加賀さんが瑞鶴を赤面させるだけ

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123 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/11/26(月) 03:05:22.46 ID:rI4LjhNl0





時間を惜しんで出撃したのが功を奏して、救援は間に合った。

装備を整える時間はなかったけれど、敵空母の位置が判明していたのも運がよかった。
制空権を獲れば追撃を気にしなくて済む。

航空隊で敵を牽制して、タンカーを先に離脱させる。その後は、護衛をしていた遠征の水雷戦隊。


「――神通は観測機の情報を艦隊に送って、退避を援護して」

「朧、秋雲はそのまま対潜警戒に集中。敵艦の相手は私と瑞鶴に任せなさい――」


加賀さんは強い。

今だって航空隊に指示を送りながら、全艦隊の位置まで気を配っている。
掛け値なしに優秀だ。欠点などないように見える。
124 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/11/26(月) 03:07:51.66 ID:rI4LjhNl0

でも私は、強いだけではない加賀さんも知っているのだ。

そうだ。なぜ、加賀さんの寂しそうな笑顔が、頭から離れなかったのか。


――頼ってほしかったからだ。


何か悩み事があるなら、話してほしい。私も貴女の力になりたい。

我ながら、思い上がりも甚だしくて笑ってしまう。
歴戦の正規空母に対して、たかだか建造されて数か月の新参者に頼ってほしいなどと。


それでも――加賀さんが苦しんでいるなら、分かち合いたい。支えになりたい。

そう思っていたのに。
125 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/11/26(月) 03:14:34.74 ID:rI4LjhNl0

気付いた時には体が動いていた。

艤装が損傷して遅れ始めていた駆逐艦。
その背中に、敵が砲門を向けるのが見えたのだ。
私は思い切り体を捻って方向転換し、その子を突き飛ばして――


「がっ――ガボッ」


腰部艤装に直撃した砲弾は、簡単に私の体を吹き飛ばし、無様にも顔面から海に突っ込ませた。
すぐ体勢を整えようとする、しかし出力が上がらない。機関部が損傷したのだから当然だけど。

そこへ、狙い澄ましたかのように敵の爆撃隊が急降下してきた。
いや実際に狙っていたのだろう、今度は脚部の艤装を的確に破壊した。敵ながら天晴れな腕ね。


「――瑞鶴っ!?」


かろうじて顔を上げると、敵を吹き飛ばした加賀さんが向かってくる姿が見えた。

応えたかったけど無理だった。
完全に浮力を失った私の身体は、ごぼごぼと耳障りな音を立てて海に引きずり込まれてゆく。
126 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/11/26(月) 03:18:01.10 ID:rI4LjhNl0

応急修理女神が発動した艦娘の話を聞いたことがある。


例え轟沈の心配がないとしても、もう二度とあんな体験は御免だという。

泳ぐとか、もがくとか、そんな自分の意志とは関係なく、身体が動かなくなるんだって。

きっと軍艦の身で一度沈んだ私たちは、海の中の恐怖を、魂が覚えているんだって。
127 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/11/26(月) 03:19:37.15 ID:rI4LjhNl0

本当に怖い体験だったと思う。

きっと本当に怖いのは、沈むことそれ自体ではなく、また海の底で1人になることなんだろう。

人の身を得た私たちは、再びみんなと会えた喜びを知っている。
その温かさをもう一度手放して、また孤独に戻ること。独りぼっちになること。

そう、ひとりで、海の底は――冷たくて、さみしい。
128 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/11/26(月) 03:20:22.10 ID:rI4LjhNl0


『――瑞鶴!!』


最期の、こんな時に聴こえるのも、やっぱり加賀さんの声。
声の聴こえるほうへ、私は必死で手を差し出して……

そうだ――わたしは――ひとりじゃ――
129 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/11/26(月) 03:24:44.96 ID:rI4LjhNl0




「ぷはーっ! ――まったく、2人ぶん引っ張り上げる身になるでち!! 早く支えて、水吐かせて!!」

「げほっげほっ……瑞鶴! 瑞鶴しっかりして!」

「加賀さんもしっかりするんだよ、自分から艤装外すなんて無茶して!!」

「秋雲、色々言うのは後。一か所に集まってるのは危険……たぶん」

「すぐ煙幕を焚いて! 二人は曳航の準備をしてください――ゴーヤさん、私とお付き合い願います」

「できるだけ長く足止めするでち、神通。朧、秋雲! 加賀さんには言いたいことがたくさんあるから、しっかり――」



「――瑞鶴、――!!」

「……か……が、さ」


なんだ……加賀さん、泳げたんじゃない。

薄れていく意識の中で、なぜかそんなことを思った。
130 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/11/26(月) 03:28:06.81 ID:rI4LjhNl0

スレ立てから1年とは信じられないですね、書くスピードの遅さに……
ほとんど書き終わってるので今週投下します。


>>122
ありがとうございます。
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 03:13:23.42 ID:eWqqrXCeo
乙乙
待ってるで
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/11/27(火) 06:36:48.99 ID:xZfLNEs2O
今週投下しますといって投下した人は
ほぼいない模様
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 20:09:13.80 ID:JYK27gEh0
鯖の長期クラッシュで去った作者も多い中帰ってきただけでも僥倖
134 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 02:14:46.40 ID:Ip2n0Icw0





瑞鶴「……ん……?」

「――あら、目が覚めましたか。良かった」

「何があったか覚えてます? 加賀さんが艤装を外して海に飛び込んで――」

「2人してゴーヤさんに引っ張り上げてもらったんですって、ふふっ。あとでお礼を言っておいてくださいね」

瑞鶴「覚えてます……ここは?」

「修理ドック併設の医務室です」

「ああ、そういえばここに入るのは初めてでしたね。貴女、被弾したことがなかったから」

瑞鶴「私を知ってるんですか? 貴女は?」

「昔、ここで働いていたものです。今は施設の管理人みたいなことをしてますが」



「――かつては航空母艦、赤城と呼ばれていました」

瑞鶴「え……あ、赤城さん!?」
135 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 02:16:40.57 ID:Ip2n0Icw0

赤城「ああ、寝たままでいいですよ。無理しないで」

瑞鶴「……ごめんなさい」

赤城「初めまして、瑞鶴。こんな形になってしまいましたが、会えて嬉しいです」

瑞鶴「あの、赤城さんはずっとここに? 鎮守府のほうには行かないんですか?」

赤城「ええ、私は艤装を解体していますから。見ての通り車いすですし、普段は裏方に回ってます」

赤城「だからいきなり、貴女が担ぎこまれてきたのは驚きました」

赤城「とても心配していましたよ、皆さん。いい報告ができそうで良かったわ」
136 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 02:18:09.99 ID:Ip2n0Icw0

瑞鶴「……加賀さんも?」

赤城「ええもちろん。一番に報告しないとね」


瑞鶴「……赤城さん。なにが、あったんですか」

赤城「え?」

瑞鶴「加賀さんが赤城さんのことを、特別に思ってるのはなんとなくわかります」

瑞鶴「でも、加賀さんは話してくれないので……まだ新参の私が、首を突っ込むのもあれなんですけど」

瑞鶴「加賀さんが思い悩んでいるなら、私も力になりたいんです」

赤城「新参かどうかは関係ありませんよ。同じ鎮守府の仲間なんですから」


赤城「――それにしても、目が覚めて最初に聞くのが加賀さんのこと? 本当に好きなのね」

瑞鶴「え!? いえ別に好きとかそういうのでは」

赤城「まあ、加賀さんが話したくないのも、ちょっとした事情があるんですよ」
137 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 02:21:54.51 ID:Ip2n0Icw0


まだ私が、艦娘として働いていたころの話です。


他の鎮守府の艦隊が遠征の帰還中に、敵の艦載機に触接されたと報告が入りましてね。
遠征は、比較的安全な航路を選んで行われますが……深海棲艦の名の通り、敵は突然、海の奥底から湧き出でることがあります。

さらに悪いことに、相手は姫級らしい――とのこと。


あの時私たちは、その帰還中の近くの海域で演習中でした。
着任したばかりの加賀さんと翔鶴を、私と鳳翔さんで教導していたのです。
138 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 02:24:20.35 ID:Ip2n0Icw0

SOSを受信したとき、それはそれは焦りましたよ。
なにぶん演習中で、実弾を装填済みなのは、随伴の神通さんと秋雲さんだけでしたから。

私たちの艦載機ですが、爆弾や魚雷は演習用のものでした。
今から換装を始めても、姫の相手には不十分な数しか揃えられないでしょう。

このことがあってから、提督は演習時も半分は実弾を装備させているんですけど……まあそれは後の話で。


提督は、鎮守府に残っていた他の子たちをすぐに出撃させて――
私たちの扱いにずいぶん悩んだようです。

本来、姫級は全鎮守府の総力を持って当たるべき強敵ですから、発見即撤退が基本です。演習中ならなおさらですよね。
ただ今回は、すぐ近くに味方の艦隊が助けを求めていましたから。


提督も複雑な立場ですよね。
不十分な戦力のまま敵に当たるのは愚策です。でも救援を出さなければ、後日それをどんな形で責められるかわかりませんし。


見捨てて帰るという選択肢が、誰の口からも出なかったというのが、我が艦隊最大の欠点で――いいところだとも思うのですけれど。
139 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 02:28:07.28 ID:Ip2n0Icw0

時間に余裕はありませんでした。

姫級になると思考能力も高度になり、今までの常識が通じないことがあります。
こちらを狙って進路を変えてくることも十分に考えられたのです。

そうなると私たちの演習用装備では、艦隊を守り切れません。

加賀さんも翔鶴も、「自分も戦う」と申し出ましたが――鳳翔さんが許しませんでした。
正規空母とはいえ練度の低いまま姫と対峙するのは、流石に相手が悪すぎます。



――その2人ですか?
鳳翔さんの剣幕に押されて、先に帰投しましたよ。不承不承、ではありましたが。

帰ることも、大切な仕事なんですけどね。



提督を説得して、私と鳳翔さん、神通さん、秋雲さんで救援に向かいました。

艦戦隊は上空直掩に専念。
砲雷撃は最大射程で行い肉薄は厳禁、絶対に深追いしない……という条件付きで。
140 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 02:33:41.58 ID:Ip2n0Icw0

増援が来るまで、時間を稼ぎに稼いで、なんとか外洋まで押し返すことには成功しましたが――

不覚にも、直撃弾を受けてしまいましてね。

そう、ちょうど貴女と同じ場所ですよ。腰の艤装のところに爆撃を。
ドックでは外傷はすぐに治ったのですが、艤装との接合部が深刻な状態だったようで。


下半身と利き腕が、うまく動かなくなってしまったのです。


艤装は基部に歪みが出たせいで、修復しても強度に問題があるとのことでした。

それなら思い切って解体して、新しく作ったほうがいいだろうと。
慣れ親しんだ艤装とお別れするのはちょっと寂しかったですけど、命には代えられませんしね。



帰ったあとは大変でしたよ。
加賀さんも翔鶴も大泣きしましてね、ずーっと私に謝ってました。
私たちが弱かったせいで、と。

そのあと鳳翔さんが一喝して収まったんですけど。
いつまでも泣いてばかりじゃ私も心配でしたから。
141 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 02:38:40.01 ID:Ip2n0Icw0

そもそも一生残る後遺症というわけではないんですよ。
何回か手術とリハビリを繰り返せば、日常生活は問題なくできるとのことなので。

それまでは、鎮守府の諸々の雑用をこなさせてもらってます。
また弓を引けるようになる頃には、うーん。筋力が落ちてそうですね。



――え? ああ、この指輪ですか。

当時はケッコンカッコカリの指輪が届いたころで、提督は私に渡してくれる、と言ってくださっていたんですけど。
ほら、艤装を解体したら、練度の上限突破も、燃費の向上も意味がないじゃないですか。

だから、えーと、その。――本物の指輪をもらって、結婚しちゃいました。えへへ。

何回か、加賀さんが夜に寮を抜け出す日があったでしょう?
あの人の帰りが遅くなる日は、加賀さんが私たちの部屋に来て、家事を手伝ってくれるんですよ。
142 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 02:45:08.60 ID:Ip2n0Icw0

まあ、そんなことがありまして。

加賀さんと翔鶴は鍛錬を重ねて、この鎮守府を守ってくれてます。
2人とも、昔の私より実力は全然上なんですけど、何かと気遣ってくれて面はゆいですね。



前に加賀さんが赤い袴を着けていたことがありましたよね。

実はあれ、私のなんですよ。
体格も似てるし、捨てちゃうのももったいないですから。

私はしばらく使わないので、いつでも着ていいと言ってたんですが……
まあ、恥ずかしがってめったに着てくれないんですよね。

あの日は朝からそわそわしていたわ、貴女とおそろいが嬉しかったのかもね。



――洗濯が間に合わなかったって?

はあ、そんなことを言いながら着てましたか。
同じ日に瑞鶴のも洗濯してるのに、加賀さんのだけ乾かないわけはないでしょう?

単に照れ隠しの言い訳です、言い訳。
143 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 02:48:22.65 ID:Ip2n0Icw0

鳳翔さんは、普段は出撃せずに、機動部隊の演習を指揮してくれてます。

妖精さんが撃墜されると、命を失うことはない代わりに、今までの経験の記憶がなくなってしまいます。
つまり、今まで磨いた操縦技術――熟練度が失われることになります。

だから航空隊の練度向上はもちろん、撃墜時のトンボ釣りを重視してくれてますね。
妖精さんたちもすごく信頼してるみたいです。

加えて、食事処の運営も。
ああいった楽しみがあると、是が非でも無事に帰ってきたいと思うんですよね。


出撃しないといっても、戦わないわけじゃないんですよ。
整備も鍛錬も、毎日欠かしていないみたいですし。文字通り最後の砦ですね。

私は共に戦っていましたけど、鳳翔さんより強い人は見たことがありませんね、今の加賀さんたちも含めて。
今の体制になるにあたって、鎮守府の機動部隊は鳳翔教官のもと、猛訓練したんですけど――


そのかいあって、私が抜けても戦力的に何ら問題ないくらい、皆さん成長していらっしゃいます。誇らしいですね。
144 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 02:50:06.01 ID:Ip2n0Icw0


赤城「――加賀さんが瑞鶴に言わなかったのは、戦えなかった自分に、まだ責任を感じているからかもしれませんね」

赤城「問題なのは加賀さんの練度ではなく、ただ時期が悪かっただけで。私も何度も言ってるんですけど」

赤城「ほら加賀さん、頑固なところがありますから。ね?」

瑞鶴「そう、ですね。そうかもしれないです」

赤城「さっき瑞鶴は、加賀さんが私のことを特別だと思っていると言ってましたけど」

瑞鶴「はい。赤城さんのことを話してる加賀さん、すごく穏やかで、優しくて」
145 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 02:51:28.57 ID:Ip2n0Icw0

赤城「あら、そんなことありませんよ、瑞鶴」

瑞鶴「え?」

赤城「だって加賀さん、私と会っても、最近は貴女の話題ばっかりですもん」

赤城「『見どころのある子が入ってきた』とか、『努力を怠らない、向上心もあっていい子だ』とか」

赤城「私のほうが聞いてて嫉妬しちゃうくらいです、うふふ」

瑞鶴「え、あ、そ、そうなんですか……でも、あんな柔らかい表情は」

赤城「そう見えたなら、そんな顔を見せるぐらい、信頼されていると思ってください」
146 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 02:52:43.56 ID:Ip2n0Icw0

赤城「さっき、家事の手伝いに来てくれていると言ったけれど――」

赤城「ただ最近は、その手伝いの頻度も上がってきていてね。疲れがたまってるのに無理しないでください、って何度も言ったんですが」

赤城「きっと張り切ってたんでしょうね、貴女が来て。私には後輩の指導方法とか、いろいろ聞きに来ていました」

赤城「加賀さんは真面目で冷静に見えて、すぐに熱くなっちゃうから。力の抜きどころがわからなくて、すぐに無茶するのよ」

瑞鶴「…………」


赤城「――だから瑞鶴。貴女がちゃんと、加賀さんを見てあげてね」

瑞鶴「……はい!」
147 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 02:55:36.66 ID:Ip2n0Icw0

赤城「さて、修復は終わっているので、もう退院して大丈夫ですよ。加賀さんを連れて行ってあげてね」

瑞鶴「え、連れて行く?」

赤城「ふふ、気付かなかった? 部屋の隅ですよ」

瑞鶴「え? あ――」

加賀「zzz……」


瑞鶴「……ありがとう、加賀さん」
148 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 03:00:28.67 ID:Ip2n0Icw0





提督「瑞鶴!! 申し訳なかった、私の判断ミスだ!!」

瑞鶴「そんな、気にしないで。提督さんは救援要請に応えただけじゃないの」

赤城「戦闘詳報と日誌を作成しますから、加賀さんとよく話してくださいね」

加賀「もっと他に選択肢はなかったのか、編成の判断は正しかったのか、しっかり聞かせていただきます」

提督「う……お手柔らかに頼む……」


赤城「あら、他の人のほうがいいですか?」

加賀「なら鳳翔さんにお願いしておきま――」

提督「加賀でお願いします!!」

瑞鶴「即答!? 昔何があったのよ提督さん!」
149 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 03:02:17.79 ID:Ip2n0Icw0

翔鶴「ず゛い゛か゛く゛!゛!゛ よ゛か゛っ゛た゛!゛!゛  び゛ぇ゛ぇ゛え゛え゛え゛え゛!゛!゛!゛!゛」

瑞鶴「ちょ、翔鶴姉! 大げさだよ」

朧「翔鶴さんは……瑞鶴さんが目覚めるまでの間、妹のかたき討ちと称して毎日出撃していました」

瑞鶴「え、そうなの!?」

朧「先日の救援に翔鶴さんの戦果を合わせて、提督には勲章が2つ贈られるみたいです」

瑞鶴「数日でそれって、どれだけ無茶な出撃だったの……」



秋雲「」チーン

初月「」チーン

朧「そして、その無茶な出撃に付き合わされた後のものがこちらです」

瑞鶴「ご、ごめんね。そりゃ1人で出るなんて言われたら断れなかったよね……ご飯おごるから」
150 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 03:04:32.63 ID:Ip2n0Icw0

秋雲「まったくパクパク……加賀さんと翔鶴を……モグモグあそこまで泣かせるとはねぇ」

初月「その通りだ……ムグムグ、あまり母上に心配をムシャムシャ、かけてはだめだぞ」

瑞鶴「加賀さんのその呼び方、まだ続いてたの」

翔鶴「2人とも、飲み込んでからしゃべりなさい。料理は逃げませんよ」

伊58「大吟醸おかわりくださーい。あと大トロの炙り焼き、松茸の土瓶蒸しと比内地鶏の親子丼――」

瑞鶴「ちょちょちょっと!! それ接待用の最高級メニューじゃないの!!」

伊58「命が助かったんだから安いものでしょ。味わえるのも生きてるからこそでち」

瑞鶴「ぐぬぬぬぬ」
151 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 03:07:00.89 ID:Ip2n0Icw0

神通「瑞鶴さん、身体はもう大丈夫ですか」

瑞鶴「うん、心配かけてごめんね」

加賀「ところで、どうして私たちが呼び出されたのかしら」

神通「今回の一件、お二人を鍛えた教官として不徳の致すところ。鍛え直して差し上げようかと」

瑞鶴「えっ? いくら教官でも、正規空母2人と戦うなんて無理なんじゃ」

加賀「……甘く見られるのは、あまり好きではないのだけれど」

神通「慌てないでください。昼戦の相手は私じゃありません」
152 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 03:08:27.19 ID:Ip2n0Icw0

神通「ご本人たってのご希望で参加していただいた――」

神通「鳳翔先生です」

鳳翔「かかってらっしゃい。2対1で結構」

加賀「えっ」

鳳翔「あまり心配をかけさせられるのも嫌ですから。久々に航空戦の腕を見せてもらいます」

神通「そのあとは私と夜戦演習です。もちろん発艦は危険ですから、避けるだけでいいですよ」

神通「――避けられるものなら、ですが」

瑞鶴(あっこれ死んだ)
153 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 03:09:41.62 ID:Ip2n0Icw0


加賀「…………」

瑞鶴「…………」

加賀「瑞鶴、生きてるかしら」

瑞鶴「なんとか……まさか明け方まで続くなんてね。私いちおう病み上がりなんだけど」

加賀「もう体は大丈夫なのね?」

瑞鶴「うん、平気平気。一日ぐっすり寝たから、もうすっかり元通りよ」

加賀「あまり心配をかけさせないでちょうだい」

瑞鶴「安心して。もうあんなこと起きないように鍛えるし」

瑞鶴「今度は私が加賀さんを守るからね!」


加賀「…………」

加賀「そう。いいけれど」
154 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 03:13:03.69 ID:Ip2n0Icw0

瑞鶴「あれー? 加賀さん、なんか顔赤くない?」

加賀「……いいえ。朝焼けのせいでしょう」

瑞鶴「まだ暗いじゃん。ねぇってばー」

加賀「頭に来ました」

瑞鶴「痛った!! いきなりデコピンなんてひどくない!?」

加賀「私を守るとは大きく出たものね。なら打たれ強さも身につけないと」

瑞鶴「こういうのとは関係ないでしょ! あんまり意地悪すると不貞腐れますよー?」

加賀「……ふふっ」


加賀「なら精進しましょう。お互いが背中を預けあえるようになるように、ね」

加賀「これからもよろしくお願いするわ、瑞鶴」

瑞鶴「……////」


加賀「あら、貴女が赤くなってるじゃない」

瑞鶴「ちっ、違いますー!! 朝焼けのせいですー!!」

加賀「ふふ。まだ暗いわよ」

瑞鶴「ちがっ、さっきより明るくなって――もー、何笑ってるんですか加賀さん!!」







加賀さんが瑞鶴を赤面させるだけ

おしまい。

155 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 03:21:02.27 ID:Ip2n0Icw0


☆追加の甘味一皿  〜特製カスタードプリン ホイップとカラメルソース〜


瑞鶴「へぇ、新しいお菓子屋さんができたんだ」

翔鶴「そうなのよ。救援した輸送艦隊と、そのあと解放した海域のおかげで、原料を仕入れられたんですって」

瑞鶴「おいしそう! でも、値段も高いんじゃ……」

赤城「そんなお二人に朗報ですよー」

瑞鶴「赤城さん?」

赤城「今回のお礼に、ペア招待券が届いてます。甘味バイキング、今日限り有効」

翔鶴「えっ、本当ですか! 嬉しい!」

赤城「…………」



赤城「おお、見よ、我が心を突き動かす数々の甘味写真を」ブツブツ

赤城「いえだめよこれはこうはいがいっしょうけんめいはたらいたおれいであって」ブツブツ

翔鶴「あの、赤城先輩?」
156 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 03:23:02.48 ID:Ip2n0Icw0

赤城「……ハッ」

赤城「早く持って行ってください、私が飛び出していく前に、さあ早く!」

翔鶴「あ、ありがとうございます赤城先輩。じゃあ瑞鶴、これから――」

神通「こんなところにいたんですか翔鶴さん、出撃のお時間ですよ」

翔鶴「」


翔鶴「き、今日はやめておきましょう。明日2倍敵を倒すから、ねっ?」

神通「旗艦が何を仰っているんです、もう全員揃っていますよ。さあお早く」ガシッ

翔鶴「待って、今日じゃないとダメなの!! 瑞鶴助けて、瑞鶴ぅううう――」ズルズル

瑞鶴「……そういえば運の改修は済んでないって言ってたわね」
157 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 03:26:20.50 ID:Ip2n0Icw0

加賀「いったい何の騒ぎ?」

瑞鶴「あ、加賀さん。良かったらこれ、一緒に行きません? 翔鶴姉にもらったの」

加賀「招待状? ……甘味、食べ放題……」


加賀「――開店と同時に突撃するわよ。すぐ準備なさい」

瑞鶴「り、了解……加賀さん、ダイエットしてたこと忘れてない?」

加賀「これは流石に――気分が、高揚します」ダッ

瑞鶴「あっちょっ! ……行っちゃった」

瑞鶴「私も準備しなきゃ。何着ていこうかな……」



瑞鶴(あれ? ナチュラルに誘ってしまったけど)

瑞鶴(よく考えたらこれって初めて2人っきりでお出かけじゃ……)

瑞鶴(////)
158 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 03:28:02.95 ID:Ip2n0Icw0

瑞鶴「うわ、初日だけあって混んでるわね。加賀さん?」

加賀「瑞鶴、手ぶらで席に着く前に甘味を運びなさい」

瑞鶴「8皿も持てないよ! レストランでも3枚くらいが限界でしょ!」

加賀「鳳翔さんのお店を手伝ってるときに、お皿運びは徹底的に叩き込まれたわ」モグモグ

瑞鶴「もう食べてる!」

加賀「テンポよくいかないとね。貴女も遠慮せず食べなさい」

瑞鶴「こりゃ翔鶴姉に悪いことしたわね。今度は私が連れてきてあげよう……」
159 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 03:29:33.37 ID:Ip2n0Icw0

瑞鶴「…………」

瑞鶴「――ねえ加賀さん」


瑞鶴「ちゃんとお礼が言えてなかったです。加賀さん、助けてくれてありがとうございました」

瑞鶴「他の子を助けたことは後悔してないけど……改めて、沈むことの怖さを実感した」

瑞鶴「今回のことを忘れないように、目標を立てようと思ったの」

瑞鶴「戦いながらいろんなところに気を配って、艦隊のみんなだけじゃなく自分の身もしっかり守れるような」

瑞鶴「いつかきっと、加賀さんみたいな立派な艦娘になるわ」


加賀「…………」
160 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 03:32:33.81 ID:Ip2n0Icw0

加賀「…………」モグモグ

瑞鶴「加賀さん?」

加賀「あら、ごめんなさい。このプリンが私を離してくれなくて」モグモグ

瑞鶴「聞いてないー!?」

加賀「だって時間制限が。貴女も無駄にしては駄目、尊い犠牲となった翔鶴のためにも」

瑞鶴「死んでないよ!」

加賀「今度はちゃんと聞くわ、もう一回言って」

瑞鶴「……////」

瑞鶴「い、いい! 私もケーキ取ってくる!!」




加賀「…………」

加賀「いきなり神妙な顔で何を言い出すかと思えば」

加賀「まったくもう。そういうことは、もっと静かなところで言うものよ」


でも、本当にもう一度言われたら……ふふっ。

今度は、赤面を隠せないかも。
なんてね。

161 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2018/12/02(日) 03:38:13.59 ID:Ip2n0Icw0

読んでいただき本当にありがとうございました。
長い間かかってしまい申し訳ありません。自分の好きな要素を詰め込もうとして相当延びてしまいました。
また機会がありましたら読んでいただけると嬉しいです。


艦これ、リアルイベが色々と凄まじいことになっていますね。ここまで飽きないコンテンツは初めてです。
ジャズ当たってほしいけど仕事始めが……
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/02(日) 11:09:22.39 ID:NqjOHWgbo


約一年も大変だったと思うが面白かったし凄く良かった
書いてくれてありがとう
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/02(日) 13:07:48.30 ID:qs41i3wWO

面白かった
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/02(日) 20:02:54.19 ID:+DXqKyqQ0
おつ
大変良かった
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/12/03(月) 01:53:15.04 ID:ytmeaKge0
今まで見た瑞加賀の五指に入るいい瑞加賀だった。
次作期待してます。
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/03(月) 03:16:19.47 ID:aNeZ1fPO0

長い間楽しませてもらった、ありがとうございます
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