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北上「我々は猫である」
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567 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/11/27(火) 04:48:25.61 ID:a4+QFzlN0
木曾「昔と言ってもおい姉が来たのは約二年前だから最近と言えば最近だ」
北上「着任順だと多摩姉球磨姉木曾大井っちなんだっけ」
木曾「ああ。おい姉はほら、俺ら以外には正直結構当たりが強いだろ?提督にもそうだった。むしろ提督にこそそうだった」
北上「今でもじゃないの?」
木曾「そうだけど、なんというかなぁ。昔はもっと冷たいというか、無愛想?な感じだった。作戦に文句言ったり上姉はまだかぁって文句言ったり」
北上「大井っちらしいや」
木曾「ちなみに前者は完全に提督が悪い」
北上「提督らしいや…」
568 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/11/27(火) 04:49:06.74 ID:a4+QFzlN0
木曾「それに比べて今のおい姉は熱を持って提督に当たってる感じだな。生き生きしてる、ってのは少し違うかな。でもそんな感じだと思う」
北上「流石木曾。よく見てるぅ」
木曾「姉妹だしな」
北上「そうなると大井っちは私が来てから提督とお熱になったという事になるのかな?」
木曾「時期的にはそうだと俺は思うな」
北上「何かきっかけとかあったのかな」
木曾「もしくはそれまで上姉の事ばかり考えていたけど改めて上姉が来たら提督の事を見る余裕が出来て、的な?」
北上「おーなんかロマンチック、なのかな?」
木曾「さあ」
北上「恋愛系の話はとんとわからんね」
木曾「俺らの中じゃそういうのはおい姉くらいしか興味無さそうだしな」
569 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/11/27(火) 04:50:17.22 ID:a4+QFzlN0
北上「外に行った時とか男の人見てドキッとかしない?」
木曾「いや全然。というかあんまり人間を見たりしないなあ」
北上「興味なしか」
木曾「年に数度しか人間に会わないしな。魚とかの方がまだ興味が湧く」
そんなもんなのか。人と艦娘というのも。
これ程人に近いのに人に飼われていた猫の方がまだ人への興味があるとは不思議なもんだ。
木曾「上姉は結構人間に興味ありそうだよな」
北上「そ、そう?ほら、私本とかで人の話とか読んだりするからさ」
木曾「あーなるほどな」
北上「でも木曾も映画とか漫画とか、人に触れる機会が無いわけじゃないでしょ」
木曾「ああいうのはフィクションだし」
北上「そういう認識なのか」
木曾「大抵はそういう認識なんじゃないかな」
570 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/11/27(火) 04:50:59.11 ID:a4+QFzlN0
北上「金剛さんとかは違うのかね」
木曾「あーどうだろうな。提督一筋って感じだし、別に人間に興味はないんじゃないかな」
北上「…あぁ、かもね」
凄く意外な事にしかし今更ながら気がついた。
そっか、皆にとって「人間」と「提督」は別物なんだ。
そういえば前に日向さんは提督を女王蜂と言ってたっけ。
でも唯一の人間だとも言ってたな。そこに違いはなんだろうか。
前任の提督を知っているから?つまり提督意外の人間を知っているから?
北上「むむむ」
木曾「どうした急に」
北上「頭痛が痛い」
木曾「そんな船に乗船みたいな」
571 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/11/27(火) 04:51:48.85 ID:a4+QFzlN0
北上「金剛さんと言えばさ、大井っちと提督の仲について他の皆はどう思ってるんだろ」
木曾「さっきも言ったけど、皆はおい姉の変化については多分それほど気づいてないと思うぞ。相変わらず馬が合わないなあ位の認識じゃないかな」
北上「おー、流石大井っち。ライバルに気付かれずにゴールインする気だな」
木曾「そう取れなくもないけど、おい姉もおい姉で無意識にやってるんだろうな」
北上「だろうね。提督の方は誰かに気があったりはしなかったの?金剛さんとかモーレツアタックしてるけど」
木曾「俺か知る限りはないな。だからこそおい姉とこんなに仲良くなってたのは意外だったよ」
北上「へぇ。提督とか抱きしめてキスのひとつでもすればOKしそうに見えるのに」
木曾「それは流石にひでぇな」
北上「そうかな」
572 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/11/27(火) 04:52:23.20 ID:a4+QFzlN0
木曾「もう一つ気になるのは最近のおい姉だ」
北上「私もそこがわからない」
木曾「喧嘩ってのは、やっぱなさそうだよなあ。痴話喧嘩はしても喧嘩はしなさそうだし」
北上「別に提督と仲が悪くなった感じもないんだよねえ」
木曾「なんつーかおい姉が提督を避けてる、距離を置いてる感じがあるな」
北上「そう?」
木曾「俺はそう思った」
北上「じゃあそうかもね」
木曾「そんなあっさりと」
北上「木曾の目は信頼に値すると思ってるからね」
木曾「そりゃ、妹冥利に尽きるね」
573 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/11/27(火) 04:52:52.88 ID:a4+QFzlN0
最初は提督に悪態つくだけで、
そうして接する内にいつの間にか距離が近づいて、
私が来てからいつも私と居るようで、提督ともそのまま一緒にいたりして、
でも最近提督を少し避けてる。
そして多分、私との距離も変わってる。
北上「改二になってからだよね」
木曾「前に上姉が言ってた通り服装か?」
北上「本気?」
木曾「まさか」
北上「だよねぇ」
574 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/11/27(火) 04:53:41.58 ID:a4+QFzlN0
木曾「上姉は何か気づかなかったのか?一緒に工廠行ってたんだろ?」
北上「別に普通だったけどなあ。その後なんかため息ついたりしだして、段々とって感じで」
木曾「さっぱりだな」
北上「木曾は改装後なんかあったりした?」
木曾「俺は…いや別に何も無いな」
北上「あ、今チラッとマント見た。やっぱ気に入ってるな、マントカッコイイと思ってるな」
木曾「お、思ってねえ!そりゃカッコイイとは思うけど別にそこまで気にしてねえ!」
北上「天龍と一緒にマント作ったりしてるのに?」
木曾「なんで知ってんだよ!?」
北上「龍田が言ってた、って阿武隈が」
木曾「アイツは龍田にだけ口が軽すぎる…」
北上「姉妹だもんねぇ。いいなぁウチの妹も見習って欲しいなぁ」
575 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/11/27(火) 04:54:13.64 ID:a4+QFzlN0
木曾「俺は、上姉にこそ見習って欲しいけどな」
北上「え?」
片方だけのクールな目が私をじっと見つめてくる。
鋭い観察眼は、私をどう見ているんだろう。
というかなんで眼帯なんだろうか。色が違ったりするけど普通に見える目のはずだが。
明石に頼んだら目くらいどうにでもなりそうだし。
北上「あ」
木曾「お?」
北上「そういえば改装した日大井っちがなんか明石のとこに行ったとか言ってたっけ」
木曾「ほぉ。なんさ手掛かりになるかもな」
北上「今度聞いてみるよ」
576 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/11/27(火) 04:54:50.21 ID:a4+QFzlN0
上の方から騒がしい声が聞こえ始める。
北上「また始まったね」
木曾「いっそこの方が落ち着くよ」
北上「確かに」
木曾「さて、着替えるか」
北上「なんで制服だったの?」
木曾「言わせないでくれ」
北上「あーマントか」
木曾「言わないでくれ」
577 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/11/27(火) 04:55:22.70 ID:a4+QFzlN0
北上「…」ジー
木曾「な、なんだよ」
北上「なんで眼帯なんだろうね」
木曾「これか?なんでって言われると、なんだろうな」
北上「お風呂とか寝る時は普通にとるもんね」
木曾「邪魔だしな」
北上「なら外しちゃえば?」
木曾「こっちで慣れちまったからなあ。外すとかえってやりにくい」
北上「そうなの?」
木曾「上姉急に片目で暮らせって言われたらキツイだろ?」
北上「無理だね」
木曾「逆ではあるけどそれと同じことだよ」
北上「ふーん」
578 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/11/27(火) 04:56:25.57 ID:a4+QFzlN0
北上「スキありっ!」バッ
木曾「どわぁっ!?」ドサッ
木曾の眼帯を取ろうと襲いかかる。
慌てて防ごうとしたようだけど叶わず適わず、押し倒される木曾。
木曾「痛え」
北上「畳だしだいじょーぶ」
木曾「コンクリよりマシってだけだ」
北上「おー黄色く?黄金かな。光ってるね」
木曾「夜だとちょっとした明かりになるぜ」
北上「それだと寝る時眩しくない?」
木曾「その時は消してる」
北上「消せるのか…」
無意識に消えてるわけじゃないらしい。
579 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/11/27(火) 04:57:05.84 ID:a4+QFzlN0
北上「私が写ってるね」
木曾「レンズだからな。映ってなかったら一大事だ。ところでそろそろ上から降りてくれ」
北上「私の形してる」
木曾「どういう意味だよ」
北上「猫とか鳥の形だったら面白いなあって」
木曾「魔法の鏡じゃないんだぜ。まあもしかしたら、船の形とかはあるかもな」
北上「船かあ」
大井「北上さーん。提督に秋刀魚漁の話取り付けてきま…あ」ガチャ
木曾「あ」
北上「いやん」
580 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/11/27(火) 04:58:14.76 ID:a4+QFzlN0
大井「そっち!?」
そっちってどっちだ。
大井「提督ぅぅぅぅぅ……」ダダダ
北上「行っちゃったよ…」
木曾「これめんどくさい事になるんじゃないのか」
北上「どーだろ」
木曾「しかしあれだな、こういう時は真っ先に提督のとこに行くんだな」
北上「なんだかんだでやっぱり提督なんだね」
木曾「ツンデレってやつだな」
581 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/11/27(火) 04:58:43.30 ID:a4+QFzlN0
北上「木曾は提督の事どう思ってるの?」
木曾「俺か?改めて言われると、そうだな。相棒?」
北上「カッコイイね」
木曾「上姉こそどう思ってるんだ?なんやかんやと提督とはよく一緒に居るし、この前なんか部屋で寝てたじゃないか」
北上「提督かぁ。んー手掛かり?」
木曾「はい?」
北上「容疑者、いや目撃者的な」
木曾「推理小説の話はしてないぞ」
北上「事実は小説よりも奇なりなんだよワトソンくん」
木曾「勘弁してくれホームズ」
呆れて肩をすくめる妹をよそに、私はあの日神社で出会ったような、出会わなかったような、不思議な友人を思い出していた。
582 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/11/27(火) 04:59:31.38 ID:a4+QFzlN0
木曾「お」
北上「あ」
上からまた騒がしい二人の声がする。
木曾「俺は知らないぞ」
木曾がまた肩を竦めて立ち上がる。
北上「クールだねぇ」
木曾「別にそんなことは無いさ」バサッ
そしてマントを翻しながらカッコよく取る。
木曾「うわっ」バフッ
あ引っかかった。
木曾「…」
北上「…」
木曾「れ、練習中だ…」カァァ
実に可愛い妹である。
583 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/11/27(火) 05:01:28.90 ID:a4+QFzlN0
しまった66じゃなく67匹目だ。内容に影響はないのでいいのだけれど。
木曾や加古などのあの目はなんなんでしょうね。連装砲ちゃんと同じくらい謎です。
584 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/27(火) 10:23:58.46 ID:tnkUXOnCo
おつだキソー
585 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/27(火) 11:23:17.46 ID:JUeAnmMbO
キソー
586 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/27(火) 18:49:03.81 ID:gm3fMJZ/O
>>1
乙なのよ
ちなみに気になったので
川内は「せんだい」と読むんだよ
587 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/27(火) 18:54:58.89 ID:p8zpc/oIO
>>586
いや、ネタにマジレス(ry
588 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/28(水) 22:37:56.53 ID:UH5ZtRP9O
乙ー
しかし、何故数多くの艦これ二次創作で神通が川内をカラテでケジメする役が多いのだろう?
589 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/28(水) 22:51:09.49 ID:DpGDJqA80
公式で川内は病気レベルで夜戦夜戦騒ぐ迷惑キャラ扱いだしな
身内の不始末をクソ真面目な神通が見過ごすとは思えない
590 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/01(土) 03:27:59.25 ID:SNLbCxuM0
かわう、川内には後で活躍してもらう
このネタ何が元なんだろうと思ったら瑞鶴の時報だったんですね。
JAZZコンサートに行けるかドキドキなので少し書いていきます。
591 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/01(土) 03:28:27.00 ID:SNLbCxuM0
69匹目:猫と船
三毛猫のオス。
その珍しさからどういう訳か一緒に船に乗ると沈まないなんて言い伝えがあるとか。
もし私が生前三毛猫のオスだったら不沈艦になれたのかな。
それはそれとして、私達は1日の内殆どを地上で過ごす。
出撃があるとはいえ長くても半日といったところか。遠征ともなると少し事情が違うけれど。
船にあるまじき生活だがそれでも私達にとって海というのは生きる上で大切なものだ。
592 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/01(土) 03:30:10.40 ID:SNLbCxuM0
私達は陸に住んでいる。それは間違いない。
だが私達に陸という意識は恐らくほとんどない。
艦娘にとってこの世界にあるのは海と空と鎮守府、と陸だ。
鎮守府は鎮守府であり、決して陸ではない。
陸と海の間。
人と船の境界にいる私達には大切な場所。
故に陸への愛着がある者は少ない。陸で何かあっても他人事にしか思えない。
私達にとって日常を揺るがすような何かとは決まって海での事なのだ。
593 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/01(土) 03:30:46.00 ID:SNLbCxuM0
北上「うーみーはー広いーなー大きーいーなー」
木曾「呑気に歌ってる場合かよ」
北上「だってさあ、こうして最速で現場に向かってるってのに見えるのは海海海。太平洋の広さが身にしみるってもんだよ」
大井「問題の場所はもう少しのはずなんですけれど」
多摩「最後に連絡があった時はまだ交戦していたらしいからにゃ。移動している可能性は大きいにゃ」
北上「もしくは、もう沈んで消えたか」
だだっ広い海のど真ん中で沈黙が走る。
状況から言って件の船がまだ生きている可能性は極めて低い事は皆も分かっている。
594 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/01(土) 03:31:17.83 ID:SNLbCxuM0
球磨「煙クマ」
多摩「何っ!」
周囲を偵察していた球磨姉ちゃんが指を指す。
そこには空を彩る様々な雲とは明らかに違う黒い硝煙が上がっていた。
木曾「だいぶ位置がずれてるな」
大井「煙という事は沈んではいないようね」
球磨「でも敵影もなし。なんだか不気味だ」
多摩「警戒しつつ接近するにゃ。敵がいるようなら雷巡トリオですかさず魚雷。基本的にはそのまま即離脱にゃ」
「「「「了解」」」」
先行する球磨姉ちゃんと多摩姉ちゃんに続く。
やはり有事の際の2人はとても頼もしい。
大井「…」
ただ、大井っちが妙に険しい表情なのが気になった。
595 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/01(土) 03:31:45.88 ID:SNLbCxuM0
事の発端は僅か1.2時間ほど前。
秋刀魚漁の護衛。つまり秋刀魚漁に来ていた時のことである。
普段よりも沖に出ての出撃。
大井っちによる提督の説得、内容はともかくその説得の結果私達球磨型五人による出撃が許可された。
もうそろそろ漁場に着くという頃、その連絡は入った。
596 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/01(土) 03:32:25.98 ID:SNLbCxuM0
飛龍「ええ!?なになにどういうことよ?」
球磨「?」
多摩「どうしたにゃ」
引率役の旗艦、飛龍さんが急に慌て出す。
飛龍「えっと、提督から連絡が来てて、待って待って提督、皆に話した方が早いから」
直後、艦隊の全員に回線が繋がった。
提督『悪いがあまり時間が無い。手短に話すぞ。今から漁船は引き返す。護衛は飛龍だけだ。後はこれから送る座標に向かえ』
飛龍「私だけって、本気?」
提督『見張りとしてだから攻撃機積んでないだろ。船には全速力でそこを離脱してもらう。索敵だけなら飛龍だけでいい』
私達が囲んでいた漁船が徐々に速度を落とす。どうやら撤退の準備を始めたようだ。
597 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/01(土) 03:34:48.52 ID:SNLbCxuM0
多摩「それで、何があったにゃ」
提督『海外からの船が日本に向かう途中深海棲艦に襲われ連絡が途絶えた。詳しい話は向かいながらだ。今はとりあえず動いてくれ』
飛龍「…りょーかい。旗艦は球磨ちゃんでいい?」
提督『構わん』
球磨「任された」
飛龍「それじゃ皆、気をつけてね」
そう言い残して踵を返す飛龍さん。
その真剣な表情に私も少し緊張する。
598 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/01(土) 03:35:28.77 ID:SNLbCxuM0
木曾「で、何がどうなってるんだ」
大井「救援にしたって私達じゃ大した力にはならないわよ。空母も戦艦もなし。装備も秋刀魚漁用のものが多いし」
提督『そこが少し複雑でな。今日船が来る予定は正式にあったんだ。特定のポイントまで向こうの艦隊が護衛して後は日本の艦隊がそれを引き継ぐ予定になっていた』
多摩「予定、にゃ」
提督『ああ。その船が現れなかった。何事かと問いただしてみりゃ今から1時間ほど前に深海棲艦と接触したという連絡があったっきり音信不通だと』
球磨「1時間も前?」
提督『色々言ってはいたが要は俺らに借りを作りたくないって事だろ。結局どうにもならないと思って助けを求めた訳だが』
多摩「くだらねえにゃ」
提督『全くだ』
政治的な話、ということなのだろうか。
いまいちピンと来ないがくだらないというのは分かった。
599 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/01(土) 03:36:07.23 ID:SNLbCxuM0
提督『そのくせご注文が多くてな。無事なら助けろ、無事じゃなくても船には触れるな、とさ』
大井「何か見られたくないものでもあるんでしょうか」
提督『多分な。出来れば回収したい、でも日本には渡したくない。そんなものがあるのかもな』
木曾「俺らに関すること、だろうな」
提督『艦娘生み出したのは日本だしな。おかげで日本と海外との力関係は妙な事になってる。皆ちっぽけな島国を出し抜こうと必死だし、日本も出し抜かれまいと必死だ』
多摩「で、多摩達は結局どうすればいいにゃ」
提督『船が無事なら助ける。だがそうでないなら即撤退だ。幸い秋刀魚漁用に偵察装備は多めに積んである。要索敵。敵が強力なようならすぐ逃げろ』
球磨「妙な作戦だ」
提督『変更も考えられる。何せ見られたくないものを詰んでるんだからな。こっちもそれをエサに交渉してる途中らしい』
木曾「日本としても是非手に入れておきたいところだよな」
提督『後はまあポーズだな。一応救援に向かったっていう。だから急いでは貰うが正直助けるとかは考えなくていい。そもそも最後の連絡が1時間前。移動を考えたら着くの頃には2時間経ってる。まず助からん』
連絡が途絶えたという時点で絶望的なのにさらに2時間も経つとなれば、当然そうなるか。
600 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/01(土) 03:36:47.49 ID:SNLbCxuM0
提督『そこに向かったという事実があればいい。後は自分達の安全を最優先しろ。釣竿でやつらと戦うわけにゃいかんだろ』
北上「そりゃそうだ」
提督『じゃ頼んだぞ』
球磨「了解」
多摩「とんだ秋刀魚漁だにゃ」
木曾「釣りをしてんのは上の連中ってわけか」
大井「何が釣れるのやら」
北上「私達がエサじゃないといいけど」
それから1時間弱。私達は煙と、船を発見した。
601 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/01(土) 03:37:23.37 ID:SNLbCxuM0
木曾「こりゃ、酷いな」
大井「無事、と言っていいのかしら」
船は確かに浮いていた。あちこちに穴があき、ドス黒い煙を吐いていたが。
艦橋はまるで踏まれたかのようにひしゃげ、甲板は波のように捲り上がり、人影もなく、何より一切の生が感じられなかった。
多摩「敵影はなしにゃ」
球磨「こっちもだ。どうなってる?」
北上「船がこんなになってるって事は護衛の艦隊は、そういう事だよね」
多摩「なのに船がまだ無事なのがよく分からんにゃ」
球磨「無事とは言えない」
多摩「まるで人だけを殺すような痛め付け方にゃ…これは」
多摩姉の表情が強ばる。
なんというか、恐怖とかではなく嫌悪感とか、気持ち悪いものでも見るようなそんな表情に見えた。
602 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/01(土) 03:38:01.94 ID:SNLbCxuM0
吹雪『見つけたみたいですね』
北上「吹雪?提督は?」
吹雪『今お偉方とお話中です。あちらも色々と大変そうで。それでそちらは?』
球磨「護衛は見当たらず。船は大破。人影はなし。深海棲艦も見当たらず」
吹雪『それは…いえ、とりあえず生き残りがいるかどうかですね』
多摩「探索に入っても問題ないかにゃ?」
吹雪『とりあえずは。どうせその分だと沈むでしょうし証拠もなくなります。あちらさんにとやかく言われることもないでしょう。お宝があるなら持ち帰りたいところですし』
球磨「了解」
603 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/01(土) 03:38:34.61 ID:SNLbCxuM0
球磨「となるとどうするか」
多摩「多摩と北上と木曾で船内に入るにゃ。大井と球磨は見張りを頼むにゃ。大井もそれでいいにゃ?」
大井「はい…」
木曾「あいよ」
北上「え、入るの?燃えてるよこいつ」
多摩「少しくらいなら平気にゃ。戦艦の砲弾に比べりゃ炎も煙も子供のオモチャみたいなものにゃ」
北上「さいですか」
木曾「でもどうやって入るんだ?」
多摩「あー」
球磨「これがあるクマ!」ツリザオー
北上「マジで?」
球磨「これをフックに」
多摩「確かに糸は丈夫だけどにゃ…」
木曾「それしかないか」
北上「マジで…」
604 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/01(土) 03:39:04.18 ID:SNLbCxuM0
北上「ホントに登れるし」
この糸何でできてるんだ。
木曾「人の手でやったら絶対指切るよなこれ」
下を見下ろす。意外にも結構な高さがあることに驚きを隠せない。
考えてみりゃ船ってめちゃくちゃでかいよね。
艦娘はみんな人型だからは おー流石戦艦身長高いなーくらいの認識しかなかった。
実際の戦艦とかってどれだけでかいんだろ。鎮守府よりでかい?
思えば船なのに船に乗ったのはこれが初めてである。
北上「…」
下を向くと大井っちが何処か遠くを見つめているのが見える。
私の方を、というより船の方を一切見ようとはしていない。
605 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/01(土) 03:39:52.30 ID:SNLbCxuM0
多摩「木曾は後ろの方を頼むにゃ。多摩と北上は前と艦橋を」
木曾「おう。生き残りがいたら?」
多摩「状態にもよるけどとりあえずは救出にゃ」
北上「何か持って帰るの?」
多摩「よっぽど怪しいものがあったらにゃ。後は、遺品の1つでも持ち帰るにゃ」
木曾「了解」
多摩「緊急時は砲弾で壁ぶち破って脱出にゃ」
北上「あーい」
606 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/01(土) 03:45:48.61 ID:SNLbCxuM0
ラスボスの予感
政治的要素は物語に一切絡まないので適当です。史実とか実際の船の知識とかもさっぱりなので深く考えずにお読みください。
皆様のお声のおかげで長く続けてきましたが年内に終わりそうもないですこれ…
607 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/01(土) 13:05:22.61 ID:rn1C0zyi0
なぁに年末は来年も来るさ
608 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/01(土) 19:37:48.87 ID:B0TajtyYo
おつかーレ
609 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/05(水) 04:09:15.99 ID:nx/Lx4j80
中は、地獄だった。
北上「これ全部血か」
多摩「船が沈んでないわけにゃ。人だけ殺すように機銃ぶち込んでるにゃ」
辺りには夥しい数の穴が空いていた。
開けるまでもなく中の様子が分かるほどにドアの下から血が流れでている部屋。
最早判別もつかない黒い何かの燃えカス。
北上「でもさ、機銃ってこんな中まで貫通するもんなの?」
多摩「…どうだかにゃ」
北上「どうだかって」
多摩姉の顔が段々険しくなる。
事態の重さや惨状を見てでは無く、今度は何か確信しつつあるような顔だった。
610 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/05(水) 04:12:08.57 ID:nx/Lx4j80
多摩「大井の事、気づいてるにゃ?」
北上「そりゃね」
多摩「前に話した通りにゃ。今回みたいに船の救出に向かって、間に合わなかった。それがトラウマになってるにゃ」
北上「だから見張りにしたんだよね」
多摩「できれば連れてきたくはなかったにゃ」ガンッ
歪んだ扉を蹴破る。
多摩「ここから先は流石に火の手が激しすぎるにゃ」
北上「引き返そっか」
煙が辺りに充満している。
蒸されているような熱さと鼻にツンとくる血と肉と鉄が焼けた匂い。
人間ならとても耐えられない空間だ。
611 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/05(水) 04:12:44.06 ID:nx/Lx4j80
多摩「北上はこれを見てどう思うにゃ」
北上「んー」
第一印象は、人ってこんなに血が流れてるんだなあ、だった。
何処か他人事。それが私が猫だからなのか艦娘故なのか、よく分からないけれど。
多摩「あんまりって感じだにゃ。北上らしいと言えばらしいにゃ」
北上「臭いがきついとかかな」
多摩「艦娘はそういうやつが多いにゃ」
北上「臭い?」
多摩「あんまりこういうのを気にしないって話にゃ。実感がわかないというか、まあ船だからにゃ」
北上「そりゃそうか」
612 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/05(水) 04:13:16.93 ID:nx/Lx4j80
多摩「こういう事は珍しくもないんだにゃ。最近はだいぶ減ったけどにゃ。だから慣れといた方がいいにゃ。苦手なら、そうだと知っておいた方がいいにゃ」
北上「多摩姉もあったの?」
多摩「昔はしょっちゅうにゃ。船だけじゃなく、陸でも」
北上「へえ」
多摩「人は脆すぎるにゃ。私達は、頑丈すぎるんだにゃ」
木曾『多摩姉!』
北上「うおっ」
突然通信がはいる。
613 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/05(水) 04:13:56.04 ID:nx/Lx4j80
多摩「どうしたにゃ」
木曾『機関部がやられてる。今まで爆発してないのが不思議なくらいだ。中にはいない方がいい!』
多摩「先に脱出してろにゃ。ぶち破ってかまわんにゃ」
木曾『多摩姉達は?』
多摩「上に少し用があるにゃ」
北上「上?」
614 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/05(水) 04:14:27.17 ID:nx/Lx4j80
艦橋はひしゃげて崩れていたが司令部のような部分だけは辛うじて形を保っていた。
多摩「せい」ズゴッ
中に生存者がいたらどうするんだと言いたくなるような勢いでその壁をぶち破る多摩姉。
どうせ居ないとは思うけど。
北上「え?」
中は案の定悲惨な事になっていた。
だが、それはどう考えてもありえない状態だった。
頭がなかった。
四肢がちぎれていた。
穿たれ、喰い破られていた。
それらはどう考えても艦上で受ける被害には思えないものだった。
615 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/05(水) 04:15:49.27 ID:nx/Lx4j80
多摩「アイツに出会わなかったのは実に幸運だにゃ」
北上「アイツって?」
多摩「深海棲艦だにゃ」
北上「確かにね。相当強い相手みたいだし…」
でも深海棲艦を指してアイツと呼ぶものだろうか?何か、何か知っているようにしか思えない。
多摩「これが艦長かにゃ」
北上「わかるの?」
多摩「着飾ってるからにゃ」
北上「ならほどね」
多摩「んしょ」ゴソゴソ
北上「何漁ってるのさ」
多摩「遺品の1つでも持って帰りゃいいお土産になるにゃ」
616 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/05(水) 04:16:36.54 ID:nx/Lx4j80
多摩「これとか良さそうにゃ」
北上「家族の写真ってホントに持ってるもんなんだね」
多摩「北上」
北上「なにさ」
直後、爆発音と激しい揺れが襲う。
北上「うわっ、いよいよ逝ったかな!?」
多摩「スタコラサッサだにゃ!」
来た時とは別の壁をぶち破って甲板に出る。
後は走って海に飛び込んで、飛び込んでいいのかな?結構高さあるけど艦娘なら平気?
北上「これ飛び降りるしかないの?」
多摩「北上」
北上「ん?」
多摩「さっき見た事は誰にも言うなにゃ」
北上「え」
多摩「多摩が提督に話しておくにゃ」
北上「いや今はそれよりもね」
多摩「急ぐにゃ」ピョン
うわサラッと飛び降りよった。
北上「ええいままよ!」ピョン
617 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/05(水) 04:17:08.87 ID:nx/Lx4j80
球磨「そい!」ガシッ
北上「わわっ!?」
木曾「ナイスキャッチ」
北上「死ぬかと思った…」
大井「無事ですか北上さん!!」ガシッ
北上「平気平気〜」
多摩「あれくらいなら平気にゃ」
北上「先にそれ言ってよね」
木曾「別艦隊が見えてきたな」
北上「何それ」
球磨「ちゃんとした救援部隊だクマ。現場の事はむこうに任せてさっさと秋刀魚食べに戻るクマ」
多摩「だにゃあ」
北上「疲れたぁ」
大井「お風呂入らなきゃですね」
木曾「本当だ、色々と臭いな」
618 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/05(水) 04:17:40.77 ID:nx/Lx4j80
北上「さてと、行きますかね」
大井「北上さん」ギュッ
北上「どったの大井っち?」
大井っちが私を抱きしめてきた。なんだかこういうのも久々な気がした。
大井「その…ごめんなさい…」
北上「え?」
思わず振り返ろうとしたけどしっかりと抱きつかれてるから大井っちの顔は見れなかった。
というより、大井っちが表情を見せまいとしているようだった。
北上「別に怪我とかないから平気だって。それより早く帰ろうよ」
大井「…はい。そうですね。秋刀魚もありますし」
北上「私はもう食べちゃったけどね」
大井「そんなに食べたかったんですか?」
北上「なんか面白そうだったし」
619 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/05(水) 04:18:08.81 ID:nx/Lx4j80
炎上する船から離れる。
北上「まだ沈まないんだね」
多摩「余程丁寧に攻撃されたみたいだにゃ」
球磨「穴さえあかなきゃ案外丈夫なもんクマ」
木曾「外はどうだった?」
球磨「静かなもんクマ。船の一部が浮いてたくらいクマ」
北上「私もそっちのが良かったなあ」
球磨「どっちの船かも分からない状態だったけどクマ」
どっちの、か。
あの燃える船か、
影も形もなかった護衛の方の艦か。
620 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/05(水) 04:18:40.81 ID:nx/Lx4j80
大井「中は、中はどうでしたか?」
多摩「酷いもんだったにゃ」
大井「そうですか」
立ち上るドス黒い煙を振り返る大井っち。
トラウマになるくらいだ。大井っちは私と違って随分と人間に思い入れがあるらしい。
共感と言うべきかな。
こういうのも案外、提督への想いから来ているのかもしれない。
大井っちにとって人間は結構自分に近い存在なのだろう。
私は飼い主以外どうでもいい感じなのかな?改めて考えるとなんだか酷く冷たい気がするけど。
621 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/05(水) 04:19:18.87 ID:nx/Lx4j80
帰投してみると鎮守府は随分と騒がしくなっていた。
何があったか情報が錯綜しているようだった。
そのせいか皆帰投した私達に妙によそよそしいというか、どう対応するべき決めかねているようだ。
仕方ないといえば仕方ない。
飛龍「おかえりーー!!」ビュン
多摩「にゃ」サッ
球磨「ヘブゥッ!?」ドゴ
多摩姉に向かって飛んできた人間ロケット、もとい飛龍さんだったが多摩姉=サンのネコ動体視力による回避で球磨姉=サン刺さった。ナムアミダブツ。
飛龍「皆!大丈夫だった!?」
多摩「今腕の中で息絶えたヤツ以外は無事にゃ」
球磨「」
飛龍「よかったぁあ!!」ギュウ
球磨「グォォオォオオォ」
多摩「だからよくないにゃ」
木曾「く、球磨姉!」オロオロ
大井「空母の腕力…」
北上「こりゃ球磨姉もお風呂かな」
622 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/05(水) 04:19:47.01 ID:nx/Lx4j80
多摩「提督への報告は多摩がしておくにゃ」
飛龍「私も行こっか?」
多摩「こっちはいいから球磨を風呂に連れてけにゃ」
飛龍「はーい」
球磨「」
また球磨姉は飛龍さんの腕の中だ。というか飛龍さん球磨姉をぬいぐるみ扱いしてないだろうか。
木曾「俺らも風呂入るか」
北上「だねー。このまま部屋には行きたくないや」
大井「折角ですし私も」
623 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/05(水) 04:20:18.09 ID:nx/Lx4j80
北上「あっ」
木曾「どうした?」
北上「忘れてた、ちょっと提督んとこ寄ってくね」
大井「私も行きましょうか?」
北上「いやあちょっと寄るだけだからいいよ、先行っといて」
木曾「おう」
飛龍「…北上も中見たんだっけ」
北上「船の?見たけど」
飛龍「そっか。じゃ先行ってるね」ヒラヒラ
木曾「球磨姉さん生きてます?」
飛龍「髪の毛モコモコだからまだ生きてると思う」
大井「そこで判断しないでください…」
624 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/05(水) 04:20:53.59 ID:nx/Lx4j80
提督に聞きたい事があった。
大井っちのあの反応。提督はアレについてどう思っているのだろうか。
それと、多摩姉が誰にも言うなといったあの惨状。
今多摩姉は提督と話しているはず。それを聞いておきたい。
皆にぞんざいに扱われるせいか妙にボロっちい提督室の扉に耳を当ててみる。
提督「間違いなしか」
多摩「間違いなしにゃ。他にもあんな事する奴がいる可能性について考えなければ、だけどにゃ」
提督「それは考えないでおこう」
多摩「いいのかにゃ?最悪を想定しなくて」
提督「自分じゃどうしようもないことにまで頭を悩ませても意味は無いだろ」
625 :
し
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/05(水) 04:21:25.90 ID:nx/Lx4j80
提督「詳細は吹雪に伝えておいてくれ」
多摩「書類は嫌にゃ」
提督「書類はいいよ。前に記録を全部PCに移したんだ」
多摩「おー。時代の波だにゃ」
提督「だからレポートはスマホかPCで出してくれ」
多摩「結局書かなきゃダメなのかにゃ」
提督「手書きよりは随分とマシだろ」
多摩「それはまあそうにゃ」
提督「見た映像は明石に頼んでいくらかデータ化して貰ってくれ」
多摩「はいにゃ」
会話が止まり足音がした。
まずい多摩姉部屋を出る気だ!
急いでドアから離れ
多摩「あ、そうだにゃ」
足音が止まると同時に私も思わず止まる。
626 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/05(水) 04:22:09.62 ID:nx/Lx4j80
提督「なんかあったか?」
多摩「北上も見てるにゃ」
提督「な!?アイツ連れてったのか!」
多摩「球磨と多摩で分かれて、大井があれだから編成上仕方なかったにゃ」
提督「外の見張り増やすか木曾に付けるか出来ただろ」
多摩「木曾じゃ頼りないにゃ」
提督「でもなあ!」
多摩「提督はまだ諦めるつもりはないのかにゃ」
提督「まだも何もこれからだろ」
多摩「にゃ」
提督「多摩、お前」
多摩「多摩は基本的に姉妹第一にゃ。提督にとってそれが第一のようににゃ」
627 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/05(水) 04:22:49.00 ID:nx/Lx4j80
多摩「それじゃあにゃ」ガチャ
あ、やば、忘れてた、
扉が私のいた方に開く。
木の板にさえぎられ多摩姉は見えないし、多摩姉も私はまだみえてない。
扉の影で体育座りで体を縮める。
お願いだからこのまま気付かずにどっかへ…
多摩「…」チラ
北上「ぇ」
628 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/05(水) 04:23:15.22 ID:nx/Lx4j80
一瞬チラと、でも確かにこっちを見た。
でもまるで何事も無かったかのように部屋を後にした。
どういうことだ?
予想外の事につい体育座りのまま閉まる扉の横で固まってしまう。
するとまた部屋の中から声がした。
吹雪「予想外でしたね」
提督「というかお前知ってたろ。あん時お前が無線出てたんだから」
吹雪「そう言えばそうでしたね」
提督「おい」
629 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/05(水) 04:24:16.04 ID:nx/Lx4j80
吹雪「いえ、実際多摩さんの言う通り仕方ないことだったとは思いますよ」
提督「それは分からなくもないけどさあ。というかなんで今隠れてたんだよ」
吹雪「なんとなく?」
提督「お前のなんとなくは信用できん」
吹雪「あはは、それはともかく仕方ないと言えるといえば言えます。でもその上でどうして多摩さんが北上さんを連れていったのか気になったので」
提督「仕方ないから、だけじゃないと?」
吹雪「だからまあ本人の言う通り姉妹第一ってことなんでしょうね」
提督「家族想いだな」
吹雪「ええ、本当に」
北上「…」
家族ねぇ。
630 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/05(水) 04:24:42.86 ID:nx/Lx4j80
吹雪「で、北上さんはどうします?見ちゃったみたいですけど」
提督「向こうから何か言わない限りは特に何も」
吹雪「言ってきたら?」
提督「…どうすっかなあ」
吹雪「ありゃりゃ、悩んでますねえ。即決かと思いましたけど」
提督「そうもいくかよ。でもあんまり悩んでる余裕はないよなあ」
吹雪「北上さんなら即聞きに来そうですしね」
提督「知識欲とかすげぇからなアイツ」
631 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/05(水) 04:25:17.82 ID:nx/Lx4j80
もう暫く聞いていても良さそうだが流石にそろそろお風呂に向かわねば皆に怪しまれる。
多摩姉は一体どういうつもりなのだろうか。
それに私は何を見たんだろうか。
今まであまり意識していなかった。
海には化け物がいて、私達はそれと戦うためにいるんだ。
私もそうあるべきなのだろうか。
艤装を付けていない今なら、私も何かあればあの人達のようにこの深緑の制服が血に染まるような弱い存在だ。
北上「やっぱ怖いよねぇ」
猫はやはり海に出るべきじゃない。
632 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/05(水) 04:29:12.77 ID:nx/Lx4j80
そろそろ佳境。
船って以外と簡単に沈まない、という根拠の無いイメージがあります。
633 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/05(水) 13:07:40.84 ID:7lS7XXpF0
ものすごーく雑にいうと軍用は二重船底でコスト高いけど沈みにくくて商用はパカスカ沈む
コスト削減した輸送艦は轟沈型と皮肉られる程のオワタ式でそれはもう…
香取型も予算節約で一重だったんで艦娘になっても驚異の脱衣率
634 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/05(水) 22:11:02.29 ID:wFe7dtieO
そのイメージ多分タイタニックのせいだと思うんスよ……
635 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/05(水) 23:51:15.95 ID:iCY/F1ba0
更新お疲れ様です
現代艦船だと沈みにくいってのは実際にありますです
作りの問題でもあると思うし一箇所に穴開いても防壁きちんとすれば浮いていられるし
当たり所の問題のような気もする
636 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/06(木) 15:35:05.79 ID:pM8SM5mx0
ついに佳境か……ずっと楽しませてもらってるから終わるのが惜しい
637 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/06(木) 19:58:42.28 ID:UBckaTlfO
乙なのね
タイタニック沈没を契機に国際海事協会IMOが船舶の安全基準を設定しだして、WW2で主に米が軍艦民間船問わずバカスカ沈めてデータ収集したのを
戦後に改めてIMOで集計ルール化して今の船舶は造られてるから、今時の船を沈めるってのは割とかなり大変
なおIMO基準に違反した仕上がりの船舶は予想外に脆いってのは、某斜め上の国で起きた客船事故のアレを見れば納得して貰える筈
638 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/11(火) 04:37:46.67 ID:svORIega0
様々な知識が!
あの時代の船は基本棺桶なんですね…
でも輸送船がやたら硬いというイメージは多分ワ級のせい
639 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/11(火) 04:38:45.29 ID:svORIega0
70匹目:mad enough to kick a cat
猫のケツを蹴るくらいイカれてる、という意味。
つまり頭おかしいよってこと。
夕張「あんっ//」
明石「どう?」
夕張「ごめん普通にくすぐったい」
目の前の状況をごく簡単に説明するとしたら
制服姿で両手を後ろで組み目隠しをした状態で椅子に座っている夕張と
その夕張のおへそ辺りを筆でいじっている明石
となる。
どう考えても何も見なかったことにして逃げ出した方が賢明な状況なのだがあまりにも訳が分からなすぎて聞かざるを得なかった。
北上「何やってんの」
夕明「「兵装実験」」
嘘をつけ。
640 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/11(火) 04:39:21.40 ID:svORIega0
北上「とりあえず吹雪に報告をば」
夕張「違う!違うの!これにはマリアナ海峡より深いわけが!」
明石「」ウンウン
北上「目隠し拘束状態の痴女に説得されてる私」
あとマリアナは海峡ではなく海溝だ。
夕張「私今そんなに見た目酷いの?」
明石「言わなかったけど正直誰かに見られたら人生終わるくらいには」
夕張「マジっすかサンデー。というかなんで!なんで言わなかったのそれ!」
明石「いやほら、ギャグボールは流石にやめようってなったから相対的にまともに見え始めたというか」
北上「サラッとギャグボールとか言わないで欲しい」
夕張「うぅ…ここは第一発見者が北上で良かったと安堵すべきか」
北上「目撃した身としてはもう気が気じゃないけどね。惨殺死体に負けずとも劣らないレベルのショックだったけどね」
641 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/11(火) 04:40:00.29 ID:svORIega0
夕張「エr、薄い本でよくへそとかで感じてるのあるじゃん」
北上「そんな知ってて当然みたいな前提で話を振られても困るんだけど」
明石「アレってほんとに感じるのかなあって思って」
北上「そんなところで研究者魂見せないで」
夕張「物は試しと」
明石「感覚を鋭くするために目隠しを」
北上「あれ?ギャグボール要らなくない?」
夕明「「気持ちが入るかなぁって」」
北上「あぁ、そう…」
642 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/11(火) 04:40:34.17 ID:svORIega0
北上「そもそもなんでおへそなのさ」
夕張「胸はなんか1人だと虚しくなるし、二人だと凄く気まずい空気になる」
北上「え、実践済み?実践済み!?」
明石「下はクセになるのでこれ以上はヤバいってなった」
北上「何してたのホントにさ!?」
夕張「オモチャは作り放題なので」
北上「弄るのは身体じゃなくて兵装だけにしてよ…」
明石「ほら!私達も兵器みたいなものだし」
北上「だとしたら欠陥にも程がある…」
643 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/11(火) 04:41:13.13 ID:svORIega0
夕張「不思議な事にオn、自慰とかそういう事にのめり込んでる娘っていないのよね」
北上「不思議な事なのそれ」
明石「皆が普通の人間だとしてもヤってる人はヤってるもんでしょ?」
北上「知らないよ…」
夕張「ましてここは戦場。ストレスマッハのブラック職場なのにその捌け口としてオナニーや慰めックスレズックスに走るものがいないのは異常よ」
北上「さっきから頑張ってオブラートに包んでたのに一気にアウトなワードぶち込んできたね」
明石「男は提督1人なんだし同性愛者がワラワラ出てきてもおかしくないのに」
北上「そんな発想がワラワラ出てくる方がおかしいんだよ」
644 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/11(火) 04:41:44.89 ID:svORIega0
夕張「その提督だってヘタレパツキン(笑)だから手を出したりはしてないし。逆レされてる可能性は否定しないけど」
北上「そこははっきりと否定してくれると嬉しい」
明石「私達も別にストレスとかでこんなことしてるわけじゃないものね」
夕張「そうそう。あくまで知的好奇心」
北上「でもクセになりかけたんでしょ」
明石「そう、そこなのよ」
北上「え」
夕張「当たり前だけど私達も普通の人間みたいに快楽というか、そういうのは感じるのよ」
明石「例えばほら」ムニッ
夕張「アッ//」
夕張「」スッ
明石「ゴメン、マジごめん。だから白熱電球はやめてマジやばい」
北上(何故白熱電球…)
645 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/11(火) 04:42:19.36 ID:svORIega0
夕張「私はここの、ほら。胸の下あたりが弱い。あと脇」ヌギ
北上「見せんでええわ」
明石「私は「明石のはちょっと刺激が強いからNG」えー」
北上「なんかすっごい気になるけど聞かないことにする」
夕張「まあそんなわけで私達にも性感帯はある」
明石「にも関わらずそれに溺れたりする者がいないのよ」
夕張「生物の三大欲求にも挙げられる性欲だけど何故か私達はそれが薄い。食欲睡眠欲は人並みにあるのに」
明石「慰安は様々な戦場で問題になるくらい切り離せない問題なのに何故か。私達が女だからか」
北上「前半のアレがなければ真面目な話に聞こえるのに…」
646 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/11(火) 04:42:57.55 ID:svORIega0
夕張「まず基本的に私達は子孫を残せない。生殖能力がないから」
明石「ゴムなしヤリ放題よ」
北上「サイテーだよ台無しだよ」
夕張「でもそうなると余計に快楽だけを目的にしてしまうと思うの」
北上「そこはまあ確かに」
明石「つまり艦娘にないのは生殖能力というより生物としての基本的な意識。能力ではなく遺伝子を残さなきゃという意識」
夕張「ヒトの形をしてはいるけれど生き物としてある意味もっとも根本的な意識が欠落していると思うのよ」
北上「んーどうなんだろ。普通の人間の意識って私達にはわかりようがないからなんとも言えないや」
夕張「一般人と触れ合う機会もないものねー」
明石「あー聞きたい弄りたいー」
夕張「JKをハイエースでダンケダンケしたい」
明石「怪しい薬とか触手とか試してみたい」
北上「二人にないのは常識だよ」
647 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/11(火) 04:43:48.27 ID:svORIega0
夕張「お腹はすくから食欲はある。眠くなるから睡眠欲はある」ゴソゴソ
明石「でも何も食べてなくても燃料と弾薬があれば戦える。不眠不休でもそれで死ぬ事は無い」ヌギヌギ
夕張「人間らしさはあるけれど生き物とはおおよそ考えられない」ギシギシ
明石「血は流れてるけれどそれはあくまで身体を維持する機能で、親から子へと受け継がれる遺伝的な血ではない」ゴロン
夕張「血は水よりも濃いというなら私達の場合血は海水よりは薄いってとこでしょうね」チャキ
北上「真面目に語っているところ悪いんだけどなんで明石は服脱いで横になってて夕張は筆と目隠しの用意をしているの」
明石「次私の番だから」
夕張「さっきは私がやられたので」
明石「お互い平等にと」
夕張「被験体は多ければ多いほどいいものね」
北上「なんでそういうとこだけ良識あるのさ」
648 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/11(火) 04:44:27.10 ID:svORIega0
夕張「北上もどう?気持ちいいよ」ナデナデ
明石「んーそこは微妙」
北上「興味が無いと言ったら嘘になるけど本能が全力で拒否してる」
夕張「そういえば大井はどうなの?」コショコショ
明石「ちょ、そこ鼻は、ハックション!!」
北上「んー。そういう事はしてこないなぁ。単純に姉妹として私の事が好きってことなんじゃない?」
夕張「ちぇーつまらないのー」コチョコチョ
明石「アハハハだめぇ脇は弱アヒヒヒィッ」
北上「私はほっとしたけどね」
夕張「そういえば大井の機嫌は治ったの?なんか調子悪かったって」ギュッ
明石「え、何結んでるの?」
北上「治ったよ。提督と無事ゴールインできたからじゃないかな」
夕張「え!?結ばれた!?」ガタッ
明石「わっ!びっくりした…目隠しって結構怖いわね」
649 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/11(火) 04:44:56.00 ID:svORIega0
夕張「ちょっとちょっと〜その話詳しく聞かせなさいよ〜」
明石「あれ?夕張〜?」
北上「いや私も詳しくは知らないよ?」
夕張「よーし調査よ!ありとあらゆる手を尽くして暴いて洗ってさらけ出してやるのよ!」
明石「ちょ、どこ行くの?ねぇこれ私縛られてない!?手が動かないんだけど!」
北上「さらけ出すのはともかく私も気にはなってたんだよねえ」
夕張「そうと決まれば早速、善は急げ!」
明石「怒ってる?やっぱさっきの怒ってる?」
北上「え、明石は?」
夕張「ほっとこう」
明石「怒ってたぁぁ!!思った以上に怒ってたあぁぁ!ゴメンて!謝ったじゃん!仕返しにしてもこれはやりすぎよ!」
650 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/11(火) 04:45:26.44 ID:svORIega0
ホントに明石を置き去りにしたぞこのお中元。
夕張「よし」カタン
北上「別に作業中って札を下げればいいというものでは無いと思うんだ」
夕張「マジにヤバかったら艦娘パゥワァーでなんとかなるでしょ多分」
北上「…で調査って一体なにするの」
夕張「とりあえず提督室に盗聴器をね」
北上「当たり前のようにそういう発想が出てきて尚且つ当然のように盗聴器持ってるってのが…」
夕張「探偵七つ道具のひとつだもん!」
北上「残りは」
夕張「嘘発見器」
北上「推理する気ねえ」
651 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/11(火) 04:45:55.93 ID:svORIega0
なんの躊躇もなく提督室へ向かう。
夕張「前々から盗聴器は仕掛けたいなって思ってたのよ」
北上「えぇ何故に」
夕張「提督の弱み握って手篭めに」
北上「男女逆じゃんか」
夕張「ジョーダンジョーd」バコン
北上「うわっ!?」
突如横の部屋の扉が思い切り開き夕張の顔面にぶち当たる。
もし私が廊下のそっち側を歩いていたと考えるとゾッとする。
652 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/11(火) 04:46:43.10 ID:svORIega0
北上「ってあれ、吹雪?」
吹雪「きーきーまーしーたーよー夕〜張さん」
夕張「顔は、顔はアカンて吹雪ちゃん…」
吹雪「はいはい今治療してあげますからね〜お話はそこでじっくり」
夕張「違うの!ちゃうねん!これには吹雪ちゃんの胸の谷間くらい深い理由が!」
吹雪「海抜ゼロメートルじゃないですか!!」
夕張「自分でそこまで言わなくても…」
北上「何故流れるように煽るのか」
653 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/11(火) 04:47:09.41 ID:svORIega0
吹雪「はーいとりあえず工廠行きましょうね〜」
夕張「ちょ!なんで?なんで工廠!?」
吹雪「どーせ碌でもない事してたんでしょう」
夕張「してない!断じてしてない!」
吹雪「してたんですね」
北上「してたね」
夕張「北上ぃぃぃ!!」
北上「アレに関しては私無関係だし…」
吹雪「言い訳は海の底で聞きます」
夕張「ヒィッ!?」
654 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/11(火) 04:47:53.64 ID:svORIega0
夕張が連れ去られていく。
北上「もしかしてマゾなのでは」
割と有り得そうな仮説だ。
北上「そういやこの部屋ってなんだ?」
吹雪が出てきた部屋を見る。
印刷室。と書いてある。
最近印刷機は使わないからと例の倉庫に置かれていたはずだが。
中を見ると何故か部屋はがらんとしていた。
机が壁際にあるだけ。壁や床、机の上の跡から察するに印刷系の機材は捨てた後という事だろう。
つまり元印刷室か。
そんな中奥に一つだけ機材が置いてあった。
北上「確かー、シュレッダーか」
印刷室時代の唯一の生き残りか。
印刷機達の後処理としてまだ使われているらしい。それもいずれ、廃棄されるのだろうけれど。
いずれ役目は終わる。
なんだか親近感が湧く。
655 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/11(火) 04:48:30.67 ID:svORIega0
北上「てこれ途中じゃん」
シュレッダーの電源は入れっぱなしだし横には処分予定の書類が置いてあった。
まだ文庫本くらいの太さの量が残っている。
好奇心のままに書類を手に取ってみる。
内容は、海域の何やら難しい情報。
深度とか海流、温度に風。頭痛くなりそう。
北上「あまり読む価値はなさそうかな」
パラパラと流し読みに変える。
すると急に沢山の画像が目に入ってきた。
それは船だった。私達ではなく船としての船。
そしてその画像には見覚えがあった。
船ではなく、その傷、損傷に、弾痕に。
656 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/11(火) 04:48:59.92 ID:svORIega0
日付は10年も前のだ。
ページをめくるとその被害などが細かく書かれていた。
同じような事件は他にも何件もあるようで、残りのページは全てそれらに関するものだった。
いや、既にシュレッダーにかけられた分も考えれば更にか。
まだ無事な書類の1番最後のページをめくる。
これ以降は既にシュレッダーに喰われている。故にこの事件についての情報量は少ない。
画像はなく僅かな文字だけが書いてあった。
日付は1年前の夏。
大型の船が沈み多くの被害が出たそうだ。
657 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/11(火) 04:49:45.39 ID:svORIega0
一字一句しっかり読み進めていく。
それはこの前私達が関わったあの海外船の事件と似ていた。
船から連絡が途絶え護衛艦隊は全滅。生存者のいない船だけが残った。
違ったのは、駆け付けた救援の艦隊がそこにいた深海棲艦と戦闘をし、追い払っている事。
最後の数行で目がとまる。
北上「やばっ」
この時その音を聞き逃さなかったのは実に運が良かったとしか言いようがない。
廊下から聞こえた音が吹雪達である確証はないけれど可能性がある以上ここにいるのはまずい。
これが見られていいものとはとても思えない。
しかしどうしようか。廊下に出れば確実に見つかる。
しかしここには廊下に繋がるドアと窓しか…
658 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/11(火) 04:50:20.56 ID:svORIega0
吹雪「はぁ…」
窓越しに深い溜息が聞こえた。
暫くしてシュレッダーが紙を食べる音がする。
どうやら気づかれてはいないようだ。
窓がちゃんと開くタイプでそれなりの大きさであることも、ここが一階だった事も実に運がいい。
猫の体だったら小さな窓でも部屋が二階でもなんとかなったろうに。
いや高さはこの身体ならなんとかなるか。
窓から見えないように姿勢を低くしながらその場を離れる。
頭の中では二つの単語がずっと反復していた。
最後の数行。
作戦に参加したという艦隊の中にあった大井っちの名前と、初めて聞く深海棲艦の分類名。
レ級という単語が。
659 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2018/12/11(火) 04:52:16.53 ID:svORIega0
ラスボス!君に決めた!
誰にするか迷いましたが最近サラトガ任務でトラウマを植え付けられたのでコイツにしました。ダブルはだめですよダブルは…
660 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/11(火) 08:51:27.61 ID:Q7knn3UlO
おつ!
661 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/11(火) 10:43:38.79 ID:+fZBhT8N0
ラストは警戒陣で待ち受ける7人のレ級ですねわかります
662 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/11(火) 13:10:36.30 ID:YE0v4dUZo
おつかーレ
663 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/12(水) 21:49:23.55 ID:AZpYUdUcO
吹雪ちゃん意外とおっぱい有るぞ
アニメだけど……
664 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/05(土) 03:13:41.01 ID:ul40+rcH0
アニメ盛りなんてお父さん認めません!
謹賀瑞雲
遅くなって申し訳ない
年末年始って何やかんやで忙しいのはどうしてなんでしょう、新年ボイスを聞きたいだけだというのに
まだ続くので今年もお付き合いくださいませ
665 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/05(土) 03:14:21.21 ID:ul40+rcH0
72匹目:猫と天敵
天敵。
それは絶対に関わりたくない危険な相手。
見た瞬間脳が危険信号を発し全身が逃げの体制をとる。
本能的にヤバいと察するもの。
すなわち
666 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/05(土) 03:14:55.86 ID:ul40+rcH0
阿武隈「あ、北上さん!」
北上「げっ」
と思わず声が漏れたのは廊下の角から阿武隈が見えたからではない。
阿武隈が私の天敵を連れて歩いてきたからだ。
それも、大量に。
暁「あ、ホントだ」
江風「おっしゃ捕まえろー!」
響「ypaaaaa!」
神風「うらーー!」
浦風「浦ーー!」
北上「なんでっ!?」ダッ
踵を返し全速力で元来た道を戻る。
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