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北上「我々は猫である」

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641 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/12/11(火) 04:40:00.29 ID:svORIega0
夕張「エr、薄い本でよくへそとかで感じてるのあるじゃん」

北上「そんな知ってて当然みたいな前提で話を振られても困るんだけど」

明石「アレってほんとに感じるのかなあって思って」

北上「そんなところで研究者魂見せないで」

夕張「物は試しと」

明石「感覚を鋭くするために目隠しを」

北上「あれ?ギャグボール要らなくない?」

夕明「「気持ちが入るかなぁって」」

北上「あぁ、そう…」
642 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/12/11(火) 04:40:34.17 ID:svORIega0
北上「そもそもなんでおへそなのさ」

夕張「胸はなんか1人だと虚しくなるし、二人だと凄く気まずい空気になる」

北上「え、実践済み?実践済み!?」

明石「下はクセになるのでこれ以上はヤバいってなった」

北上「何してたのホントにさ!?」

夕張「オモチャは作り放題なので」

北上「弄るのは身体じゃなくて兵装だけにしてよ…」

明石「ほら!私達も兵器みたいなものだし」

北上「だとしたら欠陥にも程がある…」
643 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/12/11(火) 04:41:13.13 ID:svORIega0
夕張「不思議な事にオn、自慰とかそういう事にのめり込んでる娘っていないのよね」

北上「不思議な事なのそれ」

明石「皆が普通の人間だとしてもヤってる人はヤってるもんでしょ?」

北上「知らないよ…」

夕張「ましてここは戦場。ストレスマッハのブラック職場なのにその捌け口としてオナニーや慰めックスレズックスに走るものがいないのは異常よ」

北上「さっきから頑張ってオブラートに包んでたのに一気にアウトなワードぶち込んできたね」

明石「男は提督1人なんだし同性愛者がワラワラ出てきてもおかしくないのに」

北上「そんな発想がワラワラ出てくる方がおかしいんだよ」
644 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/12/11(火) 04:41:44.89 ID:svORIega0
夕張「その提督だってヘタレパツキン(笑)だから手を出したりはしてないし。逆レされてる可能性は否定しないけど」

北上「そこははっきりと否定してくれると嬉しい」

明石「私達も別にストレスとかでこんなことしてるわけじゃないものね」

夕張「そうそう。あくまで知的好奇心」

北上「でもクセになりかけたんでしょ」

明石「そう、そこなのよ」

北上「え」

夕張「当たり前だけど私達も普通の人間みたいに快楽というか、そういうのは感じるのよ」

明石「例えばほら」ムニッ

夕張「アッ//」



夕張「」スッ
明石「ゴメン、マジごめん。だから白熱電球はやめてマジやばい」

北上(何故白熱電球…)
645 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/12/11(火) 04:42:19.36 ID:svORIega0
夕張「私はここの、ほら。胸の下あたりが弱い。あと脇」ヌギ

北上「見せんでええわ」

明石「私は「明石のはちょっと刺激が強いからNG」えー」

北上「なんかすっごい気になるけど聞かないことにする」

夕張「まあそんなわけで私達にも性感帯はある」

明石「にも関わらずそれに溺れたりする者がいないのよ」

夕張「生物の三大欲求にも挙げられる性欲だけど何故か私達はそれが薄い。食欲睡眠欲は人並みにあるのに」

明石「慰安は様々な戦場で問題になるくらい切り離せない問題なのに何故か。私達が女だからか」

北上「前半のアレがなければ真面目な話に聞こえるのに…」
646 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/12/11(火) 04:42:57.55 ID:svORIega0
夕張「まず基本的に私達は子孫を残せない。生殖能力がないから」

明石「ゴムなしヤリ放題よ」

北上「サイテーだよ台無しだよ」

夕張「でもそうなると余計に快楽だけを目的にしてしまうと思うの」

北上「そこはまあ確かに」

明石「つまり艦娘にないのは生殖能力というより生物としての基本的な意識。能力ではなく遺伝子を残さなきゃという意識」

夕張「ヒトの形をしてはいるけれど生き物としてある意味もっとも根本的な意識が欠落していると思うのよ」

北上「んーどうなんだろ。普通の人間の意識って私達にはわかりようがないからなんとも言えないや」

夕張「一般人と触れ合う機会もないものねー」

明石「あー聞きたい弄りたいー」

夕張「JKをハイエースでダンケダンケしたい」

明石「怪しい薬とか触手とか試してみたい」

北上「二人にないのは常識だよ」
647 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/12/11(火) 04:43:48.27 ID:svORIega0
夕張「お腹はすくから食欲はある。眠くなるから睡眠欲はある」ゴソゴソ

明石「でも何も食べてなくても燃料と弾薬があれば戦える。不眠不休でもそれで死ぬ事は無い」ヌギヌギ

夕張「人間らしさはあるけれど生き物とはおおよそ考えられない」ギシギシ

明石「血は流れてるけれどそれはあくまで身体を維持する機能で、親から子へと受け継がれる遺伝的な血ではない」ゴロン

夕張「血は水よりも濃いというなら私達の場合血は海水よりは薄いってとこでしょうね」チャキ

北上「真面目に語っているところ悪いんだけどなんで明石は服脱いで横になってて夕張は筆と目隠しの用意をしているの」

明石「次私の番だから」

夕張「さっきは私がやられたので」

明石「お互い平等にと」

夕張「被験体は多ければ多いほどいいものね」

北上「なんでそういうとこだけ良識あるのさ」
648 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/12/11(火) 04:44:27.10 ID:svORIega0
夕張「北上もどう?気持ちいいよ」ナデナデ
明石「んーそこは微妙」

北上「興味が無いと言ったら嘘になるけど本能が全力で拒否してる」

夕張「そういえば大井はどうなの?」コショコショ
明石「ちょ、そこ鼻は、ハックション!!」

北上「んー。そういう事はしてこないなぁ。単純に姉妹として私の事が好きってことなんじゃない?」

夕張「ちぇーつまらないのー」コチョコチョ
明石「アハハハだめぇ脇は弱アヒヒヒィッ」

北上「私はほっとしたけどね」

夕張「そういえば大井の機嫌は治ったの?なんか調子悪かったって」ギュッ
明石「え、何結んでるの?」

北上「治ったよ。提督と無事ゴールインできたからじゃないかな」

夕張「え!?結ばれた!?」ガタッ
明石「わっ!びっくりした…目隠しって結構怖いわね」
649 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/12/11(火) 04:44:56.00 ID:svORIega0
夕張「ちょっとちょっと〜その話詳しく聞かせなさいよ〜」
明石「あれ?夕張〜?」

北上「いや私も詳しくは知らないよ?」

夕張「よーし調査よ!ありとあらゆる手を尽くして暴いて洗ってさらけ出してやるのよ!」
明石「ちょ、どこ行くの?ねぇこれ私縛られてない!?手が動かないんだけど!」

北上「さらけ出すのはともかく私も気にはなってたんだよねえ」

夕張「そうと決まれば早速、善は急げ!」
明石「怒ってる?やっぱさっきの怒ってる?」

北上「え、明石は?」

夕張「ほっとこう」
明石「怒ってたぁぁ!!思った以上に怒ってたあぁぁ!ゴメンて!謝ったじゃん!仕返しにしてもこれはやりすぎよ!」
650 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/12/11(火) 04:45:26.44 ID:svORIega0
ホントに明石を置き去りにしたぞこのお中元。

夕張「よし」カタン

北上「別に作業中って札を下げればいいというものでは無いと思うんだ」

夕張「マジにヤバかったら艦娘パゥワァーでなんとかなるでしょ多分」

北上「…で調査って一体なにするの」

夕張「とりあえず提督室に盗聴器をね」

北上「当たり前のようにそういう発想が出てきて尚且つ当然のように盗聴器持ってるってのが…」

夕張「探偵七つ道具のひとつだもん!」

北上「残りは」

夕張「嘘発見器」

北上「推理する気ねえ」
651 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/12/11(火) 04:45:55.93 ID:svORIega0
なんの躊躇もなく提督室へ向かう。

夕張「前々から盗聴器は仕掛けたいなって思ってたのよ」

北上「えぇ何故に」

夕張「提督の弱み握って手篭めに」

北上「男女逆じゃんか」

夕張「ジョーダンジョーd」バコン
北上「うわっ!?」

突如横の部屋の扉が思い切り開き夕張の顔面にぶち当たる。

もし私が廊下のそっち側を歩いていたと考えるとゾッとする。
652 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/12/11(火) 04:46:43.10 ID:svORIega0
北上「ってあれ、吹雪?」

吹雪「きーきーまーしーたーよー夕〜張さん」

夕張「顔は、顔はアカンて吹雪ちゃん…」

吹雪「はいはい今治療してあげますからね〜お話はそこでじっくり」

夕張「違うの!ちゃうねん!これには吹雪ちゃんの胸の谷間くらい深い理由が!」

吹雪「海抜ゼロメートルじゃないですか!!」

夕張「自分でそこまで言わなくても…」

北上「何故流れるように煽るのか」
653 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/12/11(火) 04:47:09.41 ID:svORIega0
吹雪「はーいとりあえず工廠行きましょうね〜」

夕張「ちょ!なんで?なんで工廠!?」

吹雪「どーせ碌でもない事してたんでしょう」

夕張「してない!断じてしてない!」

吹雪「してたんですね」

北上「してたね」

夕張「北上ぃぃぃ!!」

北上「アレに関しては私無関係だし…」

吹雪「言い訳は海の底で聞きます」

夕張「ヒィッ!?」
654 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/12/11(火) 04:47:53.64 ID:svORIega0
夕張が連れ去られていく。

北上「もしかしてマゾなのでは」

割と有り得そうな仮説だ。

北上「そういやこの部屋ってなんだ?」

吹雪が出てきた部屋を見る。

印刷室。と書いてある。

最近印刷機は使わないからと例の倉庫に置かれていたはずだが。

中を見ると何故か部屋はがらんとしていた。

机が壁際にあるだけ。壁や床、机の上の跡から察するに印刷系の機材は捨てた後という事だろう。

つまり元印刷室か。

そんな中奥に一つだけ機材が置いてあった。

北上「確かー、シュレッダーか」

印刷室時代の唯一の生き残りか。

印刷機達の後処理としてまだ使われているらしい。それもいずれ、廃棄されるのだろうけれど。

いずれ役目は終わる。

なんだか親近感が湧く。
655 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/12/11(火) 04:48:30.67 ID:svORIega0
北上「てこれ途中じゃん」

シュレッダーの電源は入れっぱなしだし横には処分予定の書類が置いてあった。

まだ文庫本くらいの太さの量が残っている。

好奇心のままに書類を手に取ってみる。

内容は、海域の何やら難しい情報。

深度とか海流、温度に風。頭痛くなりそう。

北上「あまり読む価値はなさそうかな」

パラパラと流し読みに変える。

すると急に沢山の画像が目に入ってきた。

それは船だった。私達ではなく船としての船。

そしてその画像には見覚えがあった。

船ではなく、その傷、損傷に、弾痕に。
656 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/12/11(火) 04:48:59.92 ID:svORIega0
日付は10年も前のだ。

ページをめくるとその被害などが細かく書かれていた。

同じような事件は他にも何件もあるようで、残りのページは全てそれらに関するものだった。

いや、既にシュレッダーにかけられた分も考えれば更にか。

まだ無事な書類の1番最後のページをめくる。

これ以降は既にシュレッダーに喰われている。故にこの事件についての情報量は少ない。

画像はなく僅かな文字だけが書いてあった。

日付は1年前の夏。

大型の船が沈み多くの被害が出たそうだ。
657 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/12/11(火) 04:49:45.39 ID:svORIega0
一字一句しっかり読み進めていく。

それはこの前私達が関わったあの海外船の事件と似ていた。

船から連絡が途絶え護衛艦隊は全滅。生存者のいない船だけが残った。

違ったのは、駆け付けた救援の艦隊がそこにいた深海棲艦と戦闘をし、追い払っている事。

最後の数行で目がとまる。

北上「やばっ」

この時その音を聞き逃さなかったのは実に運が良かったとしか言いようがない。

廊下から聞こえた音が吹雪達である確証はないけれど可能性がある以上ここにいるのはまずい。

これが見られていいものとはとても思えない。

しかしどうしようか。廊下に出れば確実に見つかる。

しかしここには廊下に繋がるドアと窓しか…
658 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/12/11(火) 04:50:20.56 ID:svORIega0
吹雪「はぁ…」

窓越しに深い溜息が聞こえた。

暫くしてシュレッダーが紙を食べる音がする。

どうやら気づかれてはいないようだ。

窓がちゃんと開くタイプでそれなりの大きさであることも、ここが一階だった事も実に運がいい。

猫の体だったら小さな窓でも部屋が二階でもなんとかなったろうに。

いや高さはこの身体ならなんとかなるか。

窓から見えないように姿勢を低くしながらその場を離れる。

頭の中では二つの単語がずっと反復していた。

最後の数行。

作戦に参加したという艦隊の中にあった大井っちの名前と、初めて聞く深海棲艦の分類名。

レ級という単語が。
659 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/12/11(火) 04:52:16.53 ID:svORIega0
ラスボス!君に決めた!

誰にするか迷いましたが最近サラトガ任務でトラウマを植え付けられたのでコイツにしました。ダブルはだめですよダブルは…
660 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/11(火) 08:51:27.61 ID:Q7knn3UlO
おつ!
661 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/11(火) 10:43:38.79 ID:+fZBhT8N0
ラストは警戒陣で待ち受ける7人のレ級ですねわかります
662 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/11(火) 13:10:36.30 ID:YE0v4dUZo
おつかーレ
663 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/12(水) 21:49:23.55 ID:AZpYUdUcO
吹雪ちゃん意外とおっぱい有るぞ
アニメだけど……
664 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:13:41.01 ID:ul40+rcH0
アニメ盛りなんてお父さん認めません!

謹賀瑞雲
遅くなって申し訳ない
年末年始って何やかんやで忙しいのはどうしてなんでしょう、新年ボイスを聞きたいだけだというのに
まだ続くので今年もお付き合いくださいませ
665 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:14:21.21 ID:ul40+rcH0
72匹目:猫と天敵







天敵。

それは絶対に関わりたくない危険な相手。

見た瞬間脳が危険信号を発し全身が逃げの体制をとる。

本能的にヤバいと察するもの。

すなわち


666 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:14:55.86 ID:ul40+rcH0
阿武隈「あ、北上さん!」

北上「げっ」

と思わず声が漏れたのは廊下の角から阿武隈が見えたからではない。

阿武隈が私の天敵を連れて歩いてきたからだ。

それも、大量に。

暁「あ、ホントだ」

江風「おっしゃ捕まえろー!」

響「ypaaaaa!」

神風「うらーー!」

浦風「浦ーー!」

北上「なんでっ!?」ダッ

踵を返し全速力で元来た道を戻る。
667 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:15:43.48 ID:ul40+rcH0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

北上「って、まあ捕まるんですけどね」

浦風「息切れるの早すぎやない?」

北上「私ゃもう歳だよ」

江風「何言ってンすか。身体はバリバリのJKッスよ。いやJCかな?」

神風「じゃあ私達は小学生かしら?」

響「一名小学生とはかけ離れた駆逐艦がいるけどね」

江風「そもそも小学生ってどれくらいの大きさなンだろ」

浦風「見た事ないけん、イマイチピンとこんねえ」

暁「ねえねえ、じぇーけーとかじぇーしーって何?」

北上「ピチピチのレディーって意味だよー」

響「暁もいずれJC、JKとレディーの階段を登っていくんだよ」

暁「れでぃー!!」

阿武隈「ちょとぉ!変なこと吹き込まないでくださいッ!!」
668 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:16:26.14 ID:ul40+rcH0
全速力で逃げた、のではなく風がヒヤリと冷たくなってきたこの時期一番暖かい場所に移動したというのが正しい。

鎮守府の一角にある休憩室と呼ばれる場所。

日当たりがよくまだ解禁されてはいないがストーブまである素晴らしいところだ。畳なのも実にGood。

北上「皆は遠征帰り?」

江風「そーそー。この後もまたお使い」

浦風「段々海は寒くなってきとるし、そろそろ防寒具出さんとなぁ」

神風「浦風さん、この中だと一番寒そうよね」

暁「袖がないものね。幾ら私達が寒さに強いと言っても限度があるわ」

響「私は既に完全防寒だよ」

暁「いいわよねぇ響のこのモコモコ」

阿武隈「江風は改装で少し厚着になったのよね」

江風「おうよ!首元の白いのも川内さン見たいでカックイィっしょ!」

北上「あーね」
阿武隈「あの夜戦バカね…」
神風「あの人かぁ」
浦風「まあ見た目は…」
暁「五月蝿そう…」
響「ハラショー」

江風「おっと反応が鈍い…」
669 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:17:06.28 ID:ul40+rcH0
北上「川内ってアレでよく旗艦とか務まるよね」

前々から疑問ではあったことだ。

江風「いやいや、確かにちょっと騒がしいけど」

響「ちょっと?」

江風「…かなり騒がしいけど、水雷戦隊の旗艦なら確かにあの人だぜ」

浦風「海に出とる時は間違いなく川内型の一番艦じゃけんね」

北上「およ、意外と評価が高い」

阿武隈「あーそっか。北上さんは組んだ事ないですもんね」

暁「私もないわね。那珂ちゃんとなら訓練とかで一緒になった事はあるけど」

江風「うわぁあの人の訓練かぁ」

神風「どうだった?」

暁「あまり思い出したくないわ…」
670 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:18:30.44 ID:ul40+rcH0
北上「色々あるんだねえ」

一応軽巡という区分けに入れられてはいるが私達雷巡はあまり駆逐艦や軽巡との関わりはない。

というか駆逐、軽巡による水雷戦隊組の繋がりが濃すぎるという感じだ。

阿武隈「機会があったら一緒に訓練してみるといいですよ。あんなのでも技術は一流ですから、あんなのでも」

2回言った。何か恨みでもあるのだろうから。

江風「凄いンだぜ!この前なンかル級相手にさ」
浦風「あー江風がヘマして取り残された時の話やね」
江風「違っ!わないけど違う!」

神風「夕立ちゃんが、敵見たらすぐ突っ込んでくっぽい!神通さんっぽい!って呆れてたわよ」

暁「わー似てる似てる!」

阿武隈「この前神通さんと那珂ちゃんが編成変えるかどうかって話してたのそれなのかな」

江風「みんな知ってるンかい!」

北上「流石に水雷組は噂の広まりが早いね」

響「魚雷より早く伝わるからね」

江風「だってよぉ、私だってもっと活躍活躍してぇンだよぉ」

暁「もう!敵を倒すだけが活躍じゃないのよ」

北上「ぐう正論」
神風「流石れでぃ」
阿武隈「イヨっ!ネームシップ」
響「自慢の姉だね」
671 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:19:16.08 ID:ul40+rcH0
江風「うわーんアイツらがいじめるよママー」

浦風「誰がママじゃ、はいはいよしよし」

北上「身長ほぼ同じなのにああやって抱き着かれる様は母性を感じさせる不思議」

暁「私達にはぼせい?が足りないのかしら」

神風「母性…」

阿武隈「母性…」

北上「母性かぁ…」

お互いに胸を見比べ合う。

北上「なるほど足りないね」

阿武隈「うぅ…いつか、いつかはきっと…」

神風「旗風はあんなにあるのに…」

響「暁はそのままでも大丈夫だよ。需要はある」

暁「え、なんのこと?」

浦風「ちょっと!流石にくっつきすぎじゃ!」
江風「えぇーいーじゃンか減るもンでなし」
672 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:19:55.17 ID:ul40+rcH0
北上「そういえばさ、さっきのル級で思い出したんだけど」

江風「まだなンかあるンすか!?」

北上「いやそうじゃなくてね。皆レ級って聞いたことある?」

阿武隈「レ級?」

暁「えっと、アイウエ」
響「イロハだよ」

浦風「イロハニは駆逐やよね」

阿武隈「ホ、ホ?」

江風「あの対潜ヤローだな」

北上「あーどこが口だがわかんない奴か」

神風「ヘトが軽巡でリが雷巡」

浦風「チが雷巡やなかった?リは重巡で」

暁「ヌオは空母ね!ルは戦艦で、ワなんていたっけ?」

北上「輸送船だね。よく相手するから覚えてる」
673 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:20:27.30 ID:ul40+rcH0
江風「カ、カー。カ?」

浦風「全然思い出せんね」

神風「タは戦艦よね。後はー」

阿武隈「ナ!あの凄ーくかったい駆逐!」

江風「あー!あれな、ズリぃよな絶対」

北上「ツは言わずもがな」

響「アイツも妙に硬いよね」

神風「空母の皆さんが呪詛を吐くやつですものね」

暁「あっ!潜水艦がいない」

浦風「となると抜けとるとこは潜水艦やね」

神風「潜水艦は相手にする事は多くても姿が見えないから子細がよく分からないのよね」

暁「カヨとレソ、とネが潜水艦?」

北上「そんなにいたっけ?」
674 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:21:01.69 ID:ul40+rcH0
阿武隈「普段合わない相手は覚えてないものですね」

北上「だねー。結局レ級は謎か」

神風「鎮守府の資料か海軍のデータバンク覗けば一発ですよ」

暁「スマホで見れたっけ?」

浦風「スマホだと漏洩が怖いから提督のPCやないと無理じゃって吹雪が言っとったよ」

響「資料じゃ古いかもしれないし提督に聞くのが一番だね」

北上「うわーなんか皆が難しい話してる」

江風「まだスマホ慣れてないンすか」

北上「最近ようやく持ち歩く事を覚えたよ」

神風「そこからですか…」

阿武隈「今は?」

北上「部屋に忘れた」
675 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:21:38.91 ID:ul40+rcH0
江風「でもなンで急にその、レ級ってやつを?」

北上「いやあ居るのかなーって。ラ級とかはいないの?」

浦風「今のところナ級が最後じゃね」

神風「ラ行はなんか可愛く聞こえますよね」

暁「ラ級の次なんてム級よむきゅー」

響「ゆるキャラみたいに聞こえるね」

江風「それでいて戦艦だったりしてな」

北上「戦艦ムキューか」

阿武隈「でも最近新種の深海棲艦が見つかったって噂が」

神風「そうなんですか?」

響「浮き輪がどうこうって噂だよ」

浦風「浮き輪?」

北上「なんじゃそりゃ」
676 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:22:15.06 ID:ul40+rcH0
江風「お、そろそろ時間かな」

阿武隈「それじゃあ私達はここら辺で」

北上「大変だねぇお使いは」

神風「明日は休暇なので頑張りどころです」

江風「また面白い話聞かせて欲しいっス!」

北上「気が向いたらね」

響「じゃあ雷達も呼んでこよう」

暁「いいわねそれ!」

浦風「ウチも浜風達に声掛けてみようかね」

北上「え」

阿武隈「それでは出ぱーつ!」

北上「あちょっと!」
677 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:23:02.99 ID:ul40+rcH0
行っちゃったよ。

油断した。駆逐艦は1人来たら4倍に増えると思わなくちゃいけない。

まったくこれだから

北上「駆逐艦、ウザイ」

さてどんな話をしてやれば満足するか考えなくては、

北上「って違う違う」

レ級の件だ。資料と言っていたが恐らくそっちは今頃ゴミ箱だろう。

となると提督のPCだがそちらは提督や吹雪に気づかれる。

どうしたもんか。

北上「こうなるとあの二人に頼るしかないか」

実に気が進まないが。
678 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:23:36.89 ID:ul40+rcH0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

夕張「こう?」

明石「もっと最初はガッチリ腕を組んで。直角、九十度で」

夕張「こう?」

明石「それ!それそれ!そのままスーッとシャツを脱ぐ、南半球と脇を同時に見せる感じで」

夕張「来た!ここまで来た!最後は?」

明石「後は脱ぐだけ」

夕張「…ん?待ってこれ脱ぎにくい。あ、引っかかった。ポニテに引っかかった」

明石「もぉーなにやってんのよサッと脱いでサッと」

夕張「だってこれ後ろ髪引っ張られてイタタタタ無理やり引っ張るな抜ける抜ける!!!」




北上「…」

こいつらはアレか?私が来るのを見計らってこんなことしているのだろうか?

それとも四六時中こんなことしかしていないのだろうか?

後者だとは思いたくないのだが。
679 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:24:13.78 ID:ul40+rcH0
夕張「提督のPCをバレずに覗く?」

北上「正確には軍のデータバンクとかなんとかってやつ」

明石「一体何を覗き見する気なのよ」

北上「それは秘密」

夕張「んーでもせっかく頼ってくれたとこ悪いけどそれはきついかなあ」

北上「マジで」

明石「提督のPCだけならまあって感じだけど流石にそっちはね」

北上「そんなに?」

夕張「そんなに。詳しく説明する?」

北上「いやぁ理解出来る気がしないからいや」

明石「なら代わりにさっき私達がやっていたことを説明するわね」

北上「いいです」

夕張「今回の議題は1番エロい服の脱ぎ方についてでね」

北上「いいと言っとろうに」
680 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:24:46.30 ID:ul40+rcH0
北上「提督のPCなら見れるの?」

夕張「ザルだからね」

明石「でも個人的な要件ではPCを使ってないみたいで面白いものはなかったのよねえ」

北上「当然のように覗いてやがるぜ」

夕張「提督意外とアナログなのよ」

明石「写真は現物でとってるあるしね」

北上「そっかあ」

夕張「…」

明石「…」

北上「え、なに、どしたの二人とも」

夕張「いや、なんか、ね」

明石「思ってたより残念そうというか」

北上「んーまあ残念と言えば、残念かな」
681 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:25:33.47 ID:ul40+rcH0
夕張「ほほぉう」

明石「提督の事を知れなくて」ニヤ

夕張「ガッカリしちゃった?」ニヤ

北上「う、うん。そんな感じ…?」

何ニヤついてんだこの人達。

って違う違う。私が知りたいのはレ級とかいう野郎についてだ。

夕張「いやぁまいりましたなぁ」ニヤニヤ

明石「いやはや全くですなぁ」ニヤニヤ

北上「…」

なんだろうすごくイラッとくる。
682 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:26:04.75 ID:ul40+rcH0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

木曾「結局捜し物とやらは見つからなかったのか?」

北上「まあねー。工廠組はなんかニヤついてばっかでよくわかんないし」

雷「あーそこそこ!そこで右よ!」

北上「え、こっち?」

電「それじゃ逆そうなのです!」

北上「こ、こう?」グイーン
雷「体!体だけ曲がってる!」
電「はわわわわ!」

木曾「…それは何をやってるんだ?」

雷「あちゃー壊れちゃった」

北上「レースゲーム。私こういうの苦手なんだよねぇ」
683 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:26:42.19 ID:ul40+rcH0
工廠からの帰りに私は六駆の部屋に連れ込まれた。暁と響は遠征中だ。

今は雷を膝に、電が私の背中におんぶするような形でもたれかかっている。

レースゲームは苦手だがそうでなくてもこの体制ではやりづらくてしょうがない。

秋雲「やほー、響いるー?ってありゃ。珍しい組み合わせだねえ」

北上「響はお使い中だよー」

雷「リトライよリトライ!」

電「次こそなのです!」

北上「なんで私にそこまでやらせたがるのさ」

雷電「「見てて面白いから(なのです」」

北上「サラッと怖いこと言うね」

秋雲「木曾さんは?」

木曾「廊下を歩いてたら意外な所から姉の声がしてな」

秋雲「なるほどなるほど」サラサラ

木曾「何書いてるんだ?」

秋雲「ほら、あの三人。すごく絵になると思いません?」

木曾「…なるほど」
684 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:27:10.75 ID:ul40+rcH0
北上「さてそろそろ行こうかね」

雷「えーもう行っちゃうの〜」

北上「1回1位取れたんだしいーじゃんか」

電「あ、阿武隈さん達もうすぐ帰ってくるみたいなのです」

雷「ホントだ、メッセージ来てる」

北上「ならちょうどいいや」

木曾「俺も行くかね」

北上「まだ居たのかね木曾くん」

木曾「姉のハンドル捌きが中々に面白くてついな」

北上「にゃろう」

秋雲「あそーだ、北上サン。今度また同人誌制作手伝ってよ。そろそろ描き始めないとなんだよねぇ」

北上「はいはい。報酬は弾んでよ」

木曾「上姉絵描けるのか?」

秋雲「チッチッチッ。絵を描くだけが漫画じゃあないんですよ。何せセリフもあるんですから」

木曾「あぁ言われてみれば」

北上「別にただの読書好きってだけなんだけどねぇ」
685 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:27:48.59 ID:ul40+rcH0
木曾「こういう事ってよくあるのか?」

北上「こういうとは?」

木曾「さっきみたいに一緒にゲームしたりとかだよ」

北上「そうだねー。鎮守府うろついてると良く絡まれるかな。ちょっと移動するだけでもだよ、うざいよねー」

木曾「ほぉ」

暁「あ、北上さーん!」

北上「ヤホー。お使い帰りか」

響「そうだよ」グイグイ

北上「待て待てさりげなく引っ張るな」

響「夕飯までゲームタイムだ」グイグイ

暁「いいわねそれ」

北上「いまさっきしてきたとこだよ。あ、そういや秋雲が響の事探してたよ」

響「秋雲が?なんだろう」

北上「それは聞いてない」

暁「なら早く部屋に戻りましょ」

響「そうだね。じゃあまた」

暁「またねー」

北上「はいはい」

木曾「…うざいか?」

北上「うざいねー」
686 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:28:26.85 ID:ul40+rcH0
黒潮「北上は〜ん」

北上「おズッコケ三人組」

陽炎「誰がズッコケよ」

北上「訓練上がり?」

不知火「はい。先程まで神通さんと」

北上「うわおっかねえ」

黒潮「なあなあ。これからウチらのとここおへん?」

北上「ポーカーなら付き合うよ」

不知火「残念ながら今回はチンチロリンです」

陽炎「ポーカーは北上さんが強すぎるからダメー」

北上「えーじゃあパス」

黒潮「ありゃ、ふられてもうた」

不知火「木曾さんはどうですか?」

木曾「いや、俺もパスかな」

不知火「ふられてしまいました」

陽炎「あんたまでやるのそれ。ほら早く戻るわよ」

黒潮「ほなまた」
不知火「失礼します」

木曾「いつもこんな感じなのか?」

北上「そだね〜」
687 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:29:00.31 ID:ul40+rcH0
北上「ただいま我が家ー」ガチャ

木曾「ん?神風?」

神風「北上さん木曾さんおかえりなさーい」

北上「私らの部屋でなにしてんの?」

神風「ほら、この前借りた本を返しにと」

北上「それだけ?」

神風「ついでに他にもなにか借りようかと」

北上「棚の一番下はまだ読んでないゾーンだからダメー」

神風「リョーカイです」

木曾「…なあ神風、一つ質問いいか?」

神風「?なんでしょう」
688 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:29:27.46 ID:ul40+rcH0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

神風「北上さんが駆逐艦に人気の理由ですか」

北上「確かになんかやけに絡まれるんだよねぇ」

木曾「本人がこの調子だからよく一緒にいる神風に聞こうかと思ってな」

北上「こんな調子ってどういう意味さ」

神風「あー」

北上「あれ、なんか伝わっちゃってる?」

神風「距離感、じゃないですかね」

木曾「ほう」

北上「距離感?」
689 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:29:57.59 ID:ul40+rcH0
神風「来るものは拒まず去る者は追わずって感じのです」

木曾「それはわかるな」

北上「わかるんだ」

私はわからん。

神風「北上さん、私達がベタベタくっついても拒まないでしょ?」

北上「ウザイけどね」

神風「でも拒まないでしょ?」

北上「うっ」

私をまっすぐ見つめる目に思わず怯む。

木曾「確かにそうらしいな」クツクツ

北上「笑うなこら」
690 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:30:32.08 ID:ul40+rcH0
神風「それでいて北上さんから絡んでくることはない。なんて言うか、遠慮とかがいらないというか、仲がいいとは違う遠慮のなさがあるんです」

木曾「上姉は基本的に誰に対しても同じ接し方をするからな」

北上「それはまあそうかも」

神風「あとあと、拒みはしないけれどいつの間にかサッとどこかへ行っちゃったり」

木曾「さっきもまさにそんな感じだったな」

北上「長居したってしょうがないしさ」

神風「まさに猫って感じなんです。猫女子ですね」

なんだ猫女子って。

木曾「なるほどな」

こいつまさか適当に頷いてるだけじゃあるまいな。
691 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:31:18.52 ID:ul40+rcH0
バタン!

神風「ひゃあっ!?」
木曾「おわっ!!」
北上「お?」

突如扉が開かれる。なんでみんな静かに出入りできないんだ。

大井「神風!!」ツカツカ

神風「お、大井さん!?」グワシッ

大井っちが神風の両手を掴む。なんだ何をする気だ。

大井「よく分かってるじゃない!」

神風「へ?」

大井「そうよ!そこが北上さんのいいところなのよ!昔から!誰にでも懐くようで誰にも靡かない!まさに猫!でしょ!!」
神風「は、はい!」

木曾「はぁ…」

大井っちに掴まれたまま気圧される神風と手を額にあて俯き深い溜息をつく木曾。

よし。

北上「私ちょっと図書室行ってくる」

神風「あズルい!ズルいですよ!!」

北上「ほら私猫だから」

木曾「俺もちょっと用事が」

神風「あーー!!!」
692 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:32:30.26 ID:ul40+rcH0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

北上「神風の悲鳴ってなんか可愛いよね」

木曾「上姉はそういうとこもっと自重した方がいいぞ」

北上「そういうとこ?」

木曾「加虐的なとこ」

北上「猫だからね」

木曾「免罪符にするなよ」

北上「木曾だって見捨ててたくせに」

木曾「身を守っただけだ」

北上「はいはい。それでどこ行くの?」

木曾「少なくとも図書室以外かな」

北上「それじゃまた後で」

木曾「おう」

木曾と別れる。

さてと誰かに見つかる前に移動しなくては。
693 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:35:49.62 ID:ul40+rcH0
吹雪「おやおや」

北上「げっ」

まるで幽霊のようにヌルりと現れた。

吹雪「げってなんですかげって。職場の廊下で出くわした上司に向かってげって」

北上「上司だからだよ」

吹雪「ふふん、そうですよ偉いんですよ。敬ってもいいんですよ」

思わず鼻あたりをつまみたくなるようなドヤ顔をする秘書艦殿。

北上「敬うより謝る事の方が多いからなあ」

吹雪「それは自分の責任です」

こういうとこはハッキリ言ってくるよねこの娘。

北上「それで、なにかよう?」

吹雪「捜し物について」

北上「はい?」

吹雪「どの道無理ですよ。ああいうのって観覧権限みたいなのがあるんで、提督じゃ無理です」

北上「なんのこと」

吹雪「何ってレ級の話ですよ」
694 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:36:27.53 ID:ul40+rcH0
ああ、ほら。そうやっていつもの子供らしい笑顔をすっと引っこめる。

北上「だから げってなるんだよね」

天敵と言うなら、まさに今目の前にいるこの吹雪がそうだ。

吹雪「駆逐艦達の噂は砲弾よりも早いですから。迂闊に漏らすもんじゃあないですよ」

北上「なるほど」

吹雪「強力な深海棲艦については関わっていい人間とそうでない人間がいるんです。ウチの提督はまだまだ新米ですからね」

北上「でもそういう情報って隠してていいものなの?運悪く邂逅する可能性はあるじゃん」

吹雪「そこまで運のないやつはどの道死ぬって話ですよ。力の差ってのは下からじゃよく分からないものですから、武勲を上げたくて身の丈に合わないことしようって輩を出せないためにです」

北上「本当にそれで効果はあるの?」

吹雪「例えば北上さん、敵主力がいる座標だけ渡されてそこにたどりつけますか?勝てると思いますか?敵の編成も艦種も装備も不明で道中の海路や深度や波風、それらの情報一切抜きで」

北上「…」

吹雪「海を進むって本当に難しい事なんですよ。僅かな事で私達は簡単に沈みます。深海棲艦はその要因のひとつに過ぎません。馬鹿な輩でもそこら辺は心得てるもんなんです」

北上「そっか」

吹雪「そうです」
695 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:36:55.45 ID:ul40+rcH0
吹雪「それでは」

あっさりと踵を返し立ち去ろうとする。

北上「それだけ?」

吹雪「それだけですけど?」

北上「そっか」

吹雪「そうです」


北上「私がレ級を知ってる事に対して何も言わないんだ」


吹雪「…」
696 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:37:28.94 ID:ul40+rcH0
だってそうじゃないか。それを聞かないと言うなら、それはつまり、

吹雪「北上さん。もしどうしても開けて欲しくないパンドラの箱があったらどうします?鍵をかけます?コンクリートで固めます?ドラム缶にでも詰めて海に流します?」

私はこの時引かないと決めていた。

吹雪「まあそれもいい手ですけど、例えばその箱を特定の誰かにどうしても開けて欲しくない場合はどうします?」

目の前の天敵相手に、引かないと。

吹雪「開けるなって言うと気になるものですからね。忘れようとしても気になるものです」

北上「私みたいなのは特に、ね」

吹雪「だから私は、あえて箱の中身を見せるんです」

北上「見せる?」

吹雪「そう。それがどういうものなのか。あなたが今開けようとしているものはこういうものだと教えるんです。そして聞くんです。あなたはそれでもこれを開けますか、と」

北上「私は今、そう問われているの?」

吹雪「いえいえ、まだですよそれは」
697 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:38:34.53 ID:ul40+rcH0
触れてほしくないからあえて触れさせる。

確かに理屈としては間違っていない。

北上「それを開けたらどうなる?」

吹雪「さあどうでしょう。開け方にもよりますから」

北上「開け方…」

吹雪「それでは」

今度こそ、恐らく引き止めることは出来ないだろう。

パンドラの悪魔は去っていった。

北上「私に期待してるってのは、その開け方の事なのかな」

でも徐々に、確実に箱の蓋が開かれていくのを感じた。
698 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/05(土) 03:42:23.52 ID:ul40+rcH0
JAZZコンサートしゅごい

言い出したらキリがないので以上です。

だんだん話が長くなってきました。
次も多分長いです。
また週一くらいで書いていけたらなあと思っては、思ってはいます。
699 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/05(土) 14:40:00.63 ID:nG77xzSpo
おつ上様ー
700 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 05:10:12.69 ID:BUfuQ74K0
長いと読みごたえがあってウレシイ……ウレシイ……
おつ、次の更新も待ってる
701 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/10(木) 12:59:10.45 ID:5P22OAmzO
動くみっちゃん見れて羨ましい
702 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/15(火) 04:05:22.77 ID:UdZIN3p00
73匹目:バター猫のパラドクス

猫は高いところから落ちる時必ず足の方から着地する。

バターを塗ったトーストは必ずバターを塗った方から落ちる。

なんて実際のところ猿も木から落ちるように着地に失敗することはそう珍しくもないのだけれど、

これはあくまで考え方の話。

気の利いたジョークみたいなものだ。

必ずそうなると言われる2つを、例えば猫の背中にバタートーストを乗せて高所から落としたらどうなるか、という話だ。

足から着地すればバタートーストを美味しくいただけるし、バターが床を台無しにしてしまえば猫は恥をかくことになる。

必ず起こりうるというそれはどちらか一方だけになってしまう矛盾。パラドクス。
703 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/15(火) 04:05:53.75 ID:UdZIN3p00
私に言わせればそれは猫でもなくバタートーストでもなく「バタートーストを乗せた猫」という全く別の存在なのだから矛盾はない、と思うのだ。

最強の矛と最強の盾を一緒に装備してできるのは最強の勇者だ。

そこへいくと猫であり船である私は、一体何なのだろうか。
704 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/15(火) 04:06:28.00 ID:UdZIN3p00
提督「お前なんかやらかしたか?」

北上「なんの事?」

急に提督室に呼び出されたかと思えば見た事ないくらい真剣な顔つきをした提督と吹雪が私を待ち受けていた。

前に本で読んだ問題を起こした生徒が校長室に呼び出されるシーンを思い出す。

提督「今朝急に呼び出しがあったんだよ。しかも名指しでお前にな」

北上「誰から」

提督「元帥のおっさんから」

北上「誰それ。偉いの?」

提督「俺の上司的なやつだな。めちゃくちゃ偉い」

北上「校長先生くらい?」

吹雪「知事くらいですね」

北上「わお」

マジか。
705 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/15(火) 04:06:59.27 ID:UdZIN3p00
北上「でも私そもそもその人に会ったことなくない?」

提督「まあそうなんだがな」

吹雪「演習をした事はありますけど基本向こうの鎮守府に出向いてますし、北上さんは参加してませんからね」

提督「前に外出した時になんかあったりしたか?」

北上「あいにく知事のおっさんに会った記憶はないけどなあ」

提督「どうなってんだ…」

吹雪「相変わらず読めない人ですね…」

2人の反応からして知り合い、っぽい感じなのかな?

北上「一体なぜ私が」

吹雪「一応向こうは友人が会いたがってる、とか言ってきましたけど」

北上「だから誰よそれ」

提督「俺に聞くなよ」

分からん尽くしだ。
706 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/15(火) 04:07:25.73 ID:UdZIN3p00
北上「私ゃどうすりゃいいのさ」

提督「あちらの鎮守府に呼び出しだよ。しかも今日」

北上「今日!?」

吹雪「最近お馴染みの例の駅にお迎えが来てるそうですよ」

北上「またバスか」

提督「三回目だ。流石に慣れたろ」

北上「どうだかねえ」

吹雪「待ち合わせは一時。なので軽く昼食を食べたらすぐ向かった方がいいですね」

北上「そっかぁ…ん?一人?私一人なのもしかして」

吹雪「はい」
提督「うん」

北上「マジか…」
707 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/15(火) 04:07:55.36 ID:UdZIN3p00
北上「死ぬほど心細い」

吹雪「でも向こうから一人でって言われてるんですよ。何故か」

北上「何故だ」

提督「それがわからんからどうにもな」

北上「何かあったらどうするのさ」

提督「そん時ゃ迷わず連絡しろ」

北上「どうやって」

提督「いやスマホあるだろスマホ」

北上「あーうっかりしてた」

提督「そこはしっかりしててくれ頼むから」

吹雪「不安なら提督の手とか持ってきます?」

北上「いやそんな趣味はない」

提督「俺はいつからサイボーグになったんだよ」
708 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/15(火) 04:08:28.20 ID:UdZIN3p00
そんなこんなでまたバスに揺られて街に向かう事になった。

北上「何がどうなってるんだか」

ともかく失礼のないようにな、と提督には念を押された。

襲われるような事はないと思うんでそこは安心してください、と吹雪は言っていた。

街が見えてくる。ここ最近でこう幾度も訪れる事になるとは。

北上「ヤバいな」

今になって凄く不安になってきた。

どうしよう。心細い。Help me提督。

あ、スマホで話せばいいのか。

北上「えっと確か」
709 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/15(火) 04:08:54.52 ID:UdZIN3p00
北上:ハロー

これで提督に届いてるはず。多分。届いてるのかな?

提督:どうした!?

うわ凄い速さで返信が来た。暇なのかよ。

北上:なんか不安です

…なんだろう。普通に話すべきなんだろうけどこうして文字で会話するとどうにも他人行儀な話し方になる。

手紙のようで会話のテンポは直に話しているのと変わらない。ネットとは不思議なものだ。

提督:マジで大丈夫なのか!?ヤバいなら戻ってきていいからな!後先考えなくていいから!

北上「うわぉ」

余計に心配させてしまったようだ。
710 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/15(火) 04:09:21.20 ID:UdZIN3p00
提督は今どうしてるんだろう。

私の文面を見て慌てて返信しているのだろうか。提督は案外過保護だ。

前に帰りが遅くなった時だって大井っちと二人でえらい大騒ぎしてたし。

そうだ、大井っちにも連絡を…

北上「いや、よそう」

ここまで飛んできかねない。

木曾や多摩姉、球磨姉も無駄に心配かけかねない。

北上:緊張解す方法ない?

提督:掌に人という字を書いて飲み込むとか

北上:艦娘って人食べるの?

提督:忘れてくれ
711 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/15(火) 04:09:48.54 ID:UdZIN3p00
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

吹雪「服装は一応制服の方がいいですね」

北上「でもそれで外歩いちゃまずいっしょ」

提督「なんか上に着てくしかないか。最近寒くなってきたし」

北上「大井っちのコート借りようかな」

吹雪「普通艦娘の移動は海上か車での移動なんですけれどね。なんで待ち合わせなんでしょうか」

提督「俺は知らねえよ」

吹雪「提督には期待してませんから」ニッコリ

提督「なんで満面の笑みなんだよコノヤロウ」

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
712 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/15(火) 04:10:31.65 ID:UdZIN3p00
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

北上「これでホントにいいのかな」

服装も髪型もいつも通り。コートを着ただけで誤魔化せるのだろうか。

それとも一般人の認識なんてそんなものか。

しかしどうするんだ?駅に来たはいいけどここからどうやって合えばいいのだろう。

相手が誰で何処で待っているのかもわからない。

すると、

「おーい」

とても聞きなれた声がした。
713 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/15(火) 04:11:03.19 ID:UdZIN3p00
正確には普段聞いている声と少し違う。

何せ普段は空気を通さず直接聞いているのだからこうして離れて聞くとなんだかむず痒いものがある。

バス停から少し離れたところで手を振る彼女を見つけてそこへ向かう。

あの時と同じく髪は解いていた。

北上「久々、というには早い再開だったね私」

北上「全くだね。でも元気そうで何よりだよ私」

北上「で、もしかしなくても君がお迎え?」

北上「そそ、はいこれ」

北上「何これ」

北上「ヘルメットをご存知でない?」

北上「物は分かるけど意図がわからない」

北上「そりゃあだって」
714 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/15(火) 04:11:40.36 ID:UdZIN3p00
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

北上「おーーーーー!」

バイクに二人乗り。

陸でこんなにも風をを感じる事があるとは思わなかった。

最初は怖かったけど慣れてくるとそんな事どうでもいいくらい気持ちがいい。

北上「楽しんでるねぇ」

北上「すっごいやこれ。立ってみてもいい?」

北上「死にたいならいいよ」

北上「よし辞めた」

北上「賢明賢明」

北上「これ君のなの?」

北上「いんや、提督の。私のはもちっとちっちゃいやつなんだ。だから借りた」

北上「へえ」

北上「いつか私もこんなカッチョイイの買うんだ」

北上「これはなんて言うやつなの?」

北上「カタナ」
715 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/15(火) 04:12:13.74 ID:UdZIN3p00
両脇の木々がものすごい速さで通り過ぎてゆく。

紅に染まった美しい山々もこうして走り抜けているとまた違った風情がある。

私がバスで超えてきた山と反対側の山を抜けていくようだ。

北上「最初ヘルメット渡された時はびっくりしたよ」

北上「顔を隠せるから一石二鳥だよ」

北上「キスも防げるしね」

北上「あれ?怒ってた?」

北上「怒ってはいないけどもうゴメンかな」

北上「提督にはしたの?」

北上「しないよ。そういうのは、まだわかんない」

北上「のんびりしてると欲しいものが取られちゃうかもよ」

北上「焦って取り逃すよりいいさ」

北上「それもそうか」
716 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/15(火) 04:12:47.41 ID:UdZIN3p00
北上「木ー木ー木ー。森ってほんと木ばっかだ」

北上「そりゃそうだ。海だって海ばっかりだもの」

北上「あ、今の木折れてた」

北上「あんまりキョロキョロしないでよ。バランス崩れちゃうから」

北上「はーい」

北上「次右にカーブ」

北上「ほいほい」

北上「おー慣れてるねえ」

北上「バランスの取り方は海に出てる時と変わんないね」

北上「それもバイクのいいところさ」
717 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/15(火) 04:13:19.25 ID:UdZIN3p00
北上「ところでなんで駅で待ち合わせなの?」

北上「これで鎮守府にお迎えでーすってきたら流石に引かれるから」

北上「駅で見た時も引いたけどね」

北上「カッコイイのになあ」

北上「そういう問題じゃないよ」

北上「ところでどう?バイクは」

北上「うん。好き。私も乗ってみようかなあ」

北上「いいよぉバイクは。車と違って体で操作するからね。さっきみたいに海に出ている時と似てるんだ」

北上「分かる分かる。この風感じるのがいいね」

北上「おお!同士だ!」クルッ
北上「ちょ!?前!前見てちゃんと!!」
718 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/15(火) 04:13:57.53 ID:UdZIN3p00
北上「私他の鎮守府行くの初めてだ」

北上「へぇ、それじゃ今日が初体験か。光栄だね」

北上「君は結構他のとこに行ったことはありそうだね」

北上「しょっちゅうね。新鮮なのは最初の数回だけだよ。大体は公的なやつで外に遊びにも行けないし」

北上「そりゃ辛そうだ」

北上「悪くは無いんだよ。特別良くもないだけ」

北上「そっちの鎮守府ってでかい?」

北上「デカいよー。君のとこと比べたら更に。何せウチの提督お偉いさんだからね」

北上「偉くなるとでかくなるのか」

北上「お墓と一緒だね」

北上「その例えはどうかと思う」
719 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/15(火) 04:14:26.80 ID:UdZIN3p00
北上「あ、今日はおめかししてないんだね」

北上「うん。お偉いさんとこ行くから制服でって」

北上「ちぇー」

北上「何企んでた」

北上「大井っちに見せたかった」

北上「なんでまた」

北上「可愛かったから」

北上「自画自賛なのでは」

北上「そりゃね、自分の事くらい自分で褒められるよ」

北上「さいですか」
720 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/15(火) 04:20:38.28 ID:UdZIN3p00
書いてる場合か!!

札が少ない時でないと挑めないと思いE3甲に挑んでますが分不相応な感じが否めない。
でももしかしたらがあるのが希望でもあり引けなくなる理由でもあります。
運営さん頑張って…
721 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/15(火) 12:43:19.34 ID:DTTQFacaO
伸びたからクリア行けると良いですね
無理そうなら相談をどっかでするか無理せず下げるのも手と思います
次回更新もお待ちしています
722 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/15(火) 15:11:48.50 ID:9vv2otZX0
カタナは北上の身長では厳しい気がするが艦娘パワーでねじ伏せてるのか
もう甲で仕留めたからわからん時は聞いとくれ
みんな猫対策以外なら相談に乗ってくれるはず
723 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/19(土) 04:05:49.91 ID:nuBYPo7T0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

北上「…でっか」

北上「でしょ?」

徐々に見えてきた鎮守府は想像を遥かに超えるスケールだった。

なんだろう。お城というのが一番近いかもしれない。

北上「凄い、見張りまでいる」

北上「提督の命は高価だからね」

北上「偉いって大変なんだね」

北上「いい事も多いけど、私はなりたくはないね」

門の前でバイクを止める。

見張り「おかえりなさ、え?その後ろの人誰っスか」

北上「私だよ」

見張り「いつから影分身覚えたんですか北上さん」

北上「実は火影を目指しててね」

見張り「そこは水影にしましょうよ」

やけに親しげに話しているな。こっちの私はバイクが好きというし出入りの度に話しているのだろうか。
724 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/19(土) 04:06:49.05 ID:nuBYPo7T0
北上「聞いてない?今日お客が来るって」

見張り「あー他所の鎮守府からって、は?それがこの人?バイクで連れてきたんスか!?」

北上「そだよー。特別に提督からカタナ借りちった。いいでしょ」

見張り「羨ましいっス。じゃなくて!なんの為に俺らがいると思ってるんスか!」

北上「こうして出かける度に私と話す為じゃないの?」

見張り「そんな村人Aみたいなやつに金を払う程今の世界は余裕ないッスよ!大体普段のバイクでの散歩だって厳密にはアウトなんスよ…」

北上「別に事故らなきゃ問題ないっしょ」

見張り「こんなデカブツを見た目中学くらいの女子がまして二人乗りなんて通報されても文句言えないっスよ」

北上「偉いってのは大変だけど偉い知り合いがいるってのは便利だよね」

見張り「あのおっさんも艦娘に甘すぎるんスよ」

北上「既婚者だしね!」

見張り「普段は指輪をどこに置いたかも忘れるくらいなのに都合のいい時だけ」

北上「あーそういうこと言うんだー言っちゃおっかなーてーとくの事おっさん呼ばわりしてるのー」

見張り「あ!ずりぃ!それはずりぃっスよ!!」

北上「まあまあ、今度カタナ乗せたげるからさ」

見張り「マジッスか!?」

北上「大井っちがOKだしたら」

見張り「あ、無理っスね」
725 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/19(土) 04:07:32.46 ID:nuBYPo7T0
北上「いつまで門で止まってるつもりさ」カポッ

ヘルメットを取りつつ終わらない押収に思わず口を挟む。

見張り「あ、すいません。ってホントにそっくりっスね」

北上「そりゃあ私だもん」

見張り「いつもの髪型だったら多分見分けつかないッスよこれ」

北上「お、じゃあ髪型戻しちゃおうかな」

見張り「変な事しそうなんでやめ欲しいッス」

北上「ちぇー」

見張り「では、ようこそ北上さん」
726 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/19(土) 04:08:04.83 ID:nuBYPo7T0
中に入ると改めてその大きさに驚かされた。

何よりも驚いたのが人の多さだ。

というか人がいる事だった。

軍服だったりそうでなかったりとマチマチではあるが人間が多いのだ。

鎮守府の施設にも艦娘ではなく人用の物がいくつもあるようだった。

車やヘリや港には大きな船も見える。

私の思う鎮守府とは全く違う世界だった。

艦娘の方もボチボチ出歩いているのは見えるがそこまで多くはなさそうだ。

出撃とか色々忙しいのだろうか。何せ元帥殿だし。
727 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/19(土) 04:08:45.11 ID:nuBYPo7T0
北上「とうちゃーく。さ降りた降りた」

北上「はーい、よっと」スタ

建物裏の駐車場にバイクを止める。

他にもいくつかバイクがあるな。北上の、もしくはここの提督の私物なのかな?バイクには詳しくないのでみてもわからない。

北上「おりゃ」ガタン

北上「…よくつま先たちで支えられるね」

北上「慣れだよ慣れ。あ、持ってみる?」

北上「それを?」

北上「そうそう。ほら、ハンドルんとここう持って、こんな感じで支えるの」

北上「えっと、こうで、こう?」
北上「それ」

パッ、とバイクを支える北上の手が半分になる。途端

北上「うお゛!?」

重い!!
728 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/19(土) 04:09:20.17 ID:nuBYPo7T0
北上「あはは、ビックリした?」

すぐさま支えに戻るもう1人の私。すると不思議な程にバイクが軽くなる。

北上「魔法?」

北上「そこはほら、艦娘の力よ」

北上「あーそういうことか」

便利だな。

艦娘の人間とはかけ離れた身体能力。

私みたい低練度だと大雑把にしか扱えないがこっちの私のように高練度だと細かく出力を調整出来るらしい。

北上「この小さな体でこんなデカブツを御せる。これがまた気持ちいいんだよねえ」

北上「事故った事はないの?」

北上「ないない。免許はキラッキラのゴールド」

北上「そりゃそうか」

北上「まあこいつの持ち主はシルバーだけどね」

北上「君の提督が?どんな事故やったの」

北上「高齢者って事」

北上「ああ」

中々小洒落た事を言う。
729 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/19(土) 04:09:56.02 ID:nuBYPo7T0
鎮守府を歩く。

北上が二人。

そりゃもう目立つわけで、周りの注目度が凄かった。

北上「でも誰も寄ってこないね」

北上「他所の娘が来る時って大体公用だし、そこら辺は皆ちゃんと弁えてるんだよ」

北上「他所からくるのもしょっちゅうなの?」

北上「割と。こんなふうに同じ顔が並んで二人だけってのは今回が初めてだけどね」

北上「こんなに目立っていいのかな」

北上「後で噂になったら面白そうだなあ」

北上「えぇー」

面倒くさいと思うんだけど。
730 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/19(土) 04:10:30.70 ID:nuBYPo7T0
大井「北上さーん!」

北上「「あ、大井っち」」

大井「北か、え、北上、さん?北上さん?北上さんと北上さん?ダブル北上さん!?やだ両手に花だわ」

おっと、つい癖で私も反応してしまった。

隣を見るともう一人の私が何やら楽しそうにニヤニヤしている。

ろくな事を企んでそうにないので私から大井っちに事情を話した。

大井「なるほどなるほど。事情はわかりましたけど、バイクでお迎えはどうかと思いますよ」

北上「え〜いーじゃん。乗りたかったし」

大井「ならしょうがないですね」

おう、予想はしてたけど激甘だ大井っち。
731 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/19(土) 04:11:37.57 ID:nuBYPo7T0
大井「でも一体なんの用事でここに?」

北上「それそれ、私もそれを聞いてないんだよね」

北上「それはまだ秘密」

大井「えー教えてくださいよぉ」

北上「提督に秘密って言われてるしさ」

大井「提督と私どっちが大切なんですか!」

北上「この場合それほど差はない」

大井「凄い真面目に返された…でもそんな所も好きです」

北上「これも仕事だからね。知りたかったら提督に聞いてみてよ」

大井「分かりましたぁ。それでは、北上さん。と、北上さん?」

北上「またね大井っち」
北上「じゃね大井っち」



大井「…すみませんやっぱりひとつお願いがあります」
732 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/19(土) 04:12:58.58 ID:nuBYPo7T0
北上「君のとこと比べてどう?大井っちは」

北上「大体同じ。あそこまで積極的じゃないけど」

あの後大井っちの頼みで私と私で大井っちの両腕に抱きつくというリアル両手に花ポーズをした。

幸せそうに気を失った大井っちをこっちの私はサラッと放置して行ったけどよかったのだろうか。

北上「そりゃ私と大井っちは一線を超えた関係ですからねえ」

北上「一線ねぇ」

こっちの大井っちは私の知ってる大井っちと何ら変わらないように見えて、やはり別人だと確信できる何かがあった。

ガワだけ大井っちで、中身というか根本的なところは違う。

北上「自分や仲間が二人いるってどう思う?」

北上「二人どころじゃないでしょ。私は自分とだけでもう十人くらいは会ってると思う」

北上「十…」

想像もできない数だ。
733 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/19(土) 04:16:04.20 ID:nuBYPo7T0
北上「でもさ、会って話してみるとやっぱりどこか違うんだよね。環境による違いは大きいんじゃないかなあ。私だって提督のせいでバイク乗り始めたし」

北上「それはあるだろうね」

艦娘にとって環境とはそのまま提督と言い替えてもいいだろう。

北上「球磨型の皆は言うならてんでバラバラなようで何処か繋がってる姉妹って感じで、もう1人の自分は全く同じなようでどこか違う双子ってところかな」

北上「姉妹に双子か。言い得て妙だね」

北上「別人のようで、そうは思えない。みたいな。君はそう思わない?」

北上「私は…どうだろ」

自分が周りとは明らかに自分が浮いてるという感覚がある。

それはきっと私の根源的な部分が北上でもあり猫でもあるからだ。私はかなり特殊な例と言える。

北上「わからないや」

鎮守府内で一番立派な建物に入る。

うわここにも見張りがいるのか。

しかし凄い。建物めちゃくちゃ綺麗だ。王室か何かみたい。
734 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/19(土) 04:16:38.17 ID:nuBYPo7T0
北上「そこへいくと君は少し違うんだよね」

北上「私?」

北上「うん」

そう言うと当たり前のように身体をすっと近づけてくる。

前回のキスの件があるので身構えてしまう。

北上「…べつに取って食いやしないよ」

北上「食われたようなもんだけどね」

北上「君は他の私とはまるで違う。もちろん私とも」

北上「どうしてそう思うの?」

北上「んー、カン」

北上「えぇ…」
735 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/19(土) 04:17:07.92 ID:nuBYPo7T0
北上「さて、ここが提督室」

北上「おー、てあれ?扉だけ妙にボロいね」

北上「みんな煩雑に扱うからねー」

北上「そこはウチと一緒だ」

北上「お偉いさんとかも始めてくる人は皆あれ?ってなるから面白いんだ」

北上「そんな所で面白がらなくても」

北上「てーとくー入るよー」ガチャ

返事を待たずに扉を開ける北上。提督の扱いは確かに似ているのかもしれない。
736 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/19(土) 04:17:54.45 ID:nuBYPo7T0
元帥「おう、どうじゃったカタナは」

北上「もう最っ高!提督死んだら私に譲ってよ」

元帥「勝手に殺すな。第一アレはわしが死んだら一緒に埋葬しろと電に伝えとるわ」

北上「えー勿体ない。孫に残していきなよ」

元帥「誰が孫じゃ。どうせわしが途中でくたばったら山程の仕事を残していく事になるんじゃ。バイクまで任せられんわい」

北上「おーおー部下思いですこと」

元帥「さて挨拶が遅れたな。わしがここの提督だ。元帥と呼んでくれ」

北上「えー提督は提督でいいじゃん」

元帥「…このように誰も元帥と呼んではくれんのでな。まあ提督でも構わんよ」
737 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/19(土) 04:18:29.08 ID:nuBYPo7T0
北上「あーえっと、初めまして、私は北上と、申します?」

失礼のないようにってどうすりゃいいんだ。よくわからん。

北上「いーよいーよ普通に喋って。私は気にしないから」

元帥「なんでお前が決めるんだ」

北上「でも提督も堅苦しいの嫌でしょ?」

元帥「そりゃあな」

北上「じゃ決まりね」

北上「まあそれでいいなら私としても有難いけど」

部屋の中央にテーブルとそれを囲む四つの椅子があり、その一つに少し大柄の老人が座っていた。

どう見ても還暦はとっくに迎えてそうではあるが身体はウチの提督よりも強そうに見える。

僅かな白髪を残し頂点がツルって逝ってる頭にはその矍鑠とした見た目とは裏腹に柔和な表情を浮かべている。

あのデッカイのバイクに乗るというのも納得である。
738 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/19(土) 04:18:55.05 ID:nuBYPo7T0
元帥「立ち話もなんじゃ、二人とも好きな所に座りなさい」

北上「はーい」

北上「お邪魔しまーす」

元帥「…」

私の隣に私。向かい側に提督。

元帥「いやお前はわしの隣に来るもんじゃないか?」

北上「えーやだよ提督と自分だったら自分選ぶでしょ」

元帥「一応指輪渡した仲じゃろ」

北上「ただの強化アイテムじゃん」

元帥「わしとて上の連中の戯言を間に受けた訳じゃないがもう少し信頼してくれてもいいじゃろ」

北上「やだなんか年寄りが移りそう」

元帥「あーいかんわ年寄りは涙腺が緩くなっていかんわー」
739 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/19(土) 04:19:25.67 ID:nuBYPo7T0
北上「いつまでそれやるの…」

北上「ほら、君の緊張をほぐそうかなって」

元帥「楽にしてて構わんよ。腹が減ってるならお菓子もあるぞ」

なんだろう、孫が来て喜んでるだけのおじいちゃんに見える。

北上「あ、提督お茶も出てないじゃん」

元帥「それくらいお前が入れろ」

北上「私は北上だから実質お客」

元帥「どんな理屈じゃ」

電「いや少しは働いてください」

北上「うわ!?」

気がつくと後ろに電が立っていた。手にはお茶とお菓子が乗ったお盆を持っている。
740 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/01/19(土) 04:20:01.67 ID:nuBYPo7T0
元帥「紹介しよう。うちの嫁だ」

電「秘書艦の電なのです」ニッコリ

そういいつつお茶をテーブルにおく。

あ、顔が笑ってない。

北上「ありがと」

北上「サンキュー、てあれ?」

電「働かざる者飲むべからずなのです」

北上「そんなあ!」ガビーン

元帥「はっはっはっやーい怠け者めー」

電「それではごゆっくり」

元帥「あり、ワシのは?」

電「なのです」バタン

北上「行っちゃった」

北上「え、嘘。お茶一個とお菓子だけ置いてきやがったよ」

元帥「お茶なしでお菓子あってもなぁ」

北上「提督が変な事言うから」

元帥「前々から温めてた必殺のギャグだったんじゃがなあ」
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