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( ^ω^)戦車道史秘話ヒストリア!のようです
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1 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/12/10(日) 08:42:15.26 ID:cmr4VaydO
前作
( ^ω^)その時、戦車道史が動いた!のようです
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1491739394/
関連作
( ´Д`)離れ小島の提督さんのようです
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1510952546/
ウキウキ!!首相の鎮守府訪問!!のようです
https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1511697940/
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1512862935
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/10(日) 08:44:56.35 ID:PKdtpdnT0
日本国が保有する【学園艦】は、2017年現在で実に198隻に上る。近年頻発し(国際戦車道連盟をガチギレさせ)た統廃合の影響で保有数一位の座をアメリカ合衆国に譲ったものの、三位イギリスには70隻近い差をつけており世界有数の学園艦大国の地位は未だに揺るがない。
この、平均全長十数キロにも及ぶ超巨大海上教育施設の維持には途方も無いコストがかかる。学園艦1隻辺りの維持費は軽く一県の年度予算に相当し、国から補助金を出すだけでも結構な財政圧迫となることは想像に難くない。これを言ってしまうと恐らく僕は戦車道履修者達の──それも河嶋さん辺りの──射撃翌練習の的にされてしまうだろうから口には到底出せないが、正直学園艦の統廃合が「必要だ」という文科省の言い分自体には幾らか理解するところがある。
特に近年は深海棲艦の出現によって太平洋側における海上防衛の重要性が増し、学園艦を200隻近く保有する日本はそれらを護るためにも様々な対策を取りざるを得ない。
はっきり言ってしまうと、感情論を抜きにすれば学園艦の削減というのは国益にも国防にも関わる、誰かが泥を被ってでもやらなければならない“必要悪”だ。……辻なんたらとかいうあのクソッタレ眼鏡のやり口の是非はまた別問題の話だが。
或いは我らが生徒会長の角谷さんも、国の事情自体には正当性があると認めているからこそ「文句のつけようが無い実績造り」のためになりふり構っていられなかったのだろう。
3 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 08:47:52.19 ID:PKdtpdnT0
そういった“裏の事情”がどうであれ、この【大洗女子学園】がドラマのように劇的な経緯を経て廃校を──それも二度にわたって回避したというのが世間一般に広がっているイメージだ。ドキュメンタリーとしてドラマ化・映画化された作品がそれぞれ記録的なヒットを飛ばして海外公開までされたことも手伝って、この“奇跡の物語”は尾鰭もついて世界的に知られている。
中でも素人集団をまとめ上げて全国大会優勝を、さらには寄せ集めのチームを率いて大学選抜撃破を成し遂げた西住さんの名は“東洋のジャンヌダルク”なんてこそばゆい渾名付で海外の番組で紹介され、西住さん本人はしばらく恥ずかしさのあまり突然悶絶する発作に悩まされていた。
まぁそんなわけで、大洗女子学園には特に夏休み明けから国内外問わず多くの観光客が訪れるようになっている。学区は警官や警備員によって徹底して入場が禁止されているが、一歩商業区に踏み出せばそこは多くの人でごった返す。
日本国内からの旅行者は勿論、フィリピンにカンボジア、台湾に韓国、アメリカなど多くの国の人達が様々な言語での会話と共に街を行き交う。やはり近隣であるアジア系の人が多いが、中東やロシアからという人とも話したことは何度かある。ベルリンでの惨劇が起こるまではヨーロッパからの観光客も決して少なくは無かった。
最初こそ学園艦の至る所に“外”から来た人がいるということに戸惑ったが、慣れとは恐ろしいものだ。今では僕も、ドーナツを毎日一箱は平らげていそうなお腹をした金髪の中年が英語で韓国系と思わしき女性と干し芋を囓りながら談笑している光景を見ても自然にそれを受け止めている。
………それでも、流石に。
「ねぇ、そこの貴方?」
( ^ω^)「おっおー、僕ですか───」
(;^ω^)「────お?」
「そうよ。他に、誰かいるかしら?」
“その”観光客に声をかけられたときは、少々面食らったけれど。
4 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 08:48:34.05 ID:PKdtpdnT0
〜( ^ω^)戦車道史秘話ヒストリア!のようです〜
.
5 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 08:51:53.73 ID:PKdtpdnT0
僕が振り向いた先には、少女が一人立っている。
ハイヒールであることを加味すれば、身長の程は150cmに届くか届かないかぐらいだろうか。決して高いとは言い難いが、引き締まった四肢と大人びた立ち姿がその事を感じさせない。紺のロングパンツに冬物のジャケット、白いタートルネックのインナーという些かボーイッシュな出で立ちも、その印象に拍車をかける。
腰まで届く銀髪が風に靡き、流れる。この場に腕の良いカメラマンがいれば、そのままファッション雑誌の表紙をかざる一枚ができあがりだ。
“美少女を描いてごらん”という問題にもしも模範解答が存在するなら、或いは彼女の姿を描くことがそれにあたるのかも知れない。
とはいえ、僕が返事ができなかったのはその少女に見とれていたからでは──だいたい僕にはシュールな言動の大切な人がいる──ない。もっと別のことに、驚いていたからだ。
「…………ねぇちょっと、だから私は貴方に声をかけたわけだけど?」
ぱっちりと大きく、つり上がり気味の勝ち気な金色の瞳がすっと細くなる。声に、反応できずにいた僕に対する苛立ちが微かに現れる。
「素通りとかなら却って納得するけれど、わざわざ反応した上でのシカトというのは礼を失しすぎているんじゃないかしら?
それとも耳元で、鼓膜がぶち破れるまで大声で叫ばないと聞こえないクチ?」
(;^ω^)「………あー、申し訳ありませんお。大丈夫、僕の耳は正常です」
なんだろう、彼女の今の言葉の端に、“その程度のことはいつでもやっている”ような自然な響きがあったのは気のせいだろうか。
( ^ω^)「お答えする前に一応の確認なんですが…………大変失礼ながら、貴女は僕が以前会った叢雲さんだったりしますかお?」
「あら」
僕の問いに、少女───特型駆逐艦五番艦の【叢雲】さんは一瞬眼を見開き、拳を口元に当ててクスリと笑った。
「貴方とは初対面だけど……確かに私は叢雲よ。
他の“叢雲”に会ったことが?」
( ^ω^)「大洗鎮守府や横須賀司令府に所属していた方と、それぞれ一回ずつ顔をあわせる機会があったんですお」
「それはまた、後輩がお世話になったわ。でも、だとしたら私服はどのみち初めての筈なのによく解ったわね」
( ^ω^)「職業柄、人間観察は得意なモノで」
6 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 08:53:40.22 ID:PKdtpdnT0
現国教師として、9000人の大洗女子学園高等部の子たちを請け負っている身だ。否が応でも記憶力や洞察力は鍛えられる。
しかし風紀委員はマジで何とかして欲しい。アヒルさんチームの三人を見分けられるようになったのもここに赴任してから2カ月を要したのだ。
何だあの量産型クローントルーパーか何かか。
「なるほどね」
頭の中をマタンゴの如く埋め尽くしたマッシュルームカット軍団を追っ払っている僕の前で、叢雲さんは合点がいったとでも言いたげに何度も頷いている。
「学園艦の関係者だとは思ってたけど、教師か何かかしら?しかも赴任してまだせいぜい一、二年って所ね」
( ^ω^)「………よく解りましたおね」
今度は僕が面食らう番だった。叢雲さんは小首を傾げ、いたずらっぽく微笑みながらこめかみに指を当ててみせる。
「これでも艦娘として戦って長いのよ?頭の回転も砲撃の腕と同じぐらい磨いてきたわ。
宿泊施設がある区画からこんな遠くにいるのにその身軽さは旅行者としては不自然かつ不用心だし、童顔を差し引いてもせいぜい20代半ばの人間が教歴云十年のベテランって事は有り得ない。睡眠薬を打つ前の毛利小五郎でも、多分これぐらいなら推理できるんじゃないかしら」
なるほど。いわれて改めて僕の出で立ちを見れば、ジャケット一枚にワイシャツ、後は外出の目的である、右手にぶら下げたビニール袋一つ。中身は買い出し品のハサミと木工用ボンド、それからセロテープと両面テープが2ロールずつ。
少なくともお土産物色にいそしむ他の観光客と思わしき人々と比べると、あまりにも荷が少なすぎだ。
( ^ω^)「お見それしましたお。
それで、改めてどういった用件で?」
「ええ、情けない話だけど、ちょっと道に迷ってしまったのよね。ここに行きたいのだけれど」
そういって、叢雲さんは折りたたまれたA4サイズの用紙を渡してそこに書かれた何行か…………否、何十行分もの地名・施設名の内一つを指さす。
7 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 08:59:40.36 ID:PKdtpdnT0
( ^ω^)「あぁ、ここなら丁度反対方向ですお。そこの免税店の前にあるバス停で巡回バスが7分後に来るから、それに乗って6駅待てばすぐ近くまで行ってくれますお」
「……どうもありがと。とんだ無駄足踏んじゃったわね、やっぱり初めて来た場所を勘で歩き回るべきじゃなかったわ。
まっ、おかげで掘り出し物にも出会えたけど」
そういって彼女はほくほく顔で左手の手提げ袋を持ち上げてみせる。中には、戦車搭乗時のきりっとした表情をしている西住さんをドアップで写した画像を印刷したクリアファイルやら例のドキュメンタリー映画の小説版、W号戦車アンコウチーム仕様のミニチュアなどが入っている。
( ^ω^)「………えーと、叢雲さんは西住さんの」
「ええ、大ファンよ♪西住みほさんだけじゃなくて大洗戦車道チームの選手は皆好きだし尊敬しているけれど、やっぱり別格ね!」
米について語ってるときのシューみてえな眼してるよこの人。
「まっ、私なんか大洗が優勝してからようやく追っかけ始めたミーハーだけどね。西住さんなんかは西住流の元で育ってたときからついてるファンの人もいるって聞くし、私なんかまだまだよ」
( ^ω^)「だいぶ問題になってますけどね、“昔からのファン”」
クールビューティーの具現化みたいな姉の反動でか普段は引っ込み思案な言動が目立つ西住さんには、「父性本能を刺激される」とやらでやたら年上の男性(オブラートな表現)の追っかけが多い。
彼女の「昔からのおっかけ」が街中でグッズを買い漁っている姿は、第三者から見れば異様極まりない。現にこの光景を眼にしてしまった秋山さんは一部観光客の乗船制限と警備の強化を強行に主張しているし、澤さんに至っては新会長に就任することとなった五十鈴さんに実施を直訴すべく中等部を巻き込んで署名活動中だ。
戦車道履修者の中でもとりわけ「西住フリーク」と言えるあの二人の反応は若干過保護のケがあるが、その気持ちが解らないでもない程度には僕もあの光景は気持ち悪いと思う。それに、グッズショップでの割り込みやところかまわずの写真撮影などマナーの悪い客も目立つ。
「とりあえず、道は解ったわ。………えーっと」
( ^ω^)「大洗女子学園高等部、現代国語教諭の内藤芳頼ですお」
「そう。改めてお礼を言うわね、道を教えてくれてありがとうブーン先生」
(;^ω^)「なんでや!!!」
「別に、何となくそんな呼び方だとしっくり来る気がしただけよ」
8 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 09:00:31.35 ID:PKdtpdnT0
思わず叫んだ僕を見て、叢雲さんがまたクスクスと笑う。笑うときに拳を口元に当てる所作は、過去に会ったことがある他の二人の“叢雲”さんには見られなかった動きだなとふと気づいた。
「いろいろ理論を捏ねくり回しても、結局戦場で生き残るのに必要なのは直感と武力なのよ。培った勘の鋭さについては自信があるわ」
(;^ω^)「鋭すぎですおそれ………」
殆ど予知じゃないかと呆れる僕のツッコミに叢雲さんは肩を竦めて、「それじゃあね」と背中越しに手を振ると丁度やってきたバスに乗り込むべくその場から駆け去って行った。
( ^ω^)「………艦娘の人と街中で話したのって多分初めてだおねぇ」
艦娘とて僕等と同じで泣きもするし笑いもするし、何より見た目はただの美人・美少女だ。或いは、気づかない内に二言三言言葉を交わしたことはあるのかも知れない。
しかしながら、明確に相手を“艦娘”と認識した上で雑踏の中で話したことはなかったので、何か不思議な感覚がある。
( ^ω^)「っと、買い出しはもう終わってたんだお。急がないと」
貴重な体験の余韻に浸る間もなく、僕も学校に戻るべく踵を返し────
「ぶーんせ・ん・せぇ♪」
「これは拡散ですねぇ〜〜〜♪」
( ^ω^)「」
そこで小悪魔2匹───もとい、大野さんと宇津木さんのにやにや顔にぶち当たるハメになった。
9 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 09:02:14.37 ID:PKdtpdnT0
.
《Al■ ───ree RAAF-■■■-01 FO■-──》
《Sp■■■■■■ ─F─w──w■■■》
《Hi■, ■■■!!》
《………N■■■ive, t■■■■, I repeat────》
10 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 09:05:00.68 ID:PKdtpdnT0
「そ、れ、で!ブーン先生、あのおしゃべりしてた女の子は誰なのかkwsk!!」
「ちょっと大人びた子だったけどぉ……私達と歳、変わらないわよねぇ?あれが先生が前に言ってた“シュー”さんなのかしら〜?」
(;^ω^)「だーからあれは違うつってるお……ただ道を聞かれたから、教えて上げた。それだけだお」
「ほほーーぅ?その割にはにこやかに和やかに笑い合っていたような気がするんだけどナー?」
眼鏡を某アニメのネグレクトマダオの如く「クイッ」と持ち上げながら、大野さんが僕の顔を下から覗き込んでくる。デコピンの一発もかましてやろうかと思ったが、このご時世体罰云々が怖いから我慢我慢………
( ^ω^)「………」
「あいた!?」
よくよく考えたら(直接的には丸山さんとはいえ)杉山さんに首輪つけた時点で体罰以上に諸々アウトということに気づいたので、とりあえず一発かましておく。序でにいうとデコピンじゃなくてチョップにしておく。
「酷くない!?今のご時世体罰禁止でしょ!?」
( ^ω^)「体罰じゃなくて指導だからセーフ。だいたい学校から無断で抜け出して買い食いした身で教師のことをからかうんじゃねーお」
「でもぉ、先生もお買い物してるでしょ〜?」
( ^ω^)「うん、仕事な?」
「おまけに、美人さんにでれでれしちゃって浮気まで」
( ^ω^)「道 案 内 な ?」
「………どうかしらねぇ〜、私達のところだと、お話の声とか聞こえなかったしぃ」
僕が少し強めの口調で注意すると、宇津木さんはツンッとそっぽを向いてしまった。
「先生だって、男の人でしょ?なら、何も思わなかったってことはないんじゃないかしら〜?」
(;^ω^)「はぁ……客観的に美人さんだなとは思ったけど本当に何にもねえお。
というか今日はえらく突っかかるおね」
「……別に?そんなこともないけれど?」
「ほら、優季ちゃんも難しい年ごr「あやはバカだなぁ」食い気味に!?」
11 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 09:09:50.44 ID:PKdtpdnT0
(´・ω・`)ノ
《電撃的に東欧連合軍への支援を表明したイギリスのショボン=ウィリアムズ首相は、本日レイクンヒース空軍基地を視察しました。
リスボン沖事変以来独自路線を歩んできたイギリスの孤立主義的な姿勢を覆す動きに、専門家の間では様々な意見が出ており───》
僕等の大騒ぎを尻目に、頭上をゆったりと進む電光スクリーン付の飛行船にはニュース番組が映し出されている。画面の中では、4年前にウィリアム=ピットを抜いて22歳という若さで首相に就任した【グレートブリテンの貴公子】が柔和な微笑みを浮かべて周囲の観衆に手を振っている。
「………」
「………」
大野さんと宇津木さんは、漫才をやめていつの間にか飛行船を見上げていた。尤も、それは別にショボン首相に気を取られてのことではない。どちらかというとキャスターが口にした「イギリス」という───更に言えば、そこから連想される「ヨーロッパ」という単語に反応したのだろう。
二人の目に宿るのは、言いようのない漠然とした不安と“ある人”に対する気遣いと心配。
「………西住隊長、大丈夫かしらぁ」
( ^ω^)「………大丈夫、と安請け合いはできないけど」
そして、きっと
( ^ω^)「信じてあげるしかねえお、周りが」
僕の目にも、同じものが宿っている。
12 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 09:12:10.32 ID:PKdtpdnT0
中須賀エミ。
西住さんが九州でまだ小学生だった頃に、初めて“戦車道”関連で出来た友達の一人。
まぁこれは武部さんからの又聞きで、更に言えば僕は「そんな友達が今はドイツにいるらしい」という話を聞いたに過ぎない。つい先日までは、僕はその少女の名前も顔も知らなかった。
そう、“つい先日”、その中須賀エミさんをテレビ画面越しに見るまでは。
『………………エミ、ちゃん?』
混迷を極めるヨーロッパの状況を特集していた、お昼のニュース。学食備え付けテレビの大画面に一瞬映された、赤い髪の少女。
周囲の人々同様“軍服”に身を包んだ東洋風の顔立ちをしたその子を目にした瞬間、西住さんは卒倒して保健室へと運ばれた。
あの、絶望に濡れた声は。この世の終わりを迎えたような呆然とした表情は。
未だにその場に居合わせた僕の目と耳から離れてくれない。
「………あやは心配しすぎよ〜。隊長は、強い人だもの。あんまり心配するのも失礼よ?」
「………そりゃ、そうだけどさ」
( ^ω^)「……」
確かに、西住さんはとても強い人だと思う。復帰した後の彼女の言動も、一見するといつも通りだ。
ただ、それでも彼女はまだ学生だ。ようやく17歳になったばかりの、高校二年生の子供なのだ。友達が軍隊に入って死線の只中にある事実を、平然と受け止められるような年齢ではない。
そう、理解はしているのに。
( ^ω^)「………っ」
少なくとも僕には、教師として彼女にかけられる言葉も役に立てる力も持ち合わせていない。
ソレがなんとも、歯痒い。
13 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 09:12:55.79 ID:PKdtpdnT0
「だーかーらー、アタシはここの関係者だって言ってんじゃない!いいから通しなさいよ!」
<ヽ;`∀´>「何度でも言うけどダメニダ!本官にはそういう権限はないから、学園内に入りたいなら身分証か入区許可証を提示するニダ!」
「………そ、その、忘れちゃったのよ!制服見れば解るでしょ、早く通してよ授業に遅れちゃうじゃない!」
<ヽ;`∀´>「大洗の制服なんてレプリカがそこら辺に売ってるし本官は本物と偽物を見分けられるような眼力がないからダメニダ!いいからせめてここでじっとしてるニダ、三月巡査を呼んでくるニダ!」
「ちょっ、あの人はやめてよ!先週侵入しようとしたときにガッツリ絞られてるんだから!」
気温差が激しいと風邪を引きやすいというのは割と常識の話だけど、これは僕は脳にも当てはまる話だと思う。もの凄く真剣な悩みを考えているところにもの凄く下らない光景や物事を突きつけられると、どうにも激しい頭痛に見舞われることが多いから。
<ヽ;`∀´>「侵入!?キミ絶対ここの生徒じゃないニダね!?」
「なななななななにを言ってるのよ!このアタシが大洗女子学園の強さの秘密を調べるために侵入を画策するスパイなワケがないじゃない!ほら、早うどきなされやおほほほほほ!」
<ヽ;`∀´>そ「言い訳下手くそすぎニダ!そんなん聞いて通す奴この世にいないニダよ!あと後半キャラ崩壊しすぎニダ!」
「…………あら〜」
「…………ブーン先生、あれ」
( ∩ω∩)「大丈夫、見えてるから。ただ、ちょっと休んでからでいいかお?」
そう、例えば今のような状態が当てはまる。一人の性との悩みについて、真剣に考えてる最中に────
「あーもう拉致が明かないじゃない!このままだと風紀委員とかに見付かっちゃう……」
( ^ω^)「諜報活動ご苦労様ですお、アリサさん」
「………ゲ」
校門前で大騒ぎする、サンダース大附属からの(間抜けな)スパイを見つけたときとか。
14 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 09:13:33.52 ID:PKdtpdnT0
出勤前投稿完了。本日夜に残り投下します
15 :
>>13のみ修正
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 09:52:54.40 ID:cmr4VaydO
.
「だーかーらー、アタシはここの関係者だって言ってんじゃない!いいから通しなさいよ!」
<ヽ;`∀´>「何度でも言うけどダメニダ!本官にはそういう権限はないから、学園内に入りたいなら身分証か入区許可証を提示するニダ!」
「………そ、その、忘れちゃったのよ!制服見れば解るでしょ、早く通してよ授業に遅れちゃうじゃない!」
<ヽ;`∀´>「大洗の制服なんてレプリカがそこら辺に売ってるし本官は本物と偽物を見分けられるような眼力がないからダメニダ!いいからせめてここでじっとしてるニダ、三月巡査を呼んでくるニダ!」
「ちょっ、あの人はやめてよ!先週侵入しようとしたときにガッツリ絞られてるんだから!」
ところで、気温差が激しいと風邪を引きやすいというのは割と常識の話だけど、これは僕は脳にも当てはまる話だと思う。もの凄く真剣な悩みを考えているところにもの凄く下らない光景や物事を突きつけられると、どうにも激しい頭痛に見舞われることが多いから。
<ヽ;`∀´>「侵入!?キミ絶対ここの生徒じゃないニダね!?」
「なななななななにを言ってるのよ!このアタシが大洗女子学園の強さの秘密を調べるために侵入を画策するスパイなワケがないじゃない!ほら、早うどきなされやおほほほほほ!」
<ヽ;`∀´>そ「言い訳下手くそすぎニダ!そんなん聞いて通す奴この世にいないニダよ!あと後半キャラ崩壊しすぎニダ!」
「…………あら〜」
「…………ブーン先生、あれ」
( ∩ω∩)「大丈夫、見えてるから。ただ、ちょっと休んでからでいいかお?」
そう、例えば今のような状態が当てはまる。一人の生徒の悩みについて、真剣に考えてる最中に────
「あーもう拉致が明かないじゃない!このままだと風紀委員とかに見付かっちゃう……」
( ^ω^)「諜報活動ご苦労様ですお、アリサさん」
「………ゲ」
校門前で大騒ぎする、サンダース大附属からの(間抜けな)スパイを見つけたときとか。
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/10(日) 11:17:24.01 ID:4BDS/l2A0
待ってました!
叢雲わざわざそこを引き当ててるのかw
17 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 22:39:41.82 ID:zT+bY6RE0
キーン、コーン、カーン、コーン
みほ「起立、気をつけ、礼!」
一同「「「よろしくお願いしまーーす!!」」」
一部「「「ヨロシクオネガイシマース………」」」
( ^ω^)「はーい、よろしくだおー。で、久し振りの戦車道座学の時間になったわけだけど………」
典子「」チーン
桃「」ズーン
あけび「」ゴーン
桂利奈「」ドギャアーーーン
( ^ω^)「………あれだおね、テスト期間明けは悲喜こもごもがうかがい知れて正直メッチャおもろい」
あけび「ひ、他人事だと思って……」
( ^ω^)「他人事さハッハッハッ」
典子「そもそも、中間考査から一週間開かずに実力テストってさぁ………」
杏「いや〜、悪いねぇ。大学選抜戦の後も、諸々の指示とか根回しとかで教師陣も含めて学園の上の方は総動員だったからさぁ」モッモッモッ
( ^ω^)「ぶっちゃけ作る側もキツかったお。問題被らせないようにしなきゃいけなかったし………んで、今度はなに喰ってんだお」
杏「甘納豆。先生もどう?」
( ^ω^)「いらんし食うのやめーや」
杏「んっしっしっ」モグモグ
18 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/12/10(日) 22:41:05.08 ID:zT+bY6RE0
桃「うぅ……解ってたのに……問題解ってたのに……解答欄が……」メソメソ
柚子「だからあれだけ落ち着いてやった方が良いよって言ったのに……」ヨシヨシ
桃「せっかくゼミでやったところが出たのに……柚子ちゃーーーん!!」エーン
( ^ω^)「まーた“高転び、仰のけに転ばれ”てしまったのか……あれ?」
桂利奈「」ドボギャーーーーーンッ!!!
( ^ω^)「阪口さんが一番死んでるけど、何かあったのかお?今回国語以外も含めて全体的に点数悪くなかったと思ったけど」
梓「あっ、桂利奈ちゃんは三日以上遊べない日が続くとエネルギーが切れちゃうから……」
( ^ω^)「マグロか何か?」
19 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 22:42:53.12 ID:zT+bY6RE0
紗希「……………アニメ版ゴジラ、第二章来年公開」ボソッ
桂利奈「あいっ!!!!」シャッキーーーーンッ!!!
沙織「復活した!?」
( ^ω^)「ツッコまねえぞ僕ァ。さて、じゃ、雑談もこの辺で終わりにしてそろそろ授業に………」
麻子「…………その前に、一ついいか先生」
( ^ω^)「おっ、何だお冷泉さん」
麻子「…………私の目の前に座っているこの簀巻きは、いったい何事だ?」
アリサ(簀巻き)「…………Shit」ギリギリギリ
華「大層お怒りみたいですねぇ」
おりょう「まぁ簀巻きにされて怒らない人間の方が珍しいとは思うぜよ」
( ^ω^)「あぁ、それはアレだお、スパイ」
優花里「まーた捕まってしまわれたんですかアリサ殿、懲りませんねぇ」ヤレヤレ
アリサ「そのLINEで煽り系スタンプとして使えそうな感じの表情やめなさいよ!!アンタがサンダースでスパイやってたこと踏まえると二重に腹立たしいんだけど!?」
優花里「自分は二度も三度も見つかったり捕まったりしてませんし?」ヘッ
アリサ「ッキィイイイ!!!」ジダンダ
梓「あっ、すみません少し静かにしてくれませんかアリサ(まぬけ)さん」ニッコリ
アリサ「今心の中で名前に滅茶苦茶ムカつくルビふらなかった!?」
あゆみ(……秋山先輩と梓ってこんなキャラだったっけ?)
( ^ω^)(この二人西住さん関連でいろいろストレス溜めてるからなぁ、秋山さんはおまけに新生徒会としてのプレッシャーも受けてるはずだし)
( ^ω^)(あとこの二人無線傍受の件もまだ許してなさそう)
20 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 22:44:38.52 ID:zT+bY6RE0
左衛門佐「で、結局何故彼女をここに?警備員なり警察なり風紀委員なり、収容する場所なら幾らもあっただろうに」
そど子「なんなら許可貰えば今からでも連れて行けますよ?」
梓「或いは甲板から放り出してサメの餌……」
アリサ「Violence!!?」
( ^ω^)「落ち着け忠犬二号。
まず警察なんだけど……二田さん(<ヽ`∀´>)に確認したところ、今学園艦内で手が空いてる部署がないらしいんだお。なんでも第4商業区の方で騒いでる観光客の一団があるらしくて、そっちに人手を割きすぎたせいか連絡がうまくつかないらしいお」
沙織「……あれ?華、ゆかりん、そんな連絡私達の元に来たっけ?」
華「いえ……」
優花里「私も聞いてないです」
杏「小山、かーしま」
桃「いえ、私達もそういった話は全く受けてません」
柚子「そもそも、生徒会引き継ぎの旨は茨城県警にしっかりと伝えてあるので、私達の方に間違って連絡が行く可能性自体低いかと」
杏「…………まぁ、行楽シーズンだからってのも、あるのかな」
華「園さん、連絡があまりにも遅いようなら風紀委員の方から一度確認の連絡を入れて貰ってもよろしいでしょうか?」
そど子「ええ、解ったわ」
21 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 22:45:40.60 ID:zT+bY6RE0
( ^ω^)「で、まぁ正直むざむざスパイされるのも何となく腹立たしいから、監視の意味でここまで引っ張ってきたっていうのは理由の半分だお。もう半分は、僕の個人的な意図だおね」
沙織「個人的な理由?」
優季「まさかの浮気かしら〜」イヤンイヤン
( ^ω^)「今日どうしたんだよお前は本当に。
今日やる戦車道史の範囲が、丁度多分アリサさんの───というより、サンダースの得意分野に関わってくるんだお。授業を円滑に進めるのに、ちょっと協力して貰うことにしたんだお」
アリサ「アタシが協力!?はっ、忠告するけどね先生様、卵が孵る前にひよこを数えるのは賢い選択肢とは……」
( ^ω^)「澤さん、秋山さん、アリサさんから断られた場合彼女の処遇は君らに任せるお」
梓「解りました」
優花里「お任せ下さい」
( ^ω^)「アリサさん、協力していただけると助かりますお」
アリサ「Sir yes sir!!」
( ^ω^)「良い返事を貰えて何よりだお」
22 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 22:46:44.52 ID:zT+bY6RE0
沙織「………ブーン先生っていつもニコニコしてて優しそうだけどさ、たまにさらっと怖いこというよね、みぽりん」ヒソヒソ
みほ「………」
沙織「………みぽりん?」
みほ「えっ!?あっ、うんそうだね!!劇場版ボコは本当に最高だよね!!」
沙織「ボコの話一文字もしてないけど!?」
麻子「……落ち着け西住さん。沙織の話が下らなすぎて眠くなったら気を遣わずにそういえばいいんだ」
沙織「麻子酷くない!?」
みほ「あはは……うん、大丈夫。ごめんね、ちょっと最近疲れ気味で」
優花里「西住殿……」
( ^ω^)「…………。
さ、そろそろおしゃべりもここまで!テスト明け1発目の戦車道史、始めるおー」
23 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 22:50:04.34 ID:zT+bY6RE0
( ^ω^)「さて……立て続けのテストで大分期間も開いたことだしまずは簡単な復習からやってくおー。アリサさんにも授業の流れを把握しておいてほしいので、聞いて貰えると助かるお」
アリサ「Yes sir!!」
( ^ω^)「ごめん、脅しすぎたの謝るからそのノリやめて。
前回やったのは戦車道の原型、女性軍人文化の欧州における【衰退と復活】だったおね。キリスト教との対立から十字軍や魔女狩りを経て衰退した女騎士文化がマルティン=ルターの宗教改革や英西戦争に乗じて再び台頭し、最終的にナポレオンの元で【ヴィヴァンディエール】という女性戦車兵の礎が誕生するまでを学んだお」
エルヴィン「ノーマン=コーンの学説が覆ってたというのは驚いたな。それに、戦車道と魔女という一見別物の概念が大きな関わりを持っているというのも新鮮だった」
( ^ω^)「そこが歴史の面白いところだおね。っと、カバさんチームに今更歴史の面白さを語るのも野暮か」
ツチヤ「……あれ?ブーン先生って確か国語教師じゃ」
( ^ω^)「言うんじゃねえお。
そして、今日学ぶのは再び日本での戦車道の発展。安土桃山時代末期から江戸時代にかけてがその範囲になるおね」
おりょう「……」ガタッ
( ^ω^)「先に言っておくお。江戸時代の中で戦車道に関して取り上げるべき内容は、ない!!!」
おりょう「」ドンガラガラガラガッシャッシャーーーーンッ!!!
アリサ「」ビクッ
カエサル「おりょうーーーーー!!?」
エルヴィン「尼子騒兵衛かいしいひさいちかと言わんばかりの漫画的な転けっぷりだな!?」
麻子「……懐かしい名前だ」
24 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 22:51:57.53 ID:zT+bY6RE0
優花里「しかし内藤教諭、江戸時代に“取り上げるべき事がない”というのは、私としてもいささか驚くものがあります」
忍「250年もの歴史があるし、武道って言うと何となく江戸時代の印象が強いですもんね……新撰組とか柳生十兵衛とかのイメージで」
( ^ω^)「まぁ、ちょっと今の言い方は語弊があるおね。正確に言うと、江戸時代に入ってからの戦車道の原型───織田信忠が広めようとした“砲車道”を祖とする女流鉄砲術は、幕末の動乱期までは特筆して取り上げるような出来事に乏しい反面非常に“安定的な発展”を遂げていくんだお」
柚子「安定的な………」
華「発展、ですか?」
( ^ω^)「江戸時代、徳川幕府は様々な理由から女流鉄砲術に対する支援を非常に手厚く行っていたんだお。幕府指定の地域であれば道場の建設に莫大な補助金が出たり、門下生も含めて納めなければならない税が軽くなったりとかなり優遇されていたようだおね」
( ^ω^)「勿論、探せば衰退の危機と言える事件も少なからずあるおね。例えば1657年の【明暦の大火】においては火元が女流鉄砲術の道場だったという噂が流れたせいで焼け出された人々による排斥運動が起きたし、松平定信による【寛政の改革】では幾つかの著名な鉄砲術流派家元が前老中田沼意次への収賄を行っていたせいもあって規模の大幅な縮小を検討されたりもしているお。
ただ、全体傾向として女流鉄砲術は時代の流れに従って流派を増やし、教えを体系化し、2世紀半にも及ぶ太平の世の中で緩やかな繁栄を謳歌するんだお」
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/12/10(日) 22:53:37.91 ID:2/7Hb08hO
うそーん。●●が日本の艦(ふね)でちゃんと仕事してる。
という事は●●は国として存在してない?
26 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 22:53:42.88 ID:zT+bY6RE0
パゾ美「………それはそれで意外」
ゴモ代「ねっ。歴史の授業とかで聞いてると、何となく江戸時代って庶民とか町民とか、一般の人にもの凄く厳しいイメージあるし」
おりょう「そのイメージは多分、さっきブーン先生が言ってた寛政の改革の影響がとりわけ強いと思うぜよ。幕政改革は質素倹約が中核に据えられることが多いけど、中でもこれは農民を無理やり元の土地に帰す旧民帰農令とか棄捐令でとにかく武家優遇だったから」シュバッ!!
アリサ「あ、あれだけ盛大にずっこけてたのに復活早いわね……」
( ^ω^)「カバさんチームと秋山さんはちょっと特殊な人種だから……」
スズキ「だけど、割と一揆とかも起こってたって事はそれなりに厳しい政治だったんじゃないの?やっぱり」
( ^ω^)「野上さんもいうとおり決して優しい政治じゃなかったのは確かだけど、そっちはどちらかというと重農主義政策の限界が引き起こした節はあるおね。まぁこの話始めちゃうと経済学の方向に盛大にズレていくから深くはやらんが」
桃「割と言われてることだが、田沼意次の重商主義政策がうまくいった場合どうなってたかというのは私も興味深いな。寛政の改革はその反動だったわけだし」
( ^ω^)「浅間山『ダメです』」
※老中田沼意次の財政改革……所謂【田沼時代】終焉の大きな原因は1782年の天明の大飢饉、1783年の浅間山噴火と連続的に発生した天災によるところが大きいとされています。
27 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 22:57:08.29 ID:zT+bY6RE0
おりょう「それに、江戸時代は身分差、分けても武器の規制が厳しいというのも一般の印象だが実際はそこまでじゃない。例えば町民でも、自衛のために武具を持つことはある程度認められてたんだ」
左衛門佐「決まった長さ以下のものであること、二本差しではないことなどの規定を満たした場合だけどな。鉄砲についても、結構な数が民間で所持されていたらしい」
ゴモ代「へー……」
( ^ω^)「武器所持の規定は定寸制度って奴だおね。脇差しや小刀のような武器なら持ち歩いてもOKというものだお。
鉄砲については流石に五代将軍徳川綱吉の時代に【諸国鉄砲改め】が行われる等それなりに強い規制もなされていたけれど、それでも民間で全く持っちゃダメという風にはならなかったしね。女流鉄砲術は狩猟用などと併せて“特例所持”として認められてたし」
麻子「……特に江戸の初期は、元亀天正の所謂“戦国時代”の気風がまだまだ残っていたからな。下手に強権的な規制をかければ、島原の乱に代表されるような大型の民衆暴動が起きかねなかったというのもあるんだろう」
梓「でも先生。私達が思っていたよりも江戸時代の規制が緩かったというのは解りますけど、なんで幕府は女流鉄砲術を支援したんですか?今までの話で“女流鉄砲術が廃れずに済んだ”理由は解りましたが、“緩やかな繁栄”には繋がらないと思うんですけれど」
( ^ω^)「おっおー、良いところに気づいたおね澤さん。実はそこには、戦国時代末期から江戸時代初頭にかけてで行われた、三つの大きな合戦が関係してるんだお」
左衛門佐「三つ……?」
( ^ω^)「そう。
【小牧・長久手の戦い】、【関ケ原の戦い】、そしてさっき冷泉さんも上げていた【島原の乱】。
この三つの戦いによって、砲車道………後の女流鉄砲術は、大きく運命を左右されていくことになるんだお」
28 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 22:58:09.32 ID:zT+bY6RE0
《【H──S A■■■】 Lost!!》
《Op■n ・・・e!! ─wW─!!》
《Shit, T……et arrive!!》
《【HMAS Brisbane】 for HQ, We lost Mastery of the air!! We need air support!!》
29 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 22:59:37.96 ID:zT+bY6RE0
.
( ^ω^)「先ず、小牧長久手から関ケ原までの流れをざっくりと紹介していくおー。
両方とも、普通に学校の授業でもやるから多分皆も簡単な内容は知ってるおね?」
典子「………………」
あや「………………」
( ^ω^)「なぁ?磯部さん、大野さん。なんで二人が目を反らしてるのか僕には皆目見当もつかないお」
あけび「キャプテン………」
典子「うぅ………だって年号とか人物名覚えるのもの凄く苦手で………」
アリサ「………」メソラシー
みほ「アリサさんもですか……」
優季「あやはバカだなぁ」
あや「言い返せないンゴ……」
優季「うふふ〜」←日本史、国語は90点台がデフォ
( ^ω^)「大野さん、その言葉遣いは先生感心しないな。
まぁ、一応簡単に触れておくと………」
左衛門佐「さて、と」ガタッ
( ^ω^)「ここは本当に手短に終わらせたいから座れさえちん」
左衛門佐「だからその呼び方やめぃ!!!?」チャクセキッ!
( ^ω^)「小牧長久手の戦いは1584年、羽柴秀吉と徳川家康・織田信雄連合軍の間で行われた合戦だお。戦場となったのは尾張国北部、現在でいう愛知県。
山崎の戦い、賎ヶ岳の戦いに続いて行われた、【織田信長の天下統一事業の継承者】を決めるための戦いとして知られているおね」
30 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 23:02:53.11 ID:zT+bY6RE0
( ^ω^)「よく誤解されがちなのが、メインイベントである【長久手の戦い】の経緯。羽柴秀次を総大将に池田恒興、森長可らによって率いられた三河奇襲軍二万余名を、動きを察知し先回りした徳川家康指揮下の一万三千余が撃ち破り天下に“東海道に家康あり”と知らしめた戦い。
実はこの戦い、よく家康の一方的勝利と思われてしまうけど実際には徳川軍も相当数の損害を出してるんだお」
麻子「ほぉ……大河ドラマなんかでも家康の凄さを魅せるイベントの一つとして扱われがちだから意外だ」
左衛門佐「天下の大英雄羽柴秀吉に寡兵で土をつけたってことで家康の戦巧者ぶりを示す解りやすい例になるからな。とはいえブーン先生が言うとおり、家康公の軍もかなりの深手を負ったのは事実らしい。
徳川実紀では、強襲部隊にも1000を越える損害が出たと書かれている」
( ^ω^)「徳川実紀の信憑性も考慮すると、その3倍から4倍の損害は受けたのではってのが定説だおね。徳川軍の迎撃部隊が一万三千だから、少なくとも1/4近い戦力を失った計算になるお」
優花里「当時の白兵戦主流の戦いでそれは壊滅に近いんじゃ……」
( ^ω^)「秀吉軍は5000を越える損害を出したらしいしま、多少はね?
とはいえ、三河奇襲軍に気づかれず背後を突き圧倒的優位に立っていたはずの戦いで、何故徳川軍がそれほど大きな損害を受けてしまったのか?
それを解く鍵こそが────“砲車道”に存在するんだお」
31 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 23:05:44.59 ID:zT+bY6RE0
( ^Д^)←羽柴秀吉
彡(゚)(゚)←徳川家康
(・∀ ・) ('(゚∀゚∩ ←森長可&池田恒興
ξ゚听)ξ←池田せん(後の安養院)
( ^Д^)「家康の奴め、でっかい野戦陣地作ってそこに引きこもったまま動かないだぎゃー。戦上手の家康が率いることを考えれば真っ向から攻めかかっても大損害は必須、まともには攻めたくない」
( ^Д^)「……例えば奴の本拠地の三河なんて攻めりゃ、家康の奴も慌てふためくんじゃにゃあかなぁ」チラッ、チラッ
(・∀ ・)「! 秀吉殿、その任を私森長可と池田殿にお任せ下さい!」
('(゚∀゚∩ 「前哨戦(羽黒の戦い)でズタボロにされた汚名を返上したいよ!頑張れば池田家の武名がなおるよ!!」
( ^Д^)「おぉ!おみゃあらがやってくれるだぎゃ!
その意気やよし!秀次を総大将とした奇襲軍の先鋒を任せるだぎゃ!!」
〜小牧城〜
彡(゚)(゚)「あの猿ゥしびれきらしたか!2万もの軍勢動かしてバレへんワケがないやろ!!」
彡#(゚)(゚)「速やかに主力部隊集めて電撃戦や!奴等を背後から攻め立てて叩き潰すで!!」
32 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 23:07:14.52 ID:zT+bY6RE0
〜4月9日、【長久手の戦い】勃発!!〜
榊原康政「死んで、どうぞ(迫真)」
秀次「ギャー」
('(゚∀゚;∩ 「秀次様の本隊瞬殺!?なにしに出てきたのあの人!?」
(・∀ ・;)「家康の野郎に裏回られたぞ!!迎撃準備急げ!!」
彡(゚)(゚)「阿部慎之助の足より遅いわボケぇ!!去ねや!!」
('(゚∀゚;∩ 「ぎゃー!総崩れだよー!?」
(・∀ ・;)「クソッ、このままじゃ壊滅する!!」
────ドギゥーーーーーンッ!!!
彡;(゚)(゚)そ「ファッ!?」
(;・∀ ・)「「!!?」」('(゚∀゚;∩
彡;(゚)(゚)「ワ、ワイの馬印が………何もんじゃコラァッ!!」
ガラガラガラッ!!
ξ#゚听)ξ「池田恒興の娘にして森長可が妻、せん!!
鉄砲車50台、女鉄砲衆200余名共々、羽柴秀吉様の軍勢にお味方いたぁああああす!!!」
(*゚∀゚) ノパ听)
「「「ぉおおおーーーーーーっ!!!!」」」
(*゚A゚) |w´‐ _‐ノv
ξ/////)ξ「べ、別に夫のことを助けたくて来たんじゃないんだからね!!!」
33 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 23:08:39.20 ID:zT+bY6RE0
ズダダダダダーーーンッ!!!
彡;(゚)(゚)「ファーーーーwwww
アレ信長公の率いていた砲車隊やんけ!エラい練度や、こっちの兵がバタバタ薙ぎ倒されとる!!」
堀秀政「家康の馬印撃ち抜かれとるやん!味方頑張ってるな、助けなきゃ(使命感)」
(・∀ ・#)「見よや我が妻せんの姫武者ぶりを!撃てば必中備えは固く、駆ける姿に乱れなし!!」
('(゚∀゚#∩ 「愛娘が手勢に遅れとらば、末代までの恥となろう!攻めや攻めや!総寄せじゃあ!!」
彡;(゚)(゚)「クソが……ここぞとばかりにキャラ変えよって……」
「殿!堀秀政勢の加勢もあり敵は果敢に攻めて参ります!お退きあれ!」
彡(゚)(゚)「アホがぁ!!ここ抜かれたら三河が蹂躙されるんやぞ!!逃げられるか!!」
彡#(○)(○)「三河武士の精強さ、見せるは今やぞ!!上方と尾張の弱兵共なんぞ吹き飛ばしたれぇ!!」
「「「おおおおーーーーーっ!!!」」」
( ^Д^)「………チッ」
34 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 23:13:33.20 ID:zT+bY6RE0
沙織「せんさん、格好いい………」ポー
麻子「死んでる上に女性なワケだが」
華「しかも人妻ですね」
沙織「う、うるさいなぁ!」
( ^ω^)「因みに砲車隊こそ率いなかったけど、彼女は賎ヶ岳の戦いでも鉄砲衆の指揮官として参戦して戦功を上げているおね。秀吉から彼女に直々に送られた感状が残ってるけど、そこでは“貴女が男なら100万石を槍にて稼ぐ器量だっただろう”ともう彼女をべた褒めしまくってるお」
おりょう「すごい買いっぷりぜよ」
左衛門佐「………せん殿が女ってのもありそうだけど」
( ^ω^)「日本中の歴史家達が気づいてることだから言うな。
ともあれ、突如現れた200人もの砲車隊に撃ち竦められて徳川勢は一時的に混乱、味方の奮戦を見た堀秀政が後退しかけた軍を反転させて加勢。一進一退の攻防となる。
思わぬ大決戦となったことで秀吉側の損害が更に拡大したという一面もあるけれど、家康側は何とか奇襲軍を追い返したものの予定を大きく上回る痛手を受けてそれ以上の追撃は出来ず。池田恒興、森長可ら諸将も悉く取り逃がしてしまうお」
35 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 23:16:23.47 ID:zT+bY6RE0
左衛門佐「堀秀政はせん殿の突貫がなければ退却してきたかも知れない、ということか……まさに戦況を動かした一撃だな」
ナカジマ「でも、二万人もの奇襲部隊が気づかれないと秀吉は本気で思ってたのかな……。私もそんなに日本史は得意じゃないけど、秀吉が戦上手ってのは流石に知ってるよ?
なんからしくないというか」
( ^ω^)「………ところでこの奇襲軍、秀吉が二人を先鋒にした理由は三河奇襲の序でに森長可と池田恒興にはあわよくば死んで欲しかったからという説があるお」
ももがー「えぇ………(ドン引き)」
沙織「………やだもー」
( ^ω^)「森長可は織田信忠の元与力、池田恒興は清洲会議の参加者である上母が織田信長の乳母、更にこの二人はせんを通じて縁戚関係。秀吉が疎んじてたとしても不思議じゃないおね。
壊滅ありきだとすると甥っ子の秀次をわざわざ総大将に任命して一族も護衛につけてる辺りが矛盾するから信憑性は微妙だけど、そういう噂があるのは厳然とした事実だお。池田恒興と森長可がそこから三年以内に立て続けに不自然な病死してるのも、いろいろ黒ーーい噂があるお」
梓「………やっぱり、歴史って怖いです」
36 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 23:17:33.68 ID:zT+bY6RE0
( ^ω^)「ところで、砲車隊の参戦は【長久手の戦い】の戦況に影響を与えた以外にも、秀吉の“天下統一事業の引き継ぎ”の正当性を強めたという大きな政治的意味があったお」
ねこにゃー「え?それはまた、なんで……?」
桃「………その女鉄砲衆は、もしかして岐阜の出身者が主力ですか?」
( ^ω^)「河嶋さんお見事。御名答だお」
桃「ふふん」ドヤァッ
( ^ω^)「本番でそれをやってくれるなら我々教師陣は泣いて喜ぶお」
桃「……………ハイ」←解答欄をずらして全テスト壊滅
( ^ω^)「この時池田せんの呼びかけに応じ集まった200余名は、その多くが岐阜の女衆………更に言えば、長篠合戦で織田信忠の召集に応じた者達だったんだお。彼女達は合戦後も自分たちを使い捨てにせず、男女の区別もなく褒賞をくれた信忠に恩義を感じていた。
形式的とはいえ織田家の家督を譲られていた信忠に忠誠を尽くす遺臣達が、秀吉側に立って戦った………この事実は、信忠の遺児である三法師の後見役には羽柴秀吉こそが相応しいと彼女達が認めたとも言える。
事実この直後から、それまで中立を保っていた大名や旧織田家家臣、果ては信雄側に立っていた者達まで秀吉側へと着き始める。味方を失い戦意を喪失した織田信雄も秀吉と単独講和、大義名分を完全に失った家康も兵を退き秀吉の全国統一は大きく前進するんだお」
麻子「…………ん?」
37 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/12/10(日) 23:19:29.51 ID:zT+bY6RE0
沙織「どしたの?麻子」
麻子「……いや、前々回の授業で、秀吉は刀狩り令を発布して砲車道を衰退させたと確か先生は言っていた。そうなると天下統一に大きく貢献した女鉄砲衆を、秀吉は相当邪険に扱ったことになるが」
( ^ω^)「おっおー、流石の記憶力。それに、目の付け所も鋭いお。
この話で面白いのは、女鉄砲衆が味方した秀吉は彼女達に恐怖と警戒を、逆に刃を交えた家康は畏怖と敬意をそれぞれ覚えたという点だお」
(;^Д^)『あんなやべーのが織田家に忠誠誓った状態で岐阜に跋扈してるって冗談じゃにゃあよ……力を奪わにゃあ(使命感)』
彡(^)(^)『主君が討ち取られても鍛錬を怠らず、旧主の家臣の元にはせ参じ女の身であることも顧みず勇ましく打ち掛かる……武人の鑑やんけ!性別とか関係ないから支援したろ!!』
( ^ω^)「秀吉は大義名分を手に入れたが故に、自分が織田政権を奪おうとする“簒奪者”であるという負い目が却って重くのしかかり、後顧の憂いを立つために織田家と繋がりの深い者達に力を持たせ続けるわけにはいかなくなるお。
逆に家康はあくまで織田家の同盟者だという立場も手伝って、秀吉に戦略面で敗北し継承者争いから脱落した故にそう言った軛に縛られる必要性がなくなったんだお」
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