友「ハーレムエンドっていいよな」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/02(土) 14:46:46.72 ID:4PaP6UcR0
                                          ・・
男(――高校からの帰り道……。他愛もない話をしながら歩いていると友人のソイツは唐突にソレについて話を始めた)


男「いきなり何を言い出すのお前」

友「昨日やったやつがハーレムモノだったんがな……エロ目的で買ったんだが、予想以上にストーリーも良かったんで」

友「誰も不幸にならずにみんなハッピーとか現実ではありえないだろ?そんな優しい世界をエロゲの中では作れちゃうんだよ」
 
友「お前にも布教をって思ったんだけど……どう?」

男「んーいいんじゃない? というか、むしろやりたい」

男「でも、俺そういう系のゲームとかほとんどやったこと無いんだけど」

友「確かにお前は漫画やアニメしか見てこなかったしなー。まぁこの機会にいいんじゃないか? パソコン持ってないわけでもないだろ」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1512193606
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 14:47:39.72 ID:4PaP6UcR0

男「まぁ……そうだな」

男(家でやるには色んな危険性を孕んでるからあんまり進んでやれたもんじゃなんだけど)

友「なら今日貸してやるよ! 俺はもう5週はしたからよ〜」

男「いくら何でもやりすぎじゃないか……」

友「いいやこれでもまだ甘いな。好きな作品は何週クリアしても足りないなっ!」

男「……そういう熱意を勉強にも出せよ」

友「うぐっ! と、とにかく! 貸してやるか俺ん家よってけよ!」

男「……あいよ」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 14:48:22.33 ID:4PaP6UcR0

〜〜〜〜〜〜〜〜



男「……これねぇ」

男(部屋の椅子に座ってパソコンの電源を入れた後、友人に借りたいかがわしい絵に包まれた箱を眺める)

男(うん! 実にエッチいね! こんなのを見続けてたら息子も元気になってしまうよ!)ムスコ「ヤァ」

男(そんでもってこれを持ってる姿を女性に見られたら軽蔑されるよね! ソフトだけ出してさっさとパッケージはタンスの奥にでも隠しておこう……)ササッ

男(これでいいか……。あの人にこれを見られたら、ホントに俺の人生どうなるか分かったもんじゃないしな……)

男(まぁ、あの人も節操なく俺の家とかに来ないし大丈夫か。だいたいはアポとってからだし)

男(前置きはさておき、ディスクを入れよう……よしっ)

男「これで俺もエロゲデ「……入るわよ」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 14:50:42.43 ID:4PaP6UcR0

男「ビューッ!!!! ……って、えっ?」

?「……?」

男(ノックも無しに入ってきた人物の顔は俺が驚いてる様子をまるで疑問視するような顔をしている)

男(そして数秒経った頃、腰にまで届こうとしている艶のある綺麗な黒髪をなびかせながら彼女は、ある言って一定の答えを導き出したようだ)

?「……もしかして今、オn「はいそれ以上言わない! そんでもって、やってない!」

男(彼女は今盛大な勘違いをしている。いや、それに準ずるやましいことはやろうとしていたけども!)

?「あら、残念……。もし、あなたが望むのであれば私の”手”で……」

男「してねぇって言ってんだろ!」

?「……まったくもってあなたは臆病で意気地なしで度胸もへったくれもないヘタレね。こんなに魅力的な私の提案を断るなんて」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 14:51:35.43 ID:4PaP6UcR0

?「学校中の男共ならこの提案を断る人なんていないでしょうね。それこそあなたの友人のヘンタイ君だって……ね?」

男「ヘタレで結構。別に他がどうでも俺には関係ねーし」

?「ふぅん……本当に?」ボソッ

男(俺の耳元に口を近づけ、そう囁く彼女。その動作に距離の近さを感じてしまい不意に緊張してしまう)

男「だ、だからやってないって……!」

?「……じゃあ、この画面に出ているのは何かしら」

男「……?」

男(彼女の指差した先にはパソコンの画面。そこに映し出されていたのは……)

6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 14:52:17.57 ID:4PaP6UcR0















                                                          ・・
?「『幼馴染も姉妹もクラスメイトも学園長も全員○ましてやる! おっぱいハーレムカーニバル!』……って、これであなたはナニをしようとしていたの?」

男「――――」



男(――これが、俺のエロゲデビューの瞬間であった)


















7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 14:53:19.28 ID:4PaP6UcR0




















「ハーレムエンドっていいよな」



















8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 14:53:53.05 ID:4PaP6UcR0
〜〜〜〜〜〜〜〜



男「もうエロゲはやらねぇ」


友「おいおい友よ、朝からいきなりそんなやさぐれた声出してどうしたんだ? もちろんアレ、やったんだろう」

友「……そうか。お前にはあの甘美な世界はまだ早かったか――」

男「勝手に悟ってんじゃねぇよ」

男(……今、俺と会話をしている奴は友。見ての通り、エロゲオタクである)

男(ちなみに中学からの付き合い。顔もそんなに悪くないし、気さくでいいやつなんだが現実では出会いは無い)

男(友いわく『女と出会う前にエロゲと出会ってしまった』との事だ。なお未成年の彼がどこでエロゲを入手しているかは不明だ)
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 14:54:29.74 ID:4PaP6UcR0

友「なーんてな。しっかし、不思議だなぁ。普通の人間のプレイ時間から考えてそこまで酷い内容が出てくるようなシナリオではなかった気がするぞ?」

男「見つかった」

友「え? まさか親に?」

男「いや、アレに」クイッ

男(俺の指した方にいる女性……。校門で挨拶をしている黒髪がトレードマークの彼女だ)

友「マジかよ……。それなら親に見つかってた方がマシだったな」

男「あぁ……」


?「……♪」ニコッ
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 14:55:35.88 ID:4PaP6UcR0

男「げっ、やべっ……」

?「あら、おはよう友君」



?「――そして、見境なしに女の子を○ませようとしていた男君」ボソッ



男「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!」



男(悪魔的な笑みを見せながら挨拶をしてきた彼女、その人こそ俺のエロゲデビューを邪魔をした、黒髪。俺の1つ上の三年生)

男(端正な顔立ちに抜群のスタイル。男女共に学校中の憧れの的だ)

男(そんな彼女と俺は昔に色々あり……今でもこうして親しくしている。……腐れ縁の様なものだと俺は思っている)


友「はぁー……。相変わらず黒髪先輩は凄く綺麗だなぁ……」

友「それに目をつけられてるお前も羨ましいよな。いや、弄ばれてるって方が正しいのか」

男「うるせえよ……」

男(ここ何週間は、その事をずっとイジられ続けるのではないか。そう思案させる秋風の吹く朝の出来事だった)

11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 14:56:04.23 ID:4PaP6UcR0

オハヨー ウッス オイッスー



友「――よりにもよってまさかあの人に見つかるとはお前も災難だったな……」

友「……それで、ソフトは没収とか?」

男「されてない。友からの借り物だってハッキリと言っといたから」

友「ごっそり好感度落としていくなお前」

男「仕方ないだろ、その時は頭回らなくて適当な理由を考えられなかったし」

友「へいへい……。どうせ元々好感度なんぞミリも無いから減りもすることなんて無いだろう」

男「いや、そんなことはないと思うが……」

友「えっ、マジ!?」ガタッ
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 14:56:38.58 ID:4PaP6UcR0

?「はーい、そこまでだよ二人共ー。ホームルーム始まるから友君は自分の席に戻ってね〜」


友「お、委員長か。すまんな」

?「ん、よろしい。よいっしょっと」

男(委員長と呼ばれた隣の席の彼女の名は女。友が言ったようにこのクラスのクラス委員をしている)

男(1年生の頃から同じクラスだったり、今はこうして隣の席って事で多少は仲良くしてもらっている感じだ)

男(肩ぐらいまで伸びた明るい茶髪、そして大きくパッチリと開いた目から快活な印象を受ける。実際にその通りで、男女分け隔てなく明るく接する姿はまさしく彼女らしいと言うべきか)

男(制服の着こなし方や、喋りといい……雰囲気は今時の女子高生といった感じだ)

男(そして、彼女の一番の魅力。それは……)
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 14:57:49.32 ID:4PaP6UcR0

女「――おはよっ」ニコッ


男「お、おう……おはよう」


男(不意にされると緊張してしまう……曇りの一点もない、透き通った笑顔だ)


女「ちゃんと数学の宿題やってきた? あの先生結構当てられるとめんどくさいからねー」

男「大丈夫。ほんと心配性だよな、女は」

女「いや、そういう訳じゃないよー。今の内に男君と答え合わせしようかなって。男君って無駄に頭良いし」

男「無駄は余計。日頃からちゃんと復習してる成果なんだよ……ほい、これ」

女「ありがとー! やっぱり持つべきは友だねぇ〜。……そういえば、あの黒髪先輩が勉強教えてくれるんだっけ?」

男「たまになー。余計なお世話なんだよな……」

男(そのお陰で昨日もいきなり家に来て大変な事になったんだけど……)
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 14:58:17.85 ID:4PaP6UcR0

女「いいなぁ〜あんな綺麗な先輩と勉強会って女子の私からしても羨ましいよー」

男(……女は何も知らないからそう言えるだろう。実際あの監きn……勉強会は地獄そのものだ)

男(その地獄の頻度を減らす為に勉強もしているという次第だぞ)

男「ははー。そうだなー」

女「そうだよっ、このこのぉ〜」ツンツン

男(あとこの女、なんかあざとい)

男(アッ、ダメ、脇腹ヨワイッ)
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 14:59:13.16 ID:4PaP6UcR0

〜〜〜〜〜〜〜



「えーからしてこの問の回答は――」


男(四時間目、数学。先週予習した範囲をしている授業そっちのけで外の体育の様子を眺める)

男(黒髪がいるってことは今の授業は3年生ってことか……)


黒髪「――」ボヨンッ


男(つうか三階から見てもわかるその暴力的な双丘はなんなんだよ)

男(あー男共が見てるのが容易に想像できんなー。アレ間近で見れるって裏山……じゃなくてなんか悔しいな)

男(勉強会とかとこういう学校生活ってのはあくまで別物だからな、ウン)
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 14:59:40.59 ID:4PaP6UcR0

女「なーに見てるの」ボソッ

男「うおっ……て、別に外眺めてただけだぞ」

女「この時間は確か3年生の体育……。ははーん」

男(なにわかったような顔してんのアンタ、つかなんで時間割把握してるんですか)

女「黒髪先輩、見てたの?」ササヤキ

男「ん、んなわけ――」

「おい、男少し騒がしいぞ」

男「あ、すみません……」

男「……ったく」

女「あはは……」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 15:00:15.58 ID:4PaP6UcR0

〜〜〜〜〜〜



キーンコーンカーンコーン

ジャアネー マタアシター バイバーイ



女「じゃあねー男君〜」

男「おう、またなー」ヒラヒラ


友「男ー帰ろうぜ―」

男「悪い、今日は部活に顔出してくるわ。最近ちょっとサボり気味だったし」

友「分かった。んじゃまた明日な〜」

男「おう。また明日」


男「さて、と……」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 15:00:46.29 ID:4PaP6UcR0

『文芸部』



男「……」コンコン

?「……どうぞ」

男「うっす……って今日もまた一人か」
 
?「あっ、先輩……。こんにちは」ニコッ

男(文芸部の部室の片隅で優しい笑顔で迎えてくれた彼女は後輩。俺の一つ下の1年生)

男(年下にしては大人びた容姿、雰囲気を持っている彼女。性格も物静かではあるが、素直でいい子だ)

男(この部活内でも幽霊部員一号の俺とか、その他の幽霊部員を慕ってくれている所も後輩がいかに良い奴であるかを物語っているだろう)


後輩「……」


男(――ただ、少し稀に陰のある表情を見せるのを知るのは……数少ないと思う)
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 15:02:11.50 ID:4PaP6UcR0

男(しっかし、あれだなぁ。どれかの部活に所属しなくちゃいけない学校のシステムが理由で帰宅部員の受け皿になってる文芸部で真面目に活動してるって、ほんといい子だよなー後輩は)

男(まぁ、なんかいつも一人で本を読んでるのもかわいそうって思っちゃうから俺も部室に来てるんだけどなー。本を読みたい後輩にとっては余計なお世話になってんのは分かってはいるが)

男「毎回部室来るといつも後輩いるけどさ……。文芸部だからって真面目に部室で本を読む必要なんかないんだぞ」

男「放課後なんてもっと友達となんか……ほら、カフェとか行ったりさ」

男(女子が放課後何して遊ぶかわからなくてカフェなんて口走ってしまったぞ)

後輩「女子高生が放課後にカフェに行くって……先輩、ちょっと女の子に夢見過ぎじゃないですか?」フフッ

男「はははっ……」

後輩「別に私はそういった事はあまり好きでは無いですし……。好きなんです、ここで本を読むのが」


後輩「……こうして先輩がたまに来てくれたりして寂しくもありませんから」


男「……そうか。そりゃあ良かった」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 15:02:52.49 ID:4PaP6UcR0

後輩「あっ、そういえば……何か飲みますか? 紅茶とコーヒーならインスタントでもよければありますけど……」

男「あーいいよ。自分でやるから。俺の事なんて気にしないで本読んでて」

後輩「……じゃあ、お言葉に甘えて」

男(そう言うと後輩は彼女の定位置とも言える部室の隅の方の席に着き、本に挟んであった栞を取り出し読書を再開した)

男(彼女のその姿を確認し、部室に備えてある紙コップの中にインスタントのコーヒーの粉末を開け、お湯を入れる)

男(そして後輩とはそう遠くない席に腰を落ち着け、カバンの中から文庫本を取り出す)

男(空間に沈黙が訪れる。聞こえるのは本を捲る音、飲み物をすする音、そして外から聞こえる運動部の声)

男(少し気まずくもあるが、なぜか俺はこの時間が嫌いではなかった)

男(喋る言葉は少なくても、後輩といるこの時間は心を安らげてくれる……そんな気がしている)

21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 15:03:50.30 ID:4PaP6UcR0

〜〜〜〜〜〜



後輩「……そろそろ暗くなってきましたね」

男「おっと……もうそんな時間か。そろそろ帰るか」

後輩「はい。あっ、戸締まりとかは……」

男「いいよ、俺がやっとくから。たまにしか来ないんだし、先輩らしくこれぐらいの事はしないとな」

後輩「じゃあ、お願いしますね。お先に失礼します」

男「おう、また今度な」

男(家まで送る事はできないが、せめて扉までは見送ろとしていると、後輩は扉の前で立ち止まった)

男(そして急に振り返り……)

後輩「せ、先輩っ」

男「ん、なんだ?」




後輩「次は、その……いつ来てくれますか?」




22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 15:04:25.70 ID:4PaP6UcR0

男「……そうだな、また近い内に来る」

後輩「そうですか……。あの、私――」



後輩「待ってますからね。ここで先輩の事……」


男「ありがとな……。なんか幽霊部員の俺なんかに気遣わして」

後輩「そんなことないですっ……! と、という事でさ、さようなら!」


男(急にしおらしくなったり、興奮したり変な後輩ではあったが……。普段物静かな後輩のなんだかこういう姿は目新しいな……)


男(……さて、片付けも済ませて俺も早く帰るとしますか)
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 15:04:57.34 ID:4PaP6UcR0

〜〜〜〜〜〜〜



男「ふぅ……」


男(明日の範囲を予習を終え、時計を見てみると1時を指していた。もうそんな時間だったのか……)

男(あまり酷く眠気に襲われない事を思うと、部室で飲んだコーヒーの効果が思った以上に続いているようだ)

男(かといってこれ以上起きてても明日に支障が出かねないし、最悪寝坊なんかもあり得る)

男(早く布団に入ってしまおう……)


男「……」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 15:05:24.14 ID:4PaP6UcR0

男(……今日も色んな事があった)

男(黒髪に例のゲームをイジられたり、女に少しイタズラの様な事をされたり……って俺イジられてばかりじゃねえか)

男(あとは……後輩か。後輩のなんか新しい一面って言うか……そんな様なモノを見れた気がする)

男(先を考えると例のゲームの件は頭が痛いし、今後何を仕掛けてくるか分かったもんじゃねえ)

男(さっさとクリアして、友に返すとするか……)


男「……おやすみ」


男(誰に言うのでもなく、俺はただその言葉を呟き眠りについた――)

25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 15:06:47.89 ID:4PaP6UcR0









































―――――――――カチッ。






































26 :1 [sage]:2017/12/02(土) 15:10:39.57 ID:4PaP6UcR0
長編になる予定です!文も下手です!誤字多いです!語彙もたまにおかしいです!それでもよろしければ是非お読みください!

後、このSSは特定の物語などを誹謗・中傷するようなものでも擁護するなものでもありません!


書き溜めもしないと思うんで更新頻度は低いです!すみません!
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 15:32:15.56 ID:sLM0PG1No
おつ
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 21:32:31.99 ID:9sFHRcrTo
おつ
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/03(日) 21:42:26.66 ID:4v1xxX/50
>>1
・・
ソレ
>>6
・・
ナニ


いきなり誤字ってましたすみません
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/03(日) 22:02:32.17 ID:4v1xxX/50
〜〜〜〜〜〜



男(翌日。遅い時間に寝たのに幾分、体の調子が良い)

男(朝飯は……途中のコンビニでパンでも買うか。食べる時間確保したいし、早めに出るか)

男(顔洗って、歯磨いてーっと……)

男(……髪はこんなもんでいいか)

男(昨日の内に準備しておいた制服に着替え、出る準備を終えた。そしていつものように必ずすることがある)


男「そんじゃ、今日も行ってくるよ兄」


男(幼い顔立ちを写した遺影に挨拶をする。彼は俺の兄であり親友であった人物だ)

男(俺が9歳の時に交通事故によって亡くなってしまったが、親友として、家族として今でも俺の心の中に生き続けている)

男(……今週の終わりの日は、そんな兄の命日だ)
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/03(日) 22:19:52.98 ID:4v1xxX/50

男(俺の家は昔から少し特殊だった。理由としては父さんが仕事が忙しい為に、年に数回にしか帰ってこないのだ)

男(そんなわけで食事も自分で作ったり、買わなきゃならない。こうやってコンビニ食で済ましてしまうこともある)

男(そんな生活を見かねた家が近い黒髪の母親が食事を届けてくれたりすることもある。たまに黒髪自身が家に作りに来ることだってある)

男(ちなみに黒髪の料理は超絶美味い。俺の料理の腕前が普通の男に毛が生えた程度だとかではなく、ファミレスとかの美味さなんて比べ物にならない)

男(容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群……。おまけに料理も美味いし、手芸もできる。完璧超人だよなぁ、あの人は)

男(……まぁ、少しスキンシップが過剰って所は欠点というべきなのだろうか)

男(……黒髪の超人ぶりはそこまでにしとくか。さてと、さっきコンビニで買った牛乳でも飲むか)ガサガサ


「あー、食べ歩きはいけないよー!」


男「……その声は女か。朝から委員長らしく大変だな」ススゥー

女「そうだよー。そうやって、男君が牛乳を飲むのをやめてくれないと仕事が増えて大変だよー」

男「別にストローで飲んでるくらいはかまわないだろ? 朝飯食べてないからハラ減ってるんだ」

女「だからって校則破っていい理由にはならないけどね……。まぁ、今回は多目に見てあげる」

男「さすが委員長! っということでこのサンドイッチもここで食べていいか?」

女「ダーメ。ちゃんと教室に着いてからだよ」

男「へいへい」
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/03(日) 23:28:55.00 ID:4v1xxX/50

男「そういえば、いつもこんぐらい早い時間に出るのか?」

女「うん。委員長として色々とやることあるしね〜」

女「というか私元々早起きする方だから」

男「生活から何まで優等生だなー。とても俺には真似できそうにはねえな」

女「そうだねぇ……男君が委員長として色々と働くことなんて想像できないもんね」

男「確かにホームルーム始まる前にクラスを静かにさせようとしても余計に騒がしくしそうだし、授業合間の休み時間だって日直の手伝いなんてやらずに友達と駄弁ってるかもなー」

男「男子からエロ本を取り上げようとしたら俺も一緒に読んじゃうだろうな」アハハ

女「……」ジー

男「……って、さすがにデリカシーなかったな。わるいわるい」

女「もうっ……私だって女の子なんだよー?」

男(いつも平然とケロッとしながらエロ本取り上げるもんだから平気だと思ってた)
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/03(日) 23:29:28.26 ID:4v1xxX/50

女「……やっぱり、男君も興味あるんだ」

男「いやっ、まぁ……人並みには」


女「……えっち」ボソッ


男「――っ」

男(ジト目気味にそう言葉を零した女に、不意にドキッとしてしまう)

女「……なーんてね。冗談だよっ。それじゃ、急ぐから先に行くね」

男「お、おう。頑張れよ、仕事」

女「ありがとっ。じゃあ、また教室でね」

男(そう言うと女は小走りになって俺の先を行く。……と思っていたら、少し進んだ所で女は俺の方を振り向き、そして大きく深呼吸をして――)


女「サンドイッチ! 絶対に教室で食べなきゃダメだよーっ!」


男(……ほーんと、委員長のくせにあざといんだよ、あいつ)

男(だから人気あるんだけどさ……。委員長に言われた通りこのサンドイッチは教室で食べるとしますか)

男(時間も余裕はあまり無いし、少し早く歩くか)
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/03(日) 23:39:26.46 ID:4v1xxX/50
〜〜〜〜〜〜





友「ふぅー食った食った〜」

男「……ごちそうさま」ボソッ

友「そういえば、昨日は俺の貸したやつはやった?」

男「昨日は部活から帰ってから色々とやってたら、やる時間無かった。今日あたりにでも――」

ブブブブブブブブブ

男(右ポケットから振動を感じる。この振動の感じからして、おそらくメールでも来たのだろう)

男(携帯を画面を見るとそこには『黒髪』の名前が表示されていた)

男「……っわり。ちょっとメール返すわ」

友「んー」
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/03(日) 23:40:42.49 ID:4v1xxX/50

男(黒髪からのメールは少なく、大体が重要な連絡事項がほとんどなので確認は早めにしといた方がいい)

男(早速メールを確認する。そこに記さていた内容は……)





男「……すまん、友。今日も例のゲームできそうにない」

友「へ?」
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 00:01:11.13 ID:h+a2pQxF0

〜〜〜〜〜〜



黒髪「〜♪」トントン


男「……」


男(制服の上にエプロンを着て我が家のキッチンで料理に勤しむ黒髪。そう、今日の夕食は何を隠そう黒髪の手料理である)

男(頻度といえば黒髪の気まぐれで決まるために多い時は多いし、時には週に一度も来ないことだってある。

男(前に来たのは一昨日だとすると今週はわりと多目の部類に入る)


男(……にしても鼻歌混じりで料理を作る彼女は少し目に毒だ。制服エプロンという特定の性癖を狙い撃つ様な格好はやめませんか。俺に効くから)
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 00:05:47.44 ID:h+a2pQxF0

黒髪「……なぜそんなに私の事を舐めるような目つきで見るのかしら。確かに男子としては私のようなスタイルの女性をジロジロ見るのもわからなくは無いけど」

黒髪「まさか、制服エプロン姿に惚れ込んでるとかではないでしょうね?」

男「そ、そんなわけねえって! 料理に集中しろ!」

黒髪「あら? なんだかまんざらでも無い様子ね。他の男子ならいざ知らずだけど……」

黒髪「男なら昔からのよしみとして、特別にじっくり見てもいいのよ?」ボソッ

男「――っ!」

男「そうやって近づいて耳元で囁くのやめろ! 俺が耳弱いって分かってやってるだろ……!」

黒髪「ふふっ……。やっぱり耳、弱点なんだ」フゥー

男「だあーっ! 息を吹きかけるな!」

黒髪「……これ以上やるとかわいそうだから、今日はここまでにしとこうかしら」

黒髪「男が望むなら、私はいくらやってもいいんだけどね?」

男「ぜぇぜぇ…。いや、今後一切やらなくていいから」

黒髪「そう? 残念だわ……」
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 00:13:30.19 ID:h+a2pQxF0




男「……ごちそうさま」

黒髪「お粗末さまでした」

黒髪「お皿は洗っておくから置いといて」

男「いや、作ってもらってるんだからこれぐらいは自分でやるよ。何でもやってもらうのも申し訳ないし」

黒髪「別にそんなこと気にする必要ないのよ?」

男「親しき仲にも礼儀ありってことだよ……。ほら食器」

黒髪「私の食器を取り上げてどういうつもりかしら。箸でも舐めるつも、だったら直接キスしても……」

男「早く食器よこせ」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 00:28:28.71 ID:h+a2pQxF0

ジャー



黒髪「臆病者……。据え膳食わぬは男の恥って言うでしょ?」

男「はいはい……」

黒髪「……そういえば今週の土曜のことだけど」

男「兄の命日か? それがどうした?」

黒髪「その日はちょうどお父さんも帰ってこられるのでしょう? 滅多にない機会だから私の家でお父さんを連れて食事でもって、母が言っていたのだけれど」

男「ああ、分かった。父さんに相談しておく。後、墓参り行くけど、来る?」

黒髪「ええ、勿論行かせてもらうわ。……今年で8年になるのね」

男「……ああ」


男(まるで兄を想うように遠くを見る彼女。沈痛な表情を見せるのもその筈。二人は生まれた頃からずっと一緒に過ごしてきた幼馴染だったから)

男(黒髪と兄は仲が良かった。二人が優しかったから俺も間に入れたものの、普通ならあの頃の二人を割り込むことなんてできなかったと思う)


男(……あれほど仲が良かったんだ。こんな表情だってするだろう)
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 00:38:41.90 ID:h+a2pQxF0


黒髪「……それじゃあ、用事も終わったし、帰るわ」

男「あいよ。送ってこうか?」

黒髪「大丈夫よ。別にそんなに心配するほど長い距離でもないでしょ」

男「そりゃそうだけど……」

黒髪「兄の話をした後だから不安になるのも分かるけど……」

男「……」

黒髪「次はいつ来るかは分からないけど、来る前にはメールするから」

黒髪「前みたいにいかがわしいゲームをやっててメール確認してなかった……なんてことしちゃダメよ?」

男「……肝に銘じておく」

黒髪「じゃあ、また明日」ガチャ…

男「ああ。今日もありがとな」

黒髪「ん……」


バタン…
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 00:45:27.52 ID:h+a2pQxF0
男「……」


男(『兄の話をしたから不安になるのも分かる』ってか……)

男(黒髪は兄の話をすると、決まって俺の心配をしてくる)

男(普段はあれだけスキンシップをしてくる癖に、こういう時だけ大人しくなるんだ)

男(兄が死んだのなんてもう8年も前だ。もういい加減にそんなに気にするのはやめてもいいだろう?)



男(……兄を意識してるのは、俺よりお前なんじゃないのか?)
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 00:46:08.18 ID:h+a2pQxF0
今回はここまで
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 05:05:03.95 ID:vyFQ+htAO
おつ
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/04(月) 17:52:45.67 ID:h+a2pQxF0
〜〜〜〜〜〜〜



女「あの、ちょっといいかな男君」

男「ん、どうした?」


男(今日も授業の全てを終え、放課後に何をするかを考えていた時。唐突に隣の席の女から声をかけられる)


女「手伝ってほしいことがあるんだけど……この後って時間あるかな?」

男「あー……」


男(今日は部活に顔を出そうと思っててんだよな……)


後輩『待ってますからね。ここで先輩の事……』


男(なんだか、信頼されてるみたいだしな。近いうちに行くなんて言ったからなぁ……)
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 17:53:51.24 ID:h+a2pQxF0
女「……」


男(……別に明日でもいいか。今の女の表情を見ると相当困っているみたいだし)

女「もしかして、何か用事あった……?」シュン

男「いや、大丈夫。それで要件は?」

女「文化祭実行委員会でやる作業があるんだけど、人手が足りなくて」

男(そういえば文化祭実行委員も兼任してるんだったな……。って、文化祭のことすっかり忘れてた)

女「やることって言うのは倉庫の掃除。汚れちゃうかもしれないからジャージに着替えた方がいいかも」

男「わかった。それだったら、着替えてから落ち合うことにするか。倉庫っていうのは校舎裏のゴミ捨て場の近くの倉庫であってる?」

女「うんっ、急いで着替えてくるから男君も早めにね?」

男「……りょーかい」
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 17:54:47.98 ID:h+a2pQxF0



女「おまたせーっ」


男(早々に体操服に着替えて倉庫の前で待っていると、少し遅れて女がやってきた)

男(いつもは結んでない髪をポニーテールにし、上着のジャージを腰に巻いた上は半袖、下はジャージを着ている)

男(狙ってやってるのか、それとも普通なのかよくわからないラインではあるが、やはりその格好は危険だと思います。ウン)


女「待った?」

男「いんや、俺もさっき来たところだしそんなには」

女「……」
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 17:55:45.66 ID:h+a2pQxF0

男「手っ取り早く終わらせようぜ。……どうした」

女「いやっ、さっきのやり取りがそのっ……」

男「……?」

女「……デートの待ち合わせみたいだなって思って……」セキメン

男「――」

男「バ、バカなこと言ってないではやくやるぞ!」

女「う、うん」







女「……」
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 17:57:02.70 ID:h+a2pQxF0


男「よいっしょっと……。これはここでいいか?」

女「うん。あっ、中身割れやすいから、注意して置いてね」

男「はいよ……」


男(作業することおよそ30分。最初は去年の文化祭などで使ったものなどが整理されずに置かれている状態で大分酷かったが、結構片付いてきた)

男(あと30分もあれば終わるか……。もしかしたら部活に少しぐらいなら顔を出せるかもしれない)


女「っしょと……」

男「……」
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 17:58:04.95 ID:h+a2pQxF0

男(……まだ夏休みが明けてからまだ一月も経ってないせいか、締め切った倉庫内での作業は結構蒸し暑く、汗もかいてしまう)

男(それは女も同じ様で、ほのかに顔が火照っているような……。出るとこ出ててスタイル良いし、髪を纏めてる影響でうなじが見えて……。あれ、何だか色っぽく……)

男(って何を考えているんだ俺はっ! 女は実行委員として頑張っている中でやましいこと考えている場合じゃないだろ……!)

男(落ち着け俺……。黒髪のスキンシップに耐えてる時のように平常心だ……!)ブンブン


女「……どうかした男君?」

男「気にしないでくれ」キリッ

女「う、うん……」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 17:59:10.38 ID:h+a2pQxF0

女「この具合なら後もう少し終わりそうだねぇ」

男「だな。こんな面倒くさい作業とっとと終わらせよう」

女「うん。あとは何かトラブルが起きないといいけど……」

男「トラブルというと?」

女「機材を落としちゃって壊したりとか、こんなに埃が積もってるし、隅っこの方で変な虫が出たりとか……」


女「二人っきりで倉庫に閉じ込められちゃったり……」


男「虫は出てくるかもしれないが、物の破損とかは注意して運べば大丈夫だし、倉庫に閉じ込められるってそんな漫画じゃあるまいし」
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 17:59:50.41 ID:h+a2pQxF0

男「あるわけない――」


ガチンッ


男「だろ……って、えっ」

女「まさか、今の音って……」


男(おい、嘘だろ。こんな所で……)


女「えっ、ちょっと、誰かぁ!」ドンドン!


男(こんな格好の女と二人きりって……)


男(まずいだろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!)
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/04(月) 19:16:44.13 ID:h+a2pQxF0

男「おい! 誰かいないのか! いたら返事してくれ!」


シーン……

男「……マジかよ」

男(確かに校舎裏に人が来ないっていうのも分からなくも無いが……!)


男(っ! そうだ、携帯があった! ……って、ポケットに入ってない……?)

男(こういう時に限って置いてくるとは……しっかりしてくれよ俺っ……)

男「女、携帯持っているか?」

女「……充電切れ」


男(……万事休す、か)
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 19:17:36.09 ID:h+a2pQxF0

男(いや、俺だって体育倉庫に閉じ込められるシチュは憧れてはいるよ。だがな……)


女「……グスン」


男(実際、涙目の女子と一緒となると気まずすぎる……!)


男「おーいっ!! 周りに誰かいるなら声をかけてくれ!!」

女「……無駄だよ男君。ここって誰も近づかないから」

男「分かってる……! けど、静かに待つよりかはまだマシだ」

女「かもね……。私もやってみる」
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 19:18:16.62 ID:h+a2pQxF0

男(外から鍵をかけられて、大分時間が経った)

男(あれから必死に大声を出しても何の反応もなく、結局は無駄に終わってしまった)

男(……早く、どうにかしないと)

女「男君ー」

男(扉を突き破るか……? 俺にそんな力はあるだろうか?) 

男(なら、換気用の小窓からの脱出は? ……いやダメだ。あの窓は人が通るには小さすぎる)

男(じゃあどうすれば? このまま助けを待つしか無いのか……?)
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 19:19:04.12 ID:h+a2pQxF0

女「おーとーこくーんっ!」

男「おわっ! び、びっくりさせるな……」

男(何か誤解が無いようにと離れて座っていた女がいつの間にか俺の目の前に来ていた)

男(そして、俺の隣にごく自然に座り、口を開いた)

女「だって男君、さっきから呼びかけても反応してくれないんだもん……」

男「悪い、ちょっと色々とここから出る方法考えてた」

女「そっか……」


女「ねぇ、男君」
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 19:20:59.67 ID:h+a2pQxF0

女「私に気を遣って離れて座ってくれたり、閉じ込められた状況をどうにかしようって考えるのも、男君なりに私に優しくしてくれてるのも分かるよ?」

男「……当たり前だ。こんな所で男と二人っきりになったら不安になるもんだろ」

女「そう、だね……。普通の男の人だったらいつ何をされるか、不安だったかも」

女「……でも、ね」


男(暗くなった倉庫の中でも顔を紅く染めた女。吐息混じりに喋る姿はすごく、魅力的で――)



















女「――私、今男君になら、何をされても……いい、よ……」セキメン


















男(異性を意識付けるには、十分過ぎるほどだった)
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 19:22:09.85 ID:h+a2pQxF0

男(……ゴクリ)

女「ねぇ……おとこ、くん……」


男「お、俺は――」


「すいません……もしかして人いましたか」




男「          」女「          」




「あっ、これはお邪魔でしたねー」
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 19:22:47.97 ID:h+a2pQxF0

男(倉庫に鍵を締めたのは用務員の方だった。いつも使われていない倉庫なので、つい鍵を締めてしまったらしい)

男(そのうっかりのせいでどれほど俺の心労がすごかったことか……)

男(……しかし、それ以上にダメージを負っているのは――)


女「……」


男(……俺の目の前で俯きながら顔を真赤にしている彼女だろう)
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 19:23:50.49 ID:h+a2pQxF0

女「あの、ごめんね男君……。私、ちょっとどうにかしてたみたい」

男「あ、いや、全然なんのこと? 気にしてないから大丈夫大丈夫」

女「……いやらしかったよね。幻滅しちゃったかな……」

男「いやいやいやいや! そもそも俺が流されてたのが悪いって!」

女「……優しいね」

女「男君、あんなこと言った傍で、こんなこと言うのも悪いけど……」







女「私は、男君になら、本当にそういう事をしてもいいと思ってるから……」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 19:24:30.43 ID:h+a2pQxF0

男「――っ」


女「〜〜〜っ!! そ、そういうことだからじゃあねっ!!」


男「あ、えっと……」


男(今のってつまり、告白……ってことだよな。あの、女が俺に……?)

男(あの、男女の誰からも人気があって、いつもクラスをまとめている委員長が、俺に?)


男「マジ、かよ……」



男(彼女の純情で真っ直ぐな気持ちに、俺は……どう、答えればいいのだろう)
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 19:30:11.97 ID:h+a2pQxF0








































"Man is a tool-using animal. Without tools he is nothing, with tools he is all."
                『女』ルート







































62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 19:31:41.98 ID:h+a2pQxF0
こんかいはここまでです。

こんな感じに各ルートやってく感じです
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 20:43:05.17 ID:Yn+nauuE0
2828がとまらねぇ どうしてくれるんだ(ありがとうございます)
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 22:56:29.16 ID:3XjpRe45O
放課後の行動がルート分岐になったのか
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/05(火) 02:39:41.49 ID:8eBZ2+Rc0
なにやら神スレの予感がするな
期待してます
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/05(火) 21:53:41.86 ID:Ir09vrxk0
〜〜〜〜〜〜



男(あの日から、俺はおかしくなってしまった)





男『………』

後輩『……先輩? さっきからずっとポットを眺めてますけど何かあるのですか……?』

男『あ、うん……ポットの曲線美って、何だか見てて癒やされるよな』

後輩『へ……? あ、そ、そうですね……』


男(ポットの曲線美の素晴らしさを後輩に伝えていたり……)
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/05(火) 21:54:22.21 ID:Ir09vrxk0

黒髪『男……? さっきから箸が動いてないけれど』

男『……』


焼き魚『男君になら、何をされても……いい、よ』


男『〜〜っ!!』バクバクバクバク


黒髪『何なのよそのすごい勢い』



男(焼き魚と謎の会話を繰り広げたり……)
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/05(火) 21:56:14.55 ID:Ir09vrxk0

女『男君……その、おはよ……』


男『――』シュッ


友『おい、男! どこに行く! ホームルーム始まるぞぉ!』


男(……女と顔を合わせるのが恥ずかしく、逃げ出してしまった)

男(その日の授業は気まずすぎて、何か言えたもんじゃない)




男「はぁぁぁぁぁぁ…………」



男(こんなに女性耐性無かったんだな俺……)ズーン

男(今までモテた事はなかったもんな……。ただ、一回だけバレンタインに知らない女の子からチョコを貰ったことはあるけどなぁ……)

男(俺が不甲斐ないせいで女にも気を遣わせてしまった……。ここは男らしく答えを出さなければ)

男(できることなら返事は早い内に返したい。女性を待たせるような不誠実な男にはできるだけなりたくない)
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/05(火) 21:57:19.12 ID:Ir09vrxk0

男「そもそも俺って好きな人って居たっけ……」


男(好きな人ってのは居ないと思うが……気になる人はいる)

男(……真っ先に浮かんできたのは黒髪。小さな頃から知己なだけあって、異性としては一番多く接しているからな……)

男(けど、この気持ちはきっと恋ではない。……恋だと思いたくは無い。あの人が見ているのは俺ではなく――)

男(って、そんな事を意識してはダメだ。……きっと命日が近かったからか意識してしまっているだけだ……)


男(……次に浮かんできたのは後輩の顔。稀に見るあの何か諦めたような、そんな悲しい顔をした後輩を見ていると……なぜか気になってしまう)

男(前に一度、後輩に手を貸した時の事とか関わっているのだろうか。……あれだけ取り乱した後輩を見たのは最初で最後だ)

男(けど、これも恋という気持ちとは違うような気がする。俺のお節介な部分が出てしまってるんじゃないか?)


男(その他に色んな女子の事を考えてみる……。しかし、女の事を考えたときのようにドキドキする感覚は感じられない)

男(……そこから導き出される結論はただ1つ)


男(俺も、女の事が好きなのかもしれない)
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/05(火) 21:58:07.50 ID:Ir09vrxk0
〜〜〜〜〜〜



男(週明けの月曜日。いつもより自分の容姿に気をつかう)

男(下手に髪がボサボサだったり、前歯に何か付いてたりしては格好がつかない)

男(だってそうだろ? 好きな人の目の前ではより魅力的な自分でいなければダメだ)


男「兄。俺、好きな人ができた。告白されたんだ、彼女から」

男「その人に俺は今日返事を返すつもり。……もちろん、OKの」

男「俺が不甲斐なくて、少し待たせてはしまったけどな……」

男「黒髪の事は……大丈夫だ。兄の代わりにこれからも俺が見守っていくから。彼女ができたからって簡単に見捨てたりするワケ無いだろ?」



男「……それじゃ、今日も行ってくるよ、兄」
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/05(火) 21:58:38.46 ID:Ir09vrxk0

友「よーっ」パンッ

男「おっ、友か。ういっす」

友「先週までおかしい男では……もうないか」

男「それについては迷惑をかけた。すまん」

友「迷惑なんてしてねーよ。むしろ男の行動にめちゃくちゃ笑わせてもらったから感謝したいぐらいだ」ハハハ…

男「やめろ思い出したくない」


友「……それで、あんだけおかしくなったって事は……何かあったんじゃないのか?」
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/05(火) 21:59:28.24 ID:Ir09vrxk0

男「……女に告白された」

友「へー委員長がねー……。えっ、委員長が!!???!!!?」

男「あ、ああ……」

友「こいつぅ! 知らぬ間にマセやがって〜! このこの〜!」

男「くっつくな暑苦しいっ……!」

友「んで、返事はどうするんだ?」

男「……色々と考えたんだが……俺は女にOKを出すつもりだ」

友「……そか」


友「……ったく、俺もリアルでエロゲみたいな恋愛してぇなあ」

男「いや、決して俺は漫画とかみたいな恋愛じゃ……」


男(って、アレ? 妙にテンプレじみた事が多かったような記憶が……)
 
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/05(火) 22:00:46.76 ID:Ir09vrxk0




友「それでさあ、そこで言うセリフがこれまた痛快なんだよなあ」

男「へー……。なんかそれも気になるな」

友「じゃ、今度貸してやるよ! ってまだ俺が全部読み終わってないんだけどな」

男「……楽しみに待ってる」


「友君、おはようっ」


友「おっ、可愛い彼女さ――」ボソッ

男「バ、バカッ!」

友「モガーっ!」
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/05(火) 22:01:34.06 ID:Ir09vrxk0

女「……朝から元気だねぇー。もうそろそろホームルームだから自分の席に戻ってね」

友「ぷはぁ! りょーかい!」ビシッ


女「それと……。男君も、おはよう」

男「ああ。おはよう」


男(……あくまで女は普通を装うつもりか)


女「……月曜日ってやっぱり憂鬱だよね。や、やっぱり――「女」

女「……え? ど、どうしたかな?」

男「大事な話するから、放課後、教室に残ってくれないか」

女「え、あ、う、うん……。わかった」
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/05(火) 22:02:40.26 ID:Ir09vrxk0

男(その日の授業は緊張のせいか、今まで一番過ぎるのが早かったかもしれない)

男(彼女になんて伝えればいいのか。どんな言葉を言えば喜んでもらえるのか)

男(……そんな事を考えていると、あっという間に放課後になっていた)


女「うん! また明日ねっ」

ジャアネイインチョー マタアシター

女「……」


女「……これで、二人っきりだね男君」
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/05(火) 22:03:26.91 ID:Ir09vrxk0

男「そうだな」

女「……っ」

女「だ、大事な話って何? も、もしかしてこの間の言葉だったり……」

男「その通り。あれは告白されたって思っていいんだよな?」

女「そ、それは……。は、はい。そ、そうです……」

男「……それを聞いて安心したよ」



男「女、俺も好きだ。こんな俺でよければ……付き合ってください」
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/05(火) 22:03:59.59 ID:Ir09vrxk0

女「……ぁ」

女「……わ、私も好きです。こちらこそこんな私だけれど……よろしくお願いします」


男「……」 女「……」

男「クックックッ……」

女「……フフッ」

男「なんで、俺達敬語になってんだ」クスクス

女「だね、なんだかおかしいね」クスクス

男「今更こんな改まって言うってのは、な」
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/05(火) 22:04:50.97 ID:Ir09vrxk0

女「……そうだ、男君。私を彼女にするなら1つ言っておかないといけない事があります」

男「なんだ?」

女「私って実は……すっごく甘えん坊なの」

女「だから、男君には下の名前で呼んでほしいなぁ……」ウワメ

男「……それぐらいなら全然いいよ。えーと、お、”女”?」

女「もう一回」

男「女……これでいいか?」

女「うん、うん……。私も男君の事、名前で呼んでもいいよね?」

男「ああ。カップルだからそれが当たり前……だと思う」

女「ふふっ……そうだねっ」


女「大好きだよ、”男”君っ♪」
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/05(火) 23:00:26.27 ID:ZP9e4j46O
ふおおおおおおおおおあああああん
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/06(水) 00:32:56.61 ID:9qscI95E0
〜〜〜〜〜〜



女「はい、あ〜ん」


男「……」

女「男君、固まってないで口を開けて」

男「あ、あーん……」

男「ん……」モグモグ

女「……どうかな?」
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 00:33:23.31 ID:9qscI95E0

男「……うまい」

女「よかったぁ……。男君の舌に味が合うかなって心配してたんだ。もしかしたら、食べてくれないかもって……」

男「そんな心配なんてする必要ないって。十分おいしいよ」

女「じゃあ、もっと食べてねっ」アーン

男「いや、食べさせてくれるのはもういい……」


男(俺が女に告白して数日後。女がいつも俺が昼食を学食などで食べているのに気づき)


女『だったら、私がお弁当作ってくるよっ!』


男(なんて言い出して、只今ワガママな彼女と絶賛バカップル中でございます)
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 00:34:17.32 ID:9qscI95E0

男(あんまり人に見られないような学校の敷地内のベンチで食べているが……こんな姿を誰かに見られたら大変だろうな)

黒髪『……』ニコニコ

男(……大変で済むかどうかもわからない。黒髪にも隠してたりせず、早めに言っておくか……)





















黒髪「……メスの匂いがするわ」

エッ、ドウシタノクロカミサン…… ドウドウ……
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 00:35:04.50 ID:9qscI95E0

男「しかし悪いな……。俺なんかに弁当作ってもらって」

女「そんなことないよ。いつも自分の分を作ってるんだから、一人分増えた所で大した手間じゃないから」

女「それに、”俺なんかって”言っちゃダメだよっ。なんたって私の自慢の彼氏なんだから……ね?」

男「す、すまん。気をつける」


男(それにしても、付き合い始めてから女の隠れていた本性が見えてきた気がする)

男(普段は委員長としてサバサバしてるけど、二人きりになると途端にベタベタしてきたり)

男(結構、仕草だったりとかも凄く女の子っぽいと感じる)
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 00:35:30.36 ID:9qscI95E0

女「あ、そうだっ。男君、今週の日曜って空いてる?」

男「えと……多分大丈夫」

女「それじゃ映画見に行こっ! ちょうど見たい映画が今週から始まるんだ」

男「もしかして例の恋愛映画か?」

女「当たりっ。ということで日曜は映画館デートだねっ」

男(そうか。二人で出かけるんだからデートってことか)

男(……そう思うと変に緊張してきたな)

女「えへへー。楽しみにしてるね!」

男「ああ。俺も楽しみだ」
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 00:36:15.14 ID:9qscI95E0
〜〜〜〜〜〜



男(集合時間まで後10分……か)

男(駅前に10時集合とはいえまさか、9時半に着いてしまうとはちょっとやりすぎてしまったか)

男(待たせるのは良くないとは思って早めに出たが……。少し見積もりを誤ったか)

男(……それほど楽しみにしているって事にしておくか)

男(念のためもう一回時計を確認しようとすると、見慣れた姿を見つける)

男(あれはクラスの……。へぇ……あいつら付き合ってたのか)

男(たしかにクラスで一緒の所はよく見てはいたが……)

男(駅の中に消えてく彼らを見ていると、その反対方向から人混みの中でも一際目立つ存在がこちらに向かってきている)
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 00:36:55.53 ID:9qscI95E0

女「はぁ……はぁ……ごめん、また待たせちゃったね」

男「いや、全然待ってないから大丈夫」

男(恥ずかしいので30分前にいたとは口が裂けても言えない)

男「それよりまだ集合時間前だぞ? そんなに急ぐ必要なかったじゃないのか」

女「あ、いや、その……」

女「待っている男君の姿見えたら、早く会いたいなーって思っちゃって……」セキメン

男「」

女「じゃ、じゃあ早く映画館に行こうっ」

男「そ、そうだな! せっかく早く来たことだしな」
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 00:37:38.37 ID:9qscI95E0

男(そういえば、女いつもより綺麗だな……)


女「……」


男(化粧もナチュラルにしていて、服装も見慣れている制服じゃないせいか新鮮に見えて、それでまた緊張してしまう)

男(俺と会うためにここまでしてくれてるって思うとなんだか嬉しいもんだな……)

男(……そういう所は俺の方から褒めるべきだよな)


男「女、今日はいつもより、そのっ……か、かわいいな」

女「――!」

女「今日は男君と会うためにいつも以上に気合い入れてきたんだ」

女「そう言ってくれると、うれしいな……」

女「男君もいつもより髪とかキマってて、かっこいいよ」

男「ア、アリガトウ……」
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 00:38:25.03 ID:9qscI95E0




男「えーと、高校生二人で……」

2600エンニナリマース

男「これでお願いします」

400エンにオツリデース


男「はい、これチケット」

女「あっ、ありがとう。でも本当にいいの? チケット代払ってもらって」

男「気にしないでくれ。こういうのが男が払ってなんぼだから」

女「でも……」

男「じゃあ、代わりにポップコーンでも買うか?」

女「んーー……。そうしようかなっ」

女「味は私が買うんだからキャラメルね! サイズは二人で食べるから――」
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 00:39:57.38 ID:9qscI95E0

『ジョニー! 行かないで! 無理にでも行くのなら、私も共に行くわ!』

『すまないエリザベス……。これは俺個人の問題なんだ……。本当に、済まないっ……!』

『待って、ジョニィー……!』


男「……」

男(ベタだなぁ……。でも王道だからこその良さってのがあるよな)

男(女は――)


女「……」


男(……え?)
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 00:40:30.74 ID:9qscI95E0

女「わ、わっ……。い、いきなり見られるとびっくりしちゃうよ」コソコソ


男「あ、すまん……」コソコソ

女「……私、ちょっとトイレ行ってくるね」

男「あ……」



男(その時の女の表情は、いつものような快活な印象とはかけ離れていて)


男(むしろ冷めきった様な……そんな風に感じた)
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 00:41:25.40 ID:9qscI95E0



女「〜〜〜! おいしい〜」

男「気に入ってもらえたようで何より」

女「まさか男君がこんなお店知ってたなんて、ちょっと惚れ直しちゃったかも」

男「ま、まぁな……」


男(昼前から映画を見る予定だったから必然的に昼食を食べる事になってくるし、そうすると駅前まで来ているとなると外食になるのは自然の流れだ)

男(しかし、今までファミレスやラーメン屋とかしか行ったことないし、彼女をそんな所に連れていくわけに行かないしな)

男(事前に調べておいてよかった。ここなら女性向けのカロリー控えめなメニューもあるし、喜んでくれるだろうと思っていた)
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 00:41:57.34 ID:9qscI95E0

女「ごちそうさまっ。あー、お腹いっぱいだよーっ」

男「えと……この後はどうしようか」

女「うーん、せっかく駅前まで来てるんだし……カラオケなんてどうかな?」

男「お、いいな。女はいつもどんなの歌うんだ?」

女「えーっと、最近は――」


男(この後のデートの予定を話す彼女はいつも通りの明るくて、二人きりになると少しワガママになる……いつもの女だ)

男(……きっと、さっきのは俺の見間違いだったんだろう)


男(せっかく彼女とデートに来ているんだ。思いっきり楽しまないとな)
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 00:44:27.08 ID:9qscI95E0

女「ん〜っ! 楽しかったーっ!」

男「歌、上手かったな。以外とかっこいい系の曲とかも歌っててビックリしたけど」

女「実はああいうのはあんまり歌わないんだけど、男君の前なのでちょっとカッコつけてみましたっ」

男「なんだよそれっ。別にカッコつける必要はないだろ」ハハハ

女「テンション上がっちゃって、つい……えへへ」


女「……今日は、ありがとね。時間を忘れちゃうほど楽しかった」

94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 00:45:04.52 ID:9qscI95E0

男「俺も。こんなに楽しい時間を過ごせたのは久々かな」

女「えへへ……ありがとう」

女「それじゃあ、また明日」

男「ああ。また学校で」

女「……ばいばい」


男(そう言うと、女は俺の家とは逆方向へ向かって歩き始めた)


男(さてと……俺も家に帰るとしますか)

男(久々にはしゃぎ過ぎたかな。今日は湯船にでも浸かるかー……)
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 00:45:58.61 ID:9qscI95E0
こんかいはここまでです
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 01:48:28.93 ID:FZIOmfZAO

ところどころ不穏なのが面白いな
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 02:44:01.16 ID:8d9VEw7PO
ちんこ
なんか伏線たくさんあってワクワクするわ
読みやすいし
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/06(水) 23:36:57.93 ID:9qscI95E0
〜〜〜〜〜〜



男「……ごちそうさん」

黒髪「お粗末さんでした」

男「ふぅ……。今日の麻婆豆腐、いつもより辛かったような気がするなー」チラッ

黒髪「あらそう……? 気の所為だと思うのだけれど」

男「おい待て、その手に握っている赤い物体はなんだ」

黒髪「……あなた、幻覚が見えてるんじゃない?」

男「おい」
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 23:37:29.22 ID:9qscI95E0

黒髪「……冗談よ。色々とあって、味を変えてみようと思ったの」

男「その味を変えるに至った理由を詳しく聞きたい」

黒髪「……男、あなたがいつまで経っても話してくれないのが悪いのよ」

男「いや、何の事だ?」

男(女との件はこの後に言うつもりではいたが……)

黒髪「言うこと、あるんじゃないの?」

男(黒髪のその眼差しは、俺の目を捉えて離させてくれようとせずに、俺を覗き込むように見ていた)

男(……こりゃあ、もうバレてるんだな)
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 23:37:56.44 ID:9qscI95E0

男「ああ。……俺、彼女できた」

黒髪「……やっぱり、ね」

男「……悪い」

黒髪「何で私に謝る必要があるのかしら。男にやっと彼女ができたっていうのに」

男「それはお前は――――」

男(その時、気づいた)


黒髪「――」


男(黒髪はもう覚悟を決めてきたんだ。それなら、俺は野暮にそれを穿る真似はするべきではないと)
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