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幼馴染「ずっと前は好きだったよ」 男「えっ」
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592 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2020/09/09(水) 01:00:50.84 ID:h8rnv4zg0
路地裏
副部長「ここまでくれば大丈夫でしょう」
幼馴染「どうしてあんなことを……」
副部長「悲しそうな顔をしている部長を見たら、つい……」
幼馴染「……そう。また、そんな顔を……」
副部長「何があったんですか?」
幼馴染「実は……」
593 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2020/09/09(水) 01:05:41.55 ID:h8rnv4zg0
・
・
・
副部長「なるほど。進路の話で喧嘩になったわけですね」
幼馴染「……どうして男は私の気持ちをわかってくれないんだろ」
副部長「他人ですもん。わかるわけありませんよ」
幼馴染「でも、私たちは……」
副部長「恋人ですよ? しかし、他人は他人です。相手の気持ちがわからないのは当然ですよ」
幼馴染「そうかもしれないけど……」
副部長「友人だろうが兄弟だろうが恋人だろうが夫婦だろうが、相手に気持ちを理解してもらう方法は一つしかありません。ちゃんと話をしないといけないんですよ」
副部長「それを拒否した部長に男さんを悪く言う権利はありません」
594 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2020/09/09(水) 01:09:30.45 ID:h8rnv4zg0
幼馴染「そんな話をしたら、男はきっと止めるから……」
副部長「なら、男さんの反応は予想できてたんでしょ。なのにどうして、逃げ出す必要があるんです。あんな悲しそうな表情したんですか」
幼馴染「だって……」
副部長「……いい加減にしろよ!!」
幼馴染「ふ、副部長……」
副部長「部長は男さんの彼女なんだろ! なんで、話もせずに逃げ回ってるんだよ!!」
副部長「傍にいて欲しいなら、男さんが納得するまで徹底的に話し合えよ!!!」
無口っ子「……副部長、それくらいにしておきなよ」
幼馴染「ムッティ……いつからいたの……?」
無口っ子「……最初からいたよ」
595 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2020/09/09(水) 01:14:08.56 ID:h8rnv4zg0
駅前
元気っ子「大丈夫ですか?」
男「う、ううん……なんとかね」
真面目っ子「副部長はなんでこんなことを……」
男「……俺が悪いんだ。俺が幼の気持ちを……」
生意気娘「まあ、そうだろうな」
元気っ子「最後まで話は聞いてあげようよ」
生意気娘「部長が悪いわけないだろ。こいつに責任があるに決まってる」
生意気娘「いいか。私はお前を部長の彼氏だなんて認めてない。でもな」
生意気娘「部長がお前のことが本当に好きで、お前といるのが幸せなんだってことはわかる」
真面目っ子「そうですね。それは間違いないです」
元気っ子「男さんと付き合ってからの部長、幸せそうだもんね」
生意気娘「だからまあ……部長のこと頼むよ」
男「……頑張るよ」
596 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2020/09/09(水) 01:18:04.74 ID:h8rnv4zg0
繁華街
後輩「さあ、行きましょう!」
男友「……なあ、もうやめにしないか」
後輩「何を怖気づいているのです! 新たな一歩を踏み出しましょう!」
男友「いや、しかし……」
後輩「仕方ありませんね。先輩は天井の染みを数えているだけでいいですよ。私に身を任せてください」
男友「そんな初体験は嫌だ!」
後輩「大丈夫ですよ! 痛いのは私だけ!」グイッ
男友「誰か助けてくれーー!」
幼馴染「えっ」
後輩「お、幼先輩!?」
597 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2020/09/09(水) 01:19:56.99 ID:h8rnv4zg0
後輩「どうしてこんなところに?」
男友「それも一人でなにやってるんだ?」
幼馴染「……なにやってるんだろうね」
男「あ、幼……」
幼馴染「……っ」
後輩「幼先輩?」
男友「なにやってんだ、お前?」
男「なにって……」
後輩「男先輩」ニコッ
男「え?」
後輩「今です! 先輩! 幼先輩を連れて逃げてください!」
男友「は?」
後輩「早く!」
男友「お、おう……じゃあ、行こうか」
幼馴染「あ、はい……」
男「ま、待ってくれ!」
幼馴染「ダメです!」ベチン
男「やっぱりこうなるのか……」バタン
598 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2020/09/09(水) 01:33:26.70 ID:h8rnv4zg0
幼馴染「……デートの邪魔してごめんなさい」
男友「まあ、いいけど……」
幼馴染「私、もうダメだぁ……」
男友「男と何かあったのか?」
幼馴染「……進路のことで言い合いになっちゃって」
男友「なんだ、そんなことか」
幼馴染「そんなこと!?」
男友「それくらいなら話をすれば解決するだろ」
幼馴染「だよね……」
599 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2020/09/09(水) 01:34:23.90 ID:h8rnv4zg0
男友「なら、早いとこ男のところに戻ろうぜ」
幼馴染「……今は無理」
男友「君さあ……」
幼馴染「うまく話せる自信ないもん」
男友「よく言う。寂しそうな顔してるくせに」
幼馴染「え!?」
男友「男に会いたいって顔に書いてあるよ」
600 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2020/09/09(水) 01:35:49.25 ID:h8rnv4zg0
男友「会いたいなら会えばいいだろ」
幼馴染「……でも、また喧嘩したら……」
男友「すればいいだろ。恋人なんだから、喧嘩くらいするだろ」
幼馴染「君は……後輩ちゃんと喧嘩するの?」
男友「そりゃあな」
幼馴染「その時はどうするの……?」
男友「徹底的に話し合うな。まあ、最終的には後輩に丸め込まれるんだけど」
幼馴染「……すごいね。私は怖いよ。このまま別れてしまいそうで」
男友「逃げ続けたら、いずれそうなるだろ」
幼馴染「……っ」
男友「それが嫌なら、ちゃんと話してこいよ」
601 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2020/09/09(水) 01:38:42.08 ID:h8rnv4zg0
繁華街
後輩「ごめんなさい。突然、叩いたりして……」
男「いいよ。今日は痛い目を見る日らしい」
後輩「幼先輩と喧嘩したのですね?」
男「……うん」
後輩「やっぱり……何かあったのかは聞きません。ただ、幼先輩にあんな表情させないでください。幼先輩には幸せであってほしいのです」
男「幼はどんな顔してた……?」
後輩「寂しそうな顔をしていました」
男「そうか……」
602 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2020/09/09(水) 01:39:31.78 ID:h8rnv4zg0
男「一つ、聞いていいかな?」
後輩「なんでしょう」
男「……君はどうして、バスケ部に入部したの? 友と一緒にいられる時間が減るのに」
後輩「決まっているじゃありませんか。先輩が傍にいてくれるからですよ」
男「……」
後輩「先輩が卒業してからでは、バスケ部に入ることはできません。入部直後の苦しい時間を支えてくれる人がいないのですから」
後輩「先輩が傍にいてくれる。それだけで私は強くなれる気がするのです」
後輩「幼先輩も一緒なのだと思いますよ」
603 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2020/09/09(水) 01:47:01.77 ID:h8rnv4zg0
夜 公園
幼馴染(……)
ガサッ
幼馴染「男!?」
「にゃーん」
幼馴染(……逃げ出したくせに、ここで男を待っているなんて、私って本当に馬鹿)
幼馴染(私から会いに行かないといけないのに。私の想いを伝えないといけないのに……)
幼馴染(男に拒絶されるのが怖くて動けないの……)
幼馴染「おとこぉ……」
男「……幼」
幼馴染「どうしてここに……?」
男「10時に集合って約束したからな」
604 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2020/09/09(水) 01:48:00.79 ID:h8rnv4zg0
男「お前の気持ちを考えないで、頭ごなしに否定してごめんな」
幼馴染「ううん……私が何にも相談しなかったのがいけないんだよ……」
男「……推薦断って、どうするつもりなんだ?」
幼馴染「都内の大学からも話があって、ウィンターカップで全国に出たら、推薦でとってくれるの。そのチャンスにかけることにする」
男「それがもしダメだったら?」
幼馴染「その時は一般入試で行くよ。強豪大学は難しいかもしれないけど、バスケができる大学は他にもあるから」
男「……そうか」
幼馴染「私には男が必要なの。傍にいて欲しいの」
幼馴染「離れるなんて……嫌なの……」ポロポロ
605 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2020/09/09(水) 01:51:51.97 ID:h8rnv4zg0
男「……今日さ、幼を追いかけてるときに色んな人に会っただろ。みんなに言われたよ。幼を幸せにしてくれ、って」
男「それで、ようやく気がついたんだよ。幼が俺を求めてくれるのなら、傍にいるべきなんだって」
男「俺で……本当にいいのか?」
幼馴染「男じゃなきゃ嫌なの」
男「傍にいていいの?」
幼馴染「ずっとずっと、私の隣にいて」
男「幼ちゃん……」ギュウウ
幼馴染「大好きだよ、男くん……」
606 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2020/09/09(水) 01:53:45.96 ID:h8rnv4zg0
翌日 西高 体育館
副部長「部長……昨日は怒鳴ってしまってすみませんでした」
幼馴染「ううん。むしろ、助かったよ。ありがとう」
副部長「ぶっちょー……」
幼馴染「ウィンターカップでは絶対に全国に行くんだから! よーし、今日もガンガンやるよー!」
副部長「げっ……」
幼馴染「さあ、ウォーミングアップでステップワーク30本いくよ!」
副部長「やりすぎ! ウォーミングアップから飛ばしすぎ!!」
607 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2020/09/09(水) 01:55:27.14 ID:h8rnv4zg0
喫茶店
会長「……そうか。万事解決か」
男「心配かけて悪かったな」
会長「いや、別に心配してないけどね」
男「お前なぁ……」
会長「だって、君たちがそんなに簡単に別れるなんて思ってないからね」
男「……お前たちも幸せになれるといいな」
会長「ああ、そうなれるように全力を尽くすよ」
608 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2020/09/09(水) 01:56:18.27 ID:h8rnv4zg0
北高 体育館
後輩「そうですか……あの二人はちゃんと仲直りできたんですね」
女「あいつら、死ぬまであんなことやってそう」
後輩「あはは……でも、それはそれで幸せそうでいいのではないですか」
女「まぁ……ね」
後輩「そういえば、男さんから聞いたのですが、彼氏がいるそうですね」
女「いるのかなあ?」
後輩「はぐらかしてもダメです! ちゃんと紹介してくださいよ!」
女「さあ! 練習始めるよ!」
後輩「もう……お姉ちゃんてば……」
609 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2020/09/09(水) 02:03:09.05 ID:h8rnv4zg0
西高 校門前
男「悪い! 遅くなった!」
幼馴染「本当だよー。すっごい待ったんだから」
男「そこはお前さあ……」
幼馴染「寂しかったんだよ?」
男「……ごめん」
幼馴染「言葉より行動がほしいなあ」
男「はいはい……」ギュー
幼馴染「えへへ!」
610 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2020/09/09(水) 02:03:42.26 ID:h8rnv4zg0
男「なんか、大学に行ってもこんなことやってそう」
幼馴染「大学? 違うよ。社会人になっても、結婚しても、お爺ちゃんお婆ちゃんになっても、ずっと二人仲良くやっていくの」
男「それ……最高だな」
幼馴染「ずっとずっと一緒にいようね!」
END
611 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2020/09/09(水) 02:04:28.65 ID:h8rnv4zg0
これで終わりです。
長い間ありがとうございました!!!
612 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/12(土) 10:31:20.38 ID:4MtJ01CXO
終わりか?
もっと書いてもいいのに
乙でした
613 :
◆TMTTBwd/ok
[sage]:2020/09/12(土) 15:59:44.90 ID:IzRpQgpT0
>>612
ありがとうございます!
614 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2021/06/17(木) 11:09:38.64 ID:HfIeryKS0
テスト
615 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/06/17(木) 12:35:04.48 ID:sHQ8w309O
お、続くのか?
616 :
◆TMTTBwd/ok
[sage]:2021/06/17(木) 13:22:18.93 ID:HfIeryKS0
>>615
まったく違うSSの投稿用にトリップの確認をしただけです!誤解させてすみません
617 :
◆TMTTBwd/ok
[sage]:2021/07/04(日) 14:16:49.52 ID:I8zrEh980
>>472
の女と会長の話を書いています。今月中には投下できるように頑張ります!!
618 :
◆TMTTBwd/ok
[sage saga]:2022/06/25(土) 17:58:39.03 ID:E6SrLWuk0
女と会長の話です
619 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/06/25(土) 18:00:43.87 ID:E6SrLWuk0
女「だーかーらー、別に隠していたわけじゃないんだってば」
後輩「嘘です! 私に打ち明ける機会はいくらでもあったはずです」
女「仕方ないじゃん。言い辛かったんだから」
後輩「開き直らないでください!」
女「だって、事実だしー」
後輩「気持ちはわからなくもないですが……私はお姉ちゃんから話してほしかったです」
女「ごめん……」
後輩「だから、洗いざらい全部話してもらいますからね!」
女「ええ……今日は疲れてるからまた今度ね」
後輩「わかりました。では、お話しいただけるまで一緒にお風呂は入りませんからね」
女「話す! ある事ない事全部話しちゃう!」
後輩「ある事だけ話してくださいね」
620 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/06/25(土) 18:01:44.72 ID:E6SrLWuk0
後輩「それで、彼氏さんはどんな人なのですか」
女「んーと、幼と男くんと同じ中学で、今は北高に通ってる人」
後輩「それは幼先輩から聞きました」
女「じゃあ、これは聞いた? 中学の頃からずっと幼に片想いしていたんだよ」
後輩「ええ!?」
女「男くんから会長と修羅場になってるって聞いてさ、なんか面白そうだなーと思って会いにいったらさ」
後輩「……」
女「目の前で幼と男くんのキスシーンを見せつけられたみたいで、すっごい落ち込んでやんの!」
後輩「……お姉ちゃんは彼氏さんのどこが好きなのですか」
女「それを探しているところだけど?」
後輩「今すぐ別れなさい!」
621 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/06/25(土) 18:04:01.23 ID:E6SrLWuk0
女「どうしたの急に。もしかして、ヤキモチ妬いちゃった? もう、シスコンなんだから」
後輩「お姉ちゃんにだけは言われたくありませんよ! 好きでもない人とお付き合いしているなんておかしいでしょう!」
女「でもさあ、両想いで交際を始めた人たちだっているだろうけど、ちょっと気になるから付き合ってみようかなみたいな軽い感じの人たちの方が大半なんじゃないかな」
後輩「そ、そんなことありません! 私や幼先輩は……」
女「君たちを世の中の基本にするのはどうかと思う」
622 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/06/25(土) 18:05:20.59 ID:E6SrLWuk0
女「まあでも……君たちを見ていて、羨ましく思ったのは事実だよ。恋をするとこんなにも人って変わるんだなって」
後輩「あはは……確かに、男さんなんて変わりましたよね」
女「だから、私も恋をしてみたいって思ったの。誰かを好きになった時、私はどうなるんだろうって」
後輩「……それで、どうなのですか。彼氏さんのことは好きになれそうですか?」
女「どうかなあ……いい人なんだけどさ、ちょっと、キザなところがあるんだよねー。そこがマイナスポイント」
後輩「それはきっと、お姉ちゃんのことが好きだからですよ。好きな人によく思われたいのは当然でしょう?」
女「そうかなあ。ただ単に格好つけたいだけだと思うけど」
623 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/06/25(土) 18:07:15.98 ID:E6SrLWuk0
翌日 朝
女「あれ、妹は?」
母「自主練するからって朝早くに出て行ったわよ」
女「さすが、バスケ部期待の星。今日はオフだっていうのに自主練とは。ウィンターカップに向けて頑張ってるね」
母「……あんたもバスケ部じゃなかったかしら。しかも、部長でしょう」
女「今日は部活休みだよ? ブランクのある妹は仕方ないけど、私が練習する意味がわからないよ」
母「ああ、そう……」
女「それに私、用事あるしー」
母「デート?」
女「……え、なんで知ってるの」
母「母親だからよ」
女「はぁ……妹が話したのね」
母「それだけ、あんたの事が心配だったんでしょう。ねえ、彼氏はどんな人なの。一度、会わせてよ」
女「えー、なんで紹介しないといけないのさ」
母「だから、母親だからよ」
624 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/06/25(土) 18:08:14.82 ID:E6SrLWuk0
母「あんたが誰かと付き合うなんてねえ……想像もできなかったわ」
女「そう?」
母「だって、妹のことを本気で好きだったじゃない。だから、このまま一人でいるのだと思っていたから」
女「……なんで、知ってるの」
母「母親だからよ。何度も言わせないで」
女「お母さんは……気が付いた上で何も言わなかったの?」
母「何かを話したところで貴女は納得したの? 諦めることができたの?」
女「それはそうだけど……」
母「むしろ、もっと意地になっていたでしょう」
女「……さすが、何でもお見通しだね」
母「当然でしょ。母親だもの」
625 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/06/25(土) 18:09:10.69 ID:E6SrLWuk0
母「まあ……正しい道に導こうとしなかった私は母親失格なのだけれど」
女「そんなことないよ。……うん。お母さんは適切な対応をしてくれたと思う。結果的には良い方向に向かったわけだしさ」
母「……そう言ってくれると助かるわ」
女「ちなみにお父さんは気が付いていたの?」
母「そんなに鋭い人だと思う?」
女「あはは……」
母「まっ、もし気が付いたとしても、あの人は何も言わなかったと思うわ。いえ、むしろ喜んだかもしれない。『これで他の男に奪われなくて済む!』って」
女「お父さんらしいわあ……」
626 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/06/25(土) 18:09:42.48 ID:E6SrLWuk0
女「ねえねえ、お母さんはお父さんのどこが好きになったの?」
母「急に何を聞くのよ」
女「いいじゃん。教えてよー」
母「そうね……幼馴染だったこともあって、ずっと一緒にいることが当たり前になっていたというのが本当のところかしら」
女「うっわ……ここにも幼馴染カップルがいたのか……」
627 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/06/25(土) 18:11:01.05 ID:E6SrLWuk0
母「そういえば……私はあの人のどこが好きになったのかしら?」
女「ちょっとやめてよ。これで離婚とかになったら笑えないよ」
母「バカね。するわけないでしょ。今さら離れるなんて想像もできないわ」
女「どこが好きなのかもわからないのに?」
母「長い年月一緒にいれば、そんなことはどうでも良くなっていくの」
女「そういうものかな」
母「恋人って非日常的なものだから強烈な恋心がないと物足りなくなってしまうかもしれないけれど、『夫婦』は日常だからね。穏やかな想いでなければ続かないのよ」
女「なるほどねえ……でも、そう考えると、私たちは大丈夫なのかな。別に『強烈な恋心』あるってわけでもないし」
母「あら、いいじゃない。それはそれで」
女「いいのかな」
母「いいのよ。それでも一緒に居られるってことはお互いを求めているってことなんだから」
628 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/06/25(土) 18:11:41.30 ID:E6SrLWuk0
移動中
女(お互いを求めている、か。そうだとしたら、会長は私に何を求めているのだろう)
女(妹は私のことが好きなんじゃないかって予想してたけど……たぶん、それはないな。だって、彼は幼のことを本当に好きだったから。そんな簡単に割り切れるものじゃないだろう。私のように)
女(だからきっと、失恋の傷を癒してくれる相手を欲しているんじゃないか)
女(……でも、それって最早、恋人じゃなくてセフレに近いような気がする。身体の関係はないけど、ただ自分の心の隙間を埋めるだけの存在として私を見ているのだから)
女(だとしても、彼を責めることはできない。もともと滅茶苦茶な理由を突き付けたのは私なのだから)
女(でも……)
女(……なんかむかつく)
会長「どうしたんだい、険しい顔をして」
女「……」
会長「えっと……」
女「とりあえず、今日は奢りで!」
会長「!!?」
629 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/06/25(土) 18:12:15.60 ID:E6SrLWuk0
カフェ
会長「僕、何かしたかな……?」
女「べっつにー」
会長「不満そうな顔で否定されても……」
女「女の子にはいろいろあるの」
会長「……そっか、そうだよね。男子にはわからない苦労があるもんね」
女「……一応、言っておくけど、生理じゃないからね」
会長「その発想はなかった」
女「ちっ……男子はいいよね。あの痛みを知らなくて済むんだからさ」
会長「僕はどうしたらいいんだい」
630 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/06/25(土) 18:13:09.07 ID:E6SrLWuk0
会長「何か思うことがあるならはっきり言ってくれ。恋人同士なのに隠し事なんておかしいだろう」
女「……じゃあ、聞くけどさ。幼のことまだ好きなの?」
会長「いきなりとんでもないこと聞くね!?」
女「恋人に隠し事は必要ないんでしょう」
会長「わかったよ……もうなんとも思ってないよ」
女「はい、絶対うそ」
会長「ええ……」
女「あんなに策を巡らせて手に入れようとするくらい好きな女の子だったんでしょ。簡単に諦めきれるわけないじゃん。特に男子って昔の恋を引きずるっていうし」
会長「あー、うん。まあ、好きだったけど」
女「……」ゲシッ
会長「な、なんで蹴るんだよ!」
女「あ、ごめん。無意識のうちに蹴っちゃった」
631 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/06/25(土) 18:13:50.92 ID:E6SrLWuk0
会長「最初はもちろん未練はあったよ。でも、今はないかな。君と一緒にいるうちになくなったよ」
女「なにそれ。じゃあ、そこまで幼のこと好きではなかったんじゃないの」
会長「そう思われても仕方ないかもね。でも、僕は君の傍にいるのが楽しくて仕方ないんだよ」
女「蹴られたりするのに? 会長ってドMなの?」
会長「いや、快感に感じるってわけじゃなくて、ああやって、ヤキモチ妬いたりするのはかわいいなって思う」
女「別にヤキモチじゃないし」
会長「ああ、そうだったんだ。ごめんね」
女「……むかつく」
632 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/06/25(土) 18:14:26.02 ID:E6SrLWuk0
会長「僕も聞きたいことがあるんだけどさ」
女「何よ?」
会長「君は失恋の痛みは忘れられたのかい? 相手が誰なのかわからないけれど、とても大事な人だったんだろう?」
女「……正直、悲しくなったり、寂しくなることはあるよ」
会長「そうか……」
女「それだけ? 怒ったりしないの?」
会長「忘れられないってことは、それだけ大事な想いなんだろう。だから、いいんじゃないかな。変に割り切ろうとすれば苦しむことになるから」
女「それはそうかもしれないけど……君はいいの?」
会長「さっき言っただろう。君の傍にいるのが楽しいって。だから、それでも君が僕と一緒に居てくれるなら、それでいいんだ」
633 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/06/25(土) 18:14:59.88 ID:E6SrLWuk0
会長「君は約束を果たしてくれたってことでいいんじゃないかな。君のことを好きにさせてくれたから」
女「こんな短期間で堕ちるなんてちょろすぎ」
会長「君がそれだけ魅力的なのさ」
女「寒い! その台詞寒すぎるよ! 夏真っ盛りなのに凍死しちゃいそうだよ!」
会長「そうやって照れ隠しするところもかわいいよ」
女「今のは本心なんだけどね」
会長「えっ」
634 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/06/25(土) 18:15:35.50 ID:E6SrLWuk0
女「会長くんのそういうところはあんまり好きじゃないかな!」
会長「ハッキリ言うね……」
女「恋人に隠し事は無用なんでしょう?」
会長「……君に良いところを見せたくて、つい……ね」
女「初対面で情けない姿を見せてるのに?」
会長「そうかもだけど……好きな人によく思われたいのは当然だろう?」
女「……」
会長「どうしたの?」
女「いや……うちの妹ってやっぱりすごいなって」
635 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/06/25(土) 18:16:08.07 ID:E6SrLWuk0
会長「妹さんが何か言っていたのかい?」
女「うん。別れなさいって」
会長「ええ!? ど、ど、どうしてだい?」
女「好きでもない人と付き合うのはおかしいってさ」
会長「それはそうだけども……」
女「まあ、安心して。私は別れるつもりはないよ」
女「君のことがまだ好きなのかわからないけど、君が私にとって必要な人なのは間違いないもん」
636 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/06/25(土) 18:16:41.64 ID:E6SrLWuk0
会長「それはよかった」
女「よくないわ!」
会長「え!?」
女「私は恋をするために君を選んだんだよ。その意味わかるでしょう?」
会長「が、頑張ります……」
女「ダメだ……全然わかってない。どうしてこう、大事なところには気が付かないのかな」
会長「え、えっと……」
女「つまり、私は君なら好きになれると思ったんだよ。失恋の痛みを知っている君となら、きっと新しい関係を築けるはずだって」
会長「っ……」
女「だから早く……」
女「私に恋を教えて」
END
637 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/06/25(土) 18:17:27.00 ID:E6SrLWuk0
以上です。ありがとうございました。
638 :
◆TMTTBwd/ok
:2022/09/25(日) 18:20:33.19 ID:Giept8vV0
ここってまだ新スレ立てられますよね?
639 :
◆TMTTBwd/ok
[sage saga]:2022/10/02(日) 15:58:54.62 ID:7AGwCm7j0
新スレです。宜しくお願いします。
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1664685567/
640 :
◆TMTTBwd/ok
[sage]:2022/10/31(月) 21:50:07.24 ID:judv35yn0
↑更新しました
641 :
◆TMTTBwd/ok
[sage]:2022/10/31(月) 23:00:52.73 ID:judv35yn0
新スレは後輩や幼馴染の子供たちの話となります
どこかのタイミングで後輩の話も書きたいなー、とは思ってますがいつになるのやら……
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