千歌 「狛犬ようりこ」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 21:36:17.07 ID:GRNo4kpW0
千歌 「はぁっ…はぁっ…!」タッタッ

千歌 「よしっ、もうすぐ…。この階段、毎日登っても慣れないや」


――すぅ


千歌 「おーい! 曜ちゃん、梨子ちゃん、遊びに来たよー!」


千歌 「…あっ、そっか。お札出さないと!」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1516365376
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 21:37:16.79 ID:GRNo4kpW0
千歌 (サブバッグの外ポケットから、2枚の御札を取り出して掲げる。…こうしないと、曜ちゃん達に会えないんだ)


千歌 「出てこいっ! 曜ちゃん、梨子ちゃん!」


ドロンッ!! ドロンッ!!


千歌 (本殿の横にいる2匹の狛犬が、私が呼ぶなり煙に包まれる。私の体全体を覆うほどの煙で、視界は完全に遮られる)
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 21:37:56.74 ID:GRNo4kpW0
千歌 「……あれっ? 誰も、いない?」

千歌 (煙が晴れると、狛犬はその姿を消していた。おかしいな、本当ならいつもここに…)


ようりこ 「「わっ!!!!」」


千歌 「うわぁぁぁっ!!??」バタンッ!


梨子 「あっ! 千歌ちゃん、大丈夫!?」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 21:38:51.34 ID:GRNo4kpW0
千歌 「大丈夫じゃないよ! びっくりするじゃん、いきなり後ろから出てきたら!」

曜 「えへへ、毎回正面に出るのも飽きてきたなぁと思って」

梨子 「だからやめよう、って言ったのに」

曜 「梨子ちゃんだってノリノリだったじゃん」

梨子 「それは……」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 21:39:25.63 ID:GRNo4kpW0
千歌 「もうっ! 次驚かせたら、二度と起こしてあげないからね!」

曜 「えぇっ!? そ、それだけはぁ…」

千歌 「ふふっ、冗談だよ。よしよーし」ナデナデ

曜 「えへへー」ブンブン

梨子 「あぁっ! 曜ちゃんばっかりずるいっ!」

千歌 「順番だよ、順番」

梨子 「むぅー…約束だからね?」ブンブン
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 21:40:15.79 ID:GRNo4kpW0
千歌 (頭を撫でると、2匹…いや、2人とも嬉しそうに“尻尾”を振る)

千歌 「……可愛い」



――私の友達は、ここ淡島神社の狛犬です



ーーーーーー
ーーーー
ーー
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 21:40:48.67 ID:GRNo4kpW0

第1話 『奇跡の原点』

8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 21:45:42.23 ID:GRNo4kpW0
〜浦の星女学院〜


ザワザワ…ガヤガヤ…

千歌 「…? なんだろ、騒がしいなぁ」


千歌 「みんな、どうしたのー?」

むつ 「あっ、千歌。おはよー」

よしみ 「今朝の新聞だよ。見てないの?」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 21:46:13.46 ID:GRNo4kpW0
千歌 「私、新聞とか読まないし…」

いつき 「あぁ、ぽいぽい」

千歌 「なにさ、ぽいって!」


むつ 「まぁまぁ…。ほら、これだよ。一番おっきく載ってるやつ」

千歌 「んー…? どれどれ?」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 21:46:52.56 ID:GRNo4kpW0
『ホテルAWASHIMA 建設決定』

『冬にも着工か』


千歌 「ホテル…あわしま?」

むつ 「そうそう。淡島にホテルが出来るんだって!」

いつき 「観光客、最近多いもんね。ホテルが出来たら、もっとこの街が活性化するんじゃないかって、みんなで話してたんだよ」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 21:47:25.09 ID:GRNo4kpW0
千歌 「ホテルかぁ…。でも千歌の家は旅館だし、あまり作られると商売あがったりだよ」

よしみ 「あっ、そっか…。千歌は反対だよね」

千歌 「ううん、この街が賑わうなら、私も嬉しいよ。ホテルにはみかんも置いてもらわなくっちゃ」

いつき 「千歌らしいね。…要望があるんだったら、3年生の教室に行きなよ」

千歌 「へ? なんで?」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 21:48:10.09 ID:GRNo4kpW0
むつ 「ほら、このホテルを建設しようとしてるグループ。聞いたことない?」

千歌 「なになに…? リゾートホテルチェーン “オハラ”?」

いつき 「ほら、この間留学から帰ってくるなり、理事長に就任した生徒いたでしょ?」

千歌 「あぁ、確か名前が…」


「小原 鞠莉デースっ!!!」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 21:48:56.41 ID:GRNo4kpW0
千歌 「うわぁっ!?」バタンッ!

よしみ 「あっ! 千歌、大丈夫!?」

千歌 「いてて…。だ、だいじょぶだいじょぶ」


鞠莉 「ごめんね? 驚かせちゃった?」

千歌 「あなた確か、理事長さん…」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 21:49:54.46 ID:GRNo4kpW0
鞠莉 「ノンノン、理事長さんじゃなくて、マリーだよっ」

千歌 「えっ…で、でも…」

鞠莉 「いいからほらっ! Say!」

千歌 「えっと…鞠莉、さん…?」

鞠莉 「うんうん! Very goodだよ! えっと…」

千歌 「あっ、千歌です。高海 千歌」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 21:50:28.00 ID:GRNo4kpW0
鞠莉 「千歌っちね。OK、覚えとくよ!」

千歌 (テンション高い人だなぁ…。そういえば理事長挨拶もこんな感じだったかも)


いつき 「あのっ! 鞠莉さん、このホテルのことなんですけど…」

鞠莉 「んー…? Oh、うちが建てるホテルだね」

千歌 「“うち”…?」

鞠莉 「あれっ、もしかして千歌っち知らないの? そう…何を隠そう!」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 21:51:07.74 ID:GRNo4kpW0
鞠莉 「私こそホテルチェーン オハラの経営者の一人娘! 小原鞠莉よ」

千歌 「えぇっ!? す、すごい…社長令嬢だ…」


鞠莉 「それで、そのホテルがどうかしたの? もしかして、何かrequestがあるとか?」

千歌 「あ、いや…リクエストってほどじゃ」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 21:51:49.78 ID:GRNo4kpW0
むつ 「せっかくここにホテルを建てるなら、ホテルの中でもっとこの街のことをアピールして欲しいんです」

よしみ 「そうそう、みかんを置くとか!」

鞠莉 「みかん…? うーん、見た目のいいみかんを用意して、それを維持するのって難しいんだよね」

いつき 「あぁー確かに」

千歌 「それもみかんのいいところなんだよっ!」

むつ 「みかん愛がすごい…」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 21:52:25.99 ID:GRNo4kpW0
鞠莉 「ま、みかんの話はさておき」
千歌 「さておかれた」

鞠莉 「なにか要望があったら言ってね。このホテルは地域活性化の目的もあるから、できる限り地域の人達の意見は採用したいから」


鞠莉 「Ciao〜」


千歌 「地域活性化か…。あっ、そういえば」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 21:52:57.58 ID:GRNo4kpW0
千歌 「このホテル、淡島のどのへんに出来るの?」

いつき 「地図載ってるよー。ここだって」

千歌 「…へぇ、山の上に出来るんだね」

むつ 「眺めもいいしね。楽しみだなぁ」


千歌 「……あれっ、ここって…」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 21:53:44.00 ID:GRNo4kpW0
よしみ 「この場所が、どうかしたの?」

千歌 「ここって、淡島神社がある場所だよね? ホテルなんか建てられるの?」


むつ 「あぁ…流石に取り壊すんじゃない?」


千歌 「えっ!?」ガタッ!!

いつき 「人も全然いないみたいだしね。いっそホテルにした方が…」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 21:54:18.63 ID:GRNo4kpW0
むつ 「私たちが小学生の時とかは、初詣とかで賑わってたんだけどね」

よしみ 「そうそう。この間ランニングついでに寄ってみたら、すっごい廃れててびっくりしちゃった」

千歌 「そんなこと…」


いつき 「千歌、まだあの神社行ってるの?」

千歌 「う、うん。たまに…」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 21:55:06.51 ID:GRNo4kpW0
むつ 「やめときなって。管理してた人もいなくなったらしいし、危ないよ」

よしみ 「やっぱり。どうりで掃除されてないなと思ったんだよね」

いつき 「まぁ誰にも使われてないなら、ホテル建てた方がよっぽど有意義だよね」


千歌 「ダメだよッ!!」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 21:55:37.30 ID:GRNo4kpW0
むつ 「ち、千歌…? どうしたの急に。そんな大声出して」

千歌 「ダメだよ…だってあそこは大事な…私の…!」

千歌 「……ッ!!」ダッ!!


よしみ 「あっ、千歌!? どこ行くのー!?」

ーーーーーー
ーーーー
ーー
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 22:08:13.91 ID:GRNo4kpW0
〜淡島神社 本殿〜


ようりこ 「「神社が潰れる!?」」


千歌 「…ここにホテルが建つんだって。もう着工も決定してるって」

曜 「もう、どうすることも出来ないってこと?」

千歌 「諦めちゃダメだよ! まだ中止にさせる方法はあるはずだよ!」

梨子 「……でも、現状を見るとね」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 22:09:12.60 ID:GRNo4kpW0
曜 「…人はこないし、賽銭も、絵馬も全然」

梨子 「ここに来る人なんて、それこそ千歌ちゃんくらいだもん」

千歌 「そんな…」

曜 「そもそも、神社の取り壊しに反対する声が千歌ちゃんくらいしかなかったんでしょ?」

梨子 「…その程度のものなのかな。この神社って」
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 22:09:55.94 ID:GRNo4kpW0
千歌 「そんなことないよ…」

曜 「…数年前まで適度に掃除してくれてた人、どこに行ったんだろうね」

千歌 「…!」

梨子 「……あのね、そもそも私たちが千歌ちゃんに呼ばれないとこの姿になれないのだって、神力が足りないからなんだよ」

曜 「神力の源は人々の信仰心。もう、この神社を好きでいてくれる人なんて…」
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 22:10:31.71 ID:GRNo4kpW0
千歌 「…ここの神様はもう、戻ってこないの?」

梨子 「前も話したでしょ。神様は残された僅かな神力を私たちに恵んで、もう…」

曜 「形だけ残ったこの神社を、どうか護って欲しい…って」

千歌 「なら護らなきゃ!! 神様から託されたんでしょ!?」


曜 「…………てよ」
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 22:11:11.94 ID:GRNo4kpW0
千歌 「えっ…?」


曜 「じゃあ教えてよ…。どうすればいいのさ、人もいない、人望もないこの神社を、どう護ればいいのっ…?」

梨子 「曜ちゃん…」

曜 「私たちだってこの場所がなくなるのは嫌だよ。…だって、千歌ちゃんとも会えなくなるんだよ!?」

千歌 「…っ!」
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/19(金) 22:11:38.67 ID:GRNo4kpW0
曜 「でも力が出ないんだよ。…この場所から出るどころか、千歌ちゃんに呼び出されて、やっと1時間動けるくらいなのに」

曜 「こんな体で、どうしろっていうのさ…」


千歌 (自分の耳を力強く押さえつける曜ちゃんの姿は、とても印象的だった。『せめて私が人間だったら』、そう言っている気がして…)


梨子 「……曜ちゃん、そろそろ時間。今日は寝よ?」

曜 「……うん」


千歌 「ごめん…二人とも」
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