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北条加蓮「運命的、あるいは作為的」
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1 :
◆TOYOUsnVr.
[saga]:2018/02/08(木) 01:43:12.36 ID:1k4n5Mtx0
奇跡だとか、運命だとか。
その類の言葉があまり得意ではなかった。
目に見えない存在に成果を横取りされている気がして、どうにも好きになれなかったのだ。
何より、これまでの紆余曲折を運命の二文字で片付けられてしまうのは寂しい。
私がこの言葉たちを好意的に解釈できるようになったのは、つい最近のことだ。
そして、それはたった一人の所業だったりする。
これから、私はその人物の話をしようと思う。
私のそれまでの価値観を全部全部壊してしまった、私史上最高に自分勝手で、私史上最高に信頼できる人の話を。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1518021792
2 :
◆TOYOUsnVr.
[saga]:2018/02/08(木) 01:43:35.20 ID:1k4n5Mtx0
○
とは言ったものの、いきなりその人の話をしても、あまり伝わらないだろう。
だから、まずはその人に出会う前の話をしよう。
3 :
◆TOYOUsnVr.
[saga]:2018/02/08(木) 01:44:04.09 ID:1k4n5Mtx0
■ 1
真っ白な牢獄にも夏は来る。
うんざりするほど青い空に、もくもくと盛り上がる入道雲、それからやかましい蝉の声。
生命の躍動を嫌でも感じさせられるこの季節は、一年の中で最も自身の無力さを思い知る。
檻の外に出ることは許されず、このまま一生をここで過ごすことを定められた自分にとって、夏は苦痛以外の何物でもない。
のっそりとベッドから体を起こし、テレビカードの残額を確認して、溜息を吐いた。
お母さんが来たときに、また買ってもらわないと。
辛そうに笑顔を作る母の顔を思い浮かべて、また大きな溜息を吐いた。
4 :
◆TOYOUsnVr.
[saga]:2018/02/08(木) 01:44:30.92 ID:1k4n5Mtx0
○
カーテンの外からの「加蓮ちゃん」という声で、アタシは見ていたテレビを消す。
ベッドの横に置かれているデジタル時計をちらりと見やると検診の時間であることに気が付いた。
「はぁい」と返事をして、カーテンを開ける。
そうして看護婦と担当の医師にいつもどおりの検診を受けたが、結果はいつもどおりではないようだった。
「先生、これ」
看護婦が言う。
それを制止するかのように担当の医師は返事をして、努めて冷静を装って「ちょっと待っててね」とアタシを病室へ戻した。
遂にか、と思った。
5 :
◆TOYOUsnVr.
[saga]:2018/02/08(木) 01:45:00.20 ID:1k4n5Mtx0
○
病室に戻されて半時ほど過ぎた頃、服を着たまま川遊びでもしてきたのではないかというくらい全身をぐっしょり濡らした母がやってきた。
「そろそろ切れるかと思って」
母は疲れた顔で笑って、アタシにテレビカードを差し出すと、医師に導かれてどこかへ行ってしまう。
まだ少し残額のあるテレビカードを無造作に放り投げ、新しいものを挿し込んでテレビをつけた。
輝くドレスを身に纏って、スポットライトを一身に浴びて、歌い踊るアイドルの姿が映し出される。
ああ、ああ、アタシもこう在れたら。
そんな自分の姿を夢想して、一層虚しくなった。
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