【鬼滅の刃】貴方の刃【あんこ】

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396 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2018/11/26(月) 20:49:57.32 ID:vZbLcSZno
>>394


太陽「ほ、本当ですか……」わなわな

女の子?「ねえ、どうす」

相手が言い終わるよりも早く、おれは動いていた。

太陽「教えてください!!」

女の子?「す……る……」

太陽「お願いしまーーーっす!!」

女の子?「!?」ぎょっ

太陽「……おれは役に立ちませんでした。大切な人達を、このままじゃ守れない」

太陽「だから、もしも強くなる方法があるんだとしたら、なんだってやりたい。それで鬼が、殺せるなら」

女の子?「っ……」


思い出したのはあの日のこと。
おれの父が、母の胸を抉る姿。
おれの平凡が一夜にして消し去られたあの因縁の日。あいつを殺せるなら、なんだってやってやる。
しかし、おれには足りない。なにもかも足りない。馬酔木さんに言われたとおり、おれには歴史もない。絆もない。
それなら、この人が気まぐれでもいい、おれに何か教えてくれると言うんだったら、教えてもらおうじゃないか。

それでおれが鬼を殺せるなら。


女の子?(凄く……悲しい子。刀のように強いけど、脆い)

女の子?(きみは……)


太陽「あの!」

女の子?「は、はい?」

太陽「師匠!師匠のお名前を聞いていませんでした!」

女の子?(もう師匠認定なのかな!?早くない!?)
397 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2018/11/26(月) 20:56:12.85 ID:vZbLcSZno
太陽「お名前を聞いていいでしょうか!」

女の子?「……あら、それならまず自分が名乗るべきでしょ?ねえ」

太陽「う……それは確かに……」

こほん、と咳を一つ。

太陽「おれは東雲太陽、まだ新米ですが鬼を狩るためなら何でもやります!」

女の子?「……」

───きらきらと、ぎらぎらと。本当に太陽の光みたいな目をしている。
そんなことをあの時、師匠は思ったそうなのだけれど、そりゃ言葉にして言うはずがなかった。言ってしまったら、ついぞ余計なことまで言ってしまいそうだったらしい。
それでもその輝きを真っ向から受け止めた師匠は、はははと一つ笑いながら言った。

女の子?「ダメだよきみ、おやかた様からこうも言われなかった?無駄に死んではいけないよ、とも」

太陽「そもそもおれ、おやかた様?に直接お会いしていません!」

女の子?「はっ!そうか、きみはまだ柱でもなんでもなかったんだ!」

今度咳をしたのは師匠の方だ。

女の子?「人に名乗られたならば名乗らなければ。ぼくは【ミツキ】。【満月 ももとせ】、【月柱】と呼ばれてるの」

太陽「は、よ、よろしくおねがいします!」

ぎゅ、と手を握って。そうして、気が付いたんだ。堅い───それに、とても、強い───

太陽「もしかして師匠……」



壱:厳しくお願いしますイテテテ
弐:実は男の子なのではイテテテ
参:柱とはどんな人なのですイテテテ
肆:何を言っても古傷がイテテテ

下弐
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/26(月) 22:12:05.89 ID:nk/S+RZSO
>>395
私は夢見心地でございます。
毎週月曜日に続きを書いて頂けること。
鬼滅のSSを読めて楽しかった。
幸せでした。
鬼滅のSSを読むのが大好きなので、更新してくださってありがとう。


安価なら惨
399 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/01(土) 09:08:54.89 ID:mZNBM7dSO
400 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2018/12/03(月) 23:25:43.73 ID:BzYTQGLBO
>>399


太陽「は、柱とはいったいなんなのでしょう?」

満月「うむ。柱とはそれ即ち、この隊の大黒柱。みんなをまとめる大きな存在なんだ」

満月「ぼくの他に七人の柱がいて、それぞれがその流派に応じて呼ばれているんだよ」


今の柱は
【月柱】【水柱】【炎柱】【鳥柱】
【剣柱】【死柱】【血柱】


満月「そして【人柱】と呼ばれているようだ」

太陽「人柱はちょっと なんかすごくイタタタタ」

満月「まあまあ、自分からそう名乗ったんだ死仕方がないね」

太陽「たた……はあ……」

いったいどんな人達なのだろうか?

太陽「ところで師匠」

ぎぎこぎぎぎぎ

太陽「いつ手を離してくれるのですか」

満月「ん?そうだなー、きみがちゃんと部屋で安静にすると約束したらかな?」

太陽「は、はい!」

満月「よろしい。ぼくは注合会議に出てくる」

するっ

満月「その後で鴉をきみに寄越すよ。書いてあることをよく読んでね」


両の髪をだらんだらんに垂らして、むしろ引きずりながら師匠は走っていってしまった。
廊下を走っちゃだめなんじゃないのかよ!
401 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2018/12/03(月) 23:33:39.97 ID:nMsQce8vo
それからしばらくして、本当に鴉は飛んできた。
おれのところに便箋を寄越したのだ。


『拝啓、東雲くんへ
きみが独学で呼吸を覚えたと聞いて、ぼくはとっても驚いたよ!特別なわざだからね、自分だけで作るようなものじゃないんだ。
だからきみにひとつ良いことを教えよう
そこにいる馬酔木さんと言う人は、とある事情で前線を引いた元柱だ。
そのひとに、【全集中・常中】について聞いてみるといい。きっと役に立つよ
それから技だけど、また今度みる機会を作るつもり
それまでは悪いんだけど、下級鬼を退治する役目が来ると思うからそのつもりで

早くけがなおしてよ!』


うう……悪い気持ちになる……。


馬酔木「常中?……バカな、この程度のガキに教える気か、ももとせ」

太陽「うう……ん」

馬酔木「……まあ、許可する。仕方があるまい、指示だからな、柱の」

ついでに話はとんとん進んで、馬酔木さんはおれに常中と言う全集中を教えてくれることになった。
常中、つまり、いついかなる時でも全集中の呼吸を使えるようになるらしい。
全集中、って言うのは技を出す前の呼吸でしょ?つまりあれをずっと………

太陽「えーっ!?無理です!!」

馬酔木「あきらめるな。堅いはずだ、意志は」

太陽「!」

馬酔木「始めるぞ」


そうしておれの前に置かれたのはひょうたんだった。


太陽「!?」



ひょうたん割れるかな判定
下参までコンマ二桁の連続連携
合計百以上で合格
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/04(火) 00:46:53.64 ID:ZKIe2gGz0
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/04(火) 01:02:49.52 ID:60GY2AbSO
嫌われてない柱さん「水柱はいない」


柱が既存の水・炎を含めて全部気になる……
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/04(火) 14:07:57.63 ID:gx33dzhHo
一応そい
405 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2018/12/10(月) 20:51:36.79 ID:1iaSz9Q6o
今週も元気に鬼をばっさばさ!
406 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2018/12/10(月) 21:08:59.21 ID:1iaSz9Q6o
百達成でひょうたんぱーん!


曰く。


馬酔木「これを、何のためにするのか。おまえ、気になるか」

太陽「えーと……?」

馬酔木「このひょうたんは特注だ。ただ息を吹いただけでは壊れない、それをおまえが、おまえだけの力で、吹いて壊す。そのために作られたのがこのひょうたん」

ことん

馬酔木「全集中の呼吸、おまえが技を出す前に体全体に息を回すための呼吸がそれだ。それを常に、四六時中行う、それが【全集中の常中】」

馬酔木「ただの足かけでしかない。ただのひとかけらでしかない。だがこれができれば、おまえと他の差はきっと埋まるだろう、そして」


がっ、とひょうたんを馬酔木さんが掴む。そのまま、口にそれを当てて───


ぱん。


太陽「」

馬酔木「ふー……やはり、落ちたか……現役を退くとどうも気が緩んでいかんな」

太陽「」あぐあぐあぐ

馬酔木「……」

太陽「」あぐ……

馬酔木「……やるんだぞ?おまえが」

太陽「」あぐあぐあぐ


どうやら馬酔木さんは、普段の口調だと余りに喋りすぎてしまうし、それに口もとても悪くなるので、あえて今までの喋りづらそうな口調で喋っているらしい。

(馬酔木「いや、他の奴に口が悪いと怒られてな」)

(怒られるとかあるんだ……)

(馬酔木「回想する……そう、あれはまだ【人柱】が柱になったばかりの頃だったな……」)

(話長そうだな……)

(馬酔木「たでまるが私の口調を注意したのだ……」)

(人柱の名前かな……)


その後数時間その話をしていたのでおれは意識を失いそうになったのだが、途中で『これこそが全集中の呼吸の練習なのでは!』と気づいた。
馬酔木さんが無駄なことをするはずかない。つまり、この話の間は全集中をとにかく続けろ、そういう理由でずっと喋っているのではないかと思ったのだ。
結局おれが死にかけ一歩手前で話が終わり、「ぼさっとするな、始めるぞ」などと言い出したため早々に逃げ出した。


馬酔木「あいつめ……最初の練習を早速放棄か……」←鍛錬じゃなかった
407 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2018/12/10(月) 21:15:47.00 ID:1iaSz9Q6o
それから数日、数週間と時間は過ぎていく。
おれに課せられたのは『四六時中いつでも全集中の呼吸を続けること』『毎日ひょうたんを吹いて割る練習をすること』のふたつだ。
傷をいやしつつ、機能を改善しつつ、様々なことを繰り返しながらも作業ではあったし、なによりも前進が見えなくて、おれは日々焦っていた。

が───

二週間ほどだったろうか、ついに一番小さなひょうたんが割れた。水風船位の大きさだが、それでも進歩に思える。
ぱん、と小さな音を立て、おれの手の中で割れたのだ。


馬酔木「な……早い……!?」

太陽「割れた……ひい……はぁ……」

馬酔木「おまえ……遂げたのか、それを……!?」

太陽「はぁ……はぁ、はぁ……?」

これが『遅い』と思っていたのはおれだけらしい。

馬酔木「誉めてやる。まさか……こんなにも簡単に越えられると少し驚く」

馬酔木「だが、付け足す。これは終わりではない。全集中は続ければ続けるごと、限界を更新できる」

馬酔木「人間の可能性を究極に引き出す技、それこそが【全集中の常中】である、それを忘れるな」

太陽「……! はい!」


と。

ばさばさばさ!

鴉『カァー!任務!任務!至急読マレタシ!』


太陽「うわ!?」

馬酔木「到来?……鴉、何かの依頼か」

ばさ

馬酔木「受け取れ。そして読め。おまえ宛の手紙だろう」


▼新たな戦い?
壱:鳥柱と合流?
弐:死柱からの依頼
参:人柱が呼んでるってよ
肆:そのた

下弐
408 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/10(月) 23:26:51.26 ID:RpERDrd10
409 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/11(火) 09:29:18.77 ID:sdYrjmlSO
肆、壱+刀鍛冶からの手紙
410 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2018/12/11(火) 18:27:14.16 ID:looRzupxo
>>409


ぺらっ


             ズオオオオオオ
『お前俺の打った刀を刃こぼれさせたらしいなこの滓が塵が早く体を治して刀に相応しい剣士になれなれないならそのまま死んで鎹鴉の餌になれ朽ち果てろ刀が傷つくのはお前の腕がないせいだふじこふじこむっきーん』
   ォォ ォォォォォ

太陽「はぁ……ぅっ……!?」ぞわっ

馬酔木「鋼鐡塚め。だからお前の剣を取る剣士が減るのだ」

もらった手紙は悪意が満載に込められており、端の方などは怒りのせいかちょっと血とか付いていて恐怖の対象だった。ええ……。
それを見て引くと言うより呆れる馬酔木さん。え、これなに、日常茶飯事だったりするのかな?ちょっと勘弁していただきたい。
と言うかこの人絶対あれだ!最初の頃におれにまで襲いかかってきた人だろ!絶対そうだわ!と言うかこんな人以外にいないのか、刀が打てる鍛冶!!
(>>35らへんの話)
おれ別な鍛冶の方がいいかなぁ、この人が悪いと言うわけではないのだけれど!けれどね!


ひらひら……

太陽「ん?あれ……まだ手紙がある?」

馬酔木「……来たか」

太陽「えっと、来たかとは」

馬酔木「恒例行事。【鳥柱のお守りの依頼】だ」

太陽「!?」むむむ!?


『拝啓
突然のお手紙をお許しください。私は鳥柱の側近、飯塚と申します。
月柱様より、こちらの館に鍛錬中の剣士様がいるとお伺いし、筆を取らせていただきました。
つきましては誠に身勝手なお願いではありますが、【鳥柱の遊び相手】になっていただけませんでしょうか?』


太陽「あの……これって……どういう?」

馬酔木「これも試練。東雲、柱とはどのような人間がなるか、分かるか?」

太陽「え?ええと、強くて、鬼を倒せて、人を守れて……」

馬酔木「そして、時に人に愛される者だ」

太陽「……?」


411 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2018/12/11(火) 18:35:13.53 ID:looRzupxo



『私の鴉を付けておきました』

『どうぞ鴉に導かれるまま、鳥柱の屋敷にお越しください。そこからはそう距離はありません』

手紙の内容がよく分からないままだったが、断れる訳もなかったのでとりあえず行ってみることにした。それにしても鳥柱の……遊び相手?
帯同する任務の依頼ならばまだ分かる。おれみたいな下っ端に頼むかどうかはさておいてだけど。だが、依頼としてはちょっと分からない。
そもそも、師匠はなんでおれのことを鳥柱に紹介なんてしてくれたんだろうか……。馬酔木さんが恒例行事だとは言っていたけど……。


ぎぎい

太陽「あっ」

気付けば鳥柱の屋敷はすぐそこだった。


側近「お待ちしておりました」

ぺこりと頭を下げるのは、飯塚さんと言う人だろう。隠と同じような服を着ており、顔もしっかりと隠している。真っ黒い。暑くないのか?

太陽「あっ、はい、東雲 太陽です、よろしくお願いします……それであの」

側近「はい、鳥柱がお待ちです」


すたすた歩いていく。とてものどかな場所だなとすぐに分かった。太陽の光がまぶしく、とても柔らかく降り注いでいる。少し眠くなってくるほどだった。
……そうして招かれた先にいたのは。


だだだだだだだ


鳥柱「わぁーーーーーー!!!!!!」

太陽「あ”ぁ”ーーーーーー!!!???」


裸。
そう、裸だった。裸の。男性。成人男性。

側近「鳥柱様、服をお召しになられてください。風邪を引きます故」

鳥柱「よくわかんない!なに?」

側近「服を着てください、風邪を引きます」

鳥柱「うんー!」

もそもそもそ

鳥柱「着れないー!!」ぼはぁ

太陽「!?」
412 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2018/12/11(火) 18:44:24.56 ID:looRzupxo
側近「ああ本当に貴方と言う人は……」こそこそ

鳥柱「あはははは!あはは、くすぐったいよぉー」


太陽「……」

えーと?……なにこれ?

鳥柱「んしょっ!」

服を着終わった鳥柱がこちらを向く。すごい笑顔だった。怖いくらいの笑顔。

鳥柱「もう遊んでいい?」

側近「だめです。まず名前を言わないと」

鳥柱「えー?なんでなんでうるさいふにゃちん!」

側近「私はふにゃちんではない」ぎろ

鳥柱「うひゃひゃ怒ったー!」

太陽「……あの……あの……?」

鳥柱「あ、人だ」

ぐいん。いったいどこから伸びてきたのか、首がおれの方に伸びる。突然、口付け出来そうな位に顔の距離が縮まって、びくっと体が震えてしまう。

太陽「し、しののめ……太陽です、太陽と呼んでください……」

鳥柱「わかったー!」

太陽「……」まむまむ……

側近「貴方も名前を名乗って」

鳥柱「すずめ!」

側近「鳥柱様」

鳥柱「……【角田 雀】、だよ。いっしょに、あそぼ?」

太陽「は……」

鳥柱「ねー?あそぼー?ねー?あっちの木から柿とってこよー?」

太陽「……」まむまむ

なんだこの空間……!!??
えっと、えっと……この人が鳥柱……なんだよな?

太陽「お……おいくつで……」

すずめ「いま二十八!」

太陽「」


▼聞きたいことが山ほどあるんですが。
壱:すずめちゃん(※28歳男)と遊ぶ
弐:ちょっと側近さん、仔細を……
参:うおおお師匠!と怒りの鎹鴉
肆:そのほか

下弐
名前は後付けしたらこんなことに。とよもとはいない。なぜなの。
413 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/11(火) 18:48:28.52 ID:mgKVifE30
1 チュンチュン
414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/11(火) 21:24:59.45 ID:uBUTspjk0
415 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/12(水) 00:55:25.88 ID:4soEc0ySO
乙です。刃こぼれさせてたんかい太陽……
折るなよ?
かっとなってぶん投げるなよ?
416 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2018/12/17(月) 18:57:17.93 ID:67NnG0G7o
すずめちゃんの設定は出来た瞬間に投下しました、なんか大切にしたい子でした
417 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2018/12/17(月) 19:04:29.33 ID:67NnG0G7o
>>414

すずめ「行くよー!」

太陽「!?」

すずめ「せーの!」

なんで気が付かなかったんだ?
この人……普段の呼吸から【全集中】をしているのか!?そんな……と思った次の瞬間、疾風のように鳥柱さんは走っていってしまった。
まあさすがに飛んだりはしないんだろうなと思ったけれど、かといって常人で出せる速度ではなかった。
めちゃくちゃに早すぎる。どんだけ早いんだ。

すずめ「ヒャハハハ!」

太陽「あ、ま、待ってください!」

いたたたた。まだ傷が痛む気がしたけれど、きっと気のせいだろう。おれも息を大きく吸い込み、それから駆け出す。
鳥柱さんほどの速度は出なかったけれど、それでも普通の人からすればまあまあ早い方だろう。

だ、け、ど!

太陽(まあまあじゃあ……追いつけるわけ、ないん……だよなぁ!)

へろへろになってやっと鳥柱さんに追いついたが、すでに本人は木の上に登って柿を取っていたのだった。

すずめ「遅いー」

太陽「はあ、はあ、すいま、せ、はあ……」

すずめ「キカイはもっと遊んでくれるよ?」

太陽「はあ……はあ、は、きかい……、」

すずめ「うんー!ひとばしらー!」

太陽「」はあはあ

うーん、実力の差はこんなところでも。
柱ともなれば、このむちゃくちゃな速度にも対応できるのだろう。疲れもなく走っていけるんだろうなあ。


太陽「ひゃあ……」へと

それから数回走ったが、当然おれなんかが追いつけるはずがなかった。

すずめ「いひひひ、ちんちーん」ぺち

太陽「恥ずかしいので……その……はあ、股間を叩かないで……ひいひい……」


418 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2018/12/17(月) 19:10:05.15 ID:67NnG0G7o
その日の夜は体中が死ぬほど痛かった。
もう、なんだろうな、今までで一番痛かったまであるかもしれない。陽炎との戦いでもこんなに痛いこと無かったのになとものすごい頭を抱える。
恐らく、だが。おれも常、【全集中の常中】をしようと心掛けているが、こんなにも長い時間【全集中状態で走る】ことをしていなかったのが敗因だろう。
今ではすっかり全集中状態の呼吸が続かず、通常の呼吸に戻ってしまっている。そして、反動のように全身が痛みに遭っていると言うわけだ。


痛みに耐えかね、風呂を借りた後布団でごろごろしていたら、いつもの側近の飯塚さんが部屋にきた。鳥柱さんを寝かせてきたらしい。なにからなにまでしてもらって申し訳ない……。

側近「ご無理は禁物ですよ、若い方」

太陽「はあ」

しかしおれも、頼まれてきたからにはそれなりにやらなければならないのではないか?

側近「……鳥柱様の遊び相手を真に務められるのは柱、もしくはもう鬼でなければ難しい」

太陽「鬼!?」

側近「あの方にとっては、純粋な意味で───鬼は『壊れない玩具』なのですよ」

太陽「……」

側近「……気になりますか、鳥柱のこと」



壱:鳥柱は大人なの?子供なの?
弐:なんで鳥柱の側近やってるの?
参:キカイってだーれ?
肆:そのた

下弐
419 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2018/12/17(月) 23:36:10.74 ID:67NnG0G7o
420 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/18(火) 00:03:38.88 ID:BmFRjLp40
1 ロリショタってええやん?
421 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2018/12/18(火) 00:22:27.16 ID:R8deOayGo
>>420

太陽「ええと、その………聞きにくいのですが」

側近「なんですか?」

太陽「鳥柱さんは、大人なんですか?それとも子供?」

側近「………」

そして側近さんは口を開いた。最初のうちは周りからの伝聞や、お館さまから聞いた話、らしいが。

側近「鳥柱様は、生まれた時から病を患っておられます」





穏やかな村に、のちの鳥柱こと雀は生まれた。
幼い頃に酷い病熱を発生させ、その処置が残念ながら間に合わなかった為か、脳にすこしばかり病が残ったのだと誰かは言う。
おかげで十を数える頃になっても立つこともままなかった。今でこそ柱などと呼ばれているが、精神は子供のままで止まっているんだとか。
口減らしの為に、早急に埋めてしまおうと言う話しもあったのだが、本人がとても純真で皆を励ましていたこと、なによりも、
母親が「そんなことをするなら、まず私を殺しなさい」と譲らなかったことから、誰も雀には手を出さなかったんだとか。

ところが今から数年前、その村で飢饉が起きてしまった。全員食べていくのなんて無理に決まっている、そんな状態だ。
そこになってやっと、村の人達は苦渋を飲んで決断した。雀を、山に捨てるべきなのだと。
幾人かの爺婆とともに、雀は村付近の山に捨てられた。しかし本人は捨てられただなんて理解していない。ただの散歩だくらいに思っていただろう。





側近「そこに、運悪く村を襲うべく鬼達が来たそうでして」

太陽「え……」

側近「村の人間は全滅……鳥柱様も危険でした」

側近「しかし、鳥柱様はその時に、不思議なほどの能力に目覚めました」

太陽「……まさか……」

側近「鳥柱様は力の加減が元々あまり効かない方なので、ほら。鬼なら」


すずめ「すごーい!どれだけぎゅってしても、いなくならないね?動かなくならないね!」

鬼「ぎや、あ、ぐ、うぁぁああ!?」

すずめ「遊ぼ、遊ぼ?ね?何でも遊べるよね!」

周りが血だらけになろうとも。

ばきばきばきと骨の折れる音が聞こえても。

角田雀は鬼を離さなかったのです。


太陽「───」ぞわっ
422 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2018/12/18(火) 00:29:13.76 ID:R8deOayGo
側近「そのおかげで太陽が昇り、鬼は消えてなくなりました。そして、その姿をお館様はご覧になられていたそうです」

太陽「え、あ……」

側近「そしてそのまま即確保、鳥柱様はそのまま鬼殺隊の本尊に連れて行かれ、簡単な訓練をしたのちあっと言う間に柱になり……」

側近「それが大体四年ほど前の話でしょうか」

太陽「四年前から……柱の人……」

側近「彼の言葉には嘘がありません、裏がありません」

側近「だからこそ彼は周りの人を引きつけ、そして平等に愛して愛される」

側近「家族から渡されなかったであろう愛情を今、彼は得ています」

太陽「……」

側近「それが良いか、悪いかは分かりませんが」

側近「少なくとも。……私もまた、彼に救われた身です。最後まで、あの方のそばにいるつもりですよ」

太陽「飯塚さん……」

側近「鬼殺隊はあらゆる人間を求め、そしてあらゆる人間を認めます」

側近「彼を認めると言うことは、多様性を認める。非常に難しいですが、良い判断だ、と私は思いますよ」



壱:貴方はどうして助けられたの?
弐:なんで簡単に柱になったの?
参:じゃあ、すずめちゃんの家族は……
肆:そのた

>>424
423 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/18(火) 09:24:36.12 ID:+WMZB1mSO
天ぷら 天ぷら 加速ゥ猛進!!

安価なら肆、鳥柱の刀鍛冶について聞く
424 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/19(水) 18:58:00.59 ID:c0dhx3pyO
425 : ◆z.6vDABEMI [sage]:2018/12/24(月) 22:00:05.62 ID:/DBpvB3Ko
※おわび※
今日の更新は、作者カゼのためお休みです。次はなんと大晦日に更新します。悲しいかな、暇なのです……。
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/25(火) 01:49:47.50 ID:NjI2GD4SO
風邪を引いている時はやめておいたほうがいいと思います。悪化しますので。

大晦日を楽しみにしています。
427 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2018/12/31(月) 21:49:53.23 ID:s9iN3q7fO
遅くなりました。本年もありがとうございました。来年も変わらぬご愛顧をお願いいたします。
428 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2018/12/31(月) 22:03:01.57 ID:s9iN3q7fO
>>424


太陽「貴方は、どうして助けられたんですか?」

側近「……私がいた村が襲われた時に、鳥柱様に救われました」

側近「その時の彼の顔が……言葉が、どうしても忘れられないのです」


『僕も遊んでくれる人がいなかったから、分かるよ。だけど、きっと探したら……どこかにいるよ、お友達になれる人』


太陽「!」

側近「鬼の心を見透かしたような……ええ、分かっていたのかもしれません。闇に屈し、鬼になってしまった者達の弱さを」


『僕が遊んであげてもいいよー!だけど』

『もしもこの人達を食べるなら、殺す。』


側近「鳥柱様は、入隊から僅か三ヶ月で柱になられたようなお方です」

太陽「さんっ……!?」

次々に恐ろしい話を聞かされる。
途端に、彼が得体の知れない化け物なのではないかと思い始めていた。
ただの人のままでは、たどり着けない極みにいるのではないだろうか?

側近「化け物だと、」

太陽「!」

側近「思いますよね。私も、正直最初はそう思ったものです」

側近「人は、弱い。間違えるし、屈する。差し出すし、人を食う鬼に墜ちることすらある」

太陽「……」

側近「ですから」

がらららら!!

すずめ「おしっこ!!」

側近「はい、今」


すたすたすた……


太陽「……鳥柱と……側近さん……」


それにしても、僅か三ヶ月で柱に成れるほどの才能を持つ、天才とは。いったい何だったのだろう。いったいそれは、何者なのだろう。


429 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2018/12/31(月) 22:14:30.11 ID:s9iN3q7fO



───翌日。


すずめ「ごはんっ!ごはんっ!」


側近「支度は済んでいます」

すずめ「いただきまーす!!!」

太陽「い、いただきます」

菜っ葉が中心の緑みどりしい食事が並んでいる。草食なのか?鳥柱に話を聞いたところ、「はっぱ美味しいむしゃむしゃ」と言う回答しかなかった。ええ……?

すずめ「ごちそうさまでした!!!」からーん

すくっ!!

すずめ「おさんぽ行くね!!!」

側近「鳥柱様、御館様から手紙が届いています」

すずめ「だれ?おや?」

側近「産屋敷様からです」

すずめ「ふにゃ?」

側近「耀哉様からです」

すずめ「かがやさん!!」


太陽「……」もくもく

側近「ああすみません、毎日このような感じです」

太陽「いえ、楽しそうですね」

側近「え?」

側近さんと鳥柱様の会話は、とても楽しそうに聞こえた。よく聞くとお互いに笑いあっているのも分かるから、おれもつい素直にそんなことを言った。

すずめ「楽しいよ」

太陽「そうですよね!笑っていたし!」

すずめ「ふにゃちんだけどお話してくれるしー、ご飯もくれるんだ」

側近「……」ふにゃ……

すずめ「一緒に遊べないけどね」

側近「……」ふにゃ

すずめ「だからきみが遊んでくれるんでしょー?あそぼ!」

太陽「は……!」

すずめ「あっちにねー、面白いのがいるんだー。いこー?」



壱:面白いのとは
弐:側近さんはどうするの?
参:行きます!行きますよ!
肆:そのた

>>431
430 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/01(火) 05:44:57.63 ID:pIkPLMjSO
アァアアア 年がァ!! 年が変わっている!!

安価なら肆で側近の人に鳥柱の刀鍛冶について聞く。


>>1さん&他の読者の皆様、明けましておめでとうございます)
431 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/05(土) 02:28:27.32 ID:ByN4L/Qm0

新年&14巻発売おめでとう
みつりちゃんのカラーリングに衝撃を受けつつ今年も応援しまっす
432 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/01/07(月) 19:40:48.07 ID:4c2BQO/Co
チュン(開)
433 :あ け お め ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/01/07(月) 19:52:45.58 ID:4c2BQO/Co
>>431
>>430

太陽「ち、ちょっとだけまっていてくださいませんか!おれはきになることがあるんです!」動揺

すずめ「………」

太陽「あの、鳥柱様……」

すずめ「うえぇ……」ぐずっ

太陽「」

すずめ「うぇぇぇぇああああ!!やだやだやだやだやだやだ遊ぶんだああああ!!」どったんばったん

側近「あーあー鳥柱様、屋敷を壊さないでください。ここを直すのは大変なんですよ」

どったんばったんうーがおー

太陽「……あ、あの……ごめんなさい……」

側近「いえ、いつものことです」

太陽「ヒィ……」





それから数分。
体力を使い果たした……訳でもないだろうが、鳥柱様は眠りについた。
今のは子供の癇癪のようなものだと飯塚さんに教わった。だから、なるだけ話を聞いてやって欲しい、とも。
おれは周りが壊れているのをよく知っていたので、「はいわかりました……」と震える声で答えるほかないのだった。

なお、それから間もなく隠が大量にやってきては、屋敷を直してくれるんだそうだ。


側近「それで、気になることとは?」

太陽「……刀鍛冶です」

側近「え?」

太陽「おれは……」

実は前回の対戦で刀を刃こぼれさせていたことを話した。刀鍛冶とは上手くやっていきたいが、今のおれでは上手く行くかどうかあまり自信もない。

側近「なるほど、それで。しかし、きっと大丈夫ですよ」

太陽「え、どうして?」

側近「その方は鋼鐡塚さん、と言う方でしてね。気難しい鍛冶ですが、自分が打ちたい刀しか打ちません」

側近「それを壊さずに使いこなせていたんだ、貴方は立派に胸を張ってもいいでしょう」

太陽「そういうもの、なのでしょうか」
434 :こ と よ ろ ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/01/07(月) 20:01:51.33 ID:4c2BQO/Co
側近「それに、柱の刀を打つのは名工ばかり、それもひとりに付き鍛冶がひとり付くような度合いです」

側近「柱の使いやすいように刀を調整しなければならない、その難しい作業を一手に引き受けております」

太陽「鳥柱様の刀鍛冶って……」

側近「ええ、若い鍛冶で、『剣村』と言う人が打っていると聞きました」

随分他人事のように話すのだな、と思った。

側近「我々はよっぽどのことがなければ刀鍛冶の里には行きませんので、未だ剣村さんにもお会いしたことが無いのです」

太陽「! そうなんですか!」


すずめ「ひっしーの話してるの?」


太陽「あ、鳥柱様」

いつの間にか起きあがった鳥柱様は、自らの刀を持ってこちらに来た。鞘はふたつ、つまり二刀流と言うことか。
すらっ、とそこから抜かれた刀は、一見すると分厚い大剣にしか思えなかった。

すずめ「ひっしーすごいんだよ、これもひっしーが作ったんだよ」

太陽「ひっしー……」

側近「『剣村 拉(ひしぎ)』さんと言うんだそうですよ。すずめちゃん……こほん、鳥柱様とは文通をしておりまして」

太陽「へぇ……!?」

すずめ「ひっしーの剣、見たいよね?じゃあ、行こうよ!」



壱:イヤな予感もするけど行こうか
弐:まだ何か側近さんに聞くことがあれば
参:そのた

下弐
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 22:00:53.38 ID:gHZP1jIx0
436 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/08(火) 00:25:29.70 ID:FtIA43ESO
弐、最初の頃(>>53辺り)で出会った青い目の剣士について何か知らないか聞く。
437 :チュン ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/01/14(月) 19:10:53.58 ID:XAme2DdIo
これで私もハタチです(大嘘)
438 :チュン ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/01/14(月) 19:43:07.61 ID:XAme2DdIo
>>436


そういえば。

太陽「あの、ひとつ伺いたいのですが」

側近「なんでしょう?」


(貴方は噂に聞いた、鬼斬りの剣士さまなのでしょう?)

あの時出会った剣士も、鬼殺隊には違いない。けれど今の今まで出会えていないあの人、一体何者なのだろうか?

側近「柱、ですね」

太陽「!」

すずめ「あ、青い目のひと?もしかして」

すずめ「【ギユウ】さん?」

太陽「ギユウ……」

側近「青い目、右と左で模様の違う着物、言葉数が少なく名も名乗らないとあれば、その方は【富岡 義勇】様、水柱でいらっしゃいます」

太陽「……」

水の澄んだような青の目。まるで水柱になることを宿命づけられたかのような色だったなと振り返る。

太陽「その人はどんな人で………」

すずめ「わかんなーい」

太陽「!?」

すずめ「分かんないの、あんま喋らないし」

側近「実は誰もあの方のことは良く知らないのです」

太陽「へ……?」
439 :チュン ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/01/14(月) 19:56:01.13 ID:XAme2DdIo
すずめ「話しかけてもねー」


『俺から話すことはない』
『お前と俺では見える世界が異なる』


すずめ「とかなんとかで」

太陽「何者なんだろう、その人……」

疑問は膨らむ。
柱になってから会ったのか、それとも柱になる前だったのか。
いや、あんなに強かったのだ、きっと柱になった後だろう、きっと。
しかしなんだろう、鳥柱さまも側近さんも、だことなーく視線を外しているような……。

すずめ「ぎゆーさんはこわーい……」そーん

側近「あの方は何を考えているのか……」そーんっ

太陽(ああっ!ふたりともそーんっとしている!本当に知らないんだ、義勇さんのこと!)

分かっているのは、水の呼吸を使う【水柱】だと言うことと、途轍もなく口下手な人間だと言うことだ。
太陽、諦めてはだめよ、と脳裏に母の声が聞こえた気がした。

すずめ「……なんか……調子狂う……」



壱:まだおもしろいもの見に行く?
弐:刀がみたいので外へ
参:その他

下弐
440 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/14(月) 21:23:24.25 ID:+Q7NVbBI0
441 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/14(月) 23:04:57.76 ID:ZgaH9iYSO
>>437
そうなんですね。おめでとうございます。
(くもりなきまなこ)

安価なら上
442 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/01/21(月) 21:05:23.88 ID:LQtbzjTfo
月曜日なので一回だけ上げ!
443 : ◆z.6vDABEMI [saga sage]:2019/01/21(月) 21:16:42.79 ID:LQtbzjTfo
>>441
>>440


調子の狂っている鳥柱さまをなんとかなだめて、

太陽「け、剣が見たいです!おれ、鳥柱さまの剣が!」

すずめ「!」ぱぱーっ

太陽「ひっしーの剣、見たいです!」

すずめ「僕も見せたい!」

太陽「行きましょう!」

すずめ「うんー!」

どたどたどた

側近「ああ、夕暮れまでにはお戻りください」


飯塚さんの言葉を背中に受けながら、おれ達は走り出した。
昨日よりもそこそこに鳥柱さまの動きについていけている気がする。おれも成長しているのかもしれない。


すずめ「えへへー!いっくぞー!」

と。
鳥柱さまが、少し走って(とは言え屋敷から充分に離れていたが)刀を抜いた。
大振りで、分厚い刀身が現れる。

すずめ「とりゃ!」

その刀身の中から───本当に中から飛び出すように───布のようなものが、扇の半分みたいに広がる。右の手には剣の右側に、左は左側に、だ。
布にしか見えないそれは、風をしっかりと受け止めて強くはためいていた。まさかと思うが。

すずめ「僕は飛ぶ!鳥に成る!」

太陽「!!」

一瞬の出来事。風がそよいだかと思ったらそれは鳥柱さまの呼吸だった。ええ、と驚くよりも早く、鳥柱さまは跳躍した。
高い。そして、どことなく飛んでいるようにも見える。あの布が、少しでも鳥柱さまを軽くしているのだろうか?
きっかり三秒ほど飛んだ鳥柱さまは、ゆっくりと着地した。
444 : ◆z.6vDABEMI [saga sage]:2019/01/21(月) 21:25:47.67 ID:LQtbzjTfo
すずめ「どうだすげーだろ、これが僕の【鳥の呼吸】だ!」

太陽「なんだか分からないけどすごいと言うことだけは分かります!」

興奮していた。鳥柱さまの跳躍がまるで本当に飛んでいるように見えたのだ。刀身が羽のように見えたのだ。
ふふーん、と嬉しそうにする鳥柱さまにキャーキャー言っていると、不意に鳥柱さまは鋭い顔つきに変わった。

すずめ「ん」

太陽「さっきのをもう一度!……鳥柱さま?」

すずめ「いる」

太陽「え?」

すずめ「……どこだ」

おれが動くよりも早く、鳥柱さまが動く。両の剣先を地面に向け、ととんと短く叩いて。……敵の気配を感じ取っているのか?すごい、おれにはぜんぜん分からな───

すずめ「そこか」

太陽「ッ!?」

ひゅっんっ

太陽「うわわわわ……」とて

おれの背後に鬼が出たようだった。鳥柱さまの剣は何とかかわしたものの、転んでしまう。
そしてまさしく背後では、鬼が一匹斬り伏せられているのだった。


太陽「と、鳥柱さま!」

すずめ「うーん、いっぱいいるー!うーんうーん!」

太陽「え、いっぱい……?」


か、囲まれている……?
いつのまに……?



壱:手分けして倒そう
弐:側近さんが心配だ
参:頭がいるはずだ
肆:そのた

下弐
445 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/22(火) 00:21:30.34 ID:Lxo5T8QSO
更新来てたか。腹が減るぜ!!

安価なら弐
446 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/22(火) 16:18:31.69 ID:vkggguYGO
弐だぜ!
447 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/01/28(月) 20:01:28.93 ID:Pi8YjbJPo
今日は鬼滅の日です。よろしくお願いします。
448 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/01/28(月) 20:10:26.36 ID:Pi8YjbJPo
>>446


太陽「側近さんは……大丈夫なんでしょうか」

家に残してきた飯塚さんが突然心配になった。
おれ達を鬼が囲んでいると言うことは、きっと屋敷の方にも鬼がでているだろう。
もしかしたら鬼の総出で鳥柱さまを倒す算段なのかもしれない。……鬼は群れないはずなのだが?

すずめ「……いこーか」

太陽「えっ?あ、はい!」

すずめ「その前に、鬼倒そっか!」

太陽「えっ?あ、ああ、はい……!」

刀を構えたのだが、

すずめ「僕は遊んでくから、君は先に帰って!」

と、鳥柱さまは鋭くそう言った。

太陽「な、なんで……」

やっぱり、おれじゃ足手まといなのか?


すずめ「……つよいの、いるから。君死ぬよ」

太陽「」ぞくっ

すずめ「だから、飯塚さんと一緒に、来て」

すずめ「僕、負けないから」

その目が、手が、震えるほどに強く感じた。
異論を挟ませないほどに強烈な視線。……おれが一瞬、なにを言うべきか考えていたその刹那、鳥柱さまは大柄な剣をひとふりする。
風が強く吹いて、自由が約束されたように思えた。

すずめ「今!早く!」

太陽「……ッ、はい!」

全集中、呼吸を最大に。視線は柱から帰りの道中の方へと反転、そしておれは足に力を込めて全速力で駆け抜ける。
なぜだろう、と言う言葉を反芻しながら。

……鬼は群れない。
その原則が、この間から次々と塗り替えられている。なぜだろうか?
街にいた鬼も徒党を組んでいたし。それに今回だってそうだ、鬼として強いとは言えない低級の鬼がわらわらと現れているようだったのだし。
449 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/01/28(月) 20:24:59.11 ID:Pi8YjbJPo
風とともに走っても、屋敷は少し離れていた。それでも何とかたどり着いた時には、棒きれで側近さんが戦っているところだった。

側近「こら、あっちいけ!ここは鳥柱様の屋敷だぞ!」

鬼ア「知るか!お前は食う価値もなさそうだな、死ね!」

鬼イ「剣士のなりそこないなのだろう、どうせ命を救われて、そして志したが才のなかった者なのだろう!」

側近「ッ」

鬼ウ「図星か?よし、死ね───」


ざしゃあああっ

勢いそのまま、殺さずに足を滑らせる。

鬼たち「「!?」」


ビュウウウウウウ


太陽(行ける、今のおれなら……完治しなくても、足手まといでも!)

太陽(人は救える、鬼は殺せる!行ける、行ける!だから!)

ずひゅっ



参ノ型

瓦解氷消


───がかいひょうしょう。氷が消えて溶けるように、物事が崩ればらばらになること。
───太陽の参ノ型は、対多数を想定した全体攻撃である
───細く軽い刃を、両の手で持ち替えながら柔らかさを生かし複数回切りつける
───力は乗らないので頸は斬れないが、複数体の鬼の体をバラバラにするくらいは訳のない技だ


しゃしゃしゃっ


鬼ウ「があああ!?」ぼたぼたっ


太陽「! 飯塚さん!」

側近「すみません!私は無事で……鳥柱様は!」

太陽「まだ奥の方にいます……ここはまず、鬼を払い、それから鳥柱さまと合流しましょう!」

側近「……はい!」


鬼イ「勝てるつもりか、人間が!」



壱:一体一体頸を丁寧に斬る
弐:全員を足止めして即鳥柱の方へ
参:もう一度参ノ型→壱ノ型
肆:そのた

下弐
450 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/28(月) 21:34:44.61 ID:j9xPHiBp0
続行だ!参
451 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/29(火) 01:51:09.97 ID:uXk0QTSSO
はァ───ッ なるほどね!! 参を選びます!!
452 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/02/04(月) 23:15:11.46 ID:zWbZCIPBo
その小さな体で良く安価を取ったね!偉いよ!
453 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/02/04(月) 23:27:02.06 ID:zWbZCIPBo
>>451


びきびき、と。音を立てて体が復活しようとしているのが分かった。おれの意表を突きたいようだが、全員が全員早々簡単に復活するわけではなかった。


太陽「馬鹿め!人間を見くびるなよ!」

氷の呼吸 参ノ型

鬼ア「まずい、さっきの!させるか……」

瓦解氷消

太陽「ッ!」

ひゅしゅっ!!


おれはそんなに上背があるわけでもないし、そこまで強いわけでもない。だが、早さには自信がある。力が無くとも、早さでこいつらを細切れに出来る自信がある!
だから───参ノ型で全員をバラバラにするのもわけない。


鬼ア「う、がああっ!?」

太陽「遅いっ!」ひゅ

鬼ア「!」

氷の呼吸 壱ノ型
  寒声一叫

惨 っ

鬼イ「な、ひとりやられた!?」

鬼ウ「あの軽い刃でなぜ頸が切れる!」

太陽「黙れ」

寒声一叫

鬼イ「ぎゃ……!!」ザンッ

鬼ウ「く、早……」

太陽「終わりだあああっ!」

ざんっ!!

鬼ウ「……!」

しゅうううう……


太陽「……よし!」

この程度の鬼なら、もう相手にもならないか。あっさりと三体処理して、おれは側近さんに向き直った。

側近「お強いのですね、貴方も」

太陽「そんなこと、ないです。おれは鬼に強い恨みこそあれど、けして強くはない。もっと、強くならないと」

側近「そうなのですか?」

太陽「おれは……父親が実は鬼だったのです」

側近「え」

太陽「ずっと家族には黙っていたようで、おれも知らなくて……ある時突然、母と妹を殺して逃げてしまったのです」

太陽「確かにある日を境に太陽の日を避けるようにはなりましたが、よもや鬼になったからとは思いませんでした」

側近「……それは、おかしい」

太陽「ん?何がおかしいので……」

側近「基本的に、鬼は『ある人物』の血からでしか生まれません」

太陽「あ、知っています。【鬼舞辻 無残】という人ですよね?」

側近「ご存じでしたか。鬼舞辻は、時折戯れに鬼を人に変えることがあります。しかしそういう時は、近くにいる家族が犠牲になるのが主です」
454 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/02/04(月) 23:32:59.18 ID:zWbZCIPBo
太陽「じゃあ、人間生活に、ましてや家族を持った状態を維持するような鬼は珍しい?」

側近「ですね。私も又聞きなので正確ではないと思いますが」

そんなものなのかと、思った。では、おれの父は誰で、あの父だった何かは誰だったのだろうか?

側近「可能性としては、ですが」

太陽「な、なんですか?」

側近「人間生活に溶け込もうとする鬼も確かにいくつかいるにはいるようです。ですが、」

いいにくそうに一瞬躊躇う側近さん。

太陽「なんですか!そこまで言われたら気になりますから言ってください!」

側近「……その可能性のひとつが、『鬼舞辻自身が世の追求から目をごまかすため』と言うのがありまして」

太陽「え……?」

可能性、とあくまでもそう前置きはあったが、それでもそれは考えてもいないことだった。
つまり、おれの父親だった人は……いつからか、恐らく日に当たらなくなった時からか……父ではなく鬼舞辻と入れ替わった……?

太陽「……?」

側近「ああ、すみません。こんなことをこんな時に……鳥柱様は無事だと思いますが、早く見に行きましょう」

側近「きっと奥の手は出さずに終わりますよ。相手にもよりますが」

太陽「……」

それならおれが今から鳥柱さまの後詰めにいく必要はあるのだろうか、とほんのわずかに感じてしまった。
だが、行かないで鳥柱さまが万一危機に陥っていたら、と考えるとそわそわしてしまう。



壱:とりあえず落ち着いて鳥柱さまのところへ
弐:一旦息を整えよう
参:鳥柱を信じて待つ代わり話を続行
肆:そのた

下弐
455 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/04(月) 23:35:50.54 ID:cKW3wKGo0
456 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/04(月) 23:58:55.79 ID:ggUOagQjO
457 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/02/05(火) 00:34:01.11 ID:c1M5HOqpo
>>456


太陽「一旦落ち着いて、鳥柱さまのとこに行きましょう」

側近「そう、ですね」

ふたりで頷いて、鳥柱さまがいるであろう方向に走り出す。
全集中を意識しつつ、すぐにその姿を捉える、のだが。

太陽「あれ?」

持っている刀の形が違う。いや、アレは刀なのか?
大振りの剣は今や七枚ほどの薄い板のようになって、それらが持ち手でつなげられている。その端に、先にも見たような布が広がっている。
形はまるで扇のようだ。遠くから見れば、さながら鳥の羽根のようにも思えた。
変形する刀……まさか。

太陽「あれが、奥の手!」

側近「なぜ、鳥柱さま!?」


すずめ「……」


??「だってん。僕と君じゃ、相性悪いよん。だよねん。」


瞬間、縄のようなものが一斉に鳥柱さまに襲いかかる。しかし、さすがにそんな攻撃は喰らわないのか、鳥柱さまは跳躍して回避した。


すずめ「っ!」

扇状に形の変わった剣を振り抜く。いったいアレはどれだけの重量があるんだ?見れば鳥柱さまの両腕は、戦士か何かのように隆々と盛り上がっていた。
ぶぉん!と風を引き裂き、縄のようなものも同時に全て断ち切られる。

すずめ「うー……!!」

??「あはは。かわいい、かわいいよん。でも僕は他の鬼みたいな、馬鹿じゃないからん。」

太陽「どうかな、こうしてここに来る辺りは馬鹿と言えると思うけど!」

??「そうかなん。」


そいつは上半身裸の男だった。全身に縄のようなモノがぐるぐるに巻き付いている。先ほどから飛ばしているのは、この縄だろう。
浅黒い肌には傷一つ無く、何よりも若々しくハリがあるように見えたが、とても生者のものとは思えない。なにか、まがまがしい雰囲気がする。
ざりざりと無骨に切られた髪を豪快に(※今で言うオールバックのように)額が見えるようかきあげ、眉毛はきりりと太い。目には何か特別な模様が入っているみたいだった。

??「僕は縛也って言うよん。」

太陽「……鬼に名乗る名は、ない!」



壱:鳥柱さまの援護を
弐:なぜ相性が悪いか確認だ
参:有無を言わさず壱ノ型や
肆:そのた

下弐
458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/05(火) 10:02:38.36 ID:eNZ3+UhSO
何なんだ二日連続で更新して!! ヤッターッ

安価なら下
459 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/05(火) 12:36:24.32 ID:WTvhihk7O
460 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/02/11(月) 20:27:00.13 ID:x3lTlF1eo
月曜日ダ!
461 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/02/11(月) 20:56:05.37 ID:x3lTlF1eo
>>459


数ヶ月で柱になれるほどの天才だ。それが、なぜあんな風貌の鬼に圧されている……?
状況を見極めるべく、刀を持ったまま少しだけ黙り込んだ。



縛也「つまんないのん……まあいいか、君は特に興味、ないよん!」

びょうっ、と風を切り裂くような音。
すさまじい勢いで、縄がこちらに飛んできていることが分かった。回避は、間に合……?

ザンッ

縛也「お」

すずめ「ガアアッ!」

まるで演舞のように、力任せに振り回される両の腕と扇。その速度が、縄と同じか、やや遅いくらいであることにたった今気付く。
つまり、本来速度があるはずの動きにキレがない。なぜか、とその原因はすぐに分かった。
足に縄がかかっていた。

太陽「!」

両足を制限するかのように縄は有象無象に地面に落ちている。おそらくは、鳥柱さまが切り倒したはずの縄が、足にからみついたのだろう。であれば。

太陽「アレを切れば……いや……」

むしろ、切れば切るほど増えるならまずい。
きっと鳥柱さまなら逆転の一手があるのだろうが、それを準備する時間すらないのだろう。

縛也「さて、とん」

すずめ「シィッ!」


鳥の呼吸 壱ノ型


───ヂヂヂヂヂッ!

太陽(鳥の、鳴き声?どうやってこんな音)


門前雀羅


すずめ「ッ、おおおっ!」

ぎゅばっ!

太陽(鋭い回転!?刃先が地面に当たって!)

ズババババッ
462 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/02/11(月) 20:59:34.14 ID:x3lTlF1eo
鳥柱さまが足に絡んだ縄を切ってこちらにきたのと、次の一撃がおれに飛びかかったのはほぼ同時だった。

太陽「!」

ぎいいいんっ

すずめ「じゃまっ!」

太陽「……!」

鳥柱さまの足下に再び縄が現れ、からみつく。速度重視の型に、こいつはかなりイヤな相手だ。

太陽「だけど、おれだって!」

鳥柱さまの足下にいる縄を素早く断ち切る!


すばばっ

すずめ「!」

太陽「っ……鳥柱さま!」

すずめ「うん!」


ヂヂヂヂヂッ!

縛也「させると、思うのん!?」

地面が盛り上がり、縄のようなものが現れ始める!



壱:地面を一掃する!
弐:縛也に目潰し!
参:素早く距離を詰め攻撃
肆:囮となるべく縄の付近へ行く
伍:そのた

下弐
463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/11(月) 22:54:59.58 ID:q25Wv2IL0
ksk
464 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/12(火) 00:08:53.03 ID:PeF/QwDSO
下弐まで加速してくれた>>463さんはもう安価の一部だから。>>463さんの想いは俺が安価に持っていくし。

安価は壱で。
465 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/02/18(月) 22:17:27.23 ID:s03Ipyedo
たぶん今日は1〜2レスだけになるかもごめんチュン
466 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/02/18(月) 23:27:11.50 ID:s03Ipyedo
>>464


太陽「ッ、鳥柱さま!」

すずめ「!」

地面に盛り上がっているのは、血鬼術で作られた縄!これはそのまま、野放しには出来ない!

太陽「おおっ!」

ビュオオオオ


氷の呼吸 参ノ型
瓦解氷消


ザザザザザッッ!


縛也「」!

太陽「今です!」

すずめ「……ああああっ!」


鋭い跳躍だった。鳥柱さまは、雲を突き抜けるかのごとく高く飛び上がる。
おれも、敵も、その姿に目を奪われるほどだ。


ヂヂヂヂヂヂ

太陽(またあの音!)


鳥の呼吸
玖ノ型

烏有


縛也「な……」


それは。
見たはずのおれでもよく分からない。
空中で一回転、と同時、落下と回転の力両方を乗せた双剣で、真下を押しつぶすような技だった。
……と言えば伝わるだろうか?

体のバネを最大限利用し、大きくのけぞってから出される打撃とも斬撃とも付かない攻撃。その暴力的な威力に、縛也と言う鬼はのけぞり、そして……


縛也「お、ごおお!?」


ごちゃっ。
467 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/02/18(月) 23:36:18.75 ID:s03Ipyedo
全身が砕けたような音がする。熟れて腐った果実をつぶしたような。
その悲惨な光景におれも、側近さんも声が出ないが、


すずめ「まだ!」

太陽「!」

すずめ「もらった!」

鳥の呼吸 弐ノ型
早贄

シュカッ

すずめ「……!」

太陽「鳥柱さま!」


最後の一手で首を切り落とす前に、鬼はその手から逃げ出した。
両肩を束縛するように縄が絡んでいる。行つ野間に……くそっ、今ので全身ぐちゃぐちゃだったはず!


縛也「十二鬼月最有力候補の僕が、ぼく、が、負けるわけ……」

縛也「ないんだアアアア!!」


太陽「!?」

すずめ「こいつ、遊べない……」

太陽「鳥柱さま、おれもやれます!」

すずめ「だめ。こいつ、腹立つからぼくがやる」

太陽「……え?」


血鬼術 【束縛の約束】


じゅああああっ


太陽「な、こいつ……今までの縄が、まるで……!」

人の手のように見える。
そしてそれぞれがうぞめいているではないか。

すずめ「さがっててってばぁ!」



壱:素直に下がり見守る
弐:そうは行かない、先に突撃だ
参:危険な時には助太刀しよう
肆:側近さんが心配、逃げよう
伍:そのた

鳥の呼吸は拾まである
下弐
468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/19(火) 01:33:30.30 ID:1jmz660SO
>>465
レスが短ければ薄っぺらだなんてそんなことはないです!!

安価なら伍、縛也以外の鬼がまだ残ってないか探す
469 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/19(火) 10:17:24.87 ID:GHWIIqsKO
470 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/02/25(月) 22:50:29.66 ID:+5XbSxCeo
気を抜くな レスが来るぞ
471 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/02/25(月) 23:01:25.80 ID:+5XbSxCeo
>>469
>>468


太陽(っ……今のおれじゃあ、これ以上突っ込むのは確かに足手まといになるだけ、なら)

太陽(他に鬼がいないかを見ておくべきだ……!)

鬼は狡猾だと聞いたことがある。つまり、おれ達を遠くから見ていて、そうして疲れ果てた鳥柱さまを狙うものがいてもおかしくないのだ。
集中しろ、ここにすべてがかかっている。あの鬼は鳥柱さまに任せろ、おれはおれがやるべきことをやるのだ。
目を皿のようにしてあちこち見回して、するときらっ、と何かが輝いた気がした。

太陽「! そこ!」

氷の呼吸 弐ノ型
細雪

ひゅぼっ

??「ぐげっ!」

ざく、と音がして、手応えあり。何かを貫いたようだ。そいつはゆらっと揺られたかと思えば、おれの前に姿を現した。ひどくいらついた表情で。


鬼「くそぅ……ッ、ガキが!何故俺を!」

太陽「光ったんだよ。おまえのいるところ」

鬼「なに?俺はそんなヘマをするわけ……」

太陽「うるさい、黙って死ね」

鬼「そうはいかねえなぁ!」

ぎろ、とこちらを睨む目に、何かが書いてある。模様、だろうか?それとも文字?しかし……ううむ、印が消されている。そのせいで何が書かれているかよく分からない。

鬼「俺はまだ終わってねぇ……それを今ここで証明する!」

太陽「なに……」


血鬼術
転身の舞


ひょうんっ


太陽「!?」
472 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/02/25(月) 23:08:14.91 ID:+5XbSxCeo
鬼がその場ではねた、と思った瞬間、眼前から消えた。何が起きた───脳内で整理するよりも早く、外側から刺激が入ってくる。
がきん、と音。続けて意識がそこに追いつき、おれは無意識で剣を握って相手の攻撃をいなしたのだなと分かった。
あれ?もしかしてこいつ……強い……?体を何とか反転して相手と対峙する。

改めて見たその目に、かろうじて陸の字が見えた。潰されている。


太陽「っ……おまえ……?」


もしかして、と言う言葉が脳内を駆け回り、背筋が凍り付きそうになった。いやな予感がする。もしかしてこいつは!
何かを言うよりも前に、そいつが再び血鬼術を発動する。ぴょんと飛び跳ねて、おれの背後に!


がきんっ!


太陽「く!?」

鬼「おお?よく受けるなぁ、これを!だが、『蝉次』さまの攻撃、いつまで受けられるかな?」

太陽「蝉次……それがおまえの名か?鬼としての?人としての?」

蝉次「つまらん質問だなァ、ぐげげっ!」

太陽「おまえの笑い方、気持ちが悪いぞ」

蝉次「……お前、殺されたいらしい」



壱:ここは冷静に受け止めて弐ノ型で
弐:挑発して激昂させてから弐ノ型
参:まずは血鬼術の攻略法を考えなければ
肆:そのた

下弐
473 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/26(火) 08:51:52.62 ID:OjuEbyg3o
ksk
474 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/26(火) 12:22:56.80 ID:3fS6SbrgO
475 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/03/04(月) 19:27:36.21 ID:rWolCtDWo
カァ!カァ!更新ダァ!
476 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/03/04(月) 19:34:30.68 ID:rWolCtDWo
>>474


蝉次「人は悲しいよなぁ?目がふたつしかねぇし、」

ひゅん

蝉次「一度目玉が潰れりゃあそれでシマイだ」

ひゅん

蝉次「お前だってそうだろ?強いと思ってるんだろうがなぁ」

ひゅんひゅんひゅん

蝉次「人が鬼に敵うと思うな!」

ひゅんひゅんひゅんひゅんひゅんひゅん


血鬼術 奥義

空蝉乱舞

ひゅんひゅんひゅんひゅん

蝉次「ははははは!もう俺の速度に付いて来れまい!」

ひゅんひゅんひゅんひゅん

蝉次「……そうだ、俺はまだ」


───俺はまだ終わっていない。


蝉次「俺は、俺はぁっ!」

ひゅんひゅんひゅんひゅん

蝉次「死ね、雑魚!俺の為にな!!」


迷いのある攻撃だった。

何か、途方もない思いが込められているような気さえした。辛いのだろうか、苦しいのだろうか。
いや、鬼だ。こいつは鬼なのだ。苦しんで当然だし、おれがそれを憐れむ必要などひとつもない。
が……哀れに思えるのは事実だった。鬼になったのに、人を越えたと言いながら苦しんでいる。なんて無様か、なんて悲しい有様だろうか?
鬼舞辻も、もしかしたら、こんなふうなのか?

ふと過るのはそんな言葉。
『人の生活の中に隠れ潜む鬼もいるらしい』
あの時、確か父は。
『そんなことをする鬼はごく少数』
自分よりも弱い者を叩いて壊して殺したのだ。

父さんは───


ビュゥゥゥゥゥ


蝉次「!?」
477 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/03/04(月) 19:43:27.59 ID:rWolCtDWo
乱舞の中から向けられた視線を、おれが捉えられないはずもない。迷いが腕に乗り、それは風を揺らした。
こいつは焦っている。迷っている。自分が格下だと思われることや、ここで自分が死ぬような定めであることにおののいている。

しかし、そんな攻撃でおれを倒せると思ったら、こいつが馬鹿だと意わざるを得ない。

真っ直ぐ伸びてきた腕を、刀で受け止める。
驚きにゆがむ鬼の顔、次いでおれが腕を払うように刀を振って、まだ中空に体を残している鬼めがけて技を振るう。


氷の呼吸 弐ノ型
細雪


ひゅぼっ

首を正確に狙って。大丈夫、苦しませない。苦しんで死んで欲しいのはおまえじゃないからだ。おれが求めるのはただ一つ。
鬼舞辻無残───おまえの死だからだ。


蝉次「ガ……」

太陽「シッ……!」

首が飛ぶ。胴体を失い、重力から解き放たれて空に向かって飛んでいく。血を噴射する有様はまさに芸術のそれだった。おれはあまり、芸術に詳しくないけれど。
このまま死ねッ、と口に出しながら、おれは、

太陽「このまま、死、ゴフッ……!?」

腹に浅くない傷を負ったことに気付いた。なるほど、死ならば諸共、おれも巻き込もうというわけか。
ああ、これはやばい。

遠くから側近さんの声が聞こえてくる。おれは……。



コンマ負けしてたので相打ち
さらにコンマ判定

下壱 太陽君は無事かな判定
10以上で無事、50以上ならまだ戦える。80以上で実は軽傷。

下弐 風柱は無事かな判定
基本的には勝つが、5以下or44で重傷を負わされて引退沙汰。コンマが高ければ高いほど圧勝
478 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/04(月) 20:02:48.17 ID:TCme0+HIO
へい
479 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/04(月) 23:28:14.52 ID:+4mHeokSO
バッ ビュン ヒュッ ホワッ ザッ
480 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/03/11(月) 20:55:05.10 ID:xfnmf22io
>>478
太陽17 すごく……痛いです

>>479
鳥柱52 相性悪いというのはマジでしたね


太陽「が、は……」

肺の息を全て吐ききる。だめだ、吸わなければ、立たなければ、だけど。
ああ、ごめんよ父さん、母さん、おれはこんなにも脆くて、こんなにも弱い。救いたいものはいつだって近くにあるのに。


ザンッ!

すずめ「おーわり!」

縛也「ち……ぃっ」


向こうの方で、血だらけの鳥柱さまが頸をはねるのを見た。あいつと相性悪いというのも、嘘では───


どさっ



判定続きでごめんチュン
太陽無事?判定の続き
現在は重傷なので

-15 剣士は諦めなさい
-30 再び数ヶ月の修行
-50 数週間寝込んだ
-80 呼吸の力で3日程で起きた
81- 実は軽傷だった
ぞろ目で何かが目覚める、44は問答無用で死亡
はい直下
481 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/11(月) 21:21:02.79 ID:r6qwET9zo
はい
482 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/11(月) 22:40:27.28 ID:JfUYTyNSO
惜しい!!
うわあああ惜しい!!
483 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/03/12(火) 04:48:26.76 ID:JrpTBFmko
やったね太陽!
>>481
コンマ79





遠い意識の中で、何かを見た気がした。
悲しそうな女性。誰かの悲鳴、ぱきんと割れた箸、なんだか色々なものが崩れ落ちたようなものを。
手を伸ばしてもそれには届かなくて、そして悲しそうな顔の女性は、そのままふっと笑って消えたんだ。

母だ。





太陽「───ッ、かあ、かあさんっ!!」

がばっ

馬酔木「忠告する、叫ぶな」

ぺちん

太陽「ぐべぇ」


布団に倒れ込み、そして改めて腹が痛くてさらにぐべぇとうめいた。一方、そんなおれを見ているのは……。

馬酔木「落胆する。またお前か」

太陽「あああああ馬酔木さんうういたちちち」

馬酔木「重ねて忠告する、もう喋るな」

太陽「ふぇ……」

馬酔木「説明する。お前の腹には穴が空いていた。しかし、驚愕した。明らかな重傷だが、回復が早い」

馬酔木「前回に比べれば、などという優しいレベルの話ではない。……なぜだ?」

太陽「はい?」

馬酔木「思考する、が……答えが見つからない。故、質問する」

馬酔木「お前、なにかしたか?」

太陽「え?い、いえ、鳥柱さまのところで【常中】をしていただけでして……」

そして鳥柱さまの場所にはほんの数日(三日)もいなかったはずでして……。
484 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/03/12(火) 04:57:07.24 ID:JrpTBFmko
馬酔木「……」

それを聞いて、馬酔木さんは黙って考え込んでいた。時折、胸元から手帳を取り出してはあれこれページをめくっている。

太陽「あの、馬酔木さ……」

馬酔木「月柱から鎹烏だ」

おれのことであれこれ悩んでる内に、師匠から手紙が来ていた。
曰く。

『もーっ!また無理したんでしょ?そういうことしちゃダメだってば。命は大切にしてね?ぼくの弟子なんでしょ?
あ、雀と遊んでくれてありがと。喜んでたよ、雀。きみ、こういう才能があるのかな?』

あとはひたすらなぜ怪我したのかとか、これからどうしたらいいのかとか、そんな内容だった。

太陽(しっ、師匠……すんません……)汗だく

馬酔木「解せない」

太陽「え?」

馬酔木「人間の回復力で、ここまで回復するのか?そんなもの、いよいよ柱を越えてくる」

馬酔木「何よりあの怪我はかなりの深手で……」

納得行かない馬酔木さんが、おれの腹に巻かれた包帯の下を覗き見て、やっぱり大けがだったらしく妙に納得していた。
いや大けがしてんのかよ、おれ。
どおりでさっきっから腹がずーっと痛いわけだ。


▼このあと?
壱:ゆっくりリハビリ(基礎能力上がる+一ヶ月経過 )
弐:急ぎ足リハビリ(一週間で復帰するが基礎能力は微妙)
参:院内の手伝い(一ヶ月経過変わらず、自由安価をとる)
肆:誰かに出会う(新規の出会い安価。経過時間はコンマ)
伍:そのた

下弐
485 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/12(火) 09:13:27.43 ID:dC/L71Uio
ksk
486 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/12(火) 10:54:18.27 ID:VtqmtB+DO
487 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/03/18(月) 21:21:34.54 ID:r3lK/WtEo
>>486

身体機能の上昇も目指さなければならない。
しかしすぐに傷は塞がらない。
であれば、おれがやるべきことは必然ひとつに絞られる。

───回復訓練。

馬酔木「驚愕する。その怪我でまだ呼吸を使うか」

太陽「すううう……」

馬酔木「警告する。あまり使いすぎると、腹の怪我が再び悪化するぞ」

太陽「ううう”ッぅ”ぅ”ぅ”ぅ”」

馬酔木「言ったからな、私は言ったからな」

太陽「ぅ”ぅ”ぅ”ぅ”ぅ”ぅ”ぅ”」

でも聞いたんです!月柱さまから!呼吸には自然治癒を高める効果もあるんだって!
呼吸は、体中の血液を加速させるから、同時に痛いところとかも治りやすくなるんだって!

などと言いつつも最初の数日は腹の傷が裂けて、血が漏れ出して、馬酔木さんにめちゃくちゃ怒られるのを繰り返した。

当たり前だ。「腹に穴が開いていた」んだろう。とは言え医術を持った人達の手助けによってなんとか一命を取り留めた。
その一命を投げ出すつもりはないが、かといって何もしないわけにも行かなくて。
おれはとにかくまず今出来ることを始めた。それが呼吸の繰り返しだった。
常中はかなり安定してきた。寝ている時でも氷の呼吸を出来ていると思う。……鎹烏にお願いして見て貰ったが、烏はカァとしか言わなかった。


太陽「ふんっ、ふんっ」

傷から血が零れ出ないようになった頃には、すっかり身体機能も正常化していた。無理な運動は不可能だったが、それでも素振りくらいは可能だ。
昔は本を片手に素振りをひたすら繰り返したものだが、今になっても同じことを思い出す辺りおれは変わっていない。基本は大切だなと思える。

馬酔木「……」
488 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/03/18(月) 21:31:43.07 ID:r3lK/WtEo
太陽「もっと高い効果のある訓練がしたいです」

馬酔木「断る」

太陽「まだ何も言ってません!」

馬酔木「推察する。私に訓練の相手になって欲しいと、そう言うことだろう?」

太陽「いや、そうです、けど……」

馬酔木「断る。剣は握らんことにしている」

馬酔木さんはそれはそれは恐ろしい顔つきでそう言っておれを見てから、それきり黙ってしまった。
別に、剣を握らない訓練だってあるのに、と言い掛けたが、やはり睨まれたので仕方なく素振りする事にする。

……さらに数週間経つ頃には、今までの剣の振りも戻ってきた、むしろもっと早く剣を振れるような気がしてさえくる。


アカリ「すごいですよぉ、東雲さんっ」

太陽「そんなことあるのかなぁ」

アカリ「はいっ、アカリはそんなに早く剣を振れませんからぁ……」

太陽「何言ってるんだ!アカリは強いだろ!」

アカリ「ひううっ!?」

一月近く経った頃、アカリが近くを通ったらしく、たまたま顔を出した。
相変わらず泣きそうな顔をしている。

太陽「そう言えば、ほかのみんなは?」

アカリ「あ、御薬袋さんは、最近隊員さんの為の薬草取りにばかり走っているみたいですぅ」

太陽「そうなのか?」

アカリ「はい。薬草を鬼に取られないように……乙津さんもそれに混じっています」

太陽「新免さんは?」

アカリ「……」

太陽「アカリ!」

アカリ「……十二月鬼との戦闘で、一時は生死をさまよったそうです。あなたに伝えると、回復が遅れるからって……馬酔木さんも……」

太陽「───ッ!」
489 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/03/18(月) 21:40:10.31 ID:r3lK/WtEo
ずかずかずか


ばんっ


馬酔木「何だ、ここは私の部屋で」

太陽「なぜ教えてくれなかったんです、馬酔木さんっ!!!!」

馬酔木「……聞いたのか、血矢から新免の話を」

太陽「どうしてっ……」

馬酔木「弁明する。そうだな、理由は明白だ。お前が飛び出したら困る」

太陽「!」

馬酔木「断言する。今のままでは無惨どころか十二鬼月の最底辺にも勝てない」

太陽「ぐぬっ、ぐぬぬ……」

それを真正面から改めて言われると傷つく。なんで、なんでだよ!
だからって新免さんの危機を教えないの道理が違うだろう、と叫び出したいのを堪えて、馬酔木さんを見る。
妙に悲しそうな顔をして、馬酔木さんはこちらを見ていた。目が泣きそうに見える。

馬酔木「これ以上、無意味に傷つく隊員を、私は見たくないのだ、東雲」

太陽「……馬酔木、さん」

馬酔木「だからこそお前には、基礎能力を向上して欲しい。そのための鳥柱との交流でもあったのだろう」

太陽(人事!)

馬酔木「……東雲、本当に強くなる覚悟はあるか」

太陽「はい。鬼を殺し、殺し尽くし、人の平穏な世を望みます」

馬酔木「……そうか……」



壱:血柱さまを紹介されるよ(いなかっぺ)
弐:人柱さまを紹介されるよ?(かわいい)
参:俺は嫌われてない
肆:ついに馬酔木さんが本気を出す
伍:そのた

下弐
490 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/19(火) 01:23:53.00 ID:ilb59MpSO
そう……参でございます。
491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/19(火) 08:10:07.43 ID:eAiDBCyso
参:嫌われてるなんて事があるだろうか、いやない
492 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/03/25(月) 22:51:35.20 ID:vyW3O/0Zo
みんな好きすぎない……?
493 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/03/25(月) 22:58:29.92 ID:vyW3O/0Zo
>>491


馬酔木「お前に、うってつけの師がいる」

太陽「! 本当……ですか!?」

馬酔木「ただし、そいつはとてつもなく───」

その次の言葉を聞いて、おれは少しだけ拍子抜けて、ついでに体の力が抜けた。

馬酔木「無口だ」





鎹烏に持たせて貰った地図を頼りに、おれは歩いていた。
そこには、【水柱】さまがいるのだと言う。噂の、口下手の。しかし、どれだけ口下手なのだろうか?
説明として『無口だ』と言われるだけあり、相当なものを想像しておれは歩いている。不安だ、不安で仕方がない。

本当に追い返されたらどうしよう。

さて、おれが向かっているのは小さい小屋だった。
なんでも、水柱さまは派手を好まず、誇示を好まず、慎ましく、しかし自らを鍛えながら、鬼を殺し回っているんだそうだ。
どれだけ強い人なんだろうか?鳥柱さま以上?それとも……?


がらっ、と音がする。間もなく目指す場所のはずだ。ふと顔を上げれば、そこにその人はいた。不思議そうな顔をしている、ようにも見えるが気のせいだろう。
まさかおれが本当にくると思っていなかったとか、そのようなことはないはずだ、恐らくたぶん。


水柱「……来たのか」

太陽(いや、もしかしたらこれあるな!?)

水柱「俺のところに来るとは、物好きだ。今すぐ医者にかかれ」

太陽「言い過ぎじゃあないですかね!?」

水柱「俺よりも強い奴はごろごろいる」

太陽(!)

水柱さまの手が震える。

震える?なんで?
494 : ◆z.6vDABEMI [saga]:2019/03/25(月) 23:03:01.17 ID:vyW3O/0Zo
水柱「俺に何を期待してきた?」

太陽「えっと、それは……」

水柱「……」


水柱(お前は、強くなりたいのだろう)

水柱(もがいている、足掻いている)

水柱(水面に上がりたい幼子のようだ)

水柱(ほしいのだろう、一つの可能性が)

水柱(誰よりも鬼に執着し、鬼を殺すことを目標にしたお前だからこそ───)


太陽「おれは……おれの剣は濁っています」

水柱「……」

太陽「それを磨くのは、他の呼吸ではないか、と馬酔木さんが……その……」


水柱(分かるよ)


太陽「え?」

今、何か聞こえたような、気がする。

水柱「名前は、」

太陽「は、はい!」

水柱「東雲、」

太陽「!」

水柱「……東雲、太陽。だったな」

太陽「あ、あ……」

やっぱり、見間違いでも、勘違いでもなく、この人は。

水柱「いい名だ」



壱:壱から稽古してください
弐:おれの氷の呼吸を見てください
参:基礎訓練を手伝ってください
肆:水柱さまは口下手なので突然実践に連れて行かれる。非情である
伍:そのた

下弐
495 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/26(火) 03:46:24.45 ID:hoUQT8vSO
伍:まずは友好を深めるためにご飯に誘う。


にしても、原作もこっちも嫌われてない柱さん回か。

原作の鬼滅の刃も面白いけど >>1さんの書く『貴方の刃』もたまらなく面白いよ 素晴らしいよ
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