【彼岸島ss】新生活

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1 : ◆do4ng07cO. [saga]:2018/03/09(金) 00:12:28.44 ID:On+4/IjK0
篤(雪の峡谷で雅と戦ったあの日、俺は明たちを助けるために雅を食い止め、奴を道ずれに雪崩に飲まれた)

篤(だが雅は不老不死。当然、雪崩に飲まれた程度で死ぬはずもなく、それどころか瀕死の俺を救い、仲間になれと勧誘までしてきた)

篤(勿論、俺は拒絶した。それどころか、どうにか隙を突いて殺れないかと機を窺っていた)

篤(だが、そんな決意も長くは続かなかった)

篤(雅に犯され、殺されたと思っていた俺の婚約者、涼子が生きていたんだ)

篤(彼女は精神に異常をきたしており、路傍にうち捨てられ、誰にも相手をされず放置されていた)

篤(それでも構わなかった。彼女が生きていてくれた。ならば、俺は全てを投げ打ってでも護りたい。そう、思ったんだ)

篤(そのためには、吸血鬼である俺と涼子が生きていくには、雅の存在が不可欠だった)

篤(吸血鬼である以上、人間側では生きていけず、また、安定した血液の補充や吸血鬼間の治安の維持には雅の存在が大きいからだ)

篤(だから俺は奴の仲間になった。今もなお消えない憎しみを抱きつつも、奴に従い明や師匠たちと敵対する決意を固めたんだ)



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1520521948
2 : ◆do4ng07cO. [saga]:2018/03/09(金) 00:13:24.77 ID:On+4/IjK0

第一話『再会』


オ オ オ オ ォ ォ ォ

篤「......」ハァ ハァ

男「う、ううぅ...」コポコポ

篤(人間牧場...捕らわれた人間の何人かは、ここで椅子に縛られ血を吸われ衰弱し死ぬまで固定される)

篤(見るのはケン坊を救出しにきた時以来だが...相変わらず胸糞悪い)

篤「まさか俺がこんなものを使う時がくるとはな」ハァハァ

男「うあああ」コポコポ

篤「気は進まんが、邪鬼になるのを防ぐには飲むしかあるまい」

篤(すまない...本当にすまない...)

吸血鬼「ウラァ!なにやっていやがる新入りィ!」

篤「!」
3 : ◆do4ng07cO. [saga]:2018/03/09(金) 00:14:08.71 ID:On+4/IjK0

吸血鬼「こいつは俺専用のだ。勝手に手を出すんじゃねえ!」

篤「そういう決まりがあるのか...すまない、ここのスペースは共有だと思って...なら、俺用の奴はどこで手に入れればいい?」

吸血鬼「そんなもんねえよ。欲しけりゃ自分で人間を探してくるんだな」

篤「...そうか」クルッ

「そんなルールは俺は知らないがな」

吸血鬼「よっ、余計なことを言うんじゃ...!?」

篤「!?」

ドォン ドォン

斧神「メ"エ" エ" エ" エ" エ"」
4 : ◆do4ng07cO. [saga]:2018/03/09(金) 00:14:54.77 ID:On+4/IjK0

篤(なんだこいつは!?馬鹿でかい斧に巨体...新手の邪鬼か!?)

斧神「」ハー ハー

吸血鬼「ヒ、ヒイイイイ!お、斧神さまァァァ!!」

篤(斧神様?それがこいつの名なのか?)

斧神「...貴様、なぜ新入りに嘘を教えた」

篤(喋った!この邪鬼、言葉を話すことができるのか!?)

吸血鬼「こ、こいつは俺達吸血鬼をたくさん殺してきた奴で、この前俺の友達も...」

斧神「貴様の気持ちはわからんでもない。だが、この島では吸血鬼と化し雅様に忠誠を誓う者はみな同士。人間時代の因縁は忘れるべしと教わっているはずだが」

吸血鬼「も、申し訳ございませんんんん!!」

篤「」ハァ ハァ

篤(さっきまであんなに威張り散らしてた吸血鬼がこんなにへりくだるなんて、こいつはよっぽど偉い奴なのか?)

斧神「新入りよ」

篤「は...」

斧神「ついてこい。俺が案内した方が余計なしがらみがなさそうだ」

吸血鬼(チクショウ、あのクソ新入りが...!)
5 : ◆do4ng07cO. [saga]:2018/03/09(金) 00:15:24.64 ID:On+4/IjK0

―――――――――――

オ オ オ オ ォ ォ ォ


篤「」ハァ ハァ

斧神「」ハー ハー

篤(こいつ、案内するとかいってこんな人気のないところを連れまわしてどういうつもりだ?)

斧神「この辺りでいいだろう―――久しぶりだな、篤」

篤「久しぶり?」

篤(俺の知り合いでこれほどデカイ奴は師匠くらいしかしらないが...あの人がこんな短期間で捕まるとも思えない)

篤(ならば、こいつは何者なんだ?)

斧神「分からないか...まあ、無理もない。ならば」スッ

篤「!」

斧神「こいつで思い出してもらうしかないな!」グワッ

バ ァ ァ ン
6 : ◆do4ng07cO. [saga]:2018/03/09(金) 00:16:04.52 ID:On+4/IjK0

篤「くっ、危ねェ!」

篤(なんだこいつ、いきなり切りかかってきやがった!)

斧神「どうだ、篤。これでも思い出せないか?」

篤「なにをいってるんだ。思い出せないもなにも、俺とあんたはさっきが...!」

篤(いや...違う。俺は知っている。先ほどの斧捌きを、なによりも俺を『篤』と呼ぶ男を)

篤(身体や武器の大きさはまるで違う。だが、先ほどの斬撃は、あいつの姿と重なった)

篤「お前...もしかして、村田、なのか?」

篤(俺のかつての親友―――村田藤吉と)
7 : ◆do4ng07cO. [saga]:2018/03/09(金) 00:16:31.47 ID:On+4/IjK0

斧神「ようやくわかったか」

篤「生きて...いたのか...」ハァハァ

斧神「お互い様だ」

篤「は、ハハッ」

ダッ ガシィ

篤「また会えて嬉しいよ...村田」

斧神「...俺もだ、篤。さて、屋敷の案内に戻るとしよう」

8 : ◆do4ng07cO. [saga]:2018/03/09(金) 00:16:58.21 ID:On+4/IjK0

ザッ ザッ

篤「温泉?この島にそんなものがあったのか」

斧神「ああ。元々沸いていたものを雅様が大層気に入られてな。俺はそこの管理を任されているんだ。今日はそこの定期報告に来たというわけだ」

篤「そんなところを任されるなんて、ずいぶん出世したんだな」

斧神「...まあな。師匠は元気か?」

篤「ああ。この前なんか雪山の池に飛び込んで魚を獲ってたし」

斧神「ふっ、相変わらずだな」

篤「それにしても助かったよ。知り合いが誰もいないんで心細かったんだ」

斧神「...それは本心か?」
9 : ◆do4ng07cO. [saga]:2018/03/09(金) 00:17:24.74 ID:On+4/IjK0

篤「えっ」

斧神「わかっているだろう。俺もお前も吸血鬼になってしまった。それはつまり、師匠や冷たちと戦うということだ」

篤「......」

斧神「場合によっては俺達が恩師を手にかけることになるかもしれん。俺たち二人がこちらについている以上、それを止められる者はいないだろう」

斧神「師匠たちを手にかけることに、お前は耐えられるのか?」

篤「...本音を言えば、あの人たちを手にかけることはしたくない。あの人たちには鍛えてもらった以上の恩義がある」

篤「だが、俺は決めたんだ。あいつを、涼子を護るためならなんだってやってやると」

斧神「...そうか。お前が覚悟を決めているなら、俺はもうなにも言わん」

斧神「しかし、涼子さんだと?彼女はもう...」

篤「そうか、お前はまだ知らなかったのか。涼子は生きてたんだよ」

斧神「なに?」
10 : ◆do4ng07cO. [saga]:2018/03/09(金) 00:18:16.69 ID:On+4/IjK0

屋敷

斧神「そうか...生きていたのは幸いだが、なんと声をかけていいものやら...」

篤「気にするな。俺は彼女が生きていてくれただけでも嬉しいんだからさ」

篤「あいつが生きていなければ、俺はまた雅のやつを殺しにいっていたよ」

斧神「...篤、親友のよしみでいまのは聞き流してやるが、雅様への侮辱はやめろ」

篤「えっ」

斧神「あの方へのお前の憎しみは解っているつもりだし、心の中でなにを言おうが責めはせん。だが、それを口に出せば、俺は雅様の側近としてお前を罰さねばならん」
11 : ◆do4ng07cO. [saga]:2018/03/09(金) 00:18:49.09 ID:On+4/IjK0

篤「な...何言ってんだ。お前、あいつを憎んでいないのかよ」

斧神「ああ。俺はあのお方を尊敬している」

篤「なんでだ?なんでお前ほどの男があんな野郎を...」

斧神「それは...」

斧神「...すまん。いまはまだ教えることはできん。教えられるのは、お前が雅様への憎しみを捨てあのお方へと忠誠を誓ってからだ」

篤「」ハァハァ

篤(村田...お前ほどの男が何故...)

篤「...すまん。お前にも、いまの立場や事情があるもんな」

斧神「俺のほうこそすまない。お前が雅様に忠誠を誓ったら改めて教えよう」

斧神「それと、二人きりの時はいいが、皆の前では村田ではなく斧神と呼んでくれ。威厳を損ねるわけにはいかんからな」

篤「...ああ、わかったよ」
12 : ◆do4ng07cO. [saga]:2018/03/09(金) 00:19:23.35 ID:On+4/IjK0


トトト

(早く持っていかないと冷めちゃう...)

ドンッ

「きゃっ!」

篤「おっと...すまない、大丈夫か?」

「い、いえこちらこそ...あ、それよりお茶は...」

篤「落ちる直前で拾えたからたぶん零れてないけど...手伝おうか?」

「いえお構いなく。それでは私はこのあたりで...」タタタ

篤(なんだかそそっかしい娘だな)

斧神「椿か...相変わらず、雅様のことしか見えていないな」

篤「知り合いか?」

斧神「雅様の小間使いだ。完全にあの方に惚れ込んでいるようで、たちまちに美しくなったと村で評判だ」

篤(あんなナルシストで自分勝手な奴のどこがいいんだか...)

斧神「篤よ、いま無礼なことを考えてないか?」

篤「いや、全然」
13 : ◆do4ng07cO. [saga]:2018/03/09(金) 00:20:00.07 ID:On+4/IjK0

斧神「ちなみに、いま椿が向かった部屋が雅様専用の私室だ。あのお方から呼び出されるまでは俺も入れん」

篤(あそこにあいつが...)

篤「勝手に入ったらどうなる?」

斧神「雅様の気分次第だが、ロクなことはないだろうな」

篤「わかった。気をつけるよ」

斧神「厠はあそこだ」スッ

篤「おう」
14 : ◆do4ng07cO. [saga]:2018/03/09(金) 00:20:26.03 ID:On+4/IjK0

篤「」ハァハァ

篤(改めて見ると、本当に広い屋敷だな...こりゃ全部覚えるのにも一苦労だ)

篤「ん」

オ オ オ オ ォ ォ ォ

「......」

篤(あんなところに金剛力士像...?雅の奴なんてセンスをしてるんだ)

斧神「久しぶりだな、金剛よ」

金剛様「うむ」

篤「なっ」
15 : ◆do4ng07cO. [saga]:2018/03/09(金) 00:21:03.20 ID:On+4/IjK0

篤(動いた!こいつも吸血鬼なのか!?)

金剛「斧神よ。その男はなんだ?」

斧神「新入りの篤だ。少し前まで、抵抗組織たちの主戦力だった男だ」

金剛「ほう。そいつが噂の雅様のお気に入りか」

篤「」ハァハァ

金剛「なるほど。纏う空気が違っておる。流石に、あのお方がお気に召すだけのことはある」

金剛「いずれ手合わせを願いたいものだ」クルッ

ザッザッ

篤「むら...いや、斧神。あいつは誰なんだ?」

斧神「奴は金剛。俺と同格の側近だ。普段は離れ小島の護衛をしているが、奴も今日は定期報告に来たようだな」

篤「離れ小島?なんたってそんなところを」

斧神「それは教えられん。少なくとも雅様の許可が下りるまではな」
16 : ◆do4ng07cO. [saga]:2018/03/09(金) 00:21:33.10 ID:On+4/IjK0

篤「これで屋敷は一通り見終わったか?」

斧神「ああ。後は、お前が慣れるかどうかだな」

篤「...なあ、いま、時間は空いてるか?」

斧神「ああ。特に問題はない」

篤「なら俺の家に来いよ。お茶くらいしか出せないが、色々と積る話もあるしな」
17 : ◆do4ng07cO. [saga]:2018/03/09(金) 00:22:03.47 ID:On+4/IjK0

ザッ ザッ

斧神「ずいぶんとはずれの方に行くのだな」

篤「俺は嫌われ者だからな。肩身がせまいんだ」

篤「尤も、涼子さえいてくれれば、連中にいくら嫌われようが屁とも感じないけどな」

斧神「涼子さんか...そういえば、俺はまだ見たことがなかったな」

篤「びっくりするほどのいい女さ。驚くんじゃねえぞ」

斧神「ふっ、期待させてもらうとするよ」

斧神「ん...?篤、これを見ろ」スッ

篤「これは...足跡?しかもまだ新しい。妙だな、この辺りは人通りが少ないはずだが...」

篤(...まさか!)ダッ
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