【艦これ】 続 外地鎮守府管理番号88

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623 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/29(土) 00:40:38.12 ID:KSP3WUqy0
ズドン!



時雨「!」



駆逐古姫は自分の主砲を自分に向け発砲。

そして、自沈した。



時雨「なんて覚悟だ。」



自らの腹部を吹き飛ばした後、

艤装に残っていた砲弾を砲身内でわざとに爆発。

誘爆がおきて駆逐古姫が沈み消えるまではあっと言う間だった。



古姫(これで、これでいい……。)

古姫(戦艦水姫様に足りなかったもの。敗北の経験。)

古姫(それが、やっと、やっと足りた……。)

古姫(電探の範囲から消えて大分たつ。

   無事逃げおおせたでしょう。)

古姫(この敗北の経験は戦艦水鬼様を真の名将にしてくれるでしょう。)

古姫(皆さん、やりおおせました。)

古姫(先に逝った戦艦棲姫や空母棲姫。空母棲鬼様にこれで顔向け出来る。)

古姫(笑って出迎えてくれるでしょうね…。)



海底へ向け沈み行く体、薄れ行く意識の中で駆逐古姫は考える。

その表情は笑顔。



古姫(後は……、今しばらく、今しばらくの時間を。)



目の前で駆逐古姫が沈んでいくのを見届け

時雨はようやく自身の電探を起動させた。

時雨は余裕をある風を装っていたが

電探を切りそれで生じた処理能力の余分を艤装の他の動作処理に回していたのだ。

いや、回さざるを得なかった。

実際はそこまでしなければならないほどに駆逐古姫は手強かった。

そして、電探の範囲内には敵の部隊と言えるものが残っていない事に勝利を確信。

そしてまた敵の大将はまんまと逃げおおせた事を把握した。

624 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/29(土) 00:41:56.83 ID:KSP3WUqy0

瑞鶴「とまれ勝利は勝利よ。」(無線)



測ったように。いや。

ブィィィィィン---



瑞鶴「見てたわよ。彩雲を通して。」(無線)

時雨「やれやれ。壁に耳あり空には彩雲ありか。」(無線)

瑞鶴「お疲れ。」(無線)

時雨「うん。ありがとう。」(無線)

川内「今回はお守りだったぁ ―――― 。」(無線)

瑞鶴「あんたは縁の下の力持ちやったんだから誇りなさい。」(無線)

川内「えぇ ―――――― 。」(無線)



時雨と瑞鶴の無線に活躍の場が無かった川内が割り込む。

実際には瑞鶴の護衛として充分以上の働きをしていたのだけれど。



瑞鶴「は ―――― 。あんたには私の報奨金あげるから。」(無線)



それで満足しなさいと恐らく言葉が続いたのであろうが。



川内「わ ――――― い。」(無線)



無邪気な歓声でそれはかき消された。
625 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/29(土) 00:48:43.83 ID:KSP3WUqy0
相変わらず地の文多めです
クリスマスギャグスレ建てたらRに飛ばされちゃいました
スレ建てバグ直ってないみたいですね、新スレ建てるのに専ブラどうなのさ日向状態
このお話はもうちょっとだけ続きます!今年もあと少し!
ねっ年内には終わらせるし!31日の12時までは年内だし!
E3の輸送で涼月掘りたい、所持制限無いみたいですよみなさん(尚、掘れるとは)
イベ、やる気持が出らんですねぇ、複数持ちしたくなるのが涼月くらいしかない
乙レス、感想レス、いつもありがたく拝読しています、どうぞ、お気軽にレスを残していただけるとありがたいです
では、次回で最後の更新とできる様に頑張りたいと思っています
ここまでお読み頂きありがとうございました
626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/29(土) 00:50:57.06 ID:KSP3WUqy0
ところどころ水鬼が水姫になっているのは
お読みいただいている皆様の心の中で訂正いただけると感謝いたします
いっちの不始末です
627 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/29(土) 05:24:19.06 ID:kUOKECOpO
乙!
628 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/29(土) 19:16:11.69 ID:asNWcBC30
更新乙です
どっちの陣営にも魅力的なキャラが多すぎぃ
629 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/30(日) 03:24:36.04 ID:8mCFG6w50

ゲームでこんなんが相手じゃなくてよかった
630 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/30(日) 22:59:08.23 ID:N0c9OvKf0
S勝利絶対させないウーマンさん流石の捨てがまり
足枷気味の部下抜きで鬼姫級連合艦隊と88主力連合艦隊の激突なら結果は逆になってたんだろうなあ
生き死ににたらればはないけど
631 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:05:47.60 ID:ihf9M2Jd0
年内間に合わなかったぁ!?
いや!まだ2018年12月31日25時!?(悪あがき)
最後の更新となります、お時間よろしければお付き合いください
632 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/01(火) 01:08:56.44 ID:ihf9M2Jd0

深海勢力と人類側勢力の境界付近



チャプ

時刻は夕暮れを迎え日は水平線の向うへと消えようとしていた。



伊58「敵艦影、いまだ発見せず。」

伊8「目視範囲内には敵は居ないよ。」

伊13「同じくこちらも見つけられません。」

伊58「もうすぐ日が暮れるでち。」



夜は潜水艦にとって一番襲撃を掛けやすくなる時間帯。

だが、今、待ち伏せをしている場所は敵と自勢力の境目。

彼女達に指示を出した提督は敵を沈められなくてもいいと言った。

それは初めの会敵後に魚雷と燃料の補給の為に一旦戻った時の事だった。



提督「この方角に逃げてくるだろうぐらいしか分からん。」

提督「海は広いからな。」

伊58「適当でち。」

提督「柔軟性を持った対応といってくれ。」ハハ

提督「まっ、それはさておきだ。」

提督「この作戦を終了すればお前さん達は晴れて自由の身だが国内には戻せない。」



58達の過去を考えれば当然。

633 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:10:45.89 ID:ihf9M2Jd0

提督「でだ、再就職先に米軍の新設潜水艦艦隊の教導の席を用意した。」

提督「収監中の伊14については既にアラスカ経由でアメリカに入ってる。」



こいつを見てくれと提督がノートPCを取り出す。



「あっ!姉貴−!」



通話アプリに姿が写るのは伊14。



伊13「イヨちゃん!?」



暫しの会話の後、伊14がアメリカに間違いなく居る事を確認。



伊58「どんな手品でち?」

提督「例のウォースパイトが頑張った作戦があるだろ?」

提督「あの後に色々米軍と仲良くしておいたんでな。」

提督「お前さん達は今回の仕事が終わったら

   こっちの方向へ向かってくれ。」

提督「米軍の収容部隊が来ている。

   表向きには観戦、情報収集という形だ。」

提督「相手先はこの時間には引き上げるから絶対に遅れるなよ?

   遅刻は無しだ。」

提督「いいな。この船には戻るな。」



そういうと三人に小冊子を渡し始める。



提督「本物の偽物だ。

   米国に着いたらグリーンカードに切り替えるから直ぐに不要になるが

   とりあえずの身分証明に必要だからな。渡しておく。」



そして続いて渡すのはプラスチック製のカード。



提督「洗濯機を回して綺麗にした奴を入れてある

   バンカメのキャッシュカードだ。」

提督「暗証番号はここでの個人認識番号の下4桁だ。向うに着いたら直ぐ変えとけよ。」



最後に3人へと腕時計を取り出す提督。
634 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:12:46.39 ID:ihf9M2Jd0

伊8「これは…、パネライ、ですか?」

提督「流石、博識だな。」

提督「餞別だ。金に困ったら売るといい。」



一人ひとりの腕に巻く姿を見た後に一言。



提督「二度と帰ってくるな。せっかく生きて出られるんだからな。」

提督「新天地で頑張れよ。」



ポンと伊58の肩を叩き提督は司令室へと踵を帰す。



伊13「あっ、あの!」

提督「なんだ?」

伊13「ありがとうございます!」



司令室に戻りかけた体を再度三人の方に向け、

思い出したように敬礼。

そして、伊13の言葉に笑みを返し提督は艦橋へと帰っていった。

635 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:13:44.99 ID:ihf9M2Jd0


伊58「最後の大立ち回り。」

伊8「なんとか成功させたいですね。」



だが、自分たちを収容する予定の艦隊との合流時間は迫っている。



伊58「………、時間でち。」



提督が示した敵の退却経路。

移動を考えればその範囲内に留まれる時間はもう無い。



伊13「敵艦隊発見!」



待ち伏せである為に電探で

自己の位置を逆探される様な電波を出すわけには行かない中。

そして、夕暮れを迎え夜の帳が下り、

目視での敵艦影が発見しにくくなるギリギリ。

伊13が敵旗艦艦隊を見つけた。

636 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:15:14.10 ID:ihf9M2Jd0

伊58「敵艦確認!」

伊58「魚雷発射後全力離脱!」

伊58達が発射した魚雷は敵へ向って一気に殺到した!

ネ級「右舷30度!距離300!敵魚雷!」



魚雷の針路は図ったようにまっすぐと戦艦水鬼への衝突コース。

命中かと思われたタイミングだった!

ズドン!



タ級「どうにか、お役目果たせたようです。」

戦鬼「タ級!?」

タ級「戦艦棲姫様に胸を張って会いに行けます。」

タ級「後ろを振り返らずこのままお逃げ下さい。」

タ級「敵の艦影が見当たらない以上は潜水艦からの攻撃。」

タ級「立ち止まれば敵の思う壺です。」

戦鬼「タ級、ごめんなさい。」



その謝罪は曳航せず、置いていかざるを得ない事への物であり。



タ級「覚悟の上です。いえ、最後の奉公が出来てよかったです。」



タ級が戦艦水鬼を庇って被弾したのは伊58達にも見えていた。

637 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:16:19.19 ID:ihf9M2Jd0

伊8「もう夜になるからもっと近付かないと視認出来ないよ!」

伊13「聴音襲撃だと敵艦隊の隊列が密だから聞き分けが困難です!」

伊8「どうする!?」

伊58「………。」

伊58「撤収でち。」

伊8「!?」

伊13「ここまで来てですか!?」

伊58「ゴーヤ達をアメリカへ送り出す為に

   提督は危ない橋を渡っているのは間違いない。」

伊58「わざわざ腕時計を餞別に贈って来た意味を考えろ。」

伊58「時間だ。」



敵艦隊の艦種までは判別出来ないほどに既に周囲は暗闇の中。

そして、敵勢力圏は直ぐそこ。

いや、既に内側に入っていておかしくない。

提督がなぜそこまでをしたのかを考えれば。

伊58が強い口調で撤退を言うのは当然ともいえる。

638 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:17:57.83 ID:ihf9M2Jd0

伊58「もう一度言う。撤退。」

伊8「……、了解。」

伊13「了解しました……。」



提督が仕掛けた最後の罠はタ級の献身的犠牲により不発に終わった。

そして、明けて翌日、残敵の掃討終了、

当該海域での戦闘終結宣言がなされこの海域での戦闘は終了した。



一ヶ月後  88鎮守府 荷揚げ用埠頭


長門「こんな所にいたのか。」

提督「色々な処理がある程度落ち着いたんでな。」

提督「さぼりだ。」

長門「そうか。それでよかったのか?」

提督「よかったのか、というのは?」

長門「例の不正を行っていた鎮守府の提督連中は処分保留だそうだが?」

提督「首をほいほい挿げ替えられるほど人間が残ってないのさ。」

提督「お前が提督になるのを受けてくれていれば話は違ったんだがな。」


先の作戦時に島風が救援を求めて立ち寄った鎮守府の提督達は

救援を断った事、他にも色々とあった不正への処分は保留されていた。

639 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:19:28.89 ID:ihf9M2Jd0

提督「だいぶ前の作戦のときに首を飛ばしすぎた。」

提督「これ以上飛ばすとなり手が居ないだとさ。」

長門「私はやらんよ。」

提督「艦娘でベテランの連中を

   提督へってのは前から少しずつは進められているんだがなぁ。」

提督「要件を満たせる奴がほとんどいない。」

長門「だから私はやらんよ。」

提督「分かってるよ。二度も繰り返すな。」

長門「大事な事だからな。」

提督「処分保留にして

   手綱を握っておいたほうがいいだろうと考えたらしい。」

長門「大丈夫なのか?」

提督「一応あの辺りの人事異動はやったそうだ。」

提督「例の救援にいった所な?

   あそこの提督は後ろに下げて不正をやらかしてた連中で

   一番階級の高かったやつらから近い順に最前線。」

長門「ははぁ。死にたくなければ頑張れよと。」

提督「あぁ、例の頑張った少佐は昇進して周辺に睨みを利かせる事が出来る位置に移動だ。」

長門「なるほどなぁ。」
640 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:20:50.42 ID:ihf9M2Jd0

長門「ところで、教導の昔の部下だった娘から

   今回の救援作戦が艦娘養成学校の教科書に掲載されたと聞いたのだが?」

提督「月並みだがな。人の寿命は二つあるって奴だ。」

長門「肉体の、命が尽きたときと人の記憶から忘れ去られた時の二つだったな。」

提督「そうだ。島風が生きた記憶を。生き抜いてなした事を。」

提督「島風の自己犠牲の精神を真似ろとは言わないが、その高潔さを知って欲しい。」

提督「そして、皆の記憶の中に残れば、残っている間は島風も死んでいないだろ?」

長門「……、そうだな。島風は皆の心の中で行き続けるだろうな。」

提督「あぁ。」



そして少しの間があって長門がまた提督に話しかける。

641 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:24:54.10 ID:ihf9M2Jd0

長門「グラーフやポーラが本国へ帰ると聞いたのだが。」

提督「今回俺たちは目立ち過ぎた。」

提督「グラーフに関しては

   それを面白く思わない連中が手を回してうちの弱体化を狙ったんだろ。」

提督「ポーラはもともと志願だ。契約が終われば帰るだろうさ。」

長門「他にも人員が抜けるようだが?」

提督「出る杭は打たれるのが世の慣わしだろ?」

長門「打たれるどころか引っこ抜かれそうな勢いだな。」

提督「今回は目立ち過ぎた。それだけだ。」

提督「日陰者は日陰者らしくしとけという事さ。」

長門「これから厳しくなるな。」

長門「我々は守れただけだからな。」

提督「それが理解出来ているお前はさっさと艦娘やめて提督になってくれよ。」

長門「だからならぬと言っているだろうが。」

提督「あー…、そうだったな、すまん。」

長門「………。」



そして、また、しばしの沈黙。



提督「………。なぁ、長門。」

長門「なんだ?」

提督「島風は死ななきゃいけなかったのかな?」

長門「止められたのに止めなかった事を悔いているのか?」

提督「お前は察しがいいな。」

長門「付き合いは長いからな。だが、それは、たら、ればだろう?」

提督「……、そうだな。議論するだけ意味の無い事だったな。」



そして、また間が空き提督が口を開く。
642 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:27:35.47 ID:ihf9M2Jd0

提督「長門。煙草を吸ってもいいか?」

長門「……、あぁ、いいぞ。」



そして、一本取り出し。火をつける提督。



長門「……、鬼の目にも涙か?」

提督「ちげえよ。煙草の煙がな……。」

提督「煙草の煙が、目に染みただけさ……。」



人生の最後が幸せに迎えられたかどうか。

それを決められるのは本人だけだろう。

或る者は裏切られ、また或る者は金を稼ぐ為。

或る者は復讐を胸に誓い、或る者は世話になった者への忠誠を誓う。

ここは外地鎮守府管理番号88。

様々な艦娘達の人生が交差し、また離れていく場所でもある。

ここへ送られてくるのは人生が終わりの一方通行ではなく交差点である。

彼女達の活躍は仲間の心に、記憶に残る。

それだけで充分だろと彼女らは今日も出撃する。






続外地鎮守府管理番号88 完
643 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/01(火) 01:31:47.63 ID:ihf9M2Jd0
以上一年近く長々と続きました第二部完でございます
お付き合いいただき本当にありがとうございました、途中でネタやおまけなど色々脱線ありましたが…
最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました
お読みいただいている皆様の乙レス、感想レスにやる気をいただきながらの作成でした
本当にありがとうございました、依頼を出しに行き、このスレは終了とさせていただきます
スレがあまっているのでボツネタの投下等に使うかもしれませんがその際は生暖かい目で見てやっていただけると幸いです
ではでは、本当にお付き合いいただきありがとうございました!
644 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/01(火) 02:55:20.98 ID:x60SYXEX0
おつ 完結は惜しいがお疲れ様でした
最後の一枚は不発だったがでっちが出番あって何より
645 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/01(火) 08:06:32.99 ID:nuOcqu1j0
第3部に期待
646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/01(火) 14:41:02.99 ID:ytlaAwaU0
お疲れ様でした
海外勢以外のメインキャラの中から多くの移動者が出ていたら
本当にきつそうですね
(現地裁量でメリケンからの人員支援を受けるてもあるかもしれませんが)

第三部の開始期待してます
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/01(火) 23:47:21.89 ID:91iE+9l40
お疲れ様です
熱いストーリー良かったっす
自分も3部期待です
648 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/02(水) 14:33:30.76 ID:7UJ5uOv70
乙!
完走お疲れ様でした、第3部も期待してる。
649 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/02(水) 20:34:04.42 ID:zbHNqNyT0
別スレのおまけにボツネタ供養でちょっと書かれた話を
もっと書いてとお願いしたのは1年以上前でしたか。
本当に良かったです。
650 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/05(土) 03:44:41.65 ID:ul40+rcH0
お疲れ様
知識が浅いから難しい所はあったけど戦い方は凝ってて読んでてワクワクした。
熱い艦これ待ってます!
651 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/07(月) 00:07:36.63 ID:S4P9bhGd0
おまけネタ 日常を少しな話し
652 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/07(月) 00:08:41.94 ID:S4P9bhGd0


提督「今日は何曜日だったか…。」



或る冬の日、窓からの日差しは暖かくまさしく小春日和だった。



不知火「今日は月曜日ですね。どうされました?」

提督「あぁ。今度、定例の提督会議があるだろ?」



各方面軍事での提督が集まっての戦略会議。

提督曰くおっさん達の同窓会だとか。

早い話、中身がないという事でもある。

以前に時間の無駄とばっさり言いきっていた程でもある。



提督「出席しないと後の割り当てにケチが付く。」



防衛を担当している戦域からの『 あがり 』。

燃料等のその他工業製品の割り当てはこの会議の後の打ち合わせで決まる。

当然の様に戦果が一番大きい提督の所が割り当ては大きいわけだが、

その打ち合わせの場に居なければ減らされてしまうというのもありえてしまう。

必要な所に必要なだけ送るという基本的な事にも、

袖の下、派閥、階級なんてものが付いて回るのである。

653 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/07(月) 00:10:00.56 ID:S4P9bhGd0

不知火「鼻薬、手土産、お歳暮は手配しております。」

提督「あぁ、いつも助かっている。」

不知火「では?」



何か落ち度でも?と言いたげに首を傾ける不知火。



提督「月曜日は理髪店協会の加盟店は営業しないんだ。」



自身の頭をぽんぽんと叩く提督。

なるほど散発かと合点がいく不知火。



不知火「それでしたら。」

提督「ん?」

不知火「お切りします。」ヌイ!

提督「そうか。では頼もうか。」



そして、窓辺の明るい場所で散髪が行われたのだった。
654 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/07(月) 00:11:24.21 ID:S4P9bhGd0

チョキチョキチョキ

軽快な鋏音。



提督(窓ガラス越しの日差しというのは暖かいな……。)

南方というのを考えれば暑いくらい。

提督(少し、眠くなってきたな……。)zzzz

提督 Zzzzzzzzzz



チョキチョキチョキ



そして、悲劇は起こる。



提督 Zzzzzzzzzz カクッ



チ゛ョ゛キ゛ン゛



不知火「!」

不知火「ヌイィィィ!!」



眠りに落ちた提督の首が傾く。

そして、鋏はそれに対応できず、

余分に切りすぎてしまった……。



不知火「バッバランスを!」



チョキチョキチョキ



不知火「まっ、まだなんとかなるはずです……。」



チョキチョキチョキチョキ



不知火「こっ、こっちを……。」



チョキチョキチョキチョキチョキ

655 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/07(月) 00:13:11.14 ID:S4P9bhGd0

30分後



提督「と、思わず寝てしまった。」

提督「不知火。すまなかったな。」

不知火「………。」

提督「?」

提督「随分とさっぱりしたのか気持ち頭が軽くなった気がするよ。」

不知火「!!」

提督「鏡はあるか?」

不知火「申訳有りません……。」

提督「あぁ、鏡なかったか。まぁ、いいさ。」

提督「少し、眠気覚ましに散歩に行って来る。

   どうにも眠くてな。」フワァ



そして、提督は執務室を出て散歩へと向った。



長門「おっ、提督。」



提督の後ろ姿を見て声をかける長門。



提督「ん?なんだ?」クルリ

長門「………。その、随分と思い切ったイメチェンだな。」

提督「そうか。不知火に頼んだんだ。」

長門「そうか。」

提督「眠気覚ましに散歩中でな。どうだ?付き合うか?」

長門「いや、遠慮しておこう。」

提督「そうか。」



その後、長門以外にも幾人かと会話を交わしたのだが

何故か皆、歯切れの悪い会話。

そして、提督はウォースパイトとの会話で気付いた。

656 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/07(月) 00:14:44.98 ID:S4P9bhGd0

スパ「Admiral」

提督「ん?どうした?」クルリ

スパ「あっ、Admiralのお客様でマフィアの方でしたか。」

スパ「勘違い失礼いたしました。」ペコリ

提督「…………。」



埠頭まで来ていたこともあり明石の工廠に立ち寄れば。



明石「どこのヤクザの組長が来たかと。」

秋津洲「マフィアのボスでも相当ヤバイクラスかも!」

提督「忌憚無い感想ありがとうな。」ハァ―



提督は自分の状態を把握した。



明石「なるほど道理で皆さんが

   紫電改を注文に来ると思いました。」

提督「艦載機のか?」

秋津洲「育毛剤かも。」

提督「あー、成程……。」



なお、育毛剤は間に合わず、

この状態で提督会議に出席した提督は

他の提督にいつも以上の威圧を周囲に与えていたそうである。



不知火「この不知火。自沈してお詫びを……。」

提督「いいさ。結果的に上手く事は運んだし暫く髪を切る必要もなくなったし。」

提督「前向きに考えるさ。」

スパ「元々少なかったですしね。」



余計な一言が原因でこの後ウォースパイトが

楽しい演習に参加する事となったのは言うまでもない。

657 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 00:17:30.50 ID:S4P9bhGd0
ちょっとした鎮守府の日常ほのぼの
お読み頂きありがとうございました
完結にあたっての第三部期待のコメント沢山ありがとうございます
改めてここに御礼もうしあげます
コネタや日常ネタなんかで今後もこちらにあげることあるかもしれませんが
その際は温かい目でみてやっていただけると幸いです
658 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 05:52:52.69 ID:SIB406j6o

スパ子…
659 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 09:00:14.46 ID:T2YiU9iLO

ヤポンスキー的な空気の読み方は難しいのかな
660 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/01/07(月) 09:34:32.19 ID:3FOkM2/5O
ヤクザの組長は金子信夫の演じる役は最高
661 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 10:30:01.67 ID:LeL6M+b5o

ここのスパ子ほんと好きだ
662 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 11:57:24.20 ID:MP8xFXdx0

信頼と安心のオチ担当
663 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 19:30:25.52 ID:5pJ1sCJv0
提督は進化すると禿になるからね仕方ないね
リアップが良いらしい
664 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/18(金) 23:53:29.98 ID:CIcpqvvX0
艦これ小ネタスレにだいぶ昔に投下して
色々考えて続きを書いたけど結局やめたものを供養代わりに投下します
御笑納ください(続きはかかないんだからね!)
665 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/18(金) 23:56:35.07 ID:CIcpqvvX0

『 赤備え 』


じゃらん。

錫丈の鐶の音が響く。

暗闇に、水底に敵を引きずり沈めゆく。

奴等は赤備え。

奴等が通った後には深海棲艦は一隻として残らない。

全てが灰燼に。

灰は灰に塵は塵に。

軽巡陸人の近接切り込み戦隊。

彼女達を知るものは言う。

陸人の女武芸者達には近寄るなと。

鐶の音が聞こえた時には手遅れだと。

奴等の艤装は敵の返り血で染められたものだと。

冥府の使者、黄泉比良坂の案内人。

血濡れの錫丈、仕込三味線、地蔵菩薩の代弁者。

彼女らを表現する言葉は無数に有る。

魂を送り届ける先は黄泉の国か、はたまた冥府か。

面頬に隠れたその下を覗くはその命、無きものと知れ。

彼女らが何処から現われ何処へ消えるか知る者は居ない。

ただ、その艤装が赤く染められている事からか

海軍の公式記録には

『 赤備え 』の所属不明な壱団有りと記されている。

666 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/18(金) 23:57:43.45 ID:CIcpqvvX0
『 闇に咲くは地獄華 』



都内高級料亭 上客用離れ



大将「いや、座敷遊びまで手配しておるとはな。」

中将「大将閣下には日頃お世話になっておりますので。」



ベンベンベンベべべべ。

はぁーっ!

〽  妖も人も 死ねば変わりは無き事よ

大将「舞を踊っている舞妓もだが、三味線奏者もなかなかだな。」

〽  少し渚に人待てば 果てる命はなかるるに

中将「向島の置屋で一番の綺麗所をお願いしていますので。」

〽  この世儚く 夢落つる

大将「ふん。なかなか美形さな。」

〽  憂き捨てて 捨てて憂き世の浜千鳥

ぺぺぺぺぺん。いよっ!


中将「次の作戦であの鎮守府を・・・・。」

大将「あぁ、あの生意気な若造を潰す。

無理な作戦海域を割り当てて引責よ。」

中将「まぁ、口のきき方も弁えぬ小僧でしたからな。」

大将「ふん。」



酒をほとほとと飲み始める二人。

酔いが回り始めた頃にそれは起きた。

じょあぁぁぁーーーん。

三味線の音と共に照明が一斉に消えたのだった。



大将「むっ?停電?まぁ、直ぐに元に戻るだろう。」

「さぁて、灯りが戻るまで命が持てばいいけどねぇ。」



言うが早いか白刃一閃。

大将の首が椿の花が落ちるが如くぼとりと落ちる。
667 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/18(金) 23:58:52.79 ID:CIcpqvvX0

中将「なっ!何事?!何も見えない、聴こえないぞ!?」

「あの世で閻魔にあったら私の名前を出すといい。

刑期の割引をしてくれるはずだよ。」

「川内にやられたってね。」



背中側を三味線の撥による袈裟斬り。

斬った本人は撥に付いた血を相手の軍服で拭う。



「撥には毒が塗ってあるんだー。

えへへ、万が一にも助からないよねー。」

「姉さん、早めの撤収を・・・。」



カラリと襖が開く。



「姐さん、こっちも終わりやした。」

「天さん達も終了かい。こっちも今、方が付いたよ。」

「那珂。そこの鞄を忘れずにね。」

「はーい!」

「書類鞄は後でじっくりと拝見と行こうじゃないか。」

「姉さん、ここはこのままで?」

「海軍の偉いさんが何をしていたって話でしょ。表沙汰には出来まいよ。」

「帰ったら風呂にするよ!豚の血は臭くて敵わないわ。」

「姐さん、そいつは豚に失礼ですぜ。」

「あぁ、俺もそう思うな。」

「姉さん、私もそう思います。」

「そうねぇ〜。私は豚の方がまだ可愛いと思うわ〜。」

「那珂ちゃんも完全同意!」

「あらま。まぁ、いいや。フタフタマルマル、作戦終了。帰投するよ。」

「了!」



東京不夜城。

夜の闇に今日も命の灯が消えた。

668 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/19(土) 00:00:48.48 ID:7HM3/1m90

『 始まりの詩 』



2×××年

人ならざる者達が諸国沿岸に現われ人類へ攻撃を開始した。

始めは大型海洋哺乳類のような異形の物達が

統率されることなくただ暴れていた。

多くの国家は自国の軍事力で多大な労力と犠牲を払い撃退。

そして、段々と敵は人型を取るようになり

ある一定の水準を超えたとき劇的に進化した。

彼らの進化により現代兵器での戦闘は割りに合わなくなった。

世界はその敵を深海棲艦と名付けた。

敵は現代兵器を満載した船舶をあざ笑うかのごとく沈めていく。

しかし、海に出ない限りは襲ってこない。

結果として巨大輸送船団の護衛に軍を回せる国のみが生き残る。

大陸諸国は自国が生き残る為に弱い国を侵略。資源の収奪を繰り返す。

世界最強の国は自国だけで全てが回せる為沈黙を貫く。

そんな中、極東の島国がオカルト的アプローチにより事態の解決を図る。

『 相手が得体の知れない化け物ならこっちも化け物で応じればいい 』

これがプロジェクトを進めたものの台詞。

研究は進められ、嘗て皇国の四方を守った鉄の城達の御霊。

これを燃料、弾薬、鋼材、ボーキ、そして開発資材という名の有機物。

5つの要素をいい塩梅で混ぜて御霊を降し、艦娘と呼ばれる兵士を作り上げた。

彼女ら兵士は強かった、

そして海軍は分霊(わけみたま)で同じ艦娘を複数作り上げて行った。

人ならざるものに人ならざるもので戦う。

倫理観等はそこに有る訳も無く

彼女達を押し込み留めた場所は鎮守府と呼ばれる収容施設。

ここには幾人もの兵士が押し込まれていた。

同じ武器、同じ顔、同じ名前。ややこしいと思うだろう。

同じ物であったとしてもそれが価値あるものであれば

双方とって置くのだろうが特に価値が無ければ?

取り置くのは片方だけ、それも先に有る方だけだろう。

兵士から『 魂 』を抜き元の無機物に戻す作業を彼ら海軍は『 解体 』と呼んでいた。

これはある収容施設に拾われ解体されるはずだった者達が逃げ出したことから始まる物語。
669 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/19(土) 00:02:17.79 ID:7HM3/1m90

『 不要とされた者 必要とした者 』



ザザーン。



大淀「こちらが本日ドロップ現象で

入手したと連絡のあった艦娘の報告です。」


艦娘を海軍が創り出した時、

黄泉路は開かれ偶に海軍の意図しない降霊が起きる事があった。

海上の有機物、海草の塊や、水生生物の死体といった有機物を憑代として

艦娘が海上に生まれることを海軍は魂が堕ちるという意味も含め

ドロップ現象と名付けていた。



提督「ちっ、レアはいないんだろ?」

大淀「・・・・、川内型が3人です。」

提督「けっ、ハズレかよ・・・、ったく。

艦隊が戻り次第全員解体にまわしてくれ。」

提督「いや・・・・、今日は何曜日だ?」

大淀「日曜日ですが。」

提督「ちっ、めんどくせぇ。

明日の任務入れ替わりの際の近代化合成任務用においといてくれ。」

提督「逃げ出したりしないように営倉につっこんどけ。」

大淀「・・・・、了解しました。」

提督「まったく、今更夜偵なんざいらねぇし。育てる資材も勿体ねぇ。」



ぶつくさと太った身体をゆすらせながら

提督と呼ばれた男は鎮守府建屋へと消えて行った。

程なく帰投を告げる無線の声が聴こえ、

出撃をしていた艦娘達が帰ってきた。

そして、大淀は連れて帰ってこられた艦娘の一人に目を留める。

自分と同じ。

純粋じゃない目。

混ざり者の目。

大淀はそれを見て予てよりの計画を実行に移す決意をした。

670 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/19(土) 00:05:07.03 ID:7HM3/1m90
以上導入部分だけ
お気付きの方もいらっしゃるかと思いますが隼鷹さんを始めとする
軽空母や空母の艦載機の設定は元々はこっち用で用意していたものです
こういうシリアス系の奴は書いていて乙レスいただけにくいのでモチベが保てない奴です
モチベが保てないとエタっちゃう……、うん、ごめんなさいです
お読み頂きありがとうございました、とりあえずのボツネタ供養でした
671 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/22(火) 01:01:47.47 ID:c5Ong7Rw0
もしやゴーヤは海を漂う野菜から生まれたのかw
672 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:33:39.92 ID:jo7lW8fX0
ボツネタその2
カウボーイビバップとブラックラグーンを足して割らない感じのをやろうとして止めた奴です
それと、瑞鶴の師匠との思い出話しを少し
お時間よろしければお読み下さい
673 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:36:04.39 ID:jo7lW8fX0

阿賀野型が主人公になるSSってみないなぁとの考えからのお話です




Cowgirl 阿賀野



※この作品は喫煙、暴力、麻薬、キャラ下げ等の内容が含まれます。
 これらが駄目という方は読むのは御遠慮いただきますようお願いいたします。



人類と深海棲艦達の長期にわたる戦争は終結し世界は平和を取り戻した。

人類と深海棲艦達の間には和平が結ばれ世界は復興へ向け歩み始める。

嘗て深海棲艦を敵として人類は一つとなり世界政府という、壮大な。

そう、戦争前には夢物語と言われた物が樹立され

その構成メンバーに深海棲艦を迎え入れるという形で平和を得た。

だが、深海棲艦達の中には破壊と殺戮を好む者も多く残り

彼女らは本能の赴くままに破壊活動を行っていた。

更には退役した艦娘が犯罪組織を作り非合法活動を行うなど

正しく魑魅魍魎が跳梁跋扈し戦争中より混沌とした状況となってしまう。

その為、事態を打開すべく嘗て艦娘として人類を守り、

平和を向かえ人員削減を迎えることとなった彼女達の一部へ

世界政府はある許可を与えた。

そう、さながら、アメリカ西部開拓時代のように賞金稼ぎ、

Cowgirlとして無法者達を取り締まるべく新たな活躍の場を彼女達へ与えたのだ。

674 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:38:17.17 ID:jo7lW8fX0

大型クルーザー 前部甲板



ペコリ

ペコリ

フン! ハッ

      ガッ ゴッ ベキ!

ヅン!  ホッ!

阿賀野「ねぇ!能代!矢矧!ごはん出来たよ!」

酒匂「ぴゃん!阿賀野お姉ちゃんの特製炒飯だよ!」



クルーザー内 食堂



矢矧「ねぇ、阿賀野姉。

   海老無し具無し焼き飯は炒飯って言わないんじゃないかしら?」

阿賀野「矢矧、お金が無い時はただの焼き飯も炒飯っていうんだよ。」

能代「今月はちょっと厳しいからね。

   船の燃料と税金払ったらかつかつだわ。」

酒匂「そんな皆にグッドニュースだよ!」

能代「あら、何かしら?」

酒匂「ジャーン。空母イントレピッド、賞金100万ドル。」

阿賀野「何したのその芋。」モグモグ

矢矧「えーっと?麻薬密売、臓器売買に政府機関への襲撃。」

能代「悪の総合デパートかしら?」

酒匂「艦娘として働いていた時からの悪事みたいだよ!」

阿賀野「あー、アメリ艦でも一人だけ白系華人っぽい顔立ちだったからねぇ。」

矢矧「中共のスパイ説もあったわね。」

能代「華が無かった。」

矢矧「華人なのに華が無いとはこれ如何に。」

阿賀野「まぁ、それらはおいておくとして100万はでかいわ。」

矢矧「確かに。」

能代「矢矧は今度は気をつけなさいよ?

   この間捕まえた相手ぼこぼこにしすぎて顔が変わっていた所為で引き渡した後、

   阿賀野姉と二人、警察に文句を言われたんだから。」

矢矧「能代姉もかなり殴ってなかったかしら?」

酒匂「とりあえず、今回はこの元艦娘が獲物だよ!」

一同「了解。」

675 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:40:27.50 ID:jo7lW8fX0


アジアのとある港町



ガン「さてと、ラングレーの人間が

   こんな辺鄙な所にバカンスへ来た理由を聞こうか?」

ヴェル「同志、葉巻を持ってきたよ。」

ガン「あぁ、ありがとう。さてと、ヤンキーの貴方は煙草は好きかね?」ン?

ガン「私は大好きでね。特に葉巻が好きなんだよ。」

ガン「君も吸うかね、1本どうだ?

   シガーパンチで吸い口を作ってあげようじゃないか。」

バチン

ガン「どうだね?此処へ来た理由を話してみないかな?」

フン

ガン「そうか。実に残念だ。

   ところで葉巻と指の太さは近い物があると思わないか?」

ガン「あぁ、いやいや。君がそう震えなくても大丈夫だ。」

ガン「ここには10本ある。ゆっくりと考えてくれて大丈夫だ。

   私もゆっくりと切るからな。」

ブツン

ギャァ!!

ガン「やれやれ、まだ1本しか切っていないんだがな。」フゥ

ガン「話したくなったかね。そうかそれは実にいいことだ。」

ガン「君にはこの葉巻を進呈しよう。何、遠慮なくたっぷりと吸ってくれ。」

ガン「キューバ産の上物だ。」

ゴトゴトゴト

ヴェル「同志大佐。準備が出来たよ。」

ガン「Молодец では、我々は帰るとするか。」

ガン「あぁ、その葉巻は落すなよ?命が惜しければな。

   ん?何?燃えるのが早い?」

ガン「君用の特別な葉巻だからな。ゆっくりと味わってくれ。」

ギィィ

バタン

ドゴン!!

ヴェル「同志大佐。欲しい情報は手に入ったのかい?」

ガン「あぁ、ヤンキー共が戦争の下調べに来た理由は分かったよ。」

ガン「予想通り例の麻薬絡みだ。雪風に繋ぎを取ってくれ。

   陽炎と直接話をしなければいけないな。」

ヴェル「了解。」

ガン「まったく厄介な芋が。」

ガン「同じ芋でも酒の原料にもなりゃしない。」

ガン「頭が痛い話だ。」

676 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:42:27.45 ID:jo7lW8fX0
とあるアジアの仏教国

阿賀野「入港の手続きも終わったから情報を集めに行きましょ!」

矢矧「阿賀野姉ぇ。ここは確か。」

能代「陽炎ちゃんが仕切ってた街だよね。」

酒匂「今は雪風ちゃんが代表しているみたいだよ!」

阿賀野「雪風と連絡とってるの?」

酒匂「うん!陽炎ちゃんは今、日本の本拠地を固めてるんだって。」

酒匂「それで東アジア地域は雪風ちゃんが担当してるんだよ!」

阿賀野「雪風なら話がしやすいわね。」

酒匂「うん!」



とある酒場

ドラムがテンポを刻み始め、

トランペットの音が甲高く流れる。

続いてサックスが謳い始める。

ガン!

入り口扉を蹴破る音がした後、二人の少女が入り口に立っていた。



「ちょうどいい曲ではないか。踊って貰おうか。」

「磯の字。曲名はSingじゃけぇ踊るゆうより謳うやわ。」

「むっ?そうか?」

「まぁ、ジャズダンスいうのもあるからあながちハズレやないかもしれんけど。」



元艦娘の1人が取り出したのはM134



「うちのシマで勝手やってくれとるのを

  見逃すんは他に示しがつかんからねぇ。」



ドドドドドドド キンキンキン



「セッションにはちょいと無粋な金属音やったかねぇ。」

「浦風よ、今気付いたのだが生存者が残らないな。挽肉だ。」

「肉屋を開店出来る勢いだぞ。」

「あぁ、まぁ仕方ないねぇ。

 うちらのシマで薬物捌いてるあほぼん残すんは雪風も嫌っていたし。」

「ふむ。まぁいいか。火は付けて置くか?」

「そうやね。後始末が楽でええね。」

「ふむ。秋刀魚を持ってきていれば良かったな。料理にいい感じの火力になりそうなのだが。」

「せやろか。」

「うむ。料理は火加減こそ大事だと浜の子も言っていたからな。」ムフー

「帰るか。」

「せやねぇ。」


677 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:43:41.02 ID:jo7lW8fX0
以上これまた導入でとまったボツネタ供養

続いて瑞鶴の過去話、おまけです
678 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:46:51.68 ID:jo7lW8fX0

「やれやれ、どっこい祥鳳」

「ちょっ。(笑)」


目の前で疲れたとばかりにブイのように漂う敵の死体を腰掛にするのは

私の教導を勤める先輩というか師匠の加賀さん。

そしてその僚艦の赤城さんは先の駄洒落におなかを抱えて笑っている。



加賀「これに喧嘩売るにはまだ早いっていったでしょう。」ゲシッ



これ、とはレ級である。



加賀「喧嘩を売ってでも仲間を逃がす為に時間を稼ごうとした心意気は褒めますがね?」

加賀「あのね?そういうのは実力があって初めてかっこよくやれるのですからね?」

赤城「加賀さん、おこ?」

加賀「おこです。下手したら死んでいたのかもしれないんですよ?」



げしと尻下のレ級だった物に蹴りを入れる師匠。



加賀「瑞鶴?あなたに死なれると目覚めが悪いんですから。」

赤城「加賀さんね?貴女が殿を務めているって聞いて全力で来たんですよ?」


それは分かる。

自分をしとめに来たレ級その他が目の前で瞬殺されたのをみて

それが出来るのは自分が知る限り2人しか居ないから。

679 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:48:26.61 ID:jo7lW8fX0

加賀「反省しました?」

瑞鶴「はい。」

加賀「うん。よろしい、では、帰りましょうか。」

赤城「今日の夕飯のデザートは瑞鶴さんの奢りということで。」



加賀がそういうと周囲にいた駆逐艦の娘達もわあと歓声をあげる。



瑞鶴「えっ。」

加賀「あらん?」ギギギギギ



ニッコリと笑っているが鬼の形相で振り返る加賀。



瑞鶴「おごらさせていただきまぁす。」

赤城「よろしくお願いしますね。」キャッ

瑞鶴「はぁー、強くなりたい。」



二人の、伝説といわれる二人の

大きな背中を見ながらぼやきを入れる毎日である。



提督「まぁ、無事でよかったよ。」



そういってくれるのはここの提督で初老に見えるのは苦労が耐えないからか。



提督「うちに新人が配属されるなんて何年ぶりだったか。」



いやまて、本当にここだったのかと突っ込みを入れたいが。



提督「しかも最新鋭空母だなんてねぇ。」シミジミ

瑞鶴「頑張ります。」

提督「一航戦の二人とは仲良くやれてる?破天荒な二人だから苦労していない?」

瑞鶴「あの、今更ですけどここって特殊というか結構激戦地?なんですか?」

提督「あの二人が強いからね。

   色々な戦役を重ねていたら精鋭ばっかりになっちゃってね。」



一航戦の二人が戦果を重ねるほどにやらされる事が増え

結果それに付いていける者だけが残ったという事である。

実際駆逐艦娘も精鋭ばかりで毎日足をひっぱる日々で肩身が狭い。

680 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:50:01.09 ID:jo7lW8fX0

提督「だから新人なんて来る筈がないと思ってたんだよ。」



いきなり右も左も分からないひよっこを最前線に叩き込めばどうなるか?

当たり前の話だが訃報の電報が着任の翌日に遺族に送られる事になるのは想像に難くない。

では、なぜ瑞鶴がそんな所へというのは。



瑞鶴(辞令書がどうも配属先の鎮守府の管理番号を間違えていた臭いのよね…。)



そう、この激戦区の鎮守府は横須賀鎮守府第108番。

そして瑞鶴が本当は着任するかもだった新人向け鎮守府は111番。

お気付きだろうか?辞令書は漢数字で書かれるのが慣わしであるため。

111、この文字列が百と11に別れ、

手書きでその草案を書いた担当者の字が汚かった不幸もかさなり。



「えーっと?百……八?」



養成学校から卒業した後に大量に作成される着任の辞令書の前に

そのうっかりはそのまま何事も無かったようにスルーされ。



瑞鶴「気が付いたら激戦地。」



しかし、新人が来た事に鎮守府あげて歓迎してくれた事もあり。



瑞鶴「笑顔が絶えない明るい職場だけれど瑞鶴は元気です。」



実家への手紙にはそう書くしかなかった。

そして、一航戦の二人の指導は、はちゃめちゃだった。


681 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:51:15.07 ID:jo7lW8fX0

加賀「矢なんてとりあえず飛べばいいのよ。」

瑞鶴「えぇ!?」

加賀「当たり前田のクラッカーでしてよ?」



養成学校では的へ命中させる事とか

射るときの姿勢とか煩かったのになぁ。



加賀「無駄ね。」

瑞鶴「えぇ!?」

加賀「じゃぁ聞くけど、あなたの敵は的なの?」

瑞鶴「いえ、深海棲艦です。」

加賀「そう。深海棲艦の相手は矢に降ろした艦載機の妖精さん達が殺るわね。」

瑞鶴「うっす。」

加賀「だから本当に重要なのは矢を放った後の艦載機の動きへの指示ね。」

瑞鶴「まじですかー。」

加賀「学校では指示の出し方とか色々教えたと思うのだけれどね。」

加賀「妖精さんがある程度勝手に敵を倒すからあんまり深く教えなかったでしょ?」

瑞鶴「えーっと。そうですね。」

赤城「学校では深く教えてくれない!何故か!」

加賀「無知だからよ。」

瑞鶴「えー…。」

加賀「例えば駆逐艦が輪形陣で守る空母がいたとします。」

瑞鶴「はい。」

加賀「これを妖精さんにまかせちゃうとどうなるか分かります?」

瑞鶴「空母から攻撃ですか?」

赤城「ファイナルアンサー?」

加賀「ライフライン残っていますよ?」

瑞鶴「ファイナルアンサーです。」

赤城 加賀「「…………。」」

赤城 加賀「「正解。」」


682 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:52:44.36 ID:jo7lW8fX0

瑞鶴「でも、攻撃方法として敵の頭を叩くのは重要なのじゃないでしょうか?」

加賀「最後はそうあるべきよ。

   でもやるべきは先に周りの駆逐艦を潰すのが先。」

赤城「天下に名高い堅城として知られた大阪城も

   堀を埋められたらあっという間に落ちたですよね。」

赤城「それと同じで『 将を射んと欲するならばまずは馬を射よ 』という事なんです。」

加賀「駆逐艦は的が小さいから精密操作をして指定してあげないといけないの。」

赤城「特に魚雷を落すタイミングなんかは近すぎても遠すぎても駄目なんですよ。」

瑞鶴「成程。」

加賀「そういうわけで今日の訓練は!」

赤城「流星隊チキチキ艦攻勝負!」ヒャッホウ!

瑞鶴「あの。」

加賀「なにかしら?」キリッ

瑞鶴「敵に囲まれつつあるこの状況で訓練ですか?」



偵察機に電探の情報では既に周囲を敵機動部隊が

2艦隊程迫って来ているようなのだが?



加賀「習うより慣れろ!でしてよ!」オホホホ!

赤城「実戦こそ最高の訓練と偉い人はいいましてよ!」オホホ!

瑞鶴「お嬢様口調で騙されませんから!」

加賀「生き残れれば名誉一航戦の称号を与えます!」ヒャッホゥ!

赤城「ワォ!こいつはすごいや!ジョンに連絡しなくっちゃ!」ヒャッハァ!

瑞鶴「命の危機感ゼロだ ―――― !後、ジョンって誰だぁ!」ウワーン!



そして月日は流れ現在。



瑞鶴(よくもまぁ、あの人外の後ろを付いていけてたものね。)

瑞鶴(とはいえ無茶はさせても無理はさせない人達だったからなぁ。)

瑞鶴(だからこその強さだったんだろうな。)

瑞鶴(まだまだ背中が遠い。)

瑞鶴「つくづくとんでもない人達と肩を並べて戦っていたものね。」



在りし日の記憶。今は昔の記憶である。

683 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/24(木) 01:58:31.30 ID:jo7lW8fX0
あくまで個人的な話しですが弓道うんぬんって敵が迫ってる状態で姿勢うんぬんなんじゃいなーと
とりあえず矢がとべばいいんだ、こまけぇこたぁいいんだよな感じの姿勢の一航戦がいてもいいじゃないと
とにかく数をあげる、弾幕うすいよ!じゃないですけど艦載機をさっさと飛ばせやぁ!って感じでしょうか?
こんな師匠たちと一緒に戦っていればそりゃ強くなりますって奴です
冒頭のどっこら祥鳳はツイ?だったかでみかけたよっこら翔鶴の派生、元ネタのよっこい正一の派生と思います
今後もこちらには小ネタなどをあげて行きますので宜しければお読みいただけると幸いです
メンバーの話しとかで気になる部分とかありましたら可能な限りはお答えしたいなぁとも思っています
お読み頂きありがとうございました
684 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/24(木) 03:22:03.92 ID:dxLx/UMt0
戦国時代、一歩半の間合いまで接近してきた敵を弓で射殺できる名人が結構いたときく
685 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/01/24(木) 15:10:18.19 ID:VQ6uKs2rO
乙です
このすてきな一航戦が既に故人なのが残念です
686 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/25(金) 02:57:42.14 ID:geK92fWH0
乙乙
強いから生き残ることもあれば強いから生き残れないこともあるって、いいよね…
687 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/28(月) 15:57:52.79 ID:8NUmY+3h0
瑞鶴の敵空母に関する反応から一航戦絡みだろうとは思っていたけど
ここまでの一航戦だとは思いませんでした(月並みな感想)
688 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/20(水) 00:52:58.54 ID:MNrFkHzD0

ある日の食堂

時雨「そういえば瑞鶴と初月ってコンビを組んでる事が多いけど

此処に来る前からの付き合いなのかい?」

瑞鶴「いきなりなにかと思えば…。」

初月「そうだな。僕が瑞鶴とコンビを組んでいるのは瑞鶴の師匠によるものが大きいな。」

雪風「あー、あの、知らずの一航戦のお二人が関わっていたんですか。」アキレ

瑞鶴「あれはそうね…、私が着任一周年を迎えた日の事だったかしら……。」

689 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 00:55:34.05 ID:MNrFkHzD0
それは丁度着任一年目の事だった


回想

加賀「赤城さん、懐かしいですね。」ナツカシイ

赤城「えぇ、ボストンバッグを肩にした瑞鶴さんが

青褪めた顔をしていたのを思い出します。」シミジミ


ゴトゴト バタバタ

瑞鶴が着任した日は丁度大規模作戦の真っ最中で。



瑞鶴「野戦病院さながらでしたねー。」

瑞鶴「周囲に転がる死者累々。」

赤城「バケツぶっ掛けるのが追いつかずで入渠待ちがいっぱいいました。」

加賀「ドックとセットで使用しないといけないというのはもどかしいものです。」

瑞鶴「最前線の空気というのを感じました。」

加賀「それからでしたねぇ。とりあえず手が足りないから空母なら直ぐに来てと。」

赤城「ボストンバッグを奪い、艤装をつけさせて出撃させたのでしたねぇ。」

瑞鶴「いきなり矢筒渡されて、大丈夫だから背中はちゃんと守るからと言われたのを思い出しました。」

瑞鶴「沈んでも直ぐ引き上げるからとか言われたの忘れていませんよ!?」

加賀「いやぁ、懐かしい。」

赤城「懐かしいです。」

加賀「ほんとに1年ちゃんと生き抜いてくれて…。」ベソベソ

赤城「立派になりました。」ベソベソ

加賀「よく戦力に……。」



ムームー!ゴトゴト!



瑞鶴「あの、やっぱり1年持たないんですか?」

加賀「うちの損耗率は極端に低いですが、理由はあります。」

赤城「それは全員が余所の鎮守府であればその艦種のエース。

切り札足りえる程に精鋭だからなんですね。」

瑞鶴「異常に練度は高いですよね。」

加賀「ここが出来た当初は酷かったんですよ?そりゃもう。」

赤城「2人に2人が死ぬ状況でしたねぇ。」

瑞鶴「あれ?それだと致死率100%…。」

加賀「あれ?」

赤城「あら?」

瑞鶴「あれ?」

加賀「………。」

加賀「そんな訳で生き残れば誰でも精鋭になれる状況だったわけです。」
690 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 00:59:26.64 ID:MNrFkHzD0

瑞鶴「さらっと流したぁ!?」

赤城「私達二人は空母として苦労しましたから

後輩が出来る事があれば苦労させたくないねと

以前から話しをしていたんです。」

瑞鶴「うっそだ ―――― 。」

加賀「いえいえほんとのほんとですよ?」

赤城「最短で戦力になるように所謂パワーレベリングをやってきたわけです。」

加賀「私達ベテランが新人の貴方をお守りしながら危険地帯にハイキング。」

赤城「あれですよMMORPGとかでギルドのベテランが初心者のレベリングに装備作り。」

加賀「さらにはハイランクモンスターの狩り方の立ち回りとかを全て教えてあげるあれです。」

瑞鶴「確かに最初から命の危機に瀕した状況スタートだと

物事を覚えるのは早かったです。」

加賀「でしょ!」ドヤッ!

赤城「ですよね!」ドヤドヤッ!

瑞鶴(うわっ、なんか腹立つわ)



モガモガ!ジタバタジタバタ!



瑞鶴「その、それで先程から気になっているんですけど……。」

瑞鶴「その動いているのはなんですか?」ユビサシ

加賀「よくぞ聞いてくださいました!」

赤城「瑞鶴さんの着任1周年記念に私達からのプレゼントです!」


691 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:00:18.99 ID:MNrFkHzD0




時雨「あっ、なんとなくオチが読めたよ…。」

瑞鶴「まぁ、予想通りよ。

その袋のなかに猿轡嚙まされた初月が突っ込まれたのよ。」

雪風「流石(常識)知らずの一航戦……。」




692 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:01:35.64 ID:MNrFkHzD0

瑞鶴「なにしてるんですか!

なにしてるんですか、真面目に、ほんっと!」

瑞鶴「貴方達馬鹿ですか!?

うちに新人というか最新鋭駆逐艦の新人とか着任するわけないじゃないですか!!」

瑞鶴「どっから拉致してきたんですか!!」

加賀「拉致だなんて人聞きが悪い。」

赤城「きちんと配属希望申請出ていますよ。」

つ 配属希望書類

瑞鶴「あれ、本当だ……。」


693 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:04:24.94 ID:MNrFkHzD0


時雨「その、それは捏造とかでは無かったんだね。」

瑞鶴「まぁ、捏造に近いかしらね……。」

初月「あぁ、養成学校卒業前の僕に

   しこたま酒を飲ませて酩酊状態にした挙句。」

初月「外泊証明書と嘘を言ってサインさせたのが捏造で無ければね。」

瑞鶴「手続き上はサインを本人が書いた物である以上は希望が通るのよ。」

雪風「あぁ、そうなんでしたか…。」

初月「そして僕がそれに気が付いて再度の訂正をしようとする前に。」

雪風「拉致されたという事なんですね。」

初月「朝起きたらどうやって生徒寮に侵入したのか

   如何にもエージェント然とした二人が立っていて、

   バチッとされて気が付いたら袋の中だったんだ。」

瑞鶴「で、私が謝罪したおして着任してもらった感じかなぁ。」

初月「その後も色々と演習や前線に引き摺られて行ったのは

   今となってはいい思い出かな。」

694 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:05:56.68 ID:MNrFkHzD0

対空訓練中


加賀「初月さん!

   あなたと言う方は一体いつになったら

   撃ち落すべき艦爆の区別がつくようになるんですかねぇ!?」



ギューン!



赤城「回避すべきなのと撃墜する必要のある物の区別がつけられないなんて

   駄目ですねぇ!?」

初月「明日までにはなんとか!なんとかする!」タタタタ!テテテテテ!

加賀「明日の何時になれば一体習得できるんですか!?」

初月「明日の、明日の6時までには!」ドドドドド!

加賀「6時!?一体いつの6時ですかねぇ!?」

初月「夕方だ!」ダダダダダダ!

加賀「赤城さん!!」

赤城「えぇ!」サッ ←携帯を取り出す



ピポパポ



赤城「あっ、いつもお世話になっています。

   横須賀第108鎮守府の赤城です。」

赤城「はい。はい…。えぇ、はい。」

赤城「加賀さん!何人で予約しておきますか!」

加賀「とりあえず明日の非番は20人くらい居たので25人くらいで!」

加賀「足りない時はお隣の大笑いの二人を連れてきます。」キリッ

赤城「加賀さん!いつもの焼肉店の予約とれました!」

加賀「初月さん!明日は終われば焼肉食べ放題に飲み放題です!」

加賀「頑張りましょう!」

初月「あぁ!頑張る!」トトトトト!


695 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:06:28.10 ID:MNrFkHzD0


時雨「ツンデレかな?」

初月「とはいえ出撃とかは無茶苦茶だったよ。」

初月「初陣は対空母棲姫だったかな。」

瑞鶴「あぁ、あの裸踊り事件だったわね……。」

雪風「なにをさせたんですか……。」

瑞鶴「艦隊は守ったんだけど迎撃段階で中破した初月に師匠達が切れてねぇ……。」



696 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:09:04.35 ID:MNrFkHzD0

加賀「あっといっちまい!」イヨッ

赤城「あっといっちまい!」ゲラゲラゲラ

陸奥「あの、とどめ刺してもいいかしら?」ヤレヤレ

加賀「あっ、いいですよ。」

赤城「装甲を少しずつ剥いていくのも飽きましたんで。」

陸奥「身につけてるのが下一枚って器用な攻撃するわね。」

加賀「うちの新人を可愛がってくれたお礼です。」ニタリ

赤城「覚えとけ糞虫が、うちの新人を中破させたらどうなるか。」Fuck!

加賀「あの世でしっかり敗北を噛締めるといいわ。」b→q ビシッ!

赤城「日が昇る東の水平線から、日が沈む西の水平線まで。」

加賀「私達一航戦は敵を討ち地獄へ送る。」

赤城「私達の支配する領域に貴方達の居場所はありません。」

加賀 赤城「「あの世へ特等席で待っていなさい。」」

ボガーン!

697 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:11:30.95 ID:MNrFkHzD0

瑞鶴「師匠の二人が本気で切れてたからなぁ…。」

初月「今だから言えるがあの時加賀達の恐ろしさに

   少しだけ漏らしてしまったんだ。」

雪風「仕方ないかと。初陣で生死の境に触れれば無理もないですよ。」

雪風「さらに言えば、瘴気纏った一航戦が近くにいれば、まぁ…。」

時雨「そうだね。

   それを笑う者が居るとしたらこっちとあっちの

   境界が分からない鈍感くらいだろうさ。」

雪風「にしても聞きしに勝る規格外だったんですね。」

瑞鶴「いまだに語り継がれる変態だからね……。」

瑞鶴「さてと、まぁ、そういう訳でコンビをずっと組んでるわけよ。」

初月「あぁ、どちらかが死なない限りは解消される事もないだろう。」


698 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:12:49.18 ID:MNrFkHzD0

食堂で時雨達の近くにいた長門



長門(死が二人を別つまでか……、夫婦かな?)

長門(まぁ、大方瑞鶴は守るものがあったほうが

   強さを発揮できるタイプだからな。)

長門(そういう所を見抜いた上でのコンビを組ませたんだろうな。)

長門(守るものが無い時に強さを発揮できるもの。)

長門(或る方がより発揮できるもの。)

長門(その辺りは人それぞれだ。……、瑞鶴が少し羨ましくはあるな。)

瑞鶴「あっ!長門!」

長門「うん?なんだ?」

瑞鶴「戦艦の随伴お願いしたいんだけど!」

長門「私は高いぞ?」

瑞鶴「敵の泊地強襲のピンポンダッシュやるから報酬はいい作戦よ。」

長門「報酬と危険度は比例するぞ?」

瑞鶴「今更でしょ?成功10万の頭割りよ。」

長門「チームは私を入れて何人だ?」

瑞鶴「今居る5人にかわうち入れて6人。割ったときの細かいのはかわうち行き。」

長門「いいだろう。一口乗ろうか。」

瑞鶴「じゃ、食事終わったら出撃ドックで。」

長門「あぁ。」

モグモグモグ

長門「さてと、明日の飯代の為に仕事に行きますか……。」

長門「料理長。食器は返しておくぞ。」

「了解。」

「長門!」

長門「む?」

「いってらっしゃいぴょん!」b ビシッ

長門「あぁ、いってきます。」ニヤリ


699 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 01:15:14.88 ID:MNrFkHzD0
メインのPCお亡くなり、サブのPCも挙動が怪しい、お金ない…
プロットが全部飛んだのが痛い……
香港編も死んだし、変態仮面も死んだし、はぁ……
久しぶりに少しです、お読み頂きありがとうございました
700 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/20(水) 06:57:15.88 ID:NXN5ibhG0
更新感謝
一航戦と言うか生え抜きのエースはみんなおかしい!!
701 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/20(水) 14:01:58.53 ID:NoK+7gIB0
そういう大事なもんはクラウドにも保管しとくんだ!
onedriveやDropboxといった無料分で充分使えるもんがある
702 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/21(木) 03:42:42.24 ID:x6Mn1+l00
乙乙
思ってた以上に変態だ一航戦。
バックアップ大事慢心ダメ絶対
703 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:29:23.20 ID:+N3qmstH0
少しばかりはお話前、後編
香港編を記憶に頼りに再度書いてますが艦娘同士の戦闘分が少ない!と感じたのでこっちで補給
なにやってんだ!さっさと更新しろ馬鹿!という声が聞こえてきそう…
お時間宜しければ読んでやってください
704 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:31:00.71 ID:+N3qmstH0

それはほんの軽い冗談のような切欠だった。

それは、ある日の食堂での仲間同士での軽い会話だった。



スパ「駆逐艦の方々は妙にオーラというか雰囲気のある方が多いですけど、

   実際誰が一番強いんですか?」

提督「うん?それは俺への質問か?」



食堂でウォースパイト達の席近くでうどんを啜っていた提督が

自分への質問かと確認の声をあげる。



スパ「もちろんですよ。」



提督の答えに近くに座っていた一同が聞き耳を立てる。



提督「そうだな。普段任務に出る奴らでなら時雨か雪風だな。」



妥当。



周囲に居るもの達はみな納得という風に頷く。



スパ「任務にでる娘っていう事はその他も加えると

   更に上がいるという事ですか?」



後日、川内は語った。

こんな時だけなぜに聡いのかと。



提督「あぁ。まぁ、そうだな。全員という事でなら不知火を推す。」

提督「総合的に判断してだがな。」ズルズル

スパ「えー、前回の作戦で早々に戦闘不能になっていませんでしたっけ?」



馬鹿者というのは時として地雷原を全裸で全力疾走することが有る。

705 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:33:24.92 ID:+N3qmstH0

長門(さっ、寒い!なんだこの空気の冷え込みは!?)

瑞鶴(体感気温が急に下がった!)

提督「あれは俺の不始末だ。不知火に責はねぇ。」

スパ「前回の作戦で駆逐艦で一番戦果を上げたのは時雨さんですよ。」

スパ「最強は時雨さんなのでは?」

提督「お前は不知火に散々可愛がられた記憶が抜けているのか?」

スパ「あっ、いえ、そういう訳では無いですけど……。」ガタガタ

提督「なら議論しなくても分かるだろう?」

スパ「………。でも、普段事務職されていますし……。」

提督「それは俺がそれを望んでいるからだ。」



提督がウォースパイトの議論を切ろうと手を翳すが……。

提督は何かに気付く。



提督「………、時雨。

   3日後、予定を空けられるか?」ハァ……

時雨「僕に用かな?」

提督「あー、まぁ、そのなんだ。

   あっちの入り口で静かに闘志を燃やしている奴がいてな。」

提督「もし良ければ演習の相手をしてやって欲しい。」

時雨「僕で相手が務まるかな?」

提督「あぁ、大丈夫だ。気軽に付き合ってやってくれ。」

提督「不知火。3日後だ。

   ルールはありあり、戦闘システムダウン、

   もしくは降参宣言させた方の勝ち。いいな。」



言い切った後にうどんのスープを飲み干し。



提督「時雨、迷惑掛けるな。」

提督はそういい残し出て行った。

雪風「時雨さん、御武運を。」

時雨「一度、全力ではやってみたかったんだ。

   胸を借りるつもりでいくよ。」

706 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:35:37.04 ID:+N3qmstH0
そして迎えた3日後



明石「えー、おせんにキャラメルいかがですかー?」

秋津洲「キンキンに冷えたビールあるかもー!」

摩耶「あるの?ないの?」

秋津洲「あるかも!じゃなかったあるよ!」

摩耶「一つ貰おうか。」

秋津洲「毎度ありかもー!」

提督「ちょいとしたお祭り騒ぎになってるな……。」

明石「まぁ、時雨さんに不知火さんの演習対決ともなればですねぇ。」

提督「一応聞いておくが賭博なんかやってないよな?」

提督「まぁ、成立するとは思わんがな。」

明石「ところがどっこい。」



提督が明石の言葉に頭を抱える。



明石「ウォースパイトさんが逆貼りで。」

提督「………。」

明石「ちゃんと証文も作ってますよ!」

提督「あー、なになに?

   負けた者が勝った者に酒を一杯奢る。か…。」

提督「時雨が勝てばウォースパイトの総獲りでその酒代がお前の丸儲け。」

明石「負けてもウォースパイトさんが皆に奢るので私のお店は潤います。」

提督「お前、二枚舌外交の本家のお国をよくもまぁ……。」

明石「日本語は難しいですからねぇ。」ニヤニヤ

提督「まぁ、身から出たなんとかだな。」

明石「ですとも。」ニヤニヤ



そして、提督が埠頭に用意した椅子に腰掛け。

明石がその近くの大型陸上設置型電波探信儀の電源を入れた。

707 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:37:33.35 ID:+N3qmstH0

提督「アメリカ製か?平面座標表示が出来るようだが?」

明石「戦後の技術を突っ込んで改良できるといっても

   ベースが二次戦ですからね。」

明石「元のスペックが良いものを観戦用に用意しました。」

提督「どうせ実験的データー獲りも兼ねているんだろ?」

明石「御明察。後は秋津洲さんの大艇で現場の映像をライブで流しますよ。」

明石「提督はどうみます?」

提督「途中までは五分だな。」

提督「だが、最後は不知火が勝つ。

   どう勝つかは分からんが結末は読める。」

提督「それだけだ。」

明石「さようで。」

提督「見届け人で長門と瑞鶴にでばってもらっちゃいるが……。」

雪風「止め時は見誤らないようお願いします!」

提督「あぁ、分かっているさ。」

明石「一応お二人の艤装にダメージ計測装置積んで演習用モードにしちゃいますがね?」

提督「あの二人なら演習用モードでも敵をぶっ殺せるからな。」

提督「長門達にもまずいと思ったら俺の判断待たずに止めに入れともいっちゃいる。」

雪風「しれぇ!万一の時は雪風も行きます!」

提督「そこまで理性のなくなるような事にならない様祈るよ……。」


なんで許可しちゃったかなぁと言いたげに提督が雪風に答える。

708 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:38:54.22 ID:+N3qmstH0

そして、埠頭から離れた本日の演習用にわざわざ設定された海域では。



長門「という訳だ。万一の際は我々の判断で止めに入るからな。」

時雨「うん。宜しくお願いするよ。」

瑞鶴「といってもま、気の済むまでやるといいわ。」

不知火「お気遣い感謝します。」

不知火「時雨さん。」

時雨「なんだい?」

不知火「胸をお借りします。」ヌイッ!



艶やかに、そして神々しいまでに白い

陽炎型専用手袋を再度きっちりと嵌めなおし。

時雨へと礼儀とばかりに頭を下げる不知火。



時雨「それは僕の台詞だ。」

時雨「今の僕が君に何処まで通用するかは分からないけど……。」

時雨「全力で行かせて貰うよ。」

不知火「望むところです。」ギチギチッ



手袋の嵌り具合を確かめるようにグーパーを行う不知火。



長門(やれやれ。頼むから我を忘れるような事にはなってほしくないもんだ。)

長門「それでは。両者いいかな?」

時雨 不知火「「勿論」」

瑞鶴「では、只今より演習開始!」


709 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:40:31.73 ID:+N3qmstH0

モモモモモモモモ

演習の火蓋が切って落とされると同時に

時雨の機関から大量の黒煙が上がり始める。



長門「初手煙幕か。」

瑞鶴「悪くわないわね。」



埠頭



提督「成程。やはり初手煙幕か。」



双眼鏡を最大倍率で覗きながら提督が言う。



川内「これは不知火との実戦経験の差をつめるためのものかな?」

雪風「ですね。目視下での攻撃であれば

   不知火さんの方に間違いなく軍配が上がります。」

スパ「それほど差があるんですか?」

雪風「実戦に出る機会が少ないですが不知火さんの強さは本物です。」

雪風「砲撃の精度はその類まれなる感性に寄るものです。」

川内「でも、どんなに狙撃能力に優れようと敵を目視、照準を決めて、撃つ。」

川内「この動作は避けられない。」

川内「不知火はそこに居るという気配だけで撃ってくるような化け物だけどね。」

川内「だけど、その気配だけで撃つ事を続けるのは

   通常の砲撃から比べると精神的な負担は大きい。

   いつまでもやることは出来ない。」

雪風「その通りです。ですので煙幕でその視界を奪うというのは理にかなっています。」

雪風「本来の煙幕の使用方法とは違いますが……。」


710 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:42:07.48 ID:+N3qmstH0

演習海域



瑞鶴「なかなか考えたものね。」

長門「あぁ、だが……。」

瑞鶴「やっぱり?」

長門「昨日、提督と話しをしたのだがまぁ、予想していたぞ。」

瑞鶴「あのハゲ親爺はほんと食えないわねぇ。」

長門「起こりうる事象を複数考えて

   それに一つずつ対処方法を考えるのが参謀職といってたからな。」

長門「といっても負けをやる前から悟っているなら

   やらせないのが仕事とも言っていたぞ?」

瑞鶴「どの口が言うかと言いたいわね……。」

瑞鶴「まっ、公正を期すために不知火に対処法を教えたりはしていないんでしょうけど。」

長門「秘書が長いからなその思考は似通っている。

   不知火もまぁ、読んでいるだろうよ。」

瑞鶴「まったく食えない上だわね。」

長門「まったくだ。」

711 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:43:20.27 ID:+N3qmstH0

煙幕内



時雨「煙幕内であれば電探性能にまさる僕の方が有利だよ。」



時雨の艤装につまれている電探は最新鋭のアメリカ製。

オシロスコープで敵の映像を捉え電探の方向を手動で変えている

旧式の日本製と異なり最新鋭で全てが自動で行われ。

その受像機である平面座標表示には敵への距離、方角が明確に表示される。



時雨「艤装の性能差が実力差を埋めてくれる。」

時雨「そして、それをカバーする為に不知火が集中するならば。」

不知火「私の消耗が早いという計算ですか……。」



ドゴン!

煙幕内での砲撃が開始された。



不知火「流石に艤装の性能差は致し方ありませんね。」

不知火「ですが、音の方向でより正確に方角が分かりました。」



そして始まる砲撃戦。


712 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:44:43.12 ID:+N3qmstH0

埠頭



摩耶「煙幕内での戦い方となると魚雷の使い所が難しいだろうね。」

提督「あぁ。闇夜での戦闘と変わりないからな。」

提督「闇夜ってのは思っている以上に感覚を狂わせる。」

提督「艦娘の皆は夜戦を幾度もなく行っているからわかると思うが

   戦闘に集中してしまうと自艦の位置を見失いやすい。」

雪風「夜間の戦闘は魚雷が見えにくくなりますから味方にうっかり魚雷が怖いです。」

スパ「でも、一対一での演習ですよね?」

提督「あぁ、だからお互いに魚雷は撃ち放題。」

提督「だがな、魚雷を撃つって事はお互いの必殺アイテムを減らす事になる。」

提督「駆逐艦の砲撃ってのは大したダメージを与えねぇ、あくまで本命は魚雷だ。」

雪風「ですのでそれをそうそうに撃ち尽くすのは勝率を自分から落す事になります。」

川内「どこで撃つかを考えながら煙幕内を接近していっている感じかな?」

提督「不知火からしたらそれしかないからな。」

提督「不知火の艤装の電探性能では相手の懐に入らないとどうしようもならん。」

提督「あいつは俺の部下扱いになるから艤装の改造の自由が少ないのが裏目にでちまってる。」

スパ「あぁ、それでノーマルに近いんですね。」

提督「機関の交換とかはしているがな、あいつには悪い事をしてると思っているさ……。」

713 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:51:47.96 ID:+N3qmstH0

演習海域


時雨「流石に距離を開けさせてくれないか。」



砲撃を繰り返しながら一定の距離を保ちつつお互いに煙幕中を移動していた。



不知火「時雨さんの方が正確な砲撃をしてきますね……。」

不知火「やはり砲撃タイプの違いも影響しますね。」



ドン!

冷静に分析する不知火の頬を時雨の砲撃が掠めていく。



不知火「着弾の位置を調節しつつ当てて来ますね。」

不知火「二丁拳銃の強みをしっかりと生かされています。」



時雨の砲は単装砲のように一つずつ手にもつ二丁拳銃スタイル。

対して不知火の砲はアサルトライフルの様に構えスタイル。

駆逐艦の砲は艤装に固定されない。

その為、一度に砲撃できる範囲については時雨の砲に優位である。

これはやろうと思えば前方と後方を一度に撃つ事が可能な

二丁拳銃スタイルの強みでもある。

砲撃の際にカバーできる高さの範囲についても

二点同時砲撃可能な時雨有利になるのである。

上、中、下の高さで砲撃をしようと思った際に時雨は

上、下あるいは上、中さらには中、下等といった組み合わせで砲撃が可能となる。

対して不知火の場合は上で撃った後に高さを変えて持ち替える必要がある。

それは当然ながら反応の遅れとなり敵への砲撃の遅れとなる。

結果、仰角、俯角、手に持っての調整で

より多くの範囲を時雨の場合はカバーできることになるのだ。
714 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:52:37.31 ID:+N3qmstH0


不知火「煙幕で此方の視界を奪い、電探で位置を測り。」



ゴン!

不知火の艤装に演習弾が掠め着弾を示すペイントが広がる。



不知火「音で微調整ですか?」



スイッ。

細かく移動し位置を掴みにくく行動する時雨。

それに対して不知火は電探の性能上、時雨を探知する為にあまり激しく動く事が出来ない。

いや、敢えて動こうとせずに単調な動きを続けている。



時雨「反攻戦に誘っているということか。」

時雨「いいね。流石、その誘い、乗ろうか。」



ここまで煙幕を張ってまで慎重に運んできたかのように振舞ってきた時雨にしては大胆な。

いや、ともすれば愚かとも言える挑発にのる。

715 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:53:53.59 ID:+N3qmstH0

埠頭



川内「あら?時雨が不知火の思惑にのるのかな?」



電探の受像機に表示されている光点を見ながら川内が呟く。



摩耶「らしくねぇな。」

雪風「当然の様に策があっての物だと思いますが……。」



雪風が時雨に何を売った?と明石を見れば。



明石「おおっとそれはこれからのお楽しみですよ?」ニヒヒ

提督「まぁ、何が起こるか。楽しもうじゃないか。」

秋津洲「提督余裕の表情かも!」

提督「時雨にゃぁ悪いが俺の中での絶対的評価は変わらねぇ。」

提督「どうせ最後に勝つのは不知火だ。」

提督「過程なんざ糞喰らえだよ。」

明石「上に立つものの言葉じゃないですねぇ。」ニヤニヤ

提督「俺があいつを信用しなくて誰が信用してやんだよ。」

提督「あいつが勝つと言ったなら俺は黙って結果を待っていればいいんだ。」

提督「今の俺に出来る事は黙って待っていることだけさ。」



提督はそういうと煙幕で見えないはずの向こうに再び双眼鏡を向けるのだった。

716 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 01:00:04.24 ID:+N3qmstH0
次回決着!
日本とアメリカのというか二次戦時の電探で最も技術が進んでいたのはイギリスです
日本もですね、大戦末期には追いついてきてはいたようです、ようです…
作中にも触れていますが受像機がそもそもしょっぼい、アメリカ側は全自動で敵を追尾して距離も方角も自動表示してくれるのに
日本側はオシロスコープみたいなものにぼやーん…、そして計算尺で計算!そら負けますわ
冶金術が連合国と比べて劣っていた所為も有り純度の高い銅が作れなかった為真空管の性能についてもかなり低かったそうです
というかですね?電探(探知機、探信儀)の基礎理論ね?マイクロウェーブ含めて日本の先生が提唱ですよ?
ホント、新しい物を積極的に取り入れていなかった所為でという奴ですね
といっても取り入れていたところで物量に勝る米帝に勝てていたかというとまた別のお話にすぎません
どうせ負けています、早いか、遅いかだけです、はい、春イベ、モチーフどこでしょうねー、資源備蓄してまってます!
717 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/01(月) 06:08:57.23 ID:YcDuEXdb0
乙です
馬乗りになったりなられたりの殴り合いになる前に誰かが止めてくれれば良いのですが
金マンと銀マンの争いの末路だけは勘弁してください
718 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/01(月) 13:25:09.77 ID:T7lRSDE60
電探の死角をかいくぐって肉薄攻撃を仕掛けてきた時雨を組み伏せ、手にしていた計算尺で尻をペンペンするぬいぬいか
胸が熱いな
719 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/01(月) 17:13:11.50 ID:LqH2JZLE0

下手な電探より優秀そうだなぬいぬいのカン
720 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:26:10.57 ID:aBfZ3KXR0
デデン!
3部へ向けてプロット作っているデース!
金剛改二丙デース!デース!
とりあえず、続きになります、お時間宜しければお読み下さい
721 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:27:21.62 ID:aBfZ3KXR0


スパ「にしても、なんでわざわざ煙幕内で?」

提督「それはあれだな。

   魚雷を装備として使わない者だから出てくる意見だな。」

雪風「確かに煙幕内で戦うのは最善手とは言えません。

   ですが、駆逐艦の主兵装は魚雷です。」

雪風「煙幕を嫌って外に出れば電探の性能上

   一方的に魚雷を撃たれてしまう可能性が高くなってしまいます。」

提督「そうだ。少なくともお互いに魚雷を打ち合ったときに

   安全距離をとれない状態を維持していれば鍔迫り合いの状況に持っていける。」

提督「レーダーレンジ(電探の感知できる範囲)が不知火の方が狭いからな。」

提督「その外から移動しながら撃たれると不知火も被弾の危険性が高くなる。」

提督「さらに言えば魚雷は電探に写らないからな。雷跡を見て避けるしかない。」

雪風「ですが、時間を掛ければ不知火さん有利な状況ではあります。」

雪風「いずれ煙幕は晴れますから。

   時雨さんにしても何度も張り直せるほどの追加は持っていないでしょう。」

スパ「だから不知火さんが仕掛けたのに時雨さんは敢えて乗ったという事?」

提督「勝算があっての賭けだろうがな。」

722 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:28:44.77 ID:aBfZ3KXR0
煙幕外


長門「と、この反応は……。」

瑞鶴「時雨がデコイを蒔いたみたいね。」



煙幕内



不知火「……、こちらの電探が低性能である事をとことん突くようですね。」

不知火「敵の弱点を分析した上で利用できるだけしますか。流石ですね。」ヌイ!

時雨(大方、関心されているんだろうなぁ。)



埠頭



ガン「あの〜、今、どんな状況なんでしょうか?」

提督「ん?なんだお前も居たのか。」

ガン(ひどい!)



着任時のぐだぐだの所為で若干空気気味なガングートが

恐る恐るといった感じに提督に声をかける。



川内「そうだねぇ。明石のレーダーの情報を見る限りは

   これは時雨がいつぞやのデコイを蒔いたようだね。」

摩耶「だね。だけど、不知火の電探の性能を考えるにこいつは不利なんじゃね?」

提督「そうだな。明石のこれはアメリカ製だから有る程度の数が分かるが…。」コンコン

明石「日本製電探の不知火さんのだと多分、塊になってるでしょうね。」コワサナイデクダサイヨ?

川内「いいとこ大きな円表示かなぁ。」

ガン「という事は、不知火さんは時雨さんの位置が分かっていない状態という事ですね?」



そう、時雨が使ったのはいつぞやの千島列島作戦で使用されたデコイつき魚雷。

それは電探に実像を写すデコイ付き。

速度に関しても駆逐艦の範囲内に納まるように調整された代物である。

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