他の閲覧方法【
専用ブラウザ
ガラケー版リーダー
スマホ版リーダー
BBS2ch
DAT
】
↓
VIP Service
SS速報VIP
更新
検索
全部
最新50
ロールシャッハ「嵐を呼ぶ、救いのヒーローたち」
Check
Tweet
136 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 21:46:52.23 ID:Lz8qDcvo0
よね、状況を説明する。
よね「……というわけで、」
よね「ジャーク! あんたの力でそいつらの世界に行けない!?」
ジャーク「ムリ」
ジャーク「ムリムリムリムリ、ム・リ。ムーリー」
ジャーク「賞味期限切れてるって言ったでしょ? あ・た・し」
一同(……このオカマ……)イラッ
スンノケシ「……でも、本当に不可能ならここへ来ませんよね」
スンノケシ「危険だけど、できないことはないのではありませんか?」
ローズ「なにこのコしんちゃんにソックリだけどかしこーい!」
ラベンダー「知的な魅力があるわね」
レモン「将来マジでいい男になるわあ」
ルル「お前たち王子に近づくな!」
サタケ「で、どうなんだお前」
ジャーク「んー……ま、NOと言ったらウソになるわね」
一同「「「……テメエエエ!」」」
一同がジャークに襲いかかり、フクロにしかける。
137 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 21:51:27.20 ID:Lz8qDcvo0
ジャーク「待って待って今から教えるからちょっと待ってってばねえ!」
ジャーク「人形がその異次元から出てくるんでしょう?
簡単よ出口の反対は入口だもの。
そっから向こうに入っちゃえばいいのよっ」
ルル「しかし、奴らはほとんど一瞬で出てきます」
ルル「そのような隙があるとは思えません」
ジャーク「そこであたしので・ば・ん。
そのゲートをしばらく出したままにしとけばいいの」
ジャーク「でもそうなると、」
「あたしはほぼ間違いなくあの人形に取り込まれちゃうわねえ……」
ルル「あれに取り込まれると?」
ジャーク「だいじょーぶよ死にゃーしないわ、ただ奴隷になるってだけ」
ジャーク「そのあとどうなるかはわかんないけど、一生コキ使われるんじゃない?」
ジャーク「あれ操ってるやつ、相当性格悪いわよ」
よね「やっつけるには?」
ジャーク「それも簡単、操ってるやつをやっつければいいの」
ジャーク「あんたたちがなんとか勝ってくんないと、
あたしも未来永劫人形のまま」
ジャーク「けれど多分、あの人形二十万相手にするよりヤバイけどね」
138 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 21:53:13.74 ID:Lz8qDcvo0
ジャーク「どうする? それでも行く? 勝算あんの?
あ、ちなみに行けるのは時間的にひとりだけよ」
サタケ「俺が行こう!」
ジャーク「あんたの図体で通れるわけないでしょこのゴリラ!」
サタケ「ううう……」
よね「私が行くわ!」
ローズ「あんたが行ってどうすんのよー」
よね「なんだとコラ!」
ルル「……私が行きます」
スンノケシ「ルル!」
ラベンダー「あなた、軍人さんよね?
私たちより腕は立つみたいだけど」
レモン「じゃ、このコは私たちがあずかっておくわ」
ルル「王子に変なことをしたらただじゃおきませんよ……」
サタケ、スンノケシを持ち上げてむさえに渡す。
サタケ「ねーちゃん、しばらくこのコを頼む」
むさえ「え、あのちょっと」
むさえ(すげー筋肉……)
サタケ「ッしゃ行くぞおらあああッ!!!」
一同「おらあああッ!!!」
139 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 21:55:42.90 ID:Lz8qDcvo0
路上へ飛び出す面々。その間も人形は続々と湧き出している。
襲い来る無数の人形を殴り飛ばす三兄弟とサタケ。
よね「来たわ! こっち!」
空間が歪み、人形が一体新たに姿を見せる。
つかみかかる人形を警棒で押さえるよね。
人形はまだ半身をのぞかせているだけだ。
ジャーク「いいわよ引き抜いて!」
手をかざすジャーク。歪みが、徐々に大きくなる。
ルルが飛び込もうと構える。
が次の瞬間、よねを襲っていた人形が急旋回しルルに飛び掛かる。
ルル「ちィッ……!」
ジャークもまた別の人形に捕まり、身動きが取れなくなる。
ジャーク「やばいやばいやばい!」
ジャーク「あーんもうあんたでいいわ! さっさと行きなさい!」
よね「え、ちょ、ぅわあッ!!」
よね、ヤケクソのジャークに突き飛ばされる。
異次元の扉が閉じる。
ルル「くっ……」
ローズ「ちょっとねえどうなったの!」
ラベンダー「あの刑事さんが行っちゃったわけ?」
ルル「ええ……私としたことが……」
レモン「なんでもいいけどこっちもやばいわよ!」
140 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 21:57:40.06 ID:Lz8qDcvo0
――押し寄せる人形の群れ。
むさえ「やばいよこっちからも来た!」
サタケ「クソ……これまでか……」
と、そこへ軽トラックが突っ込んでくる。
竜子「あんたたち、こっちだ!」
車体には“21世紀博”の文字。
荷台に、紅さそり隊の面々。
お銀「うわ、どういうメンツだ? なんかオカマばっかじゃねーか」
マリー「ジャガイモ小僧もいるし……」
ルル「! あなた、喫茶店の……」
竜子「フフフ。ふかづめ」
お銀「やってる場合じゃないよリーダー!」
竜子「ああそうだッ、ほら早く乗って!」
マリー「向こうの、21世紀博ってとこが避難所になってるんスよ。
あそこなら何人でも入れますんで」
お銀「あたいらはまあ、ボランティアっス」
竜子「そ、そういうことだ!」
サタケ「助かったぜ美少女ども!」
ローズ「あらあんたやっぱりロリコンなの?」
サタケ「違う!」
竜子・お銀・マリー(このおっさんすげー筋肉……)
ラベンダー「でも大丈夫かしら、あの刑事さん」
レモン「ジャークはつかまっちゃったし……」
スンノケシ「……今度こそ、信じて待つしかありません」
ルル「王子……」
むさえ「こんな形でまた21世紀博に行くとは思わなかったなー……」
141 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 22:11:03.33 ID:Lz8qDcvo0
ヘンダーランド 上空
よね(っ……ここは……)
よね「って、うわあああああああああ!!!!!」
よね、空中に放り出され、落下していく。
そのとき、トッペマが飛来して手をかざす。
トッペマ「トッペマ・マペット!」
よね「あれ、浮いてる……?」
よね「……あー、死ぬかと思った……」
トッペマ「あなたは? 見たところ人間のようだけど」
よね「ってあんたは……人形がしゃべってる?」
トッペマ「私のことはいいわ。オカマ魔女の手下?」
よね「確かにオカマの手は借りたけど……仲間が捕まってるから助けに来たんだよ!」
トッペマ「その仲間たちが誰か、言いなさい」
よね「ええと、野原しんのすけと、その家族と、友達と、あとロールシャッハ!」
よね「連れてってくれればわかる!」
トッペマ「……みんなはあそこの見張り塔にいるわ」
よね「あのショーの、アクション仮面も?」
トッペマ「ええ。彼も知ってるなら、ずっと追いかけてくれてたみたいね」
トッペマ「ごめんなさいね、疑ったりして」
よね「いーんだよ、そんなの」
よね「それより、ここは……」
トッペマ(……そりゃそーいう反応するわよねー)
トッペマ「……もう色んな人に説明したから、大分かいつまんで話すわね」
142 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 22:13:10.84 ID:Lz8qDcvo0
ヘンダーランド 午前〇時、五分前の見張り塔
子供たちは眠ってしまっている。
床に並べたスゲーナスゴイデスのトランプ。
外を見つめるアクション仮面。
アクション仮面「……戻ってきた!」
ひろし「敵もですか!?」
アクション仮面「いや……あれは、敵ではなさそうです」
宙を浮かんでくるトッペマとよね。
よね「おおーい、野原さーん!!」
ひろし・みさえ「…………」
アクション仮面「野原さん、お知り合いですか?」
ひろし「いやなんていうか……」
みさえ「戦力には数えなくてもいいわ、あのコ……」
よね「どういう意味だよ!」
トッペマ「とにかく、もう約束の時間が近づいています」
よね、ロールシャッハに近づく。
よね「ロールシャッハ!」
トッペマ「彼はいったい……?」
よね「肩書はあるにはあるけど……うーん」
よね「具体的にはやたらタフな、口の悪いおっさん?」
トッペマ「死んではいないみたいだけど、もうずっと目を覚まさないわ」
よね「でも奴らと闘うなら、この人は絶対必要になるよ」
よね「あんたの魔法でなんとかならないの?」
トッペマ「今の私では、してあげられることはないわ」
ひろし「おい、そんなことより時間がやべえぞ!――」
143 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 22:14:52.03 ID:Lz8qDcvo0
午前〇時。
すべての砂が落ちる。
城の鐘が、ヘンダーランドに響き渡る。
ヘンダー城 広間
ぶりぶりざえもん「……時間だ!!」
寝ぼけ顔でやってくるパラダイスキング
他の者は広間に集まっている。
パラダイスキング「よーおっしゃあ、待ちくたびれたぜえ!」
マホ「あー。あんた先行ってな」
パラダイスキング「……なんだテンション低いなオメー」
マホ「睡眠不足は肌に悪いんだよ! けっ!」
パラダイスキング「そーかよ、んじゃ俺は勝手にいくぜ」
マカオ「待ちなさい!」
パラダイスキング「ああん?」
144 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 22:17:23.78 ID:Lz8qDcvo0
ジョマ「あんたバカね。順番に行って順番にやられるのはヒーローもののお約束じゃない」
マカオ「アクション仮面好きなのにそんなこともわかんないのー?」
ジョマ「どうせここに来るしかないんだから、それまで待っていればいいわ」
マホ「だとよ。私は引き続き仮眠させてもらうぜ」
アナコンダ「しかし、退屈で死にそうだな」
ハブ「はははアナコンダ様。魔人の身体でどう死ぬと言うのですか」
アナコンダ「不死身ジョークだよぬはははははは」
アナコンダ「だが、退屈しのぎのショーくらい用意してくれているのだろう?」
ジョマ「あたり」
マカオ「ぶーりぶりざえもーん?」
ぶりぶりざえもん「……これが最後のサービスだぞ」
と、ヘンダー城のいたるところにモニターが出現する。
モニターには、人形に襲われるカスカベ各地の映像。
145 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 22:19:03.54 ID:Lz8qDcvo0
ハブ「市内の監視カメラの映像か……」
パラダイスキング「ほー、なんかやべえことになってんな?」
アナコンダ「ふははははは、ほら逃げろ逃げろ……ああ、惜しいなあ」
パラダイスキング「なあ賭けようぜ。次に映る奴が逃げ切れるかどうか」
アナコンダ「なかなかの名案だな」
ハブ「では私は、あのペアルックのカップルが逃げ切れる方に20万」
パラダイスキング「あー? そりゃ大穴じゃねえか?」
ヘクソン「…………」
146 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 22:20:04.21 ID:Lz8qDcvo0
映像が切り替わる。
21世紀博のホールに籠城した市民たち。
ジョマ「市民の大部分はここにいるわ」
マカオ「奴らが来る直前に、こちらの光景をお届けしちゃうわよ」
ジョマ「ぶりぶりざえもん?」
マカオ「あんたも一緒に、救いのヒーローが一度に全滅するのを見て―-」
マカオ・ジョマ「絶望するといいわ」
147 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 22:21:35.92 ID:Lz8qDcvo0
椅子に座り込んで、瞑想したままのヘクソン。
立ち上がり、玉座の前に歩み出る。
ヘクソン「……オカマども。俺はこんな余興に興味はない」
ヘクソン「俺は先に行くぞ」
ヘクソン「……あのコートの男と、野原しんのすけと勝負がしたい」
マカオ「しょーがないわねえん」
ジョマ「いいわ。捕まえてきたご褒美ね」
パラダイスキング「なんだよ、ずりーなあ」
ヘクソン、他の者をにらむ。
ヘクソン「手を出せば俺が相手になる」
ヘクソン「もうひとつ。スゲーナスゴイデスのカードを一枚よこせ」
ジョマ「贅沢ね」
マカオ「ンでもあんたいい男だからあげちゃーう」
ジョマ「どうせあなたじゃ使えないだろうけどね」
宙に浮くカードの束。一枚がヘクソンの元へ飛ぶ。
マカオ・ジョマ「行ってらっしゃい」
広間から姿を消すヘクソン。
ジョマ「四枚、カードが足りないわね」
マカオ「あら気づいたー? またあの人形がくすねたみたいよ」
ジョマ「けれどこの方が面白いわね。牙のない獣を狩っても仕方がないもの」
マカオ・ジョマ「ククククククククク」
148 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 22:24:32.44 ID:Lz8qDcvo0
ヘンダーランド 見張り塔
ひろし「……誰もこねーな……」
みさえ「こっちから行くわけにはいかないの?」
トッペマ「そうですね。この、ロールシャッハさんが
目を覚ましてくれればその際に動くべきなのですが……」
よね「……みんな、来るよッ!」
ひろし「な、なにィッ!」
子供たちが目を覚ます。
ヘクソン、ヘンダーランドの建物の間を飛び越えてやってくる。
アクション仮面、タイミングを合わせ、窓に飛び込む瞬間に拳を放つも
あっさりとかわされ、逆に顎を打ち抜かれる。
アクション仮面「うぐっ!」
しんのすけ「……お?」
しんのすけ「アクション仮面!」
飛び起きるしんのすけ。
しんのすけ「おいお前! アクション仮面になにすんだ!」
ヘクソン「…………」
トッペマ「トッペマ・マペット!」
ヘクソンが手をかざす。
トッペマの手からはなにも出ない。
トッペマ「魔法が……効かないっ!?」
ヘクソン、距離を詰めて蹴り飛ばす。
トッペマ「くっ……!」
ヘクソン「落ち着け。お前たちにはなにもしない」
149 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 22:25:11.70 ID:Lz8qDcvo0
よね「……?」
ヘクソン、ロールシャッハに歩み寄る。
ヘクソン「用があるのはこの男だけだ」
トッペマ「そ……その人はまだ意識が戻らないわ、なにをしようというの?」
ヘクソン「……この男の精神を見る」
ヘクソン「野原しんのすけ」
しんのすけ「」ビクッ
ヘクソン「俺と勝負だ」
しんのすけ「……う、受けて立つゾ!」
みさえ「ダメよしんちゃん!」
150 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 22:26:47.47 ID:Lz8qDcvo0
ヘクソン「この男は今、記憶に紡がれた夢を見ている」
「俺はこれから、この男の精神を破壊しにかかる」
「それが勝負だ。お前とこの男の記憶とを繋ぐ。夢を共有するのだ」
ヘクソン「その中でこの男を捜し、救い出せ」
しんのすけ「う〜ん???」
ヘクソン「問題ない。行けばおのずとわかる」
しんのすけ「……わかったゾ!」
トッペマ「精神の中だなんて、いったいどうやって……」
ヘクソン、胸元からカードを取り出す。
トッペマ「……スゲーナスゴイデスのトランプ!」
トッペマ「私利私欲のためでは、その力は使えないわ!」
ヘクソン「そんな下らぬことではない」
ヘクソン「……スゲーナ・スゴイデス」
次の瞬間、カードから黒い触手が次々と伸び、ヘクソンとしんのすけを包み込む。
その塊はロールシャッハの身体に吸い込まれるように消えていく。
151 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 22:28:42.05 ID:Lz8qDcvo0
ロールシャッハ(――――――――――)
ロールシャッハ(――――――――――)
ロールシャッハ(――――――――――)
ロールシャッハ(――――――――――)
ロールシャッハ(――――――ここは、)
ロールシャッハ(俺は、どうなったのだ)
ロールシャッハ(魂が、身体を離れていく感触があった)
目を開く。
ロールシャッハ(!)
152 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 22:29:17.32 ID:Lz8qDcvo0
――――ニューヨークの街。
ロールシャッハ(……ここがあの世か?)
ロールシャッハ(それとも再度、新たな地に飛んだのか?)
ロールシャッハ(…………日誌はある)
153 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 22:33:16.23 ID:Lz8qDcvo0
「ロールシャッハ!」
誰かが呼ぶ声がする。
振り向くロールシャッハ。
そこにいるのは、二人の不良だ。
「ロールシャッハ!」
「おめえに言ってんだよこのチビ!」
「なんとか言えよこの馬鹿!」
ロールシャッハ「……」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………で、でも俺……」
「……買い物に行かないと……」
――ウォルター「母ちゃんのお使いで……」
いつのまにか彼の姿は、赤毛でそばかすの、十歳の少年となっている。
154 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 22:34:19.68 ID:Lz8qDcvo0
タバコの不良(リッチー)「おめえの母ちゃんの欲しがるモノなら知ってるぜ!」
帽子の不良「マジでおめえの母ちゃん淫売なのか?」
ウォルター「どいてよ、行かないと……」
帽子「どこにも行かせねえぜ、これでもくらいな」
ウォルターの顔面へ押しつけられる、かじりかけの果実。
少年の顔が、怒りに染まっていく。
155 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 22:37:11.99 ID:Lz8qDcvo0
――ニューヨークの街路で、目を覚ますしんのすけ。
しんのすけ「お?」
しんのすけ「ここどこ? カスカベ?」
しんのすけ「うーん、なんか大事なことがあったような……??」
しんのすけ「うーん、うーん」
しんのすけ「……おお?」
156 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 22:39:10.74 ID:Lz8qDcvo0
しんのすけ「ねえねえなにしてんの? カツアゲ?」
帽子「あーん?」
タバコ「んだァこのガキ……」
しんのすけ「オラ知ってるゾ、こうやるんだよね」グイッ
「『いーもんもんじゃんじょん』」
しんのすけ「ねえねえ、されてる方はどんな気持ち? ねえ今どんな気持ち?」
ウォルター「えっ……どうって……」
しんのすけ「髪の毛赤いけど、キミも不良?」
ウォルター「いや……違……」
しんのすけ「んもーう、率直な意見を述べられないと将来苦労するゾ。とーちゃんいつも言ってるゾ」
帽子「おいおい、急に割り込んできてなんのつもりだよ?」
しんのすけ「世知辛いおじさんたちの社会の観察をしようと思いまして」
タバコ「おじっ……俺はまだ15だ! クソガキ!」
しんのすけ「うっそー、その顔で15歳!? やだーサバ読むにも無理がありますわよねー奥さん」
ウォルター「奥さん……俺?」
タバコ「うるっせーな、どうでも俺はまだ15だ!」
しんのすけ「でもタバコ吸ってるゾ」
タバコ「タバコがなんだよ、ガキじゃねーンだ俺たちゃ」
しんのすけ「じゃあやっぱりおじさんじゃん」
タバコ「……このガキィ!」
157 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 22:40:36.86 ID:Lz8qDcvo0
しんのすけ「おおっといけない! 時間に遅れる」
帽子「んだあ、時計持ってるなんざ金持ちのガキか?」
しんのすけ「いいでしょー。ロレックスって言うんだぞ」
帽子「……サインペンで描いただけじゃねえか」
しんのすけ「じゃ、そういうことで」
タバコ「待てよ、さんざんおちょくりやがって……」
しんのすけ「えー、でもオラ、大事な人を捜してるからおじさんたちにかまっていられませんので」
タバコ「どこも行かせねえよ、二人まとめて……」
警官「お前ら、そこでなにしてる?」
帽子「やべえポリだ、逃げろ!」
警官「待て、おい!」
タバコ「置いてくなよ!」「走れ!」
158 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 22:42:08.12 ID:Lz8qDcvo0
しんのすけ「ほうほう……大人はオマワリさんに追いかけられると」
しんのすけ「……将来不安だなあ」
しんのすけ「さてと、長居は無用ですな」
ウォルター「ま、待ってよ」
しんのすけ「え、なに? もしかしてオラのサイン欲しいの?」
ウォルター「いや、そうじゃなくて……あ、ありがとう、助かったよ……」
しんのすけ「礼ならいらない、アメなら欲しい」
ウォルター、ポケットを探る。
ウォルター「……ごめん、なんにもあげられないや」
ウォルター「……人を捜してるの? さっき言ってた、お父さん?」
しんのすけ「おお、そうだった」
「んーとねー、シャッちゃんっていう人。
茶色のコート着て、しましまのマスク被ってるの」
ウォルター「……変わった人を捜してるんだね」
しんのすけ「ほんとほんと、もう信じられないくらい変な人」
ウォルター「キミが言うってことは、すごく変なんだろうね」
ウォルター「……ごめん、でも俺、そんな人知らないんだ」
しんのすけ「ほおほお、じゃ、そういうことで」
159 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 22:44:19.97 ID:Lz8qDcvo0
しんのすけ「……」
しんのすけ「なんでついてくるの?」
ウォルター「……いや、キミってすごいなあと思って」
しんのすけ「どこらへんが?」キリッ
ウォルター「うーん……なんだかわかんないけど、なんとなくすごい」
しんのすけ「いやァ、それほどでもォ」
ウォルター「……」
しんのすけ「オラ野原しんのすけ。あんただれ」
ウォルター「俺?」
「俺は……」
ウォルター「ウォルター……ジョセフ・コバック……ス」
しんのすけ「ずいぶん長いお名前ですなあ」
ウォルター「……そうかな?」
しんのすけ「んー……ウォーちゃんとジョーちゃんとコバちゃん、どれがいい?」
ウォルター「え? ああ、ニックネームか……」
ウォルター(考えたことも……なかった)
しんのすけ「どれがいい?」
ウォルター「……なんでもいいよ」
しんのすけ「じゃあ決まり、フーちゃん」
ウォルター「全然違うじゃんか!」
しんのすけ「なんでもいいって言ったゾ」
ウォルター「言ったけども……」
しんのすけ「ジョセ、フゥ〜、から取ったんだゾ」
しんのすけ「なんだかステディな感じがしない? ジョセ、フゥ〜、ちゃん」
しんのすけ「オラのことは特別にしんちゃん、って呼んでもいいよ」
ウォルター「あ、ありがとう、しんちゃん……」
しんのすけ「フーちゃん!」
ウォルター「……しんちゃん」
160 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 22:45:32.46 ID:Lz8qDcvo0
陽が沈んでいく。
ウォルター(あれ?)
土手を歩く二人のシルエット。
河川が真っ赤に染まっている。
川は二つの街を分断している。
一方にはニューヨーク。一方にはカスカベ。
ウォルター(俺、今どこにいるんだろう?)
しんのすけ「うーん、なんか大事なことを忘れてるような……」
「よーしこーなったら!」
「わすれよお〜っと」
161 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 22:52:19.02 ID:Lz8qDcvo0
しんのすけ「……かーえろっと」
ウォルター「帰るの?」
ウォルター「どこへ?」
しんのすけ「どこってキミィ、自分んちに決まってるでしょ」
ウォルター「そうか……そうだよね」
ウォルター「じゃあね、しんちゃん」
しんのすけ「バイバーイ」
しばらく歩き、ふと振り向くしんのすけ。
しんのすけ「……お?」
引き返す。その先で、ウォルターが立ったまま動かずにいる。
しんのすけ「……どしたの?」
ウォルター「なんだか……帰りたくないんだ、家に……」
しんのすけ「おお!?」
しんのすけ「いけないよ、オラたち、まだ知り合ったばかりじゃないか……!」
ウォルター「え?」
しんのすけ「でもキミがどうしてもって言うなら……オラ……オラ……」
162 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 22:55:15.30 ID:Lz8qDcvo0
ヘンダーランド 見張り塔
全員が、静止したロールシャッハの身体を見守る。
よね「……どうなったの……?」
トッペマ「わからない……」
みさえ「しんのすけ、どこに行ったのよ!?」
トッペマ「この方の精神の中にいることは間違いありません。
でも、こんなカードの使い方は私も見たことがない」
トッペマ「それができたのは、あの男が超能力者であることと
関係あるのかもしれません」
トッペマ「……あの男も、悪い意味で非常に強いハートの持ち主でした」
ひろし「そんなことよりどーなるんだよお!」
ひろし「しんのすけが夢の中で人探しだと?
絶対無理に決まってんだろそんなもん!」
アクション仮面「精神を壊すと言っていたな。
もしかすると、しんのすけくん自身も危ないかもしれん」
163 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:00:29.57 ID:Lz8qDcvo0
トッペマ「……同じように、彼の精神に入ることができれば……
手助けができるかもしれません」
よね「……私が行く。カードの使い方を教えて」
トッペマ「ダメよ。本当にできるかどうか確証がない」
風間「そのトランプも、四枚しかないんですよね?」
よね「それでも彼がいなければ、絶対に勝てないわ!」
トッペマ「……使い方は簡単よ。カードを手にして、スゲーナ・スゴイデスと唱えればいいだけ」
トッペマ「でも、本当にカードの力を信じる心がなければ効果は全くないわ」
トッペマ「上辺だけで信じると願っても意味はないのよ」
164 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:04:17.66 ID:Lz8qDcvo0
アクション仮面「……そうとも。私もいまだ、完全に信じる気にはなれていない」
アクション仮面「テレビの中とは違うのだという気持ちが先走っている……」
よね「アクション仮面……さん?」
「彼はね、こう言ってたわ」
「ヒーローとは、最後まで真実の側に立つ者だ、って」
よね「私は信じるよ。ほかに道がないならね」
よね、カードを手に取る。深く息を吸う。
よね「…………スゲーナ・スゴイデスッ……!!!」
165 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:06:39.98 ID:Lz8qDcvo0
――――野原家
しんのすけ「おっかえりー!」
しんのすけ「なんだか、ずいぶん久しぶりな気がしますな」
みさえ「……ただいま、でしょ! あれ? その子は?」
しんのすけ「フーちゃん! カツアゲにあってたところをオラが助けたの」
みさえ「コラ、あんたって子は、またそんな危ないことして!」
しんのすけ「終わりよければすべてよし、情けは人のダメテラス」
みさえ「ためならずよ」
しんのすけ「そうともいうー」
しんのすけ(んー……まだなんか大事なこと忘れてるような……)
しんのすけ「はっ、アクション仮面!」
しんのすけ「そーそー! アクション仮面はじまっちゃう!」
ウォルター「あ、あの、えと……」
みさえ「えーと、ずいぶんお兄さんのお友達ができたのね」
みさえ(こう言っちゃなんだけど……なんだか汚い格好だし……
あんまり健康そうに見えないわ)
みさえ(家出……とかなのかしら)
ウォルター「ええと、その……」
みさえ「よそのうちに入るときは、『おじゃまします!』よ」
ウォルター「お、おじゃ、おじゃまします」
166 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:08:02.41 ID:Lz8qDcvo0
ひまわり「た」
ウォルター「赤ちゃん……」
ひまわり「むー……んっ!」プィッ
ウォルター「……」
しんのすけ「あー、こら、ひまわり!」
「お客さんに失礼な真似しちゃダメッ」ボソッ
みさえ「しんのすけー、シロに餌あげたの?」
しんのすけ「あとでー、アクション仮面がはじまるの!」
みさえ「ほんと、アクション仮面となるとああなんだから……」
シロ「……クゥン」
ウォルター「……」ジィー
シロ「ン! アンン……」
167 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:09:00.44 ID:Lz8qDcvo0
しんのすけ「アクション仮面、観るでしょ?」
ウォルター「……アクション仮面?」
しんのすけ「もしかして、アクション仮面知らないの?」
ウォルター「え……う、うん」
しんのすけ「よし、じゃあ今日からキミもファンになりたまえ」ピッ
アークショーンかーめーん
せいぎのかーめーんー
ゴッゴッゴー レッツゴー!
ウォルター(アクション仮面……)
ウォルター(スーパーマンとか、ナイトオウルみたいなものかな)
アクション仮面「正義は勝つ! ワーッハッハッハ!」
ミミ子「ワーッハッハッハ!」
しんのすけ「ワーッハッハッハ!」
しんのすけ「ほら、君も一緒にやりたまえ」
しんのすけ「ワーッハッハッハ!」
ウォルター「…………ワーッハッハ」
ウォルター「ワァーッハッハッハ!」
168 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:10:57.42 ID:Lz8qDcvo0
みさえ「あなた、お夕飯食べてく?」
ウォルター「いや、でも」
みさえ「いいのよ、遠慮しないで。なんなら泊まってってもいいけど」
「そのときはお家にお電話だけ入れときなさい」
電話の前に立つウォルター。
「…………」カチャ
「………………」ガチャリ
みさえ「あら、終わった? お家の人、いいって?」
ウォルター「…………はい」
169 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:13:10.02 ID:Lz8qDcvo0
しんのすけ「ハンバーグの中にタマネギとピーマン入れるなんて卑怯だゾ!」
みさえ「好き嫌い言う子がいけないの! フーちゃんを見なさい!」
しんのすけ「フーちゃんはオラよりお兄さんだからいいんだもーん」
ウォルター(ハンバーグ……おいしいな……)
みさえ「そんなこと言うんだったら、フーちゃんにうちの子になってもらおうかしらー」
しんのすけ「ええーっ!」
みさえ「言うことの聞けない子はママの子じゃありませんー!」
――ダァン!
しんのすけ「」ビクッ
みさえ「え?」
テーブルを叩いたウォルター。
しんのすけ「ふ、フーちゃん……?」
ウォルター「……」
170 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:14:06.65 ID:Lz8qDcvo0
ひまわり「……えっ、えっ……」
ひまわり「うええええええん!」
みさえ「ちょっと、いきなりどうしたの?」
ウォルター「え……や……」
「なんでも、ないです…………」
みさえ「あーよしよし泣かないで、いい子だから」
ひまわり「ええええん、ええええん!」
みさえ「おどかさないで、ひまわりはまだ小さいんだから……」
ウォルター(赤ちゃん……)
しんのすけ「もう、母ちゃんはひまわりが泣くとすぐこうなんだから」
みさえ「あんたもあたしもこうだったの! あんたのアクション仮面とはわけが違うのよ」
ウォルター(しんちゃんも……しんちゃんの母ちゃんも……)
ウォルター(……俺も……)
ひまわり「ひっ、ひっ、ひっ……」
ひまわり「……たあい」
ウォルター(あの子……笑った)
171 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:15:58.34 ID:Lz8qDcvo0
みさえ「――えー、遅くなるって? はい、はいはい、わかったわよ。
ああ、ええと、今しんのすけの友達が遊びに来てるんだけど……」
みさえ「どうも複雑な家庭の子みたい……ううん、なにもおおごとにしたいわけじゃないの。
でも、年頃の子みたいだから……」
みさえ「あなたに、話を聞いてもらいたかったんだけど……」
――ウォルターとしんのすけ、チラシの裏に絵を描いている。
しんのすけ「それなんの絵?」
白紙の一面に、黒の対称形。
ウォルター「……ん? なんだろう。描いてるときは覚えてたような……」
ウォルター「……なんだと思う? なんに見える?」
しんのすけ「ただの染みにしか見えないゾ」
ウォルター「そう……なんだけど……なにか、別なものを描いていたような」
ウォルター「なんでもいいんだ。なにか、似ている形はない?」
しんのすけ「うーん……」
しんのすけ「うーん……うーんうーん!」
ウォルター「ごめん……無理して考えなくてもいいよ」
しんのすけ「はー、頭使わせないでよまったくもう」
ウォルター「しんちゃんのそれは……? ブタ?」
しんのすけ「ブタじゃないよ。ぶりぶりざえもん」
ウォルター「なに、ぶりぶりざえもんって?」
しんのすけ「ぶりぶりざえもんは、救いのヒーローなんだよ」
172 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:17:22.80 ID:Lz8qDcvo0
ウォルター「ヒーロー?」
ウォルター「それって……アクション仮面みたいな?」
しんのすけ「うーん……多分ね」
ウォルター「アクション仮面と、どっちが強いの? カンタムより強いの?」
しんのすけ「うーんうーん……うーん……」
しんのすけ「一番弱いゾ」
ウォルター「弱いのにヒーローなの?」
しんのすけ「ぶりぶりざえもんはよわっちいけど、
アクション仮面もカンタムロボもどうにもならないとき、
みんなをお助けしてくれるんだゾ」
しんのすけ「だから弱くても、救いのヒーローなの」
ウォルター「……変なの」
しんのすけ「むかーしむかし」
ウォルター「え?」
しんのすけ「オラが考えた、ぶりぶりざえもんの物語」
しんのすけ「むかーしむかーし、
おじいさんとおばあさんがあちこちにいましたが、
ぶりぶりざえもんというブタは、一匹しかおりませんでした――」
173 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:18:40.20 ID:Lz8qDcvo0
みさえ「……ちゃんとよく洗いなさいよー」
風呂場
ウォルター(お風呂は……なんだか好きじゃないな)
しんのすけ「さっき、なんで怒ったの?」
ウォルター「だって……しんちゃんの母ちゃんが……
しんちゃんをいらないって……」
しんのすけ「はあーやれやれ。子供だなあキミは」
しんのすけ「本気で言ってるわけないでしょー。あれはただのし・つ・け」
しんのすけ「つきあってあげるのも大変なんだゾ」
ウォルター「……」
ウォルター「……俺の母ちゃんは、本気で言うよ」
しんのすけ「またまたー」
ウォルター「……」
しんのすけ「……」
しんのすけ「……マジ?」
ウォルター「うん。だからお父さんは、母ちゃんに追い出されちゃったんだ」
しんのすけ「……ほお、ほお……」
ウォルター「でもお父さんはすごい人なんだ。国のために闘った、立派なお父さんさ」
しんのすけ「うちの父ちゃんは全然立派じゃないよ。すぐ酔っぱらうし足は臭いし」
しんのすけ「母ちゃんだってげんこつ! も、ぐりぐり! もするし」
しんのすけ「でもオラは父ちゃんも母ちゃんも、ひまわりもシロもみんな大好きだゾ」
ウォルター「……うらやましいな、しんちゃん」
しんのすけ「フーちゃんは、フーちゃんの母ちゃんのこと嫌い?」
ウォルター「…………」
「わからない」
174 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:19:30.39 ID:Lz8qDcvo0
みさえ「あら、上がったの? ごめんね、うちあなたくらいの子がいないから、
パジャマ、パパのでいいかしら?」
ウォルター「あ……ありがとう……ございます……」
ウォルター、パジャマを顔に当てる。
ウォルター(……お父さん……)
しんのすけ「……くさくない?」
ウォルター「ううん」
「とても、いい匂いだよ」
175 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:21:19.75 ID:Lz8qDcvo0
寝室
ウォルター「しんちゃん」
しんのすけ「なあに、フーちゃん」
ウォルター「また、しんちゃんのうちに来てもいいかな……?」
しんのすけ「いつでもOKだゾ」
しんのすけ「今度、アクション仮面の映画観ようね。
オラがアクション仮面をお助けした話、してあげる」
ウォルター「アクション仮面を助けたの? ホントに?」
しんのすけ「……もしかして疑ってる?」
ウォルター「んー……ちょっとね!」
しんのすけ「それだけじゃないゾ、オラだって、カスカベ防衛隊の一員だもん、
救いのヒーローだもん、何度も、何度も、世界を、お助けしたんだゾ」
ウォルター「……すごいや」
しんのすけ「フーちゃんも、カスカベ防衛隊に入りたい?」
ウォルター「カスカベ防衛隊は、なにをするの?」
しんのすけ「カスカベの安全をお守り……ふわァ……するんだゾ」
ウォルター「俺はできないよ、そういうの」
しんのすけ「できるゾ。オラたち、ほんとに、何度も……世界の危機を救ったんだゾ」
しんのすけ「ほんとにほんと、ほんと……だゾ……Zz」
ウォルター「しんちゃん……」
しんのすけ「……Zzzzzzz」
ウォルター「ほんとに……キミはすごいな」
176 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:23:12.49 ID:Lz8qDcvo0
ひろし「――たーだいまー」
みさえ「あら、ホントに遅かったのね」
ひろし「いやー、ほんと今日は疲れた。ん、この靴……例の、しんのすけの友達のか?」
ひろし「ぼろぼろのズックだなー。そういや、俺も昔こんなの履いてたっけ……」
ひろし「んでー、その子は?」
みさえ「それが……」
しんのすけ「Zzzzzz……」
ウォルター「Zzzzzz……」
ひろし「ははは。もうすっかり寝ちゃってるか。でもしんのすけの友達にしちゃ、確かに大きいな」
「どっちかっつうと、兄弟だな」
「俺が俺の親父になって……ガキの俺を見てるみたいだ」
みさえ「でもホントにこの子、虐待を受けてるとかなら」
ひろし「そりゃいくらなんでも、考えすぎじゃないのか?」
みさえ「万が一ってこともあるじゃない」
ひろし「……俺は未だに、望まれずに生まれる子供ってのが信じられねえよ」
シロ「アン! アン!」
みさえ「あれ、シロ……ゴハンはちゃんとあげたのに」
そのとき居間のガラス戸が割れる。
侵入してくる、ネグリジェの大女。
「……ウォオオオルタアアアアアアア」
ウォルター「……」ピク
177 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:31:21.11 ID:Lz8qDcvo0
ひろし「え、おお、おいなんだあんた急に!」
みさえ「なんなのよ人んちのガラス壊したりして!」
シルビア・コバックス「ウォルタアアアア! どこ!」
しんのすけ「……お」ムニャ
起き上がるウォルター。よろよろと居間へ歩く。
ウォルター「……」
ウォルター「か、母ちゃん……」
ひろし「母ちゃん?」
シルビア「ウォルター! この、この、クソガキがあああ」
しんのすけ「……なになにー?」
みさえ「しんちゃん出てきちゃダメ!」
ひろし「おー、おいあんた! 人んちに上がり込むのみならず自分の子だなあ!」
ひろし「お? なんだ、やるのか? 俺はこう見えて卓球やってたんだぞ卓球!」
「みんなからは人間凶器のひろちゃんとをろあッ!」
しんのすけ「おお、父ちゃん弱い……」
178 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:33:47.11 ID:Lz8qDcvo0
ウォルターは立ち尽くしたまま動けずにいる。
“母ちゃん、ごめんよ”
そう言おうとしたが、顎は震えて言葉にならない。
シルビア「ウォルター! ウォルター! ウォルター? クソガキ?
クソガキクソガキクソガキいいいいいいいいい、
生むんじゃなかった? 生むんじゃなかった!
“さっさと殺しておくんだったよ”!」
ウォルターに迫るシルビア。
そこへ割り込むひろし。
ひろし「キミ、危なーっひでぶ!」
殴られるひろし。
ひろし「ちっくしょー、これでどうだ!」
靴下を手にはめるひろし。
殴られるひろし。
ひろし「うわわわわわ! き、効かねー!」
しんのすけ「父ちゃん!」
ひろし「父ちゃんは平気だ! 引っ込んでろあわびゅっ!」
殴られるひろし。
しんのすけ「かっこ悪いゾ」
ひろし「ど、どうせ俺はカッコ悪い親父さ……」
ウォルター「とう……ちゃん」
みさえ「しんちゃん! 警察呼んで! 110番よ、わかるでしょ!」
しんのすけ「ぶ、ぶっ、ラジャー!」
そのとき、窓から二人目の女が突っ込み――
よね「警察ならここだあ! おらおらおらおらあああ!」
シルビア・コバックスへ当て身を喰らわせる。
倒れ込むシルビア。
179 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:35:56.55 ID:Lz8qDcvo0
しんのすけ「おお、なにしてんのこんなとこで!」
よね「あんたこそなにやってんのよ! 夢の中でさらに寝てどうすんの!」
しんのすけ「お?……お……おおおお! そうだった!」
しんのすけ「くうー! オラとしたことが!」
シルビア「クソガキ、クソガキ、クソガキイイイイイイイ」
シルビアの体中の関節が、ぐしゃぐしゃとメチャクチャな方向へ暴れている。
ひろし「うえ、なんだこいつ! 人形か!?」
よね「バケモノめ!」
よね、銃を撃つが、やはり誰にも当たらない。
よね「ちっ、ほらさっさと行くよ! あんたまで戻れなくなる!」
しんのすけ「でも父ちゃんと母ちゃんが!」
よね「夢の中だけよ! みんなあんたの心の幻!
帰ったら、すぐにまた逢えるから!」
180 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:37:49.11 ID:Lz8qDcvo0
シルビア「クソガ、クソ、クソガキキキキキキキキキキ」グルングルングルン
シルビアの振り回す腕がウォルターに、向かっていく。
ウォルター(母ちゃん、母ちゃん、俺……本当は)
ウォルター「かあ……」
しんのすけ「フーちゃん!」
しんのすけ、ウォルターの手を引く。
よね「その子は!?」
しんのすけ「この子も一緒に行くの! ちゃんと本物のオラのうちにご招待するんだゾ!」
よね「とにかくあんたは肩につかまんな!」
しんのすけ「ほっほーい!」
よねにおぶさるしんのすけ。よねはウォルターの手を握る。
よね「キミ、走れる?」
ウォルター「うん」
「お姉……さんは?」
よね「ふふーん」
よね「ナリタ東西署の正義の味方! グロリアこと東松山よね!」
よね(決まった……)
ウォルター(正義の、味方……)
181 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:38:41.11 ID:Lz8qDcvo0
よね「って、やべ、こうしちゃいられない、走って!」
シルビア「のおおおおおうナナナしいしいしい」グルグルグルグル
シルビア「自分がなにしたたたゴゲベガガキキキキキキたたたた」
ウォルター(母ちゃん)
走り出す三人。
ひろし「しんのすけ!」
みさえ「しんちゃん!」
しんのすけ「父ちゃん母ちゃん、オラ大事な用事思い出したから行ってくるね!」
しんのすけ「ちゃんと帰るから、ひまわりとシロにもよろしく!」
しんのすけ「じゃ、そういうことで!」
182 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:41:34.13 ID:Lz8qDcvo0
カスカベの街、その向こうにニューヨークの摩天楼。
そのあいだに樹々のように生え始める、ヘンダーランドの建造物。
よね「まずい……どんどんメチャクチャに……」
しんのすけ「で、おじさんは?」
よね「あんたが捜してたんじゃないの!?」
しんのすけ「……」
「あちゃー」
よね「あちゃーって、おい!」
よね「きっとまだ……どこかに……」
しんのすけ「そういえばさー、フーちゃんちってどこ?」
しんのすけ「最初にいた、あそこのビルのどれか?」
ウォルター「……わかんない……」
よね「最初にいた……?」
よね「それってどこよ!?」
しんのすけ「うーんとねー」
しんのすけ「あのへん」
摩天楼を差すしんのすけ。
よね「クソ、あんな遠くかよ、クッソ!」
シルビア「クソガキイイイイイイイ」
よね「くっ……」
「しつこいぞコラ!」
よね、シルビアの人形の顔面へ鉄拳を見舞う。
壊れた顔面へ、続けて警棒を突き刺す。
よね「いってえー! 固いっての」
シルビア「壊れちゃう壊れちゃう壊れれれれ」カタタタタ
ウォルター(母ちゃん?)
しんのすけ「また来るゾ!」
後方から、人形の行進が来る。
ヘンダー君の着ぐるみが先頭に立ち、指揮を執っている。
ヘンダー「ヘンだヘンだよ、ヘエエンダアアアラアンドオオオオ」
人形「」「」「」カタタタタタタタタタ
183 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:43:04.44 ID:Lz8qDcvo0
よね「ちっくしょー! もう、なんでもいいからどうにかしてよ!」
しんのすけ「前前前!」
前方から車が突っ込んでくる。運転席には人形。
よね「しめた!」
銃を構える。
よね「リラックス!」
しんのすけ「ほい!」フゥ
よね「あ、ああん」ダァン!
銃弾は、人形の額の中心を正確につらぬく。
よね「よしッ!」
しんのすけとウォルターを抱えて、よねは横転。
車は追っ手の人形の隊列を跳ね飛ばし、そして止まる。
よね「乗るわよ!」
車に乗り込む三人。飛びかかる人形。
よねはUターンさせて人形を振り払い、摩天楼へ向けて走らせる。
184 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:44:19.76 ID:Lz8qDcvo0
よね「ひとまずは安心、と……夢の中だとうまくいくのねー……
これマジにやったら強盗に殺人にひき逃げか……」
しんのすけ「でもさー、なんでカスカベにヘンダーランドも
あんな高いビルもあるの? 夢の中だから?」
よね「かもね。あのトッペマって子が言ってたわ。夢の中というか、記憶の中みたいな。
で、あんたたち二人の記憶が絡み合ってるとかなんとか」
しんのすけ「なんでおねいさんの街は出てこないの?
あんまりいい思い出がないとか?
学生時代に初恋の人に手ひどく振られて――」
よね「私のことはどーでもいいわッ!」
185 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:45:45.08 ID:Lz8qDcvo0
ウォルターは窓を見つめている。
窓の外と、窓に映る自分の顔を交互に見ている。
(母ちゃん)
(あの母ちゃんは?)
(人形?)
(俺の、本当の母ちゃんは……)
(…………………………)
(……そうだ。母ちゃん、あのね)
(母ちゃんじゃない、母ちゃんに逢ったよ)
(ハンバーグ、おいしかった)
(母ちゃんに抱えられて、赤ちゃんが泣きやんで)
(笑ったんだ。魔法みたいだった)
(赤ちゃんは、すごくきらきらしてたよ)
(俺に吼えてこない犬もいたんだ)
(俺、怖くて触れなかったけど、今度は絶対触れるようになるよ)
(父ちゃんの匂いもかいだよ)
(いい匂いだった)
(俺の家にはない匂いだったよ)
(父ちゃんって、すごくかっこいいんだ)
(何度も俺を守ってくれたんだよ)
(でも俺のお父さんはきっと、もっともっとかっこいいよね)
(なんでって、友達ができたんだ)
(すっごく変な子なんだ)
(でも、すっごい子なんだよ)
(それでね、母ちゃん)
(一番すごいのはここからなんだ)
(俺、ヒーローを見たんだ)
(ひとりじゃないんだよ)
186 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:46:25.86 ID:Lz8qDcvo0
書き割りのような夜空に、月とヘンダー城の尖塔のシルエットが映っている。
城はみるみる規模を増し、摩天楼がその下で、地下茎のように埋もれている。
(母ちゃん)
(母ちゃん)
(母ちゃん……帰らなくちゃ)
(でも俺、今、どこへ……)
(…………どこ?)
(どこ……どこ、じゃない)
(ここは……あの光景は)
ウォルター「止めて。止めてくれ」
よね「は? あんた一体――」
ウォルター、車から飛び降りて走り出す。
187 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:48:07.88 ID:Lz8qDcvo0
裸足のまま、混沌のニューヨークを駆け抜けるウォルター。
廃墟になりゆく街の中で、人々が言葉を交わしている。
人形かどうか定かではない。
顔は見えない。
声だけが聴こえる。
「俺ァ、しがない新聞売りだがよ……」
「だからこそ情報にゃコト欠かねえのさ。その上で言ってんだぞ」
「やるなら今しかねえ!」
「ちっ、雨かよ。おっさん、その帽子貸してくれよ。濡れちまう」
「馬鹿を言うな。人にものを貸さないのが、俺の哲学なんだ」
(母ちゃん)
「では、ウォルター、言ってくれ。そのカードの絵が……」
「なんに見えるか」
「わからねえ……教えてくれよ」
「誰か教えてくれよ!」
「好きにしやがれ、くそったれ」
「全部お前に任すからな」
「俺は俺だ。仕事じゃねえ。いいから止めろ」
「ああ、私ひとりで……」
「世界を相手にするのさ」
188 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:49:04.47 ID:Lz8qDcvo0
(世界は)
「かよわくて……傷つきやすいの……」
「そこに、そのスノーボールがあったのよ」
「まるでガラスに閉じ込められた……別世界みたいに思えた」
「あの中はきっと、時間の流れが違うんだと思った」
(偶然の塊だ)
「これから、未だかつてない輝かしい時代が幕を開けるんだ」
「アホくせえんだよ、なにもかも!」
(虚無から生まれ)
「どうせ30年もしねえうちに、水爆がなにもかも燃やしちまうんだ」
「それまでは俺たちの手で社会を守るしかねえ」
「守るって……なにから守ると言うんだ?」
(人生という拷問に歯を喰い縛って耐えてから)
「誰かがなんとかしなきゃならないのに……」
「誰かが世界を救わなきゃ、大変なことに……」
(また虚無に戻る)
「こんな世の中だからこそ、互いに助け合わなければ……生きる意味がなくなってしまう」
「お願いだ、わかってくれ」
189 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:50:29.89 ID:Lz8qDcvo0
(ここは、そうだ)
(帰らなくちゃ)
「この世に正義はねえのかよ?」
「あのスーパー野郎たちは、少なくとも俺たちを守ろうとしてたよな」
「誰かが魔法でパっと片付けてくれたらって……」
「でも、そんな人はいないのよね」
「最近じゃ、スーパー・ヒーローものはさっぱりだ」
「あのテの腐れ超人どもァムカついてたまんねえ……」
「そこに、そのスノーボールがあったのよ」
「……中身はただの水だったわ」
(ごめんよ、母ちゃん、俺……)
「あなたも昔の衣装、着たりする?」
「いや、男がそんな真似をすればお笑い草だ」
「近所の子供たちはみんな、来週のハロウィンに向けて仮装の準備をしているから、
私も浮かれて古着を掘り出すかも知れんがね」
「そうね、人生を正しく導く人の存在はとても重要だわ」
「でも、私にはそんな人がいなかったから……」
「うっかり親切もできやしねえ」
(母ちゃん)
「帽子……ありがとよ」
「なあおっさん、あんたも気ィつけてな」
190 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:51:23.01 ID:Lz8qDcvo0
(帰らなくちゃ)
「生きてることって凄いことなのね」
「本当に素敵なのね」
「……生きてるうちに、私を愛して」
(俺の街へ)
「船を出そうとでも思っていたのかな。まったく僕って奴は……」
「……本物のヒーローと直接逢って」
「彼の仲間に……後継者になるんだと思うと……身震いがした」
(さよなら)
(俺の街へ)
(俺の街へ)
(俺の)
「で、おめえ、名前は?」
「なんでここに来る?」
191 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:53:47.15 ID:Lz8qDcvo0
――アパートの中庭。
部屋にはいくつも灯りがともっており、窓を、ベランダを、非常階段を、
無数の人形たちが埋め尽くしている。
人形たちは互いに話すかのように、虚無の顔を向け合っている。
人形
「」カタタタタ「」カタカタカタ「」カタ「」「」カタタタタタタタタカカカカ
「」カタカタタタタ「」カタカタカタカタカタカタカタカタ「」カカカ「」カタカタ
「」カタカタカタ「」タ「」カカカ「」カタカタカタカタカタ「」カカカカカカ
「」カタタタタタタタ「」カカカ「」カタカタカタカタカタ「」カタタタタカタカタ
「」カタタ「」カタカタカタ「」カタ「」カタカタタタタ「」タ「」カカカ
「」カタタタタタタタ「」カタカタカタカタカタ「」カタタ「」カタカタカタカタタ
「」タタタタタ「」カカカ「」カタカタカタカタカタ「」カタタタタ「」カタカ
「」カタタタタタタタ「」カタカタカタカタカタ「」カタタタタタタタ「」カカカカ
「」タ「」カカ「」カタカタカタカタカタ「」カカカ「」カタタタタタタタカカ
「」カタカタカタカタカタ「」カタ「」「」カタタタタタタタ「」カタカタカタ
「」カタカタカタカタカタカタカタカタ「」カカカ「」カタカタタタタ「」カタカタ
「」カタ「」「」カタタタタタタタ「」カタ「」カタカタタタタ「」カタカ
「」カタカタカタカタカタカタ「」カカカ「」カタカタタタタ「」カタカタカタカカ
「」タ「」カカカ「」カタカタカタカタカタ「」カカカ「」カタタタタカタカタ
「」カタタ「」カタカタカタ「」カタ「」カタカタタタタ「」カタタタタカカカ
「」カタタタタタタタ「」カタカタカタカタカ「」カタカタカタカタカタ「」カタタ
立ち止まるウォルター・ジョセフ・コバックス。
素顔のまま、彼らすべてをにらみつける。
192 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:55:29.80 ID:Lz8qDcvo0
“――――”
“――――ダニエル”
“この街のどこかで、お前ともう一度逢えるだろうか”
“お前がヒーローとなったわけを、俺も少しだけ実感できたようだ”
“俺の父と母”
“ブラウン管とコミック・ブック”
“そして俺のそばに、誰か、ヒーローがいてくれたなら、俺は俺でなかっただろうか”
“いや――”
“それでもお前と、肩を並べただろう”
“叶うならば伝えたい”
“たとえそれが幻でも”
中庭の中心、ヘンダー君が立っている。
手に、犬の鎖を持っている。四つんばいの人形が繋がれている。
ヘンダー「ヘンだ、ヘンだよ、ヘンダーランド」
人形がこちらを向く。
その人形は、顔の砕けたシルビアだ。
ヘンダー「ウソだと、思うなら」「ちょいと」「おいで」「おいで」
人形は――少女の靴を引っかけた骨をくわえている。
それを見つめる無数の人形たちが、今なおささやき合っている。
“だが、もう俺はウォルターじゃない”
“足跡を消すことはできない”
“新たに歩くこともできない”
“そのどちらも、今の俺は望まない”
“俺は――――”
“俺は、ロールシャッハだからだ”
193 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:57:28.81 ID:Lz8qDcvo0
しんのすけ「フーちゃああああん!」
よね「返事して!」
よね「ったく、本当はそれどころじゃ……」
よね「…………」
よね「……!……」
ふと向けた、よねの視線の先――
――――ロールシャッハが歩いてくる。
その奥に、無数の人形の残骸が散らばっている。
しんのすけ「……おじさん!」
よね「待って、人形かも……」
ロールシャッハ「…………」
ロールシャッハ「ここを抜けるぞ。もたもたするな」
しんのすけ「うわー、やっと逢えたのにあの感じ」
よね「……まさにあいつね」
よね「…………やった!」
よね、ロールシャッハにしがみつく。
よね「やったやったあ!」
ロールシャッハ「……」
よね「あ……」
よね「……ごめん……なさい」
しんのすけ「なんで謝るの?」
よね「い、いいんだよ!」
ロールシャッハ「……グロリア」
よね「え、えーと……」
よね「説明すると長くなるけど、ここは」
ロールシャッハ「わかっている」
「すべては幻だろう」
よね「ええと、まあ、そんなところかな……はは」
よね「しっくりくるけど、なーんか納得いかないなー……」
194 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:59:31.54 ID:Lz8qDcvo0
しんのすけ「フーちゃああああん! フーちゃああああん」
ロールシャッハ「……なにをしている」
ロールシャッハ「時はもう無駄にできない」
よね「わかった、わかったってば!」
しんのすけ「フーちゃんは?」
よね「……でも、今はそんなことより――」
しんのすけ「そんなことじゃないゾ!」
ロールシャッハ「…………」
しんのすけ「オラ約束したんだもん! アクション仮面の映画、一緒に観るんだもん!」
しんのすけ「オラがアクション仮面をかっこよくお助けしたこともお話しするんだもん!」
しんのすけ「スンちゃんとルルのことだって、
吹雪丸のことだって、
トッペマのことだって、
オカマのお坊さんたちのことだって、
おっきなロボットのことだって、
父ちゃんと母ちゃんを取り返したことだって、
おまたのおじさんのことだって、
つばきちゃんのことだって、
ぶりぶりざえもんのことだって、
幼稚園のみんなのことだって、
もっともっといっぱい、
まだいっぱいお話しすることがあるんだもん!」
よね「……でも……」
しんのすけ「でもじゃないゾ!」
しんのすけ「フーちゃんは母ちゃんが嫌いで、父ちゃんにも逢えないんだゾ!
アクション仮面も知らなかったんだゾ!
オラより年上のクセにうじうじしていて、
カツアゲもされちゃうんだゾ!
だからオラが、いっぱい楽しいお話聞かせてあげるんだもん!」
195 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 00:00:59.40 ID:e8929ruk0
ロールシャッハ「……シンノスケ」
しんのすけ「なに!」
ロールシャッハ「……そいつは……赤い毛のガキのことか」
しんのすけ「そうだゾ!」
ロールシャッハ「ウォルターは、もう家に帰った」
よね「…………」
しんのすけ「なんでわかるの!」
ロールシャッハ「………………」
ロールシャッハ「 “しんちゃん”に伝えてくれと、そう言われたからだ」
しんのすけ「……」
しんのすけ「おじさんは、フーちゃんの家知ってるの?」
ロールシャッハ「ああ」
ロールシャッハ「知っているとも」
ロールシャッハ「遊ぶのはまた今度だ。今は、お前がお前の家に――」
「帰らなくちゃ……」
ロールシャッハの染みが、少年の絵になる。
196 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/02/24(土) 13:51:28.14 ID:szZ1LMvLO
死んだと思って居た友人にまた会えたような喜び
一生続きは読めないもんだと思ってた
197 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 18:31:28.58 ID:e8929ruk0
>>196
なんかすごいこと言っていただきありがとうございます。
前スレが落ちたときに「まあ完結したらでいいや」と思ってそのまま熱が冷めていました。
198 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 18:58:16.51 ID:e8929ruk0
ロールシャッハ「――それで、出口はどこだ」
よね「あんたが知ってるんじゃないの? あんたを捜してここまで来たのよ!」
ロールシャッハ「俺は知らん」
よね「あああ、クソ! ったくどいつもこいつも」
ハイウェイを突っ走る車。
ロールシャッハ(ここは文字どおりの悪夢だ)
(ニューヨークの街並みは俺……)
(カスカベの街並みはシンノスケ……)
(珍奇な城と人形の怪物は、そこに踏み入る侵略者か)
(いつか記憶を覗かれた、あれを何千倍にもしたようなものだろうか)
よね「ああもうクソ! スゲーナスゴイデス、スゲーナスゴイデス!
もしもーし! トッペマー! 聞こえるー!?」
ロールシャッハ(……グロリアは狂ったのか?)
(無理もない。俺ですら狂いかねん)
(……グロリア……)
(……あの女に似ている)
(今度こそはきっと)
(……そうだ。シンノスケもそうだ)
(“必ず無事に連れ戻す”)
ロールシャッハ(シンノスケは……)
ロールシャッハ(他の誰にも似ていない)
199 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 19:55:42.34 ID:e8929ruk0
摩天楼がヘンダー城につぶされ始め、倒壊していく。
あとに残るのは底のない暗闇と、廃墟のようなヘンダー城。
ボロボロの車で走りながら、それらを眺める三人。
よね「あっちはもうダメね。カスカベ側に引き返すしかなさそうだけど……」
窓に手をついて、外を見るしんのすけ。
しんのすけ(フーちゃん……)
しんのすけ「…………」
しんのすけ「お?」
しんのすけ「……ヘクソンだゾ!」
よね「なにィッ!」キキッ
しんのすけの指さす先、暗闇に浮かぶ尖塔にヘクソンが立っている。
宙に浮く尖塔を飛び越えながら、こちらへ接近している。
ロールシャッハ「……俺が行こう。お前たちは先に行け」
よね「なんで!? せっかく逢えたのに! あんたを連れ戻すのに……」
ロールシャッハ「すぐに戻る。約束する。三……」
ロールシャッハ「……いや、四人で、必ず帰還する」
ドアを蹴破り、飛び出すロールシャッハ。
フック銃を抜いた。
200 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 20:28:15.53 ID:e8929ruk0
――尖塔の上で対峙するヘクソンとロールシャッハ。
ヘクソン「お前の心を初めて読んだときにわかった」
ヘクソン「お前は一度、終末を味わっているな」
ロールシャッハ「…………それがどうした」
ヘクソン、答えを返さずに周囲を見る。
ヘクソン「……これがそれを経たお前の心象風景というわけだ」
「……まるで、」
「まるで廃墟の街ではないか」
ロールシャッハ「…………」
ヘクソン「……一部始終、見させてもらった」
ロールシャッハ「どうだ。感想のほどは」
ヘクソン「…………」
ヘクソンが拳を作り、ゆっくりと構える。
ヘクソン「これがそうだ」
ヘクソン「安心しろ。今この空間で、互いの能力に意味はない」
ヘクソン「どの道、使えたとて変わりないがな」
ロールシャッハ「…………HURM.」
ロールシャッハ「…………いいだろう」
にらみ合うロールシャッハとヘクソン。
周囲では、ヘンダー城と摩天楼が音を立てて崩れている。
砕けて、その下の暗闇に消えていく。
201 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 20:29:04.38 ID:e8929ruk0
ロールシャッハ「…………」
ヘクソン「…………」
ヘクソン「…………」
ロールシャッハ「…………」
ロールシャッハ「…………」ヘクソン「…………」
ヘクソン「…………」ロールシャッハ「…………」
ロールシャッハ「……………………」ヘクソン「……………………」
ヘクソン「……………………」ロールシャッハ「……………………」
ロールシャッハ「…………………………………………」ヘクソン
202 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 20:31:43.24 ID:e8929ruk0
『!』
刹那、同時に突きだされる拳。
互いの拳が互いの胸を突き、そのどちらもが手首までをめり込ませている。
ヘクソンの唇から血が流れる。
ロールシャッハのマスクの下、痣のように血がにじんでいく。
ロールシャッハ「……MMMM…………」
「UK,UU…………AAK」
拳を引き抜くロールシャッハ。
手袋は血に染まっている。
ロールシャッハ「KUFF,KUFF」
ロールシャッハ、膝をつく。
マスクから漏れたおびただしい血が首筋へ流れる。
ヘクソン「……それが、俺とお前との差だ。ウォルター……」
「いや、ロールシャッハ」
ロールシャッハを見下ろすヘクソン。
ヘクソン「やはり、拳ひとつでは足りなかったか」
「俺たちは互いに絶望した。自らの立つ世界に」
「崖へ飛び込んだのだ。俺は抵抗しなかった。深淵へ向かって」
「お前は飛んだが、しかし落ちなかった。
切り立った岩に刻まれながら、しがみついていた」
「その傷では登ることはできない。だがお前は落ちることもしない」
ヘクソン「ただじっと、俺の居場所をにらみつけている」
ヘクソンの胸には、風穴が開いている。
203 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 20:33:10.21 ID:e8929ruk0
ヘクソン「……お前の姿を再び見たときからわかっていた。俺は、お前には勝てぬと」
ヘクソン「その鋼鉄の心を、俺は壊したかった」
ヘクソン「……いや違うな。確かめたかったと言おう」
ロールシャッハ「……なにが言いたい」
ヘクソン「それがすべてだ」
ヘクソン「俺は一足先に離脱するとしよう」
縁に足をかけるヘクソン。
二人の立つ尖塔はすでに崩壊が進み、大きく揺れ動いている。
ロールシャッハ「待て、どこへ……」
ヘクソン「俺はこの先、ただお前の行く末を見るにとどまる。
野望がついえるのは初めてでもない」
ロールシャッハ「待て、ヘクソン……UUMMM」
ロールシャッハ「出口はどこだ? どうしたら現実に戻れる?」
ヘクソン「俺は答えではない」
ヘクソンの足元、縁にヒビが入る。
ヘクソン「この崩壊はお前の精神が引き起こしている」
ヘクソン「お前は世界を変えようとするが……
いずれせよ世界は救えないのだと思っている」
ヘクソン「だから崩れる」
足場が崩れ、ヘクソンは落ちて行く。
ヘクソン「お前がまだ、崖へしがみつくならば早く行け」
ヘクソン「出口が崩れてしまわぬうちに」
ロールシャッハ「…………」
ロールシャッハ「…………」
ロールシャッハ「HOO…………HURM……」
204 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 20:37:53.27 ID:e8929ruk0
よね「――ちょっとなんか、どんどん壊れてってない?」
よね「やばいやばいやばい、走れるとこほとんどないって!」
ガタン!
ボンネットに着地するロールシャッハ。
車へ乗り込む。
よね「!」
しんのすけ「おじさん!」
ロールシャッハ「待たせた」
よね「って早! ほんとにすぐ来たのね!」
ロールシャッハ「カタはついた」
よね「それはいいけど、どんどん周りが壊れてくんだけど」
よね「あの城がにょろにょろ伸びたら……なんだか腐ったみたいに、ぼろぼろー、って」
しんのすけ「後ろの方、もう道がなくなっちゃったゾ」
よね「げえっ!」
ロールシャッハ(俺の出口……)
ロールシャッハ(ニューヨークの街へは引き返せん)
205 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 20:39:26.39 ID:e8929ruk0
しんのすけ「あーっ! オラんち!」
倒壊した野原家の前を通る。
しんのすけ「父ちゃーん! 母ちゃーん! ひまわりーっ! シローっ!」
ロールシャッハ「無駄だ。このカスカベもお前の精神の表れでしかない」
しんのすけ「じゃあなんで壊れてくの?
オラ、カスカベにこんな風になってほしいなんて少しも思ってないゾ!」
しんのすけ「おじさん! おじさんってば!」
ロールシャッハ「…………」
ロールシャッハ「……シンノスケ」
ロールシャッハ「……俺が原因のようだ」
よね「はあ!?」
ロールシャッハ「ヘクソンが去り際に言った……俺が引き起こしたと」
ロールシャッハ(記憶のせいだ)
(ニューヨークの、300万の亡者の記憶)
(その廃墟にしがみつけと?)
(……ダメだ。今、救うべき世界があるのに)
(…………日誌か?)
(……ここにあるのが、ニューヨークに置いてきた日誌ならば……)
(そこになにか手がかりが……)
ロールシャッハ(2000年6月……違う。ダメか。ここにあるのも、新しい日誌だ)
206 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 20:42:15.78 ID:e8929ruk0
よね「あーん、もうこうなったら!」
よね「しんのすけ! あんたが頼りよ!」
よね「なんかこう、こう、楽しいこととか想像してみて!」
しんのすけ「それでどうにかなるの?」
よね「知らねーよ! でも、やるだけやって! お願い!」
しんのすけ「んー……んー……」
(こういうとき、救いのヒーローが現れてくれるんだゾ)
(アクション仮面……カンタムロボ……ぶりぶりざえもん……)
しんのすけ(…………)
しんのすけ(……フーちゃん)
207 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 20:44:35.35 ID:e8929ruk0
――しんちゃん、しんちゃん、聞こえる?
しんのすけ(……え、だれ?)
――あたしよ、つばき。もしかして忘れちゃった?
しんのすけ(……つばき……ちゃん?)
しんのすけ(……忘れるわけないゾ!)
しんのすけ(どこ!? どこにいるの?)
――……いい、しんちゃん、よく聞いて。
ここはあの映画の中とおんなじ、お話の中だよ。
しんちゃんの街と、お友達の街のお話。
でも、ハッピーエンドじゃないみたい。
――しんちゃん、そんなところにいちゃダメ。
お友達と一緒に、早くお家に帰らなくちゃ。
パパとママも、みんなみんな、お外で大変なことになってるよ。
早く、急いで。
本当の世界のハッピーエンドに間に合わないよ。
しんのすけ「……わかったゾ、つばきちゃん!」
しんのすけ「カスカベ座! そこだゾ、きっと!」
ロールシャッハ「!」
よね「カスカベ座ってあのわかんないとこの……もう崩れてるんじゃ……」
しんのすけ「そんなことないゾ、このおバカ!」
ロールシャッハ「……他に向かえる先はないな」
208 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 20:45:34.48 ID:e8929ruk0
――瓦礫の中のカスカベ座
よね「――残ってる! しかもこれだけしっかりくっきり……」
よね「でもまあ……確かに元から異次元にあるような建物ってゆーか」
ロールシャッハ(謎の多い建物だったが)
ロールシャッハ(なるほどな。おそらくここにも、誰かの念が込められていたのだろう……)
ロールシャッハ(きっとなにか、強い愛の念が)
スクリーンへ向かう三人。
しんのすけ「こっちこっち!」
古ぼけたスクリーンへ向けて、映写機が光を当てている。
スクリーンには真っ白な光の他、なにも映っていない。
よね「……上映してる?」
ロールシャッハ「!」
(……光が……はね返って……)
209 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 20:57:36.42 ID:e8929ruk0
――――――
ロールシャッハ「なんだ……なにもない……空間……?」
つばき「――こっち、こっちでーす」
しんのすけ「……!」
よね「……ええと」
ロールシャッハ「……HURM.」
しんのすけ「……つばきちゃーん!」
つばき「しんちゃーん!」
よね「なに、知り合い? どうなってんの?」
しんのすけ「わかってないなー。愛の奇跡、って奴」
よね「たかが五歳児がなに言ってんだか……」
しんのすけ「つばきちゃん、また逢えたね」
つばき「しんちゃんが、あたしのこと覚えていてくれたおかげだよ」
しんのすけ「やだなー。忘れるわけないゾ。つばきちゃんのこと!」
しんのすけ「いやーそれにしてもピンチのときに助けてくれるなんて、
つばきちゃん、男心わかってるうー」
つばき「あはは。ありがとう。ずうっとここから見てたんだよ。
でも、なかなか声が届かなかったの」
ロールシャッハ「……ここはなんだ? 本当に、あの幻覚の出口なのか?」
つばき「ええと、あたしも……詳しくはわからないんですが、
多分それで合ってると思います。じきに、元の世界へ帰れるはずですよ」
しんのすけ「……オラ帰りたくない、ずっとここにいたーい」
つばき「ダメだよ。しんちゃんはちゃんと、しんちゃんの世界を生きなくちゃ」
ロールシャッハ「そうだ。いつまでもここにいるわけにはいかん」
210 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 21:00:32.93 ID:e8929ruk0
しんのすけ「……つばきちゃん、さみしくない?」
つばき「……う、うん、さみしくはないよ、オケガワさんや……
クリスさんたちもいるし……そう、たまにこうやって、
カスカベ座のことを覚えていてくれる人が来てくれるもの」
しんのすけ「」ポワーン
つばき「……でも! しんちゃんがいないのは、ちょっとさみしいな!」
しんのすけ「そ、そーでしょそーでしょ、うん!」
しんのすけ「…………つばきちゃん、また逢える?」
つばき「……逢えるよ、きっと」
しんのすけ「あれ、でもそーいえばおじさんが四人で帰るって……そうだ、フーちゃん!」
しんのすけ「つばきちゃんつばきちゃん、もう一度向こうに戻して! 友達待たせてるんだゾ」
つばき「友達? 友達って――もしかして、赤い髪の男の子?」
しんのすけ「うん。おじさんは家に帰ったって言ってたけど、
でもホントは急にいなくなっちゃったんだよ」
つばき「…………」
ロールシャッハ「…………」
よね「?……どうしたの、二人とも」
つばき「いえ、なんでもありません」
211 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 21:01:39.37 ID:e8929ruk0
しんのすけ「もしかして……つばきちゃんみたいに……」
つばき「ううん、その子はね」
しんのすけ「あーっ、でもダメ! つばきちゃんにはオラの方が似合ってるゾ!」
頭を抱えるしんのすけを見て、ほほ笑むつばき。
つばき「安心して。その子はちゃんと、お家に帰れたから」
つばき「おじさんの言ったことは本当だよ。だから大丈夫」
しんのすけ「じゃ、また逢えるの?」
つばき「もちろん! あたしとしんちゃんだって、こうやって逢えたじゃない」
しんのすけ「じゃあ、アクション仮面に頼んで、カスカベ座でもっかい映画やってもらおーっと。
約束したんだ。フーちゃんと一緒にアクション仮面の映画観るって」
つばき「…………ありがとう。それじゃ、ここで待ってるよ」
212 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 21:03:27.79 ID:e8929ruk0
つばき「……」
つばき「あの……」
ロールシャッハ「なんだ」
つばき「お願いがあるんです……難しいかも知れませんが……
しんちゃんに、あなたのことを教えてあげてくれませんか」
つばき「無理にとは言いません。
でも、あたしはしんちゃんのところへは行けないから……」
ロールシャッハ「…………」
ロールシャッハ「…………約束しよう」
ロールシャッハ「俺から最後に、もうひとつ聞きたい」
ロールシャッハ、日誌から栞に使っていた写真を見せる。
ロールシャッハ「この少女……よく似ているが、お前か?」
つばき「わあ、嬉しい……そうです。まだ、残っていたんですね!」
ロールシャッハ「そうか……なら、こいつはお前に渡そう」
つばき「いいえ、大切にしていただいてるみたいで、とても嬉しいです」
つばき「それはあなたが持っていてください」
「あたしがここに……いえ、しんちゃんやあなたたちと逢えたのは、
そのカードが呼んだ奇跡かも知れませんから」
ロールシャッハ「………………」
ロールシャッハ「…………ああ」
栞をはさむロールシャッハ。
213 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 21:04:44.06 ID:e8929ruk0
つばき「……そろそろ、お時間のようです」
よね「うわ、またなんか光が……」
ロールシャッハ「……出口の光のようだな」
しんのすけ「よーし」
しんのすけ「ふん! ふん!」
自らの頬を張るしんのすけ。
しんのすけ「オラのカスカベを、お助けに行くゾ!」
振り返り、手を振るしんのすけ。三人の姿が消えていく。
しんのすけ「じゃあねー! つばきちゃん! きっとまた来るからね!」
つばき「……うん、また逢おうね!」
つばき「……がんばってね、しんちゃん」
214 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 21:11:46.20 ID:e8929ruk0
ヘンダーランド 見張り塔
ロールシャッハの身体が震え、光とともにしんのすけとよねが飛び出してくる。
アクション仮面に受け止められるしんのすけ。
アクション仮面「しんのすけ君!」
トッペマ「しんちゃん!」
よね、飛び出したまま壁にぶち当たる。
よね「いってえ!」
ひろし「うまくいったのか!?」
よね「……ヘクソンは!?」
アクション仮面「キミたちより先に、飛び出していった光があった。
おそらくそれだろう」
マサオ「おじさん……」
ロールシャッハ「…………UMM……」
ロールシャッハ「KUFF,KUFF」
ロールシャッハ、周囲を見渡す。
ロールシャッハ「HURM.まだ異次元とはな……」
よね「ああいや、なんていうかそうじゃなくて――」
215 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 21:16:19.68 ID:e8929ruk0
――日付不明 ロールシャッハ記
詳細な経緯を書き留めておく余裕はない。
事態が収束するまで、おそらくこれが最後の手記となるだろう。
更新されるかどうか、今の俺にはわからない。
俺たちは、あの混沌の世界を抜け出すことに成功した。
あの少女はそれを奇跡と呼んだ。
いいや。違う。
空の上に神はいない。
あの少女は天使なんかじゃないし、奇跡など起きようはずもない。
あれは奇跡ではない。
俺たちの残したなにもかもが、集束して生まれた在るべき結果だ。
価値はある。そうだ、この世界には――
救うというだけの、途方もない価値が。
216 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 21:25:43.06 ID:e8929ruk0
ロールシャッハ「あんたがアクション仮面か……ショーにいた奴だな?」
アクション仮面「ん? あ、ああ、そうだとも」
スッ
アクション仮面(ん? 手? 握手か?)
ギュッ
ロールシャッハ「……」
アクション仮面「……そろそろ放してくれないか?」
ロールシャッハ「ああ」
アクション仮面(……なんだ今のは……)
217 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 21:28:21.32 ID:e8929ruk0
21世紀博 ホール
避難しているカスカベ市民。外ではまだ人形の歩く音がする。
ホールの中は、予備電源によってかろうじて灯りが保たれている。
停電は復旧しない。
電波も届かない。
不安だけが蔓延している。
「ねえ、どうなってるの?」
「警察は? 自衛隊は?」
「そういや俺、なんか外国の軍隊みたいなの見たぞ」
「あ、あたしもあたしも」
「怖いよう怖いよう」「お母さん」
むさえ「いやー、あちーね。冷房行きわたってないよねこれ絶対」
むさえ「ちょっと、筋肉の人もっと向こう行ってよー」
ルル「あなた、ずいぶん能天気ですね」
むさえ「だって心配してもしょうがないじゃん?」
スンノケシ「しんちゃんたちのことも、ですか?」
むさえ「んー、心配してないと言ったら、別にそんなことないよ?」
「でもさ、しんのすけっていつも、なんだかんだどうにかしちゃうっていうか」
「変な話、かえって安心してんだよね」
「だって、そんな気がしない?」
ローズ「……そうね、しんちゃんなら」
ラベンダー「ジャークを復活させたときはどうなるかと思ったけど」
レモン「あれも結局、笑って終わったしねー」
サタケ(ひまわりちゃん、大丈夫かな……)
むさえ「ね? 信じて待つって、そういうことじゃない?」
218 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 21:39:41.70 ID:e8929ruk0
「あのロールなんとかいう犯罪者、どうなったんだ?」
「ここに紛れ込んでるんじゃない?」
「バーカ、あいつがやったに決まってんだろ」
「なにをだよ?」
「全部だよ、これ全部。決まってんじゃねえか」
ふと、子供がひとり泣き出す。
「おいうるせえぞ、黙らせろよ!」
サタケ「子供に黙れとはなんだこの野郎!」
さらにたくさんの子供が泣き出す。
ローズ「あーあ。悪化させちゃった」
サタケ「ぐぬぬ」
「もうイヤ! 早くおうちに帰して!」
「そうだ! ここにいても仕方ないだろ!」
「みんなで出ようぜ!」
「おい待てよ、開けたら入ってくるだろ!」
徐々にざわめきが広まっていく。
スンノケシ「……サタケさん、お願いがあります」
サタケ「ん……?」
ルル「王子……?」
219 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 21:54:26.50 ID:e8929ruk0
サタケの肩に乗り、ステージの上に上がるスンノケシ。
「ああん?」
「なんだなんだ?」
「あらあの人いい筋肉ねえん、ステキだわあ」
スンノケシ「皆さん、よく聞いてください!」
スンノケシ「今ここで僕たちにできることはありません!」
「なんだあ、あのガキ……」
スンノケシ「でも考えてみてください、外の人形は、まだここへは入ってきません」
「なにか目的があるのかもしれません!」
「なにかはわかりませんが、すぐに襲ってこないことは確かです!」
さらにざわめく市民。
「だからなんだ!」
サタケ「おお、黙って聞けえいッ!」
スンノケシ「今、僕たちのために闘ってくれている人たちがいます!」
スンノケシ「今は、彼らを信じましょう! ここで騒ぎを起こせば、きっと敵の思うツボです!」
「誰が、」
「誰が闘ってるんだよ!?」
「そうだ! それを言え!」
スンノケシ「皆さんに凶悪犯と誤解されている、ロールシャッハさんという―-」
「はあ? 何言ってんだよ?」
「お前もあいつの仲間じゃないのか!?」
サタケ「おい、黙ってろっつったぞ!」
220 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 21:55:52.59 ID:e8929ruk0
園長「――あれ? しんのすけ君じゃーないですか!」
立ち上がる園長。
スンノケシ(……全然知らない人だ……)
(……でも、合わせておこう)
スンノケシ「ほ、ほっほほーい!」
園長「皆さん! あのコは私の幼稚園の園児ですよ!」
「幼稚園児がこんな立派なことを言ってるんです!」
「我々大人がしっかりしなくてどうするんですか?」
よしなが「しんちゃん……なんていい子に……」グス
まつざか「あれほんとにしんのすけ君?」
上尾「いいですねっ、あの、王族みたいな服!」
ローズ「いいわよーしんちゃん!」
ラベンダー「おにいたま、あの子は――」
レモン「いいのよ、今はしんちゃんで!」
チータ「うわマジだ、しんのすけ!」
北本「あらやだほんと!」
ロベルト「オー、ナンカわからんが、すごいぞチンノスケ!」
竜子・お銀・マリー(知り合いからすると衝撃の方がつええな……)
あい「真面目なしん様……素敵ッ……」クラッ
黒磯「お嬢様、お気を確かに!」
徐々に徐々に、しんのすけの名前を呼ぶ声で埋まっていく。
スンノケシ(……すごいな、しんちゃん)
スンノケシ(こんなにたくさんの友達がいるんだ……!)
221 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 21:56:56.53 ID:e8929ruk0
ルル「王子……」ホロリ
サタケ「あんたのとこの王子、子供なのに手がかからなそうだな」
サタケ「それはそれで、さみしくねえか?」
ルル「いいえ、ちっとも」
ルル「私たちの、自慢の王子ですよ」
222 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 22:01:19.84 ID:e8929ruk0
ヘンダーランド 見張り塔
ロールシャッハ(トッペマという人形から経緯を聞いた)
ロールシャッハ(敵はまだ城内にいる)
ロールシャッハ(俺たちが来るのを待ち構えているのだろう)
ロールシャッハ(そして、スゲーナ・スゴイデスというカード)
(これが切り札となる)
(戦力から見て、他に方法はない)
ロールシャッハ「残りが三枚か……」
ロールシャッハ「城内でこの三枚を使ったとしても―-」
トッペマ「ただ使うだけではまったく意味がないでしょう」
トッペマ「ゼロ距離で、カードの力すべてをオカマ魔女たちに叩き込む」
トッペマ「おそらく、それしかありません」
ロールシャッハ「HURM……」
風間「あの、僕たちにもできることありませんか?」
ネネ「ネネも闘う!ここまで来たんだもん!」
マサオ「き、気を散らすくらいできるよねっ」
ボー「隙を、つくる!」
アクション仮面「子供たちも含めて大丈夫か?」
よね「カードを持たせておけばいい。きっと大人よりうまく使えるよ」
トッペマ「私の魔法は弱いけど、みなさんを守るくらいはできます」
ひろし「あーもう、やりゃいいんだろやりゃあ!」
みさえ「そうよ、それしかないんだから!」
ひまわり「た!」
シロ「アン!」
しんのすけ「みんなで行くゾ、おじさん!」
ロールシャッハ「……HURM……」
223 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 22:03:05.33 ID:e8929ruk0
ヘンダー城 城門前
夜霧の線路の上に、一直線に並ぶ一同。
しんのすけ、ロールシャッハ、アクション仮面、よね、
ひろし、みさえ、風間、ネネ、マサオ、ボー、ひまわりを乗せたシロ。
しんのすけの前方、宙を舞うトッペマ。
空は群青色。わずかに明るくなりつつある。
224 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 22:06:08.29 ID:e8929ruk0
トッペマ「――いい? いくわよ」
トッペマ「トッペマ・マペット!」
城門が開き、線路へつながる。
しんのすけ「カスカベ防衛隊……………………ファイヤー!!!」
一同「「「ファイヤアアアアアアアアアアアアアアア!!!」」」
一同(劇画)「「「オラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」」」
225 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 22:07:24.69 ID:e8929ruk0
ヘンダー城 広間
ジョマ「来たわね」
マカオ「ほーんと待ちくたびれちゃったわ」
ジョマ「何の考えもなく特攻かしら?」
マカオ「悪あがきするのも素敵ね」
ジョマ「……ぶりぶりざえもん?」
ぶりぶりざえもん「……フン」
226 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 22:11:31.91 ID:e8929ruk0
21世紀博 ホール
突然、ステージ上のスクリーンに映像が映る。
だけでなく、各所のモニター、市民たちの携帯電話にも同じ映像。
マカオ「聞こえるかしらー? カスカベ市民のみなさん?」
ジョマ「あたしたちがその人形の主人よ、よろしくね」
すると、人形たちがホールの窓にまで押し寄せてくる。
窓に張り付く無数の人形。
マカオ「さーて今こちらではァん、」
ジョマ「あなた方愚民どものために戦ってくれてる救いのヒーローたちがいるわ」
走り抜けるしんのすけたちが映る。
一同(劇画) 「「「オラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」」」
「あれ……あの、ロールシャッハとかいうの!」
227 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 22:12:27.22 ID:e8929ruk0
組長「? しんのすけくんが二人!? こっちにいるのは……?」
よしなが「風間くんたちも!」
まつざか「あそこ、ヘンダーランドじゃない?」
上尾(……行きたかったなー、ヘンダーランド)
ローズ「あら、あのコ頑張ってるじゃない!」
ラベンダー「あれでも一応刑事だもの」
レモン「ガッツは人一倍あるものね」
サタケ「ひまわりちゃーん、気をつけて―!!」
むさえ「あれ、ねーちゃんと義兄さんまで……」
「あ、アクション仮面だ!」
「郷さん? 本人?」
「がんばれえええええアクション仮面!!」
「郷さんあたしファンなんです!」
スンノケシ「しんちゃん……!! がんばれ……!」
228 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 22:15:19.36 ID:e8929ruk0
――ヘンダー城
ジョマ「――なかなか反応がいいわね」
マカオ「――その期待をぶち壊しちゃうのが楽しみだわ」
パラダイスキング「おいお前ら、アクション仮面は俺の獲物だからな」
ハブ「……ヘクソンはどうした?」
マホ「いねーってことはやられたんだろうよ」
ハブ「……ならば楽しめるか」
アナコンダ「グフフフ。久々に魔人の力が使える……」
229 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 22:17:30.59 ID:e8929ruk0
トッペマ「トッペマ・マペット!」
城の扉が開く。
人形の群れが押し寄せる。
走りながら突き飛ばすロールシャッハたち、子供たちは足の隙間を潜り抜けていく。
ハブ、ガントレットの爪を伸ばしてロールシャッハへ飛び掛かる。
フック銃を抜いて防ぐロールシャッハ。
ハブ「……ヘクソンを倒したのはお前だな」
ロールシャッハ「……だったらどうした」
ハブ「光栄に思え。お前は俺が殺してやる」
パラダイスキング「ようアクション仮面! 俺の相手はお前しかいないぜ」
パラダイスキング「またオーディエンスの中で散ってくれよ」
アクション仮面「ジャングルでは、散ったのは自分の方だと忘れたか?」
パラダイスキング「……ほざけェッ!!」
230 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 22:19:18.27 ID:e8929ruk0
マホ「なんだい、あたしの相手は雑魚刑事さんか」
よね「負けたときの言い訳、考えときなよ!」
よね、引き金を引く。
マホ「オメーの弾なんか当たるわけねえだろクソ雑魚がッ!」
トッペマ「トッペマ・マペット!」
マホ(なにっ……軌道を変えた!?)
リボンで弾丸を落とすマホ。
マホ「ッちィ……ふざけやがってェエ!」
231 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 22:20:34.41 ID:e8929ruk0
みさえ「おらおら邪魔だ邪魔だ!」
ひろし「人間凶器のひろちゃんを舐めんなよ!」
勢いだけで人形と渡り合う野原夫妻。
風間「マサオくん、パス!」
マサオ「うわあっと、とと、ボーちゃん、パス!」
ボー「ボー、ネネちゃん!」
ネネ「しんちゃん、パス!」
しんのすけ「ほい!」
しんのすけ「ひまとシロ、パス!」
ひまわり「たい!」
シロ「アン!」
一枚のカードをパスしながら、足元を駆け抜けていく六人と一匹。
232 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 22:23:51.62 ID:e8929ruk0
アナコンダ「……ふむ」
ジョマ「あらなに、あなたまで参戦しちゃうの?」
マカオ「すぐに終わっちゃうんじゃなーい?」
アナコンダ「仲間外れはさみしくてね……フフフ」
しんのすけ「お!?」
姿を変えていくアナコンダ。
ヘビと一体化し、天井にまで届きそうな魔人の姿になる。
よね「ッ! おいおい、あんなのがいるのかよ……!」
トッペマ「よそ見しないで!」
トッペマ「くっ……」
よね「トッペマ!」
マホ「おらおらおらおらっ!」
ひろし「あ、ありゃ勝てんぜ……うっわ、なんか急に勢いが冷めたッ!」
みさえ「あなた、もっと眉間にしわ寄せて! 顔怖くすれば勢いが出るわッ!」
233 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 22:26:50.85 ID:e8929ruk0
魔人アナコンダ「ンフフフ、フフフ」
一同を襲う魔人の腕。逃げ遅れた人形たちを巻き込んで、握りつぶしていく。
腕のヘビに追われるしんのすけ。
しんのすけ「おわっと、おわあっと!」
視線の先に、ぶりぶりざえもんを乗せた人形。
しんのすけ「ぶりぶりざえもん!」
しんのすけ「助けて、ぶりぶりざえもん!」
ぶりぶりざえもん「…………」
アナコンダの指がしんのすけをつかむ。
魔人アナコンダ「捕まえたぞボクうううう」
ひろし「しんのすけ!」
みさえ「しんちゃん!」
234 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 22:27:52.42 ID:e8929ruk0
ハブ「……アナコンダ様が出てきた時点でお前たちの負けだ」
ロールシャッハ(ダメだ……間に合わない!)
アクション仮面「しんのすけくん!」
パラダイスキング「こっち見ろォッ!!」ボッ
アクション仮面「ぐっ!」
235 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 22:29:11.71 ID:e8929ruk0
しんのすけ「放せ放せこのおバカー!」
ぶりぶりざえもん「……お助け料ひゃくおくまんえん、ローンも可」
しんのすけ「!」
そのとき、ぶりぶりざえもんを乗せた人形のまわりに、
ほかの人形がぞろぞろと集まっていく。
人形の塊はやがて魔人とほぼ同じサイズとなり、
そのシルエットは大きく変わっていく。
しんのすけ「……カンタムロボ!!」
しんのすけ「すごいゾぶりぶりざえもん!」
ぶりぶりざえもん「フン。このくらい朝メシ前だ」
295.70 KB
Speed:0.1
[ Aramaki★
クオリティの高いサービスを貴方に
VIPService!]
↑
VIP Service
SS速報VIP
更新
専用ブラウザ
検索
全部
前100
次100
最新50
続きを読む
名前:
E-mail
(省略可)
:
書き込み後にスレをトップに移動しません
特殊変換を無効
本文を赤くします
本文を蒼くします
本文をピンクにします
本文を緑にします
本文を紫にします
256ビットSSL暗号化送信っぽいです
最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!
(http://fsmから始まる
ひらめアップローダ
からの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)
スポンサードリンク
Check
Tweet
荒巻@中の人 ★
VIP(Powered By VIP Service)
read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By
http://www.toshinari.net/
@Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)