戦士「うはwwwww勇者逃亡したwwwwww」

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294 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/20(火) 15:08:52.41 ID:6B9DV8lj0
途切れ途切れで済まない
今日の朝も色々とあったんだが、これも後回しにしようか
とりあえず報告として、俺が[毒]にやられた
今は[毒消草]で治療してるんだが、あと六時間は治療に必要だな……
不甲斐ない限りだ。どうも役に立ててない感じがして、焦りを覚える

技能について色々と考えてくれてありがとう
今の所、[剣技Lv4]か[自然治癒Lv1]かで意見が別れてる感じだろうか

一応補足しておくと
[剣技]技能を上げることで上昇するのは、単純な刃物による攻撃力だ
新しい技が使えたりする訳ではないが、基本的に下層に降れば降る程[鉄の身体][硬質]を始めとする対物理技能を持つモンスターが増えるからな
そういった敵にどれだけダメージを与えられるかが[剣技]技能の数値だと考えてくれれば良い

対して[自然治癒]技能の回復は、基本的には戦闘中か否かに限らず常時適用される
ただ戦闘中は回復力が大幅に低下するので、Lv1程度なら無いのと同じようなもんだな
戦闘後の治療による魔力消費が減らせる程度と考えてくれたら良い
ただもしLv4程度まで成長させれば、戦闘中でも目に見えて傷が塞がり始めたりするぞ
295 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/20(火) 15:14:23.22 ID:6B9DV8lj0
とりあえず今段階でのパーティのステータスを確認していこう
昨日と殆ど変わっていないので、昨日のレスを見た人は見なくても大丈夫だ

俺(戦士)
適性:戦士
年齢:21
性別:男
練度:LV6
技能:[剣技Lv3][かばうLv1][感知Lv1][+]/+[剣技Lv4][かばうLv2][感知Lv2][自然治癒Lv1][対魔力Lv1]
装備:[ゴブリンの石斧][鋼のつるぎ(壊)-1][古ぼけたツルハシ-1][鉄の鎧(壊)-1]
持物:[ヒーリングポーション]*2,[安物の砥石]*1,[松明]*2,[安物のナイフ]*2,[旧式カンテラ]
持物:[瑞々しい赤彼岸の葉(36日)]*12,[寝具],[調理油],[調味料],[食器と携帯鍋]

魔法使い
適性:魔法使い
年齢:17
性別:女
練度:LV5
技能:[炎魔法Lv4][詠唱Lv1]
装備:[樫の杖][魔女のマント][とんがり帽子]
魔法:[Lv1:灯る指先][Lv2:炎の矢][Lv3:夕焼けを熾す][Lv4:赤き刃]
持物:[魔法の触媒(火/下級)]*7,[ヒーリングポーション]*2,[ブランド物のナイフ],[創成のクリスタル(青)],[寝具]

僧侶
適性:僧侶
年齢:14
性別:女
練度:LV5
技能:[光魔法Lv3][薬師Lv1][罠師Lv1]
装備:[鋼の槌][修道服+1]
魔法:[Lv1:癒やしの滴][Lv2:明ける知識][Lv3:祓の水]
持物:[聖典(下級)],[ヒーリングポーション]*2,[瑞々しい毒消草(13日)]*8,[うさぎのぬいぐるみ],[ロープ(4m)-1],[寝具]
296 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/20(火) 15:15:34.01 ID:6B9DV8lj0
さて、じゃあ昨日の段階まで話を戻そう
丁度、ゴーレムを倒してからだったな
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/20(火) 15:22:44.05 ID:pkAwye1/O
>>293
50がレベルキャップとか言われてる世界で深部が6Fだぞ?
単純に10とかの刻みでレベル上げてかないとキツいって言ってるようなもんなのにまともに戦える訳ないじゃん
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 15:32:27.33 ID:U9WHqk/t0
それなら僧侶の負担を減らすために自然治癒でどうや

1で大差なくてもこれから先、長期戦なのは間違いないんやから
2まで上げれる下地を今のうちに作らへんか?
299 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 15:32:37.20 ID:n0cdoo12o
攻撃役がもう一人いたなら自然治癒に振って壁役になっても良かっただろうが魔法使い一人だけとなるとな
その魔法使いも魔翌力消費が激しかったり尽き掛かったりすると危険な状態に陥るわけだろ
となるとやはり剣技かと思うが
戦闘は速攻志向、他に上げていくなら感知か
300 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/20(火) 15:34:49.08 ID:6B9DV8lj0
ゴーレムを倒した俺達は、[明ける知識]で各々のステータスを確認した後、[1F-採掘地域]の階段をゆっくりと降りていった
各々の顔には疲労と緊張、そして僅かな期待が見え隠れしている
まあ俺たち駆け出しの冒険者にとって、二層以下の迷宮ってのは未知そのものだ
一層までなら何だかんだそれなりに行くことがあるからな
それだけに二層以下ってのは一層とは全く違う重みがあって、それは恐くもあり、そして楽しくもある
こんな状況で何を言ってるんだと思うかも知れないが、この未知への憧れがなかったら、結局冒険者なんて命知らずな仕事を好き好んでやってないんだよな

二層が見えてくると、同時に横風が俺たちに吹き付ける
そこは花畑だった
洞窟自体は筒状になっている。上が狭く、下が広く。円錐状、って言えば伝わるかな
俺たちは傾斜面になっている壁の一角へと出たようだった

まず驚くべきなのは、立っているのが土の上ではないこと
生い茂る草と花の下にあるのは、巨大な樹なのだ
壁から生えた横幅4mはあるであろう枝が幾重にも重なって、だだっ広い円錐状の空間に足場を作っている
枝で出来た道は俺たちが出た道を含め、八つの道に分岐していた
まずは東西南北。これら四つの道は、上方向に枝が伸びている。おそらくこれらの道は全て、別の一層に繋がってるんじゃないかな
北側に続いているのが俺たちが出てきた、[1F-採掘地域]に繋がる道
西側に続いているのは石煉瓦で舗装された比較的綺麗な道。これも一層のどこかに繋がっている筈だ
東側に続いているのは、土で出来た洞窟の道。これも一層に続いているはず

そこまで見て、俺たちは咄嗟に道を引き返した
なぜなら南側に続く道に、ある存在を見たからだ
その道だけは明確に、知性あるものが住んでいる証があった。なぜなら木の扉があったのだ
一層のどこかへ繋がる筈の入り口に扉があり、そしてその手前に、二体の人影が見えた
人型モンスター、[ゴブリン(Lv5)]。その姿を見るのも久しい気がする
301 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/20(火) 15:46:34.77 ID:6B9DV8lj0
ゴブリン達は俺たちに気づいた様子もなく、右手に持った石斧で肩を叩きながら、魔物語でなにか話しているように見える
とはいえ、これだけ広い部屋では流石に何を話しているのかは判らない
魔法使いにも聞いてみたが、やっぱり声は聞き取れないらしい

俺たちはゴブリンに気づかれないよう壁に隠れながら、再び周囲を探索する
残りの四つの道はそれぞれ下り道になっている
北西の道と南東の道は、入り口に鉄で出来た扉が為されている
扉には遠目からでも鍵穴が確認できるな
北東の道は、土で覆われている
土の周りには多種多様な植物が張り巡らされていて、その奥は見えない
最後に南西の道だが、なんとこの道だけ、他の道とは完全に分断が為されている
おそらくは元々あった枝の道を、火か何かで焼いたんだろう。道の分断面には焦げ跡が見える
その所為でもし南西の対岸へ行くのならば、数十メートル以上の絶壁を飛び越えなきゃいけなくなってる
302 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/20(火) 16:05:15.00 ID:6B9DV8lj0
……と
ここまでを観察してた辺りで、北西の扉から何かの音がする
がちゃん、と何かを開ける音。次いで鉄が掠れる耳障りな音
北西の扉が開かれたんだ
掠れた音を立てて開いていく扉の奥に居たのは、一つの人影だった

長く艷やかな黒髪を持つ、美しい女の上半身
豊満な胸元を、ビキニにも似た布で心もとなく隠している
露出された皮膚は白く、その上に黒い文様が所狭しと刻まれている
形の良い口元に浮かんでいるのは、怪しげな笑み
正直、一瞬目を奪われた。それくらい美しい姿だったんだ

ただ一方で、下半身は明らかに人間であることを否定していた
蛇なのだ。腰から下が、黒く長い蛇の下半身になっている
漆黒の鱗が艷やかに光を反射している。尻尾は地面を這いずり、ゆっくりと彼女の身体を動かしていく

二層の代表的な人型モンスター、ラミアだ
モンスターレベルは11
魔物図鑑に記述されている習得技能は[炎魔法Lv5][魅了Lv2][変身Lv1][吸血Lv1]。後の2枠は個体により変わるという
303 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/20(火) 16:21:15.46 ID:6B9DV8lj0
モンスターレベルを見て分かる通り、今の俺達にとっては途方も無い強敵だ
発見数の少ない二層の希少なモンスターと図鑑には表記されていたが……
まさかこんなに早く遭遇するとは

息を殺して、敵が通り過ぎるのを待つ
手を、石斧の柄に。横を見れば魔法使いは杖を、僧侶は鉄槌をぎゅっと握りしめている
ラミアが身体を揺らめかせて、北西の扉から離れていく
部屋の中央へ。そのままもしこっちに来れば、反撃の間もなく首を落とす
ゴーレムとの戦闘で休みを求める身体に鞭を打って、息を止め、意識を集中させる
ラミアがどこへ向かうのか。それを見極め、迎撃するために

しかしラミアは、俺達が居る道へは近づいてこなかった
枝の道をたどって彼女が向かうのは、南側の道
その先には木で出来た扉と、2匹のゴブリンが居る

ラミアがゴブリンの方へ近づくと、ゴブリン達がだらしなく顔を緩める
まあ、あれだけの美人が近づいてきたらモンスターだって嬉しいよな
ラミアが微笑を浮かべたまま、ゴブリン達になにか話しかける。会話はやはり聞こえない
ゴブリンたちが大げさにラミアの発現に頷いた後、木の扉を開いて、ラミアを奥へと誘導する
まるで姫をエスコートするみたいにな
ラミアが彼らに連れられて、南側の向こうへ消えていく

そうして彼らの姿が完全に見えなくなって
俺たちはやっと、溜めていた息を吐き出した
304 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/20(火) 16:22:01.80 ID:6B9DV8lj0
おっと、僧侶が戻ってくる
続きは後でな
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 18:51:16.81 ID:AOqjTQWuo
お疲れ様。
ラミちゃんはきついなぁ。
技能だけど生き残るには自然治癒が良いんじゃないか。
僧侶の負担軽減、僧侶の技能を他に回せる事になるし。
君らは少数。支援も期待できない。器用貧乏でも出来ない事が少ない方がいい気がする。
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 19:52:58.72 ID:ddRQkvBiO
毒状態!? しかもラミアと遭遇しかけたとか……二層に入って早々かなりギリギリじゃないか
焼き落とされてた通路とか鍵付きの扉とか色々と気になる事ばかりだけど、今は焦らず体を治すのに専念するんだぞ

しかし昨晩のステータスでも地味に増えてた毒消草だけど、これは二層に入って採取したって事になるのか?
だとしたら今いるところは【血溜まりの花畑】だったりするのかな?
307 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/20(火) 19:57:32.84 ID:6B9DV8lj0
さて、続きだ

ラミアが去ってから、まだ暫く俺たちは壁の裏側でじっとしていた
あのラミアで出てくるのが終わりとは限らなかったからな
5分経ち、10分経ち、ようやく本当に一息ついてから、俺達はそれでも小声で作戦会議をする

とはいっても、この[中央区]から行くことの出来る範囲は本当に少ない
八つの分岐道のうち、東西南北の四つはすべて一層に繋がってる
しかも一つは俺たちが入ってきた道だし、もう一つにはゴブリンとラミアが居る
今から突撃するにはあまりに迂闊だ

となれば、残りの道は四つ
うち二つは扉に鍵がかかっているし、そもそも人工物ということから向こう側にはモンスターか人が居る
片方はラミアが出てきた事からもモンスターの根城の可能性が高い
そして残りの二つのうち、片方の扉は道が焼き落とされてて入れない
壁越しに吹き抜けの穴を見れば、通路の穴は底が見えず、冷たい風が吹き荒ぶばかりだ
ここを飛び降りるなんて自殺行為だろう

ともすれば、行ける場所は一つしか無い
最後に残った下り道
植物が生えた細い通路へと、俺達は小走りで進んでいく
308 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/20(火) 20:34:24.21 ID:6B9DV8lj0
植物に囲まれた小さな洞窟を進むたび、若い葉が掻き分けられ、乾いた音を立てる
先程ラミアに会っていたからか、過敏になった神経がそれを過剰に聞き分ける
背中に冷や汗
奴らは全く異なる扉に入っていったと知っていても、この道を辿るのは勇気がいる

そんな思いに急かれながら、それでも前方に気をつけてゆっくりと進んでいく
やがて、通路に甘い香りが漂い始める
シュガーやクリームの、人工的な香りじゃない。花が放つ、昆虫たちを誘う罠の香り
同時に、周囲の草の様子が変わり始める。雑多とした緑から、白い小さな花をつけた草へ

やがて視界が開け、目の前に広大な丘が現れる
まず驚いたのは、"明るい"ということ
言わずもがな、ここは地下深くの迷宮ダンジョン
灯りはなく、それ故に魔法使いの[灯る指先]によって与えられた光こそが、俺たちの見える全てだった

しかしそこは、それらとは関係なく"明るい"のだ
洞窟を抜けた先にあったのは、小高い丘だった。俺たちは丘の上に立っている
丘の上にあるのは、白い小さな花の群れ。俺は知らなかったが、僧侶がこの花の名を知っていた
キンコウソウ目の多年草、イカリシア。別名[毒消草]
草の名前は知らなかったが、別名は冒険者の間で良く知られている
キンコウソウ――通称[禁香草]と呼ばれる毒花の一種で、他の[禁香草]と異なり、煎じることで薬用として用いることが出来る
そして何より、この[毒消草]は"他の繁栄している植物に寄生して"成長するのだ

丘の向こうを見る
そこには海があった
波打つ花びら
紅い海
まるで血の海のよう
強烈な甘い香りが漂ってくる

[赤彼岸]。[腐人華]。[幽霊散香]。[沙華散香]。[葉知らず華知らず]。様々な異名を持つ毒草
そして、異名の一つに[殺し白ず]
華が咲く前の草を食むことで、本人が死んだと感じる間もなく死に絶える、致死性の猛毒
毒に蝕まれたものが毒性によって鬱血し肌を白くすることから名付けられた異称
シシャカクシ目リコリシア科の多年草、リコリシア
[赤彼岸]の群草が、丘の下を埋め尽くしていた
309 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/20(火) 20:57:21.38 ID:6B9DV8lj0
それを見た時、俺は本当に眼前の光景を赤い海だと誤認したんだ
これを見ている皆も知っているだろうが、[赤彼岸]は希少植物
しかも葉にこそ猛毒が充溢しているが、冬場に咲く花弁は薬効があり、酒類に混ぜることで非常に高級な味が出る
[エール]に[赤彼岸]の花蜜を混ぜることでミルクのようにまろやかな味と僅かな酸味を付け足す[レッドアイ]は
高級食品を用いた美味なる飲料として、上流階級の間で嗜まれてきた
俺も一度だけ呑んだことがある。20歳の誕生日に義理の親父が用意してくれたそれは、本当に人生で一番美味い飲み物だったと思っている

そんな希少な植物が、満開の花を咲かせて俺達の目の前に広がっていた
鼻に届いてくる甘い香りは、[赤彼岸]の花が発する独特のものだ

その時、俺の意識は半分以上酩酊していた
[赤彼岸]が発する甘い香りは、生物の頭を溶かし、花の奴隷にするための成分がある
だからこそ[赤彼岸]はその有用さの割に大量の栽培が出来ず、その香りが効果を及ぼす程の香りを嗅ぐ事も無かった
しかし、その時は違った
花に届く香りが、否が応でも俺の花を刺激し、脳を刺激し、記憶を刺激する
俺の脳髄に浮かんでいたのは、既に目の前の紅い花畑ではなかった
故郷の喧騒。宿屋の女将の笑い声。食堂の男どもの汗臭さ。鍛冶屋の親父の視線。父親が出してくれた、エールの味。もう戻らない日々
その全てが目の前に広がっていた

無意識に歩みを進めていた
そこに迷いはなかった
ただ俺は、意識の何処かで求めていたあの日常に手を伸ばしていた
もう戻らないと知りながら、子供のように求めていたあの日常を渇望していた
伸ばした手の先に、街の人々を、仲間を、そして両親を見た
その手を掴もうとする
最後に映ったのは、幼い頃の魔法使い
今とは似ても似つかない、しかしどこか面影のある微笑みが、俺に手を伸ばした

そこまでを幻視して、俺は両腕に強い引力を感じて、現実を取り戻した
後ろを振り向けば、右腕と左腕を、それぞれ僧侶と魔法使いが掴んでいる
そして俺のつま先のすぐ先には、崖の終着点が見えていた
乾いた音を立てて、崖の石が転がり落ちていく
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 21:55:04.74 ID:Cc6aSzDYO
面白い もっとやれ
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/21(水) 01:15:35.29 ID:75wzgDJiO
312 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/21(水) 13:52:17.72 ID:5y9Klee+0
やあおはよう
昨日はレスしながらいつの間にか眠ってしまっていたみたいだ
度重なる探索で、身体が僅かに重い……
313 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/21(水) 14:03:07.63 ID:5y9Klee+0
さて、続きだ
既に一昨日の話になっているが


身を投げる寸前に意識を取り戻した俺は、一瞬の間を置いて、ようやく自分がした事を理解した
[赤彼岸]の郡草が放つ香りが、俺の脳に投身という命令を下していたこと
慄いて一歩引けば、ようやく崖の下を直視する
そこには山となった死体があった。人間のもの、ゴブリンのもの、オークのもの、ラミアのもの……
翌々見れば、死体はそこだけではなかった。崖の下に広がる美しい紅の海は、土の上に出来たものじゃない。死体の上に出来たものだった
俺はようやく、自分がどこに居るのかを理解する
第二層でも指折りの美しさを持つという迷宮区

[2F-血溜まりの花畑]

美しいと評判の割に、そこは二層でも屈指の危険地域だという
俺はそれを、危険なモンスターが存在しているからと勘違いしていた
そうではない
この花畑においては、モンスターすら只の餌に過ぎないのだ

恐ろしい考えが頭を過る
[赤彼岸]は普段、ここまでの郡草を作らない。地上では野原に稀に二・三本咲いている程度だ
だからこそ希少な植物として扱われてきた
であるならば
この[赤彼岸]は、本来はこの地下迷宮に生息していた固有種ではないか?
我々はその本当の恐ろしさを知らずに、この花を地上に持ち帰ってしまったのでないか
いや、寧ろ
"持ち帰らされた"のではないだろうか
314 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/21(水) 14:17:56.28 ID:5y9Klee+0
僧侶が、ここに長時間留まるのは不味いと口にする
見れば残りの二人も、まるで酒が入っているかのごとく頬が紅潮し、目が虚ろに垂れ下がっている
先ほどの俺と違い、意識を完全に持っていかれているようではない
しかし長時間の滞在は、今度こそ俺たちを[赤彼岸]の餌に仕立て上げるだろう

俺は両手で頬を叩くと、二人の手を引いて別の道を探す
見れば幸運なことに、丘の上から小さな道が分岐して、別の空間に繋がっているようだった
若い草と白い花を掻き分けて、一刻も早くそこから離れるように移動する

暫く歩いていると、甘い香りは遥かに遠くなり、霞がかかった意識も現実に引き戻されていく
やや覚束ない足取りだった二人の焦点も定まっていき、魔法使いが頬を紅潮させて俺の手から離れる
遊んでそうな割には、こういうとこは初心だよな
僧侶は手を握られたまま無表情に歩いているが、俺が手を離して大丈夫か聞くと、無言で頷いて手を離した

草の通路を抜ければ、すぐに違う部屋が見えてくる
そこは小さな空間だった。再び暗くなった洞窟を、[灯る指先]で照らしてもらう
部屋の中央には湖が存在している。近づいてみれば、底は浅く、小魚がふよふよと浮かんでいる
手を入れてみると、驚くほど冷たい
まあ地下に出来ている湖だからな。冷たいのは当然なのだが

湖の周りには、ドーナツ状に花畑が広がっている
白い小さな花をつけたそれは、[毒消草]の花の群れだ
微かに甘い香りが漂っているが、それは先ほどの危険な甘さじゃない

女性二人組が、湖を見て甲高い声を上げる
珍しいことに魔法使いだけでなく、普段あまり大声を上げない僧侶も声を上げて喜んでいた
まあ無理もない。二人共肌は泥だらけだし、髪はぱさついて艶をなくしている
周囲をぐるっと見渡すが、どうにも危険が生物が居る様子はない
俺たちはここで、暫しの休息を迎えることにした
315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/21(水) 14:23:00.11 ID:msYSz8Lfo
おー、水と魚ゲットか。やったな
316 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/21(水) 14:40:50.40 ID:5y9Klee+0
と、ここまでが一昨日の話だ
この後、俺たちは湖の水で身体を禊いだ後、それぞれにやるべきことをした

俺は花畑から本格的に入り乱れている[迷宮区]へと向かい、その日の食事を探す
かつて見た迷宮図によれば、[2F-血溜まりの花畑]は動物型モンスターや植物型モンスターが非常に多い地域だ
実際に探索してみれば、[迷宮区]の至る場所に背中に花を生やす豚が歩いている
[フロラルピグス(Lv8)]。[2F-血溜まりの迷宮]のメインモンスターの一体で、背中の花は擬態用に寄生させているらしい
レベルの割に大人しく、一刀で屠るのも楽だ。背中の花の侵食具合にもよるが、火を通せばかなりの可食部が期待できる

魔法使いは迷宮区の空いた小部屋で火を焚いて、捕れた魚や肉を燻製にしていく
まあ完全な密閉もできないし、簡易的なものだが
それでも食品として、暫く携帯できる程度には作ってもらうつもりだ

僧侶は[毒消草]や香辛料の採集
それから魔法使いと一緒に仮の拠点を整えてもらっている
モンスターの侵入を察知できるよう、縄と調理用具で簡単な鳴鈴を作ったりな
317 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/21(水) 14:52:31.32 ID:5y9Klee+0
一昨日の食事は湖で取れた[オイルトラート(Lv4)]の香草詰め
トラートの腹を捌いて肝を抜き、代わりに[毒消草]と保存食を砕いたもの、胡椒粒を入れる
その後トラートの外側をもう一度[毒消草]の束で巻いて焼いたものだ
オイルトラートは火を通すことで油が抽出できるので、それは保存して置いておく

まあまともな食事そのものが本当に久しぶりなので、それはもう美味かった
空腹と貧しさは最高のスパイスだな
僧侶はいつも少食なくせにペロッと一尾食べきってたし、魔法使いは涙すら浮かべてた

身体も洗えたし、飯も食えたし
長時間の探索で消沈してたパーティのやる気が、一気に漲っていくのを感じた
まだやれる、それが俺たちの総意だ
318 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/21(水) 15:01:04.00 ID:xuo/9YoA0
今北産業 質問なんだが、深層にもギルドのポータルがあるならギルドの生き残りとかが避難+救援求めに来るとかないの?ジャイアントワームのところもそうだし。
既に誰かから聞かれてたらすまない。
319 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/21(水) 15:09:49.21 ID:5y9Klee+0
さて、一日置いて
ここからは昨日の話だ
質問等は後で纏めて答えるぞ

それなりに満ち足りた食事と、綺麗で魚も多い水辺
前日までとは打って変わって幸福な眠りに身を任せていた俺たちは、僧侶が作った鳴鈴の音で目を覚ました

すぐに武器を持って、周囲を警戒する
見れば[迷宮区]の奥から、一つの人影が迫ってきている
その姿は豚を人に近づけ、直立させたものによく似ている
身体には[鉄の鎧]を着込み、右手に持っているのは[鉄の手斧+1]
所持技能は[繁殖Lv3][剣技Lv2][嗅覚Lv2][自然治癒Lv1][免疫Lv1]
二層の主要人型モンスター、[オーク(Lv9)]だ

オークは花をひくつかせて俺たちを見つけると、にたりと笑って、魔物語で何かを言っている
俺には聞き取れないが、魔法使いと僧侶を見て気持ち悪い笑みを浮かべた辺りで、大体何を言ってるのかは察した
様々な逸話にもある通り、オークっていうのはそういう事を非常に好むモンスターだからな
320 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/21(水) 15:16:47.93 ID:5y9Klee+0
オークがこちらに向かって突進してくる。数は一体
その眼にあるのはぎとぎととした欲望だった
思わず魔法使いが身を引いている。まあ、気持ちはわかるよ

そして、僧侶が手に持っていた紐を勢いよく引く
見えないように花畑に隠されていたロープが、勢いを持って結ばれる
その収束点は奴の右脚だ
太い足にロープが絡み合って、オークの巨体を支えきれなくなる

奴が花畑に盛大に顔を突っ込むと同時、俺の石斧が奴の首に振り下ろされる
まあぶっ倒れて動けない相手の首なんて、木偶よりも楽だ
両断、
風切り音とともに勢いよく首が飛んで、返り血が俺の鎧を濡らした
321 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/21(水) 15:29:34.09 ID:5y9Klee+0
オークの首が飛んでいくのを確認してから、俺たちは今後の行動を相談した
既に説明したが、この二層には[2F-豚の山岳]って区域がある。まあオーク種の拠点だな
オークがここに来たって事は、[2F-豚の山岳]も近くに隣接している可能性が高い

今は数が少なかったから良いが、オークってのは元々かなり個体数が多い種族だ
もし集団で見つかれば、一溜まりもなくやられちまう
この拠点に長居するのは、あまり得策では無いかも知れない
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/21(水) 16:16:41.05 ID:oTbX/n32o
よし、まともな武器ゲットだ
・・・その手斧を泉に投げ込んだら金と銀の斧になったりしないかな
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/21(水) 18:07:52.79 ID:5HOwNeqo0
やっぱりオークはそういう生き物なのね
同族メスに欲情しろよ、ガリ専かよ
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/21(水) 20:17:06.96 ID:oTbX/n32o
なんもかんもBASTARDが悪いんや
トールキンは繁殖力が強いってだけ書いたんだ、他種族交配しまくる生殖おばけにしたのは萩原のせいだ・・・
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/21(水) 22:51:26.28 ID:63Ur/w6Go
安全確保出来るならレベリングやりたかったんだがなー
正直どっかでレベリングしないと結局詰みそうなんだが

あと打算込みなんだろうけど手を引いて止めてくれたことは嬉しいな
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/21(水) 23:04:38.41 ID:xuo/9YoA0
というか巨大ワームのポータルは無視していいんかな? 後々面倒なことになりそうなんだけど
327 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 01:38:49.69 ID:0TknjQHp0
さて、続きを話そう

オークの首を飛ばした俺達は、拠点を出る準備をしながら周辺を探索した
具体的には[迷宮区]から下層への入り口、或いは別の区域への入り口を見つけようとしたんだな
[2F-血溜まりの花畑]の[迷宮区]は洞窟型で、不規則に分岐し道も暗い。その分だけ潜伏しながらの移動には丁度いい塩梅だ
ただこの[迷宮区]特有の特徴として、足元に草花が生い茂り、移動音を発生させるってことがある
移動時の靴音を減少させる[忍び足]技能が無いと、耳の良い相手には音を聞き分けられる可能性がある
まあそれは、こっち側も同じことが言えるんだが

兎も角俺たちは灯りを消し、ハイディングしながら他ルートを探した
移動している時に稀に大きな音が鳴り、背筋に冷たい汗が流れる
328 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 01:48:29.16 ID:0TknjQHp0
この[迷宮区]は高低差のある道が少ない分、横の広がりが大きい
迷宮には幾つかの小部屋が存在しており、それぞれに草花が生えている

[迷宮区]を探索して40分程が経過したろうか
不意に暗闇の中に灯りが現れ、俺達は反射的に身体を隠す
それは鉄でできた扉だった。扉の奥からは灯りが漏れ、肥溜めのような異臭が漂っている
音を立てずに近づいて、扉に耳を当てる
扉の奥からはオーク特有の、鼻に詰まったような聞き苦しい声が、何重にも重なって聞こえてくる
この扉の奥には複数体のオークが存在しているのは間違いない

そしてオーク達の笑い声の奥に、一瞬、甲高く何かの声を聞いた気がする
この唐突な直感は、[察知]技能によるものだろうか
声の正体は判らない。ただその声らしきものが聞こえた時、オーク達の笑い声が一瞬留まる
そしてまた魔物語による対話。俺には聞き取れない。魔法使いにも聞いてもらったが、詳しく判別できないという
もしこれを正確に聞き取るなら、[聞耳]の技能が必要だろうか

ともかく、ここに留まっているのは危うい
俺たちは迅速にその場所から離れる
扉が完全に見えなくなった頃、後方で扉が開く音がした
危ない所だ
329 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 02:10:43.88 ID:0TknjQHp0
引き続き迷宮を探索する
気力も充溢しているので、行けるところまで行きたい所だ
またダラダラしてたら、モンスターに見つかる可能性もあるからな

草で覆われた、道とも言えない道を進んでいく
やがて通路はどんどんと狭くなり、寝そべって匍匐で進まないといけなくなってくる
ここまでか? とは思ったが、こんな道ならばオーク達も通れはしまい
より安全を求めるために、俺達は狭い通路を少しずつ進んでいくことにした
一列になり、唯一光源を持てる魔法使いに先頭になってもらう
僧侶は真ん中、俺は殿だ

道は変わらず草で覆われ、視界を遮っている
更に土は湿り気を帯び、泥が服にこびり付く
草を掻き分けると小さな虫が現れて、口や眼に入ってこようとする
正直、この道を選んだことを少し後悔したね

しかしそんな道も、いずれ終わりを迎える
現れたのは、なんと一面の白色だった
一瞬、ただ光の中にいるのかと勘違いするほど
[赤彼岸]に似た形をした花が、床を、壁を、天井を埋め尽くしている
それを見た瞬間、思わず口元を塞ぐ。あの甘い香りを警戒してのことだ

けれども、一向に幻惑の香りが漂ってくることはない
恐る恐る手を放すが、意識が飛ばされた様子もない
残りの二人も同じように見える
330 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 02:15:59.52 ID:0TknjQHp0
安全性を確認した後、俺はじっくりとその花を観察した
花や茎の形は、[赤彼岸]によく似ている
葉はない。これもまた[赤彼岸]の特徴と一致する。赤彼岸は花を咲かせる寸前に、全ての葉を落としてしまうのだ
遠くから香りを嗅いでみる。特に匂いはしない
[赤彼岸]の亜種だろうか。花が白いということ以外、[赤彼岸]にそっくりだ
図鑑でも見たことのない植物
それが新種かどうかはわからないが、俺達は便宜的にそれを[白彼岸]と名付けた

[赤彼岸]が死体の上に咲くのに比べて、これらの花はまるでそういった様子はない
[白彼岸]が咲いているのは、一面の草原や草の上
天井まで咲き揃っていることを除けば、その咲き方は普遍的な植物と何も変わらない
331 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 02:55:20.21 ID:0TknjQHp0
そんな普遍性の中に、違和感を覚える
具体的な何かがあったわけではない
ただ直感的に、そこにある強大な存在を感知する

俺の左前方
僧侶が四つん這いになって、じっと白彼岸を観察している
[薬師]技能を持つ彼女にとっては、初めて見る植物が珍しいのだろう
その目線は、目の前の白い花畑ばかりに向いている

そんな彼女の、腹部付近の土
そこが少しだけ盛り上がった、気がする

見間違い、と理性が待ったをかける
しかしそれより早く、その存在を感知した身体が動き、僧侶を突き飛ばす
驚きと恐怖とを綯い交ぜにしたような表情、次いで俺の顔を見て抗議の色
それすらも意識することなく、鉄の手斧を振り抜く
盛り上がりが更に大きくなる、そこに斧を振り下ろす
中空に鉄の残滓が閃き、呼吸ひとつ分を置いて斧が土の中に潜っていく
手首に感じるのは、柔らかな土を掻き分けるものじゃない
繊維を突き破る、生々しい感触

斧の刃先と土の接触面から、紫色の液体が飛び散る
次いで土が盛り上がり、その奥に隠されていた巨体を顕にする
332 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 06:02:27.93 ID:0TknjQHp0
土を掻き分けて出てきたのは、巨大な茎だった
俺の身長の二倍はあろうかというほど伸びた茎が、触手のように蠢いている
茎には葉もついておらず、その根本は土に隠れて見えない
茎の先端には、二枚貝に重なった葉がある。重なる二枚の葉の間には無数のトゲが走り、その間からまるで涎のように粘液が流れ続けている
それは植物型モンスター[フライトラップ(Lv2)]によく似ていた

故に俺は最初、それを突然変異した巨大なフライトラップだと勘違いした
突き刺した鉄の手斧は、奴の捕食器たる葉に突き刺さったままだ。そこからは紫色の体液が、絶えず垂れ落ちている
奴が勢いよく地面から表れ出た所為で、斧を手放してしまったのだ

俺は石の斧を構え、その茎を分断しようとする
フライトラップはけして強いモンスターではない。例え突然変異していても、この三人なら余裕を持って勝てる筈だ

しかしその時、背後で悲鳴が聞こえた
振り返ると、同じ茎が他に三つ、地面から現れて蠢いている
フライトラップの群生、と瞬時に考える。現れた三つの茎もまた、同じように涎を垂れ流している
僧侶は足元から現れたそいつに、思わず腰を抜かしてしまっているようだった

そして、そいつは現れる
四つの茎の対角線の交わる点、即ち中心点に、もう一つ土が隆起する
五体目のフライトラップか
その予想に反して現れたのは、巨大な球根だった
球根の頂点には、生々しく滑っている眼球がくっついている
そして、球根の側面には四つの茎があった。それぞれは、今しがた出現した茎に繋がっている

そこまで見て、俺はようやく真実に気づいた
この四つの捕食器は、個別に存在するモンスターではない
一体の大型モンスターの、手足なのだ

巨大な一つ目が、ぐるりと俺を見つめた
瞼も何もない赤い虹彩が、まるで獲物を見定めるかのように
333 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 06:10:34.08 ID:0TknjQHp0
なんだこのモンスターは!

それだけが頭を過る
見たことのないモンスターだ。魔物図鑑には乗っていなかった。レベルはいくつだ、技能は。戦うべきか。いやしかし武器が
頭の中で幾つもの考えが通り過ぎていく
その一瞬の間をついて、四つの捕食器が一斉に俺に襲いかかった
鉄の斧はない。俺は再び石の斧を取り出すと、襲いかかった捕食機の一つを切り落とそうとする
しかしその右手を、別の捕食器が絡め取る

ただの植物型モンスターではない
通常、植物型のモンスターは決まったルーチンでしか動かない
しかしこいつには明確な意志があった。生々しい眼球に映っているのは、自らを傷つけた俺への復讐心だった
別の捕食器が、俺の脇腹に向けて大きな"口"を割り開いた
茎に巻き付かれながらも、回避を図ろうとする
しかしその時、腕に絡まっている茎が、驚くほどの勢いで俺を引っ張った
筋力にはそれなりに自信のある俺が、全く太刀打ちできない程の力だ
それは丁度脇腹に"口"が当るように調整されている
回避の余地はなかった

しかし捕食器が当る寸前、炎の矢が俺を束縛する茎の根本に直撃する
束縛されていた腕が突然軽くなり、俺はバランスを崩した
突如姿勢を変えた俺に擦れるようにして、"口"が背後を通り過ぎていく
334 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 06:18:33.79 ID:0TknjQHp0
魔法使いを見る
詠唱短縮の簡易[炎の矢]を唱えた彼女は、再び次の呪文を唱え始める
視線だけで礼をしながら、ベルトホルダーにしまっていた剣を取ろうとして――

――気付く。剣がない
取られているのだ、剣が
いや、荷物そのものが
見れば先程俺の背中を通過した茎が、その"口"に鞄を咥えている
先程擦れ違ったほんの一瞬で、俺の背後から荷物をスリとったのだ
只の植物にできる芸当ではない

茎は荷物をそのまま地面に投げ捨てると、ゲレゲレゲレと耳障りな笑いを発した
それは他の二つの茎にも伝染し、笑いは三重になって空間に響く
嘲笑っている。このモンスターは明確な意志を持ち、俺を嘲笑っている

魔法使いが詠唱を始める。球根ごとこいつを焼き払うつもりだ
炎の矢が空間に現れ、球根を照準する、その時
不意に魔法使いが詠唱を止めた。いや、止めざるを得なかった
地面から現れた五本目の茎が、彼女の口元に巻き付き、詠唱を禁じていた
335 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 06:26:08.47 ID:0TknjQHp0
魔法使いを助けなければ
斧を握るが、しかし俺の周りの三つの茎もまた、再び俺を拘束せんと動き始めた
とても彼女の所までいけない。三つの"口"の猛攻を、避けるので精一杯なのだ

斧を空に舞わせ、近づいてきた茎を振り払う
茎は巧みに俺の攻撃を避けていた。直線的な動きを理解し、曲線的に動いていた
攻めきりたい所なのに、蠢く多数の触手のせいで攻撃すら困難な状況
それでも一瞬のスキをつき、茎の群れから抜け出して魔法使いの元へと向かおうとする、

その右脚がつんのめる

思わずそこを見る
右脚が拘束されている
どの茎だ。思わず見渡して、愕然とした
その茎は、地面から生えていた
六本目の茎

そして体制を崩した俺の右肩に、今度こそ、
涎を垂らす"口"がかぶりつく
336 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 06:26:36.36 ID:0TknjQHp0
最初に感じたのは、熱
337 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 06:34:08.10 ID:0TknjQHp0
次いで鋭い痛みが、俺の右肩を貫く
葉の内側にある棘が、皮膚を突き破っている
貫かれる痛み。だがそれすら、前座でしかなかった

皮膚の内側に潜り込んだ"牙"から、何かが"漏れて"いる
それに気づいた時には既に、狂おしいほどの熱さが、血液に乗って全身に流れていく
じんわりと熱さが広がり、まるで身体の内側が火傷になっているかのように、その熱を増していく
熱が、痛みに変わる
痛みの奔流が、全身を駆け巡っていく
そう、痛み!

余りの熱量に、痛みに、芯から身体が燃えていく
まるで熱暴走を起こしたみたいに、全身が熱くて、痛い
最早耐えきれなかった
苦痛を身体の中に抑えきれず、俺は大声で吠えた
痛みに咽び泣いた
叫んだ

そうしてすら、この痛みは増していくばかりだ
338 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 06:44:41.97 ID:0TknjQHp0
目に見えているものが何かがわからなくなっていく
全身を巡る熱が、俺の脳を溶かしているみたいだ
だが唯一つの本能に従って、この拘束から抜け出そうと身体を揺らす
抜けない。解けない
何故か。それを考える余裕すらなく、ただ我武者羅に身体を動かす
その分だけ全身が熱く滾り、身体に溜まる何かが広がっていく
それが苦痛で、更に身体を動かす
その悪循環すら、意識することはできない

不意に、少し遠くで何かを千切る音がした
小さな女の子が、手に持った鋭い何かで、綺麗な誰かの口元にある何かを切っている
何か? 誰か?
それが何かすら判別できない

視界の橋で、赤い線が奔る
俺の右肩に、何か強烈な熱を感じた
うめき声のようなものが聞こえ、身体を縛り付けていたものが楽になる
景色が回転する。違う? もしかしたら自分が回転している
強い衝撃にぶつかるより先に、柔らかな何かが俺を抱きかかえている
俺を呼ぶ声が聞こえる。ふたつ。どちらも逼迫した声。なんとなく、珍しいなと思った
少し遠くで、何かが蠢いている。綺麗な誰かが、赤い線を奔らせてそれを遠ざける
もうひとりの女の子が、俺の右肩に触れている。暖かな光が右肩を包み込んでいく

それでも、俺の身体の芯は氷のように冷え固まっていた
どうしようもなく寒くて、微睡みはいよいよ限界に達していた
俺を覗き込むふたつの影が、ぼやける
そしてそこに、俺はみっつめの影を見た
遠い昔に死んだ、俺の妹を見た

そこで一旦、俺の意識は闇に沈む
339 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 06:45:31.72 ID:0TknjQHp0
と、そろそろ見張りが交代なのでここまで
続きは起きてから話す
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/22(木) 08:06:38.76 ID:MEHNVrqco


たまたま炎と相性のいい植物だから凌げたんだろうか
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/22(木) 10:39:52.06 ID:6+A6VWugO
こいつはまた、とんでもなく濃密な一日だったんだな……よりにもよってユニークモンスターに出くわすとは
ただ、不意打ちを潰して先制攻撃出来たのは【感知】と【かばう】の技能があったからと考えていいのかなコレは

不意打ちへの対処とか戦闘時における戦士の役割とかを総合して考えると技能取得の現時点での優先度は個人的に
自然回復1>(自然回復2>)剣技4>感知2>かばう2>対魔力1かなぁ
自然回復4で戦闘中でも目に見えて傷が治ってくって話から少ない補給で深層を目指す上では欠かせないと思うし

あと二層では魔法使いの魔法がモンスターに有利取れそうな感じだし、先を考えるとこの階層でレベルを幾つか上げておきたいところ
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/22(木) 13:09:27.53 ID:bSZqjIYHO
ああっと!! を思い出す

レベリング出来る状況ではないと思う
あと自然回復4の習得可能レベルわからんのがつらいな
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/22(木) 13:12:16.10 ID:MEHNVrqco
剣技スキルって剣持ってなくても有効なんだっけ?有効ならとっとと身につけて強化すべきだし、
剣がないと役に立たないなら早く自然治癒つけた方がいい。何も持ってない時間が勿体無い
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/22(木) 13:34:24.00 ID:oKsmhOzDO
勿体なくはないだろ
後々の成長予測を立てて欲しい物を一気に伸ばせばいいんだから
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/22(木) 14:07:14.39 ID:MEHNVrqco
レベリングする余裕があるならそれでいいと思うが
ここの敵の強さを考えたら少しでも強化しておかないと下手したら次で死ぬぞ
346 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 15:14:32.44 ID:0TknjQHp0
やあおはよう
朝の続きを話していこう
ようやく今日の朝まで追いつくぞ
347 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 15:27:15.80 ID:0TknjQHp0
目を覚ますと、右肩に鈍い痛みを感じた
思わず右腕を身動ぎさせようと思って気付く。右腕が動かない
まるで全ての神経が焼き切れてしまったが如く、何も感じない
強烈な痛みの中で誰かが俺の右手を握っていることだけが、遠い感覚の果てに認識できる
その感覚が恋しくて、微睡みのまま右手の温もりに意識を合わせる
やがて暫くの後、右手がゆっくりと離れる。それを恋しく思う
意識が覚醒していく


ゆっくりと目を開く
ぼやける視界の中に、僧侶が映った
いつも持ち歩いている器の中で、何かの草を煎じているようだ

身体を起こそうとして、右肩に鈍い痛みを感じる
それが不快で思わず息を漏らすと、僧侶が俺に気づいて、起きなくて良いと気遣ってくれた
身体を寝かせたまま、首だけを動かして周囲を見る。[迷宮区]のどこかだろうか。見覚えのない場所だ
おそらく[2F-血溜まりの花畑]の迷宮区にある小部屋のひとつなんだろう
寝心地が良いと思ったら、地面には若い草が生い茂っている
348 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 15:55:53.15 ID:0TknjQHp0
気を失う寸前の事をぼんやりと思い出して、右肩を見る
左肩と比べて大きく膨れ上がり紫に変色したそこには、応急用の包帯が巻かれている
包帯からは薬品の臭いとともに、[毒消草]の花の香りがする

僧侶が鈴の音のような声で、静かに現状を聞かせてくれる
どうやらあの戦闘の後、彼女たちは俺とその荷物を持ってモンスターから逃げ出せたらしい
ここは[2F-血溜まりの花畑]の[迷宮区]の一角。入り口が草で見えなくなっている、隠された部屋だ
魔法使いが敵に見つからずに安全に俺を手当できるこの場所を、必死に探してくれたのだという

俺の右肩に打ち込まれたのは、Lv11相当の[消耗毒]と、Lv4相当の[麻痺毒]
どちらかの毒を保持していることすら驚異的だが、あの変異モンスターはそんな危険な毒を二種類も保有していたらしい
今は[毒消草]を少量ずつ服用しながら、毒を中和しているらしい
[薬師]技能を取っておいてよかったと、僧侶が薄く笑う

まだ霞のかかった頭でそれを聞く
僧侶が次いで教えてくれる。毒の中和自体は早い処置が功を奏して問題なく行われたが、それでも俺の身体は限界だった
即ち全身に奔る人間の許容量を遥かに超える痛みが、俺の脳を破壊し始めていたのだという
既に何らかの記憶を喪失している可能性がある。彼女はそう言っていた
記憶を手繰る。自分のこと。家族のこと。これまでの経歴。全てをはっきりと思い出せる
大丈夫だ、何の欠落もない

それを自覚しながら、会話に耳を戻す
治療するにも何をするにも、まずは俺が感じている痛みを止めないといけない
そのために、彼女たちは俺に[赤彼岸]を服用させた
349 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 16:04:42.20 ID:0TknjQHp0
既に前述した通り、[赤彼岸]の花には薬効成分が含まれている
しかしそれは花を適切な手段で煎じて、薄めてから飲むことで発揮されるものだ
逆に花を乾燥させ、強い香りを発散させるようにすると、[赤彼岸]の花は麻薬になる
今の俺はそれを服用することで、痛みなどのあらゆる感覚が鈍い状態にあるのだという
おそらくこの考えが纏まっていない霞がかった頭も、[赤彼岸]によるものだろう

僧侶は言った。俺の右肩に燻る毒は、最低でも一週間は継続される
半日程度経てば[麻痺毒]が中和され動くことは出来るはずだが、[消耗毒]の深度が非常に高いために、[赤彼岸]は継続して服用し続ける必要がある
それでも構わない。そもそも、死んでいてもおかしくは無かったのだ
生きているだけで僥倖だ。加えて、半日経てば動くことは出来るのだから
350 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 16:15:01.41 ID:0TknjQHp0
魔法使いが戻ってくる
両手には[赤彼岸]を抱きかかえていた
俺のために採ってきてくれたらしい。本当にありがたいことだ

魔法使いが俺を心配そうに見つめている
僧侶が少しだけ笑みを浮かべて、それでもこれだけ動けるなら大丈夫だと言っていた
俺もそうだと思う。この程度なら問題ない
それから魔法使いを元気づけるように、僧侶が色々と魔法使いに声をかけてくれる
魔法使いはこう見えて繊細だからな。こういう風に、気を遣ってくれる娘はありがたい

魔法使いがついぞ耐えきれないと言ったように、一つの提案を口にした
つまり、本当に一度街に戻らないか、ということ
俺の怪我もしっかりと見てもらわないといけないし、消耗品もそろそろ限界だ
これ以上潜るのは無理がありすぎる

その提案に対して、僧侶が笑いながらも、どこか困ったようにそれを否定する
その瞳が俺に助けを求めている

なんでそんな眼をするんだろう
351 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 16:15:51.57 ID:0TknjQHp0
 


俺は、それも良いな、と口にした


 
352 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 16:16:46.44 ID:0TknjQHp0
僧侶の口元から、笑みが凍りつく
その瞳孔が、まるで絶望したかのように開いていく
なんでそんな顔をするんだろう
その理由を、俺は今も分かっていない
353 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 16:20:23.36 ID:0TknjQHp0
一昨日の話はここまで
昨日と今日については殆ど何も無かったから、少し休んでから改めて話してしまおう

そんな訳で、今朝段階での俺達のステータスを晒しておく


俺(戦士)
適性:戦士
年齢:21
性別:男
練度:LV6
技能:[剣技Lv3][かばうLv1][感知Lv1][自然治癒Lv1]
装備:[ゴブリンの石斧][鋼のつるぎ(壊)-1][古ぼけたツルハシ-1][鉄の鎧(壊)-1]
持物:[ヒーリングポーション]*2,[安物の砥石]*1,[松明]*2,[安物のナイフ]*2,[旧式カンテラ]
持物:[瑞々しい赤彼岸の葉(34日)]*10,[寝具],[調理油],[調味料],[食器と携帯鍋]

魔法使い
適性:魔法使い
年齢:17
性別:女
練度:LV6
技能:[炎魔法Lv4][詠唱Lv2]
装備:[樫の杖][魔女のマント][とんがり帽子]
魔法:[Lv1:灯る指先][Lv2:炎の矢][Lv3:夕焼けを熾す][Lv4:赤き刃]
持物:[魔法の触媒(火/下級)]*7,[ヒーリングポーション]*2,[ブランド物のナイフ],[創成のクリスタル(青)],[寝具]

僧侶
適性:僧侶
年齢:14
性別:女
練度:LV5
技能:[光魔法Lv3][薬師Lv1][罠師Lv1]
装備:[鋼の槌][修道服+1]
魔法:[Lv1:癒やしの滴][Lv2:明ける知識][Lv3:祓の水]
持物:[聖典(下級)],[ヒーリングポーション]*2,[瑞々しい毒消草(11日)]*8,[うさぎのぬいぐるみ],[ロープ(4m)-1],[寝具]
354 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 16:30:45.29 ID:0TknjQHp0
>>282-285 >>288-291
色々と考えてくれてありがとう
諸々を考えた上で、今回は[自然治癒]の技能を取得した。大きな怪我を受けたので、それを早く回復させたかったのもある
次のレベルアップの際に[剣技]技能を上げる予定だ。まあ、次のレベルアップで出現する新しい技能次第だがね

>>286
どうだろうな……盗賊ギルドは黒い噂が流れて絶えない
そもそも盗賊ギルドという存在自体が、ギルド名簿に登録されていないんだ
ただ"そういう集団がある"という情報が少しずつ知れ渡って、盗賊ギルドと呼ばれているに過ぎない
実際に何をしているのか、どれだけの人が居るのか、そういったものが全くの未知なんだよな

>>289
[かばう]技能はレベルが上がるほど、味方に行くはずの攻撃が自分に行くようになるらしい
敵の攻撃がそもそも自分に行くように調節する技能って感じかな
俺たち冒険者の専門用語では、このモンスターの敵意の向きをヘイト値、それを収束させる前衛をヘイト管理って呼んでる

>>292
そういえば記述し忘れていたが、鎧はゴーレムの動きを止めていた時に傷ついたんだ
まだ着用自体に問題はないが、両腕から肩にかけてを保護する手甲が、しっかりとはまらなくなってしまった
だからこそ今オレは鎧を胴にしかつけれてないんだよな
355 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 16:38:50.85 ID:0TknjQHp0
>>293
まあ一点特化で技能を取得すれば、格上相手でも攻撃は普通に通ったりするな
盾の技能はいずれ取得したいところだ。ただ、まだ全然技能選択に出てこないんだよなあ
俺の才能が無いんだろうか

>>306
[毒消草]はこのフロアで採取したぞ
[白彼岸]の部屋にいたあの変異モンスターと遭ったことは最悪の不幸だが、[毒消草]があるフロアで噛まれてまだ良かった
これが一層なんかで遭ったものなら、おそらくどうしようもなかったろうからな

>>318
ギルドは基本的に街にあるぞ。深層にギルドを持ってるのなんて、如何わしい事をしてる連中くらいだろうな
もし何か困ったことがあって避難や救援を要請するなら、街に行ったほうが手っ取り早いと思う

>>322
[泉の精のはなし]だったか。子供の頃に読んだなあ
たしかあれ、実際にあった現象を元にして作られた小話なんだよな
脚色は入ってるだろうけど
356 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 16:43:02.78 ID:0TknjQHp0
>>323
寧ろオークは人間ばっかり襲うぞ
基本的にモンスターと人の仔っていうのは、普通よりも強い子供になりやすいからな
あと、モンスターの美的感覚的にも、人間の女を美しく思うものらしい
特に人型のモンスターは、オークに限らず人間の女を襲ったりすることは多い
嫌な話だが

>>325
この周辺に残念ながら安全域は無さそうだ
俺は一度街に戻って、回復してからもう一度出直したほうが良いと思うんだが
ただ、どうも僧侶の様子がおかしいからな……

>>326
もしあそこが[1F-ジャイアントワームの大穴]なら、変に突っ込んで魔術師ギルドにイチャモンつけられるのも嫌だからな
それに実際、あそこをどうにかする手段がな
357 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 16:46:06.23 ID:0TknjQHp0
んん、また僧侶が泣き出した
一昨日俺が目を覚ましてから、こいつは本当によく泣くようになった
あんまり感情を表に出さない娘だったんだがな

とりあえずもう一度事情を聞いてくる
この二日間、彼女に何を聞いても、はっきりとした回答を得られない
俺には話せない事なんだという
一緒にここまで冒険してきて、それなりに信頼を積み上げたつもりだったんだが、そんなに関わりを拒否されるのは少し悲しい

そんな訳でまたあとで
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/22(木) 16:52:21.97 ID:LV/zQjJko
騎士さんもしかして街で見たことをお忘れではないか
君の端末でここを遡れるのならはじめの方を読んでくれ
なんの用意もなく街に戻ってはいけないし戻れるわけがない
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/22(木) 16:56:34.43 ID:APYeYuao0
さっきこのスレ見つけて一気読みした俺が教えてやるとしよう
お前の街はゴブリンを始めとしたモンスター軍に襲われて壊滅状態だから!
直接見たのはお前だけでその時魔法使いは意識失ってたから
街がモンスターに襲われたことを知ってるのは直接見たお前とお前から話を聞いた僧侶だけ
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/22(木) 17:00:21.70 ID:LV/zQjJko
>>358
ごめん戦士だよ間違えた失礼を詫びたい
すまなかった
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/22(木) 17:39:31.03 ID:NCl9SnbhO
肝心な所の記憶を喪失してるのは辛いな
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/22(木) 17:47:23.05 ID:L2e9ODnA0
>>318のレスした者っす。まず現状やけど戦士君たちの街はゴブリンたちに襲われたから、街から逃げて迷宮に潜っとるんよ。で、この質問の意味やけど、ギルドがある街が襲われたんなら、君らと同じように深層グループに救助を求めにいく人もいるんやないかなと。あと、ワームのところにも街の誰かが避難しに来る可能性があるんやないかなって意味でした
363 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/22(木) 19:38:07.81 ID:oKsmhOzDO
ここで1度戻るのも手ではあるのよね
どういう状況なのか魔法使いに判らせるって意味でもあるし
何より2Fに知恵のあるモンスターがいる事からとっくに侵攻も終わって残骸しか残ってない気もするし


それよりも麻薬を手に入れたのはでかい
恐怖心も無くなるし痛みも薄れるから格上と戦闘をする上でこれ程便利なドーピング剤はない
思考がまとまらないのが問題だけど、その点は他の草と組み合わせるなりしてカバーしたいな
364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/22(木) 21:40:51.78 ID:5nU20U9i0
ねぇ 君たちネタ潰しって知ってる?
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/22(木) 21:48:36.55 ID:l/Zp0SGno
>>364
言ってやるなよ、傍から見てたら痛いやつでしかないけどそいつらなりに助けようと必死なんだろ
思考が物理で殴りたいだけの脳筋だからこんなやり方しか思いつかないだけで
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/22(木) 23:13:56.43 ID:oBjF4epD0
僧侶の精神状態が心配だな
精神的にぼっち状態な上に一番年下だもんな
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 07:37:46.52 ID:X0SiXwSZo
>>364
ねぇ 君頭悪いってよく言われない?
作者嘗め過ぎ
この形式を取った時点でこんな突っ込み入るの想定してない訳無いんだよなぁ
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 08:47:08.04 ID:49EnJH27O
とりあえず本気で剣技取れって思ってる奴は今までで1度でも剣技が役に立ったのかを考えてないのは良く分かる
あとレベリングとか悠長でマヌケな事言ってる雑魚はドラクエの世界で引きこもっておいて欲しい
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 08:48:22.13 ID:zHsZ4DtA0
>>367
まあまあ落ちつきなよ。皆は相談っていう形だから色々アイデアを言った。でもそれがネタ潰しになるんじゃないかって不安な人が出たから注意した。直後のレスに毒があったからちょい嫌な感じに捉えたかもしれんけど皆悪意はないんだし喧嘩腰になることもないでしょ
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 11:56:18.13 ID:49EnJH27O
>>369
ズレてるぞ、>>364>>358-359>>362の事だろ

相談とかアイデアとか関係ない
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 12:39:40.92 ID:jpFCp0eBO
昨日の最後の書き込みから僧侶も限界だったっぽいけど、今頃は街の現状について話して三人での状況の共有をできてると良いんだが
その上でこのスレを遡って見れば、僧侶の言ってる事が妄想じゃ無いんだと気付いてくれる……と願ってる
372 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 16:27:23.42 ID:IoWImwg7o
この形式とってる以上その突っ込みが入るのは折り込み済みだろう
373 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 16:46:10.42 ID:49EnJH27O
一部ものすごく臭いのが居るけどよくよく見返すと確かにネタ潰しって程でもないな

ただこういう感情移入型というか没入型の奴は時々現実に引き戻さないと「なんで俺達がちゃんと説明してるのに>>1は戦士さんに危ない事をさせるんだ!>>1は戦士さんが死んでもいいのか!!」とか言い始めるからなぁ
何度困らされた事か
374 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/23(金) 17:23:40.76 ID:vEy/jTWu0
僧侶が居なくなった
375 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 17:25:57.20 ID:jpFCp0eBO
昨日の書き込みから丸一日か……とても戦闘ができるような状態じゃなかったし無事もなければ良いんだが


って思ったそばから僧侶ちゃん失踪!?なして!?
376 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 17:28:59.32 ID:49EnJH27O
あー、まぁうん
やばい、回復薬が居なくなるとか進退極まる
377 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/23(金) 17:29:59.84 ID:vEy/jTWu0
事の顛末について話す必要があるだろう
俺たちは取り返しのない事をして、彼女にあまりにも酷いことを言ってしまったから
そして、この事態は俺が引き起こしてしまったことだからだ

昨日のあの後、俺たちは僧侶に何故泣くのかを聞いた
しかし彼女は答えない
俺に対してじゃなく、魔法使いに対しても、その心の裡を表そうとはしなかった
全てを知った今思えば当然だと思う
おそらく彼女は、全てを話した時俺たちが真実に絶えきれないと思ったんだろう
彼女は全てを自分の中で押し込めて解決しようとしていたのだろう
付き合いの少ない俺でも、それくらいはわかる
378 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/23(金) 17:42:07.75 ID:vEy/jTWu0
俺があの一言を発してから、パーティの雰囲気は格段に悪くなった
僧侶は塞ぎ込み、何を話そうともしない
魔法使いはその原因が俺にあると思い、僧侶を気遣いながら俺を糾弾している
俺はもう全てがわからない。彼女は何も話さないし、そして塞ぎ込む彼女にどう声をかけていいか、俺にはわからなかった
もし俺がもっと真っ当な人間であったなら、俺は彼女に適切な言葉を発することができたんだろうか
人付き合いの少なさを、心底後悔した

そして、これからの事を話す
俺たちは早く街に戻りたいと言った。勇者が居らず、リソースの少ない今、街に戻って一度立て直すべきだ
僧侶は断固としてそれを拒否した
戻ってはいけない。このまま進まなくてはいけない
何故、という問いを何度したかも判らない。ただ一度たりとも、彼女はその理由を話そうとはしなかった

その日の夜は、このパーティで最も冷たい夜になった
笑顔も、口数もなかった
ただ啜り泣く声だけが、微かに響いているだけだった
379 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/23(金) 17:42:39.03 ID:vEy/jTWu0
そしてその夜が、僧侶の声を聞いた最後の夜になった
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 18:03:31.59 ID:wEydZ1cj0
ここは何もコメントしないのが吉と見た
381 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/23(金) 18:05:41.29 ID:vEy/jTWu0
朝起きた時、俺たちの枕元には一枚の書き置きが残されていた
魔法使いには、これまで妹のように扱ってくれた事への感謝。家族のように振る舞ってくれたのが嬉しかったこと。魔法使いの悲しむ顔が見たくないこと。だからもうここで道を分とうということ
俺には、かつて俺を冷たくあしらったことへの謝罪。義兄に見捨てられる事が怖かったこと。本当はそれなりに好意を持ってくれていたこと。モンスターから命を賭して庇ってくれたのが嬉しかったこと
それから決意。余所者の自分を受け入れてくれた、街の人間が好きだったこと。初めて家族という温かみに触れたこと。それらを取り戻すために、自分は深層まで行くということ
誰かに助けを求めるのではなく、自分の幸せを奪った敵を討つ為に

正直その時の俺は、その文章を半分以上も理解できていなかった
単身で深層に向かおうとする決意の元、彼女の過去の事も。そして今現在、彼女が何に追い詰められているのかも
最終行にはこんな事が書かれていた
今から戦闘を避けて三層の[3F-竜の墓]に行けば、兄の知り合いの勇者が拠点を構えているはずだ
気の難しい人だが、自分の名前を出せば遠方の街まで送り届けてくれるはず。対価に求められるものは、事前に支払っておく

街に戻らずにそうしてくれれば、安全にここを脱出できる

その文章に、彼女自身の安否は含まれていなかった
無数の疑問が頭を過った。だが、一つだけ分かっていることがある
彼女は死ぬ気だ
382 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/23(金) 18:10:48.97 ID:vEy/jTWu0
俺たちはどうするべきなんだろうか
僧侶のことを追いかけるべきか?
それとも彼女を見捨てて、遠方の街まで逃げるべきなんだろうか
どちらが正しい選択なんだろう
383 : ◆ALICE6.PAk [sage!saga!red_res]:2018/03/23(金) 18:17:11.37 ID:vEy/jTWu0
 
ここが運命の選択だ

誰か 正しい答えを教えてくれ
 
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 18:21:03.83 ID:k3HCbRtPo
女の子を見捨てる選択肢なんてあるか!今すぐ追え!
対価を払うってことは兄の知り合いとやらにまず向かってるはず。そこに急げ
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 18:22:19.80 ID:kkMESvTqO
どう考えても追いかけるべき。ただまだ完調ではないんだよな?
行くにしても茨の道だが、どうすれば安全に行けるか?

一つ言えるのは、体力回復は待てないであろうこと。すぐに行けば捕まえられる、かもしれない。
だが、どうすればリスクを減らせるか?そこは考えさせてくれ。
386 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 18:22:48.91 ID:IoWImwg7o
たとえ最終的に間違ってたとしても僧侶を見捨てるなんて選択肢はない
387 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 18:23:57.57 ID:jdN0Y9i1o
>>383
正しいかは知らん。

追いかけろ。
二人で回復役なしでなにが出来る?
お前は幾度も助けてもらっただろ?
決死の女の子を見捨ててのうのうと生きていけるのか?
388 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 18:26:41.73 ID:49EnJH27O
知るかバカ、お前の童貞力に聞け、一番素直な反応してくれるわ
童貞を信じろ


まぁどういう選択するにしても3Fのパーティには会っておきたいな
というか3Fにパーティ居るなら先に言えよ僧侶・・・
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 18:30:59.02 ID:AmDyV1+dO
どっちが正しいかじゃなく、どっちが自分らしいかだろ
俺なら助けに行くね、それで結果的に死んでも後悔しながら生きるよりはマシだと思うし

そもそもここで仲間を見捨てるようならお前は逃げた勇者と一緒だよ
390 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 18:31:47.81 ID:FZxgQMN/0
追いかけるしかない
童貞は可愛いものに弱いからな
391 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 18:34:02.92 ID:jpFCp0eBO
そうか、街の被害を伝えた時から僧侶ちゃんの様子がおかしいとは言ってたけどそういう事だったんか
復讐心からの深層行き選択だったんなら、他の勇者パーティーの存在を打ち明けなかったのも色んな葛藤の末だったんだろうな

書き方からして少なくとも戦士の記憶は戻ったと考えて良いんだよな?魔法使いは現状を認識してるのかな?
認識してないなら、打ち明けて直ぐにでも追いかけるべきだと思う
聡い子だって言ってもまだ14歳の子どもなんだ、一人で孤独に死にに行くのを見過ごすなんて、あって良い筈がないよ
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 18:34:33.44 ID:YtHfALrzO
対価がR18だから言えなかったんだろ

聞いてる暇があったらさっさと追え
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 18:47:03.41 ID:AmDyV1+dO
とりあえず魔法使いとどうするか話し合え
戦士単体で追いかけても無駄死にするだけだ

しかし回復役が居ないと厳しいな、僧侶が居てくれると僧侶を追いかけるのが多少は楽になるのに
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