幼馴染「ずっと前は好きだったよ」 男「えっ」

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534 : ◆TMTTBwd/ok [sage saga]:2020/07/12(日) 12:08:03.37 ID:U9AT5Fbt0
幼馴染「もうやだぁ……」

姉「裸見られたくらいでそんなに落ち込むことないでしょう。昔は一緒にお風呂入った仲じゃない」

幼馴染「それはそうなんですけど……状況が状況ですし」

姉「貴女たちは交際しているのだから、セックスしてもおかしくないでしょう」

幼馴染「はっきり言いますね!?」

姉「まあ、最中に寝てしまうのはどうかと思うけど」

幼馴染「男に抱き締められたら安心しちゃって、つい……」

姉「私が叔母になる日は遠いわね」
535 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/07/12(日) 12:09:29.13 ID:U9AT5Fbt0
幼馴染「そういえば、男はどこに……?」

姉「夕飯の買い出しに行かせたの。半裸で寝ている幼ちゃんと同じ部屋にいさせるわけにはいかないでしょう」

幼馴染「あはは……」

姉「あいつが帰ってくる前に聞きたいことがあるのだけれど」

幼馴染「なんですか?」

姉「うちの大学の練習会をなぜ断ったの?」

幼馴染「……」
536 : ◆TMTTBwd/ok [sage saga]:2020/07/12(日) 12:14:57.09 ID:U9AT5Fbt0
姉「監督に言われたのよ。貴女を説得してこいって」

幼馴染「どうしてそこまで……」

姉「この間の総体予選を視察して、貴女のプレーに一目惚れしたそうよ」

幼馴染「そんな……北高に負けたのに……」

姉「私も決勝戦をビデオで見たけれど、コート上で一番輝いていたのは貴女。一緒に見た人たちも驚いていたわ。こんな選手がいたのかって」

幼馴染「……買いかぶりすぎですよ。西高は2年生主体のチームです。私は脇役でしかありません」

姉「全国ベスト4の大学が全国大会出場経験のないチームの脇役を練習会に誘うと思う?」

幼馴染「……」

姉「貴女が自分の実力を自覚しない限り、あのチームが全国に行くことはないわよ」
537 : ◆TMTTBwd/ok [sage saga]:2020/07/12(日) 12:21:47.95 ID:U9AT5Fbt0
姉「もう一度、考えてくれる?」

幼馴染「……もう決めたことですから」

姉「そう……」

幼馴染「すみません……」

姉「いいのよ。貴女が一度決めたらそう簡単に変えないことは知っていたし。それに、おかげで三日間の休みをもらえたから」

幼馴染「三日間も休みなんですか?」

姉「そうよ。明後日まではこっちにいるわ」

幼馴染「やったー! 久しぶりにバスケしましょうよ!」

姉「……それもいいのだけれど、私としては身体のコミュニケーションがとりたいわね」

幼馴染「なんですか、それ?」

姉「こういうことよ」モミッ

幼馴染「!!?」
538 : ◆TMTTBwd/ok [sage saga]:2020/07/12(日) 12:24:06.82 ID:U9AT5Fbt0
幼馴染「あ、姉先輩!!?」

姉「さっき、幼ちゃんの成熟した果実を見て、ムラムラしてしまったのよ。今日は寝かせないわ」ガシッ

幼馴染「何言ってるんですか!」

姉「いいじゃない。私たちはいずれ家族になるのだから。身体のお付き合いをしましょう」モミモミ

幼馴染「よくない! 絶対よくない!」

姉「さ、服を脱ぎましょうね。大丈夫。優しくしてあげるから」ペラッ

幼馴染「ふにゃーーーーー!」

男「……なにやってんの?」
539 : ◆TMTTBwd/ok [sage saga]:2020/07/12(日) 12:26:15.45 ID:U9AT5Fbt0
幼馴染「も、もう! 冗談でもやめてくださいよ!」

姉「だって、恥ずかしがる幼ちゃんが可愛いんだもの」

男「姉ちゃんさあ……幼は女の子なんだから、そういう弄りはやめてくれよ」

姉「あら? 貴方に私を説教する権利あるのかしら」

男「はあ?」

姉「幼ちゃんの寝込みを襲おうとしたのは誰?」

幼馴染「ええ!?」

姉「幼ちゃんが寝ている時にね、この愚弟は胸を揉もうとしたのよ。私が止めなければ、幼ちゃんの身体を好き勝手弄りまわしていたでしょうね」

幼馴染「そんな……」

男「聞いてくれ、あれは気の迷いで……」

幼馴染「どうして止めたんですか!?」

姉「……なんで私が怒られるの?」

男「さ、さあ……?」
540 : ◆TMTTBwd/ok [sage saga]:2020/07/12(日) 12:28:31.18 ID:U9AT5Fbt0
今日はここまでです。
541 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 01:40:47.33 ID:w2/3+Cmr0
翌日 昼休み 西高 バスケ部部室
副部長「いやー、実に部長と男さんらしい」

幼馴染「……うるさいわね」

生意気娘「むしろ……」

真面目っ子「男さんがそこまでする覚悟だったとは……」

元気っ子「そっちの方が驚きだよね」

無口っ子「……ゲームするだけだと思ってた」
542 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 01:42:20.75 ID:w2/3+Cmr0
元気っ子「男さんにお姉さんがいたのは初耳ですね。バスケやってる人なんですか?」

幼馴染「うん。今は〇〇大でバスケやってるよ」

生意気娘「名門じゃないですか!?」

幼馴染「凄い人だからねー。北高が初めて全国出た時の部長だもん」

真面目っ子「私、見たことありますよ! あの人が男さんのお姉さんだったとは……」

無口っ子「……だから男さんも運動神経いいのか」

副部長「んー。誰?」

生意気娘「さすがだな、お前……」
543 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 01:46:06.26 ID:w2/3+Cmr0
真面目っ子「中三の時に総体予選の決勝を観戦したじゃないですか。覚えていないのですか?」

副部長「えー? 部長のことしか覚えてないなー」

幼馴染「あの試合出てないよ……」

生意気娘「こいつ、部長がベンチだからって興味なくして、ずっとスマホをいじってたからな……」

元気っ子「私は覚えてるよ。その人だけで30点くらいとってたよね」

副部長「あれ? 女先輩は出てなかったの?」

真面目っ子「出場してましたよ。でも、あの試合ではアシスト役でした」

副部長「女王様気質の女先輩が……その人、よほどの実力者なんですね」

幼馴染「そりゃ、うちの高校の全国大会連続出場記録を止めた人だから」

副部長「どんな人なんだろう……」
544 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 01:48:09.27 ID:w2/3+Cmr0
放課後 北高 3年生教室
女「男くん、プリントお願いしてもいいかな?」ニコニコ

男「……ずいぶん機嫌がいいな」

女「わかる? この後、妹とデートなの!」

男「なるほどね。だから、こいつが廃人になってるのか」

男友「 」
545 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 01:52:44.53 ID:w2/3+Cmr0
女「あら、まだそんなところにいたの進路未確定者さん。早く相談しに行かないと浪人することになるわよ」

男「ああ……そういや、進路調査票提出してないのお前だけだったな」

男友「うるせえ……」

女「でもね、安心して。君がフリーターになったとしても、私が妹を幸せにするから。だから、男くんは何にも心配せずに人生を彷徨っていて構わないのよ」

男友「黙れ、負け犬が!」

女「私、推薦で大学決まってるのよねー」

男友「くっ……」

男「部活で進路決まるとかいいよな」

女「でしょ? いやー、バスケやっててよかった」

男(……そういや、幼は大学どうすんだろ)
546 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 01:56:38.17 ID:w2/3+Cmr0
男「つーかお前、部活で推薦もらったのにサボっていいのかよ」

男友「そうだそうだ! 推薦取り消しになってしまえ!」

女「顧問から今日の活動は一任されているのよねー。なので、私の判断で休みにしたのです! はい、問題ない!」

男「え? そうなの?」

女「そうなのです! 私と妹はデートしてくるので、友くんはじっくり進路相談してきていいからねー!」

男友「いやだああああああ!」

男「そうだったのか。姉ちゃんに連絡しておかないと」

女「えっ」
547 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 01:57:44.64 ID:w2/3+Cmr0
女「な、なんで、姉先輩に連絡するのよ!」

男「今日、部活に顔を出すって言ってたから」

女「帰ってきたの!?」

男「昨日から三日間休みなんだと」

女「あのハゲ顧問め……姉先輩が来るのを知ってたから、私に任せたんだな……」
548 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 02:01:35.00 ID:w2/3+Cmr0
男「こっち向かってるだろうし、早く連絡しないと」

女「待ちなさい!」

男「なんだよ」

女「姉先輩には『顧問が原因で休みになった』と伝えなさい」

男「お前の判断で休みになったんだろ」

女「顧問が病気になったから、私に任されたのよ」

男「いや、さっきまで普通に授業してたけど……」

女「いいからそう連絡しなさい! 私がどうなってもいいの!?」

男友「構わないぞ」

女「あんたには聞いてない!」
549 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 02:12:07.17 ID:w2/3+Cmr0
後輩「お姉ちゃんいますか?」

女「妹……」

後輩「よかった。ここにいたのですね。こちらの方が……」

女「……」ギュ

後輩「お姉ちゃん……?」

女「私が絶対守るから。バスケやるためだけに産まれてきたような頭の中バスケばっかりのスパルタ女なんかに負けない!」

後輩「え、えっと……」

女「さあ、逃げましょう! 誰にも手の届かない私たちだけの楽園に!」

姉「そこって体育館のことよね?」

女「!!!!!!?」
550 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 02:14:04.84 ID:w2/3+Cmr0
男「あれ? 姉ちゃん、もう来てたのか」

姉「ええ。練習開始前に身体を動かしておこうと思って。なのに、部室に行ったら誰もいないのよ。この子に聞いたら、バスケ部は休みだって言うのよ。総体前なのにおかしいでしょう?」

男「ああ、それは……」

女「顧問が病気になったので休みになったんです!!」

男「お前なあ……」

女「もう立てないくらいの重病みたいで、仕方なく休みになったんですよ!」

姉「……そう」

女「そうなんですよ! あー、残念だなあ! 姉先輩とバスケしたかったなあ!」

姉「さあ、練習しましょう」

女「えっ」
551 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 02:21:40.64 ID:w2/3+Cmr0
女「あ、あの? 私の話聞いてました?」

姉「聞いていたわよ。先生が病気なのでしょう。お気の毒にね。さあ、練習しましょう」

女「姉先輩? 顧問が大変な状況なのに部活をやるのはどうかと……」

姉「夏休みになったらすぐ総体よ。さあ、練習しましょう」

女「……」

姉「先生が練習を見れないなら、私がトレーニングを仕切るしかないわね。さあ、練習しましょう」

女「……みんな、休みだと思って下校してるんじゃないんですかね」

姉「呼び戻せばいいじゃない」

女「そうですね……」

姉「さあ、練習しましょう」
552 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 02:28:47.15 ID:w2/3+Cmr0
女「妹、ごめんね……そういうことだから、今日のデートはなしってことで……」

後輩「わ、わかりました……」

女「姉先輩、行きましょう」

姉「ちょっと待って、この子はバスケ部じゃないの?」

女「せんぱーい。今日はあんまり厳しくしないでくださいよー」

姉「何なのその甘え声は。気持ち悪い」

女「……」

姉「この子、貴女の妹でしょう。ミニバスで有名だったらしいじゃない。なぜ、バスケ部に入れないの?」

女「……確かにミニバス時代は凄いプレーヤーでした。でも、中学ではやっていませんし、今から入部しても難しいと思いますよ」

姉「でも、この間の球技大会でも大活躍だったそうじゃない。顧問から聞いたわ」

女「あのハゲ、余計なことを……」
553 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 02:29:46.18 ID:w2/3+Cmr0
姉「ねえ、これから時間があるのなら、練習に参加してみない?」

後輩「私がですか……?」

姉「ええ。顧問から聞いた話が正しければ、問題なく練習についてこれると思うわ。どうかしら」

女「姉先輩!」

姉「……なに?」

女「妹はもうバスケはやめているんです。だから、そういう強要は困るんです」

姉「強要だなんて人聞きが悪い。これは勧誘よ。それに貴女にも悪い話ではないと思うけど」

女「……どういうことですか?」

姉「もし、入部してくれたら、これから毎日、放課後は一緒にいられるのよ」

女「入部させます」

後輩「お姉ちゃん!!?」
554 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 02:43:55.03 ID:w2/3+Cmr0
女「とりあえず一回だけ! 一回だけ参加しよ!」

後輩「その手に持っている用紙はなんですか!?」

女「大丈夫。婚姻届だから」

後輩「いや、入部届でしょう!!? というか、婚姻届でもダメですから!」

姉「これでガードが弱いのも無事解消ね」

後輩「もう入部前提!!? 先輩助けてくださいよ!」

「……」

後輩「い、いない……」

女「さあ、秘密の楽園にレッツゴー!」

姉「うふふ。楽しみだわ」
555 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 02:44:47.92 ID:w2/3+Cmr0
男友「……行ったか?」

男「なんだお前。隠れてたのか」

男友「俺がいたら、気を遣うだろうからな」

男「どういうことだ?」

男友「後輩はバスケやりたいんだよ。でも、俺がいるから我慢してくれてたんだ。それくらい一緒にいればわかるよ」

男「でも、いいのか。あの子がバスケ部に入ったら、一緒にいられる時間が減るぞ」

男友「いいんだよ。後輩にはやりたいことをやってほしいから」

男「……そうか」
556 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 02:45:33.39 ID:w2/3+Cmr0
移動中
男(やりたいことをやってほしい、か)

男(まあ、そうだよな。俺だって幼にはそうであってほしい)

男(俺が重荷になるなんてことは絶対に嫌だ)

男(……進路のこと話さないと、だなぁ……)

ブー、ブー

男(ん? ……姉ちゃんからのメールか)

『帰りにコンビニに寄って、あの子の様子を見てくるように』

男(……姉ちゃんも相変わらずだなあ)
557 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 02:46:04.57 ID:w2/3+Cmr0
今日はここまで!!!
558 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 14:33:39.98 ID:w2/3+Cmr0
帰り道
幼馴染「姉先輩が北高の練習に参加したの!?」

男「ああ、女は嫌がっていたけどな」

幼馴染「あはは……姉先輩はストイックだからね。女とっては厳しい人に映るかもね」

男「ストイックというかアレはスパルタだろ……」

幼馴染「えー、そうかなあ。私はあれくらい普通だと思うけど。私も姉先輩とバスケしたいなあ。ねえ、西高の練習に参加してくれないか聞いてみてよ」

男「やめとけ、お前と姉ちゃんのコンビとか周りにとっては悪夢でしかない」
559 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 14:37:45.34 ID:w2/3+Cmr0
幼馴染「むー、久しぶりに姉先輩とバスケやりたかったのに」

男「朝練ならいいんじゃねえか」

幼馴染「でも、朝早いよ?」

男「むしろ、喜んで起きるんじゃないか」

幼馴染「なんで?」

男「それはだな……あ、ちょっとコンビニ寄っていいか」

幼馴染「ちょっと待ってよ!」

男「プリン買ってやるから」

幼馴染「私は子どもか!」
560 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 14:43:35.18 ID:w2/3+Cmr0
コンビニ
店員「550円になります〜」

男「はーい」

店員「あれれー? 男くんの彼女さんですかー?」

幼馴染「え……まあ、はい……」

店員「うふふ。こんな素敵な女性とお付き合いするなんて、男くんもやるときはやるんですね〜」

幼馴染(かわいい人だけど、なんか独特の雰囲気がある人だな……)

男「店員さんはどうなんですか? 彼氏さんとかできましたか?」

幼馴染「……!」

店員「私ですかぁ〜? んー、あんまりいい話はないですかねぇ〜」

男「そうですか」

幼馴染「……」
561 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 14:48:57.17 ID:w2/3+Cmr0
帰り道
男「なんでむくれてんだよ……」

幼馴染「……じゃあ、聞くけど。あの店員さんとはどういう関係なの?」

男「は? ただの店員と客の関係だけど……」

幼馴染「嘘! それだけなら、あんな風に親しげに会話したりしないもん! なにが『店員さんは彼氏とかできました』だ! とかってなんだ、とかって!」

男「常連みたいなもんでさ。通っているうちに仲良くなったんだよ」

幼馴染「スーパーコミュ障の男にそんなことできるわけない!」

男「お前さあ……」

幼馴染「否定できるの?」

男「ノーコメントで」
562 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 14:52:20.62 ID:w2/3+Cmr0
男「わかった。正直に話すよ。あの人は姉ちゃんと同級生でさ、よく家に遊びに来ていたんだよ」

幼馴染「なーんだ。そういうことか。別に隠すことなかったのに」

男「それだけなら、な……」

幼馴染「へ?」

男「実は……」
563 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 14:54:31.32 ID:w2/3+Cmr0
翌日 朝 コンビニ前
店員『いらっしゃいませ〜』

姉「……相変わらず元気そうね」

幼馴染「いいんですか、姉先輩?」

姉「お、幼ちゃん!?」

幼馴染「あの人に声をかけなくていいんですか?」

姉「……愚弟から聞いたのね」

幼馴染「姉先輩があの店員さんの様子を逐一報告するように男に命令したって話は聞きました。でも、男は鈍感だから先輩の気持ちには気付いていませんでしたけどね」

姉「さすが愚弟……」
564 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 14:57:01.07 ID:w2/3+Cmr0
姉「……あの子とは高校の入学式で初めて会ったの。その時は随分、変わった子だなって思った」

幼馴染「確かに……独特な雰囲気がありますよね」

姉「でしょう? ゆったりとした話し方なんてイライラしてしょうがなかったのに。一緒に同じ時間を過ごしているうちに、いつのまにか……」

幼馴染「好きになっていたんですね」

姉「……誰かといて安心できるなんて知らなかった。誰かを想うことがこんなにも切なくて寂しくて、でも幸せなことなんだって私は彼女に教えてもらったのよ」

幼馴染「なら、どうして、話しかけないんですか。連絡さえとっていないんでしょう」

姉「決まってるじゃない。バスケに集中するためよ」

幼馴染「……」
565 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 15:03:49.40 ID:w2/3+Cmr0
姉「高校時代、あの子がいてくれたから私は頑張れた。1,2年生のころ、全国はおろか県の決勝にさえ残れなくて心が折れそうになった時、彼女が傍にいてくれたから私は踏みとどまれた」

姉「でも、それじゃダメなの。上を目指すのなら私は自立しなきゃいけない。どんなことにも揺るがない選手にならないといけない」

姉「もし、あの子が傍にいたら、きっと甘えてしまう。彼女の傍にずっと留まっていることを私は願ってしまう。だから、離れたの」

姉「大学を卒業したら彼女を迎えに行くわ。でも、それまでは」

姉「私は一人で戦うの」
566 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 15:05:43.44 ID:w2/3+Cmr0
幼馴染「姉先輩は強いですね……」

姉「そんなことないわよ。私は弱いから強くあろうとしているだけ」

幼馴染「……でも、私にはそんな選択できません」

姉「それは、ちゃんと自分の弱さを受け入れているってことよ。それができるのは、本当に強い人なんだと私は思うわ」

幼馴染「そうでしょうか……」

姉「でも、これだけは言っておく。貴女が選んだ道はもっとも難しいことよ。昨日、北高の練習にしてよくわかった。あのチームは強い。私たちの代よりも」

幼馴染「……わかっています」

姉「頑張りなさい」
567 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/07(月) 15:06:38.30 ID:w2/3+Cmr0
今日はここまで!!
568 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/08(火) 20:28:02.75 ID:zswJChdW0
二週間後 朝 公園
男「おつかれさん」

幼馴染「えへへ、ありがと!」

男「それにしてもお前、昨日まで合宿だったのによくやるよな」

幼馴染「夏休みが明けたら、すぐウィンターカップの予選だからね。休んでる暇なんてないよ」

男「やりすぎて怪我しないようにな」

幼馴染「ヤリすぎてって……私たちまだしてないでしょ?」

男「……本気で心配してるんだけど」

幼馴染「すみませんでした……」
569 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/08(火) 20:35:36.74 ID:zswJChdW0
男「そういえば、合宿でちゃんと寝れたか」

幼馴染「なんでそんなこと聞くの?」

男「お前、ミニバスでの初めての合宿の時、ホームシックになって布団の中で朝までずっと泣いてたんだろ」

幼馴染「なんで知ってるの!?」

男「姉ちゃんから聞いたんだよ」

幼馴染「あの人は……!」

男「ノリノリで合宿に行ってたから意外だったな」

幼馴染「違うんだよ……布団の中に入ったら、男の顔が浮かんできて寂くなっちゃったんだよ……」

男「俺の名前呟いてたらしいな。おとこぉ……って」

幼馴染「やめて!」
570 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/08(火) 20:52:50.73 ID:zswJChdW0
幼馴染「あの合宿の時、男だって泣いてたじゃない!」

男「……覚えてないなあ」

幼馴染「なら、思い出させてあげよう。合宿先に向かうバスに乗りこむ私を君は泣きながら見送ったのだよ」

男「か、勘違いじゃねえか」

幼馴染「『おうちゃぁん……』」

男「ごめんなさい」
571 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/08(火) 21:05:26.43 ID:zswJChdW0
幼馴染「……実はあの時に男が好きなんだって気付いたんだよね。私が男を守ってる気になっていたけど、男が傍にいてくれたから私は頑張れたんだって」

男「幼もだったのか……」

幼馴染「え? 男もなの?」

男「ああ……バスに乗りこむお前の背中を見て、俺は幼が好きなんだって自覚したんだ」

幼馴染「なんだ……じゃあ、小学生のころには既に両想いだったんだ。なのに、最近まで付き合っていなかったなんて私たちって本当に馬鹿だよね」

男「まったくだ……」
572 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/08(火) 21:08:04.04 ID:zswJChdW0
幼馴染「そろそろ、帰ろうか」

男「もうこんな時間か。朝飯食わないと」

幼馴染「じゃあ、ご飯食べた後、10時にこの公園でいい?」

男「まあ、そんなところだな」

幼馴染「むふふ」

男「な、なんだよ」

幼馴染「久しぶりのデートだからさ! 楽しみだなって!」

男「期待に応えられるように頑張りますよ」
573 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/08(火) 21:46:08.80 ID:zswJChdW0
男自宅
男「じゃあ、行ってくるわ」

父「貴様、受験生だという自覚はあるのか。世の高校三年生は勉学に励んでいるんだぞ」

母「まあまあ、お父さんいいじゃないですか」

父「ダメだ。もし浪人なんてことになってみろ。こいつは遊び呆けるに違いない」

母「今日は幼ちゃんとデートらしいわよ」

父「そうか。なら、お前は勉強してろ。私と母さんで幼ちゃんをもてなすから」

男「なに言ってんだ、親父……」

母「それもいいわね。男はお留守番してなさい」

男「この馬鹿夫婦が……」
574 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/08(火) 21:48:10.31 ID:zswJChdW0
母「うふふ。冗談よ」

男「冗談に聞こえねえんだよ……」

母「でも、勉強してほしいのは本当。模試の結果を見る限り、大丈夫だと思うけれど、親としては心配なのよ」

男「……わかってるよ」

父「そういえば、幼ちゃんは大学の推薦を蹴ったのだろう」

男「えっ!!?」

母「……」
575 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/08(火) 21:50:28.56 ID:zswJChdW0
父「なんだ、知らなかったのか。幼ちゃんのお父さんから聞いたんだが、バスケの強豪の大学からの推薦を断ったらしいぞ」

男「な、なんで……」

父「さあな。その大学は愛知にあるらしいから、それよりも都心の大学に行きたいとかじゃないのか」

男「まさか……!」

父「お前たち、付き合っているのに進路の話をしていなかったのか?」

男「行ってくる!」ダッ

父「……」

母「……お父さん、どうして話したんですか」

父「これからのことを考えるなら、ちゃんと向き合わせないといけない。いつまでも逃げ回ることはできないんだよ」

母「……そうかもしれませんね……」
576 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/08(火) 22:33:53.93 ID:zswJChdW0
公園
男「幼!」

幼馴染「男が走ってくるなんて珍しいね。どうしたの、まだ集合時間前だよ?」 

男「お前、大学の推薦断ったのか?」

幼馴染「な、なんで、その話を知ってるの!? まさか、姉先輩が……」

男「違う。親父から聞いたんだ。親父は幼のお父さんから教えてもらったらしい」

幼馴染「え、お父さんが……」

男「なんで断ったりなんかしたんだよ!」

幼馴染「……なんとなく察しているくせに」

男「俺のせいか……」
577 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/08(火) 22:35:40.08 ID:zswJChdW0
幼馴染「それは違うよ! 私が男の傍にいたいだけなの!」

男「自分の将来を決めるんだぞ! そんなくだらない理由で断るなよ!!」

幼馴染「くだらない?」

男「そうだよ! 俺がいるかどうかなんて関係ないだろ!」

幼馴染「……あるもん。私は男がいなかったらバスケなんてできない。男と再会するまでの私に逆戻りしちゃうもん」

男「あの時とは違うだろ。今は連絡だってとれるし、会いにだって行くよ!」

幼馴染「それじゃあ、足りないの!」
578 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/08(火) 22:36:33.03 ID:zswJChdW0
男「お前、わがままばっかり言うなよ。社会人になれば、会う頻度は今より確実に減るんだぞ」

幼馴染「だから、せめて大学生の間だけは一緒にいたいって思うことの何が悪いの!」

男「いい加減にしろ! 俺はお前の重荷になりたくないんだよ」

幼馴染「だから、そうじゃないって言っているでしょう! 私には男が必要なの! 傍で支えて欲しいの!」

男「……俺にはわからねえよ」

幼馴染「もう知らない!」ダッ

男「お、おい!」
579 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/08(火) 22:37:52.23 ID:zswJChdW0
男「お前、わがままばっかり言うなよ。社会人になれば、会う頻度は今より確実に減るんだぞ」

幼馴染「だから、せめて大学生の間だけは一緒にいたいって思うことの何が悪いの!」

男「いい加減にしろ! 俺はお前の重荷になりたくないんだよ」

幼馴染「だから、そうじゃないって言っているでしょう! 私には男が必要なの! 傍で支えて欲しいの!」

男「……俺にはわからねえよ」

幼馴染「もう知らない!」ダッ

男「お、おい!」
580 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/08(火) 22:39:03.44 ID:zswJChdW0
あれ……? なんか連投になってる……
少し休みます……
581 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 00:12:09.32 ID:h8rnv4zg0
バス停
女「で、今日はどこに行くの?」

会長「どこだと思う?」

女「私の予想だと、水族館なんだけどどうかな?」

会長「……」

女「で、お昼は水族館近くのイタリアン! その後はちょっと移動して公園を散策ってところかなあ」

会長「……君はエスパーなのかな?」

女「そんなんじゃないよ。ただ、君のスマホの閲覧履歴を調べただけ」

会長「いつの間に!!?」

女「女の子って怖いよねー」

幼馴染「はぁ……はぁ……」

女&会長「!!?」
582 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 00:13:14.13 ID:h8rnv4zg0
女「びっくりしたぁ……こんなところで何してるのよ」

会長「すごい汗だけど大丈夫かい……?」

幼馴染「……」

女「……幼?」

男「幼!」

幼馴染「……っ!」

女「……」

男「冷静になって話をし……」

女「オラッ!」ドスッ

男「な、なんで……」ドサッ

女「よしっ。幼、バス乗るよ!」グイッ

幼馴染「え、ちょっと……」

女「会長、男のことは任せたよ!!」

会長「えっ……」

男「お、幼……待ってくれ……」

会長「なんだ、これ……」
583 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 00:26:35.14 ID:h8rnv4zg0
バス車内
女「とりあえず汗拭きなよ」

幼馴染「……どうして助けてくれたの」

女「男くんが来た時、君が怯えていたからね」

幼馴染「そんなこと!」

女「あるよ。今にも泣きそうな顔をしていた」

幼馴染「……私、そんな顔してたんだ」

女「このまま君たちを放置したら別れる気がしたから、つい干渉しちゃったのよ」
584 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 00:28:48.38 ID:h8rnv4zg0
幼馴染「実は……」

女「おっと。君たちの間に何があったのかなんて聞かないよ。聞いたところで解決できるわけじゃないし。そもそも興味もないしね」

幼馴染「……冷たいわね」

女「優しい私なんて気味が悪いでしょ」

幼馴染「……それもそうね」
585 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 00:29:39.19 ID:h8rnv4zg0
幼馴染「そういえば、どうして会長と一緒にいたの?」

女「デートする予定だったから」

幼馴染「で、デート?」

女「うん。私たち、付き合ってるから」

幼馴染「え、ええ!!?」

女「付き合って一ヶ月くらいになるのかなー」

幼馴染「意外な組み合わせね……」

女「君たちのほうがよっぽど意外な組み合わせだと思うけどね」
586 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 00:31:37.28 ID:h8rnv4zg0
幼馴染「会長のどこが好きなの?」

女「それを今探してる感じかな」

幼馴染「な、なにそれ? 好きでもないのに付き合ってるの?」

女「違うよ。彼が大切な存在になれるのか見極めているの」

女「君たちを見ていて思ったのよ。恋や愛は人を変えるんだな、って」

女「それで私も探すことにしたの。私を変えてくれる存在をね」

幼馴染「女……」

女「だから、君たちが簡単に別れたりしたら困るの。私が憧れて、欲しいと願った関係なんだから大切にしてよ」

幼馴染「……うん」
587 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 00:39:09.32 ID:h8rnv4zg0



バス停
男「……なんかごめんな」

会長「まったくだ。練りに練ったデートプランが水の泡だ」

男「デートってお前……女と付き合ってるのか?」

会長「あの同窓会の夜からね」

男「マジかよ!? あの時初対面だろ? よく付き合ったな……」

会長「おかげでデートのたびに彼女の色んな一面を知れて楽しいよ。君たちみたいにお互いを理解し合ってから交際するのが正解じゃないんだよ」

男「……理解できてたわけじゃないんだよな」

会長「そうか。頑張れ」

男「最後まで聞けよ!」

会長「幼くんは君を選んだんだ。君が幼くんを幸せにしないと」

男「……わかってるよ」
588 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 00:45:08.67 ID:h8rnv4zg0
駅前
生意気娘「ったく……なんで、休日までお前たちと一緒にいないといけねえんだ」

真面目っ子「よく言いますよ。胸についた無駄な脂肪を激しく揺らしながら踊っていたくせに」

生意気娘「ああ!? てめえも一緒になって踊ってただろうが!!」

無口っ子「……うるさい。でかいのは乳だけにしてろ」

無口っ子「……乳牛」

生意気娘「上等だ……! 今日こそ決着をつけてやる!!」

マネージャー「こんな街中でやめましょうよ!」

元気っ子「いやー、いつ見てもキョン吉とカミナリのヘビロテは傑作だよねー」

マネージャー「この状況、わかってますか!!?」
589 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 00:48:21.02 ID:h8rnv4zg0
マネージャー「副部長、止めてくださいよ!」

副部長「む、むむむむ! 感じる! 感じるぞー!」

マネージャー「ダメだこいつ……やっぱり部長がいないと……」

幼馴染「……」

マネージャー「ひぃぃぃ!」

副部長「ぶっちょー! 私の部長レーダーに狂いなしだね!」

幼馴染「あ、みんな……」

副部長「部長……?」
590 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 00:50:07.54 ID:h8rnv4zg0
マネージャー「部長助けてください! キョンさんたちが喧嘩してるんです!」

幼馴染「……」

マネージャー「部長!」

幼馴染「え……あ、うん。わかった」

副部長「……」

幼馴染「あんたら、何やってんのよ」

生意気娘「ぶ、部長!?」

真面目っ子「どうして、ここに部長が!?」

元気っ子「あれれー?」

無口っ子「……男さんとのデートは?」

幼馴染「……っ」

副部長「!」
591 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 00:58:52.84 ID:h8rnv4zg0
真面目っ子「……あれ? あそこにいるのは男さんでは?」

男「……」トボトボ

元気っ子「本当だ。おーい、男さーん!」

幼馴染「だ、だめ!」

生意気娘「え?」

無口っ子「……?」

男「お、幼……!」

副部長「おりゃー!」ドゴン

男「な、なんで俺ばっかり……」バタッ

真面目っ子「副部長、何してるんですか!!?」

副部長「部長、行きましょう! みんな、男さんのことは頼んだよ!」

幼馴染「え、ちょっと……」

男「幼……」

生意気娘「な、なんなんだよ……」
592 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 01:00:50.84 ID:h8rnv4zg0
路地裏
副部長「ここまでくれば大丈夫でしょう」

幼馴染「どうしてあんなことを……」

副部長「悲しそうな顔をしている部長を見たら、つい……」

幼馴染「……そう。また、そんな顔を……」

副部長「何があったんですか?」

幼馴染「実は……」
593 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 01:05:41.55 ID:h8rnv4zg0



副部長「なるほど。進路の話で喧嘩になったわけですね」

幼馴染「……どうして男は私の気持ちをわかってくれないんだろ」

副部長「他人ですもん。わかるわけありませんよ」

幼馴染「でも、私たちは……」

副部長「恋人ですよ? しかし、他人は他人です。相手の気持ちがわからないのは当然ですよ」

幼馴染「そうかもしれないけど……」

副部長「友人だろうが兄弟だろうが恋人だろうが夫婦だろうが、相手に気持ちを理解してもらう方法は一つしかありません。ちゃんと話をしないといけないんですよ」

副部長「それを拒否した部長に男さんを悪く言う権利はありません」
594 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 01:09:30.45 ID:h8rnv4zg0
幼馴染「そんな話をしたら、男はきっと止めるから……」

副部長「なら、男さんの反応は予想できてたんでしょ。なのにどうして、逃げ出す必要があるんです。あんな悲しそうな表情したんですか」

幼馴染「だって……」

副部長「……いい加減にしろよ!!」

幼馴染「ふ、副部長……」

副部長「部長は男さんの彼女なんだろ! なんで、話もせずに逃げ回ってるんだよ!!」

副部長「傍にいて欲しいなら、男さんが納得するまで徹底的に話し合えよ!!!」

無口っ子「……副部長、それくらいにしておきなよ」

幼馴染「ムッティ……いつからいたの……?」

無口っ子「……最初からいたよ」
595 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 01:14:08.56 ID:h8rnv4zg0
駅前
元気っ子「大丈夫ですか?」

男「う、ううん……なんとかね」

真面目っ子「副部長はなんでこんなことを……」

男「……俺が悪いんだ。俺が幼の気持ちを……」

生意気娘「まあ、そうだろうな」

元気っ子「最後まで話は聞いてあげようよ」

生意気娘「部長が悪いわけないだろ。こいつに責任があるに決まってる」

生意気娘「いいか。私はお前を部長の彼氏だなんて認めてない。でもな」

生意気娘「部長がお前のことが本当に好きで、お前といるのが幸せなんだってことはわかる」

真面目っ子「そうですね。それは間違いないです」

元気っ子「男さんと付き合ってからの部長、幸せそうだもんね」

生意気娘「だからまあ……部長のこと頼むよ」

男「……頑張るよ」
596 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 01:18:04.74 ID:h8rnv4zg0
繁華街
後輩「さあ、行きましょう!」

男友「……なあ、もうやめにしないか」

後輩「何を怖気づいているのです! 新たな一歩を踏み出しましょう!」

男友「いや、しかし……」

後輩「仕方ありませんね。先輩は天井の染みを数えているだけでいいですよ。私に身を任せてください」

男友「そんな初体験は嫌だ!」

後輩「大丈夫ですよ! 痛いのは私だけ!」グイッ

男友「誰か助けてくれーー!」

幼馴染「えっ」

後輩「お、幼先輩!?」
597 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 01:19:56.99 ID:h8rnv4zg0
後輩「どうしてこんなところに?」

男友「それも一人でなにやってるんだ?」

幼馴染「……なにやってるんだろうね」

男「あ、幼……」

幼馴染「……っ」

後輩「幼先輩?」

男友「なにやってんだ、お前?」

男「なにって……」

後輩「男先輩」ニコッ

男「え?」

後輩「今です! 先輩! 幼先輩を連れて逃げてください!」

男友「は?」

後輩「早く!」

男友「お、おう……じゃあ、行こうか」

幼馴染「あ、はい……」

男「ま、待ってくれ!」

幼馴染「ダメです!」ベチン

男「やっぱりこうなるのか……」バタン
598 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 01:33:26.70 ID:h8rnv4zg0
幼馴染「……デートの邪魔してごめんなさい」

男友「まあ、いいけど……」

幼馴染「私、もうダメだぁ……」

男友「男と何かあったのか?」

幼馴染「……進路のことで言い合いになっちゃって」

男友「なんだ、そんなことか」

幼馴染「そんなこと!?」

男友「それくらいなら話をすれば解決するだろ」

幼馴染「だよね……」
599 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 01:34:23.90 ID:h8rnv4zg0
男友「なら、早いとこ男のところに戻ろうぜ」

幼馴染「……今は無理」

男友「君さあ……」

幼馴染「うまく話せる自信ないもん」

男友「よく言う。寂しそうな顔してるくせに」

幼馴染「え!?」

男友「男に会いたいって顔に書いてあるよ」
600 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 01:35:49.25 ID:h8rnv4zg0
男友「会いたいなら会えばいいだろ」

幼馴染「……でも、また喧嘩したら……」

男友「すればいいだろ。恋人なんだから、喧嘩くらいするだろ」

幼馴染「君は……後輩ちゃんと喧嘩するの?」

男友「そりゃあな」

幼馴染「その時はどうするの……?」

男友「徹底的に話し合うな。まあ、最終的には後輩に丸め込まれるんだけど」

幼馴染「……すごいね。私は怖いよ。このまま別れてしまいそうで」

男友「逃げ続けたら、いずれそうなるだろ」

幼馴染「……っ」

男友「それが嫌なら、ちゃんと話してこいよ」
601 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 01:38:42.08 ID:h8rnv4zg0
繁華街
後輩「ごめんなさい。突然、叩いたりして……」

男「いいよ。今日は痛い目を見る日らしい」

後輩「幼先輩と喧嘩したのですね?」

男「……うん」

後輩「やっぱり……何かあったのかは聞きません。ただ、幼先輩にあんな表情させないでください。幼先輩には幸せであってほしいのです」

男「幼はどんな顔してた……?」

後輩「寂しそうな顔をしていました」

男「そうか……」
602 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 01:39:31.78 ID:h8rnv4zg0
男「一つ、聞いていいかな?」

後輩「なんでしょう」

男「……君はどうして、バスケ部に入部したの? 友と一緒にいられる時間が減るのに」

後輩「決まっているじゃありませんか。先輩が傍にいてくれるからですよ」

男「……」

後輩「先輩が卒業してからでは、バスケ部に入ることはできません。入部直後の苦しい時間を支えてくれる人がいないのですから」

後輩「先輩が傍にいてくれる。それだけで私は強くなれる気がするのです」

後輩「幼先輩も一緒なのだと思いますよ」
603 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 01:47:01.77 ID:h8rnv4zg0
夜 公園
幼馴染(……)

ガサッ

幼馴染「男!?」

「にゃーん」

幼馴染(……逃げ出したくせに、ここで男を待っているなんて、私って本当に馬鹿)

幼馴染(私から会いに行かないといけないのに。私の想いを伝えないといけないのに……)

幼馴染(男に拒絶されるのが怖くて動けないの……)

幼馴染「おとこぉ……」

男「……幼」

幼馴染「どうしてここに……?」

男「10時に集合って約束したからな」
604 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 01:48:00.79 ID:h8rnv4zg0
男「お前の気持ちを考えないで、頭ごなしに否定してごめんな」

幼馴染「ううん……私が何にも相談しなかったのがいけないんだよ……」

男「……推薦断って、どうするつもりなんだ?」

幼馴染「都内の大学からも話があって、ウィンターカップで全国に出たら、推薦でとってくれるの。そのチャンスにかけることにする」

男「それがもしダメだったら?」

幼馴染「その時は一般入試で行くよ。強豪大学は難しいかもしれないけど、バスケができる大学は他にもあるから」

男「……そうか」

幼馴染「私には男が必要なの。傍にいて欲しいの」

幼馴染「離れるなんて……嫌なの……」ポロポロ
605 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 01:51:51.97 ID:h8rnv4zg0
男「……今日さ、幼を追いかけてるときに色んな人に会っただろ。みんなに言われたよ。幼を幸せにしてくれ、って」

男「それで、ようやく気がついたんだよ。幼が俺を求めてくれるのなら、傍にいるべきなんだって」

男「俺で……本当にいいのか?」

幼馴染「男じゃなきゃ嫌なの」

男「傍にいていいの?」

幼馴染「ずっとずっと、私の隣にいて」

男「幼ちゃん……」ギュウウ

幼馴染「大好きだよ、男くん……」
606 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 01:53:45.96 ID:h8rnv4zg0
翌日 西高 体育館
副部長「部長……昨日は怒鳴ってしまってすみませんでした」

幼馴染「ううん。むしろ、助かったよ。ありがとう」

副部長「ぶっちょー……」

幼馴染「ウィンターカップでは絶対に全国に行くんだから! よーし、今日もガンガンやるよー!」

副部長「げっ……」

幼馴染「さあ、ウォーミングアップでステップワーク30本いくよ!」

副部長「やりすぎ! ウォーミングアップから飛ばしすぎ!!」
607 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 01:55:27.14 ID:h8rnv4zg0
喫茶店
会長「……そうか。万事解決か」

男「心配かけて悪かったな」

会長「いや、別に心配してないけどね」

男「お前なぁ……」

会長「だって、君たちがそんなに簡単に別れるなんて思ってないからね」

男「……お前たちも幸せになれるといいな」

会長「ああ、そうなれるように全力を尽くすよ」
608 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 01:56:18.27 ID:h8rnv4zg0
北高 体育館
後輩「そうですか……あの二人はちゃんと仲直りできたんですね」

女「あいつら、死ぬまであんなことやってそう」

後輩「あはは……でも、それはそれで幸せそうでいいのではないですか」

女「まぁ……ね」

後輩「そういえば、男さんから聞いたのですが、彼氏がいるそうですね」

女「いるのかなあ?」

後輩「はぐらかしてもダメです! ちゃんと紹介してくださいよ!」

女「さあ! 練習始めるよ!」

後輩「もう……お姉ちゃんてば……」
609 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 02:03:09.05 ID:h8rnv4zg0
西高 校門前
男「悪い! 遅くなった!」

幼馴染「本当だよー。すっごい待ったんだから」

男「そこはお前さあ……」

幼馴染「寂しかったんだよ?」

男「……ごめん」

幼馴染「言葉より行動がほしいなあ」

男「はいはい……」ギュー

幼馴染「えへへ!」
610 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 02:03:42.26 ID:h8rnv4zg0
男「なんか、大学に行ってもこんなことやってそう」

幼馴染「大学? 違うよ。社会人になっても、結婚しても、お爺ちゃんお婆ちゃんになっても、ずっと二人仲良くやっていくの」

男「それ……最高だな」

幼馴染「ずっとずっと一緒にいようね!」








END
611 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2020/09/09(水) 02:04:28.65 ID:h8rnv4zg0
これで終わりです。
長い間ありがとうございました!!!
612 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/12(土) 10:31:20.38 ID:4MtJ01CXO
終わりか?
もっと書いてもいいのに
乙でした
613 : ◆TMTTBwd/ok [sage]:2020/09/12(土) 15:59:44.90 ID:IzRpQgpT0
>>612
ありがとうございます!
614 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2021/06/17(木) 11:09:38.64 ID:HfIeryKS0
テスト
615 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/17(木) 12:35:04.48 ID:sHQ8w309O
お、続くのか?
616 : ◆TMTTBwd/ok [sage]:2021/06/17(木) 13:22:18.93 ID:HfIeryKS0
>>615
まったく違うSSの投稿用にトリップの確認をしただけです!誤解させてすみません
617 : ◆TMTTBwd/ok [sage]:2021/07/04(日) 14:16:49.52 ID:I8zrEh980
>>472の女と会長の話を書いています。今月中には投下できるように頑張ります!!
618 : ◆TMTTBwd/ok [sage saga]:2022/06/25(土) 17:58:39.03 ID:E6SrLWuk0
女と会長の話です
619 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2022/06/25(土) 18:00:43.87 ID:E6SrLWuk0
女「だーかーらー、別に隠していたわけじゃないんだってば」

後輩「嘘です! 私に打ち明ける機会はいくらでもあったはずです」

女「仕方ないじゃん。言い辛かったんだから」

後輩「開き直らないでください!」

女「だって、事実だしー」

後輩「気持ちはわからなくもないですが……私はお姉ちゃんから話してほしかったです」

女「ごめん……」

後輩「だから、洗いざらい全部話してもらいますからね!」

女「ええ……今日は疲れてるからまた今度ね」

後輩「わかりました。では、お話しいただけるまで一緒にお風呂は入りませんからね」

女「話す! ある事ない事全部話しちゃう!」

後輩「ある事だけ話してくださいね」
620 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2022/06/25(土) 18:01:44.72 ID:E6SrLWuk0
後輩「それで、彼氏さんはどんな人なのですか」

女「んーと、幼と男くんと同じ中学で、今は北高に通ってる人」

後輩「それは幼先輩から聞きました」

女「じゃあ、これは聞いた? 中学の頃からずっと幼に片想いしていたんだよ」

後輩「ええ!?」

女「男くんから会長と修羅場になってるって聞いてさ、なんか面白そうだなーと思って会いにいったらさ」

後輩「……」

女「目の前で幼と男くんのキスシーンを見せつけられたみたいで、すっごい落ち込んでやんの!」

後輩「……お姉ちゃんは彼氏さんのどこが好きなのですか」

女「それを探しているところだけど?」

後輩「今すぐ別れなさい!」
621 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2022/06/25(土) 18:04:01.23 ID:E6SrLWuk0
女「どうしたの急に。もしかして、ヤキモチ妬いちゃった? もう、シスコンなんだから」

後輩「お姉ちゃんにだけは言われたくありませんよ! 好きでもない人とお付き合いしているなんておかしいでしょう!」

女「でもさあ、両想いで交際を始めた人たちだっているだろうけど、ちょっと気になるから付き合ってみようかなみたいな軽い感じの人たちの方が大半なんじゃないかな」

後輩「そ、そんなことありません! 私や幼先輩は……」

女「君たちを世の中の基本にするのはどうかと思う」
622 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2022/06/25(土) 18:05:20.59 ID:E6SrLWuk0
女「まあでも……君たちを見ていて、羨ましく思ったのは事実だよ。恋をするとこんなにも人って変わるんだなって」

後輩「あはは……確かに、男さんなんて変わりましたよね」

女「だから、私も恋をしてみたいって思ったの。誰かを好きになった時、私はどうなるんだろうって」

後輩「……それで、どうなのですか。彼氏さんのことは好きになれそうですか?」

女「どうかなあ……いい人なんだけどさ、ちょっと、キザなところがあるんだよねー。そこがマイナスポイント」

後輩「それはきっと、お姉ちゃんのことが好きだからですよ。好きな人によく思われたいのは当然でしょう?」

女「そうかなあ。ただ単に格好つけたいだけだと思うけど」
623 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2022/06/25(土) 18:07:15.98 ID:E6SrLWuk0
翌日 朝
女「あれ、妹は?」

母「自主練するからって朝早くに出て行ったわよ」

女「さすが、バスケ部期待の星。今日はオフだっていうのに自主練とは。ウィンターカップに向けて頑張ってるね」

母「……あんたもバスケ部じゃなかったかしら。しかも、部長でしょう」

女「今日は部活休みだよ? ブランクのある妹は仕方ないけど、私が練習する意味がわからないよ」

母「ああ、そう……」

女「それに私、用事あるしー」

母「デート?」

女「……え、なんで知ってるの」

母「母親だからよ」

女「はぁ……妹が話したのね」

母「それだけ、あんたの事が心配だったんでしょう。ねえ、彼氏はどんな人なの。一度、会わせてよ」

女「えー、なんで紹介しないといけないのさ」

母「だから、母親だからよ」
624 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2022/06/25(土) 18:08:14.82 ID:E6SrLWuk0
母「あんたが誰かと付き合うなんてねえ……想像もできなかったわ」

女「そう?」

母「だって、妹のことを本気で好きだったじゃない。だから、このまま一人でいるのだと思っていたから」

女「……なんで、知ってるの」

母「母親だからよ。何度も言わせないで」

女「お母さんは……気が付いた上で何も言わなかったの?」

母「何かを話したところで貴女は納得したの? 諦めることができたの?」

女「それはそうだけど……」

母「むしろ、もっと意地になっていたでしょう」

女「……さすが、何でもお見通しだね」

母「当然でしょ。母親だもの」
625 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2022/06/25(土) 18:09:10.69 ID:E6SrLWuk0
母「まあ……正しい道に導こうとしなかった私は母親失格なのだけれど」

女「そんなことないよ。……うん。お母さんは適切な対応をしてくれたと思う。結果的には良い方向に向かったわけだしさ」

母「……そう言ってくれると助かるわ」

女「ちなみにお父さんは気が付いていたの?」

母「そんなに鋭い人だと思う?」

女「あはは……」

母「まっ、もし気が付いたとしても、あの人は何も言わなかったと思うわ。いえ、むしろ喜んだかもしれない。『これで他の男に奪われなくて済む!』って」

女「お父さんらしいわあ……」
626 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2022/06/25(土) 18:09:42.48 ID:E6SrLWuk0
女「ねえねえ、お母さんはお父さんのどこが好きになったの?」

母「急に何を聞くのよ」

女「いいじゃん。教えてよー」

母「そうね……幼馴染だったこともあって、ずっと一緒にいることが当たり前になっていたというのが本当のところかしら」

女「うっわ……ここにも幼馴染カップルがいたのか……」
627 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2022/06/25(土) 18:11:01.05 ID:E6SrLWuk0
母「そういえば……私はあの人のどこが好きになったのかしら?」

女「ちょっとやめてよ。これで離婚とかになったら笑えないよ」

母「バカね。するわけないでしょ。今さら離れるなんて想像もできないわ」

女「どこが好きなのかもわからないのに?」

母「長い年月一緒にいれば、そんなことはどうでも良くなっていくの」

女「そういうものかな」

母「恋人って非日常的なものだから強烈な恋心がないと物足りなくなってしまうかもしれないけれど、『夫婦』は日常だからね。穏やかな想いでなければ続かないのよ」

女「なるほどねえ……でも、そう考えると、私たちは大丈夫なのかな。別に『強烈な恋心』あるってわけでもないし」

母「あら、いいじゃない。それはそれで」

女「いいのかな」

母「いいのよ。それでも一緒に居られるってことはお互いを求めているってことなんだから」
628 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2022/06/25(土) 18:11:41.30 ID:E6SrLWuk0
移動中
女(お互いを求めている、か。そうだとしたら、会長は私に何を求めているのだろう)

女(妹は私のことが好きなんじゃないかって予想してたけど……たぶん、それはないな。だって、彼は幼のことを本当に好きだったから。そんな簡単に割り切れるものじゃないだろう。私のように)

女(だからきっと、失恋の傷を癒してくれる相手を欲しているんじゃないか)

女(……でも、それって最早、恋人じゃなくてセフレに近いような気がする。身体の関係はないけど、ただ自分の心の隙間を埋めるだけの存在として私を見ているのだから)

女(だとしても、彼を責めることはできない。もともと滅茶苦茶な理由を突き付けたのは私なのだから)

女(でも……)

女(……なんかむかつく)

会長「どうしたんだい、険しい顔をして」

女「……」

会長「えっと……」

女「とりあえず、今日は奢りで!」

会長「!!?」
629 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2022/06/25(土) 18:12:15.60 ID:E6SrLWuk0
カフェ
会長「僕、何かしたかな……?」

女「べっつにー」

会長「不満そうな顔で否定されても……」

女「女の子にはいろいろあるの」

会長「……そっか、そうだよね。男子にはわからない苦労があるもんね」

女「……一応、言っておくけど、生理じゃないからね」

会長「その発想はなかった」

女「ちっ……男子はいいよね。あの痛みを知らなくて済むんだからさ」

会長「僕はどうしたらいいんだい」
630 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2022/06/25(土) 18:13:09.07 ID:E6SrLWuk0
会長「何か思うことがあるならはっきり言ってくれ。恋人同士なのに隠し事なんておかしいだろう」

女「……じゃあ、聞くけどさ。幼のことまだ好きなの?」

会長「いきなりとんでもないこと聞くね!?」

女「恋人に隠し事は必要ないんでしょう」

会長「わかったよ……もうなんとも思ってないよ」

女「はい、絶対うそ」

会長「ええ……」

女「あんなに策を巡らせて手に入れようとするくらい好きな女の子だったんでしょ。簡単に諦めきれるわけないじゃん。特に男子って昔の恋を引きずるっていうし」

会長「あー、うん。まあ、好きだったけど」

女「……」ゲシッ

会長「な、なんで蹴るんだよ!」

女「あ、ごめん。無意識のうちに蹴っちゃった」
631 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2022/06/25(土) 18:13:50.92 ID:E6SrLWuk0
会長「最初はもちろん未練はあったよ。でも、今はないかな。君と一緒にいるうちになくなったよ」

女「なにそれ。じゃあ、そこまで幼のこと好きではなかったんじゃないの」

会長「そう思われても仕方ないかもね。でも、僕は君の傍にいるのが楽しくて仕方ないんだよ」

女「蹴られたりするのに? 会長ってドMなの?」

会長「いや、快感に感じるってわけじゃなくて、ああやって、ヤキモチ妬いたりするのはかわいいなって思う」

女「別にヤキモチじゃないし」

会長「ああ、そうだったんだ。ごめんね」

女「……むかつく」
632 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2022/06/25(土) 18:14:26.02 ID:E6SrLWuk0
会長「僕も聞きたいことがあるんだけどさ」

女「何よ?」

会長「君は失恋の痛みは忘れられたのかい? 相手が誰なのかわからないけれど、とても大事な人だったんだろう?」

女「……正直、悲しくなったり、寂しくなることはあるよ」

会長「そうか……」

女「それだけ? 怒ったりしないの?」

会長「忘れられないってことは、それだけ大事な想いなんだろう。だから、いいんじゃないかな。変に割り切ろうとすれば苦しむことになるから」

女「それはそうかもしれないけど……君はいいの?」

会長「さっき言っただろう。君の傍にいるのが楽しいって。だから、それでも君が僕と一緒に居てくれるなら、それでいいんだ」
633 : ◆TMTTBwd/ok [saga]:2022/06/25(土) 18:14:59.88 ID:E6SrLWuk0
会長「君は約束を果たしてくれたってことでいいんじゃないかな。君のことを好きにさせてくれたから」

女「こんな短期間で堕ちるなんてちょろすぎ」

会長「君がそれだけ魅力的なのさ」

女「寒い! その台詞寒すぎるよ! 夏真っ盛りなのに凍死しちゃいそうだよ!」

会長「そうやって照れ隠しするところもかわいいよ」

女「今のは本心なんだけどね」

会長「えっ」
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