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盗賊と凶星の呼び声
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1 :
◆IULkuZ.Noal.
[saga]:2017/12/18(月) 11:47:06.90 ID:rmznXfyjO
王とは神の代理人である。
王とは神によって与えられた権威、神によって選ばれた者である。
王とは神聖性、ある種の霊威、超自然的な権威を持つ唯一無二、絶対の存在である。
故に、神以外の何者にも拘束されることはなく、何者もその権威に抗うことは出来ない。
とまあ、このような印象を民衆に植え付けることで、絶対王政を布くことに成功したわけじゃ。
それ故に、王は絶対的な権力を得ることが出来た。長きに渡ってな。
先程言ったように、王とは唯一無二。
しかし、王とて不死ではない。人である以上、死に抗うことは不可能じゃからな。
如何に偉大な王であろうと、それだけは変えられん。何故ならば、死とは神の定めたものであるからだ。
それは普遍であり、あらゆる生命の行き着く先。決して曲げることの出来ぬ摂理、終点。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1513565226
2 :
◆IULkuZ.Noal.
[saga]:2017/12/18(月) 11:49:18.07 ID:rmznXfyjO
ただ、終わりの先にあるものは千差万別。
人は生前の行いにより、稀に神聖性を得ることがある。しかし、王の場合は生きながらにして神聖性を持っている。
そうであるならば王が死んだ時、その神聖性はどうなるのだろうか?
神の代理人たる者、王の死が意味するものとは? 死の先にあるものとは一体何なのか?
それは当時、誰もが抱いた疑問だっただろう。
その王はどうしたのか?
王は絶対的な権力を失うことを恐れ、神から不死の秘宝を授かったと告げた。
それが嘘か誠かは分からんが、権威や支配力を永続させる為のものであることは確かじゃろう。
3 :
◆IULkuZ.Noal.
[saga]:2017/12/18(月) 11:50:11.84 ID:rmznXfyjO
王はそれを手にこう言った。
余は、神の意志によって新たな力を与た。
例え、この肉体が朽ちようとも、この魂が滅びることはないであろう。
余の魂は、死を超越して生き続ける。王とは不滅にして唯一無二の存在であるのだから……
老人「……とな」
盗賊「ふむふむ。それで、その秘宝って?」
老人「知るかそんなもん。儂には分からんよ」
老人「秘宝については様々な憶測が飛び交ったが、どれも懐疑的なものばかりじゃった」
4 :
◆IULkuZ.Noal.
[saga]:2017/12/18(月) 11:51:05.12 ID:rmznXfyjO
盗賊「何で?」
老人「その王は近隣諸国を征服し、一代で帝国を興し、時の皇帝となったと言われておる」
老人「この事実を鑑みれば、その当時の権力たるや凄まじいものであっただろう」
老人「しかし、時の経過と共に王権神授説への批判が高まっていった。徐々に、徐々にな」
盗賊「……どうなったの?」
老人「やがて民衆の心に火が付いた。時代が大きく動き出したんじゃ。そうなれば、もう止まらん」
老人「その後は市民革命や何やらで絶対王政は潰え、民衆が王に抱いていた神聖性も失われた」
老人「権威が地に落ちたとまでは言わぬが、度重なる戦で領土返還を余儀なくされた」
老人「今や発言権は弱まり、政治的支配力も落ちた。よって、レガリアが存在した可能性は限りなく薄い」
5 :
◆IULkuZ.Noal.
[saga]:2017/12/18(月) 12:08:38.04 ID:rmznXfyjO
盗賊「レガリア?」
老人「うむ、レガリアとは王者の証じゃ」
老人「本来であれば、主に王冠などのことを言うが、この文献ではもっと特別な物を指しておる」
盗賊「別の物って?」
老人「この文献によれば、王冠などではなく不死の秘宝じゃな。あくまで伝説上のものだろうが」
盗賊「何でそう言い切れるの?」
老人「よいか? 不死の秘宝などというレガリアが実在したのなら、王権神授説に異を唱える者など現れはしない」
老人「絶大な権威も王政も揺らぐことはなく、王は神の代理人として今尚も神聖視されていたはずじゃ」
盗賊「あ、そっか。なるほどね……」パラパラッ
老人「……儂には、不死の秘宝の有無なんぞより、お主の方が疑問でならんよ」
6 :
◆IULkuZ.Noal.
[saga]:2017/12/18(月) 12:09:50.50 ID:rmznXfyjO
盗賊「僕が? 何で?」
老人「お主のような小僧が、何故に不死の秘宝に興味を持つのかが分からん」
老人「本を読むくらいなら外で遊ぶ方が楽しいはずじゃ。その年頃の男の子なら特にな」
盗賊「何に興味を持つのかは人それぞれでしょ? 僕みたいな小僧でも本くらい読むさ」
老人「……フン、可笑しな奴じゃ」
盗賊「それにしても、お客さんが来ないね。閑古鳥も鳴くのを忘れてるみたいだ」
老人「喧しいわ。ウチには流行りの本など置いとらんから仕方ないんじゃ」
盗賊「そうなの? 珍しい本が沢山あるのに勿体ないなぁ。王都の人は見る目がないのかもね」
7 :
◆IULkuZ.Noal.
[saga]:2017/12/18(月) 12:11:53.49 ID:rmznXfyjO
老人「……最近は本を読む若者も減った」
老人「革命だ何だと談議しておる奴等もいるが、どいつもこいつも知識人ぶった輩ばかりじゃ」
老人「過去を知らぬ者に歴史を作れはしない」
老人「今の若者は目先の物事にばかり気を取られ、過去から学ぼうとする者がおらん」
盗賊「今に必死で振り返る余裕がないんじゃないの? それが若さってやつなんだよ、多分ね」パラパラッ
老人「………」
盗賊「それか、気が付かない内に色んなものを詰め込みすぎて、心に文字を刻む余白がないのかも」
老人「何を生意気な。乳離れしたばかりの小僧が知ったような口を利きおって」
盗賊「そりゃあ、お爺さんみたいな両親と再会間近のお年寄りからしたら、皆がそう見えるだろうさ」
8 :
◆IULkuZ.Noal.
[saga]:2017/12/18(月) 12:13:47.04 ID:rmznXfyjO
老人「ケッ、可愛げのない奴じゃな」
盗賊「そっくりそのままお返しするよ。お爺さんも、ちょっとは愛想良くしたらどうだい?」
盗賊「これ以上お客さんが減ることはないだろうけど、稼ぎは増やしたいんじゃないの?」
老人「要らぬ世話じゃ。愛想など振り撒かずとも余生を過ごす蓄えはある」
盗賊「そ〜かい」
老人「………何故、此処へ来たんじゃ?」
盗賊「ん?」
老人「此処に来るのは余程の物好きか、古本蒐集が趣味の変わり者くらいじゃ。子供向けの本など置いていない」
老人「儂には、愛想の悪いジジイがやっとる古本屋にお主のような子供が来る意味が分からん」
盗賊「自分のお店をそんな風に言っちゃダメだよ。自慢の本が泣いちゃうよ?」
老人「……そうじゃな」
老人「しかしな、幾ら価値のある書物だろうと、それを読む者がいなければ意味が無いんじゃよ」
盗賊「そんなことはないさ、熱心な読者なら此処にいる。可愛げのない小僧だけどね」ニコッ
9 :
◆IULkuZ.Noal.
[saga]:2017/12/18(月) 12:15:58.29 ID:rmznXfyjO
老人「(変わった子じゃ……)」
老人「(やけに大人びたことを言ったかと思うと、次の瞬間にはそこらを駆け回る子供と同じように笑いよる)」
盗賊「あっ、そうだ。さっき話してた王様ってさ、結局はどうなったの?」
老人「……さっきも言ったじゃろう。如何に偉大な王だろうと、死に抗うことは出来んとな」
盗賊「じゃあ、死んだってこと?」
老人「いいや、王の死については一切記されていない。おそらく、死という表現を避けているのじゃろう」
老人「王座から立ち上がり神の御許へ向かっただとか、偉大なる王の魂は血脈に刻まれただとか、言葉を濁して書いてある」
盗賊「神様はともかく、血脈かあ……子々孫々、王の権力は受け継がれました。ってことなのかなぁ」
老人「まあ、これを見る限りでは、その解釈に至るのが至極自然じゃろうな」
盗賊「う〜ん。血脈、血脈……秘宝ってのは、そこら辺に関係してるのかな」
老人「……何じゃ、やけに拘るな」
盗賊「それはそうさ。だって僕は、その秘宝を狙ってこの都に来たんだからね」
10 :
◆IULkuZ.Noal.
[saga]:2017/12/18(月) 12:17:08.47 ID:rmznXfyjO
老人「狙って? 何を言っておる?」
盗賊「あれ、言ってなかったっけ? 僕は王の秘宝を盗みに来たんだ」
老人「ぬ、盗むじゃと!?」ガタッ
盗賊「うん、此処に来たのも情報を得る為さ」
盗賊「まあ、あんまり進展はなかったけどね。でも、お爺さんの話が楽しかったから別にいいや」
老人「………」ポカーン
盗賊「お爺さん、大丈夫かい? もしかしてボケちゃった?」
老人「呆けてなどおらんわ! それよりお主、本気で言っておるのか?」
盗賊「盗むって言ったこと?」
老人「そ、そうじゃ」
盗賊「勿論本気さ。僕は不死の秘宝がどんな物なのか見てみたい、この手で触れてみたいんだ」
盗賊「王権神授に不死の王、王家の秘宝、神の贈り物。聞いてるだけでわくわくするだろ?」
11 :
◆IULkuZ.Noal.
[saga]:2017/12/18(月) 12:19:54.29 ID:rmznXfyjO
老人「お主は馬鹿なのか?」
老人「そもそも存在するかどうかも分からぬ物だ。それも、王家から盗むなどと……」
盗賊「まだまだ夢見る年頃なんだ。存在するか分からないからこそ、余計に確かめたくなるのさ」
老人「……王家の話を聞きたいなどと言った時から得体の知れない小僧だとは思っていたが、まさか盗っ人だったとはな」
盗賊「うちは先祖代々、そういう家系なんだ」
老人「それがホラでなければ、とんでもない一族じゃな。いや、ろくでもない一族か」
盗賊「ろくでもないとか言わないでよ。家業を継ぐのは子の務めでしょ?」
老人「そんな家業はとっとと廃業した方が身のためじゃぞ」
老人「お主はまだ子供なんじゃ、まだ遅くはない。悪いことは言わんから別の職に就け」
盗賊「そうだね。その方が良いかもしれない。お爺さんの言う通りだ。でも、それは無理なんだよ……」
12 :
◆IULkuZ.Noal.
[saga]:2017/12/18(月) 12:22:27.22 ID:rmznXfyjO
老人「何故じゃ? 親に強要されとるのか?」
盗賊「違う違う。どうやら天職みたいなんだ」ニコッ
老人「……ハァ。自ら未来を閉ざした子供、天職は盗っ人か。まったく、世も末じゃな」
盗賊「いや〜、血は争えないみたいでね」
老人「……まあよいわ。して、どうする?」
盗賊「ん?」
老人「お主は、これでもまだ盗むと言うのか? あるかも分からぬ秘宝を狙って夢物語を追うのか?」
盗賊「ん〜、今のところは考え中。一旦保留」
老人「(盗っ人だと言い出したり、秘宝を狙っていると言い出したり、よう分からん奴じゃな)」
老人「(見たところは普通の子供、見せる表情や態度も悪人のそれとは程遠い。ただの冗談か?)」
盗賊「いや〜、しかし古本屋っていいもんだね。積もり積もった埃と古本の匂いが歴史を感じさせるよ」
13 :
◆IULkuZ.Noal.
[saga]:2017/12/18(月) 12:23:19.69 ID:rmznXfyjO
老人「ハッ、な〜にが歴史の匂いじゃ」
老人「それより、埃が目に付くなら掃除でもしていけ。何も買いもせず、何の礼もなく、話だけ聞いて出て行くのは許さんからな」
盗賊「掃除? それくらいなら別に構わないけど、どこから片付ければいい?」
老人「う、う〜む、そうじゃなぁ……全部じゃ全部。端から端、隅から隅までな」
盗賊「分かった。じゃあ、窓だけ開けてよ」
老人「ほ、本当にやる気なのか?」
盗賊「何言ってるんだよ。やれって言ったのはお爺さんだろ?」
老人「それは、そうだが……」
盗賊「窓を開けたら、店先に椅子でも出して日に当たりながら待っててよ」
老人「……何か怪しいのぉ。まさか逃げ出すつもりじゃなかろうな」
14 :
◆IULkuZ.Noal.
[saga]:2017/12/18(月) 12:24:30.10 ID:rmznXfyjO
盗賊「疑り深いお爺さんだなぁ」
盗賊「僕はどこにも逃げやしないよ。だからほら、椅子に揺られて昼寝でもしといてよ」
老人「……分かった。では、儂は外で待っておる。なるべく早く済ませるんじゃぞ?」
盗賊「早くって言われても、店内のあちこちに本の山脈が連なってるんだけど……」
老人「喧しい。いいか、晴天とは言え、あまり外気に晒すと本がーーー」
盗賊「分かった分かった。すぐに終わらせるよ。ほら、掃除出来ないから早く行けってば」
老人「………フン」
カツン…カツン…
盗賊「まったく、お年寄りは話が長くて困るね」
老人『聞こえとるぞ!さっさとせんか!!』
盗賊「………はぁ、やるか。まずは本を移動させないと……ん? これは絵本?」
盗賊「何か場違いだなあ。それに汚れもない。書かれたのは最近? 何で古本屋にあるんだろ?」
15 :
◆IULkuZ.Noal.
[saga]:2017/12/18(月) 12:30:25.70 ID:rmznXfyjO
我らの王は
自らを神の代理人と言って憚らないが
我らの神は
自らが王を選んだと明言したことはない
王権神授異論 p277より抜粋
16 :
◆IULkuZ.Noal.
[saga]:2017/12/18(月) 12:35:37.15 ID:rmznXfyjO
>>>>>
老人「やれやれ、あの小僧の所為で妙な一日になった」
老人「………」ポケー
老人「(こうやって日に当たるのも悪くないかもしれんな。日がな一日、本ばかり読んでいては足腰が弱る一方じゃ)」
老人「(明日から散歩でもしてみるか?)」
老人「(いや、よしておこう。明日からは生誕祭、人が多くては出歩く気になれんわい)」
老人「昔は、それなりに繁盛しとったんじゃがなぁ……」
老人「(今の若者は神話や英雄譚などに興味を持たん。辿ってきた道を、歴史を知ろうとしない)」
老人「(今やミステリだのホラーだのラブロマンスだので溢れかえっておる。胸焼けがするわい)」
老人「もうじき、昼か」
老人「(そう言えば、今日はまだ来ておらんな。大体は昼前には来るというのに……)」
コツコツ…
少女「お爺ちゃん、こんにちは」
老人「(もしや、何かあったのではあるまいな。年頃の娘じゃし、いつも一人じゃし……)」ウーム
17 :
◆IULkuZ.Noal.
[saga]:2017/12/18(月) 12:37:52.45 ID:rmznXfyjO
少女「お〜い、お爺ちゃん。寝てるの?」
老人「んっ? おお、何じゃ来ておったのか。すまんな、気付かんかった」
少女「ううん。お昼寝の邪魔をしちゃったみたいでゴメンね?」
老人「いやいや、昼寝などしとらんよ。たまには外の空気を吸おうと思ってな」
少女「えっ、珍しいね」
老人「珍しい?」
少女「だって、お爺さんが外に出ている所を見るのって、これが初めてだから」
老人「そ、そうだったか……実は、これにはちょっとした理由があってな」
少女「何かあったの?」
老人「あいや、別に大したことではない。ただ、今日はお主の他にも客……のようなものがいてな」
少女「お客さん!? ますます珍し……あっ、ごめん……」
老人「いやいや、別に構わんよ。普段から客が来ないのは事実じゃしな」
18 :
◆IULkuZ.Noal.
[saga]:2017/12/18(月) 12:39:01.93 ID:rmznXfyjO
>>あっ、やべっ…うわっ!
ドサドサドサッ!
少女「ケホッ、ケホッ……凄い埃……中に誰かいるみたいだけど、何をしてるの?」
老人「その、あれじゃ……」
老人「ちょっと店の中の掃除でもしてみようかと思ってな。さっき入ってきた小僧に頼んでみた」
少女「頼んだって、お客さんに?」
老人「まあ、そうじゃな。客と言えば客じゃな」
少女「………」
老人「どうしたんじゃ?」
少女「私が店の掃除するよって言った時は、全然聞いてくれなかったのになぁ〜と思って」
老人「うっ……気持ちは嬉しいが、婦女子に力仕事をさせるわけにはいかんじゃろう?」
少女「だからって、わざわざお金を払ってお手伝いさんを雇ったの?」
老人「まさか、金など払っておらんよ。先程店に来た妙な小僧を扱き使っておるだけじゃ」
19 :
◆IULkuZ.Noal.
[saga]:2017/12/18(月) 12:42:25.70 ID:rmznXfyjO
少女「妙な小僧……男の子?」
老人「うむ、年の頃はお主と同じくらいじゃな。王家の秘宝について知りたいなどと言っておった」
少女「ふ〜ん。そんなことを知りたがるなんて今時珍しい子だね。教えてあげたの?」
老人「うむ、儂が知り得ることはな。何も買わぬようだったから掃除をさせとる」
>>なあ、雑巾ある? 棚を拭きたいんだけど。
老人「机の近くにある。きちんと乾拭きするんじゃぞ? 湿気は本の敵じゃからな」
>>分かったよ。しっかし汚えなぁ……
老人「フン、好き勝手言いおって」
少女「私も手伝う。一人だと大変だろうから」
老人「何? よ、よせよせ! あの小汚い小僧ならまだしも、お主のような女子には……」
20 :
◆IULkuZ.Noal.
[saga]:2017/12/18(月) 12:45:21.66 ID:rmznXfyjO
少女「大丈夫だよ」
少女「服の汚れなんて洗えば落とせるし、顔が汚れたって洗えばいいだけでしょ? だから平気」ニコッ
少女「それに、お爺ちゃんにはいつもお世話になってるから……お掃除くらいは手伝わせて?」
老人「いや、しかしだな」
少女「何かお返ししたいの。わたしにはこれくらいしか出来ないから」
老人「……はぁ、分かった。そんな顔をされては断れんよ」
少女「やったぁ!」
老人「よいか? 無理をするでないぞ? 中にいる小僧なら存分に扱き使って良いからな?」
少女「あははっ! うん、分かった。あっ、これを忘れるところだった。え〜っと、はい」スッ
老人「おお、早いな。もう書いてきたのか。では、待っている間に読ませて貰うとしよう」
21 :
◆IULkuZ.Noal.
[saga]:2017/12/18(月) 12:46:48.26 ID:rmznXfyjO
少女「……お爺ちゃん」
老人「ん? なんじゃ?」
少女「いつも読んでくれてありがとう。読んだ後も、色々教えてくれて……」
老人「……いいんじゃよ。これは儂が好きでやっとることじゃからな。気に病むことはない」
少女「ホント? ウソじゃない?」
老人「ああ、本当じゃ。大体、嘘を吐いてどうする? 嫌じゃったら、とっくに断っておるよ」
少女「そっか、よかったぁ……よ〜し!じゃあ、お手伝いしてくるね!」
老人「うむ、気を付けるんじゃぞ?」
少女「大丈夫だってば。私、お掃除は好きだし、得意なんだから!」ニコッ
コツコツ…
老人「……やれやれ、また妙なことになった」
22 :
◆IULkuZ.Noal.
[saga]:2017/12/18(月) 12:51:14.67 ID:rmznXfyjO
少女「お〜い」
盗賊「ん?」クルッ
少女「やあ、少年。私も手伝うよ」
盗賊「え、キミは誰? お爺さんの孫?」
少女「……う〜ん。そんな感じ、かな?」
盗賊「?」
少女「まあまあ、いいからいいから。早くお掃除しよう? 向こうの棚は私がやるか、らっ!?」グラッ
ガシッ
盗賊「危ないなあ……足下には気を付けなよ? 新聞か何かの切れっ端とか落ちてて滑るからさ」
少女「危なかったぁ……ありがとね?」
盗賊「いいって。それじゃ、始めようぜ?」
老人「フッ、子供の相手は疲れるわい」
老人「さて、どんなものを書いてきたのか……ふむ、今回は王を題材にした絵本か」
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