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機動戦士ガンダム――ν World――【安価スレ】
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314 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/01/15(月) 23:19:31.04 ID:YYlUTvbS0
チンピラを片手間にあしらいながら、ブティックに辿り着いたアル一行。
到着した頃には、ディアも笑顔を浮かべていた。
「わぁ…!」
様々な装飾が施された服に、目を輝かせるディア。
「あー…。奢りとは言ったが、あまり高いのは勘弁な?俺が死ぬ」
「大丈夫ですわ。その辺りは弁えていますので」
「ならいいが…」
ウキウキしているのが一目で分かるほど、今のディアははしゃいでいる。
完全に、とはいかないがそれでも、充分なほどに精神状態は回復したようだ。
今回の行動が功を奏したことを嬉しく思ったアルだった。
315 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/01/15(月) 23:21:14.58 ID:YYlUTvbS0
「…ん。分かった。今から戻る」
「っし。ディア、帰るぞ」
「分かりました」
沢山の荷物を抱えて、テールの元に戻ろうと踵を返す。
「んぶ!?」
「あら、ごめんなさい」
すると、女性にぶつかってしまった――。
――正確には、その女性の胸に。
「んー!んー!」
「ごめんなさいね。急に体が固まっちゃって」
すかさず女性はアルの頭を抱え込んで、胸から離さない。
ジタバタするアルを見て、ディアは怨嗟の声を漏らす。
「…私だって、それなりにはありますのよ…。アレですか?大きい方がいいのですか?大人の方が好きなのですか?」
言葉の割にオーラはどす黒いわけではなく、ぷんすか!という擬音が似合っていそうなディアを見て、楽しそうに女性は手を離す。
「ボーイフレンドをからかってごめんなさい。お嬢ちゃん」
「ボ、ボーイフ…!?」
「ないない。散々働かされてるんだぜ、俺」
慌てるディアと、冷静に否定するアル。
その対比がツボに嵌ったのか、女性は腹を抱えて笑う。
「あはははは!面白いわねぇ!あなたたち」
「…うん。ようやく決心が付いたわ。私も頑張らないと。…死にたくないし、殺したくないもの」
最後に小さく呟き、女性は去っていった。
その顔はどこか、哀しくも見えた。
「…何だったんだ」
「…ボーイフレンド…。アルが…?無…くはないですが…でも…」
「呟いてないで行くぞ」
ブツブツ、と呟くディアを片手で背負い、アルは歩いていく。
テールからの連絡に、内心頭を抱えながら。
316 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/01/15(月) 23:22:16.98 ID:YYlUTvbS0
「はぁ…。どうして距離を取らないといけないかねぇ」
機体に戻り、最高速度で『ニュージュエラー』から離れる。
何となくだが分かる、これから始まることに警戒しながら。
【理由。都市から出てくる『ガンダム』たちへの対処のためです】
待機中にテールは、突然発信された電波を受信した。
その内容が、これから戦闘が始まる、とのことだったので至急、アルたちを呼び戻したのだ。
「そういえば、他の『ガンダム』の情報を見てないな。どれどれ…」
アルはデータベースにアクセスし、ガンダムパイロットの欄を確認する。
色々な人が映されていく中、見知った顔が表れた。
「…アル、この人って…」
「パイロットだったのか。…ってことは、これから戦り合うのは…!」
そう言うと同時に都市の防壁が開放されて、中から数機のMSが出てきた。
悪趣味な金色塗装のMSが三機。
そして『ガンダム』。
「護衛付きとか卑怯だなぁオイ…!」
『ごめんなさい。だけど、ルールに則ってるから…。そう文句は言わないでほしいわね』
「だよなぁ!」
『ガンダム』間連絡用回線でされた返答wp、アルは声を荒らげながらも肯定する。
実際、護衛機を付けてないアルが悪くもある――。
――彼のような風来坊に同行する人など、普通はいるわけがないのだが。
『Life or Death』は今、幕を開けた。
317 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/01/15(月) 23:27:44.82 ID:YYlUTvbS0
直下コンマ判定です。ファンブルさえ起こさなければ大丈夫…なはず。
1:ファンブル。不味いですよ!
2〜4:失敗。大丈夫だ、問題ない。
5〜7:成功。ナカナカヤルジャナイ
8、9:クリティカル。次回判定時に補正+。
0:BGM【TRANS AM RAISER】
00:BGM【明鏡止水〜されどこの掌は烈火の如く】
318 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/15(月) 23:28:23.94 ID:FV1bzBJF0
あ
319 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/15(月) 23:28:48.34 ID:usqvDgumO
てい
320 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/15(月) 23:29:10.40 ID:32B3sbXj0
Oh…
321 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/01/15(月) 23:40:13.62 ID:YYlUTvbS0
世界に生中継されているこの戦闘だが、大会というには味気ない。
実況がいるわけでも、解説がいるわけでもない――。
――色々なものの生き残りを懸けた戦いなので、華々しさなど不要なのだ。
あるのは、一定範囲を囲んだビームのバリアだけである。
「まずはこっちからだ」
遠距離から時雨を連射する。
ビームであるそれは、離れていても威力が高い。
ましてや、軽装甲の機体相手なら尚更だ。
『正確な射撃ね…。でも、これだけ離れていたら回避出来るわ』
『私が先頭に立ちます。姉さんとリアンは援護をお願い』
『ああ』
『わ、分かりました』
一機のウィルスタードを前衛に、その後ろに三機が並び、陣形を作る。
後衛はウィルスタード二機に挟まれ、サムサランが中央にいる形だ。
『…大丈夫。あれだけ頑張ったんだもの。訓練したんだもの。皆と一緒なら、大丈夫』
右腕のビーム砲に、粒子を充填する。
【ボクたちならやれるよ!ささ、張り切って行ってみよー!】
『…ええ。そうね…!』
そして、それをテールに向け、放った。
322 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/01/15(月) 23:55:13.92 ID:YYlUTvbS0
【警告。サムサランがビームを発射して来ました。回避を】
「ああ!」
射撃を止め、砲塔を向けたまま下部のキャタピラを横に動かし、加速。
直後に、藍色のビームが先ほどいた場所を通り抜けた。
「おぉう…。実物はやっぱり違うな…」
ビームは障害物をすり抜け、遥か彼方の岩山に当たる前に霧散した。
「ってオイ。人体への影響は凄いんじゃなかったか」
モニターにポップアップする調査書。
そこには、霧散後はイオン化するので問題ない、と書かれていた。
「重金属イオンとか洒落にならねぇよ!」
問題ない?なわけ。
環境破壊がマッハですよマッハ。
「一発でも受けるわけにゃあいかねぇな…。当たったら死ぬ」
サムサランの挙動一つ一つを、アルは注意深く観察する。
【外れたね。じゃあ、一気に突っ込もう!】
『…それはダメね。いつトラップを仕込まれてるか分からない』
アルらが情報を見ているように、ハリティたちも情報を確認している。
そのため、テールの厄介さを知っている。
『この武器もあまり使いたくはないし…。どうしたものかしら…』
最善策が思い浮かばず、少し焦りを覚えたハリティたち。
その焦りは吉と出るか、凶と出るか。
323 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/01/15(月) 23:55:59.67 ID:YYlUTvbS0
直下コンマ判定です。条件は先ほどと同じです。
324 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/15(月) 23:57:14.29 ID:xNVZT+u30
や
325 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/01/16(火) 00:02:34.41 ID:UcDcJIiE0
『当たれ!』
前衛のウィルスタードが、岩を遮蔽物に利用しながら接近してくる。
スナイパーライフルでの狙撃を織り交ぜての移動は、かなりの脅威になるだろう――。
――あくまで、一般兵を相手にした場合、だが。
気にも留めていないようにひらりひらり、と躱すアル。
追撃に発射したミサイルも、砲塔を向けて放たれた、ビームマシンガンとフィン・ファンネル(待機形態)に悉くを撃ち落とされる。
――まずは一つ。
迫り来るミサイルも、ライフルも、冷静にアルは対処していく。
『くっ…!接近すれば…!』
一発も当たらないのに痺れを切らした一人が、陣形から突出する。
『ダメ!前に出ないで!』
ハリティの制止も虚しく、護衛機はビーム・ナギナタを展開、急加速する。
「…前に出てくるから。だから死ぬんだ」
アルはフィン・ファンネルを二基射出、残りの六基を開口し、護衛機へと向ける。
――残念だがあんたは、もう逃げられない。
326 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/16(火) 00:02:40.09 ID:sfAoIe920
そういや戦闘中ディアちゃんはどこに
327 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/01/16(火) 00:06:19.44 ID:UcDcJIiE0
『情報通り…!』
「チィッ!」
護衛機はフィン・ファンネルに包囲される前に、岩を足場にして細かな方向転換を繰り返す。
パイロットへの負荷は大きいが、フィン・ファンネルのビームを被弾するよりはマシだった。
バルカンのように連射されるビームを、アルから向かって左に移動して回避する――。
――それが、命取りだった。
『が…!?あぁぁぁあ!』
回避している時に、足場にする場所をビームで撃ち抜かれた。
なので、脚部バーニアを使って滞空時間を伸ばそうとしたところ、それは襲った。
トラップ・シューター。
いつ撃たれたか、どこに撃たれたか、どこにあるのかすらも分からない、不可視の魔弾。
アルは既に仕込んでいたのだ。
ミサイルを迎撃した時に。
上半身からブスブス、と煙を出し、地面へとなだれ込むウィルスタード。
『熱…い…。だけ…ど…』
大火傷を負ったが、パイロットは存命している。
任務を全うしようと、焼け爛れた腕で操縦桿を握る。
それに呼応して、機体がゆっくりと動き出す。
だが――。
「悪く思うな。『Life or Death』…だろ?」
――戦意がある人を見逃すほど、アルは甘くはない。
無慈悲な光が、一つの命を燃やし尽くした。
328 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/01/16(火) 00:07:26.45 ID:UcDcJIiE0
>>326
、コックピット内で蹲ってます。外だと何されるか分からないからね、仕方ないね。
今回も直下コンマ判定です。条件は同じですが、補正値は+1されています。
329 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/16(火) 00:15:06.47 ID:o0GqcyoK0
ほいな
330 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/16(火) 00:15:37.73 ID:x8FJ3ahwO
高く
331 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/01/16(火) 00:20:06.63 ID:UcDcJIiE0
『アニタッ!…おのれぇ!』
味方を墜とされたことが怒りとなり、それが行動に表れる。
MSはパイロットの精神状態を如実に反映する、いわば鏡のようなものだ。
陣形を維持こそしているが、その動きは直線的になっていた。
フィン・ファンネルによる牽制射撃を回避するが、ビームが脚や腕を掠める。
冷静な思考が出来なくなっている今では、回避だけで手一杯だった。
『クソ…!クソ!クソォッ!』
いいように弄ばれている。
その現実を認識するとともに、更なる怒りが募っていく。
『よくもアニタを…!私の妹をォ!』
フィン・ファンネルによる弾幕が薄くなったのを見るとすぐに、ウィルスタードはスナイパーライフルを連射する。
当たるわけがない、と分かっていながらも、撃たずにはいられなかった。
溢れんばかりに溜まった怒りがそうしろ、と囁くから。
332 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/01/16(火) 00:21:39.76 ID:UcDcJIiE0
『沈め!沈めェ!』
我武者羅に放たれる武器の数々。
それが歴戦のエース――しかも彼女と違って冷静な――に当たるはずがない。
『熱くなったら相手の思うつぼよ!一回下がって…!』
『雑魚が口を出すなァッ!』
『ッ…!自分が弱いことくらい分かってるわよ…』
【ハリティを悪く言うなー!】
『仲間割れしないでくださいよぉ…』
残りの二機も援護するが、それで状況が好転するわけでもなく。
「…これで終わりだ」
サムサランのクラスター爆弾『グラウンド・ブレイカー』を時雨で全弾爆破させたのちに、銃口を機体群に向ける。
その目は、酷く冷え切っていた。
『ぐあっ!』
『きゃあぁぁ!』
ビームの雨が薄い装甲を穿ち、耐え切れなくなった部位が爆発する。
腕を、脚を失い、バランスを取れなくなったウィルスタード二機が倒れ伏す。
『腕をもがれようが…。心臓を貫かれようが…!貴様だけは私がぁ…!』
それでも、立ち上がる。
妹の仇を取るために、武器を取る。
『一刀必滅…!うおおぉぉぉぉ!』
ビーム・ナギナタを無事だった左手に構え、ありったけのバーニアを吹かして接近する。
「馬鹿が…!攻撃しないなら、撃たなかったのによぉ!」
反射的に撃たれたトラップ・シューターは、寸分違わずコックピットを貫いた。
333 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/01/16(火) 00:25:38.83 ID:UcDcJIiE0
またもや直下コンマ判定です。補正値は+2に上昇しました(クリ二連続のため)。ハリティ一人になったため、条件変更です。
1:ファンブル。不味いですよ!
2、3:失敗。大丈夫だ、問題ない。
4〜7:成功。ナカナカヤルジャナイ
8、9:クリティカル。次回判定時に補正+。
0:ブシ仮面ラッシュ
00:どこからともなくスイカバーアタック
334 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/16(火) 00:30:24.54 ID:x8FJ3ahwO
はい
335 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/01/16(火) 00:37:46.57 ID:UcDcJIiE0
『あっ…。うぅ…』
残りのウィルスタードのパイロットは、被弾と倒れた時の衝撃で気絶した。
護衛機を片付けたアルは、視線をサムサランへと向ける。
「…で、まだやるのか?今降伏してくれれば、殺さずに済むんだが…」
『…出来ないわよ。私は都市を、皆の想いを背負ってる。だから、退くことだけは出来ない』
【ボクたちなら勝てるもん!トェーテン、オリジンの君にだって勝ってみせるから!】
何があっても、止める気は無いようだ。
――なら潰す。選んだのはあんたらだ。恨むなよ。
『ケラウノス…最大出力!』
右腕のビーム砲から、電撃が奔流となって押し寄せる。
しかし、こちらは戦車にして、戦車に非ず。
『ニュートン』を稼働させ、宙に舞う。
「さて…と。容赦しないから、な?」
トラップ・シューターの狙いは足元。
――まずは、機動力を奪わせてもらう。
336 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/01/16(火) 00:50:51.61 ID:UcDcJIiE0
【不味い!一回下がって!】
『えっ?きゃあっ!』
サムサランの警告も虚しく、ハリティは被弾、脚部を損傷した。
【損壊率70%…!ヤバいよこれ。もう満足に動けない!】
『不可視の弾丸…。これほどまでに厄介…なのね…』
バランスを崩したサムサランは、左手で身体を支え、クラスター爆弾を発射する。
『地上にいる時より効果は薄いけど、何もしないよりはマシよ!』
「…そんなわけないだろ」
クラスター爆弾はその性質上、爆弾をばら撒くまでにある程度の高度を要求する。
そして、アルたちは今、宙にいる。
アルが取る行動など、一つしかなかった。
フィン・ファンネル(待機形態)を全てクラスター爆弾に向け、ビームを浴びせる。
すると、クラスター爆弾は分解されることなく、爆散した。
『っ!なら、次はマウジャを…』
銃口をテールに向けようとする刹那、ビームの雨が右腕を撃ち抜いた。
『いやぁぁぁぁ!?』
【ごめんハリティ!ちょっと機体を動かすよ!】
右腕が吹き飛んだ衝撃で、サムサランは宙に浮く。
同時に『ブリッツ』を投擲し、バーニアを吹かす。
左腕でメインカメラを隠すと、辺りが閃光に包まれた。
337 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/01/16(火) 01:00:55.04 ID:UcDcJIiE0
「くっ…。目眩ましか。テール、回復までに何秒掛かる?」
【計算。…あと10秒ほど必要ですね】
「この土壇場で使ってきた、か。武器は殆ど潰したが…いや、まだあったか」
アルは思考を巡らせる。
この状況でクラスター爆弾を撃っては来ないだろう。
かといって、腕部のビーム砲は完全に使えない。
となると、残っている武装は。
「テール、回復させる前に動かすぞ」
【了解。稼働率を上昇させます】
テールが後ろへと下がった瞬間、小さなビームが元いた場所を撃ち抜いた。
「…残念だったな。あんたの力じゃ、届かない」
とどめを刺すために、アルはフィン・ファンネル全基射出した。
338 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/01/16(火) 01:11:44.57 ID:UcDcJIiE0
【あっはは…。避けられた…かぁ…】
最後の切り札。
ツインアイ内蔵型小口径ビーム砲『カルナ』は、何もない空へと飛んで行った。
先ほどのように、こちらが情報を知っている以上、相手も情報を知っているいて当然だった。
つまり、あの状況で使える武器はこれしかない、と最初から教えているようなものだったのだ。
【そりゃ、当たるわけないよね。ボクたちの負け、だね】
『…ええ』
機体を包囲するフィン・ファンネル。
試合の決着の付け方は単純。
『ガンダム』の中枢部――つまり人格を搭載しているガンダムフェイス――を破壊することだ。
つまり、殺す必要は無いのだが、そんな余裕を見せるわけがないので基本、どちらかが死ぬ。
それ故に、あのような大会名になっているのだ――。
――どちらかの人格が、少なくとも一つの『ガンダム』が死ぬことは確定しているから、でもあるのだが。
「…どうしたらいいかな。このまま機体を消し飛ばすか、メインカメラだけ破壊するか」
抵抗出来ない状態に陥ったサムサランをどうするか、それはアルの自由だ。
抵抗できないなら、命を奪う必要も無い。
だが、何もされない、という保証もない。
【譲渡。それを決めるのはアルです。ご自由にどうぞ】
「…そうかい」
――さて、殺すべきか、生かすべきか。
339 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/01/16(火) 01:13:11.48 ID:UcDcJIiE0
↓1〜3までに、ハリティを生かすかどうかをお願いします。また、お供のウィルスタードパイロットをどうするかを↓4で決めます。
340 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/16(火) 01:16:43.35 ID:x8FJ3ahwO
生かす
341 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/16(火) 01:23:30.34 ID:RJbyfT+TO
生かす
342 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/16(火) 01:23:41.92 ID:7qvR6yYyO
生かす
343 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/16(火) 01:23:54.32 ID:gfvU857CO
生かす
344 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/01/16(火) 01:37:13.08 ID:UcDcJIiE0
「…まあ、必要も無いのに殺すことはないだろ」
回線を開き、パイロットと話が出来るようにする。
「ハリティ…さんでいいよな。今からメインカメラを破壊するから、そこから出てくれ」
『…嫌よ。こうなったら、最期までこの子の傍にいるわ』
「死んだら意味ないだろうが…!」
『それでもよ!それでも…一人で逝くなんて…寂しいじゃない…!』
彼女もアルと同じく、長い時間を共に過ごしてきた。
だから、無邪気なこの子と離れたくないのだろう。
――なら、その意思を尊重する、か。
「絶対にコックピットから出るなよ。メインカメラだけを破壊する」
『…どうしても殺したくない、と?』
「そりゃあな。好きで殺してるわけじゃないし」
「俺が頑張ることで、救われる命があるなら救うさ。守るさ」
アルの言葉を聞いて、ハリティは黙る。
彼も必死に生きてきただけなのだ。
仲間を奪った彼が憎いが、これは試合であって死合でもある。
こちらも――厳密には仲間が――殺す気で行ったのだから文句は言えない。
【ハリティ…。聞こえる…?】
『ッ!?ラン、どうしたの!?』
【良かったぁ。聞こえてるんだね】
回線越しに聞こえる子供の声。
安堵しているような声色が、アルの精神を摩耗させる。
345 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/01/16(火) 01:50:31.39 ID:UcDcJIiE0
【ボク…。ボク自身が嫌だったんだ。誰かに求められて造られたわけじゃない】
【…ううん。ボクは求められてた。『ガンダム』のボクが】
【だけど、ボクそのものは求められてなかった】
サムサランが開発されたのは、一人の富豪の私欲を満たすため、ただそれだけだった。
富豪が欲しかったのは『ガンダム』であって、サムサランが欲しかったわけではない。
【…けどねハリティ。君は、ボクを見てくれた。『ガンダム』じゃない、ボクそのものを】
【もう、ボクはダメだから。壊れちゃう前に言うね】
音声にノイズが走っていく。
中枢部が限界に近付いているのだろう。
【ボクは、そんなハリティが大好きだよ!だから、生きて!】
【大好きなハリティが生きてることが、ボクの願いだから!】
「…すまん。介錯を…させてもらう…」
フィン・ファンネルから放たれたビームが、正確に中枢部だけを撃ち抜いた。
『ラン…!ラン!あぁ…。あぁぁぁぁぁ…!』
光が消えたコックピットの中で、ハリティはただ、泣き続けた。
己の無力さが、大切な人を殺したことを嘆きながら。
「………」
――最低だな。俺は。
そしてアルは、今まで命を奪ったことに対する自己嫌悪に陥っていた――。
――今回のことが、明確に殺めている事実を突きつけたからだ。
一人は嘆き、一人は悔やみ。
一つの死合は、幕を閉じた。
346 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/01/16(火) 02:17:33.36 ID:UcDcJIiE0
ちょこちょこ誤字してるの恥ずかしい…。脳内変換をお願いします。ちゃんとウィルスタードのパイロットも一人は生きてますよ。ええ。
次回の主役はレイベルです(確定事項)。こちらもガンダム戦ですが、こっちはオートで進めます。設定もこちらでやっておきます。
安価をすることは無いと思いますが、ご了承ください。また投稿するまでにお時間をいただきたく…。お疲れ様でした。
オマケと言っては何ですが、某2VS2の世紀末ゲームっぽい感じの情報を投下しておきます。ガバガバです。
【トェーテン・ビーネンコルプ】
【パイロット】アルファルド・スターリット&ディア・エニシ&テール
【COST】2500
【耐久力】640
【変形】×
【換装】○
【各種武装】
射撃 トラップ・シューター 5発/10秒 弾頭50/爆風20ダメージ ダウン値弾2.0/爆0.5 不可視
射撃CS トラップ・シューター(設置) 3発/5秒 爆風80ダメージ ダウン値2.0 不可視弾のトラップ 味方は見える 一定距離移動後固定
格闘 フィン・ファンネル(待機形態) 400発/5秒40発 1ダメージ ダウン値0.05 24発よろけ バルカン的な
格闘CS ヤタガラス・システム 100カウント/リロード無し 1秒10カウント消費 赤ロック無限 誘導切り無視 誘導強化 被ダメ2倍
サブ射撃 時雨(移動撃ち) 2回/15秒 一発12ダメージを10連射×2 ダウン値0.25 4発よろけ サイコザクのあの機動 開始時に誘導切り
特殊射撃 フィン・ファンネル(展開) 3回/20秒 一発20ダメージを8連射 ダウン値0.5 4発よろけ もう一度同じコマンドで発射
方向入れ特殊射撃 フィン・ファンネル(包囲) 上とだいたい同じ 包囲して射撃 弾数は共有でサバーニャ方式
特殊格闘 ニュートン最大稼働 100カウント/30秒 CT10秒 1秒5カウント消費 BG消費半減 BG消費無しでレバー方向に移動 5カウント消費
BA 全弾発射 ユニコーン的な感じ ダメ設定めんどい
347 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/16(火) 05:22:47.19 ID:IIyDq++50
乙です
次も楽しみにしてますわね。
弾幕はってチマチマダメージ稼ぐ感じの機体かな?
348 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/16(火) 05:25:18.56 ID:TGDMBg4n0
オツカレサマデシタ!
ハイクを詠んだからカイシャクされた。マッポーの世なら致し方なし
349 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/16(火) 08:04:59.74 ID:wgcBJNUs0
悲しい、な。だが、これがガンダムってものだったか……
350 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/16(火) 22:46:04.96 ID:3+6zxwHP0
まぁ恨まれるにしても、殺して恨むヤツが一気に増えるより、生かしたヤツらだけに恨まれてた方が痛みは少ないと思いたい
351 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/01/17(水) 20:17:35.17 ID:yXNaqNWOO
突然すみません。次のお話では安価は無いと言っていましたが、安価は2つあります(ガバ)。
内容は『サムサランをどうするか』と『これからどうするか(どんな行動を主軸にするか)』です。
サムサランの現状と加入するキャラのまとめは後ほど投下します。
352 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/17(水) 20:29:51.88 ID:xUmqpJ0i0
おk 楽しみ
353 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/01/18(木) 00:32:22.27 ID:NWoLsXP3O
はい。落ち着いてきたので、まとめ等々を投下しておきます。
質問等がありましたらご一報を。問題ない範囲で返答したいと思います。
【サムサランの状態】
右腕のビーム砲損壊及びメインカメラ(中枢部)損壊、脚部損傷。武装と脚部は修理、補給可能。
中枢部は他の機体のもので代用出来るが、ガンダムタイプのものじゃない場合は性能が著しく落ちる(中枢部の性能差のため)。
また、テールの中枢部を移植すればそのまま使用可能。テールの武装を取り付けることも出来る。強化プランとしても使えるネ!逆も然り。
基地(または都市)で補給出来るMS関係のものは、中枢部以外の部品(武装も含む)、弾薬、燃料の3種類。金は要らないので気にすんな!
新メンバー
【名前】リアン・アルベール
【性別】女
【年齢】16歳
【外見】フランス系の外見。オドオドしてる。
【戦闘力】一般兵レベル。叩けば伸びるかも?
【来歴】
災害によって一族、友達、その他諸々を全て喪った少女。
ハリティと出会うまでに色々あったため、とあるトラウマを持っており、刺激されたらパニックになる。
性格は非常に心優しく、争い事を好まない。だが、恩を返すため、見捨てられないためならなんでもする一面もある。今回戦ったのもそのため。
ずっと孤独に苛まされていたため、依存性が高い。ヤンデレにはならないはず。たぶんきっとメイビー。
得意なのは牽制と料理。彼女の手に掛かれば、ただの保存食もクソヤバいほどに美味くなるのだ(語彙力不足)。
354 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/18(木) 12:07:57.26 ID:hPTQvUWoO
サムサランベースにテールの武装全部乗せというロマンも可能ってこと?
355 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/18(木) 16:25:43.34 ID:+S6Ruw8v0
サムサランベースにすると踏み潰すこうげきが出来なくなりそう
356 :
◆Ljj.rtZBFM
[sage]:2018/01/18(木) 19:31:14.14 ID:NWoLsXP3O
>>354
、可能ではありますが、フルウェポン化させる時は判定が発生します。失敗したらダイジョーブ博士のアレ的な感じに。
>>355
、エクシアの某配管工風ジャンプは使えるのでモーマンタイ。
テールの主砲はギラ・ズールのランゲ・ブルーノ砲のように装着型のアタッチメントになります。
マシンガンは普通に手持ち式、FFはラックを改修して腰部や背部とかに取り付ける感じですかね。
357 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/18(木) 23:56:10.70 ID:QgL35qQm0
>>353
の「金は要らないので〜」を「金(きん)は要らないので〜」と読んでしまい、テールも金ピカにする気か!?と一瞬思ってしまった
358 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/02/02(金) 01:11:16.53 ID:1Ts/N0+60
もうエタるのか残念だ
359 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/02/02(金) 14:42:28.91 ID:Gz4Ap7VD0
エタった?
360 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/03(土) 00:00:46.30 ID:c+n49wn0O
エタってないですよぅ…。リアル多忙につき、書き溜めが全然出来ておりませぬ…。
アニメみたいに毎週投下したかったんですが…。悔しい…。まだ当分忙しいので、気長に待っていただけたら…と…。申し訳ない…。
361 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/02/03(土) 00:54:51.82 ID:c/ElXBLH0
了解
気長に待つよ
リアル大事だからね
362 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/02/03(土) 09:28:30.86 ID:d1reOn8eo
体壊さんでな、まってるから
363 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/02/04(日) 15:47:50.40 ID:mdVjAKgK0
ゆっくりで大丈夫だよ 失踪とかじゃなくて安心した
364 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/02/16(金) 21:57:20.46 ID:8TU1yBiQ0
保守よ!
365 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/02/26(月) 05:05:50.58 ID:Uo1QjpH40
わたし、待つわ
いつまでも、待つわ
366 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/26(月) 15:08:00.65 ID:uuxOsB14O
やっと第4話完成&休みを貰えたので初投稿です。すっごいきつかったゾ…。
明日の昼開始予定です。大変遅れてすみません!許してください!何でも島村卯月。
367 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/02/26(月) 17:44:50.61 ID:E+5xP66h0
遂にきたか!この時が!
貴方のガンダムを読んで
この僅かな我慢をぬぐい去り
投稿出来なかった期間が企業の仕組んだ卑劣な罠だったと証明し
私は完全なる満足を得るのだ!
368 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/02/27(火) 03:07:55.90 ID:ppy/k9M4O
まってたぜぇ!
369 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/27(火) 17:22:07.06 ID:QtotTEsA0
昼…昼って何だっけ(痴呆)。すみません寝過ごしてました。修正しながらなので、投稿が遅くなることがあります。
あと、安価が一つ増えますがご了承ください。
370 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/27(火) 17:23:11.32 ID:QtotTEsA0
機動戦士ガンダムLoD 第四話
――自由――
371 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/27(火) 17:23:50.47 ID:QtotTEsA0
戦闘が終わり、バリアが解ける。
「…胸糞悪いな。この大会」
心中を吐露するアル。
今回の戦闘は、いつにも増して精神的な負担が大きかった。
いくら歴戦のエースとはいえ、未だに二十歳を超えていないのだ。
精神はまだ未熟なのだから、無理もない。
「アル…。あの方たち、どうしますの…?」
ディアの問いにアルは答えない――。
――答える気力が無い、と言った方が正しいか。
終始無言のアルを、ただじっと見つめる。
数分後、アルはハッチを開け、外を見る。
「…もうすぐ夜になる。その前にどこかで休まないとな」
その言葉は誰に向けているのか。
本人すらも、それは分からない。
重い腰を上げ、バールを片手にアルは残骸へと向かった。
372 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/27(火) 17:24:53.55 ID:QtotTEsA0
「…おーい、生きてるか?」
ウィルスタードのハッチをバールで軽く叩く。
『う…。あぅ…』
「生きてるみたいだな。ハッチは大丈夫か?無理ならこじ開けるが」
呻き声が聞こえたのなら、命に問題はないと思いたい。
次の返事を待つが、その返事がなかなか来ない。
「…仕方ない。ちょっとうるさくなるが我慢してくれ」
両手でバールを振り上げたその時、後頭部に銃口が突き付けられる。
「やめてあげて。リアンのトラウマが刺激されるから」
「…それよりも、俺を撃った方がいいんじゃないか?そうすりゃ、敵討ちが出来るぞ」
出来るかどうかは別にして、と付け加える。
震える手を押さえ、引き金に指を掛ける。
だが、引けない、引きたくない。
仲間を奪った男が目の前にいるのに、絶好のチャンスを掴めない。
「…まあ、無理だよな。俺を撃ったところで、状況は変わらない」
「あんたたちが敗北した事実は不変だ。戻ったところで、いいことは無いだろう」
「…それでも、仇を取ることくらいは」
「じゃあ、何で引き金を引かないんだ?それだけで終わる、簡単なことなのに」
「…ッ」
ハリティは言葉に詰まる。
認めたくない事実を、年下の少年に突き付けられたから。
373 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/27(火) 17:25:57.95 ID:QtotTEsA0
アルはおもむろに振り返って、銃身を握る。
「ッ!何するの!?これ以上したら本当に撃つわよ!」
「撃てよ。今まで散々、恨まれるようなことをした俺だ。誰も文句は言わねえよ」
グイッ、と引っ張り、銃口を額に当てる。
「…いいの…?あなたは死んでもいいの?」
震える手と同じように、震えた声で問う。
「…ハッ。どうせいつか、人は死ぬ。それが遅いか早いかの違いだろう」
「俺は何度も死を見てきた。今更ビビったりなんてしないさ」
その答えからは、恐怖は微塵も感じられなかった。
――勝てるわけなかったのよ。失うことを恐れてた私たちが、彼に勝てるわけない。
無力さ以前に、覚悟が違った。
勝てなくて当然だったのだ。
寧ろ、よく生きているとさえ思えてきた。
力が抜け、ハリティはへたり込む。
「…分かってる。殺そうとしたから、殺されて当然だってことは」
「だけど…!そう簡単に割り切れるわけないじゃない!殺した張本人が目の前にいるのに…」
「どうにかなりそうだったのよ!恨みでもしないと!そうしないと…心が無くなっちゃうような気がして…」
「さっきの戦いの中でなら、まだ撃てた。だけど…もう…無理よ…。あなたが悪くないって…理解してしまったもの…」
流したくない涙が溢れる。
こんなに弱い自分が惨めで、悔しくて。
「…さっきはごめんなさい。もう、危害を加える気は無いから。あなたは早く基地とかに行って。私がリアンを助ける」
374 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/27(火) 17:27:02.29 ID:QtotTEsA0
ハリティは銃のマガジンを抜き、ホルスターに差し込む。
それを見たアルは脱力し、地面に寝転がる。
「はぁ…。死ぬかと思った…」
「…え?」
「…ああ。さっき俺が言ったのは嘘だ。怖いに決まってるだろ、死ぬのは」
訳が分からない、というような表情をするハリティ。
同じく、アルも困惑の表情を見せる。
「…騙したの?」
「いや…その…。本音もあるぞ?っていうか…怖くないってとこ以外は本音」
「恨まれることもしてきたし、目の前で人が死ぬのをごまんと見てきた」
「信じたんだよ…。あんたは何ていうかその…優しい人だし。撃たないだろうって」
「何それ…」
自分が考えていたことは何だったのか、と虚しく思う反面、内心安堵していた。
彼もまだ一人の子供なのだと、そう思えたから。
そして、戦闘時の通信を思い出す。
『そりゃあな。好きで殺してるわけじゃないし』
『俺が頑張ることで、救われる命があるなら救うさ。守るさ』
「…そう…よね…。殺さずに済むなら、そうするわよね…」
「ああ…。だけど、さっきは無理だった。戦力差があったし、特攻されちゃ、どうしようもない」
だが、そこで手に掛ける判断をしたアルが、羨ましく思えた。
そして、それを実行出来る技量が、眩しく見えた――。
――その力が私にあったなら、喪わずに済んだのに。
――劣等感を抱いている自分を、力を持ったアルを、恨めしく思った。
375 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/27(火) 17:27:59.66 ID:QtotTEsA0
「…で、あんたらはどうするんだ?」
起き上がり、胡坐をかいているアルが問う。
「リアンを連れて、街に戻るつもりよ。…非難されるでしょうけれど」
皆の未来を背負い、負けてしまった。
そんな自分たちが受け入れられるわけがない。
あの父親が、自分を見逃すわけがない。
――いや、あの人なら。彼を引き込もうとする。
父親が求めているのは『ガンダム』だ――。
――もっと正確に言うならば、強い『ガンダム』を持つ自分に酔っている。
自分が偉大な存在だと知らしめたいのだ。
だから、弱い自分たちに興味は無いだろう。
軽く一蹴したアルを手に入れようと画策しているはずだ。
考えれば考えるほど、自分の弱さが嫌になる。
沈んでいくハリティを見て、いたたまれなくなったアルは声を掛ける。
「じゃあ…さ…。俺と一緒に旅をしないか?」
「え?」
思いもよらない言葉を聞いたハリティは困惑する。
「ここに来るまでは、世界を旅してたんだ。…まぁ、ここに来たのはそういう提案をされたからなんだけど」
「俺としても、あんたらを見捨てるのは嫌なんだよ。だって、原因は俺だし」
アルの目を見るが、それは街で会った時と変わらなかった。
本気で提案をしている、と思ったハリティは、耐えられず吹き出した。
「ふふ…。あはは…!あなた、分かってないのね!」
「…真面目に言ってたのに。笑う要素は無かっただろ」
「あるわよ…!だって、この世界では『強いものが全て』じゃない!」
「敗者の私たちは、勝者であるあなたたちに従うしかないのよ。だから、あなたの好きにしなさい」
「あ…そう…。だったら一緒に来てくれ。流石に、これからも集団で来られたらきつい」
「ええ。戦力にはならないけど、整備は得意だから。何でも言って頂戴ね」
コクリ、と頷くアルを見て、ハリティは微笑む。
――こうして見ると、年相応なところもあるのね。
恨みが無くなったわけではない。
が、恨みに突き動かされて殺していいとも思えない。
どうするかは、彼のことを知ってからでも遅くないだろう。
――何言ってるんだろうな、俺は。
一人旅の方が好きだったのに、今では他人と旅をするのも悪くは無いと思ってきている。
心情の変化の主因は、間違いなくあのお嬢様だ。
――ったく。今日の飯は豪華にしてやるよ。
その変化を受け入れているのも、きっと――。
376 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/27(火) 17:28:54.18 ID:QtotTEsA0
「…あ、どうも。ちょっと頼みたいことがあるんだが…」
『すみません。至急基地に戻ってください。来客がいますので』
「…来客?誰だ?」
『…ラサード・ラントス氏です』
「本当に誰だァァァ!」
「…あの人は…!手が早いわね…!」
誰かは分からないが、戻ってこいと言われているなら仕方ない。
「ハリティさん、リアンって人を連れて俺の『ガンダム』に乗ってくれ」
バールをハリティに手渡し、アルはテールの元に戻る。
「えぇ…。私一人でハッチを開けるの?無理よ」
数分後、戻って来たアルたち全員でどうにかした。
377 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/27(火) 17:30:21.25 ID:QtotTEsA0
基地に戻ると、コックピットから出た直後に、無数の黒服がワラワラと出てきた。
「…手厚い歓迎なことで」
「アルファルド様ですね、ラサード様がお待ちです。こちらに」
「…断ると言ったら?」
「鉛弾をプレゼントすることとなりますが」
「…チッ」
流石に撃たれては敵わない、と渋々アルはテールから降りる。
「待ちなさい!私も同行するわ!」
「いえ、ハリティ様はそちらでお待ちください」
「ふざけないで!私にだって、お父様と会う権利はあるでしょう!」
「…では、どうぞ」
激昂するハリティに気圧されたのか、それとも。
ともかく、ハリティも同行することとなった。
連れられた先は、軍の司令室。
そこには、恰幅のいい男性と、交渉を行った女司令官が。
「ご苦労、褒賞は後で受け取るがいい」
「光栄でございます」
黒服は敬礼をし、三名を残して外に出た。
今、司令室にいるのは七名のみ。
「さて、用件というのはだが。率直だがアルファルド君、君の腕前、しかと拝見させてもらった」
「…どうも」
声色からして世辞、というか、見下しているように感じるが、スルーしておく。
「その腕前を見込んで言う。この都市『ニュージュエラー』と契約を結んでほしいのだよ」
「無論、報酬はやろう。住居や足、食料の手配は勿論、女だって好きにして構わん」
「そこの未熟者も、だ。所詮、一人では何も出来ない愚図だ。使い道が増えてこちらも嬉しいよ」
ギリッ、と歯軋りをする音が聞こえてくる。
して当然だし、今ここでぶん殴ってもおかしくないくらいだ。
「君は身寄りがないと聞いている。どうだね、私のために力を貸してくれないだろうか?」
378 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/27(火) 17:33:38.42 ID:QtotTEsA0
このクソ野郎と契約するかの安価です。先に二票入った方が採用になります。
セリフを書いてくれたらそれも入れていきます。
1:受け入れる(メリットは先ほど書いた通り。アルは基本、誰かの下に付くことを嫌がります)
2:拒否する(大陸間移動には前回と同じく、軍の協力が必要です。現時点ではコネがありますが、それが続くとは限りません)
379 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/02/27(火) 18:15:55.04 ID:pHMuItVKo
2
380 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/02/27(火) 18:27:46.17 ID:kZOvOl+lO
2
むしろもっとふっかけちまえ
381 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/27(火) 19:06:58.60 ID:QtotTEsA0
化けの皮が剝がれたな、とアルは思うが、そもそも被ってもいなかった。
ふざけた物言いをしている時点で、本性は見え見えだ。
メリットがあるのは少しだけ魅力的だが、こちらが下に付くのは御免蒙る。
「…自分で言うのもなんだが、俺はずっと戦ってきた」
「だから、そこらの軍人よりは強いんだ。小隊程度なら簡単に潰せる程度には、な」
「ほう。それは素晴らしい。是非とも戦ってもらいたいものだ」
アルの言葉を聞き、下卑た笑みを浮かべるラサード。
「じゃあ、もっと条件を良くしてくれよ。この程度じゃ、俺は満足しない」
しかし、その笑みが凍り付くまでに時間は掛からなかった。
「た、足りない…?ああ、言い忘れていたが金も支給するぞ」
「マジ?じゃあ財産全部貰うわ。一度カジノを経験してみたかったからな」
「馬鹿言うな!払えるわけがないだろうが!」
「ではこの話はおしまいで」
「待った!済まなかった、君が男色家である可能性を失念していた。男も好きにしていいぞ!」
「ほぉ。なら、あんたを頂こうか」
「私は駄目に決まっているだろう!普通に考えたら分かるはずだ!」
「っていうかよぉ!俺は男が好きなわけじゃねえよ!何邪推してんだあんたは!」
「プッ…。ふふ…」
「はいそこ!笑わないでくれハリティさん!」
吹き出したハリティを咎めるが、更に吹き出したのでどうしようもない。
諦めて、アルはラサードの方を向く。
「…あんた、ハリティさんは娘だろ?どうして、あんな物言いが出来るんだ」
アルの問いを、ラサードは冷徹な表情で一蹴する。
「役に立たない奴だからな。当然のことだ」
「…そうか。あんたのことはよく分かった」
アルは三歩後ろに下がり、握り拳を作る。
382 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/27(火) 19:07:50.56 ID:QtotTEsA0
「…オラァ!」
「ぐっ!?」
そして、助走を付けた右ストレート。
防御もせずに突っ立っていたラサードは吹き飛び、壁に頭をぶつける。
「貴様!ラサード様に何を…!?」
それを見た護衛がすかさず銃を構えるが、それよりも早く司令官とハリティが銃を向ける。
「すみませんが、手荒な真似はしないようお願い申し上げます。基地で暴動を起こして不味い立場にいるのはどちらか、分からないわけではないでしょう?」
「…悪いけど、彼に手を出すのなら私が撃つわ。お父様より、よっぽどいい人だから」
「…セラ…!貴様、私が誰か分かって言っているのではあるまいな!?」
「私は元々、ユーラシア担当なので。それに、軍の資金を出しもしないで面倒なことばかり持ってくる貴方を、庇う理由などありません」
「そういうことだ。この人たちが信用してないあんたを、俺が信用するわけないだろう」
「…家族を大切にしない奴。俺はそれが一番嫌いなんでな」
「それによ!俺は誰かの下で働くのが嫌なんだ!」
「俺のことは俺が決める!誰かのためならまだしも、自分のためにしか動かないあんたに貸す手はねぇ!」
力強い、怒号にも似たアルの言葉に、ラサードたちは怯む。
その隙に、ハリティはラサードの両脚を撃ち抜く。
「ぐ…ぎゃあぁぁぁぁ!」
「ラサード様!?」
慌てて黒服が駆け寄り、ラサードを背負う。
だが、ラサードは控えめに言ってクソデブ。
三人がかりでやっと、というところだった。
「ほら、早く運ばないと失血死するかもしれないわよ」
「ハリティ…貴様…。どうなるか分かっているのだろうな!?」
「知らないわ。お父様に何を思われようと、もうどうでもいい」
「次は眉間よ。躊躇いはしない。容赦なく撃ち抜くから」
半泣きになったラサードはたまらず逃げ出し、今回の珍騒動は幕を閉じた。
383 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/27(火) 19:10:04.48 ID:QtotTEsA0
珍騒動を終えた基地は、平常運転に戻る。
技術班と協力して、テールのメンテナンス、弾薬等の補充を行う。
損傷は皆無だったので、内部の電子機器の調整程度で済むのが嬉しいところだ。
ハリティも整備を手伝っているが、技量は中々のもので、自分より手早く、正確にこなしている。
「手伝ってくれてありがとう、ハリティさん。だいぶ楽になった」
「別にいいわよ。私が好きでやってることだし」
「それに、礼を言うのはこっちの方よ。さっきはありがとう」
「別に…」
目を逸らしたアルが見上げた先には、修理を行っているウィルスタードの姿が。
右腕と両足を損傷したため、部品の交換作業を行っている。
「しかし…。酷いもんだな、これは。ビームとはいえ、マシンガンを受けただけでここまで…」
「機動力を向上させるために、装甲を削ってるのよ。…その分、技量が要求されるわけだけど」
「『ガンダム』の性能が異常なのよ。十年以上前のものとは思えないほどに。開発者が生きていれば、宇宙にも進出出来たでしょうね」
たしかに、テールに搭載されている『ニュートン』を発展させれば、宇宙まで行けてもおかしくない。
その場合、宙域移動用のスラスターが必要になるが、そこまで技術が発展していれば造作もないだろう。
そんなことを考えながら、椅子に座る。
技術班から手渡されたレポートを確認するが、酷いものだった。
サムサランの武装はほぼ喪失し、両脚とビーム砲が損壊。
メインカメラと中枢部も無いため、代用品が無ければ修理しても動かせない。
しかも、その代用品を使ったところで性能はガタ落ち、テールの中枢部を移植するのがベストな現状だ。
「…どうする?このままスクラップにするか、改造用に置いておくくらいしか、出来ることは無いぞ」
「…このまま楽にさせてあげるべき、なのかしらね。私には、どうしたらいいのか分からないわ」
はぁ、とため息を吐き、二人はコーヒー(ミルクマシマシ)を飲み干した。
384 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/27(火) 19:14:56.31 ID:QtotTEsA0
>>367
、すまねぇ、ロマサガはさっぱりなんだ。
サムサランをどうするかの安価を取ります。今回も二票入ったものを採用です。またちょっとしたコンマ判定を直下で行います。
1:もうスクラップにして安らかに眠ってもらう。
2:とりあえず改造用の素体として残す。
3:いっそのこと、今ここで魔改造しちまおうぜ。
4:自由安価。
コンマ判定
1〜3:何もない。
4、5:アイアン・トマホーク
6:ウィルスタード
7:ワイルドハント
8〜0:最近完成した試作機があるらしい。
385 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/02/27(火) 19:16:35.22 ID:+8QtuRW20
2
386 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/02/27(火) 20:24:16.18 ID:Ay2L49gDO
2
387 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/27(火) 20:31:05.72 ID:QtotTEsA0
ゾロ目なので、もう一度直下でコンマ判定を行います。出た数値の半分(小数点以下切り上げ)を加算します。
388 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/02/27(火) 22:21:52.05 ID:RcEZl3Zh0
ほい
389 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/27(火) 22:24:36.22 ID:QtotTEsA0
アメリカ方面最弱の量産機が宛がわれることとなりました。少々お待ちください…。
390 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/02/27(火) 22:34:38.90 ID:ANkAMBiSO
逆に考えるんだ
ぶっ壊してもいいんだ、と
391 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/27(火) 23:36:03.74 ID:QtotTEsA0
「…まぁ、悩んでいても仕方ないか。現状維持ということで、残しておこう」
「場合によっては、俺が使うことになるが。その時は機種転換訓練をしないとな」
「そう…。その時は、大切に使ってね」
「…善処する」
コップを手に、給湯室に足を運ぶアル。
「アルファルドさーん!」
ハンガーを出ようとしたら、技術班のうち一人が声を掛けてきた。
「ん、どうかしましたか?」
アルは振り返り、整備員の方を向く。
「あのですね、こちらの基地ではMSが一機余ってまして。予備とかではなく、純粋に余りものなんです」
「だから、アルファルドさんが良ければ提供しようって話になりまして」
「機体は何ですか?無難なやつだとウィルスタード、まさかワイルドハントってことは」
「あのぅ…。アイアン・トマホークです…」
厄介払い、というものではないのだろうか、こういうものは。
だが、厚意を無下にすることも出来ないので、とりあえず受け取っておくことにする。
「…一応貰っておきます。パイロットはハリティさんなんで、チューニングは彼女と話し合ってください」
「あ、はい。すみません…。試作機があるんですが、まだフレームしか完成してなくて…」
「いや、機体が貰えるだけでも充分なんで。アレでも相当高いですし」
「でも、アパッチの二割ですよ。ミサイルが高いだけなのかもですが」
こんなものを何百機も運用していた過去の戦争。
どれだけ凄惨なものだったのだろうか。
思いを馳せながら、足を再び動かした。
392 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/27(火) 23:36:56.76 ID:QtotTEsA0
夕刻となり、基地の業務が止まる。
軍ではあるが、まともに戦闘も行えないこの状況では、普通の会社と大して変わらない。
厄介払いか、はたまた気遣いなのか。
アルたちは、食堂横の小部屋で食事を行っていた。
「…む!このクラムチャウダーは美味しいですわ!」
「あ、それは野菜を多めにしてるんです。ここの野菜、しっかり育ってるいいものばかりでしたから…」
「へぇ。俺の飯とは比べ物にならないな」
「アルのはただ、保存食を適当に調理してるだけじゃないですもの」
「なにをぉ」
「リアン、ワインって無かった?」
「はい…。嗜好品はどこも置いてないって」
「そう…。困ったわねぇ」
――久しぶりに大勢で食事したが、こんな楽しいものだったかな。
最後に行ったのは、家族と過ごした十五年前。
あの時は、両親が仕事から帰って来たことを喜ぶ程度だった。
今では、それがどれほど尊いものだったのかよく分かる。
「アル、これからどうしますの?」
ディアの声で、思考が戻される。
「ん?ああ、それはたしかに問題だな」
テールが提案した『ニュージュエラー』を訪ねることは既に達成している。
であれば、次の目標を設定するべきだろう。
元々自由気ままに旅していたのだ。
このまま好きなところに行っても問題ないはずだが、どうするべきか。
393 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/27(火) 23:42:24.22 ID:QtotTEsA0
今日予定している安価は、今回で(たぶん)最後となります。今回は普通の安価なので、直下を採用します。
1:当初の目的通り適当に旅する(大陸内であれば、軍のサポートを確実に受けられます。都市の安価が増えます。外に出る場合は判定追加)
2:そんな何回も移動するのは疲れるしここで休憩(留まって訓練や機体の改造、開発、賭博(ニュージュエラー専用メニュー)を行えます。
ビビっているので、ラントス一族の嫌がらせは受けません)
394 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/02/27(火) 23:46:35.04 ID:2GRkNglE0
2
395 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/28(水) 00:37:45.11 ID:IecFP68V0
「…正直言うと、旅をするには心許ないんだ」
主に、仲間になった人たちの技量が。
「…ええ。私たちは見事にやられましたから。たった一人に」
「センスの差なんでしょうけど、何か嫌よね。そうやって誤魔化すの」
「だから、当分はここに残って行動する。時間はあるし、色々と出来ることはあるだろ」
「…お父様たちは、おそらく手を出してこないはず。戦力じゃあ勝ち目がないから」
裕福とはいえ、歴戦のエース相手でどうにか出来るはずがない。
たかが数機のMSでは、一瞬で蜂の巣にされるのがオチだ。
「まあ、操縦の仕方とか、模擬戦とかは出来るんだ。今の間に備えておこう」
「あんたらだって、死にたくはないだろ」
出来ることなら、試作機とやらを受領して、ハリティの技術を磨いておきたい。
流石に、貧弱な量産機に未熟な腕前が合わさるなど洒落にならない。
「せめて、リアンさん?くらいの実力は欲しいものだよ」
「…ガンバリマス」
その後、自分も操縦したいとごねるディアだったのだが、それはまた別のお話。
というか、乗せたら自爆する気がする、何となく。
396 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/28(水) 00:38:28.65 ID:IecFP68V0
一週間後 ユーラシア ニードレット
呻き声と腐臭が充満する地獄。
女性と見紛うほどに美しい少年は、その地獄を興味深そうに眺めている。
「嘗て僕が暮らしていた場所より酷いとは。流石に驚いたな」
「それに、ここに入る前にあった残骸。戦闘があったということか」
僻地に配備されたMS。
何があるのか分からないが、望みを叶えることが出来るのものがあるかもしれない。
僅かな期待を抱き、町の奥に進む。
他では見たことが無い特異的な構造だったが、難なく辿り着くことが出来た。
「この施設は…新しいな」
ボロボロになっている建物が多い中で唯一、その施設だけが真新しく、重々しい鉄扉で施錠されている。
近付いて扉に触れるがピクリ、とも動かない。
「チッ、仕方ない」
ポーチからワイヤーを取り出し、扉に円形状に設置する。
そして、三個の小型爆弾を取り付ける。
離れたところで起爆しようとする。
が、見回りを行っていた施設の従業員に阻止される。
「何が目的だ?WLNに立ち入ろうとするなど、いくら子供と言えど見逃せないぞ」
「目的、か。知りたかっただけだ。ここに何があるのかを」
「そうか、だが不可能だ。ここでお前は死ぬ」
「成程。それは分かり易くて助かる」
「何?」
397 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/28(水) 00:39:16.51 ID:IecFP68V0
従業員が首を傾げた刹那、レイベルはハンドガンを取り出し、早撃ちを行う。
「なっ」
反応出来なかった従業員は銃を弾かれ、すかさずナイフに切り替える。
「がぁっ!?」
だが、既に懐に潜り込んだレイベルは右腕に数発撃ち込み、首を掴む。
「どうする?話さなければここでお前は死ぬが」
「機密情報を…漏らせるわけが…」
ズドン、と腹部を躊躇なく撃ち抜く。
「がぁぁぁあぁぁぁあ!」
「最後の忠告だ。次は心臓を撃つ」
堪忍したのか、従業員は弱々しく言葉を発する。
「け…研究…だ…。障碍者を利…用して…ある研究をして…るんだ…」
「どういう研究だ?」
「人…格移植…。人格を…機械に移す…」
ピクリ、とレイベルの手が動く。
――望んでいたものが、この施設に。
僅かな期待が、大きな希望に。
身体を棄てられることに、喜びを感じていた。
398 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/28(水) 00:40:01.00 ID:IecFP68V0
「大丈夫か?」
「あ、ああ…。戸惑ってはいるが…一応」
レイベルは従業員の服を脱がし、治療を行っていた。
ピンセットで体内の弾丸を抜き取り消毒、止血。
そして、清潔なガーゼと包帯で傷口を押さえる。
幸いと言うべきか、腹部の銃弾は貫通していたので、摘出時に余計な怪我が増えることは無かった。
「しかし…恥ずかしいな…。同姓とはいえ、裸を見られるのは…」
「あなたは男なのか?そうは見えないが」
「…ちょっと待て。お前は女じゃないのか?」
「僕は男だ。正直、この見た目は嫌いだがな」
「………」
「手当は終わった。済まなかった」
レイベルが差し出してきたコートを羽織り、そっぽを向く。
従業員は解せなかった。
どうして、この少年がここまで強いのか。
それが分からない。
「…僕は、ある貴族の出身だ」
急に話し出したレイベルに、従業員は疑問を抱く。
「女を求めていた一族の中で産まれたのは、男である僕。当然、受け入れられることはなかった」
「…それでも、誼だったのかな。物心が付くまでは育てられた。扱いは家畜以下だったけど」
「…その後は?」
おそるおそる聞いてみるが、レイベルは目を閉じて空を見上げるだけ。
それから数分後、ようやく目を開けたレイベルは話を続ける。
「棄てられた。名も知らぬ街に、ただ一人」
レイベルの発した言葉に、従業員は絶句する。
彼が強い理由も何となく分かったが、何より、目の前の少年が持つ虚無感。
それを形成するものがどれほど凄惨なのか、推し量ることが出来なかったからだ。
「…大変だったんだな。お前も」
従業員の言葉を皮切りに、警報が鳴った。
399 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/28(水) 00:40:44.33 ID:IecFP68V0
【警告。警告。ビームバリアを展開、『Life or Death』二回戦を開始します。非戦闘員は速やかに退避してください】
「ビームバリアの範囲内…!?まさか、近くに『ガンダム』が複数いるのか!?」
「こちらの部隊を壊滅させたMSか?いや、あれは一週間前だ。いるはずが…」
「とにかく、お前も逃げろ。情報を知った以上、ここで働いてもらうしかない」
「分かっているが、僕にはやることがある。先に入っていてくれ」
「お前も来るんだよ!死にたいのか!?」
従業員の叫びを聞いたレイベルは一瞥し、答える。
「僕が終わらせてくる」
そして、機体の元へと駆け出した。
残された従業員は、呆然とするしかなかった。
400 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/28(水) 00:41:34.43 ID:IecFP68V0
『指定座標に向かったはいいが、ここにいるのか?『ガンダム』は』
『いるんじゃないですかね。女ならいいんだけど』
三機のエピキオンを擁する『ガンダム』フェンリル。
獣のようなMSは荒々しく荒野を駆け抜ける。
『おっと。レーダーに反応だ。…コイツがターゲットか』
通路から飛び出してきた一機のMS。
その主は冷徹な表情のまま、武器を構える。
「ファントム、COSの稼働率を70%まで上昇。そしてフェンリルの武装を表示しろ」
【ええ、分かりました。ご武運を】
モニターの端にポップアップしたデータを一目見て、グラディウスを両手に構える。
【接触まであと500m】
こちらに向けてバズーカを乱射する護衛機たち。
【300m】
しかし、それが強化されたエースパイロットに当たるはずがなく。
【100m】
弾幕をすり抜け、グラディウスを投擲。
メインカメラに突き立ったそれは、続けて発射されたガトリング砲の弾で上に弾かれる。
『テメェ!』
フェンリルのシールドに内蔵されたビームクローが襲い掛かる。
『ギャアァァァァァ!』
だが、それは味方を引き裂いた。
左手のグラディウスを右肩にねじ込み、左肩を掴んで盾にする。
横薙ぎにされたそれは、コックピット付近で止まる。
慌ててビームを消すが、もう間に合わない。
一機のエピキオンは、その身を散らした。
401 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/28(水) 00:42:18.47 ID:IecFP68V0
爆風で吹き飛ばされたグラディウスまで、スラスターを吹かして上昇し、急降下を行う。
常人では気絶するであろうGをものともせず、襲い掛かる。
『うげぁ!?』
左肩を踏み潰され、その衝撃で地面にめり込むエピキオン。
衝撃でパイロットは気絶、内部機器も損傷したため、バイザーの光が消える。
流れるようにクルリ、と回転したファントムは、逆手持ちにした左手のグラディウスでエピキオンの右腕を落とし、コックピットを殴り付ける。
――目的のため、生きてる人間は多い方がいい。
元より生かして帰す気は無いので、こちらで有効活用するだけだ。
地面に倒れ伏したエピキオンを一瞥し、フェンリルの方を向く。
『死ねよゴラァ!』
肩部に設置された散弾銃を放つが、それよりも早くグラディウスを突き立てる。
そして始まる、鮮やかな解体ショー。
頭部、四肢を切り離され、達磨になった機体がゴロン、と転がる。
402 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/28(水) 00:43:17.17 ID:IecFP68V0
『ぐ…あぁ…』
意識の残っていたパイロットは、痛む頭を手で押さえる。
「聞こえるか?」
『ヒッ!?』
そして、回線を通して聞こえる音声に怯える。
『すまねぇ!俺はもう降参する!だから命だけは…頼むよお嬢ちゃん!』
言葉が逆鱗に触れたのか、何度もコックピットを踏みつける。
「…聞こえるならいい。これから貴様たちに二つの提案をする」
『な、何だ…?』
「一つは、今ここで僕に殺されること」
ペネトレイターを展開し、コックピットに向ける。
「もう一つは、僕の指示に従って実験対象になること」
『そ、そんなのどっちでも死ぬじゃねぇか…!』
回線越しで聞こえる声を聞き、レイベルは首を傾げる。
「本来ならば、提案しないでそのまま殺していたんだが」
「自由に選ばせるだけまだ有情だと思うんだが、違うのか?」
『ヒィ…』
「選べ、従属か死か。どちらを選ぶも貴様たちの自由だ」
レイベルは気付いていない。
その時、自分が笑みを浮かべていたことを。
恨みの中で生きる少年は今初めて、笑顔を見せた。
403 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/02/28(水) 00:46:10.38 ID:IecFP68V0
以上で第四話 完でございます。もっと上手く書けたんじゃないかな、とか思ったりしてます。
次回は二週間以内に仕上げたいなぁ、と。戦闘自体は起きないほのぼの回の予定です。待っていてくれた皆さま、サンキューな!(デュオ並感)
404 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/02/28(水) 04:53:30.46 ID:xtpimJ1R0
いやはや、こりゃまた……恐怖でブルっちまう程に生々しい人間描写だぜ
405 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/02/28(水) 11:40:06.20 ID:c446WGiQO
乙
展開に期待ですわ…
406 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/02/28(水) 19:55:55.65 ID:5hAHFBXe0
乙でした
次も楽しみですぜ
407 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/03/02(金) 23:19:21.88 ID:VGhwBI+m0
乙!
攫った奴を被験体にして成功したとして、後々復讐とかされたりしないのかね?
408 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/03/18(日) 04:51:59.07 ID:O624FLMr0
ほっしゅ
409 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/03/30(金) 17:21:31.47 ID:5H9y8uS00
保守
410 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/10(火) 06:59:07.57 ID:ASizjdY00
保守よ
411 :
◆Ljj.rtZBFM
[saga]:2018/04/19(木) 02:37:33.74 ID:cu160jKM0
こんばんは、イッチです。色々と不幸事があったため、顔見せ出来ませんでした。申し訳ありません。
身辺の整理も出来たので、本日の夜に投稿する予定です。
412 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/19(木) 06:53:26.29 ID:x6JNzZKZ0
お待ちしておりました
413 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/19(木) 07:47:49.91 ID:vKFIfrmH0
お、久し振りィー
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クオリティの高いサービスを貴方に
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