ジャパニーズアベンジャーズ 特撮クロスオーバースピリッツ

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1 :魔界岸 :2018/03/08(木) 01:27:26.93 ID:hbRb7IpJO
どうもこんばんは
ハーメルンというサイトで魔界岸という名で活動しております
広く意見を貰おうと思いましてここにも作品を投稿させていたただきます
仮面ライダーspiritsの影響を強く受けた作品ですが、仮面ライダー意外にも等身大の特撮ヒーローを登場させていきます
よろしくお願いいたします


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1520440046
2 :魔界岸 :2018/03/08(木) 01:35:21.28 ID:7Icj2emlO
ー教えてくれ、光太郎……何でお前なんだよ?……どうしてお前じゃなくて俺がこんなめに遇わなくちゃいけないんだよ?……ー

仮面ライダーBLACKとして闇の秘密結社ゴルゴムから地球を守り、異次元世界からの侵略者クライシス帝国には仮面ライダーBLACKからRXへと新たなる進化を遂げ、立ち向かった男がいた。
いかなる状況でも子供たちの夢を守ってきた歴戦の強者であるその男の名は南光太郎。
彼は最近、毎日のように見る悪夢に魘され、アメリカ・ニューヨーク外れの古いモーテルで目を覚ました。

「またこの夢か……冗談じゃないぜ……」

光太郎にとって忘れることのできない友が夢の中で血塗れになり、問いかけ、訴える。

ー教えてくれ、光太郎……何でお前なんだよ?……どうしてお前じゃなくて俺がこんなめに遇わなくちゃいけないんだよ?……ー

友は全身血塗れで膝をつき泣きながら光太郎の袖を掴む。
毎日、そこで光太郎の夢は覚めるのだ。

「信彦……」

秋月信彦……光太郎と同じ日にゴルゴムに連れさられ、改造手術を受けた幼馴染。
光太郎は運良く、洗脳手術の前に脱出できたが友である信彦は洗脳を受け、ゴルゴムの創世王候補シャドームーンなってしまったのだ。
その後、幾度となく戦い、遂に光太郎はシャドームーンを討ち果たすが、それは同時に人格は違えど、友を自分の手で殺めてしまったことを意味する。
その信彦が泣き、光太郎を憎みつつ必死に訴える姿……光太郎にとってこれ程、嫌な夢はなかった。

「何故、今になってこんな夢を……」

この夢は少なくとも二週間は続いている。
その影響も有り、光太郎は胸騒ぎが治まらず、不吉な予感に苛まれていた。

「いや、ただの夢だ 明るくいかないと!」

光太郎は無理に自分を奮いたたせる。
今日から一週間、叔母と叔父の子供たちがニューヨークにやってくるのだ。
無理にでも明るくしないと心配をかけてしまう。
光太郎はベッドから足を下ろし、リュックからペットボトルを取り出すと半分まで減っていたミネラルウォーターを飲み干すと心を落ち着かせる。

「まだ少し時間があるなぁ」

テーブルに置いてあったリモコンを取り、テレビの電源をつけるとニュース番組がやっており、日本人が映っていた。
どうやら衛生省からの中継のようで、日本ではゲーム病気が流行っていて発症した人達は消えてしまうと言う奇怪な病気だ。
しかし会見した若い医師は消えてしまった人達を治すことを諦めない。
感染した人達の名前を読み上げると「皆さんの笑顔を取り戻したいと思っています」と堂々と言い切ったのである。
若いのに立派なものだ……僅かでも可能性があれば、治ること、消えた人達が戻ってくれると親しい者であればあるほど信じる。
逆に無理と言ってしまえば、プレッシャーはなくなり楽になるが彼はそれをしなかったことに光太郎は驚き目を細めた。
あえて期待を一身に背負い、雲を掴むような道を彼は進んむことを決意した彼を心の中ではあるが称える。

「そろそろかな」

ニュースに夢中になっていたらいい時間になっていることに気づくと光太郎はテレビを消し、リュックを背負うとモーテルを後にする。
モーテル前に停めてあったバイクにまたがるとヘルメットを着用し、バイクを走らせ、ニューヨーク市内にある空港を目指す。
その道は一本の田舎道が続き、広大な畑も見られ、ここだけを見ると日本もアメリカも大した違いはないと感じ懐かしさをも感じる。
そして今日は天気も良く、心地よい風め吹いていて運転をしていてとても気持ちいい。
清々しい風を浴びながらバイクを走らせ続けるとようやく人通りも多く、交通量も増えてくる。
ここまで来るとテレビで見ていた時のような超高層ビルが立ち並び、アメリカにいるのを実感できた。
そんなのも束の間、一時間半程バイクを走らせると空港が見えてくる。
約束の時間まで後少しだ……胸の高鳴りを抑えつつ
光太郎は腕時計で時間を確認すると近くの駐車場にバイクを停めて、ヘルメットを置き空港に急ぐ。
空港に到着すると人混みの中を掻き分け、茂とひとみを捜す。
会うのは約6年ぶり。
自分が知っている茂とひとみはまだ二人とも小学生だった頃だ。
今は茂が高校生、ひとみは中学生になっているはず……ちゃんと自分のことを覚えているだろうかと少し不安になったりもする。

「「光太郎兄ちゃん!!」」

しかしそれは杞憂だった。
二人はしっかりと光太郎の存在を覚えていたのだ。
胸を撫で下ろすと手を振る二人の方に足を進める。

「二人共、久しぶり!」

昔は少しぽっちゃりしていた茂だが身長が伸び、身体も引き締まっていて、ひとみはモデルのように手足が長くシュッとしていてヘアスタイルもロングヘアーに変わっていた。

「二人共、ホントに大きくなったね!」

「光太郎兄ちゃんは全然見た目変わってないのが凄いよな」

「うん、茂お兄ちゃんと違ってイケメンだしね!」

「おい、ひとみ! それは傷つくから言うな!」

そして三人で笑いあう……光太郎は二人の笑顔が何よりも嬉しかった。
どんなに大きくなっても光太郎にとってはかわいい従兄弟たちなのを改めて実感する。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/08(木) 01:37:25.26 ID:7Icj2emlO

「とりあえず荷物重いだろ? ホテルを予約してあるから行こうか」

「「うん!!」」

空港を出ると光太郎は適当にタクシーを捕まえ、二人を乗せるとお代とチップを渡し流暢な英語で行き先を指定。
そのタクシー後をバイクで追う。
その後、三十分〜四十分くらいだろうか……目的地であるホテルの前に到着する。

「Thank You」

二人が出てくると光太郎はここまで運んでくれたタクシードライバーに礼を言い、タクシーを見送るとホテルに入りチェックインする。

「さぁ着いたよ」

これから三泊四日このホテルでお世話になることになる。
部屋に着くと、トリプルベッドが用意されていた。
二人は荷物を置くと、ベッドにダイブする。

「スゲー!!」

「こんな豪華なホテル初めて!!」

大きくなったと言ってもまだまだ二人とも子供。
その無邪気な喜びぶりに光太郎はホッコリしつつ、ベッドに腰かける。

「おっ……フカフカだ」

ベッドが柔らかくて気持ちいい。
光太郎はクライシスを壊滅させた後、己を鍛える名目で自分探しの旅に出て以降、この6年は間異国を旅し、寝泊まりは安いモーテルばかり、それさえ見つからない時は野宿もした。
だからかホテルのベッドがフカフカでとても新鮮に感じる。

「そう言えば光太郎兄ちゃん、私お腹が減ってきちゃった……」

「俺もぉ……」

「じゃあ少し早いけど昼ご飯でも食べるか!」

そう言って光太郎は二人を連れ、ホテルを出ると徒歩10分くらいのステーキ屋に案内する。
せっかくアメリカに遥々来てくれたのだから何かそれらしいものを食べさせいと考えたが光太郎には「アメリカ=ステーキかハンバーガー」しか思いつかなかった。
ステーキとハンバーガーの二択ならステーキを食べさせてあげたいと思い連れてきたが口に合うだろうか……。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/08(木) 01:38:31.76 ID:7Icj2emlO
「俺、ポーターハウス!」

「私、サーロインステーキ!」

茂もひとみも日本では見たことも、食べたこてないであろう大きさのステーキが運ばれ驚嘆。

「デカ!? こんなの見たことねー!!」

「凄ーい!! アメリカ来て良かったぁ!!」

嬉々として肉を頬張る二人を見て、光太郎は結果的にはステーキで正解だったことにホッと胸を撫で下ろす。
ステーキを食べながら、三人は昔話しに花を咲かせたり日本の現状について話したりもした。

「それにしても光太郎兄ちゃんがRXって知った時はビックリしたなぁ! あの時の衝撃は忘れられないよ!」

「黙っててゴメンな でも茂君、一番ビックリしたのはひとみちゃんがガロニア姫として洗脳されて大人の姿になった時じゃない?」

「あっ! そっか!」

一度、クライシス皇帝の愛娘であるガロニア姫の替え玉として、マリバロンに誘拐された後、奇跡の谷での儀式により成人の姿になった状態でガロニア姫として洗脳され、光太郎たちに対して攻撃をしかけたこともある。

「ちょ、ちょっと! 恥ずかしいから茂お兄ちゃんも光太郎さんもやめてよ! お兄ちゃんこそ、ガッツリ洗脳されてダッサイ服着てグレート・マスクNo.1とかやってたじゃないの!」

「あっ! ひとみ、それは禁句だぞ!」

ひとみがクスクスと笑いだし、続いて茂がゲラゲラと笑い出すと光太郎も我慢できなくなり三人で大笑いす。
それにしてもまだ小さかったのに二人共、意外と覚えているもので彼らもまた光太郎……すなわち仮面ライダーBLACK RXと共に時代を駆け抜け、クライシスと戦った盟友であるということの証だった。

「最近、日本の様子はどう? ゲーム病なんてのが流行ってるらしいけど……」

続いて光太郎は今の日本の現状について話しを聞くことにした。
光太郎がクライシス帝国を倒してもう何年も経つがあれ以来日本には帰っていない。
日本が恋しい時はある……だが光太郎は正直、戦うことに疲れはじめていた。
大体の先輩の仮面ライダーたちは海外で転戦している……しかしそれはいわば戦った組織の残党を狩っているだけで、日本にいる時程、激しい戦いではない。
特にこのアメリカに至ってはそう言った怪人などによる事案は少なくとも光太郎が来てからは起こっていないのだ。
それに比べ、何故か日本を拠点に侵略を企む悪の組織や未知の怪物たちが多い。
なら日本に帰って生活を始めれば嫌でも戦わなければならない時が出てくる。
正直、光太郎は自分の力に懐疑的になりはじめていたのだ。
自分の力のなさから戦いで大事な人たちを失ったり、悲しませたりするのではないか……だったら自分が戦いに加わらなければいい。
二年ほど前の話しだ……仮面ライダー一号こと本郷猛からの要請で援軍に向かった時のこと。
カナダにあるガラショッカーのアジトを見つけたが、思ったよりも敵の数が多いので手伝ってほしいと言った内容だった。
二人でアジトに乗り込み、ガラショッカーは壊滅、その時の一号の強さが光太郎には今も鮮明に焼き付いている。
パンチやキックのスピードも威力もRXは一号に負けていない……むしろ銃が使えて防御力の高いロボライダー、液状化したり敵の攻撃を無効果できるバイオライダーにだってフォームチェンジが可能できるため戦闘力では一号を凌駕しているはず。
しかし光太郎は一号と戦ったら自分はきっと簡単に負けてしまうだろうと思った。
それが経験の差だけなのかどうなのか……その時、光太郎は言葉では言い表せない圧倒的な差を感じたのだ。
一号の境地にまで到達すれば大事な人をきっと守れる……しかし今の自分にそんな力はない。
その戦いの後、光太郎は自信を失い、知らず知らずのうちに戦うことから逃げるようになっていってしまった。
だが日本では毎日のように侵略者が脅かしているはずで平和を望む光太郎には気にならないはずがない。

「ゲーム病は今はおさまったからいいけど……それより光太郎兄ちゃんがいなくなってからも色んな奴らが征服しようとしてるんだ……RXがいればこんな奴ら怖くないのにって思うことは何回もある……」
5 :魔界岸 :2018/03/08(木) 01:41:11.29 ID:7Icj2emlO

「光太郎兄ちゃん、もう日本に帰って来ないつもりなの? 私、寂しいよ……」

「ゴメン……今は帰れないかな……でもいつか必ず帰るから」

そう絞り出すのが今の光太郎には精一杯の答えだった。
さっきまで大笑いしていたのがウソのようにしんみりしてしまい、会話が途切れ、重い空気が三人を包む……。

「なぁ二人共、遊園地に行かないか? 電車一本で行けちゃうところにあるんだけど」

「えっ? 遊園地? 俺は別にいいけどひとみは?」」

「私、行きたーい!」

「じゃあ決まりだね!」

遊園地に行く予定はなかったが、光太郎なりに二人を喜ばせよう、空気を変えようと考えてのことだった。
ジェットコースターやメリーゴーランドなどのアトラクションに乗り、三人は楽しい時間を過ごし、特に光太郎は遊園地で遊ぶことなんてかなり久しぶりで童心に戻ったかのような錯覚を受けた。
この平和な時間が永遠に続けばいいのに……しかし夢のような時間はあっという間に終わりを告げる。
もう夕暮れ……そろそろ帰らなくては……。
ひとみちゃんはまだ遊び足りないようで残念そうだったがまた連れてくると言うことで何とか納得してもらうとホテルへの帰路につく。

「茂お兄ちゃん、光太郎お兄ちゃん見て見て! うわぁ〜綺麗!……」

「ホントだ! マンハッタンってこんなに綺麗だったねか!」

「なんか俺たち別世界にいるみたいで不思議な気分」

バイクからだと思ったことはなかったのだが電車で見る夜のマンハッタンの街はとても綺麗で心が癒され、何故だか懐かしさまで感じる。
そしてホテル近くの最寄り駅に到着する頃には完全に夕日が沈み、太陽の光から建物から発する電気が街を照らすように変わっていた。
電車から降り、近くのハンバーガーショップでハンバーガーセットを三人分テイクアウトするとホテルに持ち込む。
ホテルに戻ると茂がハンバーガーを食べる前に改まって頭を下げる。

「光太郎兄ちゃん、明日のことでお願いが……」

「何だい茂君、行きたい場所でもあるのかい?」

「うん……コスモアカデミアのニューヨーク本部を見学したいんだ」

「コスモアカデミア?」

「そっか光太郎兄ちゃん知らないのか」

聞き慣れない単語に戸惑う光太郎に茂が説明する。

「さすがにビーファイターは知ってるよね? ジャマールと戦った戦士たち」

「あぁ名前だけは」

ビーファイター会ったことも見たこともないが、噂ではチラッと聞いたことがある。
昆虫の力を宿し、光太郎がRXとして戦う以前に現れジャマールと言う異次元組織に立ち向かったと……。
人知れず戦う仮面ライダーは都市伝説のように扱われるがビーファイターは公で堂々と戦っているため大衆も認知することとなっている。

「ビーファイターたちを生み出したのがコスモアカデミアって機関なんだけど、将来はそこに就職しようかなって考えてて、コスモアカデミアが設立した大学に進学」

意外だった……確か茂は宇宙飛行士を目指しているとばかり思っていたからだ。

「どうしてだい? 宇宙飛行士になりたかったはずじゃ?……」

「うん……そうなんだけど、コスモアカデミアは未知の敵の侵略に備えて色んな武器を開発したり地球環境についての研究もしてて俺は光太郎兄ちゃんみたいにRXには変身できない だから怪人とは戦えないけど戦うことを手助けすることはできる! 俺だって人を守りたいんだ!」

光太郎は茂がそこまで考えていたことに驚いた。
茂もまた仮面ライダーと同じ平和を戦う戦士なのだ。
変身できるかどうかじゃない……平和を願う茂の魂の叫びに光太郎は胸を打たれた。

「茂君……分かった! 明日コスモアカデミアに行こう! ひとみちゃんもそれでいいかい?」

ひとみからの返事はなかった。
どうやら長旅の疲れからかハンバーガーを食べおえたところで眠ってしまったようだ。

「もー……ひとみの奴、俺がせっかくいいこと言ったのに寝てるのかよ……」

茂はガックリと肩を落とし、テーブルの上に置いてあったリモコンを手にするとテレビの電源を入れた。
やっていたのは討論番組でやっていたのは最近ニューヨークで多発している怪事件についてだった。
目玉がくりぬかれ、体の上半身が骨が見えるくらい抉られていた。
傷口の大きさから動物の仕業だと推測する者、カルト集団の人の仕業だと言い張る者、そして出演した目撃者が言うに鬼が人を喰らっていたと言う。
他の出演者はバカにして笑っているが、人外と戦ってきた光太郎には引っかかる……。
出演者が見たという鬼がもし怪人だとしたらそれは新たな戦いが始まることを意味する……。

「全然何言ってるのか分かんねーや……光太郎兄ちゃん何言ってるのかわかる?」

「最近物騒な事件が起こってるからその話しだよ」

「へぇ〜てか光太郎兄ちゃん英語ペラペラだもんなぁ……スゲぇや」

「いる期間が長いからね……それより茂君も疲れたろ? 今日はもう寝よう」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [魔界岸]:2018/03/08(木) 01:42:27.00 ID:7Icj2emlO
嫌なニュースをこれ以上見たくない光太郎はテレビを強制的に消すと、部屋の電気消灯した。
今日だけはいつもの夢は見ませんように……そう願いながら光太郎は目を閉じる。
すぐさま意識はなくなり、暗闇が視界を覆い尽くす。
その暗闇の中から血塗れの信彦の顔が浮かび上がってくる。

ーお前が洗脳されれば良かったんだ……お前が[ピーーー]ば良かったんだー

ーやめてくれ信彦!……俺はお前を助けようとっ!……ー

光太郎の必死の叫びも聞かずに信彦は光太郎にはいつもの無慈悲な言葉を続ける。

ーー教えてくれ、光太郎……何でお前なんだよ?……どうしてお前じゃなくて俺がこんなめに遇わなくちゃいけないんだよ?……ー

同じ夢だった……いつもと同じ悪夢。
その悪夢は今日も同じ場面で途切れ、光太郎は目を覚ます。
上半身だこ身体を起こし、時計を確認すると針は深夜二時を指していた。
光太郎は頭を抱え、再び上半身をベッドに沈める。
せめて茂とひとみがいる時くらいは見たくなかった……それとも信彦が俺に何かを伝えたがっているのだろうか……。
その時だった……部屋のドアが閉まる音が聞こえた。
誰か入ってきた音かそれとも出ていく音か。
だが不思議なことに茂もひとみもグッスリと寝ている……つまり彼らが一旦部屋を出て戻ったと言うことは有り得ないし泥棒や強盗などかと一瞬思ったがドアはオートロックで部屋が荒らされた様子もなくその線も考えにくい。
では今のドアが空く音は何だったのか……何か嫌な予感がする。
光太郎は気になり、部屋を空けた主を追う。
幸いにも何者かが部屋を出てから時間はまだ数秒だ。
今なら追いつける……そう思った光太郎は部屋を飛び出すようにして後を追った。
光太郎の部屋はつきあたりで部屋を出ると長い廊下がある。
どこに逃げるにしてもその廊下を通らなければならない。
改造人間で変身前から常人より優れた身体能力を持つ光太郎なら必ず追いつくには十分なはずだが……。

「何だと!?」

侵入者らしき者の姿が見えたのは後ろ姿のほんの一瞬。
しかも急いでいる様子もなくスッーとエレベーターのある方向の角を曲がる。
光太郎が滞在している部屋からつきあたりの角までは約七十メートルくらいあるのに普通に歩く程度のスピードでたどり着けるだろうか。
絶対におかしい……もう光太郎がエレベーターに入った頃には侵入者が乗ったであろうエレベーターは既に一階に降りていた。
エレベーターが一階に降りる時間がとても長く感じられ、何時間にも思えてしまう。
侵入者を見失ってしまうのではないかと焦りの心が生じる。
エレベーターから一階に降りると侵入者はホテルを出たところだった。
黒いジャケットにジーパンをはいた黒髪の男で痩せ型、身長は光太郎とそうは変わらない。
光太郎は侵入者の情報をインプットすると急ぎ、フロントに外出する旨を伝えると後を追いかける。
7 :魔界岸 :2018/03/08(木) 01:43:35.41 ID:7Icj2emlO

「待てっ!!」

しかしどんなに走っても追いかけても距離は縮まらない。
むしろ一定の距離を保ち、これ以上離れないし縮まらないようになっているかのようだ。
本格的におかしい……まさかとは思うが怪人かもしれない。
クライシスの残党が命を狙いにきたのではないか……光太郎の中ではその可能性が高いと踏んだ。
誘導されている?と感じつつ光太郎はいつしかニューヨークの人気のない路地裏まで侵入者を追っていたが、一向に距離は縮まらない。
だが急に次の路地裏の角で侵入者はくるりとこちらを振り向く。
その振り向き街灯にさらされた素顔に光太郎は愕然とし、立ち止まり唖然とする……。
見覚えがあるとかそういうレベルの話しではない。
それは最近、夢に出てくる紛れもない親友、秋月信彦の姿だったのだ。
信彦は光太郎の姿を確認すると、角の死角にスッーと姿を消した。

「そんなバカな!?……信彦!? 待ってくれ信彦!!」

半信半疑の状態で信彦の後を追う。
信彦を追って曲がった角で見たのは男性の無惨な死体であった。
辺りを見渡すが、信彦の姿は見当たらない。
目玉はくりぬかれ、上半身は一部を除き、動物に噛みちぎられているかのようだ……。
ここで光太郎は夕方にやっていたニュース番組を思い出す。
まさか信彦がやったのか……その疑念が消えぬままその場に立ち尽くすしかない光太郎。
けたたましいパトカーのサイレン音が光太郎の周囲に響き渡る。
このサイレンと共に脅威が来襲し、新たな戦いが始まる……その確信を光太郎は強める。
だが今はこの場をすぐにでも立ち去らなければ、自分が疑われてしまい厄介なことになると思った光太郎は釈然としないながらもホテルへと急ぎ戻るのであった。
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/08(木) 01:53:55.33 ID:z3ig6PbF0
寒っ・・・
9 :魔界岸 :2018/03/08(木) 02:20:58.23 ID:7Icj2emlO
>>8
では部屋を温かくして寝ましょう!
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/08(木) 07:55:33.08 ID:Mu8PDCpnO
>>8
あーあ書き込んじゃったな
我慢比べお前の負けな、後でジュース奢れよ
11 :魔界岸 :2018/03/10(土) 00:45:13.28 ID:ihTsMCmhO
undefined
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/10(土) 00:55:16.08 ID:mfi6AG+4O
コスモアカデミアニューヨーク本部……ここでは自然環境の研究や改善だけではなく未知の敵の襲来に備え日々、科学技術を駆使して対抗しうる武器や防具の開発や研究が行われている。
定時を過ぎても一人で慣れないパソコンを打ち込み、研究に没頭している青年がいた。
見た目だけ見れば肌は日焼けのせいか浅黒いため、若さも相まって爽やかなスポーツマンという印象を誰しもが持つであろう。

「新人、今日辺り遊びにでも行かないか?」

「トニー悪ぃ! 俺はパス!」

「おいおい……仕事熱心なのは感心だが、毎日それじゃ身体を壊すぜ?」

「今日は徹夜しねーから大丈夫だよ」

「分かったよ……最近物騒な事件が起こってるから夜道には気をつけろよ?」

「あぁサンキュートニー 俺の分けまでクラブで楽しんできてくれよ」

この新入りの青年だって人間だ……遊びたい時だってあるし徹夜が続けば早くアパートに戻って身体を休ませたい時だってある。
ただこの青年にはやらなければならないことがある。
その為にこのコスモアカデミアが設立した大学を卒業し、このコスモアカデミアニューヨーク本部に入社したのだから。

「あぁもう! あとちょっとなのになぁ!」

上手く行かないことに焦り、そして苛立つ。
残された猶予があまりないことをこの青年は誰よりも感じていた。

「また今日も徹夜か甲平?」

いつの間にか研究室に入ってきたオールバックにメガネをかけたいかにもインテリジェンスな風貌の男が新入りに声をかけた。

「見てくれよ先輩! 後もう一歩ってところまで来てるんだ」

そう言って新入りはビーファイターの変身アイテムビーコマンダーを自慢気に見せつけた。
そう……この新入りはただの新入りではない。
二億年の眠りから目覚め、地球上の全生命を抹[ピーーー]べく動き出した悪の一族、メルザードを撃破したビーファイターカブト、鳥羽甲平その人であり、さらに言えばインテリジェンスな風貌の男も異次元組織ジャマールから人類を守った初代ビーファイターのブルービートこと甲斐拓也なのである。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/10(土) 00:57:36.30 ID:mfi6AG+4O

「これは!? 甲平が一人で作ったのか!?」

「いや、通信で健吾や蘭にアドバイスや知識を貰ってるし難しい技術はこの地球脅威研究室のメンバーに聞きながらってとこかな」

「そうか……だが根気を詰めすぎは良くない それに明日は見学者の人たちの案内役だろ? だから明日に備えてもう帰れ」

「そんな悠長なこと言ってる時間はないし、闇の意思の脅威はそこまで来てるんだぜ? しかも今回の脅威はジャマールやメルザードの比じゃないことくらい先輩は俺なんかよりずっと分かってるはずだろ?」

甲平がここまで焦るのには理由があった。
二週間前から地球上のあちこちで昆虫たちが大量に発生する現象が頻発している。
この現象はジャマールやメルザードが現れた時にも起った現象にかなり酷似していたのだ。
しかも昆虫たちの数は前回の大量発生の比ではなく、加えて動物たちも何かに怯え、身を潜めたり凶暴化している。
一般人なら変わった現象だなぁ……の一言で済ませられるかもしれないが光の意思の後継者としてビーファイターになり戦った甲平には人類を無にすべく闇の意思が今度はさらに巨大な闇を放ったと確信が持てた。
しかし二人とも、光の意思によって変身アイテムを回収されビーファイターへの変身能力を失っており、闇の意思に対抗できる力がない、しかし光の意思が再び力を貸してくれる保証もない。
だから甲平は焦り、何日も徹夜で仲間の助けを借りながらビーファイターへの変身ツール復旧を忙しいでいたのだ。

「それはそうだが……で、何が足りない? 見た目は完璧そうだが?」

「昆虫の精だよ……あれがないとただ重い金属を着てるだけだから」

ビーファイターのアーマーは昆虫の聖なる力と人類の科学技術が融合してできた意思を持つ強化服。
昆虫の力がなければただの頑丈な重い鎧のようなもので、超人的なジャンプ力やスピードは出せない。
甲平は昆虫の精の代わりとなる動力源を探して、試し続けてはいるものの一時的にしか変身できないなど中々、上手くいかなかった。

「なるほどな…… 甲平、良くここまで頑張ってくれた 今日はもう帰った方がいい」

「いや、けど!……」

「大丈夫だから後は任せてくれ ここからは調査部である俺の出番だ」

頼れるのは昆虫族の長老であり、ビーファイターの誕生の産みの親であるグルなのだがメルザードとの激闘で力を使い果たし、この世にはもういない。
他に何か良い案でもあるのだろうか……しかし拓也の自信ありげな表情を見るに何かきっと考えが思い浮かんでいることは間違いはなさそうだ。

「ホントに任しても大丈夫なのかよ?」

「あぁ もちろんだ 甲平以外のコマンダーを全部俺に預けてくれ」

「いいけど、何で? 全部一時的にしか使えないぜ?」

甲平が開発したビーファイターの変身アイテムは技術介入できる部分は完璧とは言え、一番必要な昆虫の精どころか代わりになるエネルギー体すら見つかっていない。
苦肉の策として昆虫の体液や樹液などを科学的に調合しアーマーの動力源にしているのだが、活動時間はせいぜい十五分〜二十分でそれ以上時間が経ってしまうと、アーマー鉛のように重くなり自由を奪われてしまうため、まだまだ実戦で使えるような代物ではないのは明らかだ。

「承知のうえだ ジャマールやメルザード一族のような人外の脅威には人間の力だけじゃ必ず限界がある……あてがあるんだ」

正直、今の甲平では頭打ちになっている状況だ。
甲斐拓也と言う先輩は何の策もなく、こんな発言を適当にする人間ではないことを知っている。
なら先輩に任した方がもしかしたらいいのかもしれない……甲平はそう思った。

「先輩、頼んだぜ」

自分以外のコマンダーを藁にもすがる思いで拓也に託すと拓也からの説得もあり、渋々コスモアカデミアを後にして帰路につく。
高校を卒業してすぐにコスモアアカデミアが設立した大学に入学、もうアメリカに着て早五年ほどが経過していた……最初は色々と戸惑うことも多々あり、カルチャーショックを受けることもしばしば。
今は英語も喋れるようになり、かなりアメリカでの生活に慣れてきた感はある。
毎回、自転車で通勤しているのだが、来た当初はタイムズスクエアを通るだけでかなり興奮していた記憶があるが今では何も感じない。
今日の晩ごはん用の冷凍のチキンナゲットとピザをスーパーで買って、アパートに戻る。
こんな早く、アパートに帰ってきたのはいつぶりか……でも早く帰っても結局やることと言えば大してない。
いつもと同じ、チキンナゲットとピザをレンジで解凍し、飯を食べながらある人物と連絡を取る。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/10(土) 01:00:31.16 ID:mfi6AG+4O

「おう、ゆい 元気か?」

「うん お兄ちゃんこそ風邪ひいてない?」

連絡を取る相手は決まって妹の鳥羽ゆいであった。
暇があれば、連絡を取ろうとする兄に対して普通なら嫌気がさすものだろうが、この兄妹の絆なは固く、ゆいもそんな兄からの連絡を心待ちにしている。

「そういえば教育実習あったんだろ? どうだった?」

妹のゆいは教師を目指していて、この前、教育実習があったのだが甲平はそのことが気になって仕方なかった。
生徒はちゃんと言うことを聞いたか、周りの教員は優しかったかなど気になることを事細かに聞き及んだ。
妹想いの良い兄と言えば聞こえは良いが、ここまで来るとシスコンと言われても文句は言えない。

「凄く楽しかったよ それでね、担当したクラスの男の子がコスモアカデミアに興味持ってて色々話したら連休に見学にしに行くって言ってたよ!」

「えぇ!? 日本支部じゃなくてわざわざアメリカ本部に!?」

「うん 行くんなら本部を見たいんだってさ」

甲平は明日の見学者たちのガイドになっている。
つまりその子を案内する可能性が高い。
慌てて明日の見学者の名前を確認すると参加者は三名だけ。
その中で一人、高校生を発見。

「佐原茂君って名前?」

「そうそう、素直で正義感の強いいい子だから優しくしてあげてね」

「おう 任せとけ そういえば健吾とは最近どう?」

甲平がゆいと通信するときに必ず聞くことがある……言ってしまえばそれが一番聞きたいことなのだが……。
それは共にビーファイターとして戦った健吾とゆいの関係について。
以前は友達以上恋人未満だったが一年程前頃からとうとう付き合い始めたことを聞いた。
妹が大好きな甲平にとってその後の関係が心配でしょうがない。

「順調だよ! この前、北海道に二人で旅行に行ってきたんだ!」

本来順調なら喜ばしいことなのだが、その報告は甲平にとっては複雑な心境にしかならなかった。
確かにプライドが高く、融通が聞かない部分もあり、出会った当初はよく衝突したこともある。
しかし共に戦ううちにお互いを認め合い戦友のような関係になっていった健吾を嫌いなはずがない。
だが妹がどんどん自分をから離れていく、必要としなくなっていくことが寂しくて堪らなかった。

「でも最近はあまり会ってないな……なんか昆虫が大量発生したりしてるらしくて健吾さんそのことで忙しいみたい……」

「大丈夫、大丈夫 職業柄定期的に忙しくなるんだから気にすんなって!」

「うん……でもなんか胸騒ぎがするの……またメルザードみたいなのが来るんじゃないか、また戦いになるんじゃないかって……」

「んなわけねーだろ? 心配しすぎだって!」

昆虫の大量発生はほぼ間違いなく闇の意思が起こしている現象……ゆいに心配はかけたくなかったから笑い飛ばして否定したが、近いうちに大きな闇の渦が人類を飲み込もうと押し寄せてくるだろう。

「最近、お兄ちゃんや健吾さんが私を置いて暗い闇の中に消えちゃう夢をよく見るの……だから私、不安で不安で…」

「心配すんな! 何があってもゆいから離れたりしないから 例えまた戦う時がきても俺や健吾が絶対ゆいを守ってやるから」

何とか勇気づけたかった……だから無理にでも明るく振る舞った。
ゆいの今にも泣きそうなくらい不安そうな声が電話越しに聞こえるだけで、胸が痛くなるから。
これから起こるであろう戦いはどんな規模になるかも予測がつかない。
もしかしたらその戦いの中にある闇に俺も健吾も呑み込まれて命を落とすことだってあるかもしれないのだ
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/10(土) 01:01:59.10 ID:mfi6AG+4O

「ありがと……じゃあ私、バイトで明日も早いからそろそろ切るね」

「おう バイト頑張れよ おやすみ」

「うん お兄ちゃんこそ体調に気をつけて頑張ってね おやすみ」

通信が終わると甲平は残りのピザを平らげると猛烈な不安の波が押し寄せてきた。
甲平たちが再び戦場に戻る日のカウントダウンはもうとっくに始まっているのだ。
しかも敵も未知数なうえにビーファイターへの変身が制限され百パーセントの実力は少なくとも今は出せない状況。
それでもどんな強敵が出現したとしてもそれが地球上に生ける全ての命を脅かす奴らである限り、戦わなければならないのだ。
その中で今の自分たちはどれだけ命を救えるだろうか、強い敵に太刀打ちできるだろうか……。
そんな不安を抱きつつ、それでも前に進むしかない現状をまるで表現しているかのように甲平はずっと窓から夜の闇に光る星々をただ真っ直ぐに見つめ続けたのだった。
16 :魔界岸 :2018/03/10(土) 01:03:23.18 ID:mfi6AG+4O
>>10
ん?笑
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