千歌「ラストクリスマス」曜「特別な君へ」

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1 : ◆PChhdNeYjM :2017/12/25(月) 02:05:04.91 ID:C2hlEurIO
―――




千歌「ハー……」

曜「うぅ、寒い」

千歌「息が白いねー」

曜「なんでこんな日にバイト入れちゃったかなあ」

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2 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/12/25(月) 02:07:05.00 ID:C2hlEurIO
千歌「だって、1年……2年生ズはクラスのみんなにお呼ばれしてるっていうし、梨子ちゃんはパーティーのピアノを任されちゃったって言ってたし」

曜「何もない私たちは仕事するしかないか……悲しいね」

千歌「すごいよ、よーちゃん。どこを見てもカップルばっかり」

曜「そりゃあ、こういう日は好きな人と過ごしたいよねえ」

千歌「はぁ……私も、一度でいいからしてみたかったなあ」

曜「何を?」

千歌「決まってるでしょ? カップルイベント」

曜「だよねー」

千歌「梨子ちゃんばっか告白されて……私たち、何もなかったもん」

曜「でも、1年間ずっと断り続ける梨子ちゃんも不思議だよね。中には、サッカー部のキャプテンもいたって話だよ」

千歌「梨子ちゃん、留学しちゃうからかな」

曜「あー……多分そうかも」

千歌「遠距離恋愛、したくないもんね」

曜「うん。離れてると、やっぱり辛いし」


千歌「――ほら、よーちゃん。ちゃんとケーキの宣伝しないと!」

曜「あ……うん。そうだね」
3 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/12/25(月) 02:07:48.45 ID:C2hlEurIO
―――




店長「いやー、君たち2人がいてくれて助かったよ。毎年この時期は人手不足でさ」

千歌「いえ、いいんですよ。私たち暇ですから」

曜「そうそう、一緒に過ごす恋人もいないですし」

店長「独り身は寂しいよねぇ。ま、おふたりさん美人だし。きっといい人も見つかるって」

千歌「美人なんて、そんな……」アハハ

曜「……千歌ちゃん、帰ろ?」

千歌「あ、うん……お疲れ様でしたー」
4 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/12/25(月) 02:08:39.17 ID:C2hlEurIO
―――




千歌「うわあ……結構もらえたね」

曜「クリスマスだからね。時給も高く設定されてるんだよ」

千歌「えへへ……なに買おうかな」

曜「あんまり使いすぎちゃダメだよ? いくら実家暮らしだからって」

千歌「はーい、気を付けまーす」


曜「千歌ちゃん。このあと予定空いてる?」

千歌「ん? そりゃあ、特になにもないけど……」

曜「ちょっと寄りたいところがあるんだけど、いいかな?」

千歌「いいよ。でも、あんまり遠くには行けないよ? こんな時間だし」

曜「わかってるわかってる。ほら、こっちだよ」
5 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/12/25(月) 02:09:10.19 ID:C2hlEurIO
―――




千歌「ここ、レストランじゃん……」

曜「そうだよ。さ、中に入ろ?」

千歌「え、ちょっと……すっごく高そうだよ? それに、予約しないと入れないんじゃ……」

曜「心配しないで、私に任せて」

千歌「へ……よーちゃん?」


店員「いらっしゃいませ」

曜「渡辺です」

店員「はい、渡辺様ですね。お待ちしておりました」


千歌「え、ちょ……えぇ?」

曜「ほら、千歌ちゃん」グイッ

千歌「わわっ……」
6 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/12/25(月) 02:09:53.73 ID:C2hlEurIO
ストン…


店員「ご注文はBコースでよろしかったでしょうか」

曜「はい、よろしくお願いします」

店員「かしこまりました」


千歌「……」ポカーン

曜「どうしたの、千歌ちゃん?」

千歌「いや、どうしたのって……なに、これ?」

曜「なにって、レストランだけど」

千歌「え……でも私、今バイト代しかないし」

曜「私に任せてって言ったでしょ?」

千歌「えっと……説明してほしいかも」

曜「何を?」

千歌「だから、その……どうしたの、これ。何かのサプライズ?」

曜「……まあ、そんなところ。イヤだった?」

千歌「イヤっていうか、寧ろ嬉しい……はずなんだけど。ちょっとまだ整理できてないかな……」

曜「そっか……そうだよね」
7 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/12/25(月) 02:11:47.72 ID:C2hlEurIO
曜「――あのね、千歌ちゃん。私、話しておきたいことがあって」

千歌「うん」


曜「私……高校を卒業したら、東京の大学に行くことにしたんだ」


千歌「うん、知ってるよ?」

曜「だよね……その、スポーツ推薦もらっててさ。オリンピック選手を目指さないかって話、持ち掛けられて。正直……かなり迷った」

千歌「どうして? よーちゃんなら、絶対行くって言うと思ってたのに」

曜「自信無いってわけじゃないけど……ただ」

千歌「ただ?」

曜「……スクールアイドル、どうしようかなって」
8 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/12/25(月) 02:12:35.51 ID:C2hlEurIO
千歌「――そんなの、決まってんじゃん」

曜「え?」

千歌「私たちのスクールアイドルは、もう終わったんだよ」

曜「……」

千歌「私たちはあの時、誰もが全力だった。みんな輝いてた。……でも、終わりは必ず訪れる」

曜「……うん」

千歌「でも、終わりが来れば、また何かが始まる。私たちは、別の輝きを見つけに行くんだよ」

曜「うん」

千歌「それぞれ、歩く方向は違うかもしれないけどさ。でも、きっといつまでも忘れない。私たちが、あの時あの場所で、一緒に輝いていた証は……私たち自身の胸に、いつまでも残ってる。それが消えてしまう事は、絶対にない」

千歌「だから……よーちゃんは、よーちゃんの道を進めばいいんだよ」


曜「うん、わかってる」
9 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/12/25(月) 02:13:42.80 ID:C2hlEurIO
千歌「……フフッ、らしくないこと言っちゃったね」

曜「そんなことないよ。千歌ちゃん、割と頻繁にそういうこと言うから」

千歌「えぇ? そうかなー」

曜「そうそう」


店員「お待たせいたしました」


曜「あ、はーい」
10 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/12/25(月) 02:14:10.47 ID:C2hlEurIO
―――




千歌「すごい……このアイス、雪みたいに溶けるよ」

曜「流石に人気レストランだけあって、どの料理も信じられないくらいおいしかったね」

千歌「はぁぁぁ……チカ、こういうところ、生まれて初めて来たよ」

曜「えへへ、実は私も」


千歌「――ありがとね、よーちゃん」

曜「うん?」

千歌「私、今日のこと一生忘れないよ」

曜「……ホント?」

千歌「ホント。素敵なクリスマスプレゼントだった」
11 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/12/25(月) 02:14:40.04 ID:C2hlEurIO
曜「あのね、千歌ちゃん」

千歌「うん」

曜「プレゼントは、また別に用意してあるんだ」

千歌「別に……?」


店員「――こちらで、お間違えないでしょうか」

曜「はい……ありがとうございます」


千歌「え……どうしたの、これ」

曜「開けてみて。千歌ちゃんに、私からの……ささやかなクリスマスプレゼント」
12 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/12/25(月) 02:15:36.84 ID:C2hlEurIO
千歌「……わああ、綺麗」

曜「でしょ? 千歌ちゃんなら、絶対気に入ると思って」

千歌「でも、これ……指輪だよね?」

曜「うん。って言っても、ペアリングだけどね。そんなに高くないやつ」

千歌「えっと……」


曜「あのね、千歌ちゃん」

千歌「う、うん」

曜「去年、私言ったじゃん。『おばあちゃんになるまで、一緒にやろっか』って」

千歌「……うん、覚えてるよ。今でも」

曜「なのに私、来年からは千歌ちゃんと一緒にいれなくなるから」

千歌「そうだね……」

曜「だからさ。それ、千歌ちゃんに持ってて欲しいんだ」

千歌「私に?」

曜「その……イヤだったら、別にいいんだけど」

千歌「……ううん、イヤじゃない。ずっと持ってる。大切にするよ」

曜「そ、そっか……よかった」
13 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/12/25(月) 02:16:12.30 ID:C2hlEurIO
千歌「あの……よーちゃん」

曜「うん?」

千歌「どうして、ペアリングなの?」

曜「それは……その……千歌ちゃんが、私のこと忘れないようにって。私もずっとつけて、忘れないようにするからさ」

千歌「本当に……それだけ?」

曜「えっと……」

千歌「それだけじゃ、ないよね」

曜「う……」

千歌「だって、こういうのって……恋人同士でするじゃん」

曜「うぅ……///」

千歌「そういう意味で……いいんだよね?」
14 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/12/25(月) 02:17:31.23 ID:C2hlEurIO
曜「……うん」


曜「あの、千歌ちゃん」

千歌「……はい」


曜「――好きです」


曜「ずっと、ずっと好きです。小さい頃から、ずっと……そして、これからも」

千歌「……うん」

曜「……私、いつか必ず迎えにくるから。だから……それまで、待っててくれますか?」

千歌「よーちゃん」

曜「う、うん……」


千歌「――私も、好き」


曜「……え?」

千歌「プレゼント、すっごく嬉しいよ。よーちゃんが迎えに来てくれるその日まで、ずっと大切にする」

曜「千歌ちゃん……」


千歌「だから……待ってます。いつまでも」
15 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/12/25(月) 02:18:02.97 ID:C2hlEurIO
―――




曜「……じゃあ、また明日」

千歌「うん」


曜「――待って、千歌ちゃん」

千歌「え?」


曜「その……私たち、恋人……に、なったんだよね?」

千歌「……うん、そうだね」

曜「ホッ……その、えーっと……」


千歌「――恋人っぽいこと、する?」
16 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/12/25(月) 02:18:50.98 ID:C2hlEurIO
曜「あ……うん、したい」


千歌「……実は、私もしたかったり」


曜「千歌ちゃん……」

千歌「よーちゃん」


曜「……///」ドキドキ

千歌「えっとぉ……いきなりキスとかは、やっぱり恥ずかしいね……///」

曜「そう、だね……」


千歌「じゃあ、手……繋ごっか」

曜「手?」

千歌「あ、でも……いつも繋いでるし、新鮮味はないかな?」


曜「……ううん、そんなことない」


ギュッ…



曜「……///」ドキドキ

千歌「う……ぅ……///」
17 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/12/25(月) 02:19:26.64 ID:C2hlEurIO
曜「なんか……すっごく恥ずかしいかも」

千歌「意識すると、やっぱり……ね」

曜「……千歌ちゃん」

千歌「うん」

曜「卒業して、離ればなれになるまでに……いっぱい思い出作ろうか」

千歌「うん……2人だけの思い出」


曜「――じゃあ、今度こそ」

千歌「うん……バイバイ、よーちゃん」



曜(はああああああ……心臓バックンバックンいってるよ)

曜(こんなんで、キスまでいけるのかなあ……)
18 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/12/25(月) 02:20:49.87 ID:C2hlEurIO
曜「はぁ……」


タッタッタッ


曜(うん? 足音……)


チュッ


曜「へ?」

千歌「……えへへ。私からも、クリスマスプレゼントだよ」

曜「千歌ちゃん……今、なにを……」

千歌「やっぱ、しときたいかなって……ほっぺただけど」

曜「……」ポカーン


千歌「じゃ、またね!」


千歌「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜///」パタパタ



曜「え……え?」


曜(今……ほっぺたに何か、柔らかいものが……)


曜「……っ!!」カァァァァァ

曜「う……うそっ……千歌ちゃ……ええええええええええっ!!///」
19 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/12/25(月) 02:21:22.27 ID:C2hlEurIO
END
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/25(月) 08:23:29.54 ID:ZMp+P6wSO
やっぱり曜ちゃんはヘタレるんだな
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