唯「バイバイ、さん きゅ〜♪」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/31(日) 23:54:09.69 ID:57Kb2bxZ0

けいおんSS + α です。シリアス寄り

キャラが作中で男性と結婚とか、年取ったりしてます。注意



ネタも、題材も、書き出すタイミングも

作中の時系列も何から何までアレだけど、書いてみた


どうか許しておくれ〜


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1514732049
2 :1 [sage saga]:2017/12/31(日) 23:55:03.81 ID:57Kb2bxZ0

【N女子大・寮 唯の部屋】

午前3時21分



唯(20)「ふわぁぁ……」

唯「むにゃむにゃ……」

唯「もう4時か…………」
3 :1 [sage saga]:2017/12/31(日) 23:56:42.35 ID:57Kb2bxZ0

唯「変な時間に起きちゃった」

唯「このまま寝るのもいいけれど」

唯「なんだか、ココアが飲みたい気分」


唯「……」


唯「よし、コンビニで買ってこよー」
4 :1 [sage saga]:2017/12/31(日) 23:57:41.11 ID:57Kb2bxZ0

【15分後 コンビニ前】

店員「ありがとうございましたー」

ティコティコティコーン♪


テクテクテク


唯「ふふふ、ホットココアをゲットだぜ!」

唯「さっそく一口!」


唯「……」

唯「うーん、あま〜い!」


唯「ふぅ〜、沁みるなぁ〜」
5 :1 [sage saga]:2017/12/31(日) 23:59:09.39 ID:57Kb2bxZ0

唯「おー、気づけば、今日は雲ひとつない、スッゴクいい夜空♪」


唯「お星さまが、いつもよりも沢山!」

唯「沈みかけた満月も、みんなキラキラ耀いてる!」


唯「今日は、いいことが起こりそう♪」

唯「ふふふー、何が起きるかなー」
6 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:00:33.49 ID:TaOAbahR0

唯(あー、こうして夜の空を眺めていたら、)


唯(この前、みんなで行ったキャンプを思い出したよ!)

唯(あの日の夜は、反対に真っ暗ヤミだったなぁ)




唯(迷子のあずにゃんを見つけに)

唯(みんなで日の暮れた山に入っていったけど)

唯(私たちあずにゃん捜索隊も、森の奥で迷子になっちゃったんだよね)


唯(まさに、ミイラとりになったミイラ!)
7 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:02:02.70 ID:TaOAbahR0

唯(ドコに行けばいいか途方に暮れて、小雨も降ってきて)

唯(もう駄目だーっ、死んでしまうー……って絶望してたら)


唯(ムギちゃんがキャンプ地で着けてくれてた、焚き火が遠くからホンノリ見えて)

唯(みんなでそれを目印にして、無事に戻ってこれたんだよねー)


唯(真っ暗を照らす火に、暖かみを感じた一件でした♪)


唯(ムギちゃんにも感謝カンシャ! めでたしめでたし!!)
8 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:03:07.93 ID:TaOAbahR0

唯「……」

唯「風が出てきたなぁ」


唯「さ、早く部屋に戻って、もう一眠りしますかっ!」

唯「二度寝、二度寝〜♪」




テクテクテク
9 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:03:57.95 ID:TaOAbahR0

【寮 1階廊下】

ヒックヒック

唯「ん?」


ヒック、ヒック

唯「……誰かの、泣き声?」


唯「共同トイレから、聞こえる……!」
10 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:05:11.22 ID:TaOAbahR0

唯「はっ、そう言えばちょっと前、憂が、」

唯「音楽室で出た、オバケの話をしていた様な……」

ヒックヒック

唯(音楽室に響く水音に、床に落ちた赤いシミ……)

唯(実はその正体は……!)




唯「うぅ、コワイけど……」

ヒック、ヒック……

唯「このトイレから響く泣き声も、気になる……!」
11 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:06:24.58 ID:TaOAbahR0

唯「ちょっとだけ、見てみよう……」

唯「もし、ほんとのオバケだったらスグ逃げよ!」


唯「…………」







唯(ポマードポマードポマード!!!)
12 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:07:47.92 ID:TaOAbahR0

唯「そーっ」


紬「……ヒック、ヒック」


唯「あれ、何だ。ムギちゃんじゃん」

紬「……ヒック、ヒック」


唯(……泣いてるみたいだけど、どうしたんだろ?)
13 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:08:39.36 ID:TaOAbahR0

唯「ム〜ギちゃん!」

紬「ゆ、唯ちゃん!」


唯「こんな所でどしたの?」


唯「もしかして、お腹いたい??」

紬「うぅぅ、うぅぅぅ」



唯「えっ!?」

ガバッ!

むぎゅぅぅぅぅぅぅぅ

唯「あわわわわえあわ!?」
14 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:09:53.73 ID:TaOAbahR0

唯(い、いきなり抱きつかれた!?)

紬「うぅ……」



唯「ど、どうしたのムギちゃん? 何があったの??」

紬「ごめんね、ごめんね。唯ちゃん、みんな……」

唯「えっ??」
15 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:10:58.34 ID:TaOAbahR0

紬「私ね」

紬「妊娠しちゃってるみたい……」








唯「…………」

唯「どぅえええええええええ!??」
16 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:11:49.53 ID:TaOAbahR0

5日後

【ムギの部屋 午後10時12分】


澪「それで、病院で検査結果は!?」

律「まちがい、ないんだな!?」

紬「うん。お腹に赤ちゃんがいるって。1ヶ月の」

全員「ぅぉぉぉ……」


幸「おめでとう!ムギちゃん!」

晶「いや、おめでとう……なのか?」

菖「おめでとうだよ、そういうことにしとくの!!」




唯「……」
17 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:12:57.24 ID:TaOAbahR0

梓「それでムギ先輩! 相手の方は分かってるんですか!?」

紬「……うん」


律「ち、ちなみに誰なんだ?」

唯「私たちの知ってるヒト?」

澪「っていうか、ムギに彼氏とかが居たとか気づかなかった……」


紬「……ごめんね」

紬「……相手は、一応みんなも知ってるヒト」

梓「だ、誰なんです?」


紬「半年前に、皆でバンドマン同士の合コンに行ったでしょ。その時に来てた、ドラマーの人」


澪「あー、あの合コンで!」

律「えっ、でもあの時は全員が全員に脈なしだったろ?」

紬「う、うん。その時はね」
18 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:14:58.51 ID:TaOAbahR0

紬「でも。後日、バイト先で偶然出会って」



みんな「へー」



紬「ライブのチケット貰って、行って見たの」



紬「勢いあって力強くて、でもどこか暖かくて安心できるドラムを叩く人でね」

紬「何だか凄いなって思って、連絡先を交換して……」



紬「そこから一緒にお茶して音楽の話をしたり、」

紬「スタジオでキーボードとドラムのセッションしたり、買い物に行ったり……」

みんな「おぉ……」

唯「……」
19 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:15:44.36 ID:TaOAbahR0

紬「なんでもない日に、こっそりあって、二人きりで過ごしたり///」

紬「映画行って、バーでカクテル飲んで、それから、えーと……」



みんな(お、大人だー)


唯「……」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/01(月) 00:17:11.99 ID:TaOAbahR0

梓「っていうか、彼氏さんができたなら教えて下さいよ!」

澪「そうだよ! 水くさいじゃないか」

紬「ご、ごめん」

律「皆で、ムギと彼氏さんのデート、こっそり尾行したかったのに……!」プンプン

紬「……うぅ、みんなの期待に沿えなかった」



晶・幸・菖(や、デートに付いて来られるとか嫌だよ。私なら彼氏ができたの、内緒にしとく)


唯「……」
21 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:18:53.92 ID:TaOAbahR0

唯「それで、ムギちゃんはこの後、どうするの?」



紬「……この子を、生みたい。あの人と、人生を歩みたい」



唯「……」


紬「あの人には話をして、『いいよ。責任とるから』って、言ってくれたんだ」

みんな「おおー!」
22 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:20:32.47 ID:TaOAbahR0

紬「……でもね、琴吹家は許してくれそうにないの」

みんな「ええっ!?」


紬「あの人と結婚するのも、この子を生むことも……」


澪「厳格な家だもんな、ムギの実家って」


律「でも、家が反対だとすると、どうすりゃいいんだ?」


紬「……」

唯「……」
23 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:21:42.11 ID:TaOAbahR0

紬「夜逃げするの、あの人と二人して」


みんな「えええええええ」


梓「そんな、夜逃げだなんて」

澪「いや、でも、それしかないんじゃないか?」

唯「じゃぁ、大学やバンドはどうするの?」


紬「……どっちも、辞めるわ」

みんな「!」

紬「……ここに居たら、琴吹家に連れ戻されてしまうから」


唯「……」
24 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:22:28.01 ID:TaOAbahR0

紬「ごめんね、みんな」

紬「特に、唯ちゃんに澪ちゃんに、りっちゃんに梓ちゃん……!」

紬「勝手なお願いになっちゃうけど、どうか、こんな私を、許して……」


梓「あ、頭をあげてください! ムギ先輩!」
25 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:23:19.91 ID:TaOAbahR0

澪「……それで、いいのか。よく考えた上での、答えなんだな」


紬「……うん!」


律「だったら、だいじょうビッ!」

梓「寂しくなりますけど、ムギ先輩の意志を尊重します!」



澪「あぁ。バンドも大学も大切だけど、ムギの人生が、一番だいじだからな!」



紬「……みんな、ありがとう」
26 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:24:51.36 ID:TaOAbahR0

澪「それで、夜逃げったって具体的にいつから始めるんだ?」

紬「……今日の、午前零時。日付が変わると同時に、ここを発っていくわ」

律「ちょ、急だな!」

紬「……これ以上遅れると、琴吹家の追跡チームに追い付かれてしまうから」

唯「……」


梓「でもでも、それだともう2時間もありませんよ!」

梓「荷物とか、どうするんですか!?」

紬「……ホントに迷惑かけてばかりだけど、みんな、纏めるの手伝ってくれないかしら」


唯「……」
27 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:26:16.40 ID:TaOAbahR0

律「おうとも! 任せとけ親友(マブダチ)よ!」

律「ふふふ〜。りっちゃんの旅行収納術を披露する時が来たようだな!」


澪「あぁ。他にも、できることあったら言ってくれ!」

梓「私もお手伝いします」

晶・幸・菖「うんうん!」
28 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:27:01.20 ID:TaOAbahR0

唯「…………私は、ヤだ」

澪「ちょ、唯!?」

紬「……唯ちゃん?」




唯「…………」



紬「…………」
29 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:27:56.62 ID:TaOAbahR0

唯「勝手だよ、こんなの!」




唯「……ごめんね。ムギちゃん」

律「唯?」

梓「唯センパイ??」




唯「……うまく、言えないケド」

唯「……私は、自分の部屋に戻ってるよ」

紬「……唯ちゃん」
30 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:28:48.75 ID:TaOAbahR0

唯「見送りとかも、行かないから」

紬「…………」



唯「じゃあね、バイバイ。さよならムギちゃん」


バタン!!

紬「……唯ちゃん」
31 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:29:57.68 ID:TaOAbahR0

晶「行っちゃった」

菖「ちょ、いいのか? 唯のやつアレで?」


律「あー、大丈夫でしょ。唯がいると荷物まとめももたつきそうだし」

澪「見送りとかも、どうせ寂しくなって自分から来るだろうしな」

梓「ですです」

幸「あー、ありそう」



律「よっしゃ、じゃぁちゃちゃっと夜逃げ……いや、駆け落ち応援隊スタートといきますか!」



みんな「おー」
32 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:30:57.65 ID:TaOAbahR0

【午後11時51分 N女子大 寮の門前】


ビッビー♪

律「おお、道路の向こう側で待ってる車が、そうだな?」

紬「うん。あの人の車」

澪「しかし、結構時間ギリギリだったな」

梓「はい。荷物まとめ間に合って良かったです」
33 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:31:44.38 ID:TaOAbahR0

晶「それじゃムギ、元気で!」

幸「今までありがとう」

菖「体に気をつけて」

紬「恩那組のみんな……」


澪「ムギ、彼氏さんと幸せにな。万一ツラいなら、いつでも戻ってこい!」

紬「澪ちゃん!」
34 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:32:53.51 ID:TaOAbahR0

律「梓ならともかく、ムギなら問題ないとは思うが、元気に子を生めよ!」

律「そんで赤ん坊の写真を年賀状にして送ってくれ!!」


梓「律センパイ! セクハラです! まぁ年賀状は私も見てみたいですが……」


紬「ふふふ。りっちゃんに梓ちゃん。そうするわ」



澪「それからコレ、みんなからのカンパ。気持ち程度だが、受け取ってくれ」

紬「……ありがとう。何から何まで、本当にアリガトウ」



澪「……時間だな」
35 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:33:53.93 ID:TaOAbahR0

晶「おい、大事なヤツが居ないけど、いいのかよ」

律「や、唯ならそこら辺の木陰にでも居て、こっちを見てるだろ」


ガサゴソ

唯「……」ジー



律「ほら居た」
36 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:35:05.35 ID:TaOAbahR0

梓「ほら唯センパイ、こっちに来て!

梓「さぁ、お別れの挨拶ですよ!」

唯「あわわ、引っ張らないでよ、あずにゃん!」

梓「ほら早く!」


唯「わわっ」


ズルッ

ビターン!
37 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:36:06.13 ID:TaOAbahR0

澪「…………こけた」

梓「す、すみません」

唯「あいたたた」



紬「ちょっと、唯ちゃん大丈夫?」

唯「うぅ、ムギちゃぁん……」
38 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:36:57.36 ID:TaOAbahR0

唯「ムギちゃぁぁん……」

紬「どうしたの? 唯ちゃん?」



唯「いやだ。寂しいよ。どこにも行かないでよ。ムギちゃん!」



紬「……唯ちゃん」


唯「こんなに急にお別れを言われるなんて」


唯「いやだ。嫌だよ。あんなにずーっと一緒だったのに、あんまりだよ!」


紬「……」



唯「ヒッグ、エッグ…………」


唯「うぇえええええぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇ」

紬「ゆ、唯ちゃん」
39 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:38:48.20 ID:TaOAbahR0

唯「うぅぅ……」


グシグシッ!

唯「……ねぇ、ムギぢゃん?」

紬「……なぁに?」


唯「ムギちゃんの為に、私ができることって、何かないがなぁ?」

紬「唯ちゃんが、できること……」


唯「私は、大切なムギちゃんのピンチに、大事なお別れの時間に、」

唯「遠くから見てるだけで、何もしてあげられなかった……」
40 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:39:41.49 ID:TaOAbahR0

唯「このままお別れするだけとか、辛すぎるからさぁ……」

唯「ここから、私ができることって、ないがなぁ……?」グスッ


紬「唯ちゃん」


唯「できることなら、何でもするから…………!」
41 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:40:45.30 ID:TaOAbahR0

紬「じゃぁ、じゃぁね!」

唯「……」

紬「それじゃぁ唯ちゃんは、」

唯「……」





紬「唯ちゃんは、歌い続けてよ!」
42 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:42:10.96 ID:TaOAbahR0

唯「歌い、続ける?」

紬「えぇ!」


紬「私ね。唯ちゃんの歌声が大好きなの!」

唯「私の、歌声?」

紬「そっ!」
43 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:42:50.63 ID:TaOAbahR0

紬「温かくて、ふわふわしてて、幸せそうに歌う声が響くと」

紬「聴いてる私も、なんだか幸せな気分になってきちゃう、」

紬「そんな唯ちゃんの歌声が、私は大好きで、何度だって聞きたくなるの!」


唯「……」


唯「……い、いやぁ///」テレテレ
44 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:43:50.88 ID:TaOAbahR0

紬「……私は、ここでお別れすることになっちゃったけれど」

唯「……ムギちゃん!」


紬「唯ちゃんが歌ってくれるなら、いつの日かきっと、」


紬「それを目印にして、唯ちゃんに、会いにいくから……」

唯「……うん!」
45 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:45:47.06 ID:TaOAbahR0

唯「私、歌う。歌い続けるよ」

紬「唯ちゃん……」


唯「ここでお別れだとしても、サヨナラだとしても」

唯「いつかまた、みんなが戻ってこれる、」


唯「この前のキャンプファイヤーみたいな、真っ暗な夜を、遠くまで照らすような」


唯「そんな歌を、そんな歌っていくよ……!」
46 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:48:35.26 ID:TaOAbahR0

紬「……すぐには無理だけど」


紬「もし、唯ちゃんの歌声が、この耳に聞こえたなら、」

紬「私はどこにいても、唯ちゃんを抱き締めに飛んで行くわ!」


唯「うん。そんな日が来るのを、待ってる!」

紬「きっと。約束ね!」
47 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:49:40.59 ID:TaOAbahR0

「バイバイ」

「また会おうね」


こうしてムギちゃんは、私たちから旅立ちました






けれど、それから今まで、私はムギちゃんに会うことができていません。

そして、『歌い続ける』って約束も、守れていません
48 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:50:34.33 ID:TaOAbahR0

……というのも



唯(21)「えっ、海外発の、百年に一度の大不況!?」

唯(21)「どこかに勤めないと、趣味で音楽もできない世の中か……」

唯(21)「うぅ、働かなきゃなのに、就職活動の仕方とか、ゼンゼン分かんないよー」


唯(22)「お、御社の志望動機は……、自己PRは……」

唯(22)「ふぇぇ、またお祈りメールだぁ……」

唯(22)「はぁ、どこにも就職できず、大学を卒業かぁ……」
49 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:52:25.27 ID:TaOAbahR0

唯(23)「こんな私でも雇ってくれる会社があった、一生懸命働きます!」

唯(23)「仕事量が多過ぎて、ギー太を弾く暇もないよ……」

唯(23)「ええっ、会社が倒産するかも!? 入ったばっかなのに!」


唯(24)「ま、まさか勤め先が外資系企業に買われるとは」

唯(24)「海外転勤できるなら再雇用……できないならクビ…………」

唯(24)「ここ辞めると就職できる気がしないし、受け入れよう」
50 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:53:14.38 ID:TaOAbahR0

唯(25)「今日からここロンドン支社に出向し、お世話になる平沢唯です!よろしくお願いします!」

唯(25)「……まさかこんな形でここに戻ってくるとは」

唯(25)「卒業旅行で来たメンバーとは、今は離ればなれだけど……」


唯(26)「営業成績が『A』! ありがとうございます!」

唯(26)「こう見えても、やれば100点を取れる子なのです!」

唯(26)「はい、これからもロンドンでがんばります!」

唯(26)「……本当は、帰りたいけれど」
51 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:55:23.30 ID:TaOAbahR0

唯(27)「メアリー先輩。今までご指導ありがとうございました。お達者で!」

唯(27)「ジョン君は転職かー。新しい職場でも頑張ってね!」

唯(27)「……どうしよう。仕事量は増えてくのに、人は減っていく」


唯(28)「……………………」

唯(28)「はっ!? 寝てたっ!!!」

唯(28)「うー、3日も徹夜なのに、まだ仕事が終わらないよ〜」

唯(28)「日本に戻れたはいいけれど、余計に重労働になっちった……」
52 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:57:23.56 ID:TaOAbahR0

唯(29)「……つらい、つらいよ。眠れない」

唯(29)「どこまで頑張っても、休める気が、終わりが来る気がしない」


唯(29)「あぁ……」



唯(29)「帰りたい。楽しかった、あの日々に……」
53 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:59:45.09 ID:TaOAbahR0

PRRRRR


唯(29)「もしもし? あ、お母さん!」

唯(29)「お見合い? ええっ、私に?? ……うんうん」

唯(29)「そんな、急だよ」




唯(29)「…………うん。でも、お願いしよっかな」



唯(29)「私はもう、ここに居たくはないから……」
54 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:00:51.11 ID:TaOAbahR0

こうして、私は結婚し主婦になり、一児の母にもなりました



その後も、色々とあったけど


違うようで同じ、同じようで少しづつ違ってく、繰り返す毎日


家事をこなして、家族の面倒を見て

パートに通い、暇潰しにネットを見て、夜は眠る
55 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:02:38.77 ID:TaOAbahR0

レコードみたいに、巡りゆく朝と夜

私のものの筈だった人生は、少しずつ少しずつ、サラサラと世界に溶け込んでいく



何年も何年も、大切な約束を守れずに

若い頃に見てた夢も忘れてしまって

いつかあった私の形が、塩の柱みたいに崩れていって


自分が、かつて何者だったか分からなくなるほどの時間がたって




そうして、今に至ります



ただ生きる。生きるために、今日を、毎日を生きてます
56 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:07:16.73 ID:TaOAbahR0

【そして、とある未来】

【午前9時01分】






唯(45)「おーい、朝だよ〜」

唯の息子(15)「う〜ん……zzz」
57 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:08:28.28 ID:TaOAbahR0

唯「ほら、こーちゃん。今日は大事な日なんじゃないの?」

子「うん……? 大事な日…………」ムニャムニャ


子「あ、やべ! 今日はデートじゃん!」

唯「ほら、さっさと起きる!」


子「うわわわ!」
58 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:09:25.69 ID:TaOAbahR0

子「っていうか、イマ何時?!」

唯「9時を少し回ったとこ」

子「よかった、セーフ……」ホッ

唯「でもでも、準備があるから余裕はないよ」

唯「まずは顔洗って、ボサボサ頭を整えて、朝ごはんを食べちゃって!」

子「おー」
59 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:10:23.89 ID:TaOAbahR0

唯「お、来た来た。遅いよ〜!」

子「やー、なかなかセットが決まんなくて」

唯「まったく。この子はモー……」


唯「ホラ、ごはん用意したげたから、さっさとする!」

子「サンキュー、母ちゃん! いただきまーす!」
60 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:11:31.79 ID:TaOAbahR0

子「うめー」モグモグ

唯「うふふふ」


唯「ねーねー、こーちゃん?」

子「ん、何?」


唯「今日のデート相手って、確か同じバンドのベース少女ちゃんだっけ?」

子「や、何べん言わすんだよ。同じ部の先輩。3年生で、担当はドラム!」

唯「あー、そっかそっか。そーだった!」




唯「ねーねー。因みにどんなコ? かわいい??」

子「う、うん。めっちゃいい人だし、すっげーカワイイひと、だよ///」

唯「ほほー、いいですなぁ……///」
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/01(月) 01:13:21.74 ID:TaOAbahR0

唯「ねーねー。今日のデートだけどさぁ……」

子「?」

唯「その、母ちゃんも、一緒に同伴しちゃ、ダメかな???」

子「…………絶体ダメ! なにいってんだアンタ!!」


唯「だったら、こっそり尾行しつつ、記念のビデオ撮影とか…………」

子「……カンベンしてくれよ。付いてくんな!」シッシッ

唯「ヴー、けち〜」

子「まったく……」
62 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:14:02.70 ID:TaOAbahR0

唯「しかしまー、感慨深いなー」

子「えっ、何が?」


唯「私の子も、自分と同じく高校から軽音部入ってバンド組んだとか。やっぱ遺伝だなーって」

子「……まぁ軽音部っていうか、あれだけど」


子「…………なぁ母ちゃん?」

唯「んー?」
63 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:15:18.76 ID:TaOAbahR0

子「その、母ちゃんも昔バンドしてたって言うけど、それは本当の話なん?」

唯「ほんとほんと、大マジだよ〜」

子「え〜」

唯「『え〜』とはなにか(怒)」


子「だってさ、母ちゃんがバンドしてた風とか、練習頑張ってた様には思えねーもん」
64 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:16:29.57 ID:TaOAbahR0

唯「このー、言うようになったね〜」


唯「あれだよ、こー見えても母ちゃんは、若いときは凄腕バンドマンだったのだからっ」エッヘン!

子「……例えば、どのくらい?」

唯「デビュー曲が、ニ○ニコ動画ランキングで1位取ったり!」

子「……えぇぇ」


唯「文化祭のライブでも、母ちゃん達の演奏を聴きに、めちゃめちゃ人が集まったり……」

子「……んん、どのくらい??」

唯「……ご、五十万人くらい、だったと思う!」

子「それは、ウソでしょ?」

唯「…………すみません、これは嘘でした」
65 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:17:36.10 ID:TaOAbahR0

唯「やー、でもね。練習とかは毎日やってたんだから!ほんと!!」

子「へー」


唯「放課後に毎日集まって、みんなで一時間くらい……」

子「一時間くらい……?」

唯「……お茶会をしたり!」

子「……お茶会!?」
66 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:18:46.81 ID:TaOAbahR0

唯「その後みんなでまた、一時間くらい、お喋りしたり!」

子「お喋り!??」


唯「そんでそんで、それから練習をね、ちょっとやってた!」

子「……」


唯「……あー何か『そこはもっと練習しようよ』とか思ってるでしょ!」

子「……ん、まぁ少し」

唯「ふーんだ!」
67 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:20:00.08 ID:TaOAbahR0

唯「いいんだよ。私たちは楽しい一時を過ごせてたんだから!」

子「うん、まぁね。楽しいのが何より」


唯「……ちなみに、こーちゃんはバンドとか、楽しい?」

子「あ、俺? うん。スッゲー、楽しいよ!」


子「先輩も仲間も、みんないい人でさ。ケンカしたりもするけれど」

唯「うんうん」


子「それでも自分のやりたい事に挑戦できて、上手くいって、」

子「でも本当に本当に大事なトコは、思った通りにはならなくて」

唯「ほうほう」
68 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:20:58.41 ID:TaOAbahR0

子「大変な事も多いけど、まぁそれでも、あの場所で、あの皆と頑張っていきたいって、思ってる」

唯「おー、いいね〜。私とはゼンゼン違うけど、青春そのものだね〜」


唯「ふふふ。いいことだよー。そんな素敵な場所と、出会えた人達を、大切にしてね!」

子「……あぁ」

唯「きっと、きっとね!」
69 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:22:38.26 ID:TaOAbahR0

唯「自分が望む場所で頑張れたって思い出と、一緒に過ごした仲間との思い出は、」

唯「この先ずっと、自分を支えてくれる、人生の宝物になるから……」

子「……かーちゃん、いいこと言うなぁ」




唯「あー、でも楽しいコトだけじゃ駄目だよ〜」

子「うん?」

唯「しっかり勉強もして、将来できたら、お堅い職業に就きなさい!」

子「あぁ、分かってるよ〜」
70 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:24:24.14 ID:TaOAbahR0

唯「ま、とにかく今日のデート頑張って!」

子「おっと、そろそろ出発の時間だな」



唯「それじゃ、あーゆーれでぃ?」

子「いえっさー!」



唯「服装や髪形!?」

子「バッチリ!」


唯「ハンカチにティッシュ!?」

子「ポケットに!」


唯「デートプランは!?」

子「一週間、練りに練った計画と、そのメモ帳!」サッ

唯「よろしい!」
71 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:25:27.67 ID:TaOAbahR0

唯「最後に、お財布と携帯は?」

子「どっちもココに……って、ああヤベー!」

唯「どしたの?」

子「ケータイの充電が、もう10%もない!」


唯「また!? 寝る前に充電しときなさいって言ったじゃん!」

子「ああああ、どーしよー」

唯「まったくモー、この子ったらホント残念系男子なんだから」ヤレヤレ

子「……母ちゃんには言われたくねーよ」
72 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:26:45.90 ID:TaOAbahR0

子「まぁいいや。充電なくても問題ないっしょ」


唯「あれ、もう行くの?」


子「あぁ、帰りはあんまり遅くなんねー様にするから!」


唯「はいはい。気をつけてね。いってらっしゃーい!」ノシ

子「行ってきまーす!」ノシ


ガチャッ バタン!

タッタッタッタッタッ♪



唯(ふふふ、楽しそうな足音を鳴らして走ってった♪)

唯(……さてさて)

唯(それじゃ、私も出掛けますか〜)
73 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:28:03.82 ID:TaOAbahR0

【駅前・待ち合わせ場所】

子(ちょっと、早く来すぎたかな……?)






ガサゴソ

唯(ふふふ、植え込みの陰から、コッソリ観察……)
74 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:29:50.22 ID:TaOAbahR0

唯(いやー、あの子には来るなって言われたケド、)

唯(こればっかりは、譲れないなー。デートの様子見!)

唯(……将来、ウチにお嫁にくるコかもしんないし♪)

唯(途中までなら、付いてっても、バチは当たらないよ、ね???)



ガサゴソ

唯(確かデート相手って、いい人でカワイイ、同じ部で3年生の先輩らしいけど)

唯(どんなコだろうなー、楽しみだなー)ワクワク





子「き……緊張する……」ドキドキ
75 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:30:58.90 ID:TaOAbahR0

美少女「おまたせ〜。待った?」

子「!」





ガサゴソ

唯「ふ、ふおおおおおお!」
76 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:32:10.40 ID:TaOAbahR0

子「先輩……その、今日も一段とカワイイっす!」

美少女「そ、そぉ?」


子「今日はよろしくお願いしま〜す!」ドゲザー

美少女「あ、や、こちらこそ!」


美少女「男の子と出掛けるなんてあんまりないから、ちょっと服とかも考えちゃったけど」

美少女「よかった〜、へへー」クルッ




コソコソ

唯「……」


唯(あ、あの美少女が、デート相手の先輩!?)

唯(ふわっとした金色の長い髪、年上なのに小さくって……!)

唯(なんていうか、こう。お人形さんみたい!メッチャかわいい!!!)
77 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:33:39.20 ID:TaOAbahR0

子「オレもいろいろプラン立てました! 頑張りますよ〜!!」

子「映画でも、遊園地でも!!」

美少女(張り切ってる……)


子「まずは……映画か……」

美少女(あんまり、寝てないのかな……)


子「えーと、そうすると…………」

美少女(ホント……いつも一生懸命でかわいいなぁ……)クスッ


美少女「一緒ならドコでもいいよ、お任せする!」

子「ハ……ハイッ!」


コソコソ

唯「……」
78 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:34:47.47 ID:TaOAbahR0

唯(あ、あんな美少女さんを捕まえられるなんて……)

唯(我が息子ながら、おそろしいコ!)



子「映画、まだ時間ありますね〜」

美少女「どうする?」

子「あ、ゲーセン!」




唯(お、移動するみたい)

唯(私もついてこ)コソコソ
79 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:35:50.52 ID:TaOAbahR0

J( 'ー`)し「……」





J( 'ー`)し「……」コソコソ
80 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:37:22.67 ID:TaOAbahR0

【ゲームセンター】


美少女「UFOキャッチャー、いける?」

子「任せてください!」


ウィーン ウィーン!


ガシャガシャ! ガシッ♪


美少女「お……お……!」

ウィーン……ガタン♪

2人「やったー!」

子「やりました〜!」


子「センパイ!どうぞ!!」

美少女「ありがとう! 大事にするね!」
81 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:38:10.25 ID:TaOAbahR0

唯(……おお、今のはポイント高いよ)

唯(ぐっじょぶ!)







J( 'ー`)し「……」


J( 'ー`)し b
82 :1 [sage saga]:2018/01/01(月) 01:39:36.45 ID:TaOAbahR0

【洋服屋】

子「センパーイ! このワンピースとかどうすか!?」

美少女「ほほぅ……」


〜試着〜


ワンピース少女「フムフム、どうかね?」

子「先輩!いいっす!! 」

子「あ、こっちも」


〜試着〜

ボーイッシュ少女「こんなのは?」

子「先輩いいいっっす!」

子「ああ、アレもいい!」

ボーイッシュ少女「え、まだやるの?」
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