【ポケモン】キミの知らない物語【化物語】

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53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/03(日) 17:24:45.63 ID:t9LJtrZq0

みかんシープの開幕か、更新楽しみにしてる

“夢限抱羊”って夢幻泡影と無限抱擁と羊からできてる?
54 : ◆3s4IbQehY. [saga]:2017/12/10(日) 15:22:04.92 ID:2/dn233N0
お待たせしてしまい申し訳ありません、続きを書いていきたいと思います。

ただ一つ注意しておきますと、怪異の設定は作者の妄想がフルスロットルで発動してます。
原典とは大幅に変わってたり、影も形も無かったりしてます。
気分を害される方が出る可能性もありますので、ご注意ください。
また、未熟な作者の事ですので矛盾や説明不足な点があるかと思われます。
そのような点を見つけられましたら“あっまたやってるなこの作者”程度にご指摘ください。
今後もこのようなクオリティが続くと思われますので何卒。
55 : ◆3s4IbQehY. [saga]:2017/12/10(日) 15:34:54.24 ID:2/dn233N0
>>53
作者が考えた訳ではなく、>>36様からのアイデアですので完全にそうとは言えません。
ですが、作者が考えた詳細な部分にはそれらも関係しております。
56 : ◆3s4IbQehY. [saga]:2017/12/10(日) 15:44:46.51 ID:2/dn233N0
―003―


夢限抱羊。
夢の中限りの抱擁を与える羊、と書いて夢限抱羊。
コトネさんとウツギ博士は“羊”という動物の事をまったく理解していない。
けれど、私は一度、幼少の頃に姉と共に母親から一度その名を聞いた事がある。
なんでも羊は大昔のイッシュやカロスに位置する地域で安眠の象徴とされていた。
その名前を唱えていると徐々に眠気が出て、最終的に眠りにつく、というもの。
もっとも、その時の私は羊が全長数十メートルの巨大な動物とは思わなかったが。

「むげん……ほうよう?」
『そう、夢限抱羊 憑いた人間に終わる事のない夢を見せ続ける怪異だ』
『少しおとぎ話をしようか、ジョウトに伝わる物語でメリープに関するこんな話がある』

そうだ、確か母も羊のことと共にそのような物語を聞かせてくれた。

『むかしむかし、ある所に一匹のメリープがいた』
『そのメリープの元には罪を犯したと嘆くポケモンが訪れた』
『一体、その発端はなんだったのかは分からないが、その数は星の数ほどもいた』
『何気ない、諍いや争いを起こしたというポケモンがいた』
『また、誰かを死なせてしまいその罪に苦しみ続けるポケモンもいた』
『メリープはその全てを赦した、あなたの罪は赦されると』
『しかしある時、そのメリープは彼の考えを気に入らない者により死ぬ事になった』
『死ぬ直前、メリープは自分を信じ続けたポケモン達に言った』
『“私はただ無意味に死ぬのではない、罪の為の完全な生贄として死ぬのだ”』
『その後メリープは殺されたが、彼は死んだ三日後蘇り何処かへ消えた』
『………という部分で話は終わっている』

おとぎ話とは、どんなものでも残酷な何かが含まれた話が多い。
この話も例外ではない。そして、この話は多くの謎を残して話が結末を迎える。
なぜメリープは死後蘇ったのか。蘇ったメリープはどこへ消えたのか。
母親は当時、彼は人間の罪に対する贖いの為に世界を歩き始めたと言っていた。
だが、別の見方も考えられる。
その一つが、姉が唱えたい今回の事件の鍵ではないだろうか。

『この話は大昔存在した羊を象徴する何かの物語が、時の流れで少し変わったものだ』
「つまり、その話で出てくるメリープは羊のことである、と?」
『えぇ、まさしくその通り』
「だけどその話とさっきの終わる事のない夢を見せ続ける怪異がどう繋がるんですか?」
『まぁまぁそう急かさないの、これからちゃんと説明するから』

もしこのおとぎ話が夢限抱羊と関係あるなら、どういう事なのか。
ミカンさんに憑き、ミカンさんと眠り続けるあの羊は、一体なんなのか。
57 : ◆3s4IbQehY. [saga]:2017/12/10(日) 15:45:12.85 ID:2/dn233N0
『夢限抱羊を一言で表すならば“神の子羊”といったところか』
「神?」
『そう、先程の話でメリープは蘇ったと言ったが、これには諸説ある』
『あるいは人として蘇った、あるいは神として蘇った……とかね』
「生贄として死んだことで神様になったって事?」
『はてさて、それはどうだろうか 話自体、本来の物語と変わってるだろうからね』

それに、神として蘇ったなんて一部の者からすれば反論しない訳にいかない話だ。
どんな過程で神になったにしろ、そう簡単にポケモンが神になってたまるか、という事。

『ただここでメリープが何として蘇ったかは問題じゃない、問題は彼の存在意義だ』
「存在意義?」
『なんのために、彼は蘇ったか そして、何をするために彼は消えたのか』
『答えは救済、彼は自分が死ぬ前と同じように誰かの罪を赦すために消えた』
「それは一体誰なんですか?」
『さてね、完全にその誰というのが記されてない以上、考えるしかないのだが』
『そしてここで君達に一つ断っておくと、この物語は重要な部分を書いていない』
「重要な部分、というのは?」
『さて、なんだろうね』
「………メリープはどんな方法でポケモン達の罪を赦したのか」
『その通り、流石私の妹 さすリリだね!』
「なんですかその造語は とにかく説明してください」
『はいはいと、要するに“彼はどのような方法をもってして罪を赦したのか”』
『私はこう考えるね、“彼は罪人とともにその罪の償いをし続けた”とね』
「それは、一体どういう意味で」
『これらはあくまで私の推測であり、考察だ けどこう思うんだよ』
『メリープはポケモン達を“導いた”のではなく、彼等に“ついて行った”』
「ついていった?」

先頭に立ち先導していくのではなく、隣に立ち共に歩んでいく。
比べてみれば全く違う行動であり、周りから見た際の印象も変わるだろう。

『メリープは罪人に寄り添い、その罪を共に向き合う…ここまで言えば分かるかな?』
「要は、メリープの元となった羊もそうじゃないかって事ですか?」
『そゆこと』
「羊はなんでも昔は眠りの象徴だったらしいですし、ミカンさんが眠っているのは」
「それが理由、ってこと?」
「多分、ですが」
「でもそれでいくと、ミカンちゃんは何か罪を犯したの?」
『人は誰だって罪は犯すよ、それが大きい罪か小さい罪か それだけさ』
「だとしても……」
『まぁコトネちゃんの言わんとしてる事は理解できるよ、だけどこういう見方もできる』
『彼女もまた、誰かの罪に寄り添い、誰かの罪を償い続けているとしたら?』
58 : ◆3s4IbQehY. [saga]:2017/12/10(日) 15:45:46.62 ID:2/dn233N0
「……え?」
『つまり、彼女自身が罪を犯した訳ではない 罪を犯したのは別の誰か』
『その罪が大きな罪か小さな罪かは今の時点では置いておくが、その可能性が高い』

同情、もしくは共感。不遇な境遇な人間に対して、誰でも一瞬は抱くであろう情。
それは相手にたとえ非があったとしても、場合によってはそう思われる。
ミカンさんは、本来“夢限抱羊が憑いていた者”に何かしらの情を持った。
結果、怪異は憑いていた人間から彼女へ移った。単純に言うなら、乗り換えた。
そして、彼女はその自分へ乗り換えた怪異に憑かれ、今も昏々と眠り続けている。
これが罪の償いというのだろうか。彼女でないにしろ、罪人の罪の償いなのだろうか。

『だが、問題は本来怪異が憑いていた人間だね もしかしたら人間でない可能性もあるが』
「えっ?でも、今怪異が憑いているのはミカンちゃんで……」
『だからこそ厄介なんだよ、今回の場合彼女をどうこうしても彼女は目覚めない』
「それは、どういう意味だい…?」
『怪異が憑いた理由は“その人物が罪の意識に苛まれていたから、罪悪感を持つから”』
『しかし、今は“その人物に同情し自分に罪悪感を持ってしまった人に憑いている”』
『これを解決する為には、元々憑かれていた者に自分の罪を吐露してもらうしかない』

同情する者にはごく稀に、自分に罪悪感を抱いてしまう場合がある。
彼をどうする事もできなかったのか。もっと他に何か出来たんじゃないのか。
自分には、それを察知して、防止して、何事もなく終わらせる事ができたのではないか。
といってもこれはその人物が持つ独りよがりな考えだけに、当事者は与り知らない。
自分をどうする事もできなかった、などと後悔している人がいるなど知る由もないのだ。
だからこそ、その人には自分が犯した罪を吐きだし、謝ってもらうしかない。
自分がこんなことをしたのは君のせいじゃない、だからそう後悔しないでくれ、と。

『それで、コトネちゃん達は心当たりあるかい?彼女が同情しそうな子』
「えぇ…そんな事突然言われても、いなかった………と思います」
「彼女の周りで最近何か大きな事件があったなんて聞いてないからね」

罪、というのはその者が過ちと思っている自分の行動にして、過去である。
その者が犯した罪の全てが罪足り得るとは言い難い。実際、彼女がそうなのだ。
自分は何も気付けずに、何もできなかったという罪を感じたミカンさんが、その例だ。
何もできなくて事態が悪化したのと、何もしなくて事態が悪化したのとでは違う。
では、彼女は何にそこまでの罪の意識を感じたのだろうか。一体誰、に。

「…………あ」
「リリィちゃん?今度はどうしたの?」

何もしなかった。否、本来自分がするべき事をしなかった。放棄した。
それをした人物が、いやそれをした者が、いた。
過去の自分の種族が、その怪異と同一視されるように描かれたのも含むだろう。
けれど、これは間違いかもしれない。実際にあの子は病気だったのかもしれない。
だが私の考えが合ってるなら、彼女はそうかもしれないと薄々気付いていたのだろうか。
そして、そうさせてしまったのはそれに気付けなかった自分のせいだと思ったのか。
彼女達の間にどんな思いが錯綜していたのか、私は知らない。知る権利がない。
だからこそ、なにも知らない私が今も頂上にいるであろう彼女に伝えに行くのだ。

「…ちょっと、行きましょう」
「え、行くってどこに?」
「あそこです」

そうして指差した建物の階段を駆け上がり、梯子を上り、頂上へ着き。
私達が来るのを予見し、あるいは待っていたかのような彼女に、私は切りだす。

「私達と一緒に、来てもらえますか」
「………パル」

分かってしまえばなんてことない話だった。くだらないと思う人もいるだろう。
けれど、現実ではそうなのだ。ミカンさんはそのせいで眠っているのだ。
ミカンさんが同情したのは、罪の意識を抱いたのは、デンリュウ。
彼女が“アカリちゃん”と呼んでいた、灯台にいるポケモン。
本来なら、毎日欠かさず海に光を与えているはずだったポケモン。
始まりは小さな事だった。ポケモンもここまで話が大きくなるとは考えなかったはずだ。
けれど、これは起こるべくして起こった話だ。物語だ。
だからこそ、このポケモンなしでこの物語を語る事はできないのだ。
儚く、壊れやすく、けれど終わらない幻を見たこのポケモンがいなくては。
自分の役を捨てて眠りたかったアカリちゃんなしで、ミカンさんの物語は語れない。
59 : ◆3s4IbQehY. [saga]:2017/12/10(日) 21:03:45.57 ID:2/dn233N0
―004―


「少し、いいかい?」
『なにかな?』

アカリちゃんの所へ行き、またミカンさんの家に戻ると私達三人は家から追い出された。
現在、家にはミカンさんとアカリちゃん、そして件の怪異しか入っていない。
だが家に入る際のアカリちゃんは、何かを決意したように、真っ直ぐな目だった。
私達三人の席を外させる程だ、きっと他にも思う所があったのだろう。
しかし、アカリちゃんもアカリちゃんで重役とはいえ自分の仕事を、
ただの仮病で少しばかり怠けた程度で、随分と重い罪悪感を抱いていたようで。
責任感が強いというか、周りの事を別の意味で考えていないというか。

「アカリちゃんは“灯台の光の役割を自分が怠けた事”を罪と思ったんだろ?」
『あぁ、リリィの仮説が正しいとしたらそうだろうね』
「じゃあ、罪の償いが“眠り続ける事”っていうのはおかしくないかな?」
『ふむ、言いたい事は分かるよ』

アカリちゃんは自分は怠けない方がよかったと感じた。
なのになぜ、彼女に憑いた怪異は余計に彼女を怠けさせるような真似をするのか。
怪異の本質が眠りという事もあるのだろうが、そうだとしてもだ。

『それは、アカリちゃんが眠る事で起きる結果を見せてさらに反省させる為だ』
「と、いうと?」
『もし、仮にミカンちゃんではなくアカリちゃんが眠り続けたとしよう』
『そうすると、周りにはどのような事が起きる?』
「え、そりゃあ灯台の光がなくなるから………あっ」
『そう、怪異はその自分がいなくなるとどうなるのかという事を見せようとした』
『彼女がいなくなることで、どれだけの人が困り果てるのかを表そうとしたんだよ』

灯台の光、つまりそれは真夜中に大海原を進む船乗り達の道標になる。
その存在であるアカリちゃんがいなくなった場合、起きる事とはなにか。
海に明かりが灯る事はなく、船は目的地も分からず波に流されてゆく事になる。
そしてきっと、眠り続けるアカリちゃんを、ミカンさんは心配することだろう。
ジムリーダーの仕事よりも、アカリちゃんの事を優先してしまうほどに。

『自分がした事を続けた場合、一体どうなるのかを伝えようとした』
『それが怪異のした役割であり、今のミカンちゃんに起こっている現象だよ』
「…だとすると、ミカンちゃんには今の僕達が見えてるって事になるのかい?」
『あるいはね、彼女に憑く際に怪異が少し形を変えたのなら話は別だね』

私達が心配している事も、アカリちゃんがどのような面持ちで灯台にいたのかも。
そして、もしかしたら、自分の身に起こっている怪異という存在の事も。
ミカンさんは知っているのかもしれない。知ってしまっているのかもしれない。
そんな事を私達が考えている時だった。
家の中で、誰かが走ってくるような、少し軽めの足音が響いた。
60 : ◆3s4IbQehY. [saga]:2017/12/10(日) 21:05:32.01 ID:2/dn233N0
「…っ、ミカンちゃん!」
「わわっ」

玄関の扉が開き、中から姿を見せた彼女へとコトネさんは華麗にダイブした。
予想外の行動でその場で硬直するミカンさんへ飛んでいく。

「うわああんミカンちゃーん!心配したよー!!」
「あっ、その、すいません、何かおかしなことに巻き込んでしまい…」
「そんな事はどうだっていい 体、悪いところとかないかな?」
「は、はい 特に変わりはない、と思います」
「そうか…良かった」

被っていた帽子が私の方へと吹き飛んでくる勢いでミカンさんを心配するコトネさん。
まだ着替えておらず寝間着姿のミカンさんの後ろからアカリちゃんも出てきた。
その手には遺伝子のような模様が入った見た事もない輝きをする石がある。

「あの、アカリちゃんが持ってるそれって……」
「…これですよね、えっと、なんて言えばいいのかな……あの子が落としていったんです」
「落としていった?」

あの子、というのは恐らく怪異のことだろう。
しかしどうして、あの怪異がこのような石を落としていったのか。
それに、ミカンさんが落としていったと言う前に少し言いよどんだのも気になる。

「家の中で何があったんですか?」
「………あまり詳しく言わない点もありますけどいいですか?」
「それは、私が知りたい点をはっきり言ってくれましたら」
「えぇ、それじゃあ簡潔に説明しますね」
「分かりました」

ミカンさんはアカリちゃんから持っていた石を受け取ると私に渡してくれた。

「これ、多分あれだと思うんです ……メガストーン」
「め、メガストーンだって!?」
「メガストーンってなんですか?博士」
「えっとね、メガストーンっていうのは…」

ウツギ博士がコトネちゃんに説明を始めたが、私は姉から聞いた事がある。
メガストーン、ポケモンが更なる進化を遂げるメガシンカに必要な貴重な石。
これの他にトレーナーが使うキーストーンなる物も必要だとか。

「これは、アカリちゃんが怪異から受け取った物らしいんですけど」
「パル、パルパル」
「クチ?」

ポケモン同士はポケモン同士で何やら話を始めている。
彼等も彼等で、何か話しておきたい事がきっとあるのだろう。
61 : ◆3s4IbQehY. [saga]:2017/12/10(日) 21:06:47.87 ID:2/dn233N0
「これが一体、なんでアカリちゃんに渡されたのかは分かりません」
「けれど、あたしが起きた後すぐに怪異はいなくなってしまって………」
「いなくなった後、その子がいた場所にこれが落ちてたんです」

果たして、このメガストーンが示す意味はなんなのか。
私と姉に憑いた怪異どちらとも、まだ消えていないので今回のケースは初だ。
やはり人生の先輩に聞くべきか、と姉に訊いてみたところ。

『多分、ある種の催促というか、注意なんじゃないかな』
「注意ですか?」
『うん メガシンカするイコール力が強くなるってことだからね』
『もしかしたら、怠けずにちゃんと頑張りなさいって言ってるのかもしれない』
「パルウ」
「そんな顔しないでアカリちゃん、大丈夫です私も頑張りますから」
「パルゥ!」

二人、いや一人と一体。羊と眠り続けた少女と羊に憑かれたポケモン。
彼女達の顔は昨日、アサギの灯台で出会った時よりも、明るくなっている気がする。
私達が外にいる時二人の間で何があったのかは結局知らず仕舞いだが。
きっと、良い方向へいってくれた。そう思っておく事にしよう。

「まぁ、メガストーンはトレーナーがキーストーンを持っていないと意味ないけど」
『だからこそ、今回は注意喚起で済んだ そういう事じゃないかい?』
「そうであってほしいものです」

そう言ってお互い笑い合う彼女達は、とても綺麗に見える。
夢とは、目覚めればすぐ忘れてしまいそうな程に壊れやすいものである。
だから夢から覚めたくないと思う人が大勢いるのだろう。
夢の中でなら、在りもしない仮初の幸福を、感じる事ができるから。
けれど人は、夢から覚めなければいけない。幻想を手放さなければいけない。
現実と向き合い、自分を思い出し、そして世界を知っていく。
だが少なくとも彼女達なら、きっと大丈夫だ。大丈夫なはずだ。
根拠はないかもしれない。けれど、確かな確信は私にはあったから。
62 : ◆3s4IbQehY. [saga]:2017/12/10(日) 21:09:34.66 ID:2/dn233N0
―005―


後日談、というか今回のオチ。
怪異に憑かれていた時間にして、12時間程眠っていたミカンさんの回復は速かった。
エナジードレインでもされてないかと思った私の心配は杞憂に終わる。
それよりも逆に、休息を取れていなかったミカンさんには良い休みとなったようで、
身だしなみや食事などをしてすぐ、ジムの方へと顔を出しに行った。
コンディションは最高、という事で早速コトネさんはジム戦へ挑戦して行った。
そして、その結果なのだが。

「……か、ったー!!」
「コトネさん、お見事でした…」

コトネさんの勝利となった。
最初から最後まで、一進一退の攻防が続き、最終的に勝利はコトネさんが勝ち取った。

「受け取ってください アサギジムのバッジ、スチールバッジです」
「うん!ミカンちゃん、バトルすっごく楽しかった!ありがとう」
「いえいえ、あたしも久しぶりにここまで全力を出して戦った気がします」

負けた彼女が見せた表情には悔しさなどなく、とても清々しそうな表情だった。
もしかしたら、怪異は彼女の罪悪感と一緒に疲労まで持っていったかもしれない。
そして、それから三日後の事。

「えええ!?もうリリィちゃん行っちゃうの?」
「はい、私は私で、色々な所を周ってみたいと思いますし」
「うぅう…このまま一緒に旅できたりしないかなぁって思ったのに」
「あはは、それは少し言い過ぎじゃないかなコトネちゃん」
「それでリリィさんは今度はどこへ行かれるんですか?」
「さぁ、分かりません 別の地方に、なんて事もあるかもしれません」
「そうですか…でしたら、これを」

ミカンさんから渡されたのは、一枚の船のチケットだった。

「これは?」
「ここから少し離れた“ホウエン地方”へ行ける船のチケットです」
「えっ、ででもなんでミカンさんがこれを…」
「実は前までアサギに住んでた私の知り合いが最近ホウエンへ引っ越して」
「是非来てほしいと先日ホウエン行きのチケットを貰ったんですが二枚あって」
「あたしは一緒に行く知り合いがいなくて、なのでリリィさんに」
「いいんですか?」
「はい、チケットはもう一枚あるので気にしなくていいですよ」

そう言われて、私はもう一度受け取ったチケットを見る。
そこには確かに【タイドリップ号 ミナモシティ行き】と書かれていた。

「もし、ホウエンに行く事になったら是非使ってください」
「ありがとうございます、ところでその知り合いというのは?」
「今は同業者なんです、私の名前を言えばすぐ気付いてくれると思います」

どうやら、ホウエンにいるという知り合いもジムリーダーとのこと。
是非とも会ってみたいと思う反面、また厄介事にでもならないかが心配である。

「分かりました、もし出会ったらミカンさんの事を話しておきます」
「はい、あっ怪異の事は……」
「大丈夫です、知る人でない限り話したりしませんから」
「クチクチ!」
「ですよね、ふふっ」
「パルゥ!」
「…それじゃあ皆さん、短い間でしたが色々ご迷惑おかけしました」
「そんな改まんないでよ!また会おうねリリィちゃん!」
「怪異の事を僕なりに調べてみる、進展があったら連絡しよう」
「はい」
「リリィさん、今回はありがとうございました なんとお礼したらいいか…」
「気にしないで下さい、それではまた」

アサギシティから出る道路で三人とポケモン達に見送られて私は街を出た。

「………怪異、か」

今回のジョウトの事件を鑑みると、他の地方でも怪異が活発化してるかもしれない。
あくまで今回が特殊なだけという可能性が無きにしも非ずだが、見過ごせない。
それに。

「…君の事も、どうにかしなくちゃいけないからね」

アローラからちゃっかり私の所へついて来てしまった蝸牛。
彼、もしくは彼女は本来アローラの地縛霊。成仏する方法を探したいものだが。
そんな考えを巡らせる私だが、今もその人物の姿は見えないままだ。

「とりあえず、どこか向かいますか」

私は次なる目的地を考えながら、太陽が照る道路を呑気に歩いていく。
63 : ◆3s4IbQehY. [saga]:2017/12/10(日) 21:24:02.83 ID:2/dn233N0
これにて「冴物語」〜みかんシープ〜完結です。(完全後付タイトル)
一週間も待たせておいてこのクオリティ&文字数。大変申し訳ありません。
今回は意外と平和的に終わりましたがいつかは殺伐バトル展開を書きたい所存です。

ではまた行動安価したいと思います。
ちなみに今更ながらリリィのフットワークについて説明させていただきます。
リリィは基本的に故郷のアローラ以外の地方へ行くには少し時間を要します。
(話数的に言いますと大体三〜五人分くらい)
その為、それくらいの怪異と遭遇しないと他の地方へ行けません。
アローラだけは行動安価の際にいつでも帰る事が可能です。
また、一度行った地方なら次の行動安価でいつでも行けるようになります。
さらに例外としてアサギシティ設定を使用してホウエンへ行けるようになりました。
(ちなみにメインはORAS時空ですが、RSE時空も幕間で登場するかもしれません)
なのでリリィちゃんはジョウト、ホウエン、アローラが現在行ける地方です。
他の地方にはジョウトであと二、三人ほど怪異解決しないと行けません。
(他の地方ローテーションした場合は五人解決した所で安価できるようにします)
これらの事を頭において安価して頂けると幸いです。


↓1 ジョウト編次のキーマンorアローラかホウエンへ行くの中から決めてください

↓3 ジョウト編続行の場合、怪異のモデルを決めてください
  (ジョウトから出る場合は作者が続きを書くため安価無効です)
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/10(日) 21:28:34.71 ID:zBGjAjBj0
アカネ
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/10(日) 21:48:08.06 ID:O+tvHU3g0
コガネムシ
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/10(日) 21:48:22.33 ID:uy0hwPCdO
67 : ◆3s4IbQehY. [saga]:2017/12/10(日) 22:22:17.51 ID:2/dn233N0
安価ありがとうございます、次回も頑張っていこうと思います。
それではまた。
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/10(日) 22:27:25.69 ID:FULiYFA20

基本的に週一更新なのかな、次回も楽しみにしてる
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