( ^ω^)夢の対決!零式艦上戦闘機vsP-51ムスタング!のようです

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29 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/15(金) 05:35:44.11 ID:1JRz/Hij0



( ゚∀゚)(……む、いっけね)


ジョルジュの目に不意に映ったのは、零戦ではないいくつかの空中の影。

この時、P-51と零戦の周囲には地表のギャラリーが迫力の空中戦を観戦できるよう、複数の映像中継用観測機O-47が大きな円を描いて飛行していた。


( ゚∀゚)(はいはい……分かってますよーだ)


ジョルジュはこれら“周囲の目”を意識し、操縦桿に据え付けられたトリガーに手をかける。

そして、眼前のサイト周辺を縦横無尽に動きまわる内藤の零戦のやや左側にあえて向け、両翼計6挺の12.7mm機銃を一斉に放った。


( ^ω^)「!」


放たれた模擬弾の雨嵐は、右下方へのスライスバック機動を行った内藤の零戦よりも大きく左方向へと流れてゆく。



30 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/15(金) 05:37:02.86 ID:1JRz/Hij0



( ^ω^)(わざと外しにきた……?)

( ゚∀゚)(外した……ま、狙ってねぇんだけど)


( ゚∀゚)(ギャラリーが望んでいるのは、いわゆる手に汗握る空戦って奴だからな)

( ゚∀゚)(こんなとこで早速“撃墜判定”を出したら、皆の興を冷ましちまうぜ)


P-51は降下した零戦の上空を、400キロを優に超えるスピードで抜けていった。

それに追いすがるべく、零戦は徐々にピッチを上げてロー・ヨーヨー(降下の加速を利用した戦闘機動)を敢行する。


( ^ω^)(とっくに遥か彼方かお……)


しかし懸命な立ち上がりも虚しく、二機の間隔は瞬く間に開いて行った。



31 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/15(金) 05:38:49.49 ID:1JRz/Hij0



( ゚∀゚)(……にしてもあのパイロット、なかなか良い腕をしてるんじゃねぇの?)

( ゚∀゚)(さっき俺が照準をわざと外す直前、後ろ取られてるにも関わらず的確な回避機動をとってきやがった)

( ゚∀゚)(あのマニューバは、明らかに素人仕込みの物じゃねぇ)


( ゚∀゚)(現代のHUDみてぇな照準は望めないにしろ、P-51のジャイロ照準器の命中精度は同時代のどのOPLよりも優れてるハズだ)

(;゚∀゚)(それを以てしても、こうちょこまかと動かれては……このまま当てに行くのはちと骨が折れるか?)


そう言いながらも、ジョルジュは不敵な笑みを崩すことなく操縦桿を手前に引き、ホールドを続けていた。

P-51は再び零戦の尻につくため、大きく綺麗な横旋回ラインを空中に描いてゆく。


……
…………
………………


32 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/15(金) 05:39:53.87 ID:1JRz/Hij0
一旦ここまで!


(誤字)
>>28 ×ブレイ
   〇ブレイク
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/15(金) 06:39:08.60 ID:/idakNBYO

P-51強い…
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/15(金) 07:53:17.34 ID:TrvBzSPSO
>>10
族長!族長!族長!族長!
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/15(金) 08:37:08.11 ID:LliHYHwe0
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/15(金) 22:04:40.22 ID:rAS/1BB/0
ブーンは勝算あんのかなー
37 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/16(土) 04:11:52.75 ID:TiNHv8pM0



( ^Д^)「P-51、やっぱ速ぇ〜!」

(’e’)「完全にゼロを手玉に取ってやがるぜ……」

(-@∀@)「そもそもの性能が違い過ぎて、勝負になってないのさ」

/ ,' 3「わし、今のフォッカーdr.1が潰れたらP-51に乗り換えちゃおう!」

川 ゚ 々゚)「デュフフwwwデュフフwww」


このとき、地表にいるギャラリーたちは皆、特設会場に設置された大型スクリーンに釘付けになっていた。

数十年越しに発揮されるP-51の戦闘力に、誰もが舌を巻いていたのだ。


(;´_ゝ`)「なぁ弟者……あのゼロってのはたしか、低空ではめちゃくちゃ強いって聞いてたんだが」

(;´_ゝ`)「これは一体どういうことだ?」

(´<_` )「確かに。一度でも150ノット以下の巴戦にもつれ込むことができるなら、ゼロに勝てる機体は殆どいなくなるはずだ」

(´<_` )「だが、あのP-51に乗っているジョルジュというパイロット……両機体の性能をしっかり知り尽くしている」



38 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/16(土) 04:32:43.11 ID:TiNHv8pM0



(´<_` )「ゼロに搭載されているエンジン“栄一二型”の過給機は、高度14000フィート前後の気圧に適応した一段一速」

(´<_` )「対して、P-51の“マーリンV-1650-7”の過給機は高度10000フィート以下の低空域……」

(´<_` )「そして、高度25000フィート以上の高空域にレンジを切り替えることのできる、二段二速のものなんだ」

( ´_ゝ`)「……かきゅーき???」

(´<_` )「過給機の仕組みとか、詳しく話せば長くなっちまうが……」

(´<_` )「つまるところ、今の二機がやり合っている高度ではP-51の方がエンジンにより多くの空気を送り込むことができて、直線を速く飛べるのさ」

( ´_ゝ`)「なるほど……」



39 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/16(土) 04:47:12.75 ID:TiNHv8pM0



(´<_` )「ゼロは空中を機敏に旋回することに長けている機体なんだが、言ってしまえば相手はそれに付き合ってやる義理なんかない」

(´<_` )「今の高度なら、ゼロはエンジンを全開にできない。だからゼロの尻について一度切り離されても、速度差を生かして旋回戦から容易に離脱……」

(´<_` )「安全域から後ろに回って、追いすがって、そしてまた尻につくなんて芸当ができる」

(;´_ゝ`)「そう聞くと、えげつねぇな……」


(´<_` )「モチロン、このやり方は戦いながら上手く高度を維持するパイロットの技量があってこそなんだが」

(´<_` )「腕が良いよアイツ。並のパイロットならいざ知らず、間違ってもゼロにとって得意な戦いはさせてくれないだろうな」




(´ ω `)「あんたら、忘れちゃいねぇかい」



40 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/16(土) 05:09:09.11 ID:TiNHv8pM0




(´<_`;)「!?」

(´・ω・`)「ここ、失礼するよ……どっこいしょういち」

(;´_ゝ`)(誰だこのおっさん!?)



(´・ω・`)「ありゃカツオb……違った、P-51の本来のやり方じゃねぇぜ」

(´<_` )(あれ、日本人……?)




41 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/16(土) 05:19:50.06 ID:TiNHv8pM0




( ´_ゝ`)「おじさん……それはどういうことだい?」

( ´_ゝ`)「その、本来のやり方じゃないってのは」

(´・ω・`)「あのP-51が演じている見栄えのいい格闘戦は、おそらく客を沸かすためのパフォーマンスだ」

( ´_ゝ`)「えぇ!?」

(´<_` )「……」

(´・ω・`)「早々に勝ちに行くなら、他にもっと“いい方法”があるからな」



(´<_` )(いい方法か、違いねぇや)



42 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/16(土) 05:21:34.03 ID:TiNHv8pM0




(´<_` )(そんなことは俺にだって分かってるさ)

(´<_` )(P-51に限らず、あらゆる高速戦闘機に共通して与えられた奥の手……)

(´<_` )(回避に秀でたあのゼロですら“それ”をやられちゃ一溜まりもないはずだ)

(´<_` )(今まで奴がそれをしてこなかったのも、きっとパフォーマンスに徹するためだろう)



(´・ω・`)「ま、試合はまだ始まったばかりでどう転ぶかはわかんねぇ」

(´・ω・`)「けども、あのP-51が相手なら……」

(´゚ω゚`)「ブーンもさぞかし苦しかろうよ……ヒヒッ」



(´<_`;)(それにしてもこの日本人……同胞が苦戦してるってのに)

(´<_`;)(気味の悪い笑顔を浮かべてやがる……)

(´<_`;)(一体、どっちの応援に来てるんだ?)


……
…………
………………


43 : ◆9l/Fpc6Qck [sage]:2017/12/16(土) 05:22:00.72 ID:TiNHv8pM0
今日はここまで!
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/16(土) 10:11:44.27 ID:v/SkArQn0
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/16(土) 15:41:06.22 ID:Iln93DmEo
46 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/17(日) 13:28:55.19 ID:ynk20hJo0



試合開始からおよそ8分、P-51は試合がはじまって幾度目かの仕掛けに入った。

ダダダと音を立て、吐き出された秒間50発の特殊塗料入り模擬弾が、またしても薄雲の中へと吸い込まれていく。


( ゚∀゚)(……なんなんだ、これ)


前方およそ200m先を飛んでいたゼロが、一時的に視界から消えた。

ジョルジュは操縦桿をすかさず手前に引く。

全身の血が頭へと昇る中、今度は天地の逆転した世界の中心にゼロの姿を捉えた。


華麗な宙返りを経て水平に戻った後、機体を軸に15度バンク。

ピッチを上げて右へと逃げるゼロを、P-51が大回りなアウトラインを描き、追う。


( ゚∀゚)「……!」


が、ゼロの姿はまたしても何処かへと消えてしまっていた。



47 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/17(日) 13:42:43.31 ID:ynk20hJo0



( ゚∀゚)「チッ……」


この瞬間、ジョルジュはゼロが右旋回の先の先へ到達していることを悟った。

それが分かると今度は巴戦を避けるべく機体を反転し、エンジン出力を上げながら左上方へと機体を逃がす。

ほどなくして安全圏に到達したP-51の機内から、彼は再度周囲を見渡した。


(゚∀゚ )(黒点が見えない……奴は下か)

( ゚∀゚)(てっきりこの隙に、高度を稼ぎにかかると思ったが)



( ゚∀゚)「……」



48 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/17(日) 13:50:05.80 ID:ynk20hJo0




( ゚∀゚)(先と変わらず、セオリーは守れている……はずだ)


矢のように大空を翔る軍馬の中、ジョルジュはある思案に耽りはじめていた。


( ゚∀゚)(試合が始まって、俺はまだケツに一度も付かれてはいない)

( ゚∀゚)(常に奴に食いつき……ペースを握っている)



(;゚∀゚)(それなのに……さっきから何なんだ!)

(;゚∀゚)(奴を追い回すごとに頭ン中で膨らんできやがる、この違和感は!?)



……
…………
………………


49 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/17(日) 14:03:15.66 ID:ynk20hJo0



(,,゚Д゚)「ハローさーん、コーヒー入ったっすけどー」

ハハ ロ -ロ)ハ「ジョルジュの奴……いつまで遊んでイルつもりダ」

(;,゚Д゚)「へ?」

ハハ ロ -ロ)ハ「あの二機が飛び上ガッテ、既に10分が経過しているんダゾ……」

(;,゚Д゚)「は、はぁ……」


会場の一角に設けられた本部テントの中。

ボーイング社民間小型機部門チーフメカニックのハローは、大型スクリーンに映るP-51の戦闘を見て、苛立ちを隠せずにいた。


(,,゚Д゚)「そうは言っても“まだ”10分じゃないっすか」

(,,゚Д゚)「模造機同士の戦闘時間って、大体こんなもんすよ?」

ハハ ロ -ロ)ハ「イヤ、“もう”10分ダ」



50 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/17(日) 14:16:11.19 ID:ynk20hJo0



ハハ ロ -ロ)ハ「今回、栄えアル初戦の相手トシテあのゼロを指名したノハ……」

ハハ ロ -ロ)ハ「言うマデもなく、アレがP-51にトッテ丁度良い“かませ犬”ダト判断したカラダ」



( ^Д^)「いけーっ!」

(’e’)「そこだっ、今だ!」



ハハ ロ -ロ)ハ「外のギャラリーを見てイレバ分かるダロウ」

ハハ ロ -ロ)ハ「かつてWWUの緒戦にアメリカが辛酸を舐メタ相手を、我々の手にヨッテ復元、模造した機体が“完膚ナキまでに”叩キノメス……」

ハハ ロ -ロ)ハ「カノ戦争を経験シタ者でなくトモ、見ている者にトッテはそれが最高の“カタルシス”でアリ」

ハハ ロ -ロ)ハ「ソシテ、我々が“正義”とナル、絶好の筋書きナノダ」

(,,゚Д゚)「……」



51 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/17(日) 14:31:35.04 ID:ynk20hJo0



ハハ ロ -ロ)ハ「ダガ……コレ以上の引き伸バシハ、カエッテ客に退屈感を与えカネナイ」

ハハ ロ -ロ)ハ「ソレヲいちばん理解シテイルのは、アイツのハズダロウ」


ハローはそう呟きながら、部下のギコから受け取った熱いコーヒーを口にした。


ハハ ロ -ロ)ハ(一体、どうしたと言うンダ……ジョルジュ)


そして、彼女はスクリーンから目を逸らし、ふわふわと立ち上がる湯気をしばし見つめていた。


ハハ ロ -ロ)ハ(このままデハ、お前は……)


……
…………
………………



52 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/17(日) 14:44:19.00 ID:ynk20hJo0





試合がはじまって15分が経過した。

先ほどと比べ、空には厚めの雲が風に流され集まってきている。


(;゚∀゚)「くっ……」

( ^ω^)「……」


それらを縫うようにして、二つの翼は相も変わらずこの大空を飛び回っていた。





53 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/17(日) 14:48:28.19 ID:ynk20hJo0



(;゚∀゚)(いい加減にしろ……もうとっくに、遊びは終わってんだ!)


ジョルジュはサイトの弾道予測を示すマーカーに従い、トリガーを引いた。


(;゚∀゚)「!」


だが、6挺の機銃が一斉に弾幕を放つ直前。

眼前のゼロは瞬間的に昇降舵を上げ、その全身を凧のように更なる高みへと運んで行った。



(;゚∀゚)(当たらねェ、クソが!)


空中にはただ、黒煙だけが漂っている。

P-51が旋回戦を切って、直線状にフル加速を行うさなか――

ここにきてジョルジュの心中には、一抹の不安が広がりはじめていた。



54 : ◆9l/Fpc6Qck [sage]:2017/12/17(日) 14:50:45.70 ID:ynk20hJo0
相変わらず短くて申し訳ないのですが、今回はここまでです

読んでくださっている方、本当にありがとうございます
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/17(日) 18:59:11.83 ID:P+FBmZDH0
ほう…乙
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/17(日) 19:24:44.87 ID:uQ2/vviG0
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/17(日) 21:02:13.50 ID:xIwKIyKko
58 : ◆9l/Fpc6Qck [sage]:2017/12/18(月) 17:38:08.55 ID:y9Tci9Te0
今日は体調が芳しくないので、明日以降に続きを書きたいと思います
すみません
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/18(月) 20:25:37.28 ID:EZ7cohbp0
おk
60 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/20(水) 18:53:10.24 ID:0Gtj7qv60



( ゚∀゚)(あいつ、序盤と比べ……動きが変わったのか!?)

(;゚∀゚)(ただでさえネズミみてぇなマニューバに、より鋭さが増してきていやがる!)

(;゚∀゚)(こちとら、今はしっかりと狙いにかかってるってのに……)




( ^Д^)「……なんつーかこう、同じ絵面を何度も見ていると……」

<ヽ`∀´>「さすがに飽きてくるニダ」

(;’e’)「……」


(;’e’)「そういえば、あのP-51……なんだか動きにキレがなくなってきたような……?」

( ^Д^) <ヽ`∀´>(-@∀@)「!」



61 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/20(水) 19:04:19.14 ID:0Gtj7qv60




(-@∀@)「そ、そう言われてみれば……」

( ^Д^)「ゼロのケツにつけている時間が、さっきより少しずつ短くなってきているような……」

川 ゚ 々゚)「ホギャwwwオギャwww?」




(´<_` )「あぁ……そうさ」

(´<_` )「動きが変わったのは、P-51の方だ」




62 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/20(水) 19:15:33.38 ID:0Gtj7qv60



(´<_` )「旋回にムラが生まれて、だんだん大回りになってきている……」

(´<_` )「射撃時にトリガーを押し込む時間も長くなっているから、そろそろ弾切れの恐怖に怯えはじめる頃合いかもな」


( ´_ゝ`)「……パイロットの集中力が無くなってきているってことか?」

(´<_` )「そうだ。あの重いP-51でゼロの“曲芸”を追い続けていたんだから、それも当然っちゃ当然」

(´<_` )「ゼロの機動性をハナから甘く見ていたのかそうでないかは定かじゃないが……」

(´<_` )「これだけ射撃をかわされ続けるってのは、やはり想定外の事態だったようだぜ」



63 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/20(水) 19:18:57.30 ID:0Gtj7qv60



(´<_`;)「だが、ふつう……それ以上にヤバい状態なのは、ゼロのパイロットの方だと思うのだがな」

(´<_`;)「あれだけ無茶なマニューバを何度も続けていながら、依然として動きに乱れはない……」

(;´_ゝ`)「いったい、どうなってるんだ?」

(´・ω・`)「……」



(´・ω・`)(あの馬鹿が……)



64 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/20(水) 19:20:02.31 ID:0Gtj7qv60



( ^ω^)「……」

( ^ω^)「右、だお」


( ゚∀゚)「!!」

(;゚∀゚)「またかよ……クソッ!」


思い通りに事が進まず、心中乱れつつあるジョルジュ。

そんな彼のことなどお構いなしに、前方のゼロはまたしても機体をバンクさせ、そして右へと逃げて行く。


( ゚∀゚)(やはり奴は、確信を持ってやがるんだ……)

(;゚∀゚)(ゼロで横旋回に徹すれば、P-51は旋回戦から絶対に離脱して行くってことを!)


発した言葉の通り、ジョルジュのP-51は“セオリー”に従った軌道を空中に描き、ゼロの独壇場から脱出を図る。



65 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/20(水) 19:23:31.92 ID:0Gtj7qv60





( ^ω^)「おっおっ」




(  ω )「――やっぱ、左にするお」





66 : ◆9l/Fpc6Qck [sage]:2017/12/20(水) 19:24:27.77 ID:0Gtj7qv60
今回はここまで!
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/20(水) 20:31:56.61 ID:+ILBsXpK0
乙ー
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/20(水) 21:53:57.54 ID:t0hFNj1Do
69 : ◆9l/Fpc6Qck [sage]:2017/12/21(木) 20:25:53.16 ID:7OPhqaFv0
すみませんが、今夜も更新はできそうにありません……
明日は少しでもできるよう、頑張ります
70 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/23(土) 15:50:32.84 ID:kHEz7N600





その時、内藤が発した一言は――


この趨勢を塗り替えるという、確固たる意思表示に他ならなかった。






71 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/23(土) 15:56:15.44 ID:kHEz7N600



(;゚∀゚)「!!!」


これまで散々、繰り返し行ってきた“右旋回”“左へ離脱”のパターンを、ゼロの方から崩しに掛かかる……実は、ジョルジュの方にもそれは予想がついていた。

ゼロがたとえ逃げに徹していたとしても、どちらかが撃墜判定を受けなければ終わらない試合のルール上、どこかでフェイントを仕掛けてくることは明白だったからだ。


だが、ジョルジュのP-51は現高度においても、ゼロと比較して数段速い。

たとえフェイントによって後ろに付かれたとしても、エンジンのパワーで強引に切り離せる自信があった。



72 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/23(土) 16:07:08.57 ID:kHEz7N600





ではジョルジュは、一体何に対して驚愕しているのか?

それは、ゼロが旋回中のP-51の“後ろ”ではなく――


コクピットの“直上”から猛然と突っ込んできたためだ。





73 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/23(土) 16:15:15.00 ID:kHEz7N600



(;゚∀゚)「うおっ……!」


驚きのあまり、ジョルジュのつま先に力が入った。

それと同時にP-51のバブルキャノピー並びに胴体上面でいくつかの模擬弾がコンコンと音を立て弾け、蛍光塗料の鮮やかなピンクが花開く。

ゼロの射撃が、P-51を捕らえた瞬間だった。


( ^ω^)「……」


その直後、大気を切る三翅のプロペラと空冷エンジンの音は、P-51のわずか数メートル横を抜け流れて行く。

ジョルジュはコンマ数秒の思考停止の後……再び操縦桿を強く握った。


……
…………
………………


74 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/23(土) 16:16:56.38 ID:kHEz7N600



(;^Д^)「おわ〜っ!ひ、被弾した!撃墜されたのか!?」

(;-@∀@)「ま、まだブザーがなっていない!撃墜判定は免れたらしいが……」


(;’e’)「何者だよあのゼロ!?すっげぇ勢いで左に反転したかと思えば」

(;’e’)「P-51の旋回先が初めから分かっていたように、そこに向かって躊躇いなく、真っすぐ突っ込んで行きやがったぜ!」

川 ;゚ 々゚)「……」



(´<_` )「当たったのはゼロの7.7o機銃が数発……」

(´<_` )「強固な米軍機を撃墜するには、威力が足りなかったらしいな」



75 : ◆9l/Fpc6Qck [sage]:2017/12/23(土) 16:18:44.30 ID:kHEz7N600
一旦ここまでです
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/23(土) 18:20:27.42 ID:JDFwyyoI0
盛り上がってきた
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/23(土) 19:56:59.39 ID:V+yY5c0v0
おお…
78 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/23(土) 22:36:57.41 ID:kHEz7N600



( ´_ゝ`)「お……弟者!」

(´<_` )「ん?」

(*´_ゝ`)「すっごーい!何あれ!?」

(*´_ゝ`)「さっきの、なぁにあれ!?ゼロがいきなり左にビューンって……あれ何?」

(´<_`;)(……きっしょくわりぃ)


(´<_` )「さっきのデタラメな左旋回だが……あれは、左方向へのエンジントルクを利用した“垂直旋回”だ」

( ´_ゝ`)「???」



79 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/23(土) 22:42:06.64 ID:kHEz7N600



(´<_` )「戦時中のレシプロエンジンってのは基本、コクピットから見て時計回りの方向へとプロペラを回すようになっていたんだ」

(´<_` )「あのゼロも例外ではなく、そのプロペラの反動で機体は左方向へのロール時により強い力がかかるようになってる」

( ´_ゝ`)「あーなるほど……それに被せてゼロを転がして、同時に頭を上げたから、あれだけ早く立ち上がれたってことか」

(´<_` )「そういうこと……なんだが」

(´<_`;)「その先の、奴が行った“未来予測”については上手く説明ができん」


(´<_` )「おそらくあのパイロット、機体を幾度となく紙一重のマニューバに持ち込む操縦のセンスに加え……」

(´<_` )「“目”と“勘”が異様に優れているに違いない」



80 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2017/12/23(土) 23:01:40.36 ID:kHEz7N600



(´<_` )(開けられた距離を詰めるため、P-51の予測旋回ラインの内径……その中の最も短い直線を、奴は責めた)

(´<_` )(コイツを成功させるにはタイミングを見図る一瞬の判断力と、P-51の油断を誘うプロセスが重要なんだ)

(´<_` )(何故なら、ゼロが左への突っ込みが早いって事実を、あのP-51のパイロットが本来知らないはずがないんだからな)

(´<_` )(じゃあ今まで、ゼロが得意なハズだった左旋回をここぞという時まで封印していたのは……)


……
…………
………………


(;゚∀゚)(ここにきて、違和感の正体がようやく分かったぜクソが!)

(;゚∀゚)(奴はこれまで得意な左をわざと使わず、右旋回か急上昇しか使ってこなかったんだ!)


(;゚∀゚)(いつか左が来る、来ると無意識に考えていたオレの判断力を、疲弊によって鈍らせ……)

(; ∀ )(“後ろに付かれさえしなければ、どちらに来ても大丈夫”という思い込み――それによる旋回直後の確実な隙を作るために!!)



81 : ◆9l/Fpc6Qck [sage]:2017/12/23(土) 23:03:51.34 ID:kHEz7N600
解説パートを咥えて、今日はここまで!
明日は更新ができないので最低、明後日まで空きます
すみませんが、よろしくお願いします
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/24(日) 17:14:18.16 ID:q+P0T7GR0
乙!
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/24(日) 17:24:42.29 ID:yXSUS8Lgo
84 : ◆9l/Fpc6Qck [sage]:2017/12/26(火) 21:48:48.92 ID:gu5aeZLe0
次の更新ですが、諸々の用時のため大晦日あたりまで難しくなりました……申し訳ありません。
完結は年を越してしまいそうですが、何卒よろしくおねがいします。
85 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2018/01/01(月) 13:02:16.37 ID:XGJJwDC40





(; ∀ )「ふ……」


(#゚∀゚)「ふざっけんな!こんのオカマ野郎ォォォ!!」


男の叫びがこだまするコクピット。

ジョルジュが直感的に後方を振り向くと、ゼロの機影はすぐそこにまで迫っていた。





86 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2018/01/01(月) 13:10:29.03 ID:XGJJwDC40



完全にケツを取られた。


(#゚∀゚)「させっかよぉ!!」


だが、主翼のフラップを全開、更にピッチを上げたP-51は――

瞬時に速度を落すことで猛追するゼロの真上を滑るように飛び越え、後方へと流れてゆく。


( ^ω^)「!」


ゼロがオーバーシュートしたすぐ後、水平に戻ったP-51はマーリンエンジンを全開に吹かす。

そして、6基の排気管からけたたましいバックファイアをパンパンと鳴らしながら、再度ゼロに追従した。



87 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2018/01/01(月) 13:12:00.98 ID:XGJJwDC40



(#゚∀゚)「抜かれてから追いすがる!これは、ドンガメの日本軍機には絶対真似できねぇやり方だ!」


血を嗅ぎつけた海洋の鮫ように、ゼロに猛然と食らいつくP-51の荒々しい挙動は、まさにジョルジュの憤りを表していた。


(#゚∀゚)「このP-51より性能の劣る機体……!」

(#゚∀゚)「それも、どこぞの名も知れない素人パイロット如きに……!」


(#゚∀゚)「いつまでもナメられっぱなしじゃ、本職の名が廃っちまうんだよぉぉ!!」


怒りと共に放たれた12.7mm弾幕の軌道は重力によって、左下方へのスライスバックを行うゼロの進行方向へと屈折してゆく。

そして、そのうち数発の模擬弾はゼロの胴体表層でカンカンと音を立て、蛍光ピンクの飛沫を塗りたくっていった。



88 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2018/01/01(月) 13:13:39.77 ID:XGJJwDC40





撃墜判定のブザーは――沈黙したままだった。


(#゚∀゚)「弾が滑ったか……チッ!」

( ^ω^)「……肝が冷えたお」


そう呟いて、内藤はゼロのピッチを引き起こしに入る。





89 : ◆9l/Fpc6Qck [sage]:2018/01/01(月) 13:15:25.23 ID:XGJJwDC40
短くてホントごめんなさい……今日はここまでです

新年あけましておめでとうございます
今年も、どうかよろしくお願い致します
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/01(月) 13:46:55.45 ID:62c4ooTy0
あけおめー
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/01(月) 21:48:32.31 ID:0HehjtpE0
乙おめ
92 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2018/01/04(木) 06:40:06.49 ID:XlVJCkao0
>>86

排気管は12だったんだよなぁ……
というわけで修正です




完全にケツを取られた。


(#゚∀゚)「させっかよぉ!!」


だが、主翼のフラップを全開、更にピッチを上げたP-51は――

瞬時に速度を落すことで猛追するゼロの真上を滑るように飛び越え、後方へと流れてゆく。


( ^ω^)「!」


ゼロがオーバーシュートしたすぐ後、水平に戻ったP-51はマーリンエンジンを全開に吹かす。

そして、計12基の排気管からけたたましいバックファイアをパンパンと鳴らしながら、再度ゼロに追従した。





次レスから再開です。
93 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2018/01/04(木) 06:41:31.86 ID:XlVJCkao0





( ^ω^)「アレ、直撃だったら終わってたおね」

( ^ω^)「装甲の薄い零戦の宿命ってやつだお……くわばらくわばら」


P-51が後ろに付き、勝負は振り出しに戻ったかに思えた。

しかし、内藤の表情にはまだ幾分かの余裕が感じられるようだった。


……
…………
………………




94 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2018/01/04(木) 06:46:25.58 ID:XlVJCkao0



それから数分、二機のもつれ合いは更なるステージへと上り詰めてゆく。


ゼロがP-51の銃撃を横滑りによってかわし、後ろに付きかけたゼロをP-51が速度によってちぎる。

ゼロがP-51のループラインを攻め、同じ手は食わぬと降下し逃げる。

そうしたドッグファイトの神髄とも言える試合運びに、地表から見物していたギャラリー達の興奮は、より高まっていった。



(#^Д^)「おいカメラ何やってんだ!もっとよく映せよ!」

(’e’)「まさか、ゼロでP-51とこんなにいい勝負ができるなんてな!」

(-@∀@)「あのゼロはカタログスペック以上によく動く……」

/ ,' 3「わし、発注したP-51が潰れたらゼロ戦に乗り換えちゃおう!」

川 ゚ 々゚)「おぶらびwwwおぶらだwww」



95 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2018/01/04(木) 06:52:09.54 ID:XlVJCkao0



(;,゚Д゚)「……」

(;,゚Д゚)「ハローさん……マズいんじゃないっすかコレ?」

ハハ ロ -ロ)ハ「……」



( ´_ゝ`)「いや、すげーな……」

( ´_ゝ`)「25分なんて、あっという間だ」

(´<_` )「あぁ……ここにきて俺も、久々に面白いと思える試合に出会えた気がするよ」


(´<_` )(あのゼロとP-51……いつか俺も、手合せを願いたいものだ)


腕を組みたたずむ弟者の口角が、自然と吊り上る。

その背中を預けていたのは、鎮座するネイビーブルーの機体だった……。



96 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2018/01/04(木) 06:59:30.24 ID:XlVJCkao0



舞台は、再び空へ。

ゼロがP-51の追撃を撒くため、ブレイクを繰り返していた時のことだ。


二機が大きさの違うループを空に描いた後――

ゼロは突如、機体を軸に無意味なバンクを行った。


(#゚∀゚)(コイツ……煽ってやがる!)


操縦桿を握るジョルジュの手は、今にもそれを握りつぶしてしまいそうな程の力がこもっていた。

だがそうしている間にも、眼前の照準器に移るゼロの機影は、徐々に大きくなってゆく。

これまで散々プライドを傷つけられてきたジョルジュにとって、この上ないチャンスが到来したのだ。



97 : ◆9l/Fpc6Qck [saga]:2018/01/04(木) 07:07:47.91 ID:XlVJCkao0




( ゚∀゚)「……ケッ、勝負あったな」

( ゚∀゚)「手こずらせやがって……ざまぁねぇぜ」

(;゚∀゚)「さぁ、神にでも祈……ッ!?」



だが、ジョルジュはトリガーを押し込むことをためらってしまった。

残弾が、残りほんのわずかとなっていた。


彼の脳裏には、先刻まで目にしてきたゼロの回避機動の数々がフラッシュバックする。

そして、ジョルジュは――今のチャンスよりもより“確実な勝ち”をもぎ取るべく、機体を突如急降下させた。




98 : ◆9l/Fpc6Qck [sage]:2018/01/04(木) 07:09:31.27 ID:XlVJCkao0
今日はここまでです

次か、次の次あたりで終わらせられたらなと思います
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/04(木) 22:14:04.40 ID:ifUi1Em80
乙!
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/07(水) 00:45:23.57 ID:DJdoV8PBO
おい
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 12:03:36.73 ID:4gnViZTe0
おい
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