【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】

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643 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 10:14:05.19 ID:sW82/1G70

…………………………

 同日、夕方のこと。

 この日の王野家は、久々にお母さんが家にいる日だ。ひかるはお母さんの背中が見えるリビングで、夕飯ができるのを待っていた。

「お母さん、もうお皿出しておく?」

「そうね。じゃあ、大きなお皿を一枚と、お椀を四つ持ってきてくれる?」

「はーい」

 次姉のともえはお母さんにべったりで、楽しそうにお手伝いをしている。長姉のゆうきにお手伝いを頼まれると嫌そうな顔をするくせに、お母さんには頼まれなくてもお手伝いをしているのだ。ひかるの前では大人ぶったりするけれど、次姉はかなり子どもだ。

(……まぁ、ぼくも人のことは言えないけど)

 次姉のように思い切り甘えるのは恥ずかしいけれど、こうやってお母さんの背中を見ていたいと思うのだ。ひかるもまた、まだまだ子どもだ。

 と、電話のベルが鳴る。お母さんが振り返る。お母さんは元より、ともえも皿を出している最中で手が離せない。ひかるは自発的にソファを立って、電話に向かい、受話器を取った。

「もしもし」

『お忙しいところ失礼致します。王野さんのお宅でよろしいでしょうか?』

 その澄ました声には聞き覚えがあった。

「……はじめさん?」

『ああ、声から察しはついていたが、やはりひかるくんか。それにしても、最初の「もしもし」は随分と可愛らしい声だったのに、私だとわかった途端に随分と怖い声になったな。君の変わり様にはまったく感服だ』

「姉ならまだ学校から帰っていませんよ。帰ったら折り返し電話をさせますね。では、失礼します」

『ちょっと待ちたまえ。まだ何も言っていないだろう』

 はじめの声は慌てた様子だ。何も言っていないも何も、のっけから失礼極まりないことを言っただろう。

『お姉さんに用事があるのではない。君に用があって電話をしたんだ』

「……ぼくに?」

『そう嫌そうな声を出さないでくれ』

 はじめが言った。

『……昨日は本当にありがとう。助かったよ。また今度お礼をさせてくれ』

「……なんだ。そんなことですか。お礼なら結構です。また熱を出されて倒れられても嫌なので」

『君は少し相手をいたわることを覚えたらどうだ?』

 いたわるも何も、はじめの声は昨日高熱を出した人と同一人物とは思えないほどに元気だ。

「それだけですか? では、失礼します」

『いや、私からはこれだけなのだが……』

 電話口ではじめが口ごもる。何事だといぶかしむひかるの耳朶を、別の声が叩いた。

『……もしもし? お電話を代わりました。騎馬はじめの母です』

「え……」

 一瞬思考が止まった。
644 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 10:14:58.38 ID:sW82/1G70

「……はじめさんの、お母さん?」

『はい。王野ひかるさんですね?』

「は、はい……」

 ふと思い出されるのは、先日、はじめの母と別れる前に言ったことだ。



 ――――『その他の愛情は、ぼくや、ぼくの姉が、責任を持って与えます』



 今さらなことではあるけれど。

 いくらなんでも、恥ずかしい啖呵を切りすぎた気がする。

 自然と頬が熱くなるが、相手がそれを意に介するわけもない。

『昨日のお礼を、わたくしの口からも言っておきたくて、お電話を差し上げました』

「はぁ……」

『昨日はありがとうございました。はじめには体調が悪いときは無理をしないように言っておきました』

「……そうですか」

『それから……』

 電話口の声の調子が変わる。

『あの子に、愛を与えてくださるのですよね?』

「……はい?」

 それは、素のはじめとそっくりの、挑戦的な声だ。

『そう言ってくださいましたよね? はじめに、愛を与えてくれると』

「……言いましたけれども」

 口から出てしまった言葉は取り消すことができない。
645 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 10:15:27.85 ID:sW82/1G70

『では、今後とも、娘をよろしくお願いします』

「それはぼくの姉に言うべきでは?」

『お姉さんはお姉さん。あなたはあなたでしょう』

 正論にぐうの音も出ない。ひかるは嘆息して、頷いた。

「わかりました。はじめさんが望むなら、そうしますよ」

『はい、よろしくお願いします』

 まるではじめがひかると今後も関わり続けることを予見しているような口ぶりだ。ひかるはまだ小学生で、どうしてはじめのお母さんがそんなことを言うのかわからない。

『では、宿題などでお忙しい時間帯にお時間をいただいてありがとうございました』

「宿題なんて帰ってすぐ終わらせましたよ」

『ふふ、そうですか。では、失礼致します』

「……はい。失礼します」

 受話器を置いて、ひかるは思う。

 はじめの気持ちも、はじめのお母さんの意志も分からない。

 分からないけれど、分からないなりに、なんとなく、思う。

 今度、はじめはどこに連れて行ってくれるのだろうか、なんて。

 そんなことを考えてしまうあたり、自分もまた、はじめに会いたいなんて、考えているのだろうか、と。
646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 10:15:55.63 ID:sW82/1G70

 次 回 予 告

めぐみ 「………………」

あきら 「……ねえ、ゆうき。なんでめぐみはあんなに不満そうな顔なの?」

ゆうき 「たぶん、自分の剣が相手に通用しきらなかったからじゃないかな」

あきら 「熱血だなぁ。少年漫画みたい」

めぐみ 「……剣の道は険しい。私はまだ未熟だわ」

ゆうき 「うん。本当にあの優等生がどこに向かっているのか知りたいね」

ゆうき 「ま、いいや。気を取り直して次回予告、いっちゃおう!」

あきら 「生徒会副会長、十条さんのために、生徒会が写生大会を企画することに!」

あきら 「けれどそんな十条さんに、アンリミテッドの魔の手が迫る!?」

ゆうき 「次回、ファーストプリキュア! 第二十話【芸術家みことの苦悩? みんなで写生大会!】」

ゆうき 「次回もお楽しみに!」

あきら 「また来週! ばいばーい!」
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/06/24(日) 10:16:35.47 ID:sW82/1G70
>>1です。
お待たせしてしまってすみません。
また来週、よろしくお願いします。
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