦めない。

復讐。もしかしたら私も提督も戻ってこれないかもしれないんだ。大井っちなら止めるだろう。

何よりも提督を。

提督と大井っち。

二人は今きっと話している。

私が知らないような話を。
800 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/19(火) 05:04:04.18 ID:ZdCPTCn50
提督室を思い出す。

所々凹んで草臥れたソファ。

年季の入った床。

シミのある机。

ラクガキのあるテーブル。

人の顔に見えるという天井の模様。

部屋に似合わず新品のライト。

よく使われる綺麗な棚。

誰も使っていないのかホコリだらけの棚。

しょっちゅう新しくなる窓ガラス。

古臭い匂いがする椅子。

皆で刺繍をしたというカーペット。
801 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/19(火) 05:04:31.91 ID:ZdCPTCn50
よく仰向けになって本を読んだソファ。

提督に本の内容を話したりもした。

新しいライトが明るすぎると文句を言ったりもしたっけ。

机のシミは、誰だっけな。駆逐艦なのは覚えてるけど。

天井の模様は女性に見えたな。提督はぬらりひょんとか言ってた。

提督に似合わない厳かな椅子は、肘掛が妙に座り心地よかったな。

アルバムでもめくるかのように様々なことを思い出す。

でも私がした決断は、それらを燃やすのと同じ事だ。

それにあの場所は、私のものじゃないんだ。
802 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/19(火) 05:05:09.96 ID:ZdCPTCn50
もしかしたらここには戻ってこれないかもしれない。

でもいいや。提督には大井っちがいる。大井っちを置いてくのは少し気が引けるけど、私は私のために向かわなきゃ行けない所がある。

北上「…」

痛い。
803 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/19(火) 05:05:40.89 ID:ZdCPTCn50
あそこは提督や大井っちがいる所だ。

私は、北上のまがい物の私はあそこにいるべきではない。

あるべき者をあるべき所に。

私は帰るべきだ。

北上「痛い」
804 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/19(火) 05:07:18.38 ID:ZdCPTCn50
どうにも痛い。まさか本が当たったところ擦りむけていやしないか。

重苦しい身体を引きずり起こして部屋に置かれた鏡を見る。

北上「お前、なんで泣いてるんだ?」

そう言ったのは私だ。

鏡の中の北上じゃない。

そこには泣いている北上がいた。

でもそれなら、私が泣いてる事になるじゃないか。

何だかすごく気味が悪い。

とても悲しそうで、悲痛に歪んだくしゃくしゃの表情を見ているとこちらまで悲しくなってくる。

でもそれは私なんだ。今私が見ているのは。
805 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/19(火) 05:07:45.42 ID:ZdCPTCn50
訳が分からず、でもこれ以上見ていられなくてそのまま後ろにバタりと仰向けに倒れる。

畳は私を怪我をしない程度に受け止めてくれた。

背中が痛い。

でもこんなんで泣いたりはしない。

自分の事なのに自分のじゃないみたいだ。

私は少し考えるのをやめて目を閉じた
806 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/19(火) 05:08:30.50 ID:ZdCPTCn50
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

北上「ん?」

目が覚めた。

というかいつの間にか寝ていた。

そして何やら後頭部に違和感がある。柔らかくて暖かい何かの上に頭が乗っている。

大井「起きましたか北上さん」

北上「大井っち」

膝枕だったか。

大井「ビックリしましたよ。戻ってきたら大の字で寝てるんですから」

北上「私もビックリした」

大井「あれからずっと寝てたんですか?」

北上「あれからって、どれくらい経った?」

大井「2時間くらいでしょうか」

北上「多分寝てた。って2時間も話してたの?」

大井「1時間半くらいです。後は北上さんを膝枕してました」

北上「十分長い…多摩姉達は?」

大井「部屋には来てたみたいですよ。北上さんを見て察したのかすぐ出ていったようですけど」

北上「何を察したって言うのさ」

大井「泣いていたから」

北上「!」
807 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/19(火) 05:08:57.34 ID:ZdCPTCn50
大井「先程拭いちゃいましたけど、泣き腫らした跡がありましたよ」

北上「そっか」

大井「何か、ありましたか?」

北上「わかんない。でもなんでか泣いてた」

大井「そうですか、そう」

北上「提督は?」

大井「待ってますよ。北上さんを」

北上「私を」

大井「もう待たせないって言わせました。後の事を決めるのは二人です」

北上「大井っち」

大井「はい」

北上「ありがとね」ムクリ

大井「私は。私は此処で待ってます。ずっと」

北上「うん。ありがとうね」
808 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/19(火) 05:09:25.18 ID:ZdCPTCn50
大井「安心してください、あの人はちゃんと受け止めてくれますよ」

あぁまただ。

北上「どうかなあ。船って結構重いよ?」

また痛い。

大井「そうですねえ。猫一匹くらいなら?」

北上「はは、提督に猫は似合わないよ」

大井「そうですか?ギャップ萌えってやつですよ」

さっきの鏡と同じだ。大井っちを見ていると、締め付けられるように痛い。

北上「大井っち」

大井「はい」

北上「行ってくるね」

大井「はい」
809 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/19(火) 05:09:59.91 ID:ZdCPTCn50
逃げるように部屋を出た。

心臓が荒波のように脈打っている。

平静を装って歩いてみた。深呼吸をしてみた。

でも落ち着かない。

私は少し駆け足でパタパタと提督の元へ向かった。
810 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/02/19(火) 05:14:55.87 ID:ZdCPTCn50
北上を攻略しようとすると大井っちとの距離が近づいて大井っちの好感度をあげようとすると北上と親密になる恋愛ゲームがやりたい。

瑞瑞コンビのポスターが可愛すぎて遅くなりました。
凄く可愛いです。
一緒にショッピング行って着せたり着せられたりしたいです。
811 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/19(火) 11:01:17.64 ID:cVsgrheQO

とてもよくわかるぞ
812 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/19(火) 11:21:18.03 ID:ql+OWB4Do
おっつおっつ
813 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/19(火) 17:44:23.92 ID:B0bHLFg90
「1提督さん、これ着てみて! うん似合ってるから帰りはそれでいてね(ふんどし一丁)」
2/14ふんどしの日の出来事であった
こうですか
814 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/19(火) 22:07:47.26 ID:xfLhFLXzO
なおガチムチの褌一丁はソレ単体でセックスアピールだぞ
815 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/21(木) 07:57:22.93 ID:/ahpoDKtO
製作はOverfloWでじゃないとね!
816 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/22(金) 04:01:42.72 ID:uNzgH5zT0
綺麗に思い込んでるせいで逆にすべての辻褄があってしまう北上さんすこ……
817 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/01(金) 04:25:11.64 ID:l/nRBvBm0
78匹目:bell the cat



猫の首輪に鈴をつける。

言うのは簡単だけれど、はたしてその危険な役割を誰がやるか。

幸いにも猫は私だ。

なら進んで鈴をつけようじゃないか。
818 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/01(金) 04:25:54.36 ID:l/nRBvBm0
提督「よお」

北上「…痛む?」

提督「肉体的にはさほど」

北上「そっか」

提督「でも痛え」

北上「みたいだね」

提督の右頬が少し赤くなっていた。誰にひっぱたかれたかは考えるまでもない。

大井っち、ケツじゃなくて頬を叩いたのね。
819 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/01(金) 04:26:32.38 ID:l/nRBvBm0
提督はいつもみたいに奥の机にはおらず手前のテーブルにいた。

なんとなくその場の雰囲気で私も提督の向かい側に向き合うように座る。

提督「こっぴどくやられたよ。大井のやつ容赦なさすぎてな」

北上「そっか」

提督「頬は別にいいんだけどな。手より口がその何倍も怖い」

北上「だろうね」

提督「昔っから言う時は言うやつでな。もしかしたら言葉で人を殺せるんじゃないかと毎回思うよ」

北上「…」

提督「さっきだってまた大「いいよもう」ん?」

北上「大井っちの話は、もういい」
820 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/01(金) 04:27:13.83 ID:l/nRBvBm0
提督「わりい。はは、ダメだな。また逃げだ」

北上「?」

提督「北上」

提督が真っ直ぐ私を見る、

久々に提督と目が合った。

目を見られた。目を見れた。

提督「力を貸してくれ」

真っ直ぐ、そう言った。

北上「いいの?」

提督「巻き込みたくないというのが本音だが、戦力が足りないのも本音だ。でもだからって捨て石にさせるつもりはない。やるからには必ず討つ。討って、全員で帰投させるさ」

目は口ほどに物を言う。上手いことを言うものだ。

確かに提督の眼差しからは言葉よりも確かな決意が伝わってきた。
821 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/01(金) 04:27:44.48 ID:l/nRBvBm0
提督は決めたんだ。はっきりと、どうするかを。

その目に私は少し後ろめたさを感じてしまった。

だって私はまだ、迷っている。

復讐。その気持ちは本物だ。提督に協力すると言ったのは間違いなく本心だ。

でも今まで通りここで幸せに暮らしていたいというのも紛れもなく本心なのだ。
822 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/01(金) 04:28:50.86 ID:l/nRBvBm0
北上「うん。協力する」

提督「おう。頼むよ。それじゃま手始めに、文字通りな」スッ

提督が手を差し出してきた。大きくて広い手。

北上「提督にしては洒落たこと言うね」

提督「たまにはな」

北上「じゃあ」スッ

私も覚悟を決めなくちゃいけない。

提督「ただし」
北上「え」

握手、の前に提督が遮った。

提督「別にいつでも止めていい。逃げたっていい。こんな事、やらないにこしたことはないよ」

北上「それ、今言う?」

提督「わり。でもそうだろ?」

北上「そりゃあ、まあね」

提督「俺だってそうさ。今だって何かのっぴきならない事情で断念せざるを得なくなりやしないかって、そんな事を何時も考えてる」
823 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/01(金) 04:29:21.50 ID:l/nRBvBm0
北上「土壇場になって中止なんて言うつもり?」

提督「そうなるかもな。ギリギリになって勇気が出ないかもしれん。それを踏まえての握手だ」

勇気か。

復讐する勇気か。

それを諦める勇気か。

北上「分かったよ」

協力者同士。いや共犯と言うべきかな。でもとても暖かい握手を交わした。

私は決意した。提督の思いに応えよう。

未だ迷ってる。だからハッキリさせよう。

私がどうしたいのか。
824 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/01(金) 04:30:12.56 ID:l/nRBvBm0
北上「へへへ」

提督「なんだよ変な笑いしやがって」

北上「初めて提督と会った時の事思い出しちゃってさ」

提督「あー。あれももう随分前に感じるな」

提督が上を向く。昔を思い出しているのだろうか。

北上「てーとく」

提督「ん?」




北上「名前は軽巡、北上。まーよろしく」

提督「おう、よろしくな」
825 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/01(金) 04:30:49.37 ID:l/nRBvBm0
提督「でだ」

北上「はい」

提督「俺達は目標達成のためには余りにも色々なものが足りない」

北上「確かにね」

提督「その中で最も補いやすいのがお前の練度だ」

北上「ぅ、ですよね…」

提督「残念ながら一朝一夕で練度をどうこうするのは無理だ。だがだからと言ってやらない理由はない」

北上「つ、つまり」

提督「と「特訓です!!(バァン」はっ!?」
北上「えっ!?」


大井「特訓です!!!!」


北上「いやなんでいるの」

提督「聞いてたなてめえ!」
826 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/01(金) 04:31:53.28 ID:l/nRBvBm0
大井「そりゃあもちろん提督が変なこと言わないか見張りを」

当然のように部屋に入ってきた。

提督「言わねえよ何考えてたんだよ」

北上「あのー特訓って?」

大井「提督の言う通り練度は直ぐには上がりません。私も北上さんよりは高いですけれどそれでも一線で通用するかは微妙なレベルです」

提督「だ「だから基礎的な訓練以外に何か飛躍的に力をつける方法が必要です」

北上「ふむふむ」
提督「…」

大井「ここで大事なのが私達にとって今倒すべきなのは深海棲艦ではなくあのレ級一体という事です。つまり一点集中で対策が練れるんです」

あ、提督が完全に話すのを諦めた。

大井「なんであれアイツを沈めれば勝ちなんです。その点で見ると私達雷巡はチャンスがあります」

北上「あー、魚雷か」
827 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/01(金) 04:32:41.74 ID:l/nRBvBm0
大井「元々私達は対空や砲撃は苦手です。ですが魚雷による致命的な一撃であれば他の船と比べても練度の低さを補ってあまりあるものがあります」

北上「確かに」

大井「そして!何よりも大きいのは私と北上さんのコンビネーション!!」ンバッ

北上「うんうん。え?」

大井「コンビネーション!!」シュバッ

北上「2回も言わんでも」

しかもポーズ変えて。

提督「実際ポイントだと思うんだ。普段艦隊は色んな艦種をバランスよく編成するから忘れがちだが同じ艦種同士だからこそ出来る動きってのは確かに強い」

北上「なるほどね。確かに練度が低くても二人合わせてなら補い合えるかも。でも大井っちと二人で出撃した事ってほとんどないんじゃ」

大井「普段の以心伝心っぷりを戦場でも発揮すればいいんですよ。戦闘経験はこれから積んでいくんですから」

北上「そう何上手くいくのかね」

相変わらず大井っちは…

北上「ん?」

あれ?
828 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/01(金) 04:33:23.00 ID:l/nRBvBm0
提督「どした」

北上「え、何?大井っちも?大井っちも一緒なの!?」

大井「当たり前じゃないですか」フンス

北上「いやいや全然当たり前じゃないでしょ!」

提督から事情は聞いてると思ったけどまさか参加してくるとは…待てよ、よく考えたら実に大井っちらしい行動だな。

大井「大丈夫ですよ。北上さんを一人で行かせたりなんかしませんから!」

北上「って言ってるけど、いいの?」

提督を見る。

大井っちをこんな危険な事に巻き込む。それは提督が一番嫌がりそうなものだが。

提督「止められると思うかこいつを?」

北上「思わない」

提督「そういう事だ」

提督弱いなー。

大井っちは、あードヤ顔してる。
829 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/01(金) 04:34:15.30 ID:l/nRBvBm0
大井「愛にも色々ありますけれど、少なくとも私は愛する者を宝箱にしまうようなことはしません」

提督「お前みたいにスパッと割り切れりゃ楽なんだがな」

大井「提督は肝心なところでいっつもウジウジしてますからねえ」

提督「はっはっはっ今度は耳が痛え」

北上「大井っちは凄いよねぇ。私もそんな風になれたらいいのに」

大井「いいんですよ北上さんは。今の北上さんこそ北上さんなんですから」

提督「北上に甘すぎるだろお前」

大井「提督は甘えすぎなんですよ。誰にとは言いませんけどお?」

提督「てめぇ…」

大井「それに私だって悩んだりはしますよ。でも決めるべき時はそうするだけです」

北上「決めるべき時か」
830 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/01(金) 04:34:50.09 ID:l/nRBvBm0
大井「何にせよ、私と北上さんのコンビならどんな壁だって超えていけます!」

北上「いや別に二人だけというわけじゃ」

提督「サラッと俺を無視すんな」

大井「不純物が混ざるとコンビパワーが落ちるんです」シッシッ

提督「あそーいうこと言う、そーいう言っちまうんだ。飛龍と日向が悲しむだろうなぁ」

大井「あの二人は別です」

提督「適当過ぎんだろ!」

北上「それでも五人かあ」

提督「これでもマシになった方だよ」

大井「最初三人でどうするつもりだったんですか…」

提督「自暴自棄な所があったのは否めない」

北上「だろうねぇ」
831 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/01(金) 04:35:34.25 ID:l/nRBvBm0
提督「が、今や五人だ。一世一代の大仕事だぜ。ほかの奴らが血眼になって探してる鬼の首、俺らでもぎ取ってやろうぜ!」

大井「今のところ鬼の素顔を知ってるのはウチだけですからね。提督が報告してないせいですけど」

提督「これから首持って謝りに行くから大丈夫だよ。歴史はいつも勝者が作るもんだろ?」

大井「実際勝ち目が無いわけじゃないですからね。敵は自分が狙われているとは思っていない」

提督「対するこっちは徹底的にメタを張れる」

大井「戦争じゃなくて仇討ちですからね。ルールも何も無し」

提督「例えどんな手を使ってでも」

大提「「討つ」」ニヤリ

実に楽しそうに二人が笑う。
832 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/01(金) 04:36:07.90 ID:l/nRBvBm0
提督「ま、そういうわけで明日から二人は特訓だ」

北上「具体的にはどういう?」

提督「飛龍に頼むつもりだ。内容はあいつに任せる。二人のコンビと雷撃が一番の伸び代だがだからと言って基礎訓練をしない理由にはならない。やれることは全部やるぞ」

北上「うへ〜気が滅入る話だ」

大井「ならやめますか?」

北上「そうもいかんでしょ」

提督「訓練は明日からだ。今日はとりあえず休んで明日に備えとくといい」

北上「提督は?」

提督「具体的な作戦はこっちでやっとく。お前らはそっちに集中しとけ」

北上「ほ〜い。それじゃ」

提督「おう」
833 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/01(金) 04:36:40.64 ID:l/nRBvBm0
いよいよだ。

死にたくないから、怖いから。

ずっと戦いから逃げていた私だけど、初めて自分から戦いに向かう理由ができた。

大井「あぁ提督」

提督「ん?」

部屋を出る直前に大井っちが提督を呼ぶ。

大井「約束、忘れないでくださいね」

提督「おう。信じろ」
834 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/01(金) 04:37:24.39 ID:l/nRBvBm0
二人はどんな話をしたんだろうか。

二人は何を知っているんだろうか。

二人はどんな約束を
北上「大井っちは、なんで提督に協力してるのさ」

大井「そうですね。私にとっても、大事なリベンジですから」

リベンジ。

一年前に大井っち達がレ級に遭遇した件か。

海の化け物。

首輪に鈴をつけるどころじゃない。私達でそれを倒すんだ。
835 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/01(金) 04:48:56.23 ID:l/nRBvBm0
カレンダーをめくる時期。今年は児ポじゃない。

週一で書、けてないですね。きっとお出掛け吹雪が可愛すぎるせいですね。
基本的に鎮守府にいない娘は書かない主義ですが実はウチに吹雪はいません。書いてて好きになったタイプなので、これを機に着任してもらうつもりです。
ゲーム内だけでなく、読んで、または見て、あるいは書いて描いて。出会うきっかけが色々あるっていい事です。
836 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/01(金) 11:35:02.71 ID:zWUsty2K0
お前の吹雪が好きだからもっとかいて(傲慢)
837 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/01(金) 16:47:31.73 ID:Nrur+DOc0
特化型が陥りやすい視野狭窄おこしてんなー
敵の方が同系列の優位な必殺技持ってる時は少年漫画的に危ないw

これ雷撃さえ雷撃さえって無理して航空戦で北上中破して先制雷撃で飛龍が大破して砲撃戦一巡で日向が大破して二巡目に北上が大破するまである
838 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/01(金) 22:47:59.00 ID:hPjTfDa1O
つ イオナ
839 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/07(木) 04:30:45.21 ID:BrqyKwfY0
80匹目:Cat has nine lives



猫は9つの魂があるという。イギリスのことわざだったかな。

高いところから難なく着地したり、狡猾で、急にいなくなったかと思えばフラっと現れる。

そこから猫は幾つも命を持っているのだろう。だからしぶとい。そういう意味になったそうだ。

確かにそうらしい。1度は死んだ身でありながら、あろう事か船として蘇ったのだから。

でもならばこの身体には、猫以外に一体幾つの魂が宿っているのだろうか。
840 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/07(木) 04:31:21.42 ID:BrqyKwfY0
『次!三時方向!』


北上「!」

大井っちと共に無線で指示された方向に砲塔を向ける。

向かってくるのは流星。飛龍さんの操るそれは確かにその名に恥じぬ起動を描いていた。

流れる星に対空射撃を行う。最も私達の対空能力はたかがしれている。だが少しでも回避運動を取らせることが出来ればそれでも十分だ。

北上「来た!魚雷五本!」
大井「二と三!」

私に二本大井っちに三本か。

回避行動を取りながら魚雷に狙いを定める。
841 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/07(木) 04:32:07.26 ID:BrqyKwfY0
『七時と十一時!』


北上「早っ!?」

慌てて狙うのをやめて次の方角を見る。魚雷を撃つ練習は後回しだ。

大井「北上さん!」
北上「うん!」

ぐるりと魚雷を避けながら大井っちと出来るだけ近づく。

二方向からそれぞれ魚雷が放たれる。

対空射撃をやめ、同時に私達もバラバラな方向に一斉に動く。これで狙いはつけ辛い、はずだ。


『で次は上ね』


北上「は?」
大井「え?」

上、上から?そんなんどうしろってんですk
842 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/07(木) 04:34:23.91 ID:BrqyKwfY0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

北上「あぁぁぁぁぁ…」

机に顔を擦りつけ体に蓄積された疲れを声とともに絞り出す。残念ながら疲れの方は一切取れやしないのだが。

大井「カレー冷めちゃいますよ」

北上「食べる気力も湧かないよぉ」

ハード。ハードだった。飛龍さんの訓練は。

朝っぱらからいきなり訓練やるよ〜と連れ出されたかと思えばお昼までみっちり対空訓練である。

北上「死にそう」

大井「初日からそんなんじゃ持ちませんよ?」

北上「既に持ってない…」
843 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/07(木) 04:35:14.76 ID:BrqyKwfY0
私がバテたのでお昼とはいえ少し早めの時間の昼食。食堂にはあまり人気がない。

「午前はこの辺にしとこっか」と飛龍さんは言っていたが、午後はもっと長いのかな…

北上「大井っちはよく平気だね」

大井「平気とは言い難いですけど、北上さんよりは丈夫ですから」

北上「むむ」

負けてはいられんな。少し冷めて食べやすくなったカレーに手をつける。

大井「北上さん、今日は少し力み過ぎてませんでしたか?」

北上「そりゃ今までみたいに逃げ回る訳にはいかないしさ」

大井「それはそうですけれど」

日向「随分と頑張っているようじゃないか」

大井「日向さん」

日向「一緒にいいかい?」

北上「もちろん」

向かい側に座る日向さん。

和風定食か。この人洋物とか食べるのだろうか?少なくとも見た事はないし想像ができない。
844 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/07(木) 04:36:02.25 ID:BrqyKwfY0
日向「提督から聞いたよ。まさか君が、君達がね」

大井「私もですか?」

日向「そうだ。少なくとも私から見たらな」

大井「必然ですよ」

日向「何がきっかけかは知らないが以前の君ならそうしなかった。違うか?」

大井「…」

日向「まあ一番わからないのは北上なんだけれどね」

北上「それについては内緒ですよ」

日向「では私のデザートをやろう」

デザート。おしるこか…

北上「カレーにおしるこはちょっと…」

日向「それは残念」

ちっとも残念そうには見えないが。
845 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/07(木) 04:36:41.25 ID:BrqyKwfY0
日向「君達二人だけの秘密というわけか。素敵な話じゃないか」

それは違う。私は大井っちには

大井「私も知りませんよ。北上さんだけの秘密です」

先に口を開いたのは大井っちだった。

日向「ほお…」

表情を変えずにサラッと言ってのけた大井っちと、それに驚いた私の表現を見て日向さんがどこか納得したように頷いた。

日向「どうやら中々に込み入った事情があるようだね。まあそこに口は出さないさ」

北上「日向さんこそ、どうして?」

日向「分かりきっているだろう?飛龍のやつと同じ、何処にでもあるような極々単純な復讐心さ」

そう言って味噌汁を啜る。
846 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/07(木) 04:37:31.43 ID:BrqyKwfY0
日向「というのは違うか」

北上「え」

大井「違うんですか?」

日向「そういう気持ちが無いわけじゃあないんだ。だが私が協力している理由は、提督に頼まれたからさ」

大井「頼まれたって一体どんな風にです?」

日向「何も土下座されたり脅されてるわけじゃない。普通に、実に紳士的に、とても真摯に頼まれただけだ。私は船だからね。船長が舵を切ったらそちらを向くだけさ」

北上「船、まあそうりゃそうだけど」

大井「それじゃあ自分の意思ではないみたいじゃないですか」

日向「北上には前に話しただろう。艦娘とはそういうものだよ。多かれ少なかれ。だからこそ君達の反応は、私から見ればかなり意外でとても興味深いね」

相変わらずだなこの人は。アナタ以上に変わっている人もそうはいないと思うけれど。
847 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/07(木) 04:38:17.76 ID:BrqyKwfY0
日向「だからまあそんな変わった後輩に私からのアドバイスだ。ひとつの事に夢中にならずに周りを見ることだ」

北上「なんだか抽象的過ぎてちょっと」

日向「憎しみは人の無意識のセーブを外すのには有効かもしれないが私達艦娘にとっては逆効果だ。私達の力とは艦の部分であり個々の意思ではない」

大井「復讐そのものを否定するような言い方ですね」

日向「もちろんそうさ。私はそれを肯定した事は一度もないし、これからもしないつもりだ」

キッパリと言い切って箸を置く。

いつもそうだ。日向さんは自分の考えをきっちりと持っている。

それが相手を真っ向から否定する事だとしても。

日向「安心するといい。基本的に君達の見方だよ、私は」

北上「日向さんはその基本的って所が怖いんだよねぇ」

日向「おや、それは心外だな」
848 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/07(木) 04:38:52.97 ID:BrqyKwfY0
日向「そうだな、なら具体的なアドバイスをしようか。北上」

北上「私?」

日向「図書室に行くといい。神風のやつが最近寂しそうだぞ」

北上「!」

そういえば最近行ってなかったな。そんな余裕がなくて、

北上「余裕か」

日向「必死になる事はいい事だが余裕がなくなるのはいけない。余力を残せという意味じゃないのは分かるだろ?」

北上「まあ、なんとなく?」

日向「ふむ、そうだな」

何やら考え込む日向さん。何が飛び出すのやら…
849 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/07(木) 04:39:33.85 ID:BrqyKwfY0
日向「八八歩」

北上「へ?えー、えっと七五歩?」

将棋だろうと当たりをつけて適当にそれっぽい事を返してみる。

確か最初の数字が将棋盤の座標なんだっけか。そもそもアレって縦横幾つなんだっけ?

日向「将棋、まあチェスでもいいが、これが戦争と言うやつだ」

大井「王を取れば勝ち、という事ですか?」

日向「ルールがあるということさ。守るかどうかは別としてだが。そして」

ギシリと木製の椅子が、いや床そのものが軋む音がする。

無理もない。戦艦の背負う巨大な砲塔はその重さだけで十分な破壊力を持っているのだから。

日向「これが私達がやろうとしている事だよ」

そう言いながら今しがた何食わぬ顔で身につけた艤装を、砲塔をこちらに向ける。
850 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/07(木) 04:41:00.68 ID:BrqyKwfY0
とてつもない威圧感だ。本来戦艦の砲塔をこれ程間近で向けられる事などまずない。

日向「ルールなど気にする必要は無い。戦略などない。如何なる手段を使ってでも敵を討つ」

北上「なら将棋なんていらなかったんじゃ」

日向「そうでもない。こうして無防備なまま私の前に座ってくれるだろう?」

大井「ルールを守るのではなく使えと」

日向「そういう事も視野に入れろ、という話さ。さて、王手だ」

北上「こーさん」

無茶苦茶だな。でもその通りだ。

大井「ところでそろそろ椅子が限界のようですけれど」

日向「ふむ、そうだな。提督には内緒にしておいてくれ」

なんでもお見通しなのか、案外考えなしなのか、読めない人だ。
851 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/07(木) 04:42:07.68 ID:BrqyKwfY0
北上「余裕、視野か」

大井「ふふ、午後はもう少し上手く出来そうですね」

北上「かもね。うんにゃ、そうだね」

どこか穏やかな空気が流れ出した食堂。だったのだが、そこに突風が吹いた。

飛龍「さぁ午後の!!ってあり?二人ともまだ食べてた?」

大井「飛龍さん?」

食堂に飛龍さんが駆け込んできたのだ。

北上「え、まさかもう食べたの?」

飛龍「別に私ら消化とか気を使う必要も無いし詰めこみゃ大丈夫よ。それよりほら、時間は有限なんだから!」

思わず大井っちと顔を見合わせる。

スパルタだ。もちろんやる気はあるけれど流石にこれは。

日向「飛龍」

飛龍「ん?あ、日向も一緒にやる?」

やる気スイッチMAXの飛龍を横目に日向さんが懐から本を出す。

いや、本ではない。その本に挟んであった栞を出した。あれは確か鏡の着いている栞だったはずだ。

それを無言で飛龍さんの前に突きだした。
852 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/07(木) 04:42:46.85 ID:BrqyKwfY0
飛龍「ッ!!」

鏡を見て飛龍さんが妙な反応をする。強ばるというか、怯えたような、そんな感じの。

日向「甘い物は乙女の動力源なのだろう?デザートを食べる余裕はあるか?」

飛龍「…勿論」

日向「奢ってやろう」

飛龍「…ごちになります」

そう言うやいなや来た時と同じように駆けて行った。

大井「えっと、今のは一体?」

日向「余裕が無い、ということさ」

北上「?」

やはりさっぱり分からない。古株同士なにか通じていたようだが。

大井「私達もデザートいっちゃいますか」

北上「私お汁粉で」

日向「私は餡蜜で頼む」

大井「何サラッと押し付けてるんですか」
853 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/07(木) 04:47:52.77 ID:BrqyKwfY0
なんやかんやでデザートを取りに行ってくれる大井っち。

飛龍さんと並んでメニューを見ているようだ。

北上「日向s、あれ?」

いない。いや体を屈めているのか?どうやら椅子と床の損傷を確かめているらしい。

やらなきゃ良かったのに…

日向さんに飛龍さん、大井っちと私。この四人で、挑むのか。

まあとりあえずは白玉でも頬張っておきますか。
854 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/07(木) 04:53:23.34 ID:BrqyKwfY0
瑞雲師匠も好きだけど仙人じみた日向も好き

ボスはとりあえず雷巡CIに祈る時代も今は昔。
戦闘に関してはゲームに忠実にすると味気ないしかと言って実際のお船の知識は皆無なので割と無茶苦茶書くと思います。
五月雨ちゃんを見るような暖かい目で見て頂ければ嬉しいですしご指摘があっても嬉しいです。
吹雪ちゃんにはこの後色々やってもらいます。
855 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/07(木) 07:40:21.04 ID:Ld4+G0poo
おっつ
856 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/07(木) 20:13:08.65 ID:HpueXL3bO

戦闘は他に上手いことやってる人の参考に
アレンジすればエエのでは?
最近はバトルものあったか知らぬが
857 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/09(土) 16:55:23.66 ID:01m84aVYO
船の戦いまんまだと1ドットくらいから戦闘始まるし……
アーケード参考にしよう
858 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/09(土) 18:44:32.49 ID:rH40GOM3O
AAでブラウザ版の戦闘を表現しよう
859 : ◆9GJgiqK3MpKd [sagasaga]:2019/03/18(月) 04:34:45.37 ID:NvEJ31sT0
82匹目:香箱






猫の香箱座り。

後ろ足を曲げ腹を地面につけ前足の先を折りたたむように胸元にしまいまるで箱のようにコンパクトに座るその様を指して香箱と呼ぶ。

これを海外だとcat loafと呼ぶ。

loafはパン1斤の意味で、まるで焼きたての四角いパンのように見えるかららしい。

顔を地面につけた姿などはまさに箱だ。今思うと我ながら凄い格好である。

人間で言うならどんな格好だろうか。

二足歩行なので流石に地面に腹をつけてとはいかないが、例えば椅子に座り机に両腕をまるで枕にするかのように組みそこに頭をのせ突っ伏す。

そう、まるで
860 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/18(月) 04:35:19.26 ID:NvEJ31sT0
北上「うわっ!」

咄嗟に防御体制をとる。

直撃かと思ったがどうやら至近弾だったらしい。直ぐに体制を立て直しつつ自分へのダメージを確認する。

北上「ちぇ、防御力はないんだよぉ」

右足の魚雷発射管がダメになっている。爆発がないのは有難いが使えないものは使えない。

飛龍「動ける!?」

北上「はいっ!」

消えた選択肢を惜しんでも意味は無い。まだ敵は残っている。

鎮守府から少し離れた海域。敵はそう強くはないが、それでもいつもと違う戦闘に私は苦戦していた。

私と大井っちと飛龍さん。

三人編成による戦闘に。
861 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/18(月) 04:36:00.90 ID:NvEJ31sT0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

北上「ふへぇ〜」

大井「中々、思っていたより、キツイですね」

飛龍「本番はこんなもんじゃ済まないわよ。制空にも余裕がなくなるからね」

普段の戦艦などに守られながらの安全な戦いと違い自分の身を自分で守る戦い。

先制雷撃の緊張感も半端じゃない。何せ少しでも数を減らさないと手が足りなくなるのだ。

飛龍「どう?キツそうなら引き返す?訓練なんだから無理する意味は無いからね」

北上「私はまだ大丈夫」

これまでの逃げの技術が役に立っているのかそれでも私は小破で済んでいる。

大井「私も大丈夫です」

大井っちは逆に殺られる前に殺れ精神だ。チャンスを見つけて飛かかる様はネズミを追う猫の様だった。
862 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/18(月) 04:36:32.76 ID:NvEJ31sT0
飛龍「おーけーおーけー。次でラストね」

飛龍さんは、汗一つかいてない…分かってはいるけれどレベルが違う。

軽い足取りで進んでいく。

大井「行きましょう北上さん」

北上「うん」

真剣な顔の大井っち。

私はそれが気になっていた。
863 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/18(月) 04:37:20.97 ID:NvEJ31sT0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

リベンジ、と大井っちは言った。

かつて大井っち達は件のレ級に遭遇し逃げられている。

その時の詳しい状況は知らないが、少なくとも大井っちにとってそれはトラウマのようなものらしい。

リベンジ。私の事を差し引いてもそれは大井っちにとってとても重大な意味を持つもののようだ。

一体何が?

大井「北上さん!!」
北上「んなっ!?」

ギリギリのところで砲弾を躱す。

ちぇっ、余裕を持てと言われたがこれじゃあただの余所見でしかない。

しかしどうにも気になってしまう。大井っちの事が、無性に。

なんなんだろうか。初めての感覚だ。

また少し痛みが走る。
864 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/18(月) 04:38:04.07 ID:NvEJ31sT0
艦載機に気を取られた敵駆逐艦に砲弾をぶち込み改めて周囲の状況を確認する。

北上「!!」

魚雷だ。敵軽巡が魚雷を放った。

あの方向は、大井っちだ!

大井っちは重巡の方に集中している。今当たると確実に大損害になる。

大井っちに知らせなきゃ!

北上「ッ!」

でも、そこで詰まった。

あのまま、あのまま魚雷が当たったらどうなるだろうか。

側面から魚雷がぶち当たる。艤装は壊れ魚雷発射管や砲塔の大半がダメになるだろう。

そうなれば攻撃は疎か回避もままならない。そうなればいい的だ。最悪轟沈しかねない。

そんなことになれば

そうなれば

もしそうなったら

北上「…」

なってくれたら?
865 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/18(月) 04:38:43.00 ID:NvEJ31sT0
飛龍「大井!!」

飛龍さんが叫ぶのと艦載機が軽巡を沈めるのは同時だった。

一瞬そちらに気を逸らした大井っちが魚雷に気づく。

間一髪の回避。その隙に私が最後の重巡に魚雷を放つ。

北上「大井っち!大丈夫!?」

大井「はい!なんとか…」

飛龍「ひゃー焦ったぁ。冷や汗かいちゃったよ」

北上「私も…」

私はホッと胸をなでおろした。

飛龍「よしっ。今日は帰りますか」

北上「今日は、ねぇ」

大井「明日もあるんですね…」

飛龍「さぁさぁ帰ってご飯だよ、ご は ん」

北大「「はぁ…」」

空は少し赤みがかってきていた。
866 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/03/18(月) 04:39:24.34 ID:NvEJ31sT0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

北上「…」

夜、食堂。

午前午後のスパルタ訓練による疲れで逆に寝れなくなったので自販機で甘い物でも買おうかとやってきたのだが、

飛龍さんがいた。

窓際の、月明かりが差し込む暗くて明るい机に突っ伏していた。

まさに香箱。周りにあるのはお酒かな?酔って寝てしまったようだ。

でもなんでこんな所で?しかも一人で。
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