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悪の魔導士「大魔王様の復活だー!!」地下アイドル「もえもえキュン☆」キラッ
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54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/21(日) 20:40:13.25 ID:HJ5XVwofo
>>53
訂正
「手足を?げば動けなくなるはず」→「手足をもげば動けなくなるはず」
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/21(日) 20:48:02.11 ID:HJ5XVwofo
魔導士「そろそろ森を抜けることになります」
大魔王「すぐそばに村はあるんですか?」
魔導士「ええ」
ドラゴン「ククク……。いくか」
ゴーレム「人間たちの悲鳴が聞こえてくるようだ」
魔獣少女「つかまえるぞー! 5匹はつかまえるぞー!!」
大魔王「ストップ!! みんなはここにいて」
ドラゴン「なに?」
大魔王「私が外の様子を見てくるから」
魔導士「危険です、大魔王様」
大魔王「私が大魔王だって、誰も気づかないと思うし、平気です」
魔導士「万が一ということがありますから」
大魔王「それじゃあ、貴方がついてきてくれますか? 貴方も、人間寄りの姿だしすぐにはバレないと思うんですが」
魔導士「ええ、まぁ……私が魔族であることを一目で看破できる人間は少ないでしょうが……」
大魔王「だったら、護衛お願いします。まずは偵察にいかないと、何があるかわかりませんから」
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/21(日) 21:04:24.49 ID:HJ5XVwofo
ゾンビ「大魔王様自ら先陣切るとか猛将すぎるだろ」
ガイコツ「ほんと部下想いの長だなぁ」
ドラゴン「……」
大魔王(先に村の様子をみて、住んでる人が全員上手く逃げられそうな場所から襲い掛からないと……うまくいくかはわからないけど……)
魔導士「大魔王様は私の後ろに」
大魔王「はいっ」
魔導士「しかし、驚きました。異世界の住人である貴方がこうも積極的に行動するとは」
大魔王「あはは……」
大魔王(だって、放っておくとみんな人間を殺しちゃいそうだし)
魔導士「もしかしたら……」
大魔王「はい?」
魔導士「いえ、それはないですね」
大魔王「何の話ですか?」
魔導士「もしかしたら貴方が本物の大魔王様ではないかと思って」
大魔王「ないですないです! わたしはただの地下アイドルですから!」
57 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/21(日) 21:36:32.92 ID:HJ5XVwofo
――村 周辺――
「そろそろ休憩にしないかー」
「おーそんな時間かー」
魔導士「あれが最初に落ちる集落ですね。村にいる人間は十数名ほどです」
大魔王(ゲームとかでよくみる村そのものって感じ……。現実感ないなぁ……)
魔導士「兵を動かしますか」
大魔王「ええと、ちょっと待ってください」
魔導士「はぁ……」
大魔王(うーん……。柵とか塀があるわけじゃないから、どこから襲っても村の人たちは自由に逃げられそうだけど……)
大魔王(こっちの走るスピードが勝ってたら、追いついちゃうよね……これ……)
魔導士「何か気になることでも? 我々の脅威になるものはなさそうですが」
大魔王「まぁ、そうなんですけどね。小さな農村ってだけですし」
魔導士「確かに狭すぎて大魔王が復活してすぐに攻め落とす場所としては相応しくないかもしれませんが、人間たちにとっては良い宣伝になるでしょう」
大魔王「宣伝……。なるほど。ちょっと考えがあるんですけど」
魔導士「なんでしょうか」
58 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/22(月) 08:41:06.10 ID:IMs+hf2SO
政治的に見たら人間を殺さないが正しい気がしなくもない 虐殺をしたら報復論が巻き上がるし、世界征服ではなく領土復活と国家樹立が目的なら交渉するためにも殺戮は避けた方がいい
まぞくは悪な認識があって、宗教的な理由付けもあるなら殺戮を避けた方が無難
59 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/25(木) 22:13:07.44 ID:pWPcWtHKo
村娘「お水持ってきましたよ」
村人「お、ありがとう」
農夫「いつも悪いなぁ」
村娘「いえいえ、この村で生活できるのも皆さんのおかげですから」
村人「くぅー。できた娘だ。どうだ、うちの倅の嫁になんねえか」
村娘「あ、そんな……まだ早いですよぉ……」
農夫「照れちゃってかわいいねぇ」
村人「純朴なままに育ってほしいなぁ」
農夫「全くだぜ」
村娘「や、やめてくださいよぉ」
村人「はぁー。平和だねぇ」
村娘「良い天気ですよねぇ」
「――やっほー!!! みんなー!! ちゅーもーくっ!!!」
村娘「えっ?」
大魔王「突然だけど、お邪魔しちゃってまーす!! 私、だいまおー!! よろしくにゃんっ☆」キラッ
60 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/25(木) 22:19:18.74 ID:pWPcWtHKo
村人「な、なんだ、おめえ」
農夫「いきなりなんだよ」
村娘「だい、まおー?」
大魔王「今日は、ゲリラ的な感じで登場してみたよー!! イエーイ!!」
ザワザワ……ザワザワ……
「なんだありゃあ」
「変態?」
「キチゲェか?」
大魔王(ゲリラライブではいつもこんな感じでやってたけど、やっぱりちょっと違うなぁ……。まあ、いいや)
大魔王「今日、いきなり登場しちゃった理由なんだけどぉー……。わかるひとー☆」
「「……」」
大魔王「んー、だーれもわかんないのぉー? だいまおー、ちょっと寂しいなぁ」
村娘「あ、あのぉ……だいまおー……って……」
大魔王「それじゃあ、みんなー!! あっちをみてー!! みぎむけー、みぎっ!」
村娘「右……?」
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/25(木) 22:24:08.95 ID:pWPcWtHKo
ドラゴン「ガオー!!!!」
村娘「ひっ……!?」
村人「な、なな……!?」
農夫「も、森になんかいるぞ!!」
大魔王「おっきいトカゲさんの顔がみえるでしょー? 近くにいるように見えるけど、実際は結構遠くにいるんだよー? どれぐらいの大きさかわかるよねー」
村人「あ、ありゃあ、ど、どらごんじゃねえか……?」
「ドラゴンって……!?」
農夫「にげろ……」
村人「にげろー!!! 魔物だー!! 魔物がでたぞー!!!」
「うわぁぁぁ!!!」
「あいつら森から出ないんじゃなかったのよぉぉ!!」
村娘「あ……あぁ……」
大魔王(よし……。もう少し時間を稼いで、村人全員が逃げ終わるぐらいに合図を出せば……)
大魔王「あー! ちょっとー!! どこいくのー!! イベントはこれからだよー!! ぷんぷんっ!!」
62 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/25(木) 22:31:13.44 ID:pWPcWtHKo
魔導士「大魔王様」
大魔王「どうかしました?」
魔導士「人間共が皆、逃走を始めています。早急に兵を呼びましょう。捕えられる人間を逃しています」
大魔王「あー、うー」
大魔王(もうちょっとぐらい粘らないと……)
大魔王「別にこんなちっぽけな村の人間なんて奴隷には向いてないかもしれないですし、逃しちゃってもいいんじゃないですか」
魔導士「奴隷に向き不向きはないでしょう。要は、使えればいいのです」
大魔王(こわっ……)
魔導士「よろしいですか」
大魔王「はい?」
魔導士「魔王の軍勢を呼び、この村を制圧いたしましょう」
大魔王「制圧は殆どできてると思うんですけど」
魔導士「これでは足りません。同朋も満足しないでしょう」
大魔王「そういうものなんですか?」
魔導士「そういうものです。理解していただきたい」
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/25(木) 22:36:34.47 ID:pWPcWtHKo
大魔王(まあ、あれだけ遠くに逃げてくれていれば大丈夫かな。ドラゴンさんは追わせないようにしないと)
魔導士「皆の者!!! 我々の領土を取り戻すときがきたぞ!!!」
「「オォォォォォォォ!!!!!」」
オーク「ぶひぃぃいぃぃ!!!」
グリフォン「コケー!!! コッコッコッコッコ!!!」
魔獣少女「いやっほー!! 人間たち、かくごー!!」
ガイコツ「骨も残らねえとおもえー!!」
ゾンビ「骨に言われたくないだろー?」
ゴーレム「オォォォォォォォォ!!!!!」
ドラゴン「ガオー!! 焼き払ってくれるわー!!!」
大魔王「ドラゴンさん」
ドラゴン「なんだ?」
大魔王「あなたは私の傍にいてください」
ドラゴン「……となりにいてもいいのか?」
大魔王「勿論です」
64 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/25(木) 22:43:08.05 ID:pWPcWtHKo
ドラゴン「がおー」スリスリ
大魔王「よしよし」
大魔王(ドラゴンさんの皮膚、ゴツゴツしてるぅ)
魔導士(竜族を意図もたやすく手懐けるとは……。普通の人間ではないのかもしれない)
魔獣少女「あれー? 人間、あんまりいないですよー」
ガイコツ「全員、逃げ出したのか」
ゾンビ「なんだとぉ」
ゴーレム「どういうことだ……」
大魔王「私がいきなり出てきたからびっくりして逃げちゃったみたい」
魔獣少女「確かに大魔王様が出て来たら卒倒するもんね」
オーク「ぶひぃ……奴隷、ほしかったぶぅ……」
大魔王「まぁまぁ。次、村を襲うときに捕まえればいいじゃないですか」
オーク「それもそうだぶぅ! 次、がんばるぶぅ!」
大魔王(こんな感じでやっていけば、殺される人はいないかも。元の世界に戻るまではこうやって上手に――)
ドラゴン「大魔王様、あそこに人間が一人だけいるようだ」
65 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/25(木) 22:49:29.81 ID:pWPcWtHKo
大魔王「へ?」
村娘「あぁ……うぅ……」
大魔王「おぉ……」
大魔王(腰が抜けて動けなくなってるっぽいなぁ……どうしよう……)
魔導士「捕えろ」
ドラゴン「言われずとも!!」
ゴーレム「ニンゲン……!! ニンゲン……!! 恨み、晴らすとき!!」
オーク「ぶっひぃ!! メスだぶぅ! ぶひひひひっ!!」
ガイコツ「皮と骨だけならよかったんだがなぁ」
ゾンビ「俺みたいに腐ってみないかい?」
グリフォン「コケー!! コケコッコー!!」
魔獣少女「なにしちゃってもいいんですよね? とりあえず、私が蹴ればどこまで飛ぶのか見てみたいんですけど!」
「皮を剥ぐか」
「この触手で穴という穴を塞いでやろうかぁ」
村娘「あ……あぁ……」ガクガクッ
66 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/25(木) 23:03:02.18 ID:pWPcWtHKo
大魔王「まってー!!!」
魔導士「なに……?」
ドラゴン「何故、止める」
大魔王「ええと……その……」
大魔王(今の勢いだと、絶対にあの子が怪我するような気がする……)
大魔王「その子は私の奴隷にしますっ!」
魔導士「……」
魔獣少女「大魔王様のお世話なら、私がしますけど?」
ドラゴン「我もするぞ」
オーク「俺様もしたいぶひひ」
大魔王「奴隷とお世話係は別だから」
ゾンビ「そーなのか?」
ガイコツ「けど、まぁ、記念すべき最初の奴隷は大魔王様のものでいいんじゃねえか?」
ゴーレム「異論はないが……」
大魔王「それじゃ、けってーい! あの子は私の奴隷だからね!」
67 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/25(木) 23:06:29.16 ID:pWPcWtHKo
大魔王「さぁ、立って」
村娘「あ……ぅ……こ、ころさないで……く、ださい……」
大魔王「殺さないって」
村娘「あぁ……ぅ……あ……」
ドラゴン「立たぬか、人間」
ゴーレム「無理矢理立たせてもいいんだぞ」
村娘「あ……」フラッ
大魔王「あぁ、ちょっと! 大丈夫!?」
魔導士「気絶したようですね」
ドラゴン「軟弱な生き物め」
ゴーレム「群れていなくては何もできぬ矮小な種族よ」
ガイコツ「俺たちだって群れてるよなぁ?」
ゾンビ「あぁ、群れてる」
ゴーレム「やかましいぞ」
大魔王「と、とりあえず、この人間を城に持って帰りましょう」
68 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/25(木) 23:21:11.00 ID:pWPcWtHKo
魔導士「私が運びましょう」
大魔王「お願いします」
大魔王(これ、完全に誘拐だよね……隙をみて逃がしてあげないと……)
ゴーレム「大魔王様、この土地の守りはどうする」
大魔王「はい?」
ゴーレム「小さくも折角取り戻した我らの領土。留守にするわけにはいかないはず」
大魔王「あー、そうですねー」
魔導士「人間が様子を見に戻ってくることは間違いないでしょう。そのときのために数種族は残したほうが賢明かと」
大魔王「誰を残すのがいいと思います?」
魔導士「私が決めてもいいのですか?」
大魔王「はいっ」
魔導士「では、僭越ながら私が決めさせていただきます」
魔獣少女「わたしかなー」
オーク「ブヒヒヒ。俺様かもしれないぶぅー」
ドラゴン「ふむ……」
69 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/26(金) 17:00:51.11 ID:iiFyHwPPO
これは良SSの予感…!
70 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/27(土) 04:15:11.31 ID:XGVbHRzG0
おつはよ
71 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/30(火) 17:39:17.45 ID:LPftDj++o
スレタイSNNNさん
72 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/04(日) 11:44:21.72 ID:7kCK7A4Vo
魔導士「――では、領土の守護を一任する」
ゴーレム「大役、見事果たしてみせよう」
ゾンビ「がんばるぞー」
ガイコツ「おぉー」
ゴーレム「大丈夫か……」
ゾンビ「いきなり不安になってんじゃねーよぉ」
ガイコツ「俺たちも中級魔族だからヘーキだって」
ゴーレム「……」
ドラゴン「鬱陶しそうだな」
大魔王「あれで大丈夫なんですか?」
魔導士「他種族間には相性がありますから、完全に手と手を取り合って、というのは難しいことかもしれません」
大魔王(ふぅん。怪物同士でもそういうのあるんだ……)
魔導士「しかし、現状では気が合う仲間だけを集めるほどの余裕はありません」
オーク「俺様がどうして守備隊じゃないんだぶぅ。おかしいぶぅ」
魔獣少女「まぁまぁ、領土が広がればそれだけチャンスはありますって」
73 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/04(日) 11:49:24.75 ID:7kCK7A4Vo
――森林地帯――
村娘「すぅ……すぅ……」
魔導士「……」
大魔王「よく眠ってますね」
魔導士「ええ」
ドラゴン「大魔王様」
大魔王「はひぃ!?」
ドラゴン「何を驚いている」
大魔王「いえ、別に」
大魔王(急に後ろから大きな顔が出て来たら、びっくりするって)
ドラゴン「そのニンゲンには何をさせるつもりなんだ」
大魔王「ええと、奴隷扱いだからぁ」
魔獣少女「やっぱり、腕とか足の一本ぐらいは切り取っちゃうんですか?」
「目玉とかくり貫くのか」
「触手で上からも下からも責め倒すのか」
74 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/04(日) 11:55:04.37 ID:7kCK7A4Vo
大魔王「そんなおそろ――」
魔導士「(大魔王という立場をお忘れなく)」
大魔王「え……」
魔導士「(人間寄りの発言をすれば、私でも擁護ができない事態に発展するかもしれません)」
大魔王「うぅ……」
魔獣少女「どうしたの、大魔王様?」
大魔王「も、もちろん! この人間にはそれはもう、みんながドン引きするぐらい、ひっどいことしちゃうつもりだよー!」
魔獣少女「えー!? どんなことですかー!?」
ドラゴン「興味あるな」
大魔王「ま、まずは、当然、その、辱める!」
オーク「ぶひぃ、興奮してきたぶぅ」
「はええな」
魔獣少女「どうやってですか?」
大魔王「まず、服を脱がします。それで縄で縛ります。それから放置します。あとは無視します」
ドラゴン「むぅ……? それは苦痛になるのか?」
75 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/04(日) 12:02:39.54 ID:7kCK7A4Vo
大魔王「だって、ほら、女の子だし、裸にされて縛られてる時点で相当な苦痛だよー。もう殺された方がマシってぐらいに」
オーク「いかんいかん、俺様の棍棒がぶひってきたぶぅ」
「どこが棍棒だよ」
「その縫い針絶対出すなよ」
ドラゴン「ニンゲンはそうなのか」
大魔王「そうだよー。貴方もそう思うでしょ?」
魔獣少女「え?」
大魔王「他人の前で裸になれないでしょ?」
魔獣少女「大魔王様に命令されたら喜んでなるけどなぁ」
大魔王「うそでしょ……」
オーク「ぶひぃぃ!! 大魔王さまぁ、その命令してあげてほしいぶぅぅ!!」
大魔王「あのブタさんの前で裸になってもいいの?」
魔獣少女「それは……ちょっと……」
オーク「ぶひっ……」
魔導士「この人間の裸体を衆目に晒すというのであれば、十分に苦痛となるでしょうね。精神的に、ですが」
76 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/04(日) 12:10:41.58 ID:7kCK7A4Vo
大魔王「うんうん。そうそう。脱ぐっていうのはプライドすらも剥ぎ取るからね。プライドを捨てた女はすぐ脱いじゃうけど」
ドラゴン「よくわからんな」
魔獣少女「ドラゴンさんはいつも裸だもんね」
ドラゴン「着衣の文化がない魔族に、裸体という概念はないからな」
オーク「大魔王様、つまり城に戻ったらそのニンゲンを脱がして観賞用の動物にしちゃうわけぶぅ?」
大魔王「え……」
オーク「ぶひひひひ。た、たのしみだぶぅ」ジュルリ
「触手を絡めてもいいのか?」
「腕ぐらいは突っ込んでもいいよな?」
大魔王「あー……えー……。私、専用の奴隷だから、私の部屋でやるつもりなんだー」
オーク「ぶひ!? それじゃあ、俺様達はそのニンゲンが辱められているところを見れないってことぶぅ!?」
大魔王「そーでーす! 残念でしたー!」キラッ
オーク「そりゃないぶぅ!! ぶひぃぃぃぃぃん!!!」
魔獣少女「大魔王様の部屋にいけばいいだけなんじゃあ……」
大魔王「こ、こら! そんな気安く大魔王の部屋にきていいと思ってたら、ダメだぞっ! めっ」
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/04(日) 12:18:16.22 ID:7kCK7A4Vo
――魔王の城 大魔王の部屋――
魔導士「よっと」ドサッ
村娘「うぅ……」
大魔王「はぁ……なんとか誤魔化せた……」
魔導士「大魔王様」
大魔王「は、はい」
魔導士「やはり村人を全員逃がすために、ああやって自身が先陣を切ったのですね」
大魔王「結局、逃がせてませんけど……」
魔導士「異世界の人間である貴方に、この世界の理を説いても意味はないでしょうし、私にその資格はありませんが……」
魔導士「いつか、割り切っていただかなくてはならない日も訪れるでしょう」
大魔王「そ、それって……」
魔導士「それまでに貴方を元の世界に戻す術を見つけられるように努力はします。もし、大魔王が人間を殺すことを躊躇うだけでなく、制止しようというのなら魔族の崩壊すら招く」
大魔王「だって……いきなり殺せとか……」
魔導士「私はこれで。今日はゆっくりとお休みください」
大魔王「あ、はい。お疲れさまでした」
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/04(日) 13:38:49.24 ID:7kCK7A4Vo
大魔王「はぁ……」
大魔王(こっちだって訳も分からないまま大魔王役やってるんだから、ちょっとぐらい好きにやってもいいじゃない)
大魔王(急に「今日はこういうキャラで」なんてことは良く言われてきたけどさ、流石に怪物たちの王って要求はされたことないし)
大魔王「まぁ、もえもえきゅーんとか言わなくていいって点ではマシかもしれないけど」
村娘「うぅん……ぅ……」
大魔王「あっ」
村娘「ひぃ!?」
大魔王「ああ、驚かないで」
村娘「こ、ここ、どこなんですか……? わ、わたし、ど、どうして……ここにいるんですか……」
大魔王「ええと、怯えないで。私は何もしないし……」
村娘「みんなは……村の人たちは……どうなったんですか……」
大魔王「だからさ――」
村娘「ひっ……!?」
大魔王(そりゃ、こうなるよね……。誘拐犯が目の前にいるんだもん。これじゃあ、こっちの話は聞いてもらえそうにないなぁ)
大魔王(どうしよう……)
79 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/04(日) 14:02:17.50 ID:7kCK7A4Vo
――書庫――
魔導士「これか……」
魔導士「……」ペラッ
魔導士「いや、関係なさそうだな」
魔導士「ふぅ……」
魔導士(大魔王様を復活させるために膨大な時間をかけ、世界中の古書、古文書、魔術書をかき集めただけあって、そう簡単には見つからないか)
魔導士(そもそも、この中に正しい術式を示した魔術書があるとも限らない)
魔導士「出口はまだ見えないが、探すしかない。大魔王に力がないことはいずれ発覚するのだからな」
魔獣少女「どもーっ」
魔導士「なんだ?」
魔獣少女「飲み物、お持ちしました」
魔導士「ああ、ありがとう。そこに置いてくれ」
魔獣少女「はぁーい」
魔導士「……」ペラッ
魔獣少女「あのぉ……。大魔王様は今、何をされているんですか?」
80 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/04(日) 15:19:48.25 ID:7kCK7A4Vo
魔導士「何故だ?」
魔獣少女「大魔王様に気安く部屋にきちゃいけないって言われたので……」
魔導士「今頃は奴隷で遊んでいるのではないか?」
魔獣少女「いいなぁ……。私も奴隷ほしいなぁ」
魔導士「次に奪い返す領土は更に広い場所にするつもりだ。機会はいつでもあるだろう」
魔獣少女「本当ですか? たのしみだなぁ」
魔導士(それを許してくれるかどうかは、別だがな)
魔獣少女「でも、私としては大魔王様とももっと仲良くなりたいですね」
魔導士「大魔王様と? あのドラゴンでさえ、大魔王様に対しては一歩退いているのに、度胸があるな」
魔導士(あまり近づいてほしくないのが本音だが)
魔獣少女「私も大魔王様の姿を見るまでは絶対にお近づきになんてなれないだろうなーって思ってましたけど、けど最初の挨拶のときに……」ガタッ
魔導士「ん?」
魔獣少女「――イエーイ!! 今日もたっくさーんもりあがっちゃおーねっ! せーのっ! もえもえぇぇ……キューン☆」キラッ
魔導士「……!?」ビクッ
魔獣少女「これでみんなとの距離を一気に縮めようとしてくれる大魔王様と仲良くなりたいって思うのは普通じゃないですか? ね? ね?」
81 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/04(日) 16:02:04.56 ID:7kCK7A4Vo
魔導士「ど、どうだろうな。そもそも、お前は大魔王様が発した言葉の意味を分かっているのか? 特に最後のもえもえとか、きゅーんとか」
魔獣少女「わかりませんっ! けど、なんとなく、可愛い感じがしますから、おどけるときに使う叫び声みたいなことだと思ってます」
魔導士「そうか」
魔獣少女「ちがうんですか?」
魔導士「古代語だからな。よくわからん」
魔導士(私も知りたいぐらいだ)
魔獣少女「大魔王様のほうから歩み寄ってくれているのに、私たちが引いてしまうのはおかしいですよ。はい」
魔導士(こいつ、今のところ最も危険な存在かもしれないな……)
魔導士「仲良くなるなとは言わないが、それでも相手は王だ。敬いの精神を忘れてはならない。長を立ててこその組織。そこを崩してしまえば、王の存在が希薄になる」
魔導士「君はもう少し考えて、大魔王様と距離を保つように
魔獣少女「えー」
魔導士「魔王は魔族の象徴たる存在だ。決して近しい存在ではない」
魔獣少女「大魔王様だってみんなと仲良くしたいから、ああいう挨拶をしたんじゃないんですか?」
魔導士「大魔王様がそう思っていても、君たちから近づいて行くのはおかしいということだ。誰もが遠慮をなくしてしまえば大魔王様の威厳がなくなる。そうなれば魔族の終わりだ。分かったか」
魔獣少女「むぅ……。はぁい」
82 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/04(日) 16:09:01.98 ID:7kCK7A4Vo
――大広間――
魔獣少女「ぶぅー」
オーク「おっ。俺様の真似かぶぅ。ぶひひひ。うれしいぶぅ」
魔獣少女「違いますぅ!」
ドラゴン「機嫌を傾けてどうした」
魔獣少女「魔導士様から、大魔王様と仲良くするなーって言われただけです」
ドラゴン「ほう……」
魔獣少女「いいじゃないですかね。別に」
オーク「うんうん、俺様もいいと思うぶぅ。大魔王様は親しみやすいぶぅ」
魔獣少女「ですよね、ですよね」
オーク「お、俺様たち気が合うぶぅ。や、やっぱり、その……ぶひひひ……」
魔獣少女「ドラゴンさんはどう思います?」
ドラゴン「魔導士は近づけさせたくないのだろう。我々を大魔王様に」
オーク「ぶひ? 何言ってるんだぶぅ?」
ドラゴン「気にするな。我が見定めてやろう。クックック……。魔導士よ、好きにはさせんぞ……」
83 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/04(日) 16:26:15.52 ID:7kCK7A4Vo
――廊下――
魔導士「今日の成果はなし、か」
魔導士(焦りは禁物だが、焦燥感を抱かずにはいられないな。時間が経てば経つほど大魔王の正体に感づく者も増えていくだろうし)
魔導士「はぁ……」
『きゅぴーん! やっほー!! おまたせー!! 今日は貴方の為だけのワンマンライブだよー!!』
魔導士「な、なんだ?」
『それじゃあ、一曲目いっくよー! あなたにラブラブどっきゅんだよー!』
魔導士「……」
『きゅーん、きゅんっ♪ きゅーん、きゅんっ♪』
魔導士(歌いだした……? このような歌を奴が聞いてしまえば……)
魔導士「大魔王様!!」
『え? はい?』
魔導士「入ってもよろしいですか?」
『ええと、ど、どうぞ』
魔導士「失礼いたします」
84 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/04(日) 16:32:33.71 ID:7kCK7A4Vo
――大魔王の部屋――
魔導士「外まで声が聞こえていました」
大魔王「迷惑でしたか?」
魔導士「今の貴方は大魔王です。軽率な行動は控えて頂きたい」
大魔王「すみません」
魔導士「それで、何故歌っていたのですか」
大魔王「この子の緊張をといてあげようとおもって……」
魔導士「なに?」
村娘「……」
大魔王「ずっと部屋の隅で膝抱えてるから……あまりにもかわいそうで……」
魔導士「それであなたなりに考えた結果が歌ですか」
大魔王「正確には歌と踊りです。こう……」
大魔王「今夜もドッキドキしていってねー☆ きゅーん、きゅんっ☆」キラッ
大魔王「ってな感じで」
魔導士「あまり城内でそういうことはしないように」
85 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/04(日) 16:49:34.51 ID:7kCK7A4Vo
大魔王「どうしてですか」
魔導士「何度も言うように、貴方の正体は隠さなくてはならないからです。貴方がそう道化を演じれば演じるほど、皆は勘違いし、距離を詰めてくる」
魔導士「近しくなれば、それだけ正体を隠すのも難しくなる。単純な理由です。貴方も死は望まないはず」
大魔王「そうですけど……でも……」
村娘「……」
大魔王「私は、あの子を逃がします。絶対に」
村娘「……えっ」
魔導士「やめてください。誰かにその瞬間を見られたらどうするつもりですか」
大魔王「逃げ足が速かった、とでも言えば……」
魔導士「あのですね……」
大魔王「こういうのはどうですか。中庭で公開凌辱の準備をしていたら逃げられてしまった、とか」
魔導士「普通の人間が大魔王様から逃げることはできません」
大魔王「逃げられる大魔王もいていいじゃないですか」
魔導士「居ては困るんです!」
大魔王「それじゃあ、どうやって逃がせばいいんですか!?」
86 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/04(日) 19:23:18.63 ID:7kCK7A4Vo
魔導士「逃がせる前提で話を進めないでください!」
大魔王「私は逃がせたいんです!!」
魔導士「ですから……」
大魔王「そこは、譲りません」
魔導士「……分かりました。この一件は私が預かります。余計なことはしないように」
大魔王「私の判断で逃がしちゃいけないってことですか」
魔導士「はい」
大魔王「できるだけ早くしてください」
魔導士「善処します。それでは」
大魔王「やくそくですからねー」
大魔王「ホントに大丈夫かな」
村娘「……あの」
大魔王「なに?」
村娘「にがすって……」
大魔王「うん。絶対にここから逃がしてあげるから、それまで辛いだろうけど我慢して」
87 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/04(日) 19:30:32.39 ID:7kCK7A4Vo
村娘「あなたは……だいまおう……って……」
大魔王「ええと、一応そうなんだけど、大魔王じゃないっていうか……」
村娘「どういうこと、なんですか」
大魔王「私は、普通の人間なの。そもそも、あんな怪獣たちの王に見える?」
村娘「いえ……」
大魔王「だよねー。顔はそこそこ可愛いと思ってるの。いや、ほんと、そこそこだけど」
村娘「人間……なんですか……。どうして大魔王って呼ばれているんですか?」
大魔王「私が大魔王として呼ばれちゃったから、みたい。まだ、私もよくわかってないけど」
村娘「はぁ……」
大魔王「扱いは違うけど、私と貴女は境遇が似てる、のかもね。どっちもここから簡単には動けないって点だけかもしれないけど」
村娘「……」
大魔王「だから、ここでは楽にしていて。私は貴女を傷つけたり、襲ったりしないし」
村娘「けど、私の村を襲いましたよね……大魔王なら止めることもできたんじゃあ……」
大魔王「そ、そうなんだけど、私の事情も聞いてほしいの。聞いてくれる?」
村娘「聞きます……」
88 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/04(日) 22:47:15.76 ID:7kCK7A4Vo
――廊下――
魔導士「全く……。あの捕えた人間を……」
ドラゴン「何の話だ」
魔導士「むっ……。なんでもない。何か用か」
ドラゴン「いや、大魔王様の様子が気になってな」
魔導士「お休みになられたところだ。気にすることは何もない」
ドラゴン「そうか」
魔導士「私ももう休む。お前も竜族とはいえ、休息は必要だろうに」
ドラゴン「確かにな。本気を出せば七日間ぐらいは寝ずに動けるぞ」
魔導士「早く休め。我々はこれから忙しくなる」
ドラゴン「……」
魔導士「なんだ?」
ドラゴン「大魔王様に会わせてはもらえないのか」
魔導士「休まれたと言っただろう」
ドラゴン「本当か?」
89 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/04(日) 23:44:49.49 ID:7kCK7A4Vo
魔導士「なんだと……?」
ドラゴン「本当は、会わせたくないだけではないのか?」
魔導士「……」
魔導士(竜族だけあって、察しがいいな。ドラゴンが敵に回れば、厄介なことになるぞ)
ドラゴン「なんとかいったらどうだ、魔導士殿」
魔導士「嘘を吐く理由がない」
ドラゴン「憶測で語って良いなら、いくらでも仮説は組めるぞ」
魔導士「くっ……」
ドラゴン「例えば……。そう、大魔王様には秘密がある。その秘密を知られるわけにはいかない」
魔導士「……!」
魔導士(顔に出すな……。冷静を保て……)
ドラゴン「違うか?」
魔導士「秘め事などありはしない。妄想癖でもあるのか」
ドラゴン「そうか。我の考えすぎか。では、我も休むとしようか。がおー……。眠いしな」
魔導士(やはり……早急に問題を解決せねばならないか……)
90 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/07(水) 20:15:40.31 ID:1lVzVhVno
――大魔王の部屋――
大魔王「――ってわけなんだけど、信じてくれる?」
村娘「……」
大魔王「ダメ?」
村娘「あなたの言う、あいどるというのが良く分からないんですけど……」
大魔王「さっきみたいに人前で歌いながら踊る人のことを、私たちの世界では『アイドル』っていうの」
村娘「そうなんですか……。不思議な職業ですね」
大魔王「こういう世界にも踊り子とかいるんじゃない?」
村娘「居ますけど、あなたのように妙な歌に合わせて踊ることもないですから」
大魔王「妙って……」
村娘「す、すみません! あの、良い意味で妙ってことで……!!」
大魔王「良い意味で妙って……」
村娘「そ、そうじゃないんです! だから、おこ、怒らないでください……!」
大魔王「まぁ、妙だよね。そう、こんな歌でさぁ、メジャーデビューとかできるわけないんだよね。なによ、もえもえきゅーんって、バカじゃないの」
村娘「え……?」
91 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/07(水) 20:26:20.81 ID:1lVzVhVno
大魔王「私だってどうせ歌うなら普通の歌が良いもん。ファンの人たちには悪いけど、もっとロックな曲とかがいいわけ」
村娘「ろっく……岩みたいな歌ですか……」
大魔王「そんな年齢でもないしねー。一度、曲の雰囲気に合わせてツインテールにしたときなんて、流石に自分でも「似合わないなー」って思ったし」
大魔王「ファンの人たちはかわいーって言ってくれるから、歌ってるときはその気になっちゃうけど、やっぱり一人になるとねー」
村娘「……よくわからないんですが、貴方はあいどるであることが嫌だったんですか?」
大魔王「不満はあったかなー。プロデューサーのご機嫌伺いとか、自分のやりたかったアイドルとはかけ離れてたし」
村娘「それは、あの……元の世界に戻りたくはないってことですか? その、ずっと大魔王として……ここで……」
大魔王「それは、ない!」
村娘「……」
大魔王「ここにいたら、大好きなラーメンも焼肉もスイーツも食べられないし、スマホもないし、遊園地もないし。なにより、友達にも応援してくれていたファンの人にも、お母さんとお父さんにも会えない」
村娘「あ……」
大魔王「私は、早く帰りたい」
村娘「確かに……一緒ですね……」
大魔王「え?」
村娘「あの、もう一度見せてもらえませんか、先ほどの歌と踊り。興味があります」
92 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/07(水) 20:43:43.89 ID:1lVzVhVno
――城下町 城内――
兵士「陛下。魔物の森近隣にある村より住人が来られております」
国王「何かあったのか」
兵士「それが……魔物に村を襲われたと……」
国王「まことか」
兵士「幸運にも住人の殆どは逃げることができたようで、怪我人はいないようです。ただ……。娘を魔物に連れ去れたと申している者が……」
国王「うぅむ……。大昔、賢者が大魔王を封印し、人間と魔族との戦は成立しないものだと思っておったが……」
兵士「もう一つ、恐ろしい証言を聞いたのですが」
国王「なんだ」
兵士「その、大魔王がドラゴンと共に襲ってきたと……」
国王「な……に……!?」
兵士「自分もおとぎ話のものとばかり思っていました。寧ろ、大魔王など創作とばかり……」
国王「無理もない。大魔王など数千年前の伝説にすぎん……しかし……」
兵士「このような事態に対応できるものなのでしょうか」
国王「勇者と賢者を呼ぶしかあるまい……」
93 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/07(水) 21:08:11.04 ID:1lVzVhVno
兵士「は……!? お、おられるのですか、勇者殿と賢者殿が!?」
国王「過去の偉業を鑑みれば、勇者と賢者の一族は一国で保護すべきものだからな」
兵士「では、数千年も前から、勇者殿と賢者殿の一族は国に守られてきたと?」
国王「一応な。ただ、ここ数百年、どういった扱いだったのかは私にもわからん。一部の大臣が予算分配等の管理はしていたようだが」
兵士「もはやそれだけ力を失くしてしまっているということですか。であるならば、自国だけでなく同盟国からも兵士と魔術士を集めたほうがよろしいのでは?」
国王「だが、大魔王が復活していれば、何千、何万の兵が束になっても倒せはせん。倒せるのであれば封印という手段を用いたはずがない」
国王「故に、唯一大魔王を封印する術を知っている勇者と賢者の一族に頼らざるを得ない」
兵士「封印の方法を知っている者は他にいないということですか」
国王「封印する術と、その封印を解く術は表裏一体と聞く。賢者は勇者の一族以外にそれを漏らさないように努めてきたらしい」
国王「現代にかつての大魔術を知る者は一族以外にいないはずだ」
兵士「そこまで徹底されていたのですか」
国王「大魔王の復活など、あり得てはならないからな。しかし、数千年という月日が経ち、遂に安寧は崩れ去ったのかもしれない」
国王「――村人をここへ。その後、大臣たちを招集。緊急会議を行う。全兵に非常事態宣言を発令する」
兵士「はっ! 各員に非常事態宣言を発令いたします!!」
国王「国の、いや、世界の一大事か……」
94 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/07(水) 21:34:25.92 ID:1lVzVhVno
――魔王城 廊下――
魔導士(大魔王様にも釘を刺しておく必要がなるな。あまり部下と接しすぎるとドラゴンのように訝しむ者が増えてしまう)
魔導士「大魔王さ――」
『その姿勢を保って』
『こ、こうですか』
『そう。いいわね』
『は、はずかしい……のですが……』
『はぁ? なに言ってんの?』
『ひぃ……』
魔導士(一体なにを……。まさか、本当に言われていたようなことを……?)
魔導士「大魔王様、よろしいでしょうか」
『あ、はーい』
魔導士「一体、何をされているのですか?」
大魔王「この子がもえもえきゅーんってときのポーズをとってみたいっていうから、教えていました。きゅーんっ☆」
村娘「きゅ、きゅーんっ」
95 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/07(水) 21:53:12.68 ID:1lVzVhVno
魔導士「随分と余裕があるな、ニンゲン」
村娘「ひっ」ビクッ
大魔王「いいじゃないですか、これぐらい」
魔導士「仮にも奴隷という立場でここにいるのですから、相応の態度で居てほしいものです」
大魔王「隅っこで震えているよりはいいと思いますけど」
魔導士「しかし、他の者が今の光景を目の当たりにしたら、どう映るか……」
村娘「す、すみません……」
大魔王「何か御用ですか?」
魔導士「ええ。明日以降、部下との接触はなるべく避けて頂きたく思います」
大魔王「さっき聞きました」
魔導士「貴方が道化を演じる演じないに関係なく、極力避けてほしいのです。竜族が既に感づき始めているので」
大魔王「私のことに、ですか」
魔導士「異世界の人間とまでは考えていないでしょうが、探りを入れてくることはあるでしょう」
大魔王「でも、無視するって難しくないですか」
魔導士「私についていれば問題ありません。窮屈でしょうが、お願いいたします」
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