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多摩「月影に浮かぶ猫」
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102 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:03:36.24 ID:72sQ3/jzO
朝からその想いは変わらないはずなのに、何故か、探す気力は失せてしまった。
いや寧ろ、提督に会いに行きたくない自分が出てしまってすらいる。
多摩「……」
提督に会いたい、のに会いたくない。
温もりが欲しい、のに動きたくない天の邪鬼。
そういえば、こんなのは、いつの間にやら最近の日常になってしまっていたっけ。
多摩「……」
多摩「……多摩は」
このままで、居たくない。
このままで、良いはずがない。
多摩「……」
ふらふらと立ち上がる。部屋の扉を開けて、廊下の電気が付いていることを確認してから。
執務室へと、駆けた。
103 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:04:21.01 ID:72sQ3/jzO
一八一五 鎮守府 司令官の部屋
多摩「にゃ……」ガチャ
執務室は相変わらず人が居なかった。
司令官の部屋を覗いてみても、人影はない。
多摩「……」
部屋の明かりを付け、いの一番に目に入るのは、朝自分が寝ていた布団。
崩れた掛け布団がそのままになっていることから、提督は今日一日ここへ戻ってこなかったのだろう。
多摩「……」
窓の雨戸を閉め、カーテンで封鎖し、明るい人工灯に照らされる許で、布団に座り込む。
提督がどこにいるのかが分からない。
探し回っても、見付かる保証はない。
何より……外はもう、月が出ている。
多摩(このまま、ここで……)
待つことしか、私には出来なかった。
104 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:05:05.34 ID:72sQ3/jzO
静かな室内で、カチ、カチと小さな目覚まし時計の針が進む音が響く。
しかし時計は視界の内に写らない。今、果たして何時なのかが分からない。
多摩「……」
何秒、何分、何時間経っただろう。
提督は未だ戻ってこない。
月は、どれくらいの高さにあるのだろう。
提督は未だ戻ってこない。
みんなは、どうしているだろう。
提督は未だ戻ってこない。
多摩(布団……)
多摩(提督の、匂いがする……)ギュウゥ
胸一杯に、大好きなお日様の香りを詰めながら。
一筋の涙が、零れた。
105 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:05:46.56 ID:72sQ3/jzO
多摩(提督は、戻ってこない)
分かっていた。
だって、鎮守府挙げてのお月見だ。一週間も前から、決まっていたことなのだ。
きっと今頃、お月見を盛り上げる為に奔走しているに違いない。
きっと今頃、問題を起こす子達を諫めているに違いない。
きっと今頃、
私ではない、誰かのそばに居る。
多摩「うっ……う……」
本当は今夜も、提督と一緒に居たかった。
今夜だけじゃない、ずっと、ずっと提督と一緒に居たかった。
106 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:06:18.94 ID:72sQ3/jzO
多摩「ううぅ〜……」グスグス
月はどうして、私を照らすのだろう。
月はどうして、私を照らしてくれないのだろう。
多摩「ていとく……ていと……く」ポロポロ
布団を抱き締めながら、閉じた窓に目を向ける。
壁に隔てられ、見えない月を睨み付けながら。
多摩「お前……はっ!私の、命だけじゃなく……っ!多摩の、……提督まで……っ」
荒げた声も、すぐに弱くなって
多摩「提督……まで……」
多摩「奪わないで……」
背を曲げ布団に突っ伏して、静かに泣き叫ぶ――。
…………
107 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:07:08.76 ID:72sQ3/jzO
多摩「!」ビクッ
不意に、頭に載せられた掌。その感触にびくりと身体を跳ねさせる。
??「多摩」
掛けられた声に、頭を撫でる優しさに。居るはずがないと、来るはずがないと思いながらも。
多摩「あ……あ、ぁ……」
彼ならば。もしかしてと、振り返る。
司令官「……待たせたね、多摩」
多摩「ていとく……」ツゥ
司令官「よし、よし……」ギュ
多摩「――」
ずっと求めていた、温もり。
108 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:07:57.43 ID:72sQ3/jzO
多摩「提督……何で……今日は、お月見で……」
司令官「ああ……そうだな。今日はお月見だ。司令官としてやらなきゃいけないこともあるし、さっきまでも色々と動いてたよ」
多摩「じゃあ、何でここに……」
司令官「……約束したからね」
多摩「約、束?」
司令官「今夜も、一緒に寝るんだろう?」
多摩「ぁ……」
昨晩、苦しみ呻く中に、絞り出した願望。
朦朧とした意識の中で、自分でさえ忘れていた望みを。
多摩(提督は……聞いていてくれたんだにゃ……)ジワ
109 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/12/13(水) 22:08:37.92 ID:72sQ3/jzO
司令官「やるべき事は片付けてきたし、引き継ぎもしてきた。だから今夜は、このまま多摩と一緒に居るからね」
多摩「提督……。……」
多摩「……ごめん、なさい」
司令官「どうした、いきなり」
多摩「いきなりじゃない……にゃ。こんな、多摩のワガママで提督を、お月見から外しちゃって……」
多摩「ううん、もっと……。昨日も、多摩、提督に……その、襲い、掛かったり……吐いたり……すっごい迷惑ばかりかけて……」
多摩「多摩は……」
司令官「……」ワシャワシャ
多摩「わ、わ。何するにゃあ〜」
司令官「確かに、昨日は色々凄かったな」
多摩「ふにゃ……」
司令官「でも……それだけ、お前が苦しんでたって事だろう?大丈夫。心配こそすれど、迷惑とか思っていないよ」ナデナデ
多摩「にゃあ……」
110 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:09:19.37 ID:72sQ3/jzO
司令官「だからね、多摩。その苦しみを……多摩の想いを。僕にも、共有して欲しい。話せる限りで良いから、話して欲しいんだ」
多摩「……」
多摩「……、提督は……」
司令官「うん」
多摩「今夜はずっと……多摩と、居てくれるのかにゃ……?」
司令官「ああ」
多摩「……、……」
多摩(……)
多摩「じゃあ……。折角の、中秋の名月なんだし……外で、話さないかにゃ……?」
司令官「多摩と二人でお月見か。良いよ、じゃあ、準備しよう」
多摩「にゃあ……」
多摩(提督……)ギュ
111 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:09:53.19 ID:72sQ3/jzO
鎮守府 船着き場 灯台
朝潮「!司令官、多摩さん。いかがされましたか?」
司令官「ああ、朝潮。見張りお疲れ様、異常はない?」
朝潮「はい!敵艦、その他不審な物は今のところありません!」
司令官「そっかそっか。ありがとな」ナデナデ
朝潮「ぁ……、恐縮、です!」
司令官「朝潮、今日は鎮守府挙げてのお月見だ。未だみんな、広場で騒いでいるから君も行っておいで」
朝潮「お月見……しかし、見張り番は」
司令官「それなら大丈夫。しばらく僕と多摩で務めるから」
朝潮「しかし……」
司令官「それと朝潮。できれば、日付が変わるくらいまで……この場にいさせてくれないか」ボソッ
朝潮「!」
朝潮「……かしこまりました。駆逐艦朝潮、暫しお暇をいただきます!」ビシ
司令官「うん。楽しんでおいで」ニコ
朝潮「はいっ!」ニコ
112 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:10:54.86 ID:72sQ3/jzO
司令官「さて……ここは景色が良いが、夜は冷えるからな。暖房器具があるとは言え……」トットット
司令官「ほら、多摩。温かいコーヒーだ」
多摩「ありがとにゃ。……提督、多摩と一緒に毛布に入るにゃ。くっつけばもっと暖かいにゃ」
司令官「ん……何か照れるな」
多摩「一緒の布団で寝た仲なのににゃ?」
司令官「はは……それもそうか。失礼するよ、多摩」
多摩「にゃあ」
113 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:11:35.50 ID:72sQ3/jzO
多摩「ふー、ふー……ん、暖かいにゃあ」
司令官「多摩の舌なら、これくらいが丁度良いか」
多摩「にゃあ」
司令官「しかし……本当に、見事な夜空だな。月の光が強くて、星々も目立たなくなるくらいに」
多摩「そう、だにゃ……」
多摩「……」ギュ
司令官「……」
多摩「でも……多摩は、お月様なんて……大嫌いにゃ……」
司令官「……」
多摩「明るいくせに、冷たい。大きいくせに、暗い」
多摩「お月様は……多摩の身体を、照らしてくれなかった」
司令官「……」
114 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:12:12.50 ID:72sQ3/jzO
多摩「提督……最近、多摩はおかしいのにゃ。月を見ると、在りし日の記憶を思い出して、」
多摩「頭が痛くなる、胸が苦しくなる。涙が……止まらなくなるにゃ……」
司令官「そうか……」
多摩「けれど。今は平気にゃ。提督がそばにいてくれると、平気だって……分かったにゃ」
司令官「……」
だから本当は、ずっと私のそばに
多摩「……」ギュ
司令官「多摩……」
多摩「……」
115 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:12:59.09 ID:72sQ3/jzO
多摩「……提督」
多摩「提督、多摩は、多摩は……弱い、にゃ……」
多摩「昨日も、出撃の時に月を見て……おかしくなっちゃったにゃ……」
多摩「でも、多摩は提督が一軍起用する水雷戦隊の、唯一の軽巡にゃ……」
多摩「月如きで弱さは見せられない……多摩には、その責任があるのに、」ツゥ
多摩「だから……強い自分になりたい、から……いつまでも、提督にしがみついてるわけには……いかない、のに」グスグス
司令官「……」
116 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:13:39.37 ID:72sQ3/jzO
多摩「それだけ、じゃ、ないにゃ……。提督に、は……電が、居るから……多摩は、指輪を、貰っていないから……」
多摩「提督の隣に居る、のは……多摩じゃ、ない、って……思っ……て、多摩の在り方、……っは、傍観者なんだって、む、無意識に決めつけて、て」
多摩「だから多摩は、多摩はただ、提督と一緒に居る時間があれば良いだけだったのに……っ。そんなちょっとの、ワガママのはずだったのに……」
多摩「て、提督が電といる、時は……多摩はそばにいちゃいけないって……でも本当そんなことないって、分かってるのに、心が、言うこと聞かなくて」ボロボロ
多摩「それで勝手に苦しくなって、き、昨日は提督を……無理矢理、提督に、襲い掛かったり……して……うぅ」
多摩「多摩は、どうして今になって……っひ。こ、こんなにも、苦しい……のにゃ……?」
多摩「多摩は……どう、すれば……」グスグス
117 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:14:19.83 ID:72sQ3/jzO
司令官「……。……そっか」
司令官「辛かったな……、苦しかったよな、多摩……」
多摩「うぅ……ぐすっ。うー……」ギュ
司令官「……多摩。こうして僕がそばにいることで、君を月の光から覆えるのならば。多摩が望むときに、こうして君の手を握ってあげる」
多摩「……」グス
司令官「だけどね。僕は、多摩が……月の光を浴びれるようになれれば良いなぁって。そう思うんだよ」
多摩「にゃ……?」グシグシ
司令官「それができれば……僕のとっても、嬉しいしね」
多摩「提督、それは、どういう……」
118 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:14:59.15 ID:72sQ3/jzO
司令官「……多摩は、責任感が人一倍強くて。己れ自身のことより、自己犠牲を払ってでもその役割を全うする、……とても強い艦だ」
多摩「……」
司令官「でもそれは……『長崎で進水し、レイテに逝った軽巡洋艦多摩』の話だろう?今、僕の隣にいる『艦娘としての軽巡洋艦多摩』の話じゃあない」
司令官「多摩、僕はね。今の多摩が、過去の多摩に縛られなくても、良いんじゃないかって思うんだ」
多摩「……」
119 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:15:41.97 ID:72sQ3/jzO
司令官「在りし日の記憶を忘れろ……とは言わない。過去の栄光、誇り、勝利、大切な仲間との思い出……それらを現在の糧とすることも良い」
司令官「魂に染みついてしまっていて、自然と表に出てしまう物事だってあるだろう。それだって、自分が気にしていないのなら矯正するつもりはない」
司令官「ただ……過去にこうだったから、今の自分もこう在らなくてはならない、なんて。そんな決めつけは、しなくても良い」
司令官「意識的にでも無意識下でも、その決めつけで苦しんでいるのなら……なおさらだ」
多摩「……でも多摩は……どうしても……」
司令官「思ってしまう?」
多摩「……」コク
120 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:16:21.11 ID:72sQ3/jzO
司令官「……それなら多摩は、猫になればいい」
多摩「……ふにゃ?」キョト
司令官「責任に縛られ、自分の役割が決まった軽巡洋艦多摩は今日を以って。無責任で、自由気ままな、艦娘の多摩になればいい」
司令官「いや……折角女の子になったんだ。ガチガチの艦だった多摩は……、猫みたいな一人の女の子の、多摩ちゃんになれば良いのさ」
多摩「多摩、ちゃん……」
司令官「ああ」
121 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:16:57.08 ID:72sQ3/jzO
司令官「多摩ちゃんはね。お日様が大好きで、しょっちゅう色んな場所で眠って。お腹が空いたら起きてご飯を食べて、一人で遊んでいたと思ったら急にすり寄ってきて」
多摩「……」
司令官「くだらない事にため息をついて。ちょっとしたことにビックリして。喧嘩したら、拗ねたりもして」
多摩「……」ツゥ
司令官「思い切り笑って。たくさん怒って。いっぱい、泣いて」
司令官「恋を、して――」
多摩「……」ポロ
122 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:17:34.26 ID:72sQ3/jzO
多摩「……かにゃ」ポロ、ポロ
司令官「……」
多摩「多摩、に……なれるかにゃ……」ポロポロ
司令官「ああ……保証するよ」
司令官「だって。僕はずっと、そんな多摩ちゃんを見てきたからね」ニコ
多摩「っ……!」ブワ
多摩「うっ、ふ……うえぇ……うう、ぅー……」ギュウゥ
司令官「……」ナデナデ
123 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:18:33.91 ID:72sQ3/jzO
結局。
司令官「落ち着いたかい?」
多摩「ん……」コク
司令官「良かった」クス
私は、提督に「良いよ」って言って欲しかっただけなのだろう。
多摩「提督の服、多摩の涙でぐちゃぐちゃになっちゃったにゃ……」
司令官「何、これくらい安いもんさ。寧ろ多摩ちゃん汁付きで高く売れるかも……」
多摩「もうっ!デリカシーがないにゃ」
司令官「あはは……ごめんなさい」
多摩「全く、しょうがないにゃあ」クス
たったそれだけのこと。
124 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:19:28.88 ID:72sQ3/jzO
提督「……多摩」
多摩「んにゃー?」
あの子達が羨ましいと思った。
ううん、今でもちょっぴり羨ましいけれど。
司令官「月の光が嫌いだったのは、過去の君だ。言ったよね?僕は、君にもっと月の光を浴びて欲しいって」
多摩「……」コク
目に見える証がなくても、多摩と提督の間には目には見えない絆があるから。
「私」の出番は、きっとおしまいだ。
125 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:20:51.80 ID:72sQ3/jzO
司令官「僕はね。君が僕の影に隠れて月を見るんじゃなく……君と隣同士、一緒に月光浴がしたいんだ」
多摩「うん……」
指輪なんてあってもなくても、居場所はもう。変わらないと分かったから。
司令官「きっと今の君なら、それが出来ると思う。だからね――」
だからね、多摩は……
126 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:21:36.91 ID:72sQ3/jzO
司令官「……受け取って、くれるかな」
多摩「――」
月が綺麗だなって。
今ならそう、言えると思うにゃ。提督――
127 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:22:15.86 ID:72sQ3/jzO
数日後
一三〇〇 鎮守府 巡洋艦寮 球磨型部屋
北上「いやぁ、最近平和だねぇ」パチ
大井「ええ、こうのんびり出来ると、たくさんたくさん北上さんと一緒に居られて嬉しいです」パチ
球磨「全く……大井も少しは北上離れした方が良いと思うクマ」パチ
大井「むっ。北上さんと私は一心同体ですから。離れようにも離れられないんです」
木曾「ま、今更言うだけ無駄だろ。それに、ベッタリと言えばもう一人。姉妹の仲にいるからな、凄いのが」パチ
北上「多摩もここで打つことが少なくなったもんねぇ」パチ
大井「寧ろ、前に戻ったと言って良いのかも知れませんね」パチ
球磨「いやぁ……良くも悪くも、前以上だと思うクマ」パチ
128 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:23:24.20 ID:72sQ3/jzO
木曾「言えてるな……っときたぁ!球磨姉さん、それロンだぜ!」
球磨「クマ?」
木曾「へへっ、やっと一矢報いたなぁ!」
北上「んー……?木曾、それフリテンじゃない?」
木曾「へ?」
大井「そもそも、役がないじゃないの」
木曾「は?」
球磨「チョンボクマね。木曾、さっさと8000点よこすクマ」
木曾「ちっくしょお!!」
129 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:24:06.89 ID:72sQ3/jzO
同時刻 鎮守府 執務室
電「失礼致します、なのです!駆逐艦電、午後の秘書艦に着任なのです!」ビシ
電「って、あれ?司令官さん、今日は座卓なんですね。多摩ちゃんは――」
司令官「」チョイチョイ
電「?」タタタ
司令官「しーっ……」
電「あ……ふふっ」クス
多摩「すー……すー……」
電「多摩ちゃん、司令官さんのお膝で気持ちよさそうに眠っているのです」
司令官「一応、午前の仕事は片付けてくれたけどね。まぁでも……やっぱりこの感じは猫だよ」ナデ
130 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:24:37.77 ID:72sQ3/jzO
多摩「んん……猫じゃない、にゃあ」クアァ
電「起きたのです」
司令官「はは……おはよう、多摩ちゃん」ウリウリ
多摩「うにゃう〜……♪」
多摩「ん〜っ……おはようにゃ。……提督」
司令官「ん?」
多摩「多摩は多摩ちゃんになったけど……やっぱり、提督が多摩をちゃん付けで呼ぶのはやめてほしいにゃ。なんか……違う感じがするのにゃ……」モジ
司令官「そうか?結構気に入ってるんだけどな、多摩ちゃん」
多摩「む、そうにゃ。やめてくれないとここを離れないにゃ」ゴローン
司令官「うーん、それ寧ろやめたくなくなるんだけど……」
131 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:25:25.30 ID:72sQ3/jzO
電「……」ジッ
多摩「……電も、提督の膝で寝ると良いにゃ」
電「はわ!?い、電は、その……」
多摩「遠慮が一番ダメだにゃあ。我慢は精神衛生上良くないにゃ」クシクシ
司令官「いや、遠慮も大事だと思うぞ」
電「……、……」
電「えいっ」ギュー
司令官(おいマジか)
132 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:26:11.71 ID:72sQ3/jzO
多摩「にゃはは。暖かくて気持ちいいにゃ?」
電「な、なのです。ちょっと、恥ずかしいけれど……」
多摩「今日は電も、多摩と提督と一緒にお休みするにゃん」ホワホワ
電「はいなのです〜」ホワワ
司令官(あー……これは、今夜も徹夜かなぁ……)
司令官(ま。幸せそうだし。僕も幸せだし、いっか)ナデナデ
多摩「……にゃあ♪」
133 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:26:59.81 ID:72sQ3/jzO
とある昼下がり、穏やかな執務室。
暖かな日の光の許で行う日なたぼっこは、なんと心地好いのだろう。
多摩(提督――)
晴れ晴れとした空は、今夜も月が良く映える事だろう。
多摩(これからも、多摩を提督でいっぱいいっぱい、満たしてにゃ)
多摩(そしたらきっと……もっともっと、良い夢が見れるから)
煌々とした月明かりに影は伸びる。
自分の存在がまるで、何倍にも大きく膨れあがったかのような錯覚を覚える。
だけど
134 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:28:06.04 ID:72sQ3/jzO
きっと、大丈夫。
多摩「起きたらまた一緒に。月光浴、しようにゃ……」ウト
司令官「……ああ」ニコ
月の光が生む二人の影は。繋っているから――
艦
135 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:29:25.99 ID:72sQ3/jzO
お目汚し、大変失礼いたしました。以上で本編は終了となります。
ほんっとうに蛇足になりますが、少しだけおまけを投稿して終わりとさせていただきます。
よろしければどうぞ。
136 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:30:27.77 ID:72sQ3/jzO
入れたかったけど蛇足だなぁと思いボツになった、おまけ1
【灯台で指輪を渡した後の一コマ】
多摩「それにしても提督……昨日は……」
司令官「うん?」
多摩「……多摩の服、脱がせて拭いたかにゃ……?」
司令官「……。……それ、聞くか……」
多摩「にゃ……もし、電とか、他の誰かに頼んでたら……汚かっただろうから恥ずかしいし、御礼も言わないとって思って……」
司令官「あー……。……安心しろ、と言っていいのか分からんが……誰にも見られないよう、僕一人でやったから……」ポリ
多摩「……、……」
多摩「……えっち」
司令官「し、仕方ないだろう!状況が状況だったし……」
多摩「ごめんにゃ……」シュン
司令官「いや……こちらこそ、な、うん。そう凹むな」
137 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:31:02.86 ID:72sQ3/jzO
多摩「もし昨日、あのまま多摩が提督を襲ってたら、もっと立ち直れなかったにゃ……そう思うとぞっとするにゃ……」
司令官「……ま、それも気にするな。昨日のあの状況であれ以上事が進みそうだったら僕ももっと呼びかけてただろうし……何としてでも止めてたさ」
司令官「あの状態で、多摩が望むままに抱いたとして……多摩が傷付くだけだからね。そんなことは絶対にしないよ」
多摩「提督……」
多摩「……あれ。じゃあもし、今、多摩が望んだとしたら……?」
司令官「……」
多摩「今夜も、一緒に寝てくれるのにゃ?例えばその時とかに、もし多摩が……」
司令官「…………」
多摩「……」
多摩「……提督の、えっち」
司令官「だからっ!未だ何も言ってないだろぉ!」
多摩「……にゃ」クスクス
138 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:31:52.52 ID:72sQ3/jzO
当SSが完成する前に多摩改二が来ちゃったので、おまけ2
【球磨の憂鬱】
司令官「うりうり〜」ナデナデ
多摩「くすぐったいにゃ……でも気持ちいいにゃ」
多摩「お返しに肩に多摩パンチあげるにゃ」パスッ、パス
司令官「お?お〜……これは中々……」
多摩「気持ちいいにゃ?にゃ?」
司令官「ああ、これは良い……」
球磨「……」
司令官「よし。じゃあ肩もほぐれたところで」ネコジャラシスッ
多摩「!」
司令官「ほれほれ〜」サッサ
多摩「に、にゃあ!じゃらすの禁止にゃ!」ピコピコ
球磨「…………」
球磨(提督と多摩がより気兼ねなくより仲睦まじくなったことは良いことだクマ)
球磨(けど……正直妹達全員に改二が来るとか……)
球磨「むちゃくちゃ焦るクマッ!」クワッ
司令官「球磨も遊ぶか〜?」
球磨「クーマー♪」
139 :
◆pxTJMwo04OvB
[saga]:2017/12/13(水) 22:33:48.90 ID:72sQ3/jzO
以上で終わりです。
ここまでお付き合いくださった皆様、本当にありがとうございました。
次は瑞鳳か伊19、うーちゃんあたりを書きたいな……と思います。
では、HTML依頼出してきます。機会があればまた。
140 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/13(水) 22:44:49.54 ID:Zfesonxio
乙、多摩可愛い!
いつかのあの朝潮のほろ苦い初恋のやつも良かったなー
次作も待ってます
141 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/14(木) 08:13:39.95 ID:uhK1+9wDO
乙です
過去作有ったら教えてほしいです
142 :
◆pxTJMwo04OvB
[sage saga]:2017/12/14(木) 19:56:08.90 ID:MoaTEMHoO
>>141
僭越ながら……。
暁「とある司令官と電のケッコン」
響「とある司令官と電の改二」
雷「とある司令官と電の勲章」
朝潮「初恋のビターチョコレート」
暁「レディは飲んでも飲まれるな!なんだからっ」
電「二人だけの、メリークリスマス」
電「甘くて甘くて、溶けてしまうのです!」
電「愛しくて愛しくて、焦がれてしまうのです!」
とある司令官と電の安価スレッド
以上です。黒歴史化しているのも何個かあるので恐縮ですが……。
URLなくてごめんなさい、基本全部同じ酉で書いています。
宜しければ。
143 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/18(月) 22:21:14.60 ID:myOSeWY/0
あなたの書く文章も、話の構成も綺麗だから好きだ
次回作も楽しみにしてます
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