【ガルパン】大洗女子学園艦が語る、晩秋の夜話

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 01:45:45.87 ID:E7ARke1W0

※ 最終章のキャラ紹介ミスを見て、いきおいで書きました。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1510937145
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 01:47:41.50 ID:E7ARke1W0

八百万 (やおよろず) の神、あるいは、付喪神 (つくもがみ)、なんて言葉があるように、日本には昔から 「 あらゆる物に神が宿る 」 という価値観がある。

お米には88人の神様が宿るなんて言うし、トイレには烏枢沙摩明王 (うすさまみょうおう) って神様がいるらしいし、乳授姫大神 (ちちさずけひめのおおかみ) って御祭神を真面目に祀ったおっぱい神社が本当にあったりする。


つまりだね。

あらゆる物に神様が宿っていいなら、こう考えてもいいわけだ。



「 学園艦にも神様が宿る 」



はい、そうです。

私が茨城県立大洗女子学園艦の神様です。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 01:48:43.52 ID:E7ARke1W0

はいそこ、嫌な顔しない。

そりゃ 「 あたしゃ神様だよ 」 とか言うヤツ、胡散臭いだろうけどさ。

お前さん、どうせ布団の中でスマホいじくっているだけなんだろう?

寝ちゃうと明日が来ちゃうから、惰性で起きているんだろう?

だったらさ、その無為な時間を私にくれないか?

それで、ちょっとだけ私の話を聞いてほしい。

別にご高説を垂れ流そうとかは思っていないからさ。


私の話は、この学園艦で暮らす少女達の、ちょっと笑えるエピソードってやつだよ。

他愛ない世間話ってやつさ。

本当に他愛なさ過ぎて、そのうち眠くなること請け合いだ。 たぶん。

だからほら、お前さんのその、寝る前のひと時を私に投資してみないか?



おぉ、ありがとう。 話に付き合ってくれるのか。

じゃあ、そうやって布団被ったままでいいからさ、しばらく私にお付き合いくださいよ。


えー、こほん。

それでは、大洗女子学園艦による晩秋の夜話、はじまりはじまりだ。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 01:49:30.77 ID:E7ARke1W0

猿も木から落ちる、弘法も筆の誤り、なんて言葉があるだろう?

名人だって失敗するって意味の諺なんだけども。


ここで、失敗知らずの名人、いや、天才とでも言っておこうか。

お前さん、大洗女子学園の中で 「 天才 」 と言ったら誰を思い浮かべる?


そうだね。 冷泉麻子だよ。

頭脳明晰で冷静沈着、大体のことは見ただけで理解出来るハイスペック少女だな。

初見殺しな難題も、9割方は初見でクリア出来てしまうという、「 初見殺し殺し 」 な天才少女だ。


そんな冷泉麻子がやらかした。

猿が木から落ちて、弘法も筆を誤ったってワケだ。

ふふふ、気になるだろう?


まずはそんな天才少女の、ささやかな失敗談から始めるとするよ。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 01:50:32.01 ID:E7ARke1W0

天高く、馬肥ゆる秋。

大洗女子学園 高等部の生徒会が、あと数日で新役員に代替わりするってタイミングだな。


いやぁ、いきなり脇道逸れるけどさ、この新役員決めについてもイロイロ面白いことがあったんだよ。

バレー大臣とか、ローマ皇帝とか、ひょっとしたら風紀委員の独裁政権とかが生まれていたかもしれないっていうね。

まぁそれは、気になるならググってもらうとして、今は冷泉麻子の話だよ。

紆余曲折あって、新しい生徒会三役は次のように決まったんだ。


生徒会長 : 五十鈴華
副会長 : 秋山優花里
広報 : 武部沙織



この人選はね、「 西住みほには隊長職に専念してほしい 」 という、旧生徒会三役の思惑が絡んだ結果なんだけどさ。

それはまぁ今は横に置いとくとして、お前さん、この結果を見て 「 あれ、冷泉麻子は? 」 って思わないか?

そうだよ。

あんこうチームの中で、冷泉麻子だけが何も役を背負っていないんだ。


寝坊助でグウタラな冷泉麻子の性格は、お前さんも知っての通りだな。

だから、彼女も彼女で 「 面倒くさい仕事を背負わずに済んだ 」 って喜んでいたんだけれどもね。

そこはほら、これまで艱難辛苦を乗り越えてきたあんこうチームの仲間ってヤツだよ。

冷泉麻子は、口では無職を喜んでいても、実際には仲間の仕事をフォローする優しい娘なワケだ。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 01:51:24.24 ID:E7ARke1W0

それで、だよ。

ここに、生徒会の引継ぎ作業でテンテコ舞いな3人がいて、いよいよチームの新編成を考える時期に来てしまった苦悩中の西住みほがいる。

あんこうチームのメンバーのうち、冷泉麻子以外の全員が四苦八苦している状況だね。

そんな、冷泉麻子以外は右往左往しているあんこうチームに、一通の封筒が届いたところから、話は面白い方向へと転がっていくんだな。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 01:53:14.57 ID:E7ARke1W0

沙織 「 全国戦車道大会 優勝記念杯 実行委員会設立……のお知らせ? 」

優花里 「 ええ、差出人は戦車道連盟ですね 」

沙織 「 全国……って……え? 私達が優勝した試合のこと? やだ! またなんか廃校とか言われるの!? 」

優花里 「 はは、違いますよ。 全国戦車道大会優勝記念杯です。 その全国戦車道大会 優勝校の地元で行われる記念試合のことでありますよ 」

沙織 「 そうなの? よかったぁ 」

華 「 いまだに全国大会って聞くと身構えてしまいますね。 沙織さんの気持ちもわかります 」

沙織 「 で、その記念試合とやらはいつやるの? 」

優花里 「 12月ですね。 なお、対戦カードを決める抽選会は11月中旬のようです 」

沙織 「 ふーん。 まぁ今度は別に負けたって廃校にならないんでしょ? だったら楽しく試合に参加できるね! 」

華 「 そうなんですけど、ちょっと待ってください。 ……えーと優花里さん……これはひょっとして……」

優花里 「 そうです。 その試合を企画運営するための実行委員会に入れ、というお達しです 」

沙織 「 えっ、まさか……優勝校の地元開催ってことは……その段取り、私達で取り仕切るの? 」

優花里 「 そういうことなんでしょうね。 だから実行委員会に入れ、と 」

華 「 おそろしい仕事量になりそうですねぇ 」

沙織 「 わーん! 生徒会の引継ぎ作業だけで手一杯なのにー!! 」

優花里 「 まぁ、大部分の仕事は戦車道連盟が請け負ってくれるでしょうから、我々はそれ以外の部分を担えば…… 」

華 「 それ以外といいますと? 」

優花里 「 まず、選手も観客も膨大な人数が来るでしょうから、ボランティアを募って臨時スタッフを各所へ配置しなければなりません。 それと、他の学園艦が無理なく停泊できるように港湾設備を補強しなければなりませんね。 あと、これだけの大事ですからおエラ方もたくさん来るでしょう。 その対応も考えなければなりませんし、地元PRのビッグチャンスになりますから役場と商工会に言って連携を図る必要があります。 他にも… 」

沙織 「 やだもーー!! 」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 01:54:08.94 ID:E7ARke1W0

ということで、新生徒会三役はただでさえ生徒数1万8千人を導く生徒会の仕事を覚えなくちゃいけないのに、同時並行で巨大なイベントも取り仕切ることになったんだよ。

そして、チームの新編成がなかなか決まらない西住みほにとっては、これで試合日が決まったので、いよいよ後が無くなってしまった。

というか、西住みほは全国大会優勝の常連校、黒森峰女学園にいたので、優勝記念杯のことはすでに知っていたんだね。

だから、チーム内の誰よりも早く、新編成について苦悩し始めた。

優勝記念杯と名が付く以上、大洗女子学園は優勝校として恥ずかしい試合が出来ないからさ。

先の全国大会で優勝した時の編成で出場すれば、そんなに難しい話じゃないのかもしれないけれど。

でもその旧編成で出場するのは難しい、ときたもんだから、西住みほは苦悩していたんだよ。
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 01:57:53.29 ID:E7ARke1W0

大洗の戦車道チームメンバーは全員で32名いる。

そのうち、3年生は8名いる。

西住みほは、可能であればこの3年生達を除いた 1、2年生達だけでチームを組みたい、と思っていたんだね。

なんせ、この優勝記念杯は来年度のチーム編成を決める試金石になる。


……いや、来年度だけの話じゃないな。

来年度の編成が決まれば、それは再来年度の編成に影響を及ぼすから、つまりは西住みほらがいなくなった後の大洗女子学園に影響が及ぶワケだ。

そう考えれば、なおさら1、2年生だけでチームを組んで、来年度へ向けての参考材料にするべきなんだよ。

それにもう、3年生達は就職あるいは進学の準備を始めているので、そんな大事な時期に 「 練習に出てくれ 」 「 試合に出てくれ 」 とは言い出しにくいのだ。


しかし、1、2年生だけで編成を組もうとすると、動かせない戦車が出てきてしまう。

ただでさえ車輛数が少ないのに、さらに少なってしまうワケだ。

まぁ、3年生を抜くんだから当たり前の話ではあるんだけどもさ。

だからそんなハード面での問題を、西住みほは苦悩したりしない。 それしきのことは戦術でカバーできるから。


じゃあ、西住みほが何に気を病んでいるのかというと、ソフト面の問題だったんだよ。

つまり、結構な数のメンバーに、愛機の鞍替えをお願いしなければならなかった。

「 ここまで苦楽を共にした戦車を乗り換えろ 」 と、隊長命令で言わなきゃならないのさ。

当然、ポジションチェンジだって起こるだろう。

特に、車長、砲手、操縦手に異動するメンバーは大変だ。 兼任で通信手や装填手をやらなきゃいけないメンバーはもっと大変だ。

チームの練度、士気ともに下がることは覚悟しなくちゃいけない。


そうした数々のハードルを乗り越えた上で、新編成チームで優勝記念杯を勝ち上がりたいワケだ。

ははっ、そんな無理ゲーをクリア出来る新編成チームって、どんな編成だろう?

それで、どんな作戦を考えれば良いと思う? どんな練習をすれば良いかね?
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 01:59:18.32 ID:E7ARke1W0

西住みほの頭の中は、そうやって出口の見つからない問いが、ずっとリフレインしていたんだよ。

いつもならこういう時、あんこうチームの誰かしらが助け舟を出すところなんだろうけどさ。

さっきも言ったとおり、あんこうチームのメンバーだって ( 冷泉麻子以外は ) 頭が煮える日々を送らなくちゃいけないもんだから、

西住みほは孤立無援な状態で、さらにチームメイトに向かって非道な言葉を掛けなきゃいけない状況に追い込まれていたんだな。

泣きっ面に蜂ってやつなんだろうさ。

そして、蜂は一匹とは限らないのが、人生なんだなぁ。



華 「 ……ん? 封筒にまだ何か入っています。 えーと……懇親会の参加申し込み用紙? 」



これぞ二匹目の蜂。

入っていたのは、懇親会開催のお知らせと、懇親会参加者のプロフィールを書き込む用紙だった。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:00:27.19 ID:E7ARke1W0

優花里 「 案内文を読みますと、どうも試合後に参加選手らの親睦を深めるための懇親会が開かれるそうです 」

沙織 「 ホント!? カッコいい男の子も来るの!? 」

華 「 ……ええ、きっと来るんじゃないでしょうか 」

沙織 「 やったぁ! ワタシ頑張っちゃうよ! 」


優花里 ( えっと、戦車道は女性の競技ですから、男性は来ないんじゃ…… )ボソッ

華 ( 沙織さんに元気よく働いてもらうためです )ニッコリ

優花里 ( なるほど、さすが五十鈴殿であります……)


沙織 「 で、この懇親会参加者のプロフィールを書き込む用紙って、何? 」

華 「 えーと……書き込んだプロフィール用紙は事前に各校へ配られるそうで、これがあれば懇親会で他校の選手に話しかけやすくなるだろう……とのことです 」

優花里 「 プロフィール記入欄に、参加者の特技や好きな花などの項目があるのは、そういう意図なんですね 」

沙織 「 なるほど! お見合いパーティーのプロフィールカードと同じだね! ってことは、気合入れて書く必要があるね!! 」フンス

華 「 ええ、そうですね 」ニッコリ

優花里 ( 武部殿……お見合いパーティーに参加したことがあるんですかねぇ……? )

華 「 では、この懇親会絡みの仕事については、沙織さんにお任せしてよろしいですか? 」

沙織 「 まかせといて! 」

華 「 ちなみに、プロフィールは自分の分だけじゃなくて、チーム全員分を書くのは理解していますよね? 」

沙織 「 え゛っ 」

優花里 「 そうですよ武部殿。 懇親会はチームメンバー全員で参加するんですから 」

沙織 「 あんこうチームの皆はともかく、他のコ達の詳しいプロフィールなんて知らないよぅ…… 」

華 「 それを調べて、適切な形でアウトプットするのが広報のお仕事ですよ 」

沙織 「 う゛っ……ただでさえお仕事山盛りなのに、余計な仕事増やしちゃったよ…… 」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:01:51.93 ID:E7ARke1W0

さてさて、先程から新生徒会三役の話しかしていないけれど、別に冷泉麻子がこの場に居なかったワケじゃあないんだ。

生徒会室でうなだれる武部沙織と、苦笑いの五十鈴、秋山の両名を、冷泉麻子は生徒会室のソファーに寝そべりながら、眠そうな目で見ていた。

そして、あれでも仲間想いな冷泉麻子は、仲間達の泣きっ面にブンブン飛び回る蜂を、せめて一匹ぐらいは退治してやろうと考えたんだな。



麻子 「 ……おい、沙織 」

沙織 「 うぅ……なによ麻子 」

麻子 「 そのプロフィール欄を埋める雑用、私が請け負ってやる 」

沙織 「 ホント!? あ、でも生徒会の役員じゃないコに仕事やらせていいのかな? 」

麻子 「 戦車道に関係のある仕事なら、それは半分以上は戦車道チームとしての仕事になるんだろうから、私がやっても問題あるまい 」

華 「 そうですね 」

麻子 「 広報には他に仕事が山積みだろう。 だからそれは私に任せて、お前は自分の仕事をしろ 」

沙織 「 麻子、ココロの友よ……! 」

麻子 「 ざっとシミュレートしたけど、お前、これからずっと休み無しで働かないと、終わらない仕事量を抱えているからな? 」

沙織 「 やだもーーー!! 」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:02:41.52 ID:E7ARke1W0

そんなこんなで、冷泉麻子にしては珍しく、他者のプライバシーに踏み込む仕事を請け負うことにしたんだよ。

それは彼女にとって、あんこうチームの仲間を想う心遣いであったのだろうし、仕事の難度として大したことないと思った結果だったのだろうし、


麻子 ( これを機会に、他のチームメンバーともう少し距離を縮めてもいいかもしれん……)


なんて殊勝なことを考えたからかもしれない。

そりゃ、五十鈴・秋山・武部の3人が生徒会で忙殺されるとなると、これから西住みほを間近でフォローする役目は、冷泉麻子にもたくさん巡ってくるだろうからね。

面倒くさくはあるけれど、冷泉麻子はそれでも西住みほを助けたいし、新生徒会三役の力にもなりたい。

そのためには、今以上にチームメイトとの繋がりを太くしておくべきだと思ったのかもしれないな。

ついでに言えば、冷泉麻子は自分で思う以上に、大洗女子学園の戦車道チームが好きになっていたのかもしれないよ。


ともあれ、冷泉麻子は懇親会参加者のプロフィールを書き込む用紙を預かって、学校の図書室に向かった。

ひとり静かなところで作業したかったんだろうさ。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:03:33.26 ID:E7ARke1W0

麻子 「 さてと、じゃあ埋められるところから埋めるとするか 」



冷泉麻子が取り掛かろうとしたのは、すでに彼女が把握している項目を先にやっつけちゃおう、ということだった。 

さすがに、好きな花とか特技とかの項目は全部埋められないけれど、乗っている戦車やポジションといった項目なら埋められる。

それで、埋められない項目については、明日の訓練終了後のミーティングの時にでも、まとめて皆に聞けばいい。 それでこの雑用はお終い。

いやぁ、さすが天才少女。 仕事が早くて正確だ。



そう。

あとはこれで、ちゃんと起きていられたらね。
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:05:20.69 ID:E7ARke1W0

「 冷泉麻子は朝に弱い 」 という現象は、重力によってリンゴが上から下に落ちるのと同じくらい当たり前の自然の摂理であるのは言うまでもないな。

つまり、冷泉麻子は午前がダメダメで、午後から調子が出始める人間なんだ。

彼女が図書室に入った時刻は、16時ちょっと前。

彼女にとっては、ここからがエンジンの掛かり始める時間だ。 眠気なんて襲ってこようはずはない。



麻子 「 えーと、最初は西住さん。 2年生。 戦車はW号H型。 ポジションは車長。 趣味は……あのボコとかいうやつだな。 あとで確認するとして一応書いておくか 」



ここまで言ったのだから、彼女がいつものコンディションではないと分かっただろう?

そうなんだよ。 この日の冷泉麻子は、普段より輪をかけて寝不足だったんだな。

だから、睡魔のヤツは、この時間になっても元気に冷泉麻子を襲うワケだ。



麻子 「 ……続いて、磯辺さんか。 2年生で、戦車は八九式中戦車の甲型。 ポジションは……ふわぁ……車長で……特技はバレーか 」



でも以前に比べれば、これでも睡魔への耐性は上がった冷泉麻子だよ。

睡眠欲を抑えてでも為し遂げるべきことが、これまでの戦いの中でたくさんあったからね。 睡魔と戦うことに慣れたのかもしれない。

だからこの時も、冷泉麻子は眠い目をこすりながら、自分に課した仕事を頑張ってこなそうとしたのだ。


麻子 「 ………ウサギさんチームの、大野さん、1年生、と。 戦車はM3中戦車リーで……ふわぁ〜……あー……副砲の砲手。 好きな花は……あれ、どこかでパンジーだとか聞いたことあるな。 これも後で確認か…… 」 
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:07:57.18 ID:E7ARke1W0

前日の晩、彼女は睡眠時間を削られてしまった。

なんでだと思う?



麻子 「 ……で、次はー……そど子か……3年生、で……ルノーB1bisの、車長、だな………あー、あいつ……卒業しちゃうじゃん……カモさんの、頭……無くなっちゃう……じゃん…… 」コクリ



原因はね、西住みほの誕生日だったんだよ。

あ、いや、正確には西住みほの誕生日は、1週間ほど前に終わっていたんだけれどね。

じゃあどういうことかというと、なんと西住みほは、昨日まで、誕生日をずっと祝われ続けていたのだ。

約1週間、お誕生日祝われ祭りだったんだよ。


なぜかって? 良く考えてほしい。

生徒数1万8千人、いや、人口3万人の学園艦を救った旗頭の誕生日だぜ?

クラスメイトはもちろん、他クラスの娘も、1年生も、3年生も、果ては大洗の町内会長やら町議さんやらが、お祝いに駆け付けたんだな。

そりゃもう、アイドル並みだよ。


なんでそんな、アイドルみたいな誕生日の祝われ方をされたのか、というとだね。

西住みほにお礼を言い足りない人間が沢山いたってことだよ。

大学選抜戦後、西住みほに言葉で 「 大洗女子学園を救ってくれてありがとう 」 って伝えたけれど、それだけじゃ満足できなかった人達が大勢いたってことだ。

だから、誕生日のお祝いにかこつけて、あらためてお礼を言いに来たんだな。

特に大人は、誕生日プレゼントという名のお礼を持ってさ。


あ、ちなみに旧生徒会三役が事前に告知したおかげで、大人からのプレゼントはすべて戦車道チームへの寄付金という形になりました。

そんなわけで、誕生日だからといって西住みほが大人から何かを受取ったってことは一つも無いよ。
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:09:52.34 ID:E7ARke1W0

それにしても、結構な数の人間が西住みほの誕生日を祝うために集まったもんだからさ。

旧生徒会役員と新生徒会役員が協力して、そのあたりを上手く捌いたんだよ。

大事な大事な大洗女子学園の救世主様に、何かあったら困るからさ。

じゃあ、西住みほ本人は何もしなかったのかというと、さすがに挨拶の一つもしないってのは体裁が悪いので、一人一人にちゃんとお礼を言うことにしたんだな。

特に大人には、ちゃんと隊長室にお招きして、面談時間を設けたりしてね。



これはそれなりに理由があって、集まった大人達の中には、大洗の商店街の会長さんや、農協の組合長さんなんかもいたんだよ。

で、そういう大洗町内で仕事を持っている人達にとって、2万人弱の生徒数を抱える大洗女子学園は大のお得意様だから、万が一、学園艦が解体されるなんてことになったらエラい話なワケだね。

だから、その万が一を食い止めた西住みほに、大人達はまぁ要するに 「 これからもよろしく 」 と言いたかったワケだ。

でも、あからさまに言うとやらしくなっちゃうし、ただの女子高生に 「 俺たちの仕事を守ってくれ 」 なんて厚顔無恥なことを言うほど、大人としての矜持を忘れられなかったから、今までは遠くから声援を送るしか出来なかったんだな。


一方で、大洗女子学園としては、様々な部分で大洗町からの支援を必要としている。

陸地にある大洗町、そして、学園艦内の飛び地としての大洗町、どちらからもね。


例えば、大洗女子学園内で提供されている学食は、出来うる限り製造コストを抑えなくちゃいけないので、大洗農協にお願いして格安で農産品を卸してもらっているし、W号戦車のシュルツェンなんかは大洗町内のプラントで鉄板を加工して作ってもらっている。

また、多くの店で学割サービスを用意してもらっているので、大洗女子の生徒達は少ないこずかいでも青春を謳歌できるのだ。

なにより、戦車道的には大洗町住民の理解が得られないと、満足に練習することも出来ない。

戦車の砲撃音って遠くまで聞こえちゃうから、学園艦内の住民の理解がないと騒音問題になりかねないし、学園艦内での練習は広さ的に限界があるから、満足な練習を求めて陸地の方の大洗町にも厄介にならねばならない。

農業、商業、工業、住民サービス、あらゆる面で大洗女子学園は理解と協力と支援を求めているんだよ。

だから、生徒会三役は大洗町の各方面に頭を下げてきた経緯があるんだけれど、折りしも生徒会役員が代替わりするタイミングだ。

五十鈴華を筆頭とした新生徒会三役は 「 私達の代でもご支援を継続していただけますよう、よろしくお願いします 」 って頭を下げる場を、早々に見つけなきゃいけなかったんだね。
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:10:40.87 ID:E7ARke1W0

そんな両者の思惑が一致したのが、西住みほの誕生日祝いだった。

大洗の学園艦に関係する大人達は大手を振って西住みほにお礼が言えるし、新生徒会はそのタイミングで支援の継続をお願いできる。


結果、西住みほと新生徒会三役は、連日、面談に次ぐ面談をこなすことになり、なんだかんだ集まってくれた人達をすべて捌き切ったら、1週間くらい経っちゃったワケで。

そして昨日の晩、ようやく落ち着いたので、ささやかながら仲間内で西住みほの誕生日を祝うことが出来たんだな。

武部沙織の部屋で、みんなで料理作ってさ。

ケーキも作って、みんなで食べて、ゲームもして、それで思い出話なんかもしたりしてね。

冷泉麻子にとってはそれが、すっごい楽しかったらしい。

だってほら、その前までは廃校騒動のせいで、誰かの誕生日を祝うにしても心穏やかにはいられなかったし、さらにその前は、冷泉麻子は基本独りだったからねえ。
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:11:15.12 ID:E7ARke1W0

麻子 「 車長の、いない、カモ……次、は……ツチ、ヤ……さん……レオポン……ポル、シェ…… 」コックリ



どんどん舟を漕ぐ角度が大きくなっていく冷泉麻子。

手元のプロフィール記入用紙には、もはやぐにょんぐにょんに曲がりくねった線がワルツを踊っていた。

辛うじてなんとか文字の体を保っていた部分があったで、暗号解読班と呼ばれる人達が頑張れば、ひょっとしたら次のように読めたかもしれないよ。



“ カモ → ツチヤ ”
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:12:10.47 ID:E7ARke1W0

麻子 「 ……レオ、ポn……も……3人、そつぎょ……レオp……次……アリkい……3にn…… 」コックリコックリ



ここで遂に、冷泉麻子は机に突っ伏して夢の世界へと旅立ってしまった。

手元には、それでも最後まで書き込まれたプロフィール記入用紙がある。

前半はしっかり書かれているけど、中盤から文字列が斜めになってきて、そして段々とミミズがのたくったような字になり、最後の方はもはや文字なんだか線なんだか図形なんだかわからなくなった、そんなプロフィール記入用紙だ。

その最後の方については、もはや完全に文章ではなくなっていたけれど、暗号解読班がめちゃくちゃ頑張れば、もしかしたら次の様に読めたかもしれないな。



“ ナカジマ、スズキ、ホシノ → いない → レオポン → アリクイ3人 ” 
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:12:39.00 ID:E7ARke1W0

いやぁ、冷泉麻子がここで眠り込まなければ、後にあんな面白いことにはならなかったんだよ。

ほら、言ったでしょ。

冷泉麻子は、初見殺しな難問でも、9割方は初見でクリア出来る天才少女だって。



だから、そのクリア出来ない残りの1割が、今回だったってことだね。
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:13:23.48 ID:E7ARke1W0

さあ、ここで主人公を交代するよ。

お次の主人公は、大野あやだ。


お前さん、大野あやについて、どのくらい知っている?

んん? よく眼鏡を割る娘? まず服を脱ぎます?


そうだよなぁ。 そんな認識だよなぁ。

よっし、じゃあこの神サマが、お前さんの大野あや観をちょっとだけ磨いてあげよう。
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:14:37.29 ID:E7ARke1W0

あや 「 あれ? 冷泉先輩? 」



図書室に現れた大野あやが、机に突っ伏して眠りこけている冷泉麻子を見かけたところからシーン再開するよ。


たいして勤勉でもない大野あやが、なぜ図書室へ現れたのか。

それはこの図書室に、架空戦記モノのラノベが何タイトルか置いてあったからだ。

大野あやは、ウサギさんチームの皆と苦楽を分かち合ううちに、趣味のストライクゾーンがちょっと改変されたようでね。

戦争モノの映画や戦記モノの小説なんかも、バッシバッシとストライクゾーンに入るようになったらしい。

だから、大野あやは図書室にあるラノベの続刊を借りに来たってワケだ。

いやー、一昔前は図書室に置いてある娯楽本なんて 「 はだしのゲン 」 くらいだったのに、最近はラノベとかグルメ漫画とかが普通に置いてあったりするから、時の流れを感じるよなぁ。

大野あやが手に持っている本だって、士魂号っていう人型戦車が出てくるゲーム原作のラノベだし。

それ、学徒動員みたいな設定を含んでいるけど大丈夫なんかね? なんというかPTA的にさ。

あっと、話が逸れた。 すまんすまん。 続きを語ろう。
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:15:30.12 ID:E7ARke1W0

あや 「 なんで図書室で冷泉先輩が寝てるんだろう…? 」



冷泉麻子が普段、寝床としている場所は、最近はもっぱら生徒会室だけれども、その前はだいたいW号戦車の中だった。



あや ( 冷泉先輩、いままで図書室で昼寝ってパターンは無かったはずだよなぁ…… )



1年生に昼寝のパターンを覚えられるほど、冷泉麻子の昼寝はありふれた日常風景になっている。

なもんで、大野あやは、目の前でちょっと体を痙攣させながら惰眠を貪る冷泉麻子に違和感を覚えたんだな。


あ、体を痙攣させながらっていうのはアレだね。

「 そど子がカモさんチームから抜けて動かせなくなったルノーB1bisを見るに見かねて、冷泉麻子がカモさんチームの臨時操縦手を務めることになったんだけど、そしたらそど子がヤキモチを焼いて、消してもらったはずの麻子の遅刻履歴が全件復活した 」

って夢を見ていたからだな。
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:16:57.95 ID:E7ARke1W0

さて、そんな冷泉麻子が 「 他のチームメンバーともう少し距離を縮めてもいいかもしれん 」 なんて考えるほどだから、冷泉麻子は周囲の人間と少し距離を置いてしまうタイプの娘なんだけどもね。

一方で実はそんな冷泉麻子さん、すでに周りのチームメンバーから結構な人気があって、もっとお近づきになりたいと思っている人達が沢山いるのですな。

だってほら、何やらせても上手いし、物事を教えるの上手だし、誰にも分け隔てなく接するし、ああ見えて仲間想いだし、小さいし、寝顔可愛いし、髪きれいだし。

だけれども、ちょっと取っ付きにくいところがあるので、周りの皆さんは冷泉麻子とフレンドリーに接することが出来ないんだね。


だからさ。

目の前に、その冷泉麻子がいて、しかも眠りこけていて、周りにはひと気が無いっていうこの状況。

お前さんならどうする?


そうだ。

prpr……げふんげふん!

……えー、そう! ガン見するわな、ガン見。 寝顔をさ。

だって普段、そんなこと出来ないもの。 まじまじと顔なんか拝見できないもの。


だから、大野あやもそうしたワケだ。 ここぞとばかりに冷泉麻子の顔を見つめたんだね。
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:17:49.02 ID:E7ARke1W0

それで気が付いた。

机に突っ伏した冷泉麻子の顔の下に、何かがあるのを。



あや 「 なんだろう……この資料…… 」



何って、そう、プロフィール記入用紙だ。

チームメンバーの個人情報が書き込まれた紙だよ。



あや ( いや、それはわかるんだけど、何でそれを冷泉先輩が、こんな人気の無い図書室で、まるで隠れるかのようにして、チームメイトの個人情報を紙にまとめているんだろう? )



そして大野あやは首を傾げるワケだ。

そりゃそうだわな。

普段、この場所で見かけない人間が、その人間に似つかわしくない作業をしているんだもの。



あや 「 …………… 」



なにか見ちゃいけない物を見ちゃった気がして、あわてて踵を返そうする大野あや。

このあたりから、大野あやの大野あやらしい面白さが発揮されてくるよ。



あや ( ……冷泉先輩……何らかの極秘任務? あるいは、冷泉先輩は……スパイ……!? 私たちの情報を誰かに売る……!? )



ものっそい勢いで心拍数が上がっていく大野あや。
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:18:34.34 ID:E7ARke1W0

あや ( これはヤバいニオイがする……! 事件? いや、陰謀!? ひょっとしてこれ、また廃艦騒動フラグ…!? 今度の主人公は私!? )



……ほら、大野あやは架空戦記モノのラノベを読んでて、ちょっと中2心に火がついてたんだよ。 高校1年生だけど。

だから、目の前の出来事が必要以上にオオゴトに見えちゃったのかもしれない。


お前さんもやったことあるだろう?

授業中、もしテロリストが教室に乗り込んで来たら……って妄想。

それで私が問題解決して英雄になるよ! っていう思考パターン、お前さんも身に覚えがあるだろう?

だから大野あやも、そんな感じでトラブルに挑みたくなっちゃったのかもしれないな。


大野あやは、いうても高校1年生ですよ。

中2チックなところがあってもしょうがないワケですよ。

それはそれで彼女のチャームポイントってヤツですよ。
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:19:27.45 ID:E7ARke1W0

麻子 「 うぅ〜〜ん…… 」ムニャムニャ



で、ちょうどこの時、冷泉麻子は枕代わりにしていた腕が痺れたのか、腕を組みかえたんだな。

そしたら上手い具合にプロフィール記入用紙が脇に退けられて、それが大野あやから丸見えになってしまった。



あや ( 見ちゃいけない! )



と思いつつも、そこで見ちゃうのが大野あやって女の子。

手で目を隠しつつも、指の隙間からしっかりとプロフィール記入用紙を盗み見ちゃうワケだ。

冷泉麻子がいつ起きるかハラハラしながらさ。



あや ( ……あんこうチーム、カメさんチーム、それとアヒルさんチームまでは、当たり障りのないことが書かれている。 カバさんチーム、それから私達ウサギさんチームは……これは寝ぼけながら書いたのかな? 字が斜めになってる )
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:20:08.18 ID:E7ARke1W0

大野あやって娘はね、決して馬鹿な娘じゃないんだ。

むしろ秀でているところの方が多いくらいだと思うのだけど、この時ばかりはさすがにちょっと、残念なコだったと言いたくなってしまった。

「 寝ぼけながら書いたんじゃないか? 」 ってところまで突き止めたんだから、そのままそういうコトで理解しておけば良かったのにさ。



あや ( ……問題はその後ね。 カモさんチーム、レオポンさんチーム、アリクイさんチーム。 何だろう……線のような図形のような? ……暗号化されている? )



なんて、明後日の方向に推理を働かせちゃった大野あやだった。 

まぁ、そこが可愛いところでもある。
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:21:00.40 ID:E7ARke1W0

さて、そんな残念な子ぶりを見せつける大野あやであったが、彼女には秀でているところもあるのだ。

少なくともウサギさんチームの中では、一番高いと言ってもいい能力。

それはね。

「 検索能力 」 だ。


これだけだと何言っているかわからないだろうから、こう言い直そう。

例えば、何か問題が発生して、その問題を解決させるための方法があったとする。

大野あやは、この問題を解決させる方法を 「 見つけ出す 」 能力値が非常に高いのだ。

どうすれば解決できるのか? その解法を得るためのヒントはあるのか? そのヒントはどうしたら手に入るのか? 自分一人で対応できるのか? できないのならば誰に頼れば良いのか? どうやって頼れば良いのか?

そうやって、問題処理フローを描き出すのが上手いんだよ、彼女はさ。

問題に対する取り組み方や捌き方ってのを、誰に教わるでもなく身に付けているんだな。
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:22:22.14 ID:E7ARke1W0

ちょっと思い出してほしい。

あの 「 まず服を脱ぎます? 」 のシーン。


M3リーをぶっつけ本番で動かさなければいけない状況で、彼女は携帯を使って、ネットの質問サイトに 「 戦車を動かすにはどうしたらいいか? 」 と投稿した。

結果は回答者に翻弄されただけだったけれど、良く考えてみれば、あの行動は高校1年生にしてはスゴかったと思わないか?

タイムリミットが迫る ( 早く戦車に乗り込んで動かさなければいけない ) 状況で、周りには助けを求められない (あや以外の5人も戦車道初心者だった)。

じゃあ、先輩達に操縦方法を聞くかと言っても、西住みほと秋山優花里以外は全員、戦車に無知。

その西住みほと秋山優花里すらも、自分達のことで精一杯そうだった。


だったら自分で調べるしかない → どうやって? → 携帯がある → ネットでマニュアルでも探す? →
戦車の操縦マニュアルなんて直ぐに見つかる? → 専門性が高そうだから探すの大変そう → じゃあ誰かに聞こう → 
質問サイトだ → しかし素人丸出しの質問をするのは腰が引ける → でも迷っている時間はない → 聞いちゃえ! 


……っていう脳内問答を経た上で、あの 「 まず服を脱ぎます? 」 のシーンに繋がったとしたら、大野あやって実はスゴイんじゃないかって思わないか?

パッと見、笑いしか取れないシーンだったけれども、「 数分以内に初見で戦車を動せ 」 という難題に対する行動としては、結構パーフェクトに近かったと思わないか?

この一連の行動を取り上げただけでも、仕事をこなすための問題把握力、判断力、決断力、発想力、行動力が見てとれる。

そして、もし仮に、この方法でちゃんと戦車の動かし方を教えてもらえていたのならば、その内容を車長役や操縦手役に正確に伝える必要があったので、他人に仕事を割り振る能力もあったと言える。


大野あやの 「 検索能力 」 は、こうした地の力を束ね合わせた上で発揮されるんだよ。

……そう、お前さんも社会人ならわかるね?

言うまでもなく、これは社会に出てから必須になる能力だ。


だもんで、そんな大人になってから習得するような能力をすでに持ち合わせている彼女は、近い将来、大洗女子学園の隊長となる者を力強くフォローしていくことになる。

ポジション的にはそうだな。

現在の秋山優花里と冷泉麻子を足して2で割ったようなポジションとでも言おうか。

参謀のようなアドバイザー、みたいな。 意外だろう?

それはまぁ、いずれ分かることなので、ここでは割愛するよ。

今は話を先に進めよう。
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:23:04.99 ID:E7ARke1W0

他人に仕事を割り振る能力があるってことは、自分で仕事を抱え込まないってことでもある。

それは言うなれば 「 自分に出来ないことは、出来る人に頼ろう 」 と思える人間でもある、いうことだな。



あや 「 ………………。 」カシャッ



大野あやは いけないことだと理解しながらも、プロフィール記入用紙に書かれた最後の方の、なんだか暗号化されたような部分を携帯のカメラで撮影して、これを解読できる人に送ろうと思ったのだ。

彼女の中ではもう、これは事件になりつつあるからさ。

マナー違反を犯す価値がある、と考えたのだろうね。

それで自分の勘違いならいいけれど、もし本当に何らかの陰謀が企てられていて、その一端が目の前にあるとしたら、大野あやは黙って見ていられなかったのだ。

だって、もう廃艦騒動は嫌だから。

「 廃艦 」 「 廃校 」 という言葉に敏感になっているのは、なにも生徒会役員だけじゃなかったってことだよ。



あや ( えーっと……送る相手を指定して……送信っと )ピッ

33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:23:52.43 ID:E7ARke1W0

さて、ここで問題です。

この時、大野あやが写メを送った相手は誰でしょう?


え? 澤 梓?


うん、そうだな。 良いセンいってる。 だけど違うんだなぁ。

もし本当にこれが事件だとしたら、大洗の戦車道チーム内にスパイが紛れ込んでいることになるかもしれないだろう?

そしてスパイは、冷泉麻子だけじゃないかもしれない。

澤 梓がスパイの仲間ってことはないだろうけれども、彼女に伝えたら、きっと責任感の強い彼女のことだから 「 黒幕を捕まえよう! 」 とか言い出すかもしれない。

もしくは西住隊長に相談してしまうかもしれない。

今の段階で、そこまで話を大きくしてしまうのは、流石に気が引けたのだ。


では、宛先が澤 梓でない、とすれば誰だろう?

その者は、身元が信頼出来て、かつ、この暗号文めいた文章を解読できる相手だ。

大野あやにとって、それはやはりウサギさんチームの誰かになるのだけれども、残念ながら澤 梓ではなかったのだ。


正解は、丸山紗希だった。
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:25:14.90 ID:E7ARke1W0

実はこれ、ウサギさんチーム以外のメンバーには知られていないことだったんだが、丸山紗希は、メールでなら結構しゃべる。

そして、ウサギさんチームの中で、最も類推力が秀でている。


類推力とは、要するに 「 あの概念がここでも通用しそうだ 」 とか 「 この技術はあの部分に役立つ 」 などと発想できる力のことだ。

観覧車によるパンジャンドラムアタックも、この力によるところが大きかったと言えるだろうな。

あの時の丸山紗希の奇抜な発想がなかったら、大洗女子学園はあそこで終わっていたかもしれない。


だからそう、類推力があるということは、発想力があるということでもある。

暗号の解読には、暗号キーの手掛かりを探すための発想力と、手掛かりから暗号の意味を推し測る類推力が必要だ。

だから大野あやは、プロフィール記入用紙の暗号化された部分 ( 暗号じゃないが ) の画像を、メールに添付して丸山紗希に送ったんだよ。


震える手を抑えて、送信ボタンを押す大野あやが、どこか楽しそうな顔をしていたのは内緒な。
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:25:42.95 ID:E7ARke1W0

でな。

このメールは送られたんだよ。

誰に?





丸山紗希じゃない人に。
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:26:09.38 ID:E7ARke1W0

左衛門佐 「 ん? 」



左衛門佐の携帯が震えた。

開いてみると、そこには送信者不明で 「 ねえ、これ読める? 」 という文字と共に、画像が添付されていた。



左衛門佐 「 なんだこれ? 」
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:27:04.60 ID:E7ARke1W0

というワケで、お次の主人公は左衛門佐だ。

本名、杉山清美。

カバさんチームの砲手を務めている。

日本史、とりわけ戦国時代に異常に詳しい少女だな。


なんで丸山紗希に届くはずの写メが、左衛門佐に届いちゃったのか。

理由はなんてことない。

大野あやの携帯アドレスに登録されていた名前順が、「 紗希ちゃん 」の次に 「 杉山先輩(左衛門佐) 」 だったからだ。

つまり、大野あやはメールの宛先指定を間違えちゃったんだなぁ。 凡ミスもいいところだよ。

彼女、普変なテンションだったり、手が震えていたりしたからね。 ミスが発生しやすい状況ではあったと言える。 

しかもそれで、誤送信したことにしばらく気が付かないのが大野あやクオリティだな。


やはり、残念なコなのかもしれないなぁ。
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:28:10.47 ID:E7ARke1W0

ところで、左衛門佐の携帯になぜ送信者不明でメールが届いたのか、の説明をしよう。


左衛門佐はその生き様よろしく、あまり文明の利器に頼ろうとはしない。

誰かにメッセージを送る必要がある時は、好んで 文(ふみ) をしたためちゃうような女の子だ。

一応、携帯電話は持っているけれど、あまり使おうとはしない。

だから当然、自分から積極的にアドレス交換したりはしない。


一方で、大野あやは社交的な性格だ。

それに後輩としての立場も、それなりにわきまえている。

戦車道チーム内では率先して雑用をこなさなければいけないと思っているから、誰から何を言われても良いように、チーム内の名簿を見て、メンバー全員のアドレスを登録していたんだね。


つまり、左衛門佐は大野あやのアドレスを登録していなかったんだよ。

だから送信者不明のメールが届いてしまった。

ここで、左衛門佐が気味悪がってメールを削除すればこの話は終わりだったんだけれども、そうはならなかったんだな。



左衛門佐 「 ……暗号文? これは……日本語のようだが…… 」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:29:25.64 ID:E7ARke1W0

さて、ここで左衛門佐が持つユニークスキルを紹介しよう。


この少女、昔の日本の書物が普通に読める。

お前さんも高校の頃、古典の授業で散々やっただろう?

ありをりはべり いまそかり ってね。

それを左衛門佐は、訳文が付いていなくても読めるのだ。

というか、原本が読めてしまうのだ。

彼女、たまに大洗町内の本屋に無理を言って、和本を取り寄せてもらったりするほどだからな。

和本っていうのは、明治以前の書写あるいは印刷された資料のことなのだけれども、左衛門佐はそれをデフォルトで読める。

信長公記とか、北条五代記とか、平家物語とか、御伽草子とかが原本で読める。

あの、現代の日本人にはミミズがのたくっている様にしか見えない昔の日本語や漢文を、彼女は読めるのだ。


もうここまで言えばわかるよな。

ミミズがのたくっている線の様な、それでいて図形のような文章が書かれた画像を見て、左衛門佐は読めちゃったんだよ。

こんなふうにさ。



“ カモ → ツチヤ ”

“ ナカジマ、スズキ、ホシノ → いない → レオポン → アリクイ3人 ” 



さあ、暗号解読班が現れてしまったぞ。
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:30:17.00 ID:E7ARke1W0

左衛門佐 「 これはウチのチームのことか? なんだ……? ツチヤさんはカモさんチームじゃないし、レオポンさんチームからアリクイさんチーム? どういう意味だ? 」

カエサル 「 おーい、左衛門佐ー、そろそろ帰るぞー? 」



はい、この場面での準主役、登場。

カエサルこと、鈴木貴子だ。

左衛門佐と同じカバさんチームで、装填手を務めている。

言い忘れていたが、左衛門佐はカエサルと一緒に下校している最中で、ちょうど本屋で立ち読みしているところ、先程のメールを受信したのだ。

二人とも、この本屋の歴史関係書籍はあらかた ( 立ち読みで ) 読み終えていたけれども、それでもちょいちょい新刊が出たり、歴史物の月刊誌というものが出るので、2人はそれを読みに来ていたのだな。

いまこの場で言えば、カエサルだったら 「 地中海世界とローマ帝国 」 という新書を、左衛門佐だったら 「 歴史人 10月号 」 を手に取っていた。
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:31:37.62 ID:E7ARke1W0

カエサル 「 どうした? 突然、携帯を見つめながら、ザマの戦い直前でスピキオと会談することになったハンニバルみたいな思案顔をして 」

左衛門佐 「 あ、いや、なに、こんな画像が送られてきたものでな 」



そう言って、件の画像を見せる左衛門佐。

そして自分が解読した内容も伝えると、



左衛門佐 「 カエサル、どう思う? なんかツチヤさんとかアリクイさんチームの名前が入っているんだが 」

カエサル 「 どうって、お前これ……誰から送られてきたんだ? 」

左衛門佐 「 それがわからなくてな 」

カエサル 「 送信者のアドレスから推測できないか? 」

左衛門佐 「 えーと、アドレスは……、 p-anzy @ *****.ne.jp だな 」

カエサル 「 ピー、ハイフン、アンジー、アットマーク……、パンジー……? 」



余談だが、大野あやの好きな花は、パンジーだったりする。



カエサル 「 ……とりあえず、ここを出よう。 話はそれからだ 」

左衛門佐 「 お、おう 」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:33:14.86 ID:E7ARke1W0

道草を切り上げて、帰途につき直す二人。

カエサルには胸に引っかかる何かがありそうだった。


カエサル 「 ……………。 」

左衛門佐 「 カエサル? 」

カエサル 「 ……左衛門佐、お前、角谷会長のプライベートアドレスを知っているか? 」

左衛門佐 「 え? 会長の? いや知らん。 生徒会長としての業務用アドレスなら知っているが 」

カエサル 「 そうか 」

左衛門佐 「 なんだ? どうして急に会長の……あ、これ、会長の個人アドレスなのか? 」

カエサル 「 いや、私も知らないんだが……アンジーって確か、サンダースの隊長が角谷会長を呼ぶ時に使っていたニックネームじゃなかったか? 」

左衛門佐 「 そういえばそうだな。 じゃあこれ、角谷会長の個人回線から送られてきたってことか? 」

カエサル 「 そうかもしれん 」

左衛門佐 「 “ anzy ” の前にある “ p ” って何だ? 」

カエサル 「 そりゃお前 “ Panzer ” の “ p ” だろうさ 」

左衛門佐 「 なるほど。 ということは、生徒会長としての角谷杏ではなく、戦車道チームとしての角谷杏から送られてきた、ということか 」

カエサル 「 憶測だけどね 」

左衛門佐 「 うむ、そこまではわかった。 して、この暗号の意味はなんだろう? そして、なぜ私に送られてきたのだろうか? 」

カエサル 「 そこなんだが…… 」



ここで一段、声のボリュームを下げたカエサル。

内緒話をするような格好になる二人だった。
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:34:30.83 ID:E7ARke1W0

さて、せっかくカエサルも現れたのだから、ちょっと彼女についても掘り下げてみよう。


彼女はね、 「 駒を動かすのが上手い 」 のだ。

うん、相変わらず何を言っているのかわからないよな。

だからちょっと具体的に説明する。


カエサルこと鈴木貴子という少女は、暇さえあればずっと考え事をしている。

考え事というか、シミュレーションだ。

さらに詳しく言えば、タクティカル シミュレーションだな。

脳内に盤面を広げ、敵味方を並べて戦わせるのだ。


ここまでだったら、大野あやの中2チックな妄想とあまり大差はない。

カエサルの凄いところはここからなのだ。

脳内に広げる盤面が、すべて史実に基づいた内容だったりするのだ。

いずれもが古代ローマ史に登場する戦いなのだけれども、例えば以下のとおりだな。

ポエニ戦争、カンネーの戦い、マケドニア戦争、ザマの戦い、ユグルタ戦争、スパルタクスの反乱、ファルサロスの戦い、etc……。


こういった戦いにおける兵の運用記録……歩兵、弓兵、騎馬兵などの、部隊単位での戦いの軌跡を、脳内で忠実に再現するのだ。

そうして再現した上で、 自分が指揮官になったつもりで部隊を動かして、史実とは異なった結果を脳内に描き出すのである。



あれ、お前さん、「 なんだか地味でパッとしない能力だなぁ 」 とか思っていないか?

ははは、まぁこういう言い方しちゃうと地味に聞こえちゃうよな。

じゃあ、こう言い直そう。
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:35:22.26 ID:E7ARke1W0

お前さん、年度末が近づくと、酒の席では何の話題で盛り上がる?

例えば、お前さんの会社の人事異動の話だったりしないか?

何とか支店の○○さんが定年退職で抜けるから、その後釜を△△さんが埋めて、そうするとあのポジションが空くから□□さんが異動して……だとか、

次の新入社員は○名だって話だから、そのうちの△名は新規事業を立ち上げたばかりで人手が足りない□□支店に入るとして、残りの×名は……とかさ。


カエサル こと 鈴木貴子は、こういった人の配置に関する予見を、非常に精度高く行えるのだ。

与えられた盤面を見渡して、目的を果たす上で何がネックになるか、どういった条件が人の配置を制限するか、目標の達成ラインはどこか、勝利条件は何か……等々を抽出し、それらを考慮した上で 「 すべての要件をバランス良く満たすことができる人員配置 」 を見出すことが出来るのだ。

端的に言えば 「 人員配置が上手い 」 ということでもある。

それは、日頃の脳内タクティカルシミュレーションのおかげだろうよ。
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 02:36:47.81 ID:E7ARke1W0

カエサルにとって、昔の戦いというのは将棋に似ていて、 「 歩兵がこう動くのだったら騎馬兵はこう 」 とか 「 陣形がこうならば弓兵はこう配置する 」 とか、ある程度のセオリーというものを見出しているんだな。

また、昔の戦いは至ってアナログなので、基本的に 「 数が多い方が攻め押せる 」 という前提条件があるのだ。

つまり、彼女にとって昔の戦いとは 「 ああしたらこうなる 」 という因果関係がハッキリしやすいものなので、後はそこに、自然環境や士気の状態、古参兵が多いのか新兵が多いのか……といった補足要素を加味することによって、史実の戦いを脳内で再現できるようになるのだ。

これが簡単なようで難しい。

将棋で言えば100手先まで読み通せるくらい盤面上の状況を精密に解析して、そこから抽出した全ての要素を考慮材料にしなければならないのだ。


それが出来るレベルに至ったカエサルは、こう思うワケさ。

「 史実では敗けている戦いに勝つには、どうしたら良いか? 」 とね。

そして 「 自分だったらこの部隊をこう動かす 」 という脳内ウォーゲームを組み立てていく。

盤面に存在する条件をすべて読み解く力があるからこそ可能なゲームプレイなのだ。

結果としてカエサルは 「 目的達成するために駒をどう動かしたらいいのか 」 という思考パターンが先鋭化されていった。


ん? ああそうだな。

そんなに駒を動かすことが上手いのならば 「 なぜカエサルが車長をやらないのか 」 と思うだろう?

確かに、盤面上の駒を動かすことならば、カエサルはエルヴィンよりも上手いのだ。


しかし、彼女には戦車の知識が足りなかった。

WWUの頃の兵器を近代兵器と言って良いのかわからないが、それでも古代ローマ史に出てくるチャリオットよりかは、遥かに近代だろう。

そんな近代兵器の運用に関しては、エルヴィンに軍配が上がるのだ。

だから、カバさんチームはカエサルがリーダーだが、エルヴィンが車長を務めているんだな。



では、話を戻そう。

カエサル、駒の配置で頭を働かす の巻き。
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