イヴ・サンタクロース「高峯のあの事件簿・プレゼント/フォー/ユー」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2017/12/12(火) 20:32:29.36 ID:8PMV4OlW0
サンタクロースとトナカイを名乗るテロリストが大型ショッピングモールを占拠し、喫茶店のマスター相原雪乃が人質に取られてしまう。

前話
安斎都「高峯のあの事件簿・夏と孤島と洋館と殺人事件と探偵と探偵」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1503557618/

あくまでサスペンスドラマです。
設定はドラマ内のものです。

それでは、投下して行きます。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1513078349
2 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2017/12/12(火) 20:34:04.33 ID:8PMV4OlW0
メインキャスト

高峯のあ 探偵、高峯ビルのオーナー
木場真奈美 助手その1
佐久間まゆ 助手その2

相原雪乃 高峯ビル2階にある喫茶店St.Vのマスター
安部菜々 喫茶店St.Vの店員
槙原志保 喫茶店St.Vの店員

高橋礼子 警察署長
柊志乃 刑事一課長
和久井留美 刑事、和久井班班長
大和亜季 刑事、和久井班
新田美波 刑事、和久井班

ヘレン

松山久美子 科捜研所属
梅木音葉 科捜研所属

イヴ・サンタクロース テロリスト
3 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2017/12/12(火) 20:35:09.35 ID:8PMV4OlW0


さぁさぁ、イーグルさん達より速い、私の大好きなトナカイさん達〜。

号令のお時間です〜。

ナーウ、ダッシャー、ダンサー、プランサー!

あらあら〜、元気なのは良いですけど、ケンカはダメですよ〜。

オン、賢いコメット!カワいいキューピッド!ムキムキなドンダー!

良いお返事ですよ〜。

姉御肌のヴィクセン、赤鼻のルドルフ、元気ですかぁ〜?

オッケーですぅ。最後はブリッツェン!

はーい、全員集合です〜。準備は良いですかー?

サンタとトナカイの目的地は一緒、今回は建物に立てこもり!

今日は何の日?

そう、クリスマス!みんな〜、号令!

ダッシュアウェイ、ダッシュアウェイ、ダッシュアウェイオール!

ステキなクリスマスを届けに行きますよ〜!

序 了
4 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2017/12/12(火) 20:37:21.45 ID:8PMV4OlW0


大型ショッピングモール・2階・和風カフェ

相原雪乃「美味しいですわ」

相原雪乃
喫茶St.Vのマスター。今日は茶葉の買い付けに来た。ただいま、敵情視察中。

雪乃「チェーン展開しただけあって、緑茶も和風スイーツも侮れませんわね……」

白菊ほたる「へくちっ……」

白菊ほたる
雪乃の二つ隣の席に座っている少女。喫茶店で待ちぼうけしている。

雪乃「冷房が強いような気がしますわね……あら?」

ほたる「上着はかばんに入って……入ってませんでした……」

雪乃「館内放送、クリスマスキャロルでしょうか?まだ8月ですのに」

ほたる「外に行こうかな……ずっと座ってたら店員さんに悪いでしょうから……」

館内放送『ピンポンパンポーン』

雪乃「あわてんぼうさんがいらっしゃるのですね、きっと」

館内放送『みなさん〜、メリークリスマス!』
5 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2017/12/12(火) 20:38:08.90 ID:8PMV4OlW0
ほたる「え……?」

雪乃「女性の声ですが……」

館内放送『サンタクロースから良い子と良い子から大人になった皆様にお願いです〜』

ルドルフ「やぁ。目が合ったね」

ルドルフ
トナカイの一人。顔はマスクで見えないが、細身で長身の男性のようだ。マスクの鼻の部分が赤く塗られている。

館内放送『今から占拠しちゃいますよ〜。声をかけた以外は急いで逃げてくださいねぇ〜』

ルドルフ「そういうわけで、君は席に戻ってくれるかな?」

ほたる「……ひっ」

ルドルフ「そんなに怯えなくても……傷ついちゃうよ。そこのお姉さん?」

雪乃「わ、私でしょうか……?」

ルドルフ「そう。誕生日は?」

雪乃「え?」

ルドルフ「誕生日は何月何日かな?君は座ってて、俺が銃を持ってる悪い人なのはわかるよね?」

ほたる「……はい」

雪乃「2月14日ですけれど……」

ルドルフ「ふーん……バレンタインデーだからライバルだ。じゃあ、君も残ってね。その子と仲良くお茶でもしてて」

雪乃「えっと……よろしくお願いしますわ」

ほたる「え、あ、はい……」

ルドルフ「ほらほら、他の人は逃げないと閉じ込められちゃうよ!」

パーン!

ほたる「ひっ……」

雪乃「大丈夫ですわ、慌てないでくださいな……」

ルドルフ「ドンダーかな、威嚇の空砲だよね。これで逃げる速さが上がったかな?」

雪乃「あの、あなたは」

ルドルフ「うーん、そうだね、世間的にはテロリストと呼ばれてるけど……」

イヴ・サンタクロース「ルドルフ〜、女の子とお話中ですか〜?」

イヴ・サンタクロース
白髪と黄金色の瞳が特徴的な女性テロリスト。どこか楽し気な表情をしている。

ルドルフ「俺はルドルフ、トナカイだよ。綺麗なサンタさんに仕えてるんだ」
6 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2017/12/12(火) 20:38:41.67 ID:8PMV4OlW0
イヴ「こんにちは〜」

雪乃「……こんにちは」

イヴ「お二人とも、寒くはないですかぁ?」

雪乃「寒さ……冷房は効いているようですが」

イヴ「ルドルフ、上着を二人に持ってきてあげてくださいねぇ。今日はクリスマスですから、10℃くらいの予報ですよ〜」

ほたる「何を言ってるんでしょう……」

雪乃「わかりませんわ……」

ルドルフ「そこはアウトドア用品店みたいだね。待ってて」

イヴ「トナカイさん達〜、お客さん達が十分に逃げたらシャッターを閉めてください〜」

雪乃「あ、あの!」

イヴ「どうしましたぁ?」

雪乃「あなたは何をしているの、でしょうか」

イヴ「銃器と爆弾を使って、ショッピングモールに立てこもるんですっ!」

雪乃「あっけらかんと言いますのね……」

イヴ「それじゃあ、楽しいクリスマスを過ごしてくださいね〜」
7 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2017/12/12(火) 20:43:03.91 ID:8PMV4OlW0


高峯ビル・2階・喫茶St.V

喫茶St.V
相原雪乃が経営する喫茶店。本格派の紅茶はもちろん、軽食やデザートも美味。

安部菜々「これでお店は閉店、っと」

槙原志保「ナナさーん、コーヒーが入りましたよー」

安部菜々
喫茶St.Vの従業員。メイド喫茶の店長が雪乃の知り合いだったことが縁で転職した。

槙原志保
喫茶St.Vの従業員。昔からウェイトレスをしていたが、雪乃とお店を気に入りSt.Vで働くようになった。

菜々「はーい。今日のお昼は」

志保「ビーフシチューと残りのサンドウィッチですっ。ナナさん、タマゴとツナのどっちがいいですか?」

菜々「そうですねぇ、ナナはタマゴにします。あっ、今日のコーヒーはカフェオレなんですねぇ♪」

志保「深い味なので牛乳と相性が良いんです。紅茶はマスターが帰ってきてからのお楽しみです♪」

菜々「美味しそうですねぇ。いただきまーす」

志保「いただきます!」

菜々「マスター、良い紅茶を手に入れましたかねぇ?」

志保「マスターだから、絶対にそうですよ」

菜々「そうでした、だってマスターですからねっ」

志保「ショッピングモールにお店を構えている知り合いの所に行ってるんですよね」

菜々「楽しみですねぇ。きっと美味しいんだろうなぁ……」

志保「でも、ランチタイムが終わったところでお店を閉めて良かったんでしょうか?」

菜々「志保ちゃん、マスターがせっかくお休みをくれたんですよ!」

志保「そうでした、しっかり休まないとですね!」
8 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2017/12/12(火) 20:43:36.52 ID:8PMV4OlW0
菜々「そうですよっ!予定はあるんですか?」

志保「パフェを食べに行きますっ」

菜々「いつも通りじゃないですかっ」

志保「いつも通りが一番休めるんです。ナナさんは?」

菜々「ナナはワイドショーを見て、お洗濯して、お昼寝するんです」

志保「わぁ……休日らしくて、最高です!」

菜々「そうですよね、あっ、テレビをつけましょう。ワイドショーの時間です」

志保「ナナさん、私思うんです」

菜々「急にかしこまって、どうしたんですか?」

志保「このお店、良いですよね。移転して立地も良くなりましたし」

菜々「今更何言ってるんですかぁ。だって、マスターのお店ですよ」

志保「その通り、なんたってマスターのお店ですから!」

菜々「マスターと言えば、まずは名前です。相原雪乃ですよ、相原雪乃」

志保「名前も良いですね。でも、髪です。あの長さであの美しさ、仕事中も様になります」

菜々「髪の毛、はわぁ……確かに。でも、この喫茶店は軽食も自慢です!」

志保「マスターは料理も得意で、本当に凄いですっ」

菜々「紅茶は正真正銘のエキスパートですからねぇ。マスターの紅茶は絶品です、国宝です」

志保「でも、それだけじゃないんですっ!コーヒーも他の飲み物も研究を欠かしませんからね!」

菜々「努力家なんですよねぇ。お嬢様育ちとは思えません」

志保「ご両親から借りたお金を返しきって、ここを自力で買ったんですよね」

菜々「経営も出来ちゃうんですよぉ。しかも、ずっと黒字ですっ!」
9 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2017/12/12(火) 20:45:20.72 ID:8PMV4OlW0
志保「声も良いです」

菜々「わかります……お客さんがずっとここにいたくなるような」

志保「優しくて」

菜々「それでいて元気をくれるような」

志保「お嬢様らしい天真爛漫さを残していて」

菜々「人の話をよく聞いてくれるんですよねぇ。志保さん、ナナは主張したいことが!」

志保「なんでしょう?」

菜々「マスター、メイド服似合いそうですよね?」

志保「ふっ……」

菜々「どうして、鼻で笑うんですかぁ!?」

志保「ナナさん、わかってませんよ」

菜々「どういうことですか」

志保「私達がウェイトレスやメイド衣装を着る側なんですよ!マスターに使用人の服装をさせるなんて!今の職に誇りはないんですか!」

菜々「はっ……!」

志保「もちろん、マスターの素晴らしいスタイルをもってすれば似合わない衣装などありませんけれど!今度、着てもらいましょう!」

菜々「志保さん……ナナが間違ってました!でも、メイド服は家から持ってきます!」

志保「サイズは直せますか!?ピチピチもいいですけど」

菜々「お裁縫は何年か前の17歳の頃から得意ですよぉ!」

志保「そういえば、ケータイで調べていたんです。このドレスとか、どうでしょうか」

菜々「……志保ちゃん、ノーです」

志保「どうしてですか、絶対に着こなせますよ」

菜々「マスターの良さは自然とにじみ出る柔らかさです。こんな露出の多い服装では、直接攻撃力が高すぎますっ!」

志保「はっ……!」

菜々「志保ちゃん、冷静に。マスターの魅力はそんなことしなくてもいいんですよぉ」

志保「ナナちゃん、間違ってました。抱き付きたくなるほど、いつも魅力的なのに」

菜々「わかってくれればいいんです。仕事中には腰に抱き付かないように」

志保「でも、本当に、良い人の元で働けて幸せです……」

菜々「わかる……」
10 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2017/12/12(火) 20:45:46.78 ID:8PMV4OlW0
志保「……あら?」

菜々「どうしました、テレビなんか指さして」

志保「マスター、ですよね」

テレビ『犯人と思われるグループが動画サイトにあげたものには、人質の姿が見られます』

菜々「え、えぇぇぇ!」

テレビ『犯人の情報と要求は明らかにされていません。一刻も早い解決が望まれています』

志保「そんな!」

菜々「立てこもり犯の人質に……マスターが」

志保「あんなことやこんなことをされるに決まってます!」

菜々「早く助けないと!」

志保「でも、どうしたら」

菜々「まずは、武器!」

志保「モップで良いですか!」

菜々「ウサミンマジカル掃除機!」

志保「合言葉は!」

菜々「心にあい!」

志保「由愛と悠貴!」

菜々「装備は」

志保「ウェイトレス姿で良いですか!?」

菜々「ナナとウサミンメイドの戦闘服はメイド服ですから、大丈夫です!」

志保「そうだっ、味方を集めましょう!」

菜々「上の階に頼りになる人がいるじゃないですかぁ!」

志保「善は急げですっ!」

菜々「行きますよっ!」
11 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2017/12/12(火) 20:46:34.13 ID:8PMV4OlW0


高峯ビル・3階・高峯探偵事務所

高峯探偵事務所
高峯のあが経営する探偵事務所。防音構造のため、2階の騒動は聞こえていない。

高峯のあ「……よし」

高峯のあ
探偵。ここ数日ソファーと一体化しつつ、ケータイで出来るゲームに熱をあげていた。

木場真奈美「終わったか?」

木場真奈美
のあの助手1。最近、副業でアイドルへレッスンをすることが多いとのこと。

のあ「ええ、真奈美はヒマなのかしら」

真奈美「のあに言われたくはないな」

のあ「探偵業はいつ仕事が入るかわからない、だからこそ暇な時間は全力に使うのよ」

真奈美「はいはい。ところで、佐久間君が心配してたぞ」

佐久間まゆ
のあの助手2。お料理とあみものが好きな優しい女の子。同級生とお出かけ中。

のあ「何を?まゆは出かけたのかしら?」

真奈美「佐久間君は高森君達と図書館で夏休みの課題をやるそうだ。心配してるのは、のあがずっとソファーに寝ころびながらゲームをしていることだ」

のあ「大丈夫よ。目標値はクリアした」

真奈美「それなら、生活態度を改めたまえ。興味本位に聞くが、何をやっていたんだ?」

のあ「真奈美、知らないの?」

真奈美「目的語がないぞ」

のあ「これよ」
12 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2017/12/12(火) 20:47:35.57 ID:8PMV4OlW0
真奈美「これは知ってる。実際のアイドル楽曲が収録されているリズムゲームだ」

のあ「みくにゃんの楽曲が収録されているの。そして、今週はみくにゃんウィークだったわ」

前川みく
愛称はみくにゃん。サインはとてもカワイイのよ、とっても。幾らでも欲しいわ。

真奈美「課題曲をやるとポイントが貯まって、順位次第で商品が貰えるやつか」

のあ「ええ。1位になるとサイン入り色紙が貰えるの」

真奈美「つかぬ事を聞くが。のあは何位だ?」

のあ「愚問ね。NoaNyaN0222は全国1位よ。終了時刻は今日の21時だけど、逃げ切れるでしょう、ケタが違うわ」

真奈美「のあ、貯金をつぎ込んでいないよな?」

のあ「もちろん、仮想通貨を売った金額以上は入れていない」

真奈美「金と暇をフル活用してるな」

のあ「使えるものは使うわ。それがファンの務めよ」

真奈美「やりすぎだと思うがなぁ」

のあ「フム……」

真奈美「どうした、神妙な声を出して」
13 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2017/12/12(火) 20:48:05.92 ID:8PMV4OlW0
のあ「首と指、それに肩と腰も少し痛いわ」

真奈美「原因は明白だろう。運動でもしたらどうだ、最近ランニングもしてないだろう」

のあ「走っていたわ」

真奈美「意味が違う」

のあ「まずはストレッチからするとしましょう」

コンコン!

真奈美「おや、お客様だ」

菜々「失礼しますっ!」

志保「お邪魔します!」

真奈美「菜々君じゃないか、どうした?」

のあ「……モップと掃除機を持ってどうするつもりよ。掃除はいらないわよ、真奈美とまゆがちゃんとしてくれてるわ」

真奈美「少しは掃除も手伝ってくれ。のあの物が大半なんだから」

菜々「まゆちゃんと真奈美さんが立派なことは、ナナ達も知ってます!」

真奈美「いや、本当にどうした、様子がおかしいぞ?」

志保「ナナちゃん、のあさん達は状況を理解してないみたいです!」

菜々「一刻を争うのに!説明してる時間はありませんよ!」

のあ「時間はなくても説明してちょうだい」

志保「マスターが捕まったんです!」

真奈美「何の話だ?」

菜々「だから!一刻も早く助けに行かないといけないんですよ!」

のあ「真奈美、仕事の依頼のようだけど断っていいかしら」

真奈美「断るのは得策じゃないと思うぞ。なぜなら」

菜々「あー埒が明きません!場所はわかってます!突撃ですよ!」

のあ「状況がつかめないけど、モップと掃除機で解決できる事態じゃなさそうね」

真奈美「止めないと誰かの仕事が増えるぞ」

のあ「わかったわ。雪乃は大切な店子よ、もちろん協力するわ」

志保「本当ですか!?」

菜々「さぁ、武器を持ちましょう!」

真奈美「ただし、のあの言うことは聞いてくれ」

のあ「私からは4つ。1つ、手に持っているものを床に置きなさい。2つ、そこのソファーに並んで座りなさい。3つ、真奈美が持ってくる飲み物で落ち着きなさい。4つ、何があったか冷静に話しなさい」

真奈美「ということだ。落ち着いてくれ」
14 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2017/12/12(火) 20:49:14.27 ID:8PMV4OlW0


清路警察署・科捜研

松山久美子「このご時世とはいえ、日本でテロリストの立てこもり事件とはね……」

松山久美子
科捜研所属。常に白衣着用の美女。科捜研のテレビは新調されたから、オペラ鑑賞に最適だそうよ。

梅木音葉「久美子さん……」

梅木音葉
科捜研所属。久美子の後輩らしく常時白衣着用。対策本部にテロリストの映像を渡してきた。

久美子「音葉ちゃん、映像渡してきた?」

音葉「はい……何か新情報は」

久美子「特には。警察よりテレビとネットの速報性がまだ早い状況ね」

音葉「犯人からの映像の追加もないようです……」

久美子「動画、どこから投稿されたかわかってた?」

音葉「はい。ショッピングモールのWifiからケータイショップのタブレットで撮影されたようです……」

久美子「内容は犯行声明よね。何人か人質を取り、それ以外の人は追い出した」

音葉「映像はゆっくりと一周して、様子を映すだけ……」

久美子「犯人も人質も何人か映ってたわね」

音葉「画面に動画を出します……どうぞ」

久美子「この声、女の子?」

音葉「撮影している人物が話しているようですが……どちらでしょうか……」

久美子「この子がサンタ?」

音葉「はい……赤い服装の人物が映っています……」

久美子「人質じゃなくて犯人なのよね、このサンタ」

音葉「なぜ堂々と映っているのでしょう……少し進めます」

久美子「人質、顔を完全に覆うマスクで武装したテロリストも映ってる」

音葉「どうして……上着を着ているのでしょう……?」

久美子「んー……あ、音葉ちゃん、ちょっと止めて」

音葉「どうしましたか……?」

久美子「そこのカフェ、拡大できる?」

音葉「今のタブレットは無駄に高画質ですから……あら」

久美子「雪乃さんよね、St.Vのマスター」

音葉「そのようですね……お怪我はないようですが……」

ヘレン「クミコ、オトハ、すぐにその店に案内なさい」

ヘレン
科捜研に堂々と入ってきた女性。かなり貫禄を備えるが、同程度の怪しさも放っている。
15 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2017/12/12(火) 20:50:24.83 ID:8PMV4OlW0
音葉「……」

久美子「……」

ヘレン「どうしたのかしら、科捜研の女はスピードが取り柄でしょう?」

久美子「申し訳ありませんが、どちら様でしょうか」

ヘレン「ノープロブレム、信じなさい」

久美子「そう言われても」

音葉「名前を何故知ってるのでしょうか……」

ヘレン「職員の名前と顔を把握することは、円滑な捜査に必要なこと。当然よ」

久美子「凄い人なのかしら」

音葉「凄い雰囲気は漂っていましたが……」

高橋礼子「松山さん、梅木さん、私から説明を」

高橋礼子
清路警察署署長。警視庁のキャリアからドロップアウトしてきた、気品と豪傑を併せ持つ女性警察官。

久美子「署長!お疲れ様であります!」

礼子「彼女に協力してあげてちょうだい。いいかしら?」

久美子「署長のお言葉なら、もちろんです」

音葉「もちろんですが……彼女はどなたなのでしょうか」

礼子「紹介するわ、ヘレンよ」

久美子「警察関係者なのですか?」

礼子「ええ。テロと国際的な組織犯罪を専門とする調査官よ」

久美子「調査官殿とお呼びすれば?」

ヘレン「ヘレンと呼ぶといいわ。さぁ、案内なさい」

音葉「呼び捨ては少し……」

ヘレン「私はヘレンであり、つまりヘレンよ。気にせず呼びなさい」

音葉「お望みであれば……従いましょう」

久美子「なんだか、凄い人に巻き込まれたような」

音葉「そのようです……」

久美子「あの署長、一つだけ質問を」

礼子「言ってみなさい」

久美子「ありがとうございます。事件が起こった後に調査官殿がこの場にいるのは、何故でしょうか」

音葉「もしや……事前情報があったのでは」

ヘレン「答えるわ。彼女が日本に来ていたことは把握していなかった」

久美子「なら、何を知ってたのですか?」

礼子「話は後で。いいわね」

久美子「はいっ」

音葉「承知しました……」

礼子「ヘレン、そっちは任せるわ」

ヘレン「任せなさい、このヘレンの名にかけて必ず解決するわ」
16 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2017/12/12(火) 20:52:50.06 ID:8PMV4OlW0


高峯探偵事務所

のあ「状況は把握した。落ち着いたかしら」

菜々「はい……ちょっと慌てすぎました」

志保「私もです……」

のあ「よろしい。私達が状況を判断できる材料は」

真奈美「報道と」

のあ「犯人が投稿した動画だけ」

真奈美「相原君であることは間違いなさそうだ」

志保「はい、間違いありません」

のあ「あなた達が見間違えることはないでしょうね」

真奈美「だが、問題は」

のあ「私達がどうこう出来る問題じゃないことね」

菜々「そ、そんなぁ……」

志保「無事かどうかだけでも確かめられませんか!?」

真奈美「和久井警部補にでも連絡してみるか?」

のあ「大忙しでしょうね。出ないでしょうね、出ても一言だけで終わるのが関の山」

真奈美「そうか」

のあ「だから、嫌がらせも兼ねて連絡してみましょう」

真奈美「のあにとって和久井警部補は何なんだ」
17 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2017/12/12(火) 20:53:33.10 ID:8PMV4OlW0
のあ「あら、出たわ」

志保「マスターは無事ですか!?」

和久井留美『探偵さん、なにかご用かしら』

和久井留美
刑事一課和久井班巡査部長。非常時にも関わらず、声は冷静。

のあ「あら、ヒマなの?」

留美『犯人から要求もないし、人質は全員無事のようだから。それに、今回はただのお手伝いよ』

のあ「人質は無事なの?」

留美『外へ逃がされた客の話だと手荒なマネはしていないようね。残りの情報は動画だけ』

のあ「フム。情報はあまりない、と」

留美『そういうこと。あなたとお話できる時間はあるのよ』

のあ「なるほど」

留美『それに見知った顔がいたから、電話が来そうだから構えてたの』

のあ「雪乃がいるのを把握してるのね、頼もしいわ」

留美『それで、サンタについての情報でも教えてくれるのかしら?』

のあ「残念。電話してみただけよ」

留美『そう。とりあえず、相原さんはおそらく無事よ』

のあ「わかった。伝えておくわ」

留美『何かわかったら伝えて』

のあ「ええ。お元気で」

真奈美「状況は」

のあ「進展もしてない代わりに、雪乃は無事よ」

菜々「本当……ですか?」

のあ「残念ながら、確証はないわ」

志保「そうですか……」

真奈美「これから、どうするんだ?」

のあ「とりあえず、情報収集でもしようかしら」

真奈美「どうやって?」

ヘレン「お困りのようね」
18 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2017/12/12(火) 20:54:10.63 ID:8PMV4OlW0
のあ「……どちら様かしら」

真奈美「自然と入ってきたな」

志保「えっと、いらっしゃいませ?」

菜々「お帰りなさいませ、お嬢様?」

真奈美「どっちも不正解だと思うが、おそらく」

ヘレン「喫茶店の店員はそこの二人ね」

久美子「ヘレン、そんなに慌てなくても」

音葉「こんにちは……高峯さん、木場さん」

真奈美「久美子君に音葉君」

ヘレン「ヘレンよ、よろしく」

菜々「あ、はい、よろしくお願いします」

志保「えっと……」

ヘレン「ユキノ・アイハラを助けに来たわ」

菜々「本当ですか、ヘレンさん!」

ヘレン「ヘレンの名にかけて嘘をつかないわ」

のあ「久美子、彼女は」

久美子「署長の知り合いの調査官なんだって」

真奈美「調査官?」

ヘレン「ここの家主は、あなたね」

のあ「ええ。その通りだけど」

ヘレン「ご協力を願えるかしら?」

のあ「雪乃の無事が確保できるのであれば」

ヘレン「犯人は人質を殺して突入の口実を与えるほどマヌケではないわ」

のあ「それで、何をしようとしているのかしら」

ヘレン「ユキノに協力してもらうわ」

志保「マスターに、ですか?」

ヘレン「ディスプレイ、マイク、スピーカー、それとレコーダは用意できるかしら」

のあ「そこのテレビとPCで動くものなら」

ヘレン「充分よ。先ほどオトハから聞いたのだけれど、防音室だそうね」

のあ「その通りだけれど」

真奈美「音葉君にそのことを言ったか?」

音葉「言われてはいませんが……わかります」

ヘレン「オーケー。ここをヘレンの調査本部とするわ」
19 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2017/12/12(火) 20:54:54.85 ID:8PMV4OlW0
真奈美「いいのか?」

のあ「私は構わないけれど。真奈美、まゆにしばらく帰らないように連絡しておいて」

真奈美「わかった。ヘレンに言われた器材の準備もしよう」

音葉「器材準備はお手伝いします……」

のあ「ヘレン、質問をしていいかしら」

ヘレン「場所を借りる身、何でも質問なさい」

のあ「どうして、警察に協力しないのかしら」

久美子「さっきから聞いてるけど、答えてくれないのよね」

ヘレン「場所は変わった。答えましょう、理由は2つ」

のあ「2つ、と」

ヘレン「犯人が警察と会話し始めるのは時間の問題よ。その際に、犯人の目から離れるためよ」

のあ「フム。独自行動といったところね」

ヘレン「2つ目は警察に、私の情報を流さないためよ」

久美子「え?」

ヘレン「クミコとオトハは信頼できるわ。ナナとシホも態度を見ればわかるわ」

菜々「えっとぉ……」

志保「もしかして、お邪魔ですか……?」

ヘレン「いいえ。あなた達の声だけで、一人の人質が安心する」

のあ「警察に内通者がいると?」

ヘレン「今回の立てこもりで協力している可能性はないとは言えない」
20 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2017/12/12(火) 20:55:35.75 ID:8PMV4OlW0
久美子「初耳なんだけど……のあさん、知ってた?」

のあ「ウワサだけよ。ヘレン、それなら私と真奈美は信頼できるのかしら」

ヘレン「逆に問うわ、モリアーティとホームズは同一人物なのかを」

のあ「他人の妄想で、誰かの見解を汚すべきではないわ」

ヘレン「では、それでいいでしょう」

のあ「あなたには別の答えがありそうだけれど」

ヘレン「語るべき時ではないわ。シホ!」

志保「はい!お呼びですか?」

ヘレン「ユキノは紅茶のエキスパートだそうね、紅茶をいただけるかしら」

志保「わ、わかりましたっ」

菜々「あの、ヘレンさん!」

ヘレン「ナナ、落ち着きなさい。必ずうまく行くわ」

菜々「いえ、それは信じますけど、その、何をするんですか?」

ヘレン「簡単よ」

のあ「簡単?」

ヘレン「ユキノに電話をかけるのよ」
21 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2017/12/12(火) 21:00:24.65 ID:8PMV4OlW0


清路警察署・刑事一課和久井班室

大和亜季「警部補殿、質問をしてもよろしいでありますか」

大和亜季
刑事一課和久井班所属。階級は巡査部長。大事件を前に士気は高まるが、おあずけ状態。

留美「私達が主役を張ることはないわよ」

亜季「やはり、そうでありますか」

新田美波「でも、お仕事は来ますよね?」

新田美波
刑事一課枠班所属。階級は巡査。生真面目で集中が持続する性格は海洋学者の父譲りだとか。

留美「心構えはしていて。何が起こるかはわからないから」

亜季「了解であります」

美波「対策室の様子はモニターに映ってますので、見ていてくださいね」

留美「見てはいるわ、安心して」

亜季「先ほど資料を頂いたであります。どうぞ」

留美「犯行グループについて、ね」

亜季「どこの誰かが情報を提供したかわかりませんが、犯行グループは特定できているようであります」

留美「署内とは限らないでしょう。警察組織の誰か」

美波「えっと、主犯の名前は」

留美「サンタクロース。館内放送や動画でも名乗っていたわ」

亜季「自称イヴ・サンタクロース。年齢不詳、出身はおそらくグリーンランド、母国語の他に英語、韓国語、アラビア語とそれに」

美波「日本語が話せるみたいですね」

留美「テロリストも語学力が必要な時代なのね」

亜季「フムン、トナカイになぞらえた部下が9人いるでありますか」

美波「ドンダー、キューピッド、コメット、ダッシャー、ダンサー、プランサー、ヴィクセン、ルドルフ」

留美「それとブリッツェン。彼、彼女かもしれないけど」

亜季「ドンダーとヴィクセンは先の中東での戦闘で死亡しているでありますか」

美波「あれ、でも犯人は10人だって」

亜季「既にメンバーを補充したようでありますな」

留美「ルドルフは恰幅の良い男性だった」

美波「だった?」
22 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2017/12/12(火) 21:01:01.56 ID:8PMV4OlW0
留美「目撃情報だと細身の男性」

亜季「メンバーが変わってるのでありますか」

美波「なるほど……」

留美「主犯格はともかく他のメンバーを特定は出来なそうね」

美波「犯人が誰かわかったなら、対処はできそうですね」

亜季「いいや、むしろ逆かもしれませんな」

留美「サンタと言えばそのプレゼント」

美波「中東を中心に配ってるのは……」

亜季「オモチャやお菓子ではないようでありますな」

留美「そう簡単に動くわけにもいかないわけね」
162.40 KB Speed:0   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)