( ´Д`)離れ小島の提督さんのようです

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1 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/11/18(土) 06:02:26.43 ID:pc666ZQu0
鳴り響く不快なアラーム音によって、僕の朝は強制的に始まる。

枕元でがなり立てるスマートフォンを手に取り、画面をタッチしてアプリを停止。目覚まし時計を模したアイコンが消えて、薄らとした明かりの中に現在の時刻が浮かび上がる。

○四三○……即ち、午前4時30分。

すっかり肌寒い日が増え、そろそろ秋と冬が鬩ぎ合いを始める季節。この時間太陽はまだ水平線から顔を出しておらず、外は暗い。

カーテンを開けても意味が無いことは明かなので、そのままスマホの明かりを頼りに眠い眼を擦りながら寝室の入り口まで歩き電灯のスイッチをONに。クリーム色の文明の光が満ちて、ベッドと鏡台と冷蔵庫だけの殺風景な室内を照らし出した。

「…………眠い」

食欲・性欲と並んで三大欲求に数え上げられ、古来より“眠らせない”という拷問が存在する程度には人間にとって睡眠は重要な行為だ。

「時間遅滞剤、開発まだかなぁ……」

故・手塚治虫先生が描いた【処刑は3時に終わった】というホラーテイストの短編漫画で出てきた、体感時間を極端に遅くするという効果を持つ薬。勿論架空の存在だけど、これがあれば大分僕の睡眠事情が改善されるのにと朝地獄の苦しみと共に目を覚ます度思ってしまう。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1510952546
2 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/11/18(土) 06:03:25.78 ID:pc666ZQu0

(´Д`)〜゚「くはぁ〜………」

こうして僕────日本海上自衛隊付・青ヶ島鎮守府所属、八頭進(はっとう・すすむ)一等海佐相当官の一日は幕を開ける。




〜(´Д`)離れ小島の提督さんのようです〜
3 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/11/18(土) 06:07:57.92 ID:pc666ZQu0
青ヶ島。

日本国本州から300km以上離れた南の海に浮かぶ東京都管轄下の島嶼の一つで、「人が住む島」としては日本領の最南端に位置する。島自体の面積が小さい上本州からあまりにも離れすぎているため、人口は僅か160人と少ない。

一応郷土料理・特産品と呼べる物もあるにはあるし宿屋も営業しているのだが、飛行機や船の定期便が極端に少なく交通の便も非常に悪い。近年では訪れる観光客も他の著名な伊豆諸島構成島と比較してかなり少なく、当然知名度も圧倒的に低かった。

なぜ過去形なのかと言えば、今は違うからだ。

「提督閣下、おはようございます」

(´Д`)「おはようございます、熊倉一士。館内巡回お疲れ様です」

「やや!司令官殿、おはよーにゃしぃ!」

(´Д`)「うん、おはよう睦月さん。入渠帰り?ゆっくり休んでね」

2011年、日本時間8月15日の正午ぴったり。

太平洋戦争の開戦から丁度70年となるこの年、海の底から突如として化け物の群れが現れる。

【深海棲艦】と呼称されたこの化け物達はハワイ島近海での襲撃を皮切りに、世界中の海を戦場に変えた。

「八頭一等海佐相当官、おはようございます!」

(´Д`)「おはようございます加納一曹。すみませんけど、一○○○の会議に出席して欲しいので県一等陸尉に声を掛けておいて貰えませんか?」

「はっ、承知しました!」

島国であり海洋国家である日本にとって、太平洋側に突如として現れた広大な“最前線”から雪崩れ込んでくる深海棲艦の大群をどう迎撃するかはまさに国家存亡に直結する大問題だ。本土上陸阻止のためにはもともと自衛隊基地がある南鳥島や硫黄島などを中核として離島群に戦力を配備して迎撃する必要があり、各島の拠点化や防衛ラインの整備が開戦当初から急ピッチで進められていた。

特にこの青ヶ島は市ヶ谷と永田町が設定した【海上機動迎撃網】の最外殻に位置する極めて重要な拠点となるためとりわけ練度の高い部隊が派遣され、艦娘実装とそれに伴う拠点の鎮守府化後も積極的に戦力が増強されている。

(*´Д`)「…………ンフッ♪」

「………司令官、どしたん?廊下のど真ん中ですてきっしょい笑顔浮かべて」

(;´Д`)そ「龍驤さん!?な、なんでもないよ!?」

これははっきりとした自慢だけど、そんな国防上の要所を守る部隊の指揮を任されたのが僕というわけだ。提督として着任し四年が経った今でも、その事を思うと今みたいに誇らしさでにやけが止まらない。

というか龍驤さん、すてきっしょいは酷くない……?
4 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/11/18(土) 06:12:32.82 ID:pc666ZQu0
軽空母艦娘の龍驤さん。我が青ヶ島艦隊の最高練度を誇る総旗艦にして、頼れる筆頭秘書艦。背中辺りまでの長さになる髪を両側で纏めているのが世間一般で知られる彼女の髪型だが、今の龍驤さんは後ろで一つに結わえ馬のしっぽみたいに垂らした状態……所謂ポニーテール。

そんな彼女が、勝ち気な栗色の瞳を訝しげに細めて腰に手を当てながら僕を睨み付けている。

「君な、何でも無いなら何でも無いで問題やで?最前線の指揮官たる者が、理由もなくあんな弛緩した表情見せとったら皆余計に不安がるし不気味がるわ」

(;´Д`)「ご、ごめんなさい……」

理由そのものは一応あるが、自分が重要拠点の防御を任されていることに調子に乗ってましたえへへ何て言おうものならお昼休み辺りに膝詰め大説教の開幕だ。沈黙は金、言わぬが花、甘んじて彼女からの雷を受ける。

元よりハキハキとした言動の彼女に強い口調で説教を食らうと、思わず亀のように首を竦めちゃうなあ。長門さんや妙高さんは先生や上官から指導されている感覚に近いけど、龍驤さんのそれはお母さんとかお嫁さんに「叱られている」ような気分だ。

(´Д`)(身長は睦月さんとかとあんまり変わらないのにこの迫力って凄いよなぁ)

「今なんか失礼なこと考えてへん?」

(;´Д`)「め、滅相もない」

流石我が鎮守府最強艦。歴戦の猛者として研ぎ澄まされた第六感には戦慄せざるを得ない。

それにしても、龍驤さんのポニーテール………。
5 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/11/18(土) 06:14:26.88 ID:pc666ZQu0
(*´Д`)「………」

「あっ!?君、また腑抜け顔しとるで!?」

(;´Д`)そ「ふ、腑抜け………」

「ただでさえいつもお味噌汁に入れて放置してぶよぶよになったお麩みたいに締まりの無い顔つきなんに!」

(;´Д`)「ねえ今日の龍驤さん辛辣すぎない!?無駄に罵倒がウィットに富んでるんだけど!?」

締まりの無い顔つきであることは重々承知で言い返せないのがまた悲しい。

「あんな君、もうちょい気張れっちゅー内容で注意してるそばからそんな情けない顔見せられたらウチはもうお手上げやで!?いつ深海棲艦の大攻勢が来るか解ったもんじゃないのにたるんどるんちゃうか!?」

(;´Д`)「た、たるんでなんかないですよ!ただ僕個人の趣味として龍驤さんのポニーテールがドストライクだったから見惚れてただけで……」

あっ、何言ってんだ僕。自殺行為にも程がある。

「………………………………………アホ」

(;´Д`)(うひぃ〜〜〜〜〜〜)

覚悟していたカミナリが降り注がないので恐る恐る龍驤さんの方を窺うと、彼女は耳まで真っ赤になって俯いていた。震える拳と絞り出されるような声から、抱く怒りの大きさが感じられた。

「っ! もう○四五五やし話は後、司令室に急ぐで!!!」

(;´Д`)「アッハイ」

足早に歩き出した龍驤さんの後ろをとぼとぼと着いていく。

あぁ、こりゃ昼休みの大説教はとんでもないことになりそう……
6 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/11/18(土) 06:18:17.46 ID:pc666ZQu0
<マルゴーマルマル。提督がお休みのうちに、書類は、私が全て処理しておかないと…>
7 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/11/18(土) 06:21:25.04 ID:pc666ZQu0
司令室の前まで到着すると、いつもの守衛コンビ二人が僕らを海自式敬礼で出迎えてくれた。

| ^o^ |「ていとく かっか、ひしょかん どの」

|  ^o^ |「おはよう ございます」

「はい、おはよーさん」

(´Д`)「沼池一曹、磯子一曹、おはようございます」

沼池風夢(ぬまいけ・ふうむ)、磯子勇太郎(いそご・ゆうたろう)両一等海曹。身長190センチ近い長身を誇る沼池一曹に対して、磯子一曹は龍驤さんよりちょっと高いぐらいの背丈でしかない。漫画でよく見る凸凹コンビをそのまま現実に抜き出してきたかのように好対照な二人だが気は合うようで、勤務時間以外にも何かと一緒に居るのをよく見かける。共通する特徴である独特の間延びした話し方も合わさって、青ヶ島のみならず父島や八丈島など他の離島鎮守府でもそれなりに有名な二人組だ。

|  ^o^ |「しかし ほんとうにはやいですね。かならずこの時間に間に合うようこられる」

(´Д`)「それが職務ですから」

身分証も兼任しているカードキーを手渡すと、磯子一曹はちらりとそれを確認した後扉の脇に備え付けられた電子パネルに翳す。

甲高い電子音と共に、司令室のドアロックが外れた。

|  ^o^ |「○四五九、八頭進提督並びに秘書艦龍驤-02殿、司令室に入室を確認」

| ^o^ |「おやひしょかんどの。そういえばおかおがあかいようですがどうかしましたか?」

「きっ……気のせいや!」

| ^o^ |「まそっぷ」

|  ^o^ |「あれは いたい」

僕の後ろで沼池一曹が龍驤さんに話しかけたところ、彼の右頬でスパンっと小気味よい打撃音が響いた。

か、加減はされてたと思うけど大丈夫かな沼池一曹、完全に白目剥いてたけど………。
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