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あずき「闇のゲーム大作戦!」忍「学園編!」
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121 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 13:46:41.92 ID:nb06cNBw0
ぴぃち「ラディアンが2体、クモグスとガダーラとバルバロス。アナタの星は37」
美嘉「ラディアン、クモグス、ガダーラ、ブラスター、テンペスト、そして!」
美嘉(エンドフェイズ直前のスタンバイで引いたカード!)
美嘉(大丈夫、『太古の白石』は2枚入れてた、白石のレベルは1、つまり星は同点に――)
美嘉「――なっ?!」
ぴぃち「『青眼の白龍』。レベルは8だよな?」ニタァ
美嘉「そんな、どうして」
ぴぃち「お姉ちゃんの青眼、どこに仕舞った?」ニタニタ
美嘉(ま、まさか、手放したくないあまりデッキへ組み込んでいた……?!)
ぴぃち「そのカード、ステンレス製なのに気付けなかっただろ?」
ぴぃち「それはカードに選ばれてないからだぞ☆」
美嘉「あり得ない、嘘だっ、嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
ぴぃち「うるっさいなぁマンドラゴラかよ」イラッ
ぴぃち「――闇の扉が開かれた」ォォン…
ぴぃち「罰ゲーム! ――NIGHTMARE BLOOD――」ドン☆
美嘉「うわあああぁぁ!」
122 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 13:52:14.25 ID:nb06cNBw0
美嘉「――はっ、こ、ここは?」キョロキョロ
美嘉「まさか……カードの『中』?! M&Wの世界の?!」
美嘉「それにあの子もいない! いるのは――」
美嘉「ま、待って、あなた達はアタシのカードでしょ?!」
美嘉「やっ、やめて、来ないで――助けて――!」ポロッ
美嘉「ブラスター! タイダル! レドックス! テンペスト!」
美嘉「……青眼……!」ポロポロ
美嘉「アアアアアアアアアアアアアアア!」
グシャッ…
ぴぃち「とと、これで青眼も無事回収、っと」
美嘉「――」
ぴぃち「ふふふ、その目に何が映ってるかは知んないケド」
ぴぃち「安心して☆ その『死の体感』は一夜限りの幻影……」
ぴぃち「アナタがゲームで次こそきちんと笑えるように願ってるよ」
ぴぃち「そのためにも、一度全て燃えて灰になるといい」
美嘉「――」
ぴぃち「例え愛と思えない荒療治でも、それがカード達の愛の形」
ぴぃち「はぁとの愛の炎を避けるなよ☆ 物理的に☆」
ザァアァァァアアァ…
123 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 13:57:10.77 ID:nb06cNBw0
あずき「ゴノレフーっ!」
柚「ゴノレフーっ!」
忍「……何やってるの」ハァ
あずき「ゼェゼェ……ゴノレフだよ」
穂乃香「何がそこまで二人を駆り立てるんですか……」
柚「この後開かれる大会の優勝賞品がもけもけドールなんだー」
穂乃香「ゴノレフーーーーーっ!」
忍「穂乃香ちゃん?!」
日菜子「はっ。って、あんまりうるさいから現実に戻ってきちゃったじゃないですか!」ペチペチ
あずき「よし20ポイント!」
忍「それでいいの?!」
忍「……ところで柚ちゃん、その大会はホントにあるの?」
柚「うん。ヤ〇ルトの人が言ってた」
穂乃花「ゴノレフーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
あずき「この辺り一帯ってみーんなおんなじ人から買ってるよね」
柚「名前なんだっけ、あの目に優しい色の人」
忍「ちひろさんでしょ?」
日菜子「妄想ワールドからかけ離れた名前を出さないで下さいぃ!」ペチペチ
日菜子「あ、でも日菜子が無視され続けるというのも……むふ、むふふふ……」ポワポワ
124 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 13:59:25.70 ID:nb06cNBw0
〜作戦6〜
125 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 14:00:27.55 ID:nb06cNBw0
柚「やっほー皆の衆!」
穂乃香「……遅刻ギリギリですよ」ムスー
柚「ありゃ、お怒り?」
忍「決闘に負けたから拗ねてるの」
穂乃香「あ、あぅ、それはその」アワアワ
あずき「今日も素晴らしい『名推理』を見せてもらったぞ!」
穂乃香「うぅ、せ、せやかて工藤!」
忍「は?」ゴォッ
穂乃香「スミマセンデシタ」
柚「あー、でも忍チャンの【推理ゲート】かぁ、見たかったなぁ」
あずき「それはまた次の機会だねー。残念っ」
忍「そうそう、今日は予定があるもんね」
茄子「あっ、もう揃ってるね。それじゃ鍵閉めて、っと」ガチャリ
茄子「さ、みんな車に乗って〜♪」
四人『……はーい』
茄子「あれ?」
四人(この人の運転かぁ……)ドヨーン
126 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 14:08:19.93 ID:nb06cNBw0
柚「ぅ、うぷ」
忍「」チーン
茄子「着いたよー……みんな?」
穂乃香「相変わらず……男らしい運転ですね……」マッサオ
あずき「フリスク、食べる? 酔い、覚めるよ、おぇ」
柚「ちょーだい……」ポリポリ
忍「」ムグムグ
穂乃香「あぁ、思い出の味になりそうです……落ち着く……」ポリポリ
茄子「あ、あれー?」キョトン
吉森「表で凄い音がしたので何事かと思えば……」テクテク
茄子「あら、吉森教授。今日はお世話になります」
吉森「うむ。私も久し振りに君と会えて嬉しいよ。何せ君と会ってから調査に出掛けると妙にツキが回る」
茄子「偶々ですよ、偶々」フフッ
吉森「それで、そのノビてる子達が見学の?」
茄子「はい。すみません、一般公開前にお邪魔して」
吉森「ははは、他ならぬ勝利の女神の頼みなら構わないよ」
吉森「さあ、早速案内しよう――回復したら、だが」
忍「ディアンケトビート…」
127 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 14:14:45.66 ID:nb06cNBw0
吉森「――で、これが今回の目玉のヒエログリフだ」
穂乃香「わぁ……こんな完全な状態で見つかるんですね」
吉森「かなり貴重なものだ。しかもどんな鉱物なのか未だに解っていない」
吉森「なんでもとある『魔術書』の写しらしいが――」
金倉「吉森君!」
金倉「呼んでもいいとは言ったがこんな人数だとは知らなかったぞ!」ドスドス
忍「……この方は?」
茄子「金倉会長です。今回の調査におけるパトロンですね」
金倉「そのヒエログリフは私が発見したものだ」フンス
吉森「まぁ盗掘まがいの強引さだったがね」ヒソヒソ
忍「あ、そうなんですか……」ヒソヒソ
柚「わぉ、これ面白いねー。ナイスだよナイス」
あずき「遺跡発掘大作戦! だね!」
金倉「君達っ! 体験型の展示を触るのはいいが一般公開前なんだから少しは自重してくれ!」
あずき「ぶーぶー」
柚「いージャン、二人でやれる量なんて高が知れてるんだし」
金倉「しかしだなぁ――ん? んん?!」
金倉「そ、それは――!」
128 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 14:19:55.41 ID:nb06cNBw0
穂乃香「良かったんですか?」
あずき「ちゃんと返すって言ってたし、平気でしょ」
あずき「それにお姉ちゃんの知り合いの同僚さんだからね」
柚「イヤ、確かに貸さないといけない雰囲気だったけどさ」
忍「矢っ張り……ねぇ?」
あずき「不安?」
穂乃香「アレを下げていることが一種の個性だったので」
あずき「うぐ、それは一理あるような……」
柚「だからここいらで個性を増やさないと! 例えば――何だろ?」
忍「考えてから話そうよ……例えば、和服の着付けが出来る、とか?」
穂乃香「確かに何故か出来そうな気がしますね。呉服屋の娘と言われても納得出来ます」
あずき「なんで?! うー、でも和服かぁ」
あずき「和服、お色気……いや、でも……うーん……」
柚「……悩み出しちゃったし、先に行こっか」
穂乃香「そうですね、茄子さんも行ってしまってますし」
忍「あずきちゃん、先行ってるからね」
あずき「はーい……」ムムムム
?「ほー?」
129 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 14:27:49.73 ID:nb06cNBw0
?「お悩みでしてー?」
あずき「わぁ?!」ビクゥ!
あずき「え、だ……誰?!」
?「そなたの妹――」
あずき「はぁ?!」
?「――のようなものかも知れませぬー」フフッ
あずき「……え、あ、からかわれた?!」ガーン
芳乃「依田は芳乃と申しましてー」
あずき「は、はぁ」
芳乃「小学生ではありませぬよー」ニコッ(←151cm)
あずき(あ、すっごく親近感湧いた)パァッ(←145cm)
芳乃「それではー、わたくしは先を急ぐのでー」
トテトテ…
あずき「へ」ポツーン…
あずき「――な、何だったんだろ……」
あずき(今の人、和服だったなぁ。可愛かったなぁ)
あずき(……勉強してみようかな)
あずき「ん、あれ、そう言えば――あの人、何者?」
130 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 14:35:05.55 ID:nb06cNBw0
金倉「ひひひひ……よもや千年アイテムがここで手に入るとは」
金倉「もう閉館時間も近い、そろそろあの小娘も来るだろう」
金倉「そこで、ぽんと七桁くらいの金額を提示する――」
金倉「たったそれだけで世界的な名誉が手に――ひひ、ひひひひひ」
金倉「さぁさっさと来い小娘、その瞬間に栄光の日々が約束される……」
芳乃「お探しの小娘とは芳乃のことでしてー?」
金倉「は? ……?!」ガタッ
金倉「きっ、貴様! いつからそこにいた!」
芳乃「たった今入ったのでしてー」ニコッ
金倉「ううう嘘を吐くな! この部屋唯一の出入口の正面に座っている人間の目をすり抜けて入れる筈がないっ!」
芳乃「……ほー。つまりここを塞げばそなたは出られない、と」ガチャリ
金倉「な、な――?! っ、何が目的だ!」
芳乃「真実の羽根を置いたこの天秤が傾かないならばー、わたくしはそなたを試さなくてはならないのでしてー」
千年秤「」ゴゴゴゴゴゴゴゴ…
金倉「た、試す? 何を試すと言うんだ」
芳乃「そなたが闇の知恵を束ねる者たるかをー」ニコニコ
芳乃「さあ――『正直にお答え下さいますよう』」
131 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 14:43:00.09 ID:nb06cNBw0
ホータールノーヒーカーァリー
スミマセン…ヘイカンジカンデス…スミマセン…
あずき「はぁっ、はぁっ」
あずき「会長さーん! 遅れてすみませーん!」ガチャガチャ
あずき「嘘ぉ、鍵掛かってる……会長さーんっ!」ドンドン
芳乃「会長さんはもうおりませんよ−?」
あずき「ひゃああ?!」ビクゥ!
あずき「びっっっくりしたぁ……あ、芳乃さん?」
芳乃「はいー、芳乃と申しましてー」ニコッ
芳乃「何か失せ物でしてー?」
あずき「なくしたんじゃなくて貸してたと言うか……」
あずき「あの、これくらいの、逆三角錐形のペンダント知りませんか?」
芳乃「……」
芳乃「これのことでしてー?」ジャラ…
あずき「そう! それ!」
芳乃「『正直にお答え下さいますよう』。本当でしてー?」
あずき「えっ、そうだけど……」
芳乃「……。ほー。では――」
『ガチャリ』
132 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 14:49:57.66 ID:nb06cNBw0
芳乃(これは……!)
芳乃(心の部屋が区切られている方は何人か見てきましたが……)
芳乃「部屋が『二つ』ある方は初めてなのでしてー……」
芳乃(一方は――まだ幼い、遊具が散乱した部屋)
芳乃(しかしもう一方は……これは……)
芳乃(……行くしか、ない、ですがー……)
ギィィィィィィィ…
あずき?「おーい☆ 何しに来た?」
バタンッ!
芳乃(――! 退路を断たれた!)
ぴぃち「あ、このあずきのことはちゃんとぴぃちって呼べよ?」
ぴぃち「んでんで、よっちゃん? 何しに来た? 言ってみ☆」
芳乃「……では質問を。そなたが『闇』でしてー?」
ぴぃち「呼べっつったろ☆ 泣くぞ☆ 年甲斐もなく☆」
ぴぃち「んー、闇ねぇ……そうかも。考えたことなかったけど」
ぴぃち「ぴぃちとあずきは別人! うん、それがすっきりしてるな♪」
芳乃「ほー。――ならば、わたくしの用は済んだのでしてー」
ぴぃち「まぁまぁ、茶でも飲んでけよ☆」グイグイ
芳乃「け、結構でしてー。やっ、は、離して……っ」アセアセ
133 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 14:57:56.28 ID:nb06cNBw0
芳乃「ゼェ…ゼェ…」ガクッ
芳乃(イヤな予感が的中したのでしてー……)
芳乃(扉を開けなければ……結果論ですがー……)
あずき「え、と。大丈夫ですか?」
芳乃「お気遣いなくー……」ニコッ
芳乃(力を量るつもりが量られただけ――)
芳乃(これは日を改めて再戦せねばー……)
芳乃(……お茶ばかりたらふく飲まされた私怨も込めて)ケプ
芳乃「ふぅ……、む?」
あずき「?」
芳乃「もう一つ、お尋ねしてもー?」
あずき「うん、何?」
芳乃「その胸は生まれつきでしてー?」
あずき「特に変わったことはしてないかな」ドタプーン(←B80)
芳乃「ほー……」ストー…ン(←B73)
芳乃「……くっ」ペタペタ
芳乃(私怨も込めて!)
芳乃「これはお返ししましてー。それではまた後日ー」トテトテ…
あずき「?」キョトン
134 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 15:07:42.03 ID:nb06cNBw0
あずき「今朝の新聞読んだ?」
柚「読んだ読んだ。全国紙の一面に載るなんてね」
柚「おかげで親に読まされたよー。普段は読まないケド」
柚「あれでしょ。金倉会長の『惨殺事件』」
あずき「うん……凄い状況だったってお姉ちゃんが言ってた」
柚「そっか、関係者だから遺体を見たんだね」
あずき「見たから、あずき達には見せないように警察の人達にお願いしたみたい」
柚「……どんなだったの?」
あずき「えっと……あくまでお姉ちゃんの感想だけど」
あずき「『人間業じゃない。人間なら、あんな事は出来ない』」
柚「……」ゴクリ
あずき「原型を留めないくらい……『潰されてた』、って」
柚「……解った、もういいや」
あずき「あ、でも」
柚「で、でも?」
あずき「うん、怖いのと同じくらい変だって言ってた」
あずき「だって――傷痕も血痕も、一つも見つからなかったらしいから」
135 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 15:14:20.39 ID:nb06cNBw0
あずき「ところで穂乃花ちゃん」
穂乃香「」ボー
柚「穂乃香チャーン」ユサユサ
穂乃香「」ガックンガックン
柚「へんじがない。ただのほのかのようだ」
穂乃香「……名前を平仮名で書かないで下さい……」
柚「お。治った」
あずき「そんな壊れたTVみたいに……」
柚「どしたの? 話に入ってこないの?」ムニムニ
穂乃香「ひのふひゃんぁひなぃふぁあへふ」
あずき「柚ちゃん、ツッコミが不在だからストップ」
柚「へーい」パッ
穂乃香「ぷぁっ。忍ちゃんがいない生活なんて……」ズーン
柚「もけもけとどっちが大事?」
穂乃香「……勿論、忍ちゃんです」
あずき「その間は何」
穂乃香「それはそうと」
柚「強引だねぇ」
穂乃香「今朝、こんな矢文が机に刺さっていたのですが」スッ
あずき「時代はいつなのかな?」
136 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 15:29:09.32 ID:nb06cNBw0
柚「ええと、……これ何語?」パラッ
穂乃香「英語ではないですね。仏語でもないでしょう」
穂乃香「イタリア語……ロシア語……どれも違うでしょうね」
柚「流石、バレエやってるだけあって詳しいね」
穂乃香「教養も必要ですから。……あずきさん?」
あずき「へっ?」
穂乃香「どうかしましたか?」
あずき「い、いや……読めないなぁ、って思って」ハハハ…
柚「だよねー」
あずき(どうしよ、なんで読めるの?!)
あずき(『今晩零時に体育棟の体育館で待っています』)
あずき(『誰にも報せずに来て下さい。もし来なかったなら』――)
あずき(『そなたのご友人は会長さんと同じようになるでしょう』)
あずき「……」ピポパ
『おかけになった電話番号は――』
あずき(体育館は日中に使われることを考えてもどこかに攫われてるとしか思えない)ピッ
あずき(下手に通報なんかしたら警察が着く前に殺される――っ)
あずき(行くしかないんだ。私が、一人で)
137 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 15:39:29.69 ID:nb06cNBw0
ギッ…ギィィィ…
あずき「や、や、約束通り、一人で来たよ」ガタガタ
芳乃「お待ちしていたのでしてー」ニコッ
あずき「――! 会長さんを殺したのもあなたが?!」
芳乃「はてー、会長さん、でしてー?」
あずき(まるで関心がない……?!)ゾッ
芳乃「……しかし、それも過ぎたことゆえー」
芳乃「今はただ、そなたの技量のみがわたくしの関心事でしてー」パチンッ
忍「――」
芳乃「この方を賭けてゲームをしましょうー」ニコニコ
あずき「しっ、忍ちゃん!」
芳乃「少々、心から光を奪わせて戴きましてー。今の彼女は」
忍「――」
芳乃「物言わぬただの人形、人間ではないのでしてー」
あずき「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
芳乃「……さぁ」
カッ!
ぴぃち「――ゲームの時間だぞ☆」ゴゴゴゴゴゴ…
138 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 15:46:09.37 ID:nb06cNBw0
芳乃「古代エジプトにおいて死とは楽園への旅立ちとされましたゆえー」
芳乃「葬送の際は死者を護るための数々の品が納められましたー」
芳乃「ゆえに、今も多くの当時の品が出土するのでしてー」
芳乃「勿論、ゲームも」
ぴぃち「……《セネト》。盤雙六か」
芳乃「ご明察でしてー」ニコッ
芳乃「最強決闘者の決闘は全て必然。賽の目さえも定めなのでしてー」
芳乃「――さて。『これ』」スッ
芳乃「何でしょう?」
ぴぃち「は? ……え、骨?」
芳乃「またもやご明察でしてー。そう、これは左大腿骨。……『彼女の』」
ぴぃち「――なっ?!」
芳乃「今、彼女の首には縄を、両手足には枷を、二階観客席の柵に通して嵌めておりましてー」
芳乃「つまり一度敗北する度に骨を一つ抜いていきますとー、三回目で全ての枷が緩んで『首吊り』になるのでしてー」
芳乃「勝負はセネトの三回勝負、一度でもそなたが勝てば今日のところはよしとしましょうー」
芳乃「しかし、そなたがもし逃げたり、勝負が決する前に彼女を助けようとしたりすれば――」
芳乃「ふふ、お解りのようでしてー?」ニコッ
139 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 15:56:23.68 ID:nb06cNBw0
芳乃「セネト、別名ナイル・ギャモンの説明をいたしましょうー」
芳乃「使用するのは縦に三マス・横に一〇マスの『盤』と三本の『棒』、そして五つの『駒』を二種類」
芳乃「棒は表裏が判ればコインでも構いませぬがー、今回は古式に則りこれをー」パラッ
ぴぃち(紅白に塗り分けた指関節……悪趣味な)チッ
芳乃「互いのプレイヤーは盤面左上からZ字を描くように駒を進めましてー、三十マス目に到達させて駒を全て『あがり』にすることを目指しますー」
芳乃「初期状態は先攻側の駒から交互に一から一〇のマスへ駒が配置されましてー」
芳乃「手番毎に駒を一つ選びましてー、棒を振って出た表の数だけその駒を進めるのでしてー」
芳乃「なお、今回は『零』の出目を『四』といたしますー」
ぴぃち「進んだ先に駒がいる場合は?」
芳乃「その場合は動けませぬー。但しー、『それが相手の駒で、且つその駒に相手の他の駒が隣接していない場合』に限りー、その相手の駒を一のマスへ置いてから進めるのでしてー」
芳乃「このような『駒の同居』はー、一のマスと二六のマスのみの例外でしてー」
芳乃「二六のマス以降は処理が特殊になりましてー」
芳乃「二六のマスは『とまれ』のマス、必ず止まるのでしてー」
芳乃「二七のマスは『戻る』のマス、止まった駒は一五のマスへ戻るのでしてー。但し、一五のマスに既に駒がある場合は一五ではなく一のマスへと戻りますー」
芳乃「そして三〇のマスは『あがり』のマス、到着した駒は盤外へ行くのでしてー」
芳乃「なお、三〇のマスへは丁度到着する値を出さねばなりませぬー。超過する場合は進めないのでしてー」
芳乃「また、二八・二九のマスに駒が既にいる場合、進むマスはその次のマスとなりますー」
芳乃「無論、これで進んだ先が三〇のマスを超過するならばー、その駒は進めませぬー」
140 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 16:03:54.17 ID:nb06cNBw0
芳乃「ちなみにセネトは死者の書に対応するのでー、マスにはそれぞれの家(ペル)としての名前がありましてー」
芳乃「例えば駒を押し流す二七のマスは『水の家』、ナイル川を表すのでしてー」
芳乃「ではではー。そなたが逃げ出せぬようにー」スッ
『ベコッ』
ぴぃち「う……っ?!」ドサッ
芳乃「彼女と同じように左大腿骨を痛みなく抜いただけなのでしてー?」ニコニコ
芳乃「それでは一回戦。負ければ彼女とそなたの右大腿骨を抜き取るのでしてー」
芳乃「……ふむー、もし三回負けたら彼女は死ぬのですしー……」
芳乃「その時はー、そなたの頭蓋骨を戴くのでしてー」ニコッ
ぴぃち「……!」ゾクッ
ぴぃち(ちっくしょ、下に見やがって……っ!)
ぴぃち「逃げ出すワケねーだろ☆ こっちはいつでも崖っぷちだかんな☆」
芳乃「ほー。ならば――」
ザァアァァァアアァ…
ぴぃち(体育館の床面に『マス』と『駒』が浮き出た――!)
芳乃「ターコイズの魂(カー)とオニキスの魂。お好きな駒をー」ニコッ
ぴぃち「……オニキス!」
芳乃「ならば先攻はお譲りするのでしてー」ニコニコ
ぴぃち(必ずっ、必ず助けるからなっ、忍っ!)
141 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 16:09:32.78 ID:nb06cNBw0
柚「……んー」ゴロン…
柚「今何時っ。そーね大体……うわ、もうすぐ一時って」
柚「あー、駄目だー。全っ然寝られない」ムクリ
柚(……なーんか引っかかるんだよねぇ)
柚「――眠くなるまでデッキでも見てようかな」
パチパチ…シャッシャッ…
柚「ドロー! おっ、いい手札」
柚「霊廟使って真紅眼落として〜、更に黒石を〜」ヒラッ
柚「おっとと、落ちちゃった」テヘペロ
柚「むー、このスリーブ滑り易いのカナ?」
『無力の証明』
柚「……」シャッシャッ
柚「ドロー」
柚「……もっかいシャッフル」シャッシャッ
柚「ドロー」
柚「……」
『無力の証明』
ギシッ
142 :
◆iv1d32We2.
[saga]:2018/02/25(日) 16:17:54.86 ID:nb06cNBw0
芳乃「左上腕骨」スッ
『ベコッ』
ぴぃち「っ、ふ、っあ……!」
芳乃「これでわたくしの二勝。後はないのでしてー?」
ぴぃち(や、ヤバい、かも……)ガクガク
ぴぃち(棒を振るための右腕しか使えない今、忍がどうなってるのかは確認出来ない)
ぴぃち(何よりこの倒れた姿勢じゃ――っ!)
芳乃「さぁ、またそなたが先攻ですー」ニコッ
ぴぃち「――っ、まだまだ……っ! 九の駒!」
コロコロカラン…
ぴぃち「出目は『一』、一〇の駒を一マス目、トトの家に戻して駒を進める!」
芳乃「ほー。ではわたくしは六の駒をー」
ぴぃち「?!」
コロコロカラン…
芳乃「出目は『四』、そなたの一〇の駒をトトの家に戻すのでしてー」ニコッ
ぴぃち(こ、コイツ、何の躊躇いもなく博打手を……っ!)
ぴぃち「――七の駒!」
143 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 16:24:08.52 ID:nb06cNBw0
カタカタ…
穂乃香「……ふぅ。もう一時過ぎですね。そろそろ寝ないと……」
穂乃香(皮膚の構造――蛋白質――骨を溶かす薬品――)
穂乃香(状況についての話からして骨『だけ』抜かれたと考えられましたけど)
穂乃香「調べた限り、確かに人間業じゃない……ですね」
穂乃香(骨抜き、夢中、博打……イカサマ。そう言えばあの時――)
『アンタのお姉ちゃんがイカサマをした罰だよ』
『じゃあさ、『魂のカード』を賭けてゲームしよっか』
穂乃香(美嘉さんと話していたのは『誰』だった?)
穂乃香(黒服さんを手も触れずに気絶させたのは――)ハッ
穂乃香「『手も触れず』?」
穂乃香「まさか――!」
『ただいま留守にしています――』
穂乃香(……!)
穂乃香(間違いない、『犯人』がいる!)
穂乃香「そしてこんなメッセージがあるということは――!」
『――あずきは救出大作戦決行中です。場所は』
穂乃香「……解りました。今、行きます」
144 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 16:29:47.58 ID:nb06cNBw0
芳乃「五の駒を選びましてー、出目は『二』、七へ進めるのでしてー」
ぴぃち「う……っ」
〜現在の盤面〜
ぴぃち:1,3,8,9,13
芳乃:1,1,6,7,18
ぴぃち(でも大丈夫、三さえ出なければ八番が安パイ……)
ぴぃち「八の駒、出目は……『一』。移動しない」
芳乃「ではー、一の駒を選びましてー。出目は――『四』」
ぴぃち(ブロックが更に大きく……っ!)
ぴぃち「八の駒! 出目は――」コロコロ…
ぴぃち「――あ」
芳乃「『三』。一一へ移動でしてー?」
ぴぃち(不味い、不味いっ!)サァッ
芳乃「七の駒、出目は――『四』。一一の駒を戻すのでしてー」ニコニコ
ぴぃち「〜〜〜〜っ、九の駒!」
ぴぃち(勝たないと――!)コロコロカラン…
ぴぃち「……出目は……『四』。移動、なし」
芳乃「一一の駒を選びましてー。出目は――『二』。十三の駒も戻すのでしてー」
145 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 16:37:25.34 ID:nb06cNBw0
ぴぃち(どうして? なんで……? 勝ちが、見えない)ガクガク
ぴぃち「――。一の駒を選択」
ぴぃち(勝たないといけないのに、友達の命も掛かってるのに)
ぴぃち「出目は『一』。……二へ進める」
芳乃「わたくしも一の駒を選びましてー」
コロコロカラン…
芳乃「出目は『三』。四まで進みましてー」
〜現在の盤面〜
ぴぃち:1,1,2,3,9
芳乃:4,5,6,13,18
ぴぃち(こんな、殆どプライムみたいな状態に追い込まれて――っ!)
芳乃「……そなたー?」
芳乃「ねーねーそなたー? やめるのでしてー?」
ぴぃち(……ぴぃちが犠牲になれば満足して忍を解放するかも知れない)
ぴぃち(未来ある少年少女のため、ぴぃち、散りますっ! なんつって)
ぴぃち(――もう、それしか……)ガクガク
?「レットーーーーーーーーっ!」
ぴぃち「……え?」
146 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 16:43:35.66 ID:nb06cNBw0
柚「ふぃー、まさかこんなトコとはねー」
芳乃「?!」アワアワ
芳乃「かっ、加勢を呼んだのでしてー?」
柚「火星? 【代行天使】なんて使わないけど?」
ぴぃち「どうしてここが……」
柚「んー、なんとなく?」
?「――ということはあの留守電を聞いたのではないんですね」ハァ
柚「おろ? こんな深夜にどしたの、穂乃香チャン」
穂乃香「勿論、救出大作戦に加わるためです」ニコッ
ぴぃち(おーい☆ ぴぃちに無断で何してんだよご主人サマ☆)
ぴぃち「まったく……。……んふ☆ ありがと♪」ウルッ
ぴぃち(そう、諦めたらいけない――!)
ぴぃち「ゲームは続行するぞ☆」ドン☆
柚「うわ、よく見たら手足ヤバいよ? 肩貸そっか?」
穂乃香「しっ、忍ちゃんがぁぁ?! 私っ、行ってくるっ!」タタッ
ぴぃち「んもー、優しいなコイツ等☆」
柚「その口調どうにかならない……?」
芳乃「っ、ふー……。続行、ならばー。その意思を受け入れましょうー」
芳乃「そなたの手番なのでしてー」ニコッ
147 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 16:56:44.08 ID:nb06cNBw0
ぴぃち「九の駒に行動判定!」コロコロカラン
ぴぃち「出目は『四』! 一三の駒を戻す♪」
芳乃「一八の駒を選びましてー、出目は『三』、二一へ進むのでしてー」
ぴぃち「一三の駒に行動判定! 出目は――『四』!」
芳乃「……二連続……?」
ぴぃち「一三から一七へ移動っ☆ っあ」ガクンッ
柚「もうっ、ちゃんと掴まりなってー」
柚「何だか知らないけど振るならアタシがやろうか?」
ぴぃち「いいや、『これでいい』」ニタァ
芳乃「……二一の駒を選びましてー、出目は『二』、二三へ進めるのでしてー」
ぴぃち「一七の駒に行動判定! 出目は――」コロコロカラン
芳乃「……三連続!」
ぴぃち「二一へ移動! 二三も射程圏内だぞ☆」ニタニタ
芳乃「ぐ、二三を選びましてー……三以上で逃げ切れる……」コロコロカラン…
芳乃「……『三』。ほー……二六の『幸福の家』へ進むのでしてー」
芳乃「これで三の駒に四の目が出るまでは――」
ぴぃち「三の駒に行動判定。運命力で出目は当然!」コロコロカラン
芳乃「〜〜〜〜っ?! よ、よ、四連続……?!」
148 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 17:04:26.15 ID:nb06cNBw0
穂乃香「脚が折れて――いや、骨が抜かれているんですね」
穂乃香「枷は外れませんし、下手に触ると首が……」
忍「ぅ、うん……?」パチリ
穂乃香「! 忍ちゃんっ!」
芳乃(わたくしの動揺が伝わって“暗黙模様”が解けた――?!)
忍「え、きゃあああああ?! 何これ! どこ?! うわ高っ!」
忍「あああああすっっごく変な感覚する! 気持ち悪っ! え、今アタシの手足どうなってんの?!」
穂乃香「落ち着いて下さい! ええと、ええと、『もけもけ』見ますか?」
忍「そんな場合じゃないってぇぇぇぇぇ!」ウルウル
ぴぃち「どしたどした? さっさと振れよ、よっちゃん」
芳乃「――はっ」ビクッ
芳乃「ろ、六の駒を選びましてー、出目は――『三』。九へ進むのでしてー」
ぴぃち「一の駒に行動判定。出目は――『二』。三に移動する!」
芳乃「五の駒を選びましてー、出目は――」コロコロカラン…
ぴぃち「『四』。動けないな、残念☆」ニタァ
芳乃(二六を選んでいれば――!)
ぴぃち「次のぴぃちも『二』を出すぞ☆」
ぴぃち「七の駒に行動判定。出目は宣言の通り!」コロコロカランッ
芳乃「――『二』!」
149 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 17:14:23.35 ID:nb06cNBw0
〜現在の盤面〜
ぴぃち:1,2,3,9,21
芳乃:1,1,4,5,26
芳乃「追い、つかれた……?!」ワナワナ
芳乃「そっ、そなたっ、一体何を……イカサマでしてー?」
ぴぃち「そうじゃないのでしてー」ニタニタ
ぴぃち「強いて言うならぁ、年季の差?」
ぴぃち「『棒を投げて狙った面で止める練習』をしたことがあればその経験則で出来るんだよねー」
ぴぃち「今までは骨を抜かれて這いつくばった状態だったから出来なかったけど」
ぴぃち「だからこれは柚が来たお・か・げ☆」バチコーン☆
柚「うわキツ」ススス
ぴぃち「おいコラ引くなー☆ いやマジで。転ぶ、転ぶから」アセッ
芳乃「そんな経験を一体何で――」
ぴぃち「あちゃー、これが世代間格差?」
芳乃「同世代でしてー」シラー
ぴぃち「――バトエン、って知ってる? 昔流行ったんだけど」
芳乃「!」
150 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 17:19:21.13 ID:nb06cNBw0
柚「そっか、あずきチャン家のゲーム屋って懐古趣味だったっけ」
ぴぃち「いやー懐かしいね。まだお肌に潤いがあった頃……♪」
柚「だから同世代だよね?」シラー
ぴぃち「そーゆーワケだから、もうこの勝負は相手が悪い」
ぴぃち「で、どうするよ、よっちゃん。ぴぃちと同じくらい出目を操れるならいい勝負出来るぞ☆」
芳乃「いえ……うぅ、敗因が経験の差だなんて……」ズーン
ぴぃち「んー、それは違うかなー」
ぴぃち「支えてくれる人、守らなきゃいけない人、守ってくれる人がいるからぴぃちは勝てる状況にある」
忍「!」
穂乃香「!」
柚「へへ……」テレッ
ぴぃち「これは友情の力。ぴぃち一人の力じゃないんだぞ☆ だぞ☆」
芳乃「……完敗でしてー」パチンッ
忍「ひゃっ。ぉあ、骨がある……むぎゅ?!」キュッ
穂乃香「首! 首の縄はまだ解けてませんから!」アセアセ
ぴぃち「……警察に行くって感じじゃないし、最後に訊いとくか」
ぴぃち「アナタ、何者?」
芳乃「――ふふっ。依田の芳乃はそなたの妹のようなもの、でしてー」ニコッ
ザァアァァァアアァ…
151 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 17:29:04.39 ID:nb06cNBw0
ぴぃち「ちっ。まばたきしてる間に消えたか」
穂乃香「縄が解けましたよ――忍ちゃん?」
忍「穂乃香ちゃんっ!」ヒシッ
忍「こっ、怖っ、怖かった、よぉぉぉ……!」ポロポロ
穂乃香「よしよーし」ナデナデ
柚「穂乃香チャン、よだれ」
穂乃香「」ジュルッ
ぴぃち「――さ、帰るか☆ そろそろ忍の失踪届が出てるだろうし☆」
ぴぃち「あー、変なトコの筋肉使ったから筋肉痛恐いなー」スタスタ…
柚「待って、あずきチャン――今は『ぴぃち』だっけ?」
ぴぃち「……」
柚「……ありがと」
ぴぃち「正体は気にならない?」
柚「正体も何も、ぴぃちチャンでしかないでしょ?」
ぴぃち「さぁ……どうだろうね」スタスタ…
ぴぃち「そこんとこはぴぃちも分かんない☆」キュルーン
三人『うわキツ』
ぴぃち「声揃えんなぁぁぁぁぁぁぁ……!」ビエーン
忍「……行っちゃった……ふふっ」グスッ
152 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 17:30:04.39 ID:nb06cNBw0
〜作戦7〜
153 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 17:37:54.52 ID:nb06cNBw0
紗南「あずきーっ! こっちこっち!」
あずき「ごめんね紗南ちゃん、遅れちゃって」
紗南「大して遅れてないって。でも制服着替えるの面倒だよねー」
あずき「学生って目立つから仕方ないよ。だからこれは変装大作戦?」
紗南「いのちだいじに、ってね」
紗南「――あ。ところで柚は? 遅れるの?」
あずき「えっと、その、残念ながら」
紗南「もしかして今回のテスト……」
あずき「だけなら反省文だけで済んだんだけどね」ハァ
あずき「聞いたところだと反省文書いた後で先生待ってる時にヨーヨーやってたらしくて」
あずき「ストリングプレイスパイダーベイビー! って決めた瞬間にマストレ先生に見つかったとか何とか」
紗南「うわぁ……」
あずき「そんなワケだから今日は二人だね」クスッ
紗南「何やってんだかあの子は……」
紗南「……よし、気を取り直して行こっか。新しいのが見つかったら互いに連絡取り合うこと!」
あずき「らじゃ!」ピシッ
二人『作戦開始っ!』
154 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 17:44:06.22 ID:nb06cNBw0
あずき「この辺りのクレーンゲームってスカスカだなぁ」テクテク
あずき「入荷が遅れてるのかな? 店員さーん」
店員「はい?」
あずき「あの、ここに普段入れてる景品って何ですか?」
店員「はい、ええと……ぬいぐるみですね」
店員「すみません、ただいま景品の在庫がない状態で」
あずき「在庫が――ってことは元はあったんですか?」
店員「ええ、どうも上手い方がいらしたようでして」
店員「今回はM&Wシリーズのもけもけドールだったんですが」
あずき「あっ(察し)」
あずき「分かりました、ありがとうございます」
店員「」ペコッ…スタスタ…
あずき「何根こそぎ取っていってるの穂乃香ちゃん……」
あずき「でも、そっかぁ、じゃあこの辺りに目新しいのはないか……」
prrr…
あずき「おっと。えー、なになに。『今すぐカプセルトイ・エリアに集合』……? 何かあったのかな」
あずき「了解、っと。送信!」ピッ
155 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 17:52:57.07 ID:nb06cNBw0
あずき「ん、何だか甘い匂い」クンクン
紗南「……ぐ」カチカチ
あずき「おっ、紗南ちゃん発見。で、あの筐体は……?」
『Aムシキング』
あずき「何それ……」
紗南「っがぁぁぁぁぁ負けたぁぁぁぁぁ!」
紗南「――と、間に合ったんだね」コイコイ
あずき「え、なんで私呼ばれたの?」
紗南「いやぁ、今やってたこの子が強くてさ。是非とも代わりにリベンジしてもらおうかな、と」
あずき「自分でリベンジしなよ……」
紗南「予算分の100円玉使い切った」
あずき「え……そんなに負けたの?!」
紗南「流石に怪しいでしょ?」ヒソヒソ
あずき「あぁ、成程。不正を曝け大作戦だね」ヒソヒソ
?「む、あの顔はお姉ちゃんと……ねぇねぇ、桃井あずき、だよね?」
あずき「ぅえ?! ななっ、なんで知ってるの?!」
莉嘉「矢っ張り。美嘉お姉ちゃんと最後に話してた奴だ」
156 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 18:01:23.09 ID:nb06cNBw0
あずき「美嘉――『お姉ちゃん』?」
莉嘉「莉嘉の自慢のお姉ちゃんなんだ☆ 最近は忙しくて話せないけど」
莉嘉「ねぇ、アタシと勝負してみない? お姉ちゃんに勝ったって本当なのか気になるんだー」
客「えっ、あの子ってあの美嘉さんに勝ったの?!」ザワザワ…
あずき「え、ちょ」
紗南「あちゃー……これは逃げられないね」
あずき「そ、そんなこと言われてもこのゲーム知らないよ? 新旧の甲虫王者ならまだ兎も角……」
莉嘉「大丈夫、開発はKCだけど基本的にはセガと変わらないから」
莉嘉「アタシ左利きだから1Pねー」
紗南「いやルールくらい教えさせてよ」
莉嘉「ダメ。座って」
黒服「失礼」
あずき「ひゃ?! わぷっ」ストン
紗南「うわぁ……流石はアパレルを軸に全宇宙的展開をするKC社長の実妹。強引だなぁ」
紗南「……黒髪にして何年かしたらセーラー服が似合いそう」ボソッ
莉嘉「やりながら周りから説明受けてね。勝負は三回マッチ、二本先取で勝ち」
莉嘉「負けたらここにいる人達にケーキを買ってくる。はい決定☆」
157 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 18:09:22.81 ID:nb06cNBw0
あずき(うーん……取り敢えず見て判るのは)
あずき(新旧ムシキングのジャンケンのボタンは完備。でもガジェを置く場所が空白になってる。レバーは一人一つ?)
あずき(カードの取り出し口が薄くて小さい。多分シールくらいしか出て来ない)
あずき(筐体のすぐ横に真っ白なカードがある。多分電子カード。――これくらい?)
\A(アドバンスド)ムシキング!/
あずき(あ、そう読むんだ……)
紗南「ええと、先ずこのキャラの中から一人選んでPCにして」
あずき「ふむふむ。じゃあ、この『羽田リサ』にする」ポチッ
あずき「わ、いっぱいムシの画像が出てきた」
紗南「ここから使うムシを選ぶんだ。どうやらこのゲームのムシはきちんと寿命があるっぽくて」
あずき(美嘉さんのリアル志向が反映されてる……のかな?)
紗南「毎回ランダムに表示されるムシから選ぶことになってる」
紗南「このムシは対戦後にシールになって出てくるだけで引き継ぎも出来ないっぽい」
あずき「ええっ、じゃあ運ゲーなの?!」
莉嘉「課金すれば何度でも抽選し直せるよー」ニシシ
あずき(リアリストだ……)
158 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 18:18:45.30 ID:nb06cNBw0
紗南「能力値の増強については『パーソナルカード』を使うから正直どれ選んでも同じだけどね」
あずき「『記録カード』とは違うの?」
紗南「こっちはムシバトラーとしての経験値を記録する、ってコンセプトみたい」
紗南「過去のデータを利用して『カリスマ性』強化、なんてのも出来る。さっきやった時に確認した」ヒソヒソ
紗南「正直、カードの経験値の要素は出す手と等価かそれ以上だよ」
あずき「うむむむ……」
莉嘉「ねーまだー? あと七秒で画面変わるよー?」
あずき「わわっ、えーとえーと……じゃあこの子っ!」ポチッ
羽田リサ『サビイロカブト』
莉嘉「アタシはこのムシ!」ポチッ
歌田オト『ニジイロクワガタ!』
あずき「言い方のテンションの差っ!」ガーン
紗南「おおぅ、熱い差別ぅ……」
パッ
あずき「あ、画面変わった」
紗南「やばっ、早く説明終わらせないと」
159 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 18:29:08.73 ID:nb06cNBw0
紗南「舞台はこの画面に出てる近未来都市・ネオハネダシティだよ」
あずき「随分殺伐とした近未来だね」
莉嘉「そりゃサテライトだからねー♪」
あずき「『サテライト』?」ハテナ
紗南「作品世界での呼び名だから気にしないで。で、肝心のジャンケンだけど――」
『START!』
あずき「なんか始まった?!」
紗南「レバーでフィールド上の『アクションマジック・カード(AC)』を拾い集めて!」
あずき「わ、解った」カチャカチャ
紗南「拾ったACの手は手元の画面に表示される」
あずき(あー、そのための空白かぁ)カチャカチャ
紗南「時間になるとシティでムシバトルが始まるんだけどね」
紗南「ジャンケンでは拾った『手』しか出せなくて、その威力は重複して持っている『手』ほど大きくなる性質があるみたい」
紗南「ルールとしてはこれで終わりかな」
紗南「……ルールとしては」
あずき「?」
『TIME UP!』
160 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 18:33:18.04 ID:nb06cNBw0
莉嘉「行っけー! ニジイロクワガタ!」
ドスゥゥゥゥゥゥゥ…ン
ギャオオオオオオオオオ!
あずき「――えっ、何この怪獣大決戦。東映?」ポカーン
莉嘉「ムシバトルだよ☆」
リサ『頑張って!』
あずき(と、とにかく基本的にはジャンケンなワケだし)
あずき(拾えるカードの手はランダムなことを考えると、受けた攻撃の威力から相手の手の割合を予測して)
あずき(『マストカウンターで』勝つ。これが多分堅実なやり方)
手持ちの『手』:グー×3,チョキ×2,パー×7
あずき(最初は様子見のチョキだね)ポチッ
――2P・あずき:チョキ vs グー:莉嘉・1P――
莉嘉「よしっ」ガッツポ
――サビイロカブト:ゲージ20%減少――
あずき「これって多い方?」ヒソヒソ
紗南「まだ少ない方だね。ほぼ一撃必殺、とかあるし」ヒソヒソ
あずき(なら基本10%+残り枚数の差分×(5×2)%、くらいかな……?)
あずき(ってことは『グー』をもう持ってない筈)ニヤッ
161 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 18:37:36.08 ID:nb06cNBw0
あずき「勝ったー!」
莉嘉「……っ」ジワッ
紗南「大人げないからやめなさい」
あずき「はーい」
莉嘉「まだ二回戦があるもん」
あずき「よーし勝つぞ勝つぞー!」
莉嘉「……」
莉嘉「負けないから」ギラッ
紗南「っ」ビクッ
紗南(そうだ、さっきもこの言葉の後に――)
『START!』
あずき(このサテライトってとこ、全体的に世紀末的というか何というか)
あずき(鉄くずが散らばってて死角が多いマップだね。それがあるから対戦モードが成立するんだろうけど)カチャカチャ
あずき(かたやジャンクでかたや高層ビルかぁ、今回のマッチングそのものみたい)カチャカチャ
あずき「――ん、あれ……」
あずき(『チョキ』しか拾えてない……?)
莉嘉「……」カチャカチャ
162 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 18:42:55.35 ID:nb06cNBw0
あずき(ゲーム性を損なうから偏り過ぎることはないと思ってたけど違うのかな?)チラッ
あずき(散らばってるACを裏側から判別する方法がある、とか)カチャカチャ
あずき(――またチョキだ)
あずき(むぅ。こうなったらプロジェクトA! 莉嘉ちゃんの行く先へ先回り大作戦だよ!)
あずき(……Aは、あー……aheadのAかな、うん)カチャカチャ
あずき(死角に潜り込んで――今だっ!)
『TIME UP!』
あずき「あぁーっ?!」
あずき(やっば、これは……しかも動揺してるのまでバレた!)
手持ちの『手』:チョキ×9
あずき「――くぅ」ポチッ
――2P・あずき:チョキ vs グー:莉嘉・1P――
オト『やったぁ! 必殺技だ!』
『G.B.S.R.!』
――サビイロカブト:ゲージ100%減少(敗北)――
あずき「え……嘘ぉ?!」
163 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 18:47:38.08 ID:nb06cNBw0
あずき(一回戦をやった経験でさっきの計算が合ってることは確認した)
あずき(だから残り8枚チョキを持っている相手に100%以上のダメージを与えるには)
あずき(100=10+(X-8)×5でX=10、つまりグーを11枚以上拾う必要がある)
あずき(拾える『手』の種類が全部等確率、且つ莉嘉ちゃんもグーしか拾えてなかったとしても)
(1/3)^(11+9)=2.867971991…×10^-10
あずき(0.00000003%。あり得ない――それこそリアルからかけ離れた数値になる!)
莉嘉「勝つんだ……」
あずき「!」
莉嘉「アタシは勝つんだ……!」キッ
莉嘉「行くよっ、三回戦! 莉嘉が強いってことを見せてあげる!」
あずき「……どうしてそこまで……」
あずき「ううん、やるからには勝ちたいのは当たり前だよね」
あずき「でも私も――あずきも、諦めるつもりはないよ」カッ!
ゴゴゴゴゴゴ…
紗南「雰囲気が――あ、あずきちゃん?」
あずき?「あーい☆ でもぉ、ぴぃちって呼んでほしいな〜♪」
ぴぃち「そんじゃま、こっからはプランBといくか☆」ドン☆
164 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 18:54:39.88 ID:nb06cNBw0
『START!』
莉嘉(口調や態度が変わってもやることは同じだよねっ)カチャカチャ
莉嘉(画面に表示されたキャラをレバーで操作してACを拾う)
莉嘉(拾ったACの『手』でジャンケンをする。要素はこの二つだけ)
莉嘉(なら、この『手』さえ判れば勝つのは簡単になる)カチャカチャ
莉嘉(お姉ちゃんには内緒で開発チームにお願いして、テストプレイ用のコマンドを対戦モードにだけ残させて)
莉嘉(スタートの合図の時にコマンド入力することで周囲の手を固定させる。これで要素はジャンケンだけになる)カチャカチャ
莉嘉(そして相手の手が判っていれば当然ジャンケンにも勝てる! 莉嘉頭いい!)
ぴぃち「またパーかぁ」チラッ
莉嘉(……無視無視。あっちはチョキしか出ないんだから)
莉嘉(ん、あれ――チョキで勝ちたいならブラフはグーじゃ……?)
莉嘉(っと、いけない、どうせブラフなんだから)カチャカチャ
ぴぃち「と・こ・ろ・で、莉嘉ちゃん?」カチャカチャ
莉嘉「――何?」
ぴぃち「罰ゲームはここにいる人達にケーキを買ってくる、だけど。それは莉嘉ちゃんもだよな?」
莉嘉「それがどうかしたの?」
ぴぃち「今から人数増やすけどいい?」ニタァ
莉嘉「?!」
165 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 18:59:37.57 ID:nb06cNBw0
ぴぃち「紗南」
紗南「はっ、ひゃい?!」ビクッ
紗南(あずきちゃんが――呼び捨て?!)
ぴぃち「柚の補習、多分終わってるから呼んどけ。忍は忙しくしてるだろうからあとは穂乃香と清美と――」
紗南「わ、分かった。えーと、LINEっと……」ポチポチ
莉嘉(う、ウソ、ハッタリに決まってる!)
莉嘉「そっ、そんなハッタリしても! 無駄だからね!」
ぴぃち「やってみなきゃ判んないだろ☆ ジャンケンなんだし☆」
莉嘉「い、今に解るよ……っ☆」
ぴぃち「〜♪」カチャカチャ
莉嘉(何、この余裕は――っ! アタシは勝つために必死なのにっ!)
ぴぃち「うわー、またパーだ。困った困った」ニタニタ
莉嘉(ふ、ふんっ、アタシはグーさえ拾えば勝ち――あれ?)
莉嘉(そう言えばアタシはさっきからグーしか拾ってない。それに)
莉嘉(『第二試合でもグーしか拾わなかった』。……なんで?)
莉嘉(――まさか!)サァッ
『TIME UP!』
166 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 19:04:28.84 ID:nb06cNBw0
莉嘉「ちょ、ちょっとタンマ!」
ぴぃち「どーしたいきなり。可愛くないぞ☆」
莉嘉(もしかして――桃井あずきも同じコマンドを使った?!)
莉嘉(あ、あり得る。やったことがない、って言ってたし)
莉嘉(アタシがコマンド入力しているのを見てそっくり真似ていたのかも知れない)
莉嘉(そして第三試合ではその仕様に気付いてアタシより早く入力を終えた!)
ぴぃち「?」ニタニタ
莉嘉(つまり1Pが必ず負ける手になっている……?!)
莉嘉「ね、ねぇ……場所、交換しない?」
ぴぃち「ん? ずっと座ってて腰痛めたか? 若いのに大変だな☆」
莉嘉「そ、そう! もうそれでいいから!」
ぴぃち「やだね。ほらほら、『手』を出す制限時間が迫ってるぞ☆」
莉嘉「い……っ、いいから代わってっ! 早く!」
ぴぃち「はー……。んじゃ、一回だけな。よっこいしょういち」
莉嘉(こ、これでアタシがパーを出せば――)タタッ
莉嘉「――!」
――2P・莉嘉:チョキ vs グー:ぴぃち・1P――
オト『やったぁ! 必殺技だ!』
『G.B.S.R.!』
――サビイロカブト:ゲージ100%減少(敗北)――
167 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 19:13:04.70 ID:nb06cNBw0
莉嘉「負け、た? アタシ……」
ぴぃち「おーおー、負けたムシは捕食されるのね。……グロい☆」
莉嘉「――ぜっ、全部ハッタリだったの?!」
ぴぃち「全部っつーか、『パー』って予告してただけなんだけどな」
ぴぃち「知ってる? 勝ちに執着してると勝てないんだってさ♪」
ぴぃち「ま、これはついこの前に身を以て知ったんだけどな☆」
莉嘉「あ、っ、……ぅー……」ガクッ
ぴぃち「さーて、お楽しみの罰ゲームの時間だ」ニタァ
柚「ふぃー。お疲れお疲れ〜」ノシ
沙紀「ケーキと聞いて来たんすけど……」
清美「こんな不埒な所にいたんですね。イエロー☆カードです!」ビシッ
日菜子「ピコピコうるさくて妄想し辛い――」ズーン
日菜子「――でも外へ声が届かない密室と考えると……むふ」ポワポワ
紗南「あれ?」
紗南「まだこんだけしか来てないの?」
莉嘉「ひっ?!」ビクッ
ぴぃち「莉嘉さんっ。ゴチでーす☆」
莉嘉「イヤだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
アアアアアアアアアアアアアア…
168 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 19:14:48.93 ID:nb06cNBw0
〜作戦8〜
169 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 19:22:39.06 ID:nb06cNBw0
光「次っ、次の問題だ!」
都「ふふん、いいでしょう!」
都「『星形の木の板の丁度真ん中に穴が開いています』」
都「『この板を二つに切り離して作ったものを組み合わせて、元の星形で且つ穴の位置が違う板を作る時』」
都「『その切り離し方を答えなさい』! どうですかこの問題は!」
光「……」
都「光さん?」
光「姉ちゃん……それ、ミステリでも何でもないよ」
都「」ガーン
光「でも宇宙人が地球人の知力を量るためにクイズを出すのはよくある展開だからな! 頑張るぞ!」
光「――で、これもいつも通り明日の朝までに考えればいいの?」
都「ハッ。そ、そうです! ではまたこの空き地で!」
光「ああ! じゃあな、姉ちゃん!」シュタタタタ…
都「また明日〜」ノシ
都「ふー。さて、帰りますかっ」
?「……」
170 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 19:31:34.76 ID:nb06cNBw0
忍「ダンスは……苦手だな。身体硬いし」タンッ
穂乃香「どうかしたんですか?」
忍「あ、おはよう穂乃香ちゃん。実はTV番組に出られることになって」
柚「えぇーっ?! で、で、何に?!」ギュンッ!
忍「近い近い! 一旦離れて!」
穂乃香「私の忍ちゃんから離れて下さい」グイッ
柚「ぶーぶー」
あずき「しれっととんでもないこと言うね……」
忍「ほら、ZTVの『100万円!! ゲームDEゲット・ショー』だよ」
忍「まだ正式に告知はされてないんだけど、アタシの出る回は対戦形式になるらしくって」
あずき「それでダンスを?」
忍「あとは歌と表情についても練習するように、って……」
穂乃香「……一体、何をするんでしょうね?」
四人『うーん……』
都「お悩みですかっ!」ギュンッ!
柚「わぁっ?!」
忍「だから近いって! 流行ってるの?!」
171 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 19:37:44.10 ID:nb06cNBw0
都「成程。出演するTV番組で何をさせられるかイマイチ解らない、とこういうことですね?」
忍「整理するまでもなくそうだね」
都「いやいや重要なことですよ」
あずき「しゃーぺんずゅーあーっ」
柚「わ、あずきチャンが壊れた」
あずき「壊れてないっ!」プンスカ
穂乃香「……もしや"sharpens you up"ですか? 意味は『お前の全ての能力を尖らせろ!』」
柚「奴の動きの全てを見落とすな、そして目を逸らすな」
あずき「どうしたの急に」
柚「いやなんとなく」
忍「その英文どっかで聞いたような――あぁ、フリスクだ」ピーン
忍「TVCMなのに『TVを消してみる』なんて提案するヤツでしょ?」
あずき「そうそれ。まずはシンプルに考えてみるって重要だと思うんだ」
穂乃香「会議室でアイディアは生まれない、なんてのもありましたね」
柚「事件は会議室で起きてるんじゃない!」ドヤッ
あずき「現場で起きてるんだ!」ドヤッ
都「それ私が言いたかったのにーっ!」
172 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 19:46:53.76 ID:nb06cNBw0
都「ぜぇはぁ……歌とダンスと表情、ですよね」
都「これらの共通点は『芸能人に求められること』です」
柚「おおっ?! 珍しく都チャンが冴えてる!」
あずき「よもや天変地異の前触れ?!」
忍「失礼だよっ。――それで?」
都「つまり!」
穂乃香「つまり……?」ゴクリ
都「……えーと……つまり……」
都「……。白紙に戻して考えてみましょう」
あずき「あぁ、なんだ平常運転か」ホッ
あずき「じゃあ次は子供になって考えるプランでいく?」
都「いいですね、そうしましょう!」
キャイキャイ…
忍「ホント仲いいよね、都ちゃんとあずきちゃん」
穂乃香「かたや企んでかたや解き明かす――相反してるんですけどね」
柚「っていうか、都チャンと仲の悪い人が珍しいんじゃない? 無害な正義の塊みたいな子だし」
穂乃香「ふふっ……そうかも知れません」
173 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 19:56:01.47 ID:nb06cNBw0
光「あっ、おーい!」ノシ
都「おやっ、土曜日なのに制服なんですね。光さんは文化系の部ですからこの時間までやってたとは思えませんし」
光「ふふん、実はね」
都「おっとそこから先はこの探偵・都がズバッと当てて見せましょう」
都「ズバリ、学校近くでこっそり動物を育てているから! 違いますか?」
光「掠ってもないよ」
光「正解は、今日は定期考査の答案返却日だったから!」
都「むむ、やりますね……」
二人『…………』ピリッ…
二人『――っあははははははは!』
光「何今の真剣な空気……っ、平成ライダー?」クスクス
都「黒幕に思いがけず会った時のようでした……っ」クスクス
都「――ふぅ。ところで点数は」
光「む」ムスッ
都「あぁ、解りますよその気持ち。趣味って勉強と必ずしも繋がらないんですよね……」
都「おほん。気を取り直して、答え合わせからいきましょうか」
174 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 20:01:10.56 ID:nb06cNBw0
光「あー、そっか。別にばっさり切んなくてもいいのか」
都「はい。これぞ逆転の発想! 同じ大きさの穴をくり抜いて真ん中の穴に埋めればミッションクリアです!」
光「なかなか姉ちゃんの問題を安定して解けないなぁ」ムー
都「諦めなければきっと手は届きます! 頑張りましょう!」
光「……だな! やれるとかやれないとかじゃなく、やる! 全力で挑む! それがヒーローだ!」
都「ええ、それでこそ私の相棒!」グッ
光「そう、この地球がなくならない限り!」グッ
光「よーしっ、今日も憧れへ向けて特訓だーっ!」
都「おーっ!」
光「じゃあ……よしっ、今日は走り込みからだ!」
都「地道ですが足で稼ぐというのも大事ですからね! やりましょう!」
光「ああ! やっぱヒーローたるもの走らなくちゃ始まらない!」
光「現場へ急行だーっ!」ダッ
都「わっ、そんな急に走ったら――ま、前! 前見て!」
?「あら」
光「うわぁっ?! はー……ご、ごめんなさい……」
都「走り込みはいつもの空き地に着いてからにしましょうか」ニコッ
?「……」ジー
175 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 20:07:19.02 ID:nb06cNBw0
柚「からい……」ポリポリ
あずき「おはよ――って何、その異様な量のフリスク」
忍「おはよー……」シクシク
忍「あのね、これ全部穂乃香ちゃんが持ってきたの」ムグムグ
あずき「全部?!」
穂乃香「クレーンゲームでもけもけを取る過程で手に入れてしまって」
あずき「あの人形どんだけ集めれば気が済むの?!」
あずき「と、取り敢えず泣く程食べるのは止そうよ。お腹ゆるくなると思うよ?」
柚「んー、その言葉、手遅れ」ビシッ
柚「よってあずきチャンにもノルマとしてこれを進呈しよー」ガサッ
あずき「わ、みちみちにフリスクの詰まった袋が出てきた」
忍「それで大体元の1割くらいだから。頑張って」
あずき「えぇー……何日かに分けて食べちゃダメ?」
三人『その手があった!』
あずき「モルダー、あなた疲れてるのよ……」ハァ
穂乃香「し、しかし、こうも言いますよ」
穂乃香「『食べ続けるのは苦しい。でも私達は知っている。食べ切った時の快感を』」
あずき「フリスクから離れろ!」クワッ
176 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 20:13:51.90 ID:nb06cNBw0
都「おや、またもやこの辺りでお困りの声が」ススス
あずき「あー、いいって。今回ばかりは犯人が判ってるから」
都「そうですか……いえ、残念ではないですよ? 平和が一番です!」
あずき「じゃあフリスクお一つどうぞ」スッ
都「へ? あぁフリスクお一つどうも」
都「うーむ、しかしこの様子だと皆さんは違うようですね」ザラッ
柚「『違う』? 何が?」
都「実は――ああ、これは捜査中の案件なので密に、密にですが」ヒョイパク
都「どうやら最近、この学校の生徒の金銭が何者かに奪われているようでして」ポリポリ
忍「えっ、それってフツーに事件じゃん!」
都「しかしどうも妙なんです」
都「まず、先生方へ直接相談した方がいない。私が情報を流したことでつい先日発覚した事件ですから」
都「それから額が一定ではない。いわゆる不良ならいきなり全額奪うことはまずしません」
都「次回会った時に毟れる額が下がりますし、派手にやると通報され易いですからね。だから決まった額で奪う」
都「しかしそれぞれ別の事件として考えると被害者が多過ぎますし」
穂乃香「……」ポリポリ
177 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 20:21:26.30 ID:nb06cNBw0
忍「つまりアタシ達は被害者ではない、容疑者だ、と?」
都「う。まぁ、そうなりますね。お金を使えているんですから」
都「しかし犯人像が絞れない以上は私も含めて全員が容疑者です!」
柚「潔い! よっ、名探偵! ひゅーひゅー!」
都「それはいくら私でも思うところのある言い方ですね……」
忍「口笛吹けないんだ……意外」ボソッ
都「それで、皆さんならどう思いますか?」
あずき「どう、と言われても……」ウーン
穂乃香「……おいし」ポリポリ
柚「んー、ところで都チャンはどうやって事件を知ったの?」
都「日頃の情報収集の賜物です!」バーン
柚「ははぁ、つ・ま・り、盗み聞きかぁ。このこの」ツンツン
都「うぐぐぅ……ま、まぁその通りですけど……」
あずき「え、待って、校内でその話をしている人がいたってこと?」
あずき「だとしたらどうして先生が知らないの? おかしくない?」
四人『あ』
忍「まさか先生が――いや、まさかね……」
都「可能性がゼロではないのがまた何とも言い難いです」
178 :
◆iv1d32We2.
[saga]:2018/02/25(日) 20:29:47.59 ID:nb06cNBw0
都「――ということを話しましたね」
光「そっかー……いいな、姉ちゃん。ちゃんと探偵してて」
都「いえいえ。まだ事件も解決出来てない半人前、格好だけのハーフボイルドですよ」
光「むぅ……アタシにはパンチもキックも、武器も敵もないけど……」
光「それでもヒーローとして、夢を与えたい。どうすればいいのかな?」
都「……。格好いいですね、その言葉」
光「ええっ? 今の愚痴が?!」
都「新宿少年探偵団に『パラダイム・シフト』という言葉がよく出ます」
都「水は100度で沸騰する。でも80度で沸騰すると世界中のみんなが思うようになれば、水は80度で沸かせるんです」
都「真摯に憧れを目指して、最後に憧れを掴む。王道じゃないですか」ニコッ
光「姉ちゃん……うんっ、ヒーローが途中でくじけちゃいけないよな!」
都「いい答えです! じゃあ今日の問題いきますよ!」
都「『ある美術館に泥棒が入り、警備員が乱闘の末に殺された。監視カメラの類は全て持ち去られていた』」
都「『しかし警備員の死体近くには柱時計があった。柱時計は傾いて止まり、長短の針がいずれも飛び散っていたが、調べにより内部は正常に動作することが判った』」
都「『ここから犯行時刻を割り出して下さい』! 正解はまた明日発表、では今日は解散!」
179 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 20:38:46.51 ID:nb06cNBw0
都「ふぃー、毎日『謎』を考えるのも大変ですね……しかしこれも探偵修行!」テクテク
テクテク…
都(――ん? あれは……ウチの制服?)
都(……。尾行してみましょうか)テクテク
学生「 も だった 」
学生「 オッズ してほしい バカ 」
都(何やら不満を抱えていそうですね)テクテク
学生「 すればいいのに って 」
都(むっ、路地に入った――一旦通り過ぎましょう)テクテク
学生「安斎は正解させる気ないんじゃね?」
都(――私の名前?!)テクテク
都「あ、あれは一体……いや、偶然同姓の別人の話を――?」
都(追跡する前に取り敢えずメモ帳を、おや)ゴソ…
都「フリスク……そう言えば入れっ放しでした」
都「音がしますし、追跡は――いや……矢張り行きましょう。置いていけばいいんですから」カチャ
都「ゴム底靴、無音カメラ、メモ帳。よしっ」
都「いざ、都市に潜む闇へ!」テクテク
180 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 20:43:36.28 ID:nb06cNBw0
柚「はいもの悲しい顔!」
忍「も、もの悲しい? えっと……こんな感じ?」
穂乃香「おお……意外な才能ですね」ポリポリ
あずき「ホント。女優とかアイドルでもいけるんじゃない?」
あずき「いっそ次のTV出演からスターダム大作戦やっちゃう?!」
忍「ないない、アタシはそういうの興味ないから」
柚「とか言いながら笑ってないよ? もしや本気で狙ってたり?」
忍「」ギクッ
柚「あ、今『バレた』って顔した」ニヤニヤ
忍「いいでしょ夢見たってぇ!」
穂乃香「可愛い……///」ポリポリ
あずき「……今更そっちにはツッコまないけどさ。フリスクそんなに気に入ったの?」
穂乃香「何だかクセになってしまって」ポリポリ
柚「どこにそんな中毒性が……」チラッ
柚「――あり? 都ちゃん、ほーら謎だよ。ほらほら」
忍「そんな子供をあやすような言い方しなくても」ハァ
忍「ね、都ちゃ――ん……?」
都「……ええ」
181 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 20:53:33.70 ID:nb06cNBw0
忍「どうしたの、何だか元気ないけどさ」
都「こういうことだってありますよ」
穂乃香「ホームズも事件がない時は退屈で放心してますから、探偵も常に気を張ってるワケではない――それは、そうですが」
柚「安楽椅子にでも座ったら復活するんじゃない?」
都「いいえ。探偵・安斎都は暫く休業です」
あずき「え? でも学内で現在進行形の事件があるのに……」
都「どうしてそれを私が解決しなきゃいけないんですか!」キッ
あずき「っ」
都「……私には手に負えないんです。私が――私は……」
都「……。すみません、眠いので寝かせて下さい」
柚「あ、うん……」
都「グスッ…」ガタリ
柚「――アタシ、言い方キツかったかな」ヒソヒソ
穂乃香「時々そう思うことはありますけど、今回飛び抜けて不味かったとは……」
あずき「でも一時的に落ち込んでるって感じでもないよね……」ヒソヒソ
忍「まあまあ、少し様子を見ようよ。何か心境の変化があったのかも知れないし」
あずき「心境の変化、ねぇ……」
182 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 21:00:00.75 ID:nb06cNBw0
あずき「帰り道にフリスクが落ちてたからその角で曲がってみた」
あずき「これぞプロジェクト・A(nother)!」
あずき「――なんて、考えなきゃよかった」ガックリ
あずき「どうしよう、ちょっと道に迷ったかも……」キョロキョロ
あずき「気がついたら入り組んだトコ入ってるし。路地裏ってヤツ?」
学生「 ってことは かよ 」
学生「クソッ 賭け金 」
あずき「うぅ……あれ? ウチの制服だ。どうしてこんな所に?」
あずき「はっ。まさか都ちゃんの言ってた――!」
あずき(尾行のやり方とか知らないけど……突入大作戦!)コソコソ
学生「 安斎 光 」テクテク
あずき(安斎――都ちゃんのこと?)
学生「しょうがない、今日は帰ろう」テクテク
あずき(あっ、こ、こっちに来る!)サァッ
あずき(ど、どうしようどうしようどうしよう)アワアワ
学生「誰だコイツ」
学生「オイ、もしかして話聞かれたんじゃ――」
あずき(ピーーーーーンチ!)
「ちょーっと待ったぁ!」
183 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 21:08:43.64 ID:nb06cNBw0
あずき「……ふぇ?」
光「『お姉ちゃん』、アタシの家はこっちだよっ!」グイッ
学生「は?」
あずき「え、ちょ、え、誰?」
光「あっはっはー、『お姉ちゃん』は冗談が上手いなぁ」グイグイ
あずき「わわわわわっとととと?! ち、力強っ!」
あずき「分かった行く! 歩くから! 待って待ってあああ引きずられるぅぅぅぅ……!」ズルズルズル…
学生「――は?」ポカーン
ズルズルズル…
光「――ふぅ。ここまで来れば安心だろう」
あずき「」プシュゥゥゥゥ…
光「おーい、危機は去ったぞー」ペチペチ
あずき「うぅ……ん……? い、一体何が……」
光「ダメじゃないか、あの路地は目が行き届きにくいから危険なのに」
あずき「ご、ごめんなさい……? ところであなたは?」
光「アタシか? アタシは正義の味方だ!」バン☆
あずき「そういうのじゃなくて、名前」
光「……南条光」ムスー
184 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 21:18:21.66 ID:nb06cNBw0
光「ええっ、都姉ちゃんの同級生なのか?!」
あずき「どこを見て同世代だと思ったのかな?」ニッコリ
光「身長」(←140cm)
あずき「……うん、知ってた」ズーン(←145cm)
光「ってことは都姉ちゃんが今どうしてるかも知ってるの?」
あずき「――どういうこと?」
光「いつもは放課後になると集まって特訓するんだけど、今日はいつもの場所に来なかったんだ」
光「お互い身体が資本だから病気は滅多にしないし、気を付けてる。兆候があったら気付いてる筈なんだ」
光「ということは姉ちゃんの身に何かあったのかも知れないだろ? でも姉ちゃんの家も連絡先も知らないし……」
あずき「それで心配になったんだ」
光「」コクン
あずき「それなら大丈夫だよ、学校にはちゃんと――」ハッ
あずき「ちょっと待って。特訓ってもしかして都ちゃんも?」
光「あぁ、謎を解くために謎を考えてアタシに出すのが姉ちゃんなりの特訓だ」
あずき(そっか、それで……!)
あずき「……耳貸して、作戦伝えるから」
光「『作戦』――っ! あぁ、分かった!」パァッ
185 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 21:28:28.44 ID:nb06cNBw0
光「おーいっ」ノシ
都「あはは……すみません光さん。昨日は突然」
光「気にすんな」グッ
都「ごほん。おや? ちょっと身長伸びました?」
光「えっ。……そ、そうなんだ、成長期だから!」アセッ
?「……」ジー
光「そんなこと言ったら姉ちゃんだってそうだろ?」
都「いえいえ、私は今からではとても伸びませんよ。それに」
都「その養分は頭脳に回してますから」チラッ
光「へぇ、じゃあ今日はアタシが問題出してもいいか?」ニタァ
都「『最後のチャンスですよ』」
光「問題。『ある学校で生徒の財布からお金がなくなっていく事件が発生しました』」
光「『しかし被害届は出ておらず被害者も被害金額も正確な値は不明』」
光「『被害者の様子を観察するに恐喝や引ったくりの類ではなく、額も被害者によってまちまちでした』」
光「『ではここから導き出される犯人像と犯行の手段を答えなさい』」
「さあ――っ」ガシッ
?「きゃっ、……え、『二人』――?!」ズザッ
光「お前の罪を数えろ!」
186 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 21:37:42.57 ID:nb06cNBw0
光?「変身大作戦大成功♪ ここまでキマると爽快だな☆」ニタニタ
都「光さん、そのまま押さえてて下さい」
光「ああ、絶対逃がさない」ギリギリ
?「う、ぐ……っ」
都「この事件は公開情報に被害者しかないというところが困難でした」
都「しかもその被害者が情報を出さない。これでは探偵も動けません」
都「でもですね、依頼人が警察ではなく探偵を頼るのは『依頼人にも後ろ暗いところがある』から、っていうのは探偵小説の定番なんですよ」
都「学生でも参加出来て、人目を憚るもの。且つ金銭が直接絡む――」
都「『女』と『賭博』以外に何があるでしょうか」
?「っ」
光?「ま、女絡みで何人も被害者が出るなら額が一定の筈だからそっちは最初から眼中になかったけどな」
都「私もです。更に私は『被害者』の集まっている現場を発見して、そして彼等の話を聞いて確信しました」
都「私の出した問題に光さんが答えられるか、で賭けを主催している何者かが存在する」
都「となれば話は簡単です。中学と高校の下校時刻はそれぞれ不定」
都「筒元になるだけの資金があり、しかもその両方に合わせられる時間的余裕もある、つまり『無職』の人物。犯人はあなたです!」
都「『柊志乃』さん!」ビシッ!
187 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 21:44:11.61 ID:nb06cNBw0
学生「不味い、バレた……」ヒソヒソ
学生「……一応逃げとくか?」ヒソヒソ
光?「ぴぃちがこのまま逃がすワケねーだろ☆」
学生「げ、あずき」
ぴぃち「ぴぃちっつってるだろ☆ シバくぞ☆」
ぴぃち「そんなアナタ達にクイズ。今、この路地にはスプレーで無数に落書きがされている」
学生「確かに昨日はなかった落書きばっかだな。……まさかお前が?」
ぴぃち「スプレーの噴射剤はエーテルだ。ここに例えば火を点けると――どうなると思う?」シュボッ
学生「――なっ?! 馬鹿、やめ」
ぴぃち「聞こえな〜い♪」ボゥッ!
学生達『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!』メラメラ
ぴぃち「ハハハハ走れ走れー! 迷路の出口に向かってよー!」
都「生徒の名誉を守るためとは言え鬼畜の所業ですね……」ヨッコラセ
光「ゾンバイアでもここまでダークじゃないな」ウケトリ
志乃「流れるように私のお酒を取らないでもらえるかしら」
光「えいっ」ポイッ
パリンッ…ゴォッ!
志乃「私のお酒……あぁ……」
188 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 21:51:57.30 ID:nb06cNBw0
ぴぃち「んじゃ、後処理はぴぃちに任しとけ☆」
都「本当にいいんですか?」
ぴぃち「こんなトコにヒーローがいていいモンじゃないぞ☆」
ぴぃち「ぴぃちは『警察』だ。主人公のケツにいて、犯人を法で裁く」
光「……行こう、姉ちゃん」
都「分かりました……お気をつけて」
光「後は頼んだぞ!」
タタタタ…
志乃「で、どうするつもりなのかしら?」
ぴぃち「どうも何も、今言った通りだぞ☆」
志乃「あらそう。でも司法で私を裁くのは難しいと思うけど?」クスクス
ぴぃち「――は? 司法? 何言ってんの?」
ゴゴゴゴゴゴ…
ぴぃち「千年錐を解きし者、闇のゲーム千の法を継ぎ闇の番人となる」
ぴぃち「裁くのは闇の法に決まってるだろ☆」ニタァ
志乃「」ゾクッ
志乃(何か――嫌な予感がする)
ぴぃち「さぁ、ゲームの時間だ」
ザァアァァァアアァ…
189 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 21:57:24.06 ID:nb06cNBw0
ぴぃち「ゲームは名付けて《田螺》!」ドン☆
ぴぃち「ルールは簡単、この小さな布袋に入っている米を明日の朝まで減らすことがなければアナタの勝ち」
ぴぃち「アナタが勝ったらあの二人は口止めする。約束はちゃんと守るぞ☆ あ、不正がないように量っとくか?」
志乃「……いいえ、それには及ばないわ」スッ
ぴぃち「はい、それじゃ明日またここで会うってことで☆」
志乃「ええ。良い夜を」
フラフラ…
志乃(へぇ……あくまで猶予を与えるのね)
志乃(つまり『自首しろ』ってことなんだろうけど……)
志乃(私、もうどうでもいいのよね)
志乃(逃げるつもりも、捕まりに行くつもりもない。ただ酔い潰れていたいの)
志乃「――ふふ、律儀に袋を明日見せたらどんな顔をするかしら」
志乃(捕まって禁酒生活になる前に……最悪の気分でお酒を飲む最悪の贅沢を――)フラフラ…
志乃(家に帰って深酒して、袋を眺め続けて朝を迎える――なんて無為。今晩はそうしましょう……)
クスクス…
190 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 22:05:55.34 ID:nb06cNBw0
志乃(さて、今日は――あら、セギュールが……)
志乃(うん、いい柿色……これにしましょう)
トクトク…
志乃「……んっ……」
志乃「はふぅ……」
志乃(セギュールのラベルは侯爵の寵愛の証――)
志乃(――そう言えば、このゲームの名前は何が由来なのかしら)
志乃「た、に、し……検索」
志乃「……『貧乏だが敬虔な老夫婦の間に子供が産まれた。しかしその子供はつぶ、つまり田螺だった』」
志乃「『老夫婦はその田螺を大事に育てた。田螺は誰よりよく働いた。町へ行くと田螺が働くという珍しさでも注目を浴びた』」
志乃「『やがて長者の家に住み込みで働くことになった田螺は、働く条件として長者にこう言った』」
志乃「『私の持っているこの袋には米が入っている。大事なものだからこうして肌身離さず持っている』」
志乃「『もし盗まれるようなことがある家ならば働くことは出来ない』」
志乃「『そこで長者は田螺を一晩泊め、その一晩のうちに盗まれたならば屋敷にあるものを何でも一つやると約束した』――」
191 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 22:12:32.10 ID:nb06cNBw0
志乃(……この田螺、結局イカサマで娘を奪ったのね)
志乃(もしかして――そういうこと?)
志乃(この袋の中に生き物が入っていれば量は減る)
志乃(『入っている米の量』を問うのだから生き物が入っている分にはルールに違反しない)
志乃「……だとしたら、受けた時点で負けになり得る。それは癪ね」フラリ
志乃「ええと、お皿お皿……あぁ、あった」
志乃(ふふ、ここに空けて生き物を除いておいて――)カタ…
志乃(――朝になったらその生き物を戻す。そうすれば量は減らない)
ザラ…ザラザラ…
ザラザラザラザラザラザラザラザラ…
志乃「……え?」
志乃「お、『多過ぎる』……っ、腕、動かな――っ?!」
志乃「はっ、はぁっ、と、止まって、止まってっ、止ま――っ!」
「あーあ」
志乃「!」ビクッ
ぴぃち「説明したのに。『朝まで減らすことがなければ』、って」
志乃「う、嘘、どうして私の家の中に――」
ぴぃち「闇の扉が開かれた」ォォン…
ぴぃち「罰ゲーム! ――MONOCHROME SPOT――」ドン☆
192 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 22:20:15.70 ID:nb06cNBw0
チュンチュン…
志乃「眩しい……もう、朝……?」モソ…
志乃(昨日は一体――それに、何だか凄く暑い……)
志乃(――先ず、ここはどこなのかしら)
女「あぁ、起きられましたね。おはようございます」
志乃「……?」
女「昨晩は熱帯夜だったからか大層寝苦しそうな様子で」
女「おかげで私はちっとも眠れませんでしたよ」
女「ところで千鶴子さんはお元気でしたか?」
志乃(この女は誰……? 千鶴子……?)
志乃「ええと……見かけなかった、ですよ」
女「あぁ、矢っ張りお祭りにいらしたんだわ」
志乃「じゃなくて――い、一体何が、あなたは」
女「もう、寝惚けるのはいいですけどね」フリムキ
女「ご自身の女房の顔くらいは覚えてて下さい」ニコッ
志乃「にょう、ぼう」
女「はい。さ、ともあれお着替えになって下さい」
女「今日は中野の稀譚社に行かれるのでしょう?」
193 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 22:28:32.79 ID:nb06cNBw0
志乃「――」
ぴぃち「問題。行方不明になった親友はどこにいるでしょーか☆」
ぴぃち「安心しろよ☆ 親友の部分はちゃんとアナタの親友になるし」
ぴぃち「謎を解いて意識が戻ると、その親友はちゃんと死ぬからな☆」
志乃「――」
ぴぃち「おー、そだ。ぴぃちもアナタがどうするか当ててやるよ」ニタァ
ぴぃち「どれだけ涙を流しても親友を忘れられず」
ぴぃち「アドレスを消せずに残したまま」
ぴぃち「ヤケになってこのセギュールの残りを一気に呷る!」
ぴぃち「おっと手が滑って一気に飲むとODでぴったり致死量になる量の薬を入れてしまったぁー☆」サラサラ
ぴぃち「んじゃ、ぴぃちの推理が当たったかはアナタの命で確かめることにするわー☆」
ぴぃち「これぞ、光に代わってお仕置きよ、ってね☆」
志乃「――」
ザァアァァァアアァ…
194 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 22:40:39.03 ID:nb06cNBw0
光「かーえーるーのー……あっ。姉ちゃん、久し振りっ」
都「あ。――そう、ですね。……久し振り、です、ね……」
都「……ええと……すみませんでした。相談もせずに」ペコッ
光「それはいいよ、もう。犯人達はあの時みんな裁かれたんだし」
光「それに姉ちゃんは、結局ちゃんと探偵だったじゃないか」ニコッ
都「……」
光「もうっ、やり辛いなっ。元気出せよっ!」
光「それにあの問題の答えまだ聞いてないんだぞっ!」
都「問題、問題……あぁ、柱時計の……?」
光「ああ。二週間もあったからいっぱい考えてきたんだ」
光「でもやっぱ一番の答えはこれだな」ウンウン
光「『時計は戻せる』!」
都「――!」
光「針をもう一度嵌め直して時計の傾きを直せば柱時計は動くんだろ?」
光「あとは腕時計か何かで次の時報までの時間を計れば、そこから逆算して止まった時の時間が判る。どうだ!」
光「――って姉ちゃん?! 何も泣かなくても……自信あったの?」オロオロ
都「あは、あはははは……私より、いい答えですね」グスッ
都「かくして事件の幕は下りたのだった。一件落着です!」
195 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 22:48:28.22 ID:nb06cNBw0
〜作戦9〜
196 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 22:49:51.29 ID:nb06cNBw0
あずき「やっと終わったぁーっ!」
柚「お、お嬢ちゃん、い、今一人かい」
あずき「……何それ」クスッ
柚「誘拐犯ごっこ」
柚「やー、無事に放課後を迎えられたねぇ。ここで補習なんか入ったら悲惨だったよー」
あずき「でももし入ったとしてもフケるでしょ?」
柚「当然っ」テクテク
柚「何と言っても今日は忍チャンの出る番組の収録日だからネ」
あずき「生放送だからつまり放送日でもあるけどね」テクテク
柚「考えてみればTVなんだよね。アタシ達も映るかも?」
あずき「おぉっ、おこぼれ大作戦! だね!」パァッ
柚「だったら目一杯『イイ』格好しないとねっ!」ワクワク
あずき「どんなのだったら目立つかなぁ。着ぐるみとか?」
柚「い、いやそれは今から用意するの難しいんじゃ……おろ?」ピタッ
あずき「はぷっ」ムギュ
あずき「いきなり止まらないでよっ……柚ちゃん?」
197 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 22:55:16.53 ID:nb06cNBw0
柚「裏道の細い路地を抜けるとリムジンがあった」
あずき「なんで雪国?」
柚「いきなり非日常があったから」
柚「リムジンって実在するんだね……」
あずき「それ以前にそもそもどうしてここに?」
柚「んー……そういうことはこの際抜きにしてさ」
黒服達『……』ズラリ
柚「この状況をどうにかしようよ」ナミダメ
あずき「無理」ウルウル
あずき「って言うかどっから出て来たのこの人達!」
柚「――アタシ、ラケットなら持ってるよ」
あずき「あずきは――ゴメン、デッキしかない」
柚「デッキならアタシでも持ってるって。あっはっはー……」
柚「んにゃろぉぉぉぉぉっ!」ガバッ
あずき「うぉぉぉぉぉぉぉっ!」ガバッ
黒服達『』ブンッ(←無言の腹パン)
メコォッ
二人『』チーン
198 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 23:01:41.00 ID:nb06cNBw0
二人『――はっ』ムクッ
ブロロロ…
柚(ここは……車の中? それにしては広いような)
柚(……まさかさっきのリムジンに――?)
あずき「柚ちゃん」ヒソヒソ
柚「分かってる」ヒソヒソ
柚(どうにか、気付かれないように外と連絡を――)モソ
運転手「この車の中は圏外ですよ」
柚「!」ビックゥゥゥ!
あずき「あ、あなたはさっきの……?!」
運転手「手荒で申し訳ない、あれ以外のやり方を知らなかったので」
柚(荒み過ぎでしょ)
運転手「我々はお迎えに上がったのです」シマッチャウヨー
あずき「迎え、って。こんなことする人のところに連れて行かれるの?」
柚「大体、名乗れないようなら紛れもない誘拐だよ」キッ
運転手「あぁ、それを言えば良かったのですか――」
運転手「あなた方を招待するように、と。美嘉様からです」
柚(――美嘉先輩、か……)
199 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 23:06:59.22 ID:nb06cNBw0
黒服「それでは、暫しここでお待ち下さい」
ギィィ…バタンッ
二人『……』
あずき「――どうする?」
柚「どうも出来ないね。一介のJKに乱闘は出来ないよ」
柚(ここは応接間……いや、ダイニング、かな。長いテーブルがある)
柚(椅子はいっぱいあるけど誰かを座らせるつもりらしい席は二つだけ)
あずき「どうしたの? 早く座ろうよ」
柚「……ん、そだね」ニコッ
柚(その二つの席の前にはそれぞれフォークとケーキが置かれている)
柚(どちらもイチゴの乗った普通のショートケーキ。その脇には湯気の立つティーポット)
柚(――誘拐紛いな割に丁寧で逆に気持ち悪い)
あずき「時間は判るのに電波はないみたいだね」
あずき「端末がさっきから外と通じないんだ」
柚「わ、そろそろ出発しないと収録行けない時間じゃん」
あずき「あーあ、見たかったなぁ。忍ちゃんのTV生出演」
柚「ぐぬぬ、羨ましいぞ穂乃香チャン!」
200 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 23:10:44.30 ID:nb06cNBw0
柚「おいしー! おいしー!」キャッキャッ
柚「……はぁ。暇だね」モグモグ
あずき「ね。また決闘する?」
柚「やだよ、流石にもう手の内分かるもん」
あずき「ふはぁ……じゃ、別のゲームにしよっかっ」
柚「何やる?」
あずき「《C.C.LEMON》」
あずき「ルール説明ね。このゲームは三種類の『手』を使うの」
あずき「一つ目はこう、両手を猫の手にして、胸の前で親指以外の手同士を握り込む『弾』」ギュッ
あずき「二つ目は両手を胸の前で交差させる『盾』」バッテン
あずき「三つ目はゲッツ……もとい、両手で男チョキをしてその人差し指を相手の胸に向ける『銃』」バン
柚「男チョキ?」
あずき「親指と人差し指を立てた手のことだよ。ちなみに人差し指と中指で作るのは女チョキで、男チョキの亜流だね」
あずき「このゲーム、元の名前は《戦争》なんだけど、同じ名前のゲームが幾つかあるからか今はこんな名前みたい」
あずき「ソースは近所の小学生だよ。でも手の名前はそのままなんだよねー」
柚「えっ、『弾』がレモンと代わるとかじゃないの?」
あずき「面白いよね、時代が変わってもすぐには変化しないんだよ」
201 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 23:17:01.64 ID:nb06cNBw0
あずき「『銃』はそれまでに込めた『弾』の数までしか使えない」
あずき「『盾』に『銃』は効かない。『銃』対『銃』は引き分ける」
あずき「つまり『弾』を込めている時に『銃』で撃たれると負け」
あずき「お互い同時に手を出し合って勝敗が決するまでそれを続ける」
あずき「――以上、ルールおしまいっ」
柚「ふーん……ん? 待って待って」
柚「これ、初手で弾込めたら後はひたすら盾張るゲームにならない?」
あずき「そうなるね」
柚「盾の回数に制限とかは?」
あずき「えへへ……」
柚「な、ないんだ……」ガックリ
柚「じゃあさじゃあさ、他の《戦争》のルール教えてよ」
あずき「他? んー、有名なのは二つあるね」
あずき「一つは紙と鉛筆を使って戦艦を駆使していく、別名《魚雷》」
あずき「ローカルルールが多くって、しかも基本ルールもそこそこ多いからおいそれとはやれないんだよね」
柚「ならもう一つは?」
あずき「……えーと、あずきは純粋にゲームとして紹介するよ?」
202 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 23:22:08.50 ID:nb06cNBw0
あずき「ルールは簡単。こういうテーブルで腕相撲の状態をとって」
柚「ほうほう」ガッシ
あずき「空いた手、今回は左手でジャンケンをする」
あずき「一回目の掛け声は『戦争』だよ」
二人『せーんーそっ』
柚「あ、勝った」
あずき「このゲームは『何回連続』で勝ったかが重要なんだ」
あずき「グーは『軍艦』、チョキは『朝鮮』、パーは『ハワイ』なんだけどね」
柚「ちょちょちょちょ! ちょっ! 大丈夫なのソレ?!」アセッ
あずき「だから言ったじゃん、純粋にゲームとして紹介するって」
あずき「説明続けるよ? 一回目以降、『直前に勝った側』はその時に出した手の名前を言わなきゃいけない」
あずき「例えば今グーで勝った柚ちゃんは、この後に続けてするジャンケンでは『軍艦、軍艦』って言ってから手を出すの」
あずき「この『軍艦、軍艦』はジャンケンをする拍子取りの意味もあるからちゃんと言ってね」
あずき「で、『直前に勝った側』は手を出す瞬間も宣言しなきゃいけない」
柚「ええと……じゃあ次はチョキ出すぞー、って思ったら『軍艦、軍艦、朝鮮』って言いながらジャンケンするの?」
あずき「そういうことだね」
203 :
◆iv1d32We2.
[saga]:2018/02/25(日) 23:29:20.67 ID:nb06cNBw0
あずき「もし連続して勝ったら、一回毎にこの組んでいる手をジャンケンに使ってる手で軽く払うの」
あずき「二回連続で『一本』、三回連続で『二本』、四回連続で『三本』になるよ」
あずき「そして、『三本』を先に取った方が『戦勝国』、つまり勝ち」
柚「……戦時下の遊び、って感じだねぇ」
あずき「あず、私は学校入る前に男の子達から教わったんだけどね」
あずき「誰からともなく始めた辺り、結構根強いんじゃないかな」
柚「ゲームとして考えるとこれただのジャンケンだよね?」
あずき「う、それはそうだけど……」
柚「手を握る意味も特にないよね?」
あずき「それはほら、停戦協定、みたいな」アセッ
柚「空いた手で戦争してるのに?」
二人『……』
柚「ま、まぁ、そういう皮肉だとしたらそれはそれで凄いね」
あずき「で、でしょー?」アセアセ
柚「それにこれなら気になるあのコの手を握れるしね!」
あずき「成程!」ピコーン
あずき「相手いないけどね!」
柚「まさに外道!」
204 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 23:38:17.65 ID:nb06cNBw0
柚「はぁ……矢っ張り暇だね」
あずき「だね。あぁ、もう生放送終わりの時間だ」
柚「ったく、今ノコノコ出てきたらどうしてやろうか」イライラ
あずき「次は《ワリバシ》でもやろうか……」
柚「今度は何なの、そのゲーゴブッ」
二人『?』キョトン
柚「え、えと、あずきチャン」
柚「そのゲームのルール説めゴボッ」
柚「――?! ぃ、っあゴブッ…カフッ…?!」グラッ
バタッ…
あずき「柚ちゃん?!」
柚「〜〜! 〜〜〜?!」ブクブク…
「あぁ、やっと効き始めたんだね」
ギィィ…
莉嘉「でも思ったよりは早かったよ☆」ニコッ
あずき「っ、一体何したの?!」
莉嘉「何と言われても。あのケーキに毒を仕込んだんだよ」
莉嘉「これから一時間後、その人死ぬから」
205 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 23:45:47.86 ID:nb06cNBw0
あずき「……っ!」
莉嘉「ふぅん、でも桃井あずき、アンタは食べなかったんだね」
あずき「柚ちゃんに言われたからね。怪しい、って」
あずき「実際こんなことになるまでは食べたいだけだと思ってたけど」
柚「っ、っ!」ポカポカ
あずき「痛っ、痛いってば!」
莉嘉「……でも、好都合だよ。アタシはアンタに復讐したかったし、お姉ちゃんは明日の落成式に呼んだだけだしね」
莉嘉「ただ――勝ち逃げした分、ここで負けてもらうよ」
莉嘉「そこで寝てるソレね、泡吹いてるのは毒と一緒に仕込んだ薬剤のせいだから。その薬剤自体は無害だよ」
あずき「喋れないみたいだけど?」
莉嘉「動かなければ呼吸自体はギリギリ問題ないでしょ。で、ゲームだけど」
莉嘉「こんなのはどう?」パチンッ
ガラガラ…
柚(何、あれ……食材の乗った、ワゴン? やってTRYかな?)
莉嘉「名付けて《デスおせち》!」
柚(ネーミングセンスッ!)ガーン
206 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/25(日) 23:52:41.96 ID:nb06cNBw0
莉嘉「ルールは簡単。今持って来させた、調味料を含む食材のどれか一種類に解毒剤が入ってるの」
莉嘉「ホントはどちらか消すつもりだったからね」ボソッ
莉嘉「それを一時間以内に引き当てて食べさせたらそっちの勝ちだよっ☆」
あずき「な、なら――」
莉嘉「但し」ニコッ
莉嘉「致死性の高い毒を入れた食材も紛れ込んでるから。この猛毒入りの食材の数は莉嘉も知らないんだー」
あずき「――!」ゾクッ
柚(つまり当てずっぽうは即死のリスクを高める……か)
莉嘉「あ、調理器具は用意したの使ってね。器具には絶対毒入れてないから。それじゃ、スタート☆」
あずき「ど、う――したら」
あずき「ヒント、は――いや、でも」
柚「……。……っ!」クイクイ
柚「コホッ、ぃい、よク聞ぃてッ、ガフッ」
あずき「?! 待って、寝てて」オロオロ
柚「信じてるカらッ!」
あずき「!」
柚(駄目、ちょっと休憩……)ヘタリ
207 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/26(月) 00:00:00.42 ID:1Jm0Z17k0
あずき(柚、ちゃん……)
あずき「……」キッ
あずき(調理器具は安全、洗うための『水』は食材だから危険)
あずき(でもそれは他の食材と危険度が同じ、なら――)ティンッ
あずき「柚ちゃん、マゾ趣味はある?」
莉嘉「まぞ?」
柚「ブフッ」ゲホゲホ
柚「っ、ゴボッ、――?!」
あずき「ホースで直接胃袋に水を流し込んでお腹蹴り続ければ毒抜けるんじゃない?」
莉嘉「ぅえ?! ちょ、ストップ! タンマ!」アワアワ
莉嘉「それ……水責めだよね?」ビクビク
あずき「よく知ってるね。そう、拷問大作戦だよ」
莉嘉「それ無理だから! 意味ないから!」
あずき「ホントに?」ジトー
莉嘉「ホント! ここで嘘吐いたら人間じゃない!」
莉嘉「あの毒は粘膜から吸収されるのっ!」
あずき「ヒントもーらいっ」ニヤッ
莉嘉「……あーーーーーっ!」
208 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/26(月) 00:09:00.94 ID:1Jm0Z17k0
莉嘉「ズールーいー! 卑怯者ぉー!」テシテシ
あずき(『水』が安全なら猛毒がある場所も限られてくる)
あずき(洗った時に流れ落ちない食材か、普通は洗わない食材)
あずき(例えばマヨネーズや缶詰の食べ物がそれに当たる)
あずき(ただ……問題は残ってる)
莉嘉「もうっ、もうっ! ふんっ!」スタスタ
あずき(――解毒剤の条件が相変わらず分からない)
柚「……カフッ」ガクガク
あずき(『解毒剤』なら吸収されて効果が発揮されるのは毒より早くなきゃいけない)
あずき(効力を発揮するのが宣言通り一時間だとして、このゲームの制限時間は同じ一時間)
あずき(つまり、解毒剤は飲んだら『即座に』効くことになる)
あずき(うーん……それって可能なのかな? 生物取ってないから分かんないよ……)
あずき(取り敢えず有効なのは『煮たら溶ける食材』を使ってスープを作って、それを飲ませること)
あずき(それ以外の食材は――死のロシアンルーレット、だね)
あずき「コンソメ……カレー粉……シチューのルー……」ブツブツ
あずき「ううん、どれも使えない。ここは――」
209 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/26(月) 00:17:03.19 ID:1Jm0Z17k0
コトコト…
柚(あ、いい匂い……)ホッコリ
莉嘉「……」グゥ
あずき「後で食べる?」ニヤッ
莉嘉「う、の、ノーコメントで」
あずき(やっぱさっきので警戒されちゃったか……)トントン…
あずき(……昆布は水から出汁をとる。これくらいなら小学校の家庭科でもやるよね)
あずき(時間は掛かるけど、食材を煮られるように切る時間があるから相殺する、筈)トントン…
あずき(で、問題の解毒剤。スープの具材に入ってなければひとつひとつ試すことになるんだけど)チラッ
あずき(正直、今の柚ちゃんに何回も食べ物を食べる力があるとは――)
あずき「――痛っ!」
あずき「うーわ、指切った……」チュパ
あずき(……あれ……?)
柚「コホッ…ゲホッ、っ、ガ、ぁ、ゲホゲホゲホゲホ!」ビクンッ!
柚「っ、っ、っ、〜〜〜〜〜っ、っ?!」ビクンビクン!
あずき「――え、ゆ、柚ちゃんっ?!」
210 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/26(月) 00:26:17.23 ID:1Jm0Z17k0
あずき「は、早過ぎる――どうして?!」
莉嘉「大丈夫、あと30分は生きられるよ?」ニコニコ
莉嘉「でもここから先は生きるので精一杯。食事は受け付けるかどうか」
あずき「そんな――!」
あずき(迂闊だった――時間制限は『死ぬまで』か!)
柚「ヒュー…ヒュー…」ビクンッ
あずき「何か、何か方法は――?!」
ドクンッ
あずき「!」
あずき(あぁ、またこの感覚――)
ザッ…ザザッ…ザァァァァ…
あずき(あずきがあずきでなくなる――)
あずき(『何か』を……抑えられなくなる……!)
ゴゴゴゴゴゴ…
あずき(あずきは、『私』は、――『あずき』?)
あずき(いいや、その名前は違う。だろ?)
カッ!
あずき?「……はぁ〜い♪」ニタァ
ぴぃち「れっどぴぃちのぉ、お料理の時間だぞ☆」
211 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/26(月) 00:31:46.15 ID:1Jm0Z17k0
莉嘉「出たね、あの時のオバさん」
ぴぃち「おい今なんつった☆ 次はないぞ☆」
ぴぃち「めしをくってないのか? めしをくってないのか?」ジリッ
ぴぃち「めしをくってないのか? めしをくってないのか?」
ぴぃち「めしをくってないのか? めしをくってないのか?」ジリジリ
莉嘉「ヒッ、ち、近付かないで……!」ウルウル
ぴぃち「かあさんがまっているよ。ふわふわオムレツができたってまっているよ。まっているよ」
ぴぃち「まっているんだよ!」クワッ
莉嘉「ひぃぃぃぃん! ごめんなさいぃぃぃぃ!」ワーン
ぴぃち「っと、こっちはこれでよし」
ぴぃち「で。柚をどうするか……」
柚「」ヒクッ…ヒクッ…
ぴぃち「んー、いちおー訊いとくか」
ぴぃち「あのさ、柚」プニプニ
柚「」ヒクッ…ヒクッ…
ぴぃち「マゾ趣味はあるか?」
212 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/26(月) 00:36:56.37 ID:1Jm0Z17k0
ぴぃち「本日のスウィーティーなお料理に使うのはぁ」
ぴぃち「瀕死の柚と、もう一つ! これだけ!」
ぴぃち「『ラー油』!」バン☆
ぴぃち「先ずは半分意識のない柚の服を脱がせます」ヌガセヌガセ
柚「」ヒクッ…ヒクッ…
ぴぃち「おぅふ、シゲキ的……」
ぴぃち「次にこう、お尻を掴んで、ぐいっと」
――くぱぁ
ぴぃち「そして後ろの穴に開封したばかりのこのおっきくてふっといラー油の瓶を――」ニタァ
ぴぃち「ぐさぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」ブスゥ!
柚「」ヒクンッ
柚「コヒュー…カフッ…ゲホッ、ぅ、いぎっ、ひっ?!」
柚「ひ゜に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ?!」
柚「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」ゴロゴロ
柚「抜いてぇっ! これっ! 抜いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
ぴぃち「えー? でもちゃんと解毒されたか分かんないよぉ?」ニタニタ
柚「いいっ! いいからぁっ! 死ぬっ、死ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」
213 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/26(月) 00:40:56.97 ID:1Jm0Z17k0
柚「」ガクガク…
柚「」ガクッ
ぴぃち「おーい☆ 莉嘉ちゃんっ」
莉嘉「」ガタガタガタガタ(←一部始終を見てた)
ぴぃち「あれが解毒剤の入ってた食材だよな? ん?」
莉嘉「ハイ…ソウデス…」ガタガタガタガタ
ぴぃち「随分と悪趣味じゃない?」
莉嘉「ヒッ! で、でも、これは復讐だもん……」メソラシ
ぴぃち「目ぇ背けんなぁー……チッ、こっちはギリギリだったってのに」
ぴぃち「水に溶く前に洗う可能性のあるものに毒がない、これは確かにアナタの発言から判った」
ぴぃち「じゃあ無毒と明らかなものに解毒剤を仕込むか? いいや、ぴぃちならそれはしない」
ぴぃち「バレる可能性は最大限考慮するモンだからな☆ だからラー油に仕込んだ。そうだろ?」
莉嘉「そ、それだけで――?」
ぴぃち「……ヒントは指切った時の『血』、正確には血流、な」
214 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/26(月) 00:45:23.52 ID:1Jm0Z17k0
ぴぃち「効くのに一時間も掛かるなら効き方はCOみたいな『置き換わる』毒よりは毒に『なる』ROHみたいなタイプと踏んだ」
ぴぃち「加えて解毒は即座に終わる。なら、その毒成分は血液の循環で簡単に届く場所に集まる筈」
ぴぃち「そして人間は有機物。火葬くらいは小学生でも知ってるよな」
ぴぃち「血液に乗るような『有機的な毒』に対して解毒が作用するなら、これはもう何か代謝してるんじゃないの?」
ぴぃち「つまり解毒剤は加熱出来ない、そのままで毒に効果がある、ってことになる」
ぴぃち「ってなワケで、『加熱しないで食べられる』『油液状』のものにまで絞れた。ここまで絞るともう殆どない」
ぴぃち「あとはアナタの性格ね。たかだかゲームに負けたくらいで人殺しを計画するようなヤツは――」
ぴぃち「『量をまともに食べられないもの』を選ぶ。だろ?」
莉嘉「……」
215 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/26(月) 00:51:59.57 ID:1Jm0Z17k0
ぴぃち「で、ここからは推測だったんだけど」
ぴぃち「ケツって人体で一番デカい筋肉だろ? ということは血液が多く流れるから詰まり易い」
ぴぃち「それが多分、痔ってヤツ。でも痔だからケツが腐りました、なんて聞いたことがない」
ぴぃち「なら、血管にスペアがあると考えればいい。要は血管がいっぱいある、ってね」
ぴぃち「そこに直接ぶっ込んでやれば血管フル活用して解毒が進むんじゃないかなー、なんて☆」
ぴぃち「あれっ、これもしかしてカンチョーか? やぁん恥ずかしい☆」クネクネ
莉嘉「……」
ぴぃち「……おーい☆ 何か話せよ☆」ニタニタ
莉嘉「まだ――」
ぴぃち「ん?」
莉嘉「まだ、負けてない……っ!」ギリッ
ぴぃち「負けだろ。認めろ」
莉嘉「アタシは負けてなんかないっ!」ジワッ
ぴぃち「――?!」
莉嘉「勝つ、勝ってきた、勝たないと――!」ウルウル
ぴぃち「お、おぅい……莉嘉ちゃーん?」
莉嘉「っ!」ギィッバタンッ!
216 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/26(月) 01:01:36.77 ID:1Jm0Z17k0
ぴぃち「……泣いてたな。悔しい、だけか?」
柚「」ヒクヒク
ぴぃち「おっと、忘れる前に」
ぴぃち「そこの人達っ。オ・ネ・ガ・イ♪」
黒服達『ヒィッ!』ビックゥゥゥ!(←矢っ張り一部始終を見てた)
ぴぃち「んー? 返事が聞こえないなぁ」
黒服達『はい!』ビシッ!
ぴぃち「柚を治療して。どうせ外には出してくれないんでしょ?」
黒服達『御意のままに!』
黒服「おいそっち持て」
黒服「担ぐぞ、せーのって軽っ!」ヒョイッ
柚「」チーン(←43kg)
イソゲイソゲ…
ぴぃち「……行ったか」
ぴぃち「よっこらしょ、っと」ポフッ
ぴぃち「……もうすぐ日付が変わるな」
217 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/26(月) 01:08:59.93 ID:1Jm0Z17k0
穂乃香「今日はありがとうございました」
忍『ううん、それはこっちのセリフだよ。今日はありがとうね』
忍『……あずきちゃんと柚ちゃん、来なかったから』
穂乃香「そう――ですね。未だに連絡も取れませんし……」
穂乃香「出来ることなら明日にでも亀のゲーム屋に――」
忍『あー、明日はその……ごめんっ』
忍『実は明日から暫くバイトで。こんな時に薄情だけど』
穂乃香「そうなんですか? 実は私も明日は予定があって」
忍『……じゃあ、二人を探すのはまた今度だね』
忍『何か起きてなければいいんだけど……』
穂乃香「ええ、今度学校で会ったら問い詰めてあげましょう」ニコッ
忍『あはは、……そうだね。そうしよっか!』
忍『それじゃ切るね、おやすみ』
穂乃香「はい、おやすみなさい」ピッ
穂乃香「――さ、明日は早いですし流石に寝ましょうか」
?「あの……その二人、大丈夫なんですか……?」ドキドキ
穂乃香「ええ、姪のあなたでも会えば解ります。あの二人なら大抵のことは平気だ、と」
穂乃香「千枝ちゃんが心配することは何もありませんよ」ナデナデ
218 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/26(月) 01:16:26.76 ID:1Jm0Z17k0
「「『壊獣捕獲大作戦』っ!」」
美嘉「――ま、けた……?! このアタシが?!」
「罰ゲーム!」
美嘉「ああああああああああああああああああああああっ!」
――――――
――――
――
美嘉「――はっ」ガバッ
美嘉「ゼェ、ゼェ…また、また――あの夢だ……っ」
執事「……お目覚めでございますか、美嘉様……」
美嘉「……」カチャカチャ…
執事「仰せの通り、奴等には屋敷で一夜を明かさせました」
美嘉「……そう……」ニコッ
美嘉「フフ、あまりに朝が恋しくてつい寝ちゃったよ」
美嘉「皮肉にも――例の悪夢で目が覚めたけどね」
執事「……」
美嘉「冬馬、今日は執事業以外の用があるでしょ? 荷物くらい自分で持つよ」
冬馬「……はっ。失礼致します」
スタスタ…パタム
美嘉「……」
219 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/26(月) 01:20:02.46 ID:1Jm0Z17k0
美嘉「KC、か……嫌な名前」
美嘉(仮称すらないテーマパーク……これが我が社の新たな象徴)
美嘉(『二つのK』の時代は終わった、あとは花を添えるだけ)
美嘉(目玉のDEATH-Tにもっとリアリティや話題性、血腥い『彩り』が欲しい。何としても)
美嘉(私が永遠に勝利し続けるため――)
美嘉(そして二つ目のK、『桐生コーポレーション』の呪縛を解くために)
美嘉「あずき。いや……ぴぃち。あなたを日没までに生贄にする」ドン★
220 :
◆iv1d32We2.
[sage saga]:2018/02/26(月) 01:21:05.56 ID:1Jm0Z17k0
『学園編』完。
『DEATH-T編』を書くならその時は書き溜めをしようと思います。
寝落ちを除いても丸一日掛かるとは……。シャケ召喚してきます。
221 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/02/26(月) 15:48:50.71 ID:1PABhOQSo
乙
所々にある小ネタとかもおもしろかった
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