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高嶋友奈「結城ちゃんは勇者である」
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以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/06(土) 20:35:10.68 ID:eJvlprTto
*上里家・書庫
千景(……ここまであっさり通されると、拍子抜けを通り越して罠でもあるのではないかと警戒してしまうわね)
千景(午前の早い時間、上里家へと訪れた私は『鷲尾須美は勇者である』の小説をこの家の者に渡していた。いくつかの交渉を覚悟していたけれど、彼女は恭しく小説を受け取り、こうして上里家秘蔵の書庫へと真っすぐ通してくれた。……上里ひなた似の女性の様子から、生前の知人が何か言い残したことは明らかであり、私の知る上里さんらしいとも思ってしまう)
千景(……)
千景(そう、先日勇者服姿になったのが悪かったのか、今日に至っては乃木さんたちと行った模擬演習の記憶すら私は所有していた。他方で小学校以前の記憶もあちらの郡千景の記憶に全てすり替わってしまっているようだった。……もう私には猶予がないと言うことだろう)
千景「でも、させないわよ、郡千景。高嶋さんの記憶だけは、あなたに絶対に渡したりなんかしない!」
千景(発声し、私は決意を再び胸に宿す。──閑話休題、手早く目的のものを探し出してしまおう)
千景(屋敷の中の書庫だけあって広く蔵書も多いが、反面整頓は為されていて、家の者から聞いた情報があれば目的に辿り着くことは容易だった。だから、本棚の左上から本を数冊抜き出し、出てきた背面の平板を右へスライドする。……隠し扉の向こうには御記と呼ぶにふさわしい冊子が三冊収められていた)
千景「……なるほど、そう言うこと」
千景(三冊の中の一冊、そこには綺麗な楷書で『勇者郡千景様』と書かれていた。この状況を予測していたのだろうか? ……など色々思うところはあったが、表紙をめくり躊躇なく中に目を通していった)
千景(『西暦の終わり、人の中に神器を扱える者が現れました。彼女たちはその力を用いてバーテックスと戦い、今の世の中の礎を築いたのです。人々は神器に選ばれた少女たちを"勇者"と呼び称えました』)
千景(『初代勇者の数は六名。大赦に残される書物には五名とかしか書かれていないでしょうが、確かにもう一人の勇者が居たのです。彼女の名前は──郡千景。私たちの友人であり、他の勇者たちと戦い抜き世界を守った紛うことなき英雄。しかし、大赦はその独断で歴史から彼女を抹消してしまいました』)
千景(『人に刃を向けようとしたこと、それは確かに人々が思い描く勇者とは乖離してしまうのかもしれません。ですが、我ら人が、その罪が、彼女を凶刃へと駆り立てたことも間違いようのない事実です。周囲の人が彼女を追い詰め、大赦もまた、精霊使用による穢れの累積を認識するところまでたどり着いていても尚、我々が生き残るために、勇者たちへは精霊使用の厳禁を言い渡すことはありませんでした』)
千景(『人の心の醜さが、被害者であるはずの彼女を歴史から抹消してしまったのです。大赦に席を置く身で言えることではありませんが、彼女を決して忘れないために、それ以上に友として、私は彼女に関する記述をこうして残すこととしました。上里の子孫は永延、郡千景が確かに居た証を守り抜くよう厳命とします。──千景ちゃん、これくらいしかできない私を、叶うことなら許してください』)
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