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【ガルパン】 杏「西住ちゃん」
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1 :
らぐB
◆asJU3gh8ZA
[saga]:2018/02/28(水) 20:13:01.86 ID:U9zitY6mO
※劇場版微ネタバレ注意
※スピンオフ未読
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1519816381
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/28(水) 20:13:57.76 ID:U9zitY6mO
あたしは、秋が嫌いだ。
あたしの誕生日は一月一日で冬だし、あたしの名前にもなってる植物の杏が実をつけるのは初夏のころ。杏の花に至っては春に咲き誇る。
別にそんなことは理由ではないが、とにかくあまり好きになれない。暑くて大変な夏が終わるのは結構なことなのだが、秋になるとなんとなく寂しい気持ちになるのだ。
小学校のころ、同じクラスのうるさい男子が、親の都合で引っ越してしまった後に似ている。
別に構わないのだが、なんとなく心に穴の開いたような気分になる。
だからあたしは、秋が嫌いだ。
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/28(水) 20:14:54.09 ID:U9zitY6mO
今あたしは、紅葉を眺めながら散歩をしている。
いつになく、生徒会の仕事が早く終わったんだよね。
大学選抜戦からこっち、廃艦の撤回の撤回の撤回なんていう未曽有のややこしい事態に巻き込まれたせいで、生徒会はとんでもなく忙しかったんだけど、ようやく落ち着いてきたんだ。
河嶋から、一緒に帰ろうって誘われたんだけど、なんとなく断っちゃった。
秋は嫌いなんだけど、秋になるとなぜだか紅葉を見ながら散歩したくなる。
嫌いなのにそんなことをしたくなるって心理は、でっかい石をひっくり返して、その裏にいるであろう虫を見たくなっちゃう気持ちに似てるかもね。全く似てないかもしれないけど。
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/28(水) 20:15:35.01 ID:U9zitY6mO
そんなことを考えながらぶらぶらと歩いていると、見覚えのある後姿が目についた。
いつものパンツァージャケットと違っていやにひらひらした服を着てるけど、あの栗色の髪となんとなく危なっかしいふわふわした雰囲気は間違えようがない。
「西住ちゃん」
あたしの声を聴いた西住ちゃんは、ゆっくりとこっちを振り返り、ぱっと表情を明るくしながらお辞儀をしてくれた。
「あ、こんにちは、会長!」
いやいや、そんなにかしこまってお辞儀なんてしなくっていいって。さっきまで戦車道の授業で会ってたじゃん。
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/28(水) 20:16:29.45 ID:U9zitY6mO
「かわいい服着てんねー。もしかして、デートだったり?」
「ち、違います! ただ、夕飯を買いに行こうと思って・・・」
なんだ、それだけか。
つまんないような、ほっとしたような。妙な気持になったあたしは、もう少し西住ちゃんに突っ込んでみることにした。
「それにしてはかわいい服じゃん。何買いに行くの?」
「え、えっと、それは・・・」
にひ。やっぱり。なんか隠してるねぃ。
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/28(水) 20:17:00.06 ID:U9zitY6mO
「いーから言ってみ。誰にも言わないからさ」
「・・・その、コンビニに・・・、お弁当を、買いに行こうと」
あちゃ、そっち方面の恥ずかしがり方だったか。
別にコンビニ弁当買いに行くとこ見たからって、ずぼらだなんて思わないのに。
それにしても、コンビニにしては嫌に気合の入った服に見えるけど。どこか世間とずれてるのも西住ちゃんが天才たる所以なのかもねえ。
・・・あ、そうだ。
いいこと思いついた。
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/28(水) 20:17:45.20 ID:U9zitY6mO
「そっかそっかー。でもね、コンビニ弁当なんか食べてると、大きくなれないよ」
「ええ!?」
「今、こいつにだけは言われたくないって思ったっしょ」
「い、いいえ! そんなことはないです!」
「ほんとかなー? ま、いいや。というわけで、あたしが西住ちゃんの家にご飯を作りに行
ってあげよう!」
「え・・・。えええ!?」
驚いた様子を見せる西住ちゃん。まあ、当然だよね。あたしたち、別に個人的にそんなに付き合いがあるわけでもないし。
だけど、なんか西住ちゃんってほっとけないんだよね。おいしいもん食べさせてあげたいっていうかさ。
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/28(水) 20:19:16.55 ID:U9zitY6mO
「悪いです! いいです!! あの、わたし、いつもコンビニ弁当なので、免疫ついてますから!!」
「いや、それだとなおの事ダメでしょ。遠慮しなくっていっからさー」
ていうか、免疫って。普通にコンビニに失礼でしょ。
さっきけなしたあたしが言えたことでもないけど。
「ほ、ほんとにいいんですか・・・?」
「いいっていいって。あたしも暇だしさー。食材とかある?」
「ええっと・・・。ケチャップとマヨネーズならありますけど」
「うん、買い出しからいこっか」
やっぱり、声かけて正解だったみたいだね。
〜〜〜〜
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/28(水) 20:20:38.05 ID:U9zitY6mO
〜〜〜〜
「ほい、召し上がれー」
コンビニのご飯に慣れてる西住ちゃんには基本的な家庭料理を食べてもらう方がいいと思って、サバの味噌煮にきんぴらごぼう、おひたし、味噌汁にご飯という定食屋みたいなメニューを作ってみた。おしゃれなメニューじゃないけどね。
反応が気になって西住ちゃんの方を見ると、なんだか目を真ん丸にしてこっちを見ている。なんかやらかしたかな。
「どったの西住ちゃん。嫌いなもんでもあった?」
ピーマンは、入れてないはずなんだけど。
「い、いえ! その、会長が、本当にわたしのために普通の料理を作ってくれるなんて思わなくて・・・」
「あのねえ西住ちゃん。あたしのこと一体どういう風に思ってんの?」
「す、すみません!」
「いーから食ってみ。ほれ。おいしいからさ」
「い、いただきます」
美味しくできてるはずだけど。大丈夫かな・・・。
家庭科は全般的に大得意のあたしだけど、やっぱり料理を人に食べてもらうときはちょっと緊張する。
人によって味の好みもあるからねえ。
でも、西住ちゃんの顔を見てると、そんなあたしの心配が杞憂だとすぐに分かった。
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/28(水) 20:21:36.82 ID:U9zitY6mO
「ううん、おいしい! 会長って、本当に料理がお上手なんですね!!」
「にひひ、でしょー。あたしも食べよっかなー。いっただっきまーす」
うん、おいしい。味見はきちんとしてたけど、やっぱり食卓に並んでるのを誰かと一緒に食べるのが一番おいしく感じる。
食べながら、あたしは西住ちゃんと他愛もない話をした。
思えば、こんな風に西住ちゃんと雑談するのは初めてかもね。
武部ちゃんがゼクシィのために新しく本棚を5つ買い足した話はさすがにドン引きしたけど。
あの子はどこに向かってるんだろう・・・。
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/28(水) 20:22:29.42 ID:U9zitY6mO
でも、料理が八割方無くなるころにはそんなお馬鹿な話は尽きてきて、徐々に真面目な話にうつっていった。
この冬に復活する無限軌道杯をどう戦っていくのか。そして、来年以降の大洗の戦車道をどうしていくのか。
そんな中、西住ちゃんがある話題を口にした。
「来年といえば、会長と副会長、それから河嶋先輩はもうすぐ生徒会の任期が終わっちゃうんですよね」
「ん・・・。そだねー」
当然知ってはいたけど、あたしたちが目を背けていた話題。
目の前の仕事で精一杯なふりをして、三人とも見ないようにしてた。
そりゃ、そんなことしてたら、目の前の仕事がなくなると見えちゃうよね。
「まあ、大変だったからなー。ようやくってところかねぃ」
心にもないことを口にしてお茶を濁してみる。まあ、こんな話題掘り下げてこないだろうし。適当に返しとけば次の話題にうつるっしょ。
あたしのそんな見通しが甘かったことに気付くのは、本当にすぐ後の事だった。
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/28(水) 20:24:25.90 ID:U9zitY6mO
「会長、本当にお疲れさまでした。それから・・・、ありがとうございました」
西住ちゃんが謎のお礼を言ってきた。恨まれこそしても、そんなお礼言われるようなことしたっけな・・・。
別の話題にうつろうとしてたはずなのに、あたしからこの話題を掘り下げたくさせるんだからなあ。西住流ってやっぱりヤバいね。
「あんがと。で、それは何に対するありがとうございましたなの?」
「それは・・・。わたしの大好きな大洗を守ってくれたことと、わたしを戦車道に戻してくれたことです」
大好きな大洗を守ってくれた、か。
守ってくれたのはあたしじゃなくてむしろ、西住ちゃんだったような気がするけどね。
「大好きなって、西住ちゃんはあのとき転校してきたばかりだったじゃん。それに・・・」
「時間は関係ありません!」
西住ちゃんが真剣な顔になってこっちを見つめる。
なんとなく、ぎくりとした気分になって。あたしは何も言えずに西住ちゃんの顔を見つめ返した。
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/28(水) 20:26:03.61 ID:U9zitY6mO
「・・・確かに、最初は戦車道がないってだけで選んだ学校でした。だけど、沙織さんや華さん、優花里さん、麻子さん。それから、会長たち生徒会の人や戦車道の皆さん・・・。
みんな、暖かくて、面白くて、大好きで。時間は短かったかもしれないけど、わたしにとっては、大洗は本当に大事な学校になったんです。
その学校を会長たちが守ってくれたので・・・。本当に、ありがとうございました!!」
・・・声、大きいって。
なんとまあ、こんな風に言われると、会長冥利に尽きるっていうか・・・。うん、ジーンときたよね。
あたしがまた何も言えないでいると、西住ちゃんは何を勘違いしたのか慌てて
「あ、ご、ごめんなさい! わたし、一人で舞い上がっちゃって・・・」
なんて謝ってきた。
いやいや、勘違いだって。この状況で怒るってあたし心狭すぎるでしょ。
・・・でも、あまりに卑屈すぎるよね。西住ちゃんのおかげで大洗は廃校にならずに済んだってのに。
そんな態度に無性に腹が立ったあたしは、
「西住ちゃん」
思わず、
「は、はいっ! なんですか?」
やめときゃいいのに、
「あたしの生徒会の話・・・、聞いてくれるかな」
話し出してしまったんだよね。
後から思うと、本当に間違いだった。そんな重い話する席じゃないんだよー。楽しい楽しいご飯会なんだよー。
そんなことするから、それが起こっちゃうんだよね。
あんなことが、さ。
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/28(水) 20:27:11.20 ID:U9zitY6mO
もうご飯も食べ終わっちゃって、早く後片付けをしなきゃって時なのに。
あたしの話は止まらなかった。
この間、西住ちゃんを生徒会室に呼び出した時に話したような話から始まり、小山と河嶋とあたしの三人しか知らないようなこと。果てはあたししか知らないような話まで。
いくら話しても話しつくせないくらい、あたしにとって生徒会は大切なもので。
あたしたちが過ごした三年間。いいや、まだ二年半くらいか。その時間はあまりにも長かったんだよね。
だけど、これをそのままぶつけても、西住ちゃんは困惑するだろうから。
あくまでも、笑い話として話してあげないとね。
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/28(水) 20:28:04.03 ID:U9zitY6mO
「・・・って感じでさあ。まあ、生徒会ってのは大変なわけよー」
「そうだったんですか、そんなことが・・・」
あくまでも、笑い話として。
「だからねえ、終わりに近づいちゃっても、寂しいって思いよりもやっと終わったかーって思いの方が・・・」
笑い、話として・・・。
あれ? なんでだろう。この先の声が出ない。ここらで話を落としにかかる流れのはずなのに。
「会長・・・!」
あれ? なんで西住ちゃんがそんな険しい顔してこっちに近づいてくんの?
え、待って待って待って。
なんであたしを抱きしめようと―――。
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/28(水) 20:29:02.26 ID:U9zitY6mO
「心にもないこと、言わなくていいんですよ。・・・寂しいのは、当然ですから」
「に、西住ちゃん? あたしは、別に・・・」
おお、やっと声が出た。西住ちゃんってば、さえずりの蜜か何かなのかな。
・・・ん? あたしの声、なんでこんなに震えてんの?
「ほら、無理して強がるから。・・・泣いちゃってるじゃないですか。いいんですよ。寂しいときは・・・、つらいときは、つらいって言っても」
・・・え?
あ・・・。ほんとだ。
あたし、いつの間にか泣いてたんだ。
だから声が出なかったんだねぇ。
だから、あたしは今、西住ちゃんに抱きしめられてるのか。
・・・だから今、西住ちゃんにすがりついて大泣きしちゃってるのか。
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/28(水) 20:29:56.02 ID:U9zitY6mO
「に、にしずみちゃ・・・っ、ごめ・・・」
「全然、いいんです。つらいときは、泣いちゃった方が・・・。後ですっきりしますから。思う存分、泣いてください」
・・・そんなこと言われちゃったら、止まらないじゃん。
まずいなあ、まだ会長なのにさ。威厳も何もあったもんじゃない。
だけど・・・。もう、言っちゃった方がすっきりするのかな。
「あたしね・・・、もうすぐ、生徒会が、終わりだって・・・。考えないように、してたんだけどさ。だけど、ふとした瞬間に、考えちゃって」
「そのたびに、胸が、張り裂けそうに・・・。寂しいし、終わってほしくないし、あたし」
あーあ、言っちゃった。
いよいよあたしの威厳も地に落ちたね。明日からどんな顔して西住ちゃんに会えばいいんだろ。
・・・だけど、西住ちゃんは、そんなあたしの情けない言葉を、特に否定も肯定もせず。
うんうん、と頷きながら、いつまでも聞いてくれて。
その度にあたしは涙を流して。
西住ちゃんが頭をなでてくれて。
ようやく落ち着いたころには、もう水分が枯れて涙が出なくなっていたんだ。
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