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曜「会いたいよ……千歌ちゃん」
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1 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/12/13(水) 07:52:40.48 ID:8Vh1voRqO
ラ板で書いてたら落ちたので
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1513119160
2 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/12/13(水) 08:04:35.16 ID:8Vh1voRqO
曜「え? Aqoursが……復活するかもしれない?」
男「ええ。あの伝説のスクールアイドル、Aqoursを再始動させたいと願うスポンサーがいましてね」
男「私、こういう者です」
曜(手袋してる……寒いからかな。私はまだいらないけど)
曜「ワタ〇ベ事務所……マネージャー?」
曜「これって……A〇Bとか出してるところですよね……すごい……」
曜「で、でも……私たちはあの時、Aqoursは続けないって決めたんです」
曜「私たちだけの……思い出にしようって」
男「みなさん賛成して集まっているんですよ? 貴方以外はね」
曜「え……! まさか……そんなことって……」
3 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/12/13(水) 08:06:47.26 ID:8Vh1voRqO
曜「でも私は……今はただの大学生だし。今更、歌やダンスなんて……」
男「いいえ、心配ありませんよ。貴方なら、間違いなく復帰できるでしょう」
男「貴方ほどのポテンシャルを持った人材ならね」ニヤッ
曜「え……いやぁ、それほどでも……」
男「具体的には、Aqoursというユニット名を残したまま……アイドル業界に参戦する予定となっています」
曜「アイドル……業界に……!」
男「ええ。スクールアイドルではなく……正真正銘、本物のアイドルに」
曜(正直、今更アイドルになりたいなんて……そんな気持ちは全然ないけど)
曜(Aqoursのみんなに、会えるかもしれない)
曜(あの頃の私たちに、戻れるかもしれないんだ……!)
曜「……わかりました。この話、受けます」
男「そうですか。あのAqoursが再び……私も楽しみですよ」
4 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/12/13(水) 08:09:17.42 ID:8Vh1voRqO
〜〜〜
曜「えーっと……それで私たちは今、どちらに向かっているんですか?」
男「私がマネージャーとして勤めている事務所です。Aqoursのみなさんも、そちらへ集合している最中のはずですよ」
曜(もうすぐ……みんなに会えるんだ……!)
男「――ところで。Aqoursのみなさんには、事務所としても大変期待しておりますが……やはりみなさん、ブランクが長いとのことで」
男「そこで、本格的に表に出る前に……1年間のレッスンを受けていただく形になります」
曜「レッスン……1年もですか?」
男「はい。その初期費用として、120万円を支払っていただきます」
曜「120万……!」
曜「いやいや、無理ですって! そんな大金……私、大学生ですし……」
5 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/12/13(水) 08:12:24.62 ID:8Vh1voRqO
男「そうですか……では、この話はなかったことに……」
曜「ちょちょ、待ってください!」
曜「ならせめて……Aqoursのみなさんに会わせていただけませんか?」
男「申し訳ありませんが、無関係の者を事務所に立ち入らせるわけにはいかないんですよ」
曜「そんな、どうにか……お願いします! 何とかなりませんか!?」
黒服「……仕方がない。貴方だけ特別です」
黒服「3ヶ月分。初期費用はその分で、上に話をつけておきますよ」
曜「い、いくら……ですか?」
黒服「35万円です」
曜「さ……35万……」
曜(高校を卒業して、大学に入って……両親からの仕送りと、2年間のバイトで貯めたお金が40万弱)
曜(これを払ってしまえば、来月の家賃すら払えなくなってしまう)
曜(お母さんに相談して……大学を辞めれば、なんとかなるかもしれない)
曜「……わかりました。35万、払います」
男「そうですか。では、こちらのコンビニの前で待っています」
曜「――え? えっと……振り込んでくればいいんですか?」
男「いえ、貴方には今すぐにでも事務所のレッスンを受けていただきたいのです」
男「そのために私が現金を頂き、事務所の者に払うということです」
曜「ああ、そういう……なら、今からお金を下ろしてくれば……」
男「はい。私はこちらで待っていますので」
6 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/12/13(水) 08:13:32.84 ID:8Vh1voRqO
〜〜〜
曜「お金、下ろしてきました」
男「ええ。お待ちしておりましたよ」
曜(……こんな、律義に同じ場所に立ってなくてもいいのに)
男「では、頂いても?」
曜「あ、はい……財布に入るか心配だったんですけど……」アハハ
男「私、現金は数えない主義なんです」サッ
曜(数えない主義……なんだかカッコイイな)
男「――では、行きましょうか」
7 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/12/13(水) 08:16:22.60 ID:8Vh1voRqO
〜〜〜
マック
曜「あ、私が払いますよ」
男「いえ、渡辺さんは席を2つ取っておいてください」
曜「あ、はい……わかりました」
男「――お待たせしました。ホットコーヒーでよろしかったですか?」
曜「はい、ありがとうございます……ところで、どうしてマックなんです? 早く事務所の方に……」
男「待ち合わせ時間より、多少早く事務所へ着きそうなんですよ」
男「ですから、ここで時間を潰さなければならないんです」
曜「あー、なるほど……?」
ピピピピピ……
黒服「――事務所からですね。少々席を外します」
曜「あ、はーい……」
〜〜〜
5分後
曜(長いな……事務所からって言ってたけど……)
〜〜〜
10分後
曜(おかしい……いくらなんでも長すぎる)
曜(ま……まさか)サー
曜(……騙され……たの?)
曜「……っ!」バッ
曜「あのっ、店員さん!」
店員「はい?」
曜「さっき、黒いスーツの男の人が出ていきませんでしたか? 電話しながら!」
店員「電話しながら……ああ、そういえば」
店員「――自動ドアの辺りでスマホをポケットに入れて、そのまま出ていきましたよ」
曜「あ……ああ……」
曜「そん……な……」
8 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/12/13(水) 08:22:50.27 ID:8Vh1voRqO
〜〜〜
曜「ハッ……ハッ……」
曜「まだ……その辺に……いたっ!」
曜「あのっ!」バッ
通行人「……ん? 誰かな、君は」
曜「あ……いえ、なんでも……」
通行人「チッ……こっちは忙しいってのに……」スタスタ
曜「そんな……嘘だよ……こんなのって……」
曜「け、警察……交番に……」
〜〜〜
〇〇警察署
刑事「うーん……これだけじゃ、被害届を出して終わりになっちゃうね」
曜「そんな……なんとかなりませんか?」
刑事「唯一の手がかりの名刺も、何もかもデタラメだしね」
刑事「本来のワタ〇ベ事務所の名刺とはデザインが違うから、おそらく犯人が自分で作ったんだ」
刑事「犯人とここの人間との関わりがあるとは考えにくい」
刑事「一応指紋は取ってみるけど……手袋してたんでしょ?」
曜「そ……そうだ、監視カメラ……」
刑事「それだって、店の中には入ってないわけだ。隅っこに立ってたってことは、監視カメラに映らない場所を知っていた可能性が高いよね」
刑事「しかも手渡しって……振込とか、何か記録に残るものなら捜査の手がかりになったかもしれないけどさ……」
刑事「厳しいことを言うようだけどね。仮に捕まったとしても……お金が返ってくる可能性は、限りなく0に近いよ」
曜「う……あ……ぁ……」
9 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/12/13(水) 08:23:43.21 ID:8Vh1voRqO
〜〜〜
曜「……はぁ」
曜「一応、真っ当に生きてきたつもりなんだけどなぁ……」
曜(なんでだろう……怒りとか、そういう感情は湧いてこない)
曜(今は……ただ、悲しい)
曜(あ……そうか)
曜(Aqoursのみんなに、会えるかもしれないって……そう期待してたから……)
曜「ふ……フフッ……」
曜(そっかぁ……そういうことか)
曜(――あの頃の思い出を踏みにじられたから)
曜(会えるわけがないって……また全員集まれるわけがないって)
曜(あの時の願いが叶うはずないって……そう、思い知らされたから……だから……)
曜(騙された悔しさよりも……悲しさの方が、ずっと勝ってるんだよ)
10 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/12/13(水) 08:25:07.09 ID:8Vh1voRqO
〜〜〜
曜のアパート
曜「はぁ……疲れたなあ」
曜「うわ、ひっどい顔……寝不足で目が赤くなってる」
曜「こんな顔、刑事さんに見られちゃったのかあ」
曜「……ま、どうでもいいや。どうせ犯人見つからないだろうし……捜査できないなら連絡が来ることもないし、もう会うこともないよね」
曜「……千歌ちゃん」
曜「この写真見ると、いつもはニヤニヤしちゃうのにさ」
曜「ごめん……今日は、全然笑えないや」
曜「う……うぅっ……」 ポロポロ
曜「あ……ああああああああああッッッ!!」
曜「千歌ちゃん……梨子ちゃん……みんな……!!」
曜「会いたい……会いたいよ……!」
曜「なんでこんな目に……酷い……酷いよ、神様……」グスッ
11 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/12/13(水) 08:26:44.41 ID:8Vh1voRqO
〜〜〜
曜『千歌ちゃん、待ってよ〜』
千歌『曜ちゃーん! 早く早く〜!』
曜『千歌ちゃ……わっ!』ベタッ
曜『いたいよ……うえぇ……』
千歌『も〜、曜ちゃんのドジ』
曜『だってぇ……』ウルウル
千歌『ほら、泣かないで?』ナデナデ
曜『……うん』
千歌『痛いの痛いの、とんでけ〜!』
曜『そんなのじゃ、痛いの治らないよ〜』
千歌『じゃあ、飛んでいくまでやる!』
曜『えぇ……』
千歌『曜ちゃんを傷つけるやつは、例え誰であっても許さないのだ!』
曜『千歌……ちゃん』
曜『……』ギュー
千歌『ふぇっ……曜ちゃん?』
曜『千歌ちゃんがいればいい!』
千歌『私が……?』
曜『千歌ちゃんがいれば、痛みなんてどうってことないよ!』ニコッ
千歌『そっかー……わかった!』
千歌『なら千歌が、ずーっと傍にいてあげる!』
曜『ほんと!?』
千歌『うん! 約束!』
曜『フフッ……ありがとう、千歌ちゃん!』
12 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/12/13(水) 08:29:07.29 ID:8Vh1voRqO
〜〜〜
曜「……ん……朝……か」
曜「……?」グスッ
曜「私……泣いて……?」
曜「そういえば……小さい頃の夢、見てたような……」
曜「……千歌ちゃんの嘘つき」ボソッ
ピンポーン
曜「……6時? こんな朝早くに……って、まさかもう夜!?」
曜「私、そんなに寝て……ヤバッ、講義1限からだったのに……あちゃー」
曜「っていうか、今日はバイトもあるのに……ああ! めっちゃ電話来てるし……!!」
曜「はぁ……誰だろう」
曜「はーい……新聞なら要りませんよー」ガチャッ
曜「……え?」
梨子「――久しぶり、曜ちゃん」
曜「え……嘘……どうして?」
曜「だって、梨子ちゃん……ピアノで海外に行ったって……」
梨子「さっき帰国したの。と言っても、またすぐに…………曜ちゃん?」
曜「梨子……ちゃん」ウルウル
梨子「曜ちゃん……? 一体何が……」
曜「梨子ちゃんっ!!」ギュー
梨子「え!? ちょっ……!!? えぇっ!??///」
曜「梨子ちゃん……りこちゃんだ……本物だぁ……!」
梨子「曜ちゃん……もう……///」
梨子(人の気も知らないで……全く)ギュー
13 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/12/13(水) 08:30:54.89 ID:8Vh1voRqO
〜〜〜
曜の部屋
梨子「ちょっと……曜ちゃん」
曜「グスッ……何?」
梨子「いつまでこうしてるつもり?」
曜「私の気が済むまで」ギュー
梨子「気が済むまでって……えぇ……///」
曜(ごめんね梨子ちゃん。迷惑……だよね)
曜(でも……こうしてないと、今にもどうにかなっちゃいそうで)
曜「今日、梨子ちゃんが来てくれて……よかった」
梨子「曜ちゃん……?」
梨子(これは……ただ事じゃないわね)
14 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/12/13(水) 08:32:53.10 ID:8Vh1voRqO
曜「梨子ちゃん……今日、泊まってってよ」
梨子「えぇっ!?」
曜「ダメ……かな? 迷惑だったら……」
梨子「いや、その……寧ろ、嬉しいかな」
梨子「実は、飛行機の便が遅れちゃって……」
梨子「沼津に帰れないことはないんだけど、今日は東京で泊まれないかなーって探してたところだったの」
曜「そうなんだ……」
梨子「最悪ネットカフェに泊まることも考えてたんだけどね」
梨子「だから、曜ちゃんからそう言ってくれて……本当に嬉しい」
曜「そっか……じゃあ、丁度よかったかな」
梨子「え?」
曜「実は今日、盛大に寝坊しちゃって……色々行く気無くしてたところだったから」
曜「いつも通りに家を出てたら……今頃梨子ちゃん、ネカフェ宿泊が確定してたところだったよ」アハハ
梨子「そっか……怪我の功名ってやつね」
曜「久しぶりに会えて、本当に嬉しい」ジワッ
梨子「曜ちゃん……私もよ」ナデナデ
15 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/12/13(水) 08:34:41.37 ID:8Vh1voRqO
曜「梨子ちゃんの体、あったかいね」
梨子「なっ……そ、そうかしら……///」
曜「手があったかい人は、心が冷たいっていうけど……体があったかい人はどうなんだろうね」
梨子「曜ちゃんの体も、相当あったかいわよ?」
曜「……こんなに心が冷たいのに?」
梨子「ええ……あったかいわ」ナデナデ
曜「……そっか」ギュー
曜「――私ね……詐欺に遭ったんだ」
梨子「……え?」
曜「35万円。騙し取られちゃった」
梨子「三十……五万……!?」
曜「うん……それで……」カクカクシカジカ
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