【艦これ】 外地鎮守府管理番号 88

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191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/12(金) 22:08:53.56 ID:4CCLSpn50


北極海 座標不明


ヒュゴゥウゥ


北方水姫「外気温−34度。実にいい気温ね・・・・。」

戦艦棲姫「私にとっては寒いわ。」

水姫「私の艤装はパワータイプだから。」

戦艦「そういえばプロトモデルだったわね。」

水姫「えぇ、その所為で排熱が酷いのよ。制御系のオーバーヒートを防げるから外気温は低いほど調子が良いいの。」

水姫「それに排熱が酷いおかげもあって普段が薄着ですむというメリットも無くも無いわ?」

戦艦「出力重視ですものね。私の艤装が機動性重視のと比べると対極にあると言えなくもないかしら?」

水姫「それで今日はどういった用かしら?」

戦艦「先日の逆転敗北で重巡が沈んだでしょ?あれの責任を取らされて今は伝書鳩をやっているの。」

水姫「あら、ずいぶんね。でも、あなたの事だから世界の海を回れて楽しい位に思っているのじゃないかしら?」

戦艦「あら、ばれるのね。」

水姫「中枢棲姫もその辺り分かっててやってるわよ。それで、何を伝えに来たのかしら?」

192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/12(金) 22:13:10.02 ID:4CCLSpn50

戦艦「かねてからの予定通りに再度の侵攻、上陸作戦を決行せよ。との事よ。」

水姫「重巡が沈んだとはいえ敵の数を減らすには成功したものね。」

水姫「再度の侵攻作戦をするには確かに今がチャンスではあるわね。」

水姫「了解したと伝えておいてもらえるかしら?」

戦艦「えぇ。分かったわ。」

戦艦「そうそう。先の作戦で重巡を沈めた連中だけど、もしかしたら此方にも来るかもしれない。」

戦艦「連中は超がつく熟練揃いだから万に一つも油断しないようにね。」

水姫「そうね。慢心が危険な事は重巡が身を持って教えてくれたしね。」

水姫「他山の石として気をつけるわ。」

戦艦「では。作戦の成功を祈っているわ。」

水姫「До свидания」

戦艦「えぇ、さようなら。」



ヒュゥゥゥ



戦艦(この吹雪は視界を悪くするわね・・・・。)

戦艦(視界不良の中で戦うなら戦いなれている彼女の方が有利でしょうね・・・。)



戦艦棲姫は北極海を超え何処かへ向かおうとしてた。

そして、また、先の作戦で開いた防御網の穴をつくべく北からの風とともに動き始める艦隊が居た。
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/12(金) 22:18:37.47 ID:4CCLSpn50
本日分は以上で終了です

次回から1の事前設定の中で一番軽い伯爵のお話の予定、後、少しだけ鎮守府に居る他の娘達に触れられたらなぁと思っています

イチャコラ?そんなもの知るか!な荒んだ設定でゆっくり進行しています

乙レス、感想レス、いつもありがとうございます、励みになります

いただいたレスは参考にさせて頂くこともあります(150様!バスクリン出てきたよ!←やっとかと怒られそう)

では、次回もよろしければお読みいただけると幸いです
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/12(金) 22:40:22.82 ID:sDNlazYA0
無理やりバスクリンw
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/12(金) 22:44:49.37 ID:KUbOVVFPo
キタ!バスクリン出た!これでかつる!
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 02:10:23.00 ID:4xlW5HyA0
おつおつ
適材適所・有効な駒も活かしきれないと大変だな…
失敗しても元をサックり処分するだけ代謝も修正も早そうだけどw
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/17(水) 21:51:48.96 ID:n394wk2Q0
龍田改二、なかなか尖った性能ですね
AKIRAのピーキーすぎてお前には無理だよを思い出しました
使用場面が嵌れば面白そうな設定(現状ちょっと強い駆逐艦みたいな感じです)
村雨は文句無いです、グラが変わっただけでも大勝利です

では、本日の更新をさせていただきます
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/17(水) 21:53:25.32 ID:n394wk2Q0

第九話 ラッパが鳴って壁は崩れた 前編
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/17(水) 21:55:06.94 ID:n394wk2Q0

明石の工廠


時雨「うーん。」

雪風「いいものなんですが・・・・。」

明石「買ってくださいよぉ。」

時雨「Bofors 40mm 6連装。」

雪風「まさかの英国面。MkY。」

明石「歴史上最後の戦艦、ヴァンガードの兵装だったのを!」

時雨「日本お得意の小型化に成功。そして艦娘の兵装に?」

雪風「でも、これ戦艦アイオワ級初期兵装の4連装より増えてますから。」

時雨「僕らが積むと艤装の電探とか火器管制のリソースをかなり食うんじゃないかな?」

雪風「更に、絶対重いです。」

雪風「そして是を使おうと思ったら射撃管制システムセットで運用しないと本来の性能を発揮できないでしょうね。」

時雨「だろうね。そうなると電探から全て入れ替えないといけなくなっちゃう。」

雪風「つまり、お高いんでしょ?」

明石「今ならコミコミで何と大サービス450万!」

時雨 雪風「「高すぎだね(です)」」
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/17(水) 21:56:52.15 ID:n394wk2Q0

明石「駄目ですか・・・、それならこんなのはどうです?」ショボン

明石「超お買い得酸素魚雷!50本1000ドル!どうです!?」キラキラ

時雨「1本当たり20ドル?!」

雪風「ちゃんと進むんですか?!」

???「進むには進むけど爆発しないのが多いんだよね。」

時雨「初月それは本当かい?」

明石「いや。まぁ、中には不良品もありますよ。」

初月「確かに1、2本なら僕も何も言わないさ。

   ただそれが10本中8本にもなるとさすがにね。」

時雨「不良品率80%・・・・。」

雪風「流石に何処の国製品かと聞きたくなりますね。」

明石「ちょっと初月さん!商売の邪魔しないで下さいよ!」

初月「僕らは命が掛かってるんだ。

   不良品が原因で命を落としたなんてなったら笑い話にもなりゃしない。

   それとも明石の所は代えの命まで売ってるって言うのかい!?」

時雨「じゃ、そういう事だから。」

雪風「またの機会に、です。」

明石「あぁ・・・。もうぅ・・・。」

201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/17(水) 21:58:32.66 ID:n394wk2Q0

時雨「ありがとう初月。おかげでお金を無駄にせずに済んだよ。」

初月「それは良かった。」

初月「ところでグラーフを見なかったか?先ほどから探しているんだが。」

雪風「この時間なら食堂で珈琲道を窮めているんじゃないでしょうか?」

時雨「伯爵がどうかしたのかい?」

初月「あぁ、いや。新しく手に入れた艦載機の対艦性能を試したいという事で

   昼食を報酬に演習に付き合う約束をしていたんだ。」

雪風「伯爵は艦載機マニアですよね。」

時雨「そうだね。この間はハウニブが手に入らないのかって明石に詰め寄っていた気がする。」

雪風「流石に空想科学の部類は無理なんじゃないでしょうか?」

初月「うーん、深海棲艦の艦載機はそれに近い気がしなくもないかな。」



そんな話を和気藹々としながら食堂についた一同。
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/17(水) 22:00:03.15 ID:n394wk2Q0

食堂

提督「うーん。これはコロンビアかな?」

不知火「キリマンジャロですね。いい豆を使用されています。」

グラ「ふふ。実にいい味だろう。」ムフー

提督「というか南米産の豆なんてどうやって?」

不知火「先日の物品購入書の購入明細一覧に入っていましたが。」

提督「?」

不知火「?」



どうやら先の決裁書類内での連絡の不備があったようである。



初月「グラーフ!」

グラ「あぁ。初月。と、もうそんな時間だったかな。」

初月「いや、まだ時間は大丈夫だ。」

グラ「そうか、それだったらコーヒーはどうだ?時雨達の分も淹れよう。」

グラ「時雨はエスプレッソ。砂糖たっぷり。」

グラ「雪風はラテ。上のラテアートは雪だるまをサービスだ。」

グラ「初月は・・・・。」

初月「カフェモカを。」

グラ「承知した。」

時雨 雪風 初月「「「美味しい〜。」」」ホフゥ

グラ「この戦争が終わったらコーヒーショップを開くんだ。」

雪風「分かりやすいフラグですね。」

時雨「伯爵は分かっててやってるから性質が悪いや。」フフ

初月「その、2人はグラーフの事を伯爵と呼んでいるけど。」

グラ「あぁ。私の艦娘としての名前がグラーフ・ツエッペリン伯由来という事もあるのだが、

   そもそもの私の出自がフォンの称号を頂くシュペー家でもあるからなんだ。」
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/17(水) 22:02:02.62 ID:n394wk2Q0

提督「そういえば由緒正しいライン貴族だったな。」

グラ「あぁ。」

時雨「初月、それ以上は聞くべきではないよ。」

何かを尋ねようと口を開きかけた初月を制する時雨。

グラ「何、大した話ではない。

   前に居た鎮守府のクズが空母の仲間や駆逐艦の娘達を強姦しようとしたのでな。

   男性器を捻じ切って口に突っ込んでやっただけだ。」

グラ「後悔など微塵もないよ。」

グラ「そも、ポークビッツ程度のサイズだったんでな?

   捻じ切った後に果たしてきちんと捻り取れたのかどうか2度ほど確認したくらいだ。」

提督「本来は海外艦の派遣協定に基づき本国へ即時送還だったんだがな。」

グラ「その節はAdmiralに実に迷惑をかけたな。」

グラ「だが、あのような問題のある奴を指揮官に据えるこの国もどうかと思うぞ。」

提督「それについては弁解の仕様がないな。」

グラ「まぁ、そんな訳もあって技術士官として派遣されていて何も得ずに帰国する訳にもいかなくてな。」

グラ「Admiralに骨を折ってもらってこの鎮守府所属として色々技術士官としての役目を果たしているという訳だ。」

提督「まぁ、そういう事だ。といってもグラーフの場合契約が特殊でな。」

提督「ここを出て行こうと思えばいつでも出て行けるはずなんだがな。」

グラ「ふふん。ここにいれば日本はおろかアメリカやイギリスの最新、

   それも艦娘の兵装としては開発段階の物まで使えるのだ。」

グラ「情報という宝の山を前に帰国する等あり得ん。」キリッ

グラ「それに、かけがえのない友も出来たしな。」(不知火達へウインク)

提督「まぁ、好きにすると良い。ここにいる限りは俺の庇護下だ。」

提督「引渡し要求には応じんよ。・・・、時雨や他の者達についてもだ。」

提督「コーヒー、実に美味かった。ありがとうな。さてと、不知火。紙の整理に戻ろうか。」

不知火「了解しました。」
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/17(水) 22:03:33.51 ID:n394wk2Q0

演習場付近


グラ「さてと初月よ。演習に付き合ってもらおうか。」

グラ「見てくれこれを!」



ババーン! Fw-109 G-3改



時雨「伯爵の改造時装備のフォッケウルフと違うの?」

グラ「うむ。これは長距離爆撃型でな?私の装備のフォッケウルフより航続距離が長い!」

グラ「更に懸吊架も改良され搭載可能爆弾も1t爆弾と1.8t爆弾が可能になっているのだ!」ムフ―

時雨「スツーカの後継みたいなものかな?」

グラ「Nein!Nein !Nein !スツーカとは違うのだよ!スツーカとは!」

時雨「おっ、おぅ。」ヤヤヒキ

グラ「戦闘爆撃機という点では相違ないがスツーカは対地目標に特化している機体に対し

   こっちは爆撃後に空戦も出来る。そうだな零62型爆戦の仲間と思ってくれていいぞ!」

雪風「これ、長くなるやつです?」

初月「複座なんだね。」マジマジ

グラ「そこに気づくとは流石だな初月。」

グラ「そう!旧型となりつつあったJu87が複座であったのにならい複座に改造したのだ!

   だから形式名の後に改がついているのだよ!」

グラ「なので搭乗員妖精の機種転換が楽になった!」

グラ「さらにエンジンも高高度作戦が可能なD型の物を無理やり使用している!」

グラ「つまり高高度を長距離移動して爆撃が出来るというロマン機なのだ!」

時雨(最早艦載機じゃなくてもいいんじゃないかな?)

初月(僕もそう思うがそれは言わないのがやさしさなんじゃなかろうか?)

205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/17(水) 22:04:51.99 ID:n394wk2Q0

雪風「あの。単純な疑問なんですが、

   爆装重量等の関係で空母艦載機として飛ばせるのですか?」

グラ「フハハハ!問題ない!そこは私の艤装を色々と改造した。」

グラ「もともと派生元のFw109を発艦させていたのだ、カタパルトを改造する事によりそれも無事解決だ。」

グラ「見てくれこれを!」



ババーン! 蒸気カタパルト



時雨「どこから手に入れたのさ。」

グラ「大戦後の技術などという事はさておきこれを使えばだな?」



バシュ!  メキャラ! バキッ! ←カタパルトフックが折れてバランス崩した音。



時雨 雪風「「あっ。」」



パッ! パッ! ←搭乗員妖精が落下傘にて脱出しました。



時雨「脱出は上手くいったみたいだね。」



グワーン ←海に向かって落ちていってます。



ドガーン!



初月「ふむ。木っ端微塵だな。」

時雨「カタパルトの打ち出す力が強すぎたみたいだね・・・・。」

グラ「あぁあああああ!!??」

グラ「あぁあああぁぁぁ・・・・・。」

初月「グラーフ、その、訓練をするのかい?」

グラ「あぁぁ・・・・。」

時雨「無理じゃないかな・・・。」

206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/17(水) 22:05:30.96 ID:n394wk2Q0

雪風「今はそっとしておいてあげましょう。」

グラ「あぁあ・・・・。」

時雨「初月はこれから後の予定は?」

初月「瑞鶴と今度の空母狩りについて打ち合わせがあるくらいだ。」

時雨「そう。じゃぁ、伯爵が約束していた昼御飯は僕が御馳走するよ。」

時雨「食堂へ戻ろうか。」フフ

初月「いいのか?僕は結構食べるぞ?」

時雨「雪風ほどじゃないでしょ?」

雪風「雪風はそんなに食べませんよ?」

時雨「この間、炒飯空母盛完食してもう1杯食べてたよね?」

雪風「雪風、忘れました!」テヘッ

川内「にしても本当、どこに消えてるんだろうね?」シュタッ

初月「川内か。何処に潜んでいたんだ?」

時雨「それは気にしちゃ負けだよ。」
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/17(水) 22:06:07.54 ID:n394wk2Q0

雪風「忍者ですから。」

川内「明石の所に寄ったら三人で食堂に行ったって聞いたから探してたんだよ?」プクー

川内「私を除け者にするなんて、No―なんだからね?」

初月「金剛?」

川内「正解!じゃ、みんな!ご飯にしよ!」

雪風「ごっはん〜♪、ごっはん〜♪」

こうして四人は食堂へ再度向かったのだった。

208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/17(水) 22:06:36.36 ID:n394wk2Q0
千島列島 付近海上

戦艦棲姫との会談後、1ヶ月後のある日
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/17(水) 22:08:00.90 ID:n394wk2Q0

水姫「再度の上陸作戦ね。」

リ級「吹雪は後、1週間程は続くかと思われます。」

水姫「吹雪が強いとレーダーの効きが悪いから攻める側には有利ねぇ。」ウフフ

水姫「気象条件が侵攻作戦へいい日を待った甲斐があったわね。」

リ級「千島を落とした後は単冠湾の敵泊地を落すと形ですか?」

水姫「可能なら。敵にしてみれば千島を落されるだけでもかなりの脅威。」

水姫「といっても単冠湾には大した戦力は残っていないでしょう。」

リ級「ソ級やイ級による強行偵察でもあまり有力な戦力は残っていないようです。」

水姫「先日の敵による反攻作戦でこちらが沈めた敵艦娘の所属を調べていった中で

   北方方面の艦隊がそれなりに居たみたいよ。」

リ級「穴が大きく開いているという事ですね。」

リ級「ですが、攻めに行くには空母の数が少ない気もしますが。」

水姫「そうね。本当はもっと連れてきたかったのだけど私達の滑走路は海の上。」

水姫「敵の滑走路は陸上。ここが大きな違いね。」
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/17(水) 22:08:41.77 ID:n394wk2Q0

リ級「?」

水姫「今の冬時期、この海域は吹雪がきつい。攻める側の私達は発着艦が困難なのよ。」

水姫「ただでさえ視界不良に加え上下の感覚も狂わせる吹雪。おまけの強風。」

水姫「敵との交戦によるもの以外の喪失が増えるだけよ。」

リ級「敵も同じ状況だから空母は少なくて良いという事ですね。」

水姫「敵は陸の滑走路が使える分こちらよりマシでしょうけど、そうね。それほど変わりはないでしょうね。」

水姫「だけに島を取って拠点を作る必要性が高いのよ。」

水姫「今度の上陸作戦は成功させるわよ。」

リ級「了解です。」
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/17(水) 22:09:31.80 ID:n394wk2Q0

水姫「さぁ、敵には存分に踊ってもらいましょう?」

水姫「私達を北の海に閉じ込めた敵を打ち倒す。」

水姫「そう、冬から春を迎えるが如く。私達の時代を謳歌するわよ。」

リ級「さながら祭りですね。春を迎える事を喜び歓迎する祭り。」

水姫「そうね、『 春の祭典 』と言ったところかしら?」

リ級「北の海から艦娘、人間共を追い落としてやりましょう!」

水姫「えぇ。そうね。」ウフフフ

北の魔女。

かの一団は再びの侵攻を開始した。

212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/17(水) 22:13:15.60 ID:n394wk2Q0
タイトル、グラーフ、敵は北方水姫
今回もフラグ建設に頑張っています
初月と名前のみ登場の瑞鶴の話は需要があればその内にでもやりたいなと
現状はあんまり細かく設定は考えてないです、ごめんなさい
ではでは本日はお読みいただきましてありがとうございます
乙レス、感想レスいつもありがとうございます
いつも読んでくださっている読者のあなたに感謝いたします
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/17(水) 22:23:21.69 ID:0jDHIYS/O
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/17(水) 22:39:37.53 ID:fFw8hXoh0
おつ
龍田は無条件で先制爆雷、大発系乗る司令部積めるで輸送連合マップで重宝しそう
美人でおっぱいおっぱいだから旗艦に据えたい
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/17(水) 23:40:55.20 ID:ShGI05/A0
おつ
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/18(木) 01:23:00.01 ID:XbG8xJpA0
おつです
流石の建築能力だw
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/18(木) 12:23:09.59 ID:mURSmh0X0
88とプリズンレディがいい感じでブレンドされてるなぁ……



ミッションとして薔薇関連が入ってくると新谷ファンとしては狂喜せざるをえない
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/22(月) 00:14:11.30 ID:9lgrDVvi0
グラーフさんのお話なかなか筆が進まんです
色々調べ物したりしている所為ですね、うん
このSSを始める前に海外艦を誰にしようと考えていたときに書いて一旦ボツにした話を代わりにあげときます
上げるために若干加筆、修正
性格としてはブラックラグーンのエダと艦これ漫画でわりと有名なビリー提督の所のビスマルクを足して割らない感じ
色々頭の螺子がいっちゃってますのでキャラ崩壊も大丈夫よという方はお読みください……
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/22(月) 00:17:10.15 ID:9lgrDVvi0

番外編  She is Killer Queen
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/22(月) 00:19:17.54 ID:9lgrDVvi0

不知火「まもなくですが・・・・。」

提督「正直勘弁願いたいな。」

提督「放火して火消しをよそ任せにする所は英国らしいといやぁ英国らしいが・・・。」

不知火「何をしたんですか?」

提督「着任関連の書類には適当に暈されてたが多分虐殺・・・じゃねぇのかね。」

不知火「」

提督「記憶にあるなかで最近起きた英国絡みの事件はバージン諸島砲撃事件しか知らん。」

提督「といっても漏れ聞こえた話を大まかに統合しての話だからどこまで本当かどうか。」

不知火「その、どのような事件なのでしょうか?」

提督「英国が初めて開発した戦艦って事で米軍に任せてたバージン諸島の守りに就かせようとしたら何を考えたか島を砲撃。」

提督「僚艦も全て沈めて島の形を変えんばかりに艦砲射撃しちまったらしい。」

不知火「なぜ解体処分されなかったのでしょうか?」

提督「高貴な出自の御方が高貴な役目の為に艦娘になられたらしくてな・・・。」

不知火「政治的判断という事ですか。」

提督「あぁ、英国政府に貸しを作っていい顔したい政治屋の尻拭きだ。」ハァ

不知火「頭が痛いですね。」

提督「あぁ、いらん火種を抱えたくない。」



そして二人が待ち構えているところにいつものように船はやって来た。
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/22(月) 00:20:47.51 ID:9lgrDVvi0

水兵「お疲れ様です。今回の荷物ですが・・・・。」

提督「事前に聞いてはいるが。」

水兵「梱包の開梱は我々の船が出てから1時間後にお願いします。」

水兵「後、こっちの荷物はそれの私物です。」

提督「そんなに劇物なのか?」

水兵「厳守で願います。」ガクブル



青い顔をした水兵といつも通りに受け渡しの手続きを済ませる。

そして降ろされた荷物は艦娘と表現するには程遠い程に拘束がなされていた。



不知火「映画で見たことがあります。」



ガチャガチャ フーッ! フーッ!



提督「あぁ、そうだな。まるでハンニバル・レクターみたいだな。」

水兵「くれぐれも。」

提督「あぁ、分かった分かった。」ヤレヤレ
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/22(月) 00:25:32.55 ID:9lgrDVvi0

1時間後


ガチャガチャ


不知火「これで拘束は全部でしょうか?」

「Fucking Shit ! 」

提督「おっ、おぅ。」

「お前が時間をきっちり守ってくれやがった所為で沈めそこねたじゃねぇか!」

不知火「・・・・、やんごとなき御身分?」

提督「間違いはないと思うんだがな。」

「あぁ、自己紹介がまだだったわね。私は戦艦Warspite 日本語は大学で勉強してたから一通り出来るわ。」

スパ「意味は分かるでしょ?」

不知火(日本語だけの会話でも分かるぞという事ですかね。)

提督(まぁ、そう言う事だろ。)

スパ「Don’t give a fuck with me

   だから小声で話をしてても分かるっていってんだよ。ん? Understood ?」

提督「随分と口汚い女王も居たもんだ。まぁいい。ここはお前さんみたいな曰く付きが流れ着くところだ。」

提督「ここから先は無いからな。そこだけ肝に銘じておけ。」

不知火「長生きをされたいのでしたら態度を改められる事をお勧めします。」

不知火「では。」

スパ「What the fuck 何だってんだいここの連中は。ったく。」
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/22(月) 00:27:03.05 ID:9lgrDVvi0

工廠付近


明石「あっ新しい艦娘さんですか?」

スパ「ここは何?」

明石「見ての通りお店ですけど?金があるなら客として扱いますが無いならどいて貰えませんかね?」

スパ「店?」

明石「えぇ、出撃に使う油に弾薬、ボーキ、装備関連に修理に整備、一切がうちの取り扱い商品ですけど?」

スパ「あぁ、そういう。ふぅん。PXみたいなものか。」

スパ「ここを出て行きたいんだけど燃料を売ってもらえる?」

明石「お金は?」

スパ「これで。」

明石「ポンドねぇ。うちの取り扱いはドル決済なんですけど?」

明石「こんなおもちゃのお金を出されてもねぇ?」

スパ「あぁ?」


自国通貨をおもちゃと呼ばれ怒り明石に迫るが。
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/22(月) 00:28:14.32 ID:9lgrDVvi0

明石「睨んでんじゃねぇよ、股が小便臭え餓鬼が粋がった所で飴玉一つこの明石は売らんよ。」

明石「物が欲しけりゃドルだ。鐚1セントまける気はないね。」



何処から取り出したか大型重機の整備用レンチを肩に担ぎ今にも解体すんぞと凄む明石。

ただの工作艦とは思えない殺気に気圧され怯むウォースパイト。



明石「燃料19弾薬28鋼材46ボーキ12に変えてやろうか?」アァン?

雪風「明石さん。お取り込み中失礼しますがお相手して貰えますか?」

明石「これはこれはお客様。」



普段より恭しく。
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/22(月) 00:29:19.93 ID:9lgrDVvi0

雪風「そちらの方はいいんですか?」

明石「お金が無いのはお客様じゃないです。」

雪風「ぶれませんねぇ。」

明石「注文はいつも通りでいいですか?」

雪風「えぇ、魚雷30の燃料、弾薬セットで。」

明石「毎度!」



雪風は駆逐艦である。そう、駆逐艦なのだ。

ゆえにウォースパイトは侮ってしまった。



スパ「あんた駆逐艦?」

雪風「はい、そうですが。」

スパ「私、今お金が無いのよ。代わりにここの支払い持って頂戴。」



明石は思った。こいつ馬鹿だろと。

よりにもよって鎮守府内の歩く火薬庫とまで言われる雪風に集るのかと。
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/22(月) 00:30:44.98 ID:9lgrDVvi0

雪風「どうして雪風が払わないといけないのですか?」

スパ「駆逐艦は戦艦の下でしょ?」

明石(あーあ。)



刹那。

ウォースパイトの体は天地が逆転し、

ウォースパイトが次に目を開けたときは医務室の天井をその目で見ることとなる。



不知火「気がつきましたか?」

不知火「忠告が役に立たなかったようですね。」

不知火「身を持ってここのルールを知っていただいたようでなによりです。」

スパ「一つ聞きたいのだけど?」

不知火「何でしょうか?」

スパ「ここの駆逐艦は皆あんななの?」

不知火「全てが、とは言いませんがあなた程度でしたら余裕を持って沈められる。」

不知火「その程度の錬度には皆、達しています。」

不知火「また、ここは他所の鎮守府の様に艦種による上下は有りません。」

不知火「寧ろ駆逐艦を軽んずる艦娘はまっさきに鬼籍に入っていますね。」

不知火「魚雷は敵、味方の区別はありませんので。」
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/22(月) 00:33:15.02 ID:9lgrDVvi0

スパ「それは脅しかしら?」

不知火「処世術ととっていただきたいですね。」

不知火「とりあえず、戦艦では長門さん、空母ではグラーフさんを始めとする数名。

    重巡では摩耶さん他同じく数名。

    軽巡では川内さんが最も危険ですね。

    駆逐艦では時雨さん、雪風さんに初月さんと後数名でしたでしょうか?」

不知火「報酬金ランキング上位常連には喧嘩を売るべきではないと教えておきます。」

不知火「後、潜水艦の方々も居ますが彼女らには特に注意してください。」

不知火「証拠を残さないやり方をよく心得ていますので。」ニッコリ

スパ「よく分かったわ。」

不知火「では。」

不知火「あぁ、言い忘れる所でした。

    お持ちになられたポンドですが両替が必要でしたら司令の所に行かれて下さい。

    手数料は掛かりますがドルへの両替を受けますので。」

不知火「無法地帯のように見えても無法故のルールと言う物があります。」

不知火「長生きしたいならゆめゆめお忘れなきよう。」

不知火「死にたいならお知らせください。魚雷はサービスします。」



そういい残し不知火は医務室を去っていった。



スパ「とんだ地獄に迷い込んでしまったようね・・・・。」



ウオースパイトは自分の置かれた状況をその聡明な頭脳で理解したのだった。

こうしてこの地獄の掃き溜めに女王は着任した。
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/22(月) 00:35:30.70 ID:9lgrDVvi0
キャラが強烈過ぎたためお蔵入り仕掛けたお話
番外編だから好き放題にやっています、雪風に喧嘩うればそうなりますねぇ
ではでは次回こそはグラさんのお話更新したい……
乙レス、感想レスいつもありがとうございます
ここまでお読みいただきありがとうございました
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/22(月) 01:24:31.94 ID:AG0w6ZcA0
なんか明石編が読みたくなったな
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/22(月) 09:24:56.49 ID:vPFTGTXA0
火薬庫ワロタ
郷に行っては…が体現されてる場所じゃ、選択肢一つ間違えるだけでバッドエンドなのかw
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/22(月) 12:38:03.73 ID:ZxWqJkuWO
あぁ…こういうの良いなぁ…
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/22(月) 12:57:45.41 ID:+s2EdVKq0
ここじゃ身の程を理解する能力すらない狂犬と組まされた日には自分が死ぬしな
もし弁えられなかったら不発魚雷よりも気軽に処分されただろうなあ、ブリーフィングから出撃までの僅かな時間に運(70)悪く事故死
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/23(火) 21:41:15.78 ID:LUSyF7cl0
モデルのキャラを考えてしまうとラグーン程度では薄っぺらいな。

大尉かトライアド持ってこないと太刀打ちできない感じ

そう考えると88は名作だわ
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/26(金) 21:17:23.02 ID:jhFVhFyK0
明石も結構な過去ありそうやなぁ...
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/27(土) 22:42:20.38 ID:qE+EAaJ40
>104誤 伊8「そうでち、命は大事に使えば一生使えるでち。」 → 正 伊58「そうでち、命は大事に使えば一生使えるでち。」

>219誤 番外編  She is Killer Queen → 正 番外編  She is a Killer Queen

1です、読み返して一部間違えに気づいた部分がありましたので訂正をさせていただきます

>233様 三合会は超サイコー!

本日の更新をさせていただきます  
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/27(土) 22:43:34.58 ID:qE+EAaJ40

第十話 ラッパが鳴って壁が崩れた 中編
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/27(土) 22:44:46.13 ID:qE+EAaJ40

鎮守府 工廠付近埠頭


秋津洲「明石さん!すごいかも!」オホー!



普段は明石商店の配送要員として二式大艇のオペレータを務める秋津洲が遠くを見つめる。



秋津洲「あんまり見分けがつかないかも!」オホー!

時雨「何をやってるんだい?」

秋津洲「あっ、時雨かも!今ね、新しいデコイを試していたかも!」

秋津洲「今日は荷物も運び終わったから新商品の開発を手伝ってたの。」



そういい秋津洲が指差す先には。



時雨「あれは、失敗ペンギンと失敗綿なのかな?」

明石「そうですよ――。開発に失敗した時に出てくるあれの再利用です。」

時雨「開発とかしてたんだ。」

明石「時雨さんは稼ぎが良いからあれですけど普通は装備を改修して上位装備へ換装するものですよ?」

明石「それに改修の状況によっては無改修の上位装備よりいい働きする事もありますしね。」

238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/27(土) 22:45:48.37 ID:qE+EAaJ40

秋津洲「改修の素材を全部よそから買ってたら高くつくから偶にうちの商会で開発してるかも!」

明石「開発して出る素材は出したほうが完成品を用意するよりお安く提供できますしね。」

時雨「そっか。営業努力の結果があれって事か。」



時雨が指差す方向に浮かぶのは失敗ペンギン達で作られた案山子。



明石「何かのデコイみたいなものに使えればなぁと思ったんですけどね。」

秋津洲「ぱっと見で駆逐艦サイズだから状況によってはありかも!」

明石「といっても動かずに浮いてるだけじゃバレバレですよねぇ……。」

明石「やっぱり捨てるしかないのか……。」

提督「アイデアは悪くないと思うぞ。」



明石が名残惜しそうに案山子を見つめる所に声をかける提督。
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/27(土) 22:47:02.27 ID:qE+EAaJ40

提督「空から見た感じどうなんだ?電探に影は映ったりするか?」

明石「あ――――。空からはまだですね。電探も後で試しておきます。」

時雨「提督、あんなのをどうするんだい?」

提督「時雨。兵器に限らず世の中の多くは全てアイデア次第だ。」

提督「本来の使い方ではない使い方が便利すぎて

   イレギュラーな使い方がレギュラーになってしまった商品なんてものはいくらでもある。」

提督「あの案山子だって何かもう一工夫してやれば化けるかもしれんぞ。」

提督「それに材料が失敗の綿?とかだから持ち運びも容易だろうしな。」

明石「ですね。こう。ぎゅっと圧縮して使おうと思った時に一気に元の形に戻せるって感じが可能です。」

提督「面白いな。後は使う側のアイデア次第って気もするぞ。」

明石「じゃぁ、提督。買って下さいます?」ニコニコ

提督「そうだな。値段しだいだな。開発の失敗作なんだろ?」ニヤリ

そんな二人の会話の後に明石の実験的新商品の値段交渉が始まった時だった。

240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/27(土) 22:48:20.98 ID:qE+EAaJ40

ボコボコボコ

ザバァツ!

埠頭の岸壁に手を掛け3人の潜水艦娘達が鎮守府埠頭に姿を現す。



伊58「帰ってきたでちぃ・・・。」ベチィ

時雨「あっ、ゴーヤじゃないか!久しぶりに姿を見たけど特殊作戦行動にでも出てたのかい?」

伊13「時雨さん、お久しぶりです。」ヨッ

伊8「欧州から帰って来たところなんです。」フゥ

提督「お疲れ。帰投の連絡があってから待ってたぞ。」

明石「何だ散歩じゃなかったんですか。」

伊58「これが荷物でち。」ゴト



つ 防水耐圧処理済トランクケース



提督「確かに。これが報酬だ。無くすなよ。再発行は出来んからな。」



そう言って差し出すは複数の茶封筒。



伊58「1週間の休暇許可と報酬金一人5000ドルに刑期短縮の海軍大臣署名入りの確約書。」

伊58「それからノルマ軽減についての軍令部総長署名入りの確約書。」

伊58「全部間違いないでち。」



封筒の封を乱雑に破り中を確認したゴーヤが顔を上げる。
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/27(土) 22:49:33.69 ID:qE+EAaJ40

提督「後な、これは伊13に特別ボーナスだ。

   特警の監視付になるが面接権だ。妹に会いに行ってやれ。」

伊13「・・・、ありがとうございます!」

提督「仕事に対する正当な報酬に過ぎんよ。助かった。」

時雨「提督、ゴーヤ達に何を頼んでいたんだい?」

提督「軍機につきと言いたい所だが、俺が話さなかったらゴーヤ達から聞き出すんだろうな。」

提督「グラーフを呼び出しついででコーヒーを執務室まで頼めるか?」

提督「ここで話をするには向いていないからな。後、明石も来てくれ。」

明石「了解です!」

提督「後、伊58は道中の報告も聞きたいから同行してくれ。」

提督「そんな訳だから時雨、コーヒーを人数分だ。」

時雨「了解。」

242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/27(土) 22:51:14.31 ID:qE+EAaJ40

執務室



グラ「Admiral、注文のコーヒーだ。」

提督「ありがとう。そして手間を掛けるがドイツ語の翻訳を頼めるか?」

グラ「了解した。」

時雨「提督はドイツ語出来ないの?」

提督「嗜む程度だ。その程度だから技術的な専門用語が入ってくるとお手上げだ。」

提督「よしんば出来たとして母国語の違いという奴でな微妙なニュアンスの違いって奴は理解出来ん。」

提督「それなら出来る奴に任せるのが一番だ。」



そう言いながら先ほどのトランクケースに付いている鍵に番号を打ち込む提督。



提督「と、開いたな。グラーフ、すまないがこれらを一つ一つ頼む。」



明石とグラーフに書類の束を渡す提督。

243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/27(土) 22:52:45.59 ID:qE+EAaJ40

提督「凡その内容は聞いているが儀術的な部分もあるからな。」

グラ「ふむ。祀事的な部分という事か。」

提督「シャーマンの部分は本当によく分からん。」

時雨「シャーマン?」

提督「あぁ、嘗ての英霊。戦闘機なんかのネームドパイロット連中を

   こっちの世界に降ろす為にはどうしても宗教的な手続きがいるわけなんだよ。」

提督「欧州の艦娘運用国の中では特にドイツが先進国でね。」

提督「なんだかんだでドイツが艦娘に関する技術では欧州では一番進んでいる。」

提督「そんな訳で、伊58達には最先端の技術交換目的で北極回りでドイツに行ってもらってたんだ。」

時雨「北極回り。」

提督「そうだ。スエズは通れない中で喜望峰回りと北極回りは危険度がそう変わらない。」

提督「それなら少ない日数でいける北極回りの選択になるという事だ。」

グラ「潜水艦ならではだな。」

244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/27(土) 22:54:26.87 ID:qE+EAaJ40

時雨「その、ロシアのシベリア鉄道とか空路で行くとかも出来ないのかな?それとか無線通信とか。」

提督「ロシアね。」フフン

提督「北方四島返還と千島の信託統治を認める代わりに艦娘を要求したロシアがね。」

グラ「響だったな。」

提督「あぁ、連中は貸与された響を徹底解析した挙句に

   名前を付け替えその解析で得た技術で戦艦を組み立てやがったからな。」

提督「連中からしてみれば深海連中に海を抑えられてる現状、北方四島を含む千島列島は穴の開いたバケツだ。」

不知火「防衛の為にお金が湯水の如く消える割にその意義が皆無ですね。」

提督「早い話、厄介払いだな。」

グラ「ロシアの戦艦は見たことはあるが・・・。」

明石「あれの実態は酷いもんですよ。

   駆逐艦の技術で戦艦を動かしてるから魂の受け皿になってる艦娘と船魂のシンクロ率が恐ろしく低いんです。

   技研の連中も流石恐ロシアって苦笑してましたよ。」

明石「そして艦種違いの低シンクロ率を誤魔化す為に薬物を使用してる状態ですもん。」
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/27(土) 22:55:59.99 ID:qE+EAaJ40

グラ「ガングートが加えているパイプはやはり薬物の類だったのか。」

明石「えぇ、表向きには依存性のない綺麗な薬物って言ってますけど薬物に綺麗も汚いもないです。」

明石「あれに火をつけて吸引すると軽いトランス状態になるんです。」

明石「シャーマンがトランス状態になって体に精霊を降ろす。

   その状態を擬似的に作りだしてシンクロ率を無理やり上げてるそうですよ。」

グラ「ろくでもないな。」

提督「流石ドーピング大国と言いたくなるな。

   連中は俺達も艦娘作れるぞって誇示の為に派遣という形をとって

   更なる技術提供を要求してくる厚顔っぷりだから驚くほどでもないがな。」

提督「そんな国を艦娘に関する技術資料を持った人間が通りまぁ―――――――すぅ!なんてやってみろ。」

伊58「あっという間に拘束されるでちね。」

246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/27(土) 22:57:25.91 ID:qE+EAaJ40

提督「後な、もう一つの赤い国、深海棲艦が出てくる前から

   いろんな国にちょっかい掛けては海洋進出をしてきた国だからな。」

提督「艦娘に関する技術は喉から手が出るほど欲しい、そして実際誘拐まがいの事だってやってる。」

提督「そいつら大国以外の国も何処も似たり寄ったりだ。

   深海との戦いが終わった後の艦娘の運用方法、海洋の覇権を含めて艦娘ってのは好奇の対象なんだ。」

提督「だから陸路やそれらの国を通過する空路なんかでいったら行方不明者がダース単位で出てしまう。」

提督「秘匿通信なんて使っても傍受、解析なんてされたら漏れているのかどうかが分かりにくい。

   だから原始的だが情報員の派遣が一番確実なんだよ。」

時雨「ごめんよ。そこまで深くは考えていなかったよ。」

提督「世の中の政治ってのはめんどくさいもんさ。

   アメリカにしたって日本を支援しているのは終わった後の海洋での覇権を見据えてのもんだしな。」

提督「内心、軍事同盟を結んでて良かったくらいの事は考えてるだろうよ。」

提督「適度に漏らしていい情報は垂れ流して何処から漏れているかを諜報部は探ったりはしているようだがね。」
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/27(土) 22:59:01.57 ID:qE+EAaJ40

時雨「でもどうしてゴーヤ達なんだい?」

提督「身内も信頼できる連中が少ないってこったろ。」

提督「下がゆるい連中が多いと特警も憲兵も忙しいからな。」

提督「その点、ここなら金と刑期、どちらかに忠実に働く分ましって計算なんだろう。」

提督「俺の職務に忠実な友人曰く女ばかりの職場で働く提督なんぞ去勢してしまえ、だからな。」

提督「鎮守府内で満たせない以上、外で欲求解消をしようとして後はそういう事だ。」

明石「嵌めたつもりが嵌められたとかしまらない話ですねぇ。」

提督「上手いこと言ってんじゃねえよ、まったく。」

グラ「身に覚えのある話だけにアホばかりという気がしないでもないな。」

提督「特警曰く『 刑務所は敷金、礼金無料!1Rだったらトイレ付き!あなたの入居をお待ちします! 』だそうだ。」

明石「皮肉が効いてますねぇ・・・。」

提督「話がだいぶ横道にそれてしまったが肝心の中身はどうだろうか?」

提督「事前に聞いた概要としてはネームド艦載機に関する技術的な話らしいんだが。」

明石「そうですね。間違ってないですね。」
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/27(土) 22:59:52.96 ID:qE+EAaJ40

明石「海外機のネームドに関する研究レポートとかですね。」

時雨「僕らにはあまり関係ないかな。」

伊58「でち。」

提督「ざっと目を通した後で大まかでいいから説明を頼む。」

提督「でだ、伊58、北極方面の敵の動きはどうだった?」

伊58「無線の通信量が増えていたのとスクリューの音が多かったでち。」

提督「・・・・、スクリュー音が多かったか。」

提督「大型艦船のスクリュー音だったか?」

伊58「どちらかと言えば小型艦船が多かったでち。」



ゴーヤの報告を聞いて頭を抱える提督。
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/27(土) 23:01:19.74 ID:qE+EAaJ40

提督「はぁ―――――。

   まいったね、この間の作戦で艦娘を大量に失ったのを敵さんは見逃してくれないか。」

時雨「どういうことだい?」

提督「小型艦船の動きが活発になってるってことは

   上陸作戦に向けて補給船や揚陸艇を動かしてるってことだろうな。」

提督「戦艦や空母だけじゃ上陸作戦は出来ないからな。

   大型のみなら別場所への移動かとも思えるんだがな。」

提督「さらにこの間、艦隊司令部に顔見せに行った際に貰った資料によれば

   例の作戦は北方方面から軍の人員をそれなりに抜いていたらしいからな。」

提督「今までの経験から一度大規模の掃討戦を行った後は敵もすぐには動かないという経験則から判断したんだろうな。」

グラ「よくある、だろう、かもしれない、という奴か。」

不知火「それを敵が理解していれば動かす方面軍は自明の理ですね。」

提督「そして伊58がここへ帰ってくるまでのタイムラグを考えれば。」
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/27(土) 23:02:20.06 ID:qE+EAaJ40

不知火「敵は既に動いていますね。」

提督「あぁ、今頃どこかの島を落しているだろうよ。」

グラ「ふむ。まぁ、我々には関係があまりない話かな。」

提督「ここから北の千島列島までは日数が掛かる。

   それに単冠湾、幌筵にはまがりなりに泊地と名前が付くだけあって最低限の戦力はあるだろうしな。」

提督「幌筵はロシアのカムチャッカが近いし

   ロシアに義理立てする理由も薄いから攻められたら早々に放棄するだろう。」

提督「寧ろ放棄する理由が欲しいくらいじゃないのかな。」

不知火「あそこは日本にとって盲腸みたいなものですから。」

提督「そうだな。無くていい。有れば金も人手も掛かる無駄飯食らいだ。」

提督「とはいえ、先ほどの話じゃないが出撃については想定くらいはしておいた方がいいだろ。」

提督「何事も想定外を想定しておいたほうがいい。」

提督「矛盾を含んじゃいるがな。」ハァ

提督「伊58、状況は理解した。コーヒーを飲んだら自室で休んでくれ。」アリガトナ

伊58「分かったでち。」スズー
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/27(土) 23:03:06.24 ID:qE+EAaJ40

提督「それで、艦載機の話なんだが。」

明石「ざっと目を通した感じでは宗教的な魂の取り扱いがネックみたいですね。」

提督「宗教か。」

明石「えぇ。死ねば神として祀られる日本の場合は艦載機を神社に見立てて神を降ろす。」

明石「弓道型の娘は矢の一部に榊の木を使ってますから

   あれが神籬(ひもろぎ)として依り代になります。陰陽型は言わずもがなですね。」

明石「どちらも黄泉の国におわす御霊を神として召還して依り代に降ろす事で名前持ちを降ろしているわけです。」

明石「なわけなので分霊(わけみたま)で一部のネームドは増やせているでしょ?」

明石「まぁ、艦娘の魂に紐付けされてる所為で一部の艦娘の協力がないとネームドが現世に降ろせなかったりしますが。」

明石「ところが海外の場合、死なれた後の魂の行き場がめちゃくちゃみたいですね。」
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/27(土) 23:06:25.86 ID:qE+EAaJ40

グラ「うむ。われらゲルマン民族の場合は戦場で死ねばヴァルハラだ。

   そうでない場合はニヴルヘイムだな。」

提督「北欧神話の類だな。」

グラ「うむ。北欧神話だ。だけにキリスト教徒はヴァルハラに行っていなかったりする。」

時雨「死んだ後の魂の行き先に縄張りがあるのかい?」

グラ「あぁ。」

明石「日本の場合は仏教徒だろうが戦中、戦後に関わらず死んだ方はみな英霊で同じ場所に祀られているんですけどね・・・。」

明石「さらにドイツの場合は。」

提督「空母艦載機に乗っていたエースパイロットがいないと。」

明石「そうですね。大元の召還が困難な原因はそこに行き着きますね。」

グラ「とは言え資料を読む限りは技術的にはなんとかなりそうだがな。」

明石「そうですね。後は魂の定着をどうするかの問題みたいですね。」

グラ「現状でも依り代となるものを用意できれば1週間程度はこの世に顕現させる事は出来るようだ。」

提督「1週間か。」

明石「長いとも短いとも。」

不知火「まさしく切り札的な感じですね。」

時雨「切り札?」

提督「あぁ、ドイツのエースパイロットはその名の通り切り札(エース)揃いだからな。」

時雨「へぇ。」

グラ「日本のネームド達に負けず劣らずの猛者揃いだ。」

グラ「一例をあげるならウクライナの黒い悪魔に極北のエース、アフリカの星といった戦闘機乗りの強兵達だ。」

明石「彼らが使えるようになると相当に戦力強化にはなるでしょうね。」

グラ「時限だがな。」

提督「現状はそれを降ろすための機材その他で金が馬鹿みたいに掛かるが不可能ではないということか。」

明石「まっ、物好きがやるかぁ、くらいのレベルみたいですね。割りに合わない感じです。」

提督「大戦時の装備でも技術的に現代の物に置き換えられるものは

   置き換えて行っているがそれでもそんな状況なのか。」

明石「置き換えても妖精さん抜きでは艤装も含めて装備は動きませんから。」

グラ「理論だけが先行しているような形らしい。」

グラ「だけに実証実験の例が少ない。」

提督「そうか。全部の翻訳が終わったら教えてくれ。また司令部に持って行かないといけないからな。」

明石「司令長官も提督を中央に戻したいんですかね。」

提督「面倒はもう沢山だからお断りしたいんだがな、椅子磨きも机磨きも面倒なんだよ。」

提督「俺が抱えきれる仕事はこの両手の範囲内だよ。」



ぐっと手を広げる仕草をする提督。



時雨「そっか。意外に小さいんだね」

提督「あぁ、そうだ。小さいんだ。」

253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/27(土) 23:08:44.21 ID:qE+EAaJ40

軍令部内 海軍戦争指導会議 



参謀達が壁に掛かった海図と机上に展開させている図表を前に激論を交わしている中

少しだけ離れたところでそれを冷めた様子で見つめる一団が居た。



Y元帥「千島列島に敵の襲撃とはね。」ヤレヤレ

I元帥「先の作戦で戦力を北からだいぶ抜いていたからな。」

Y元帥「先立っての作戦より半年程前に北の連中は叩いたばかりと言うのに。

    まったく敵の戦力は畑か何かから生えてきているのかね?」

K元帥「こっちは無能が多いのに対し敵が優秀というのは困ったものだな。」

K元帥「まぁ、先の大掃除でだいぶ片付きはしたがね。」

Y元帥「それについては同意だな。しかし、北の守りは正直それ程の重要性はないだろ?」

I元帥「そうだな。国民感情では北方四島を含む千島、まぁ、北千島は信託統治だから

    還ってきたというにはあれだが全体としては喜ばしい事ではあったんだろうがな。」

K元帥「実質は深海連中どもから守るのが困難になって金を掛けたくない、

    掛けられない露助どもに押し付けられたに過ぎないからな。戦略的重要性は薄いなあの地は。」

Y元帥「補給線の維持に拠点維持。毎年少なくない金が掛かる。」

I元帥「幌筵などカムチャッカの方が北海道本島より近い事も考えると死に金だよ。」マッタク

K元帥「対露助と言う事なら戦略的な意味もあろうが人外相手ではな。」ヤレヤレ

I元帥「金食い虫も良いとこだ。無駄に戦力を遊ばせる事になるがロシアの手前な。実に困ったもんだよ。」

Y元帥「でだ、司令長官よ。君はどうみるね?」
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/27(土) 23:13:08.49 ID:qE+EAaJ40

海軍の最高権力者である三人の元帥の話に耳を傾けているところに話を振られ

ややもあって口を開き自身の意見を述べ始める。


長官「そうですね。北海道の本島まで戦線の後退の後、防衛線の再構築が最善かと。」

I元帥「幌筵、単冠湾泊地は捨てるか。」

Y元帥「捨てる選択を逡巡せずに進言してくる辺りうちの参謀と比べてやはりなと言うべきかね。」

長官「幌筵の戦略的価値は現状皆無、

   単冠湾については太平洋側とは言え現状冬季の利用が困難な泊地に利用価値は高くありません。」

長官「先ほどのK元帥の話にもありましたが対ロシアという事であれば人員等を割くに値するでしょうが

   深海棲艦が海上封鎖を行っている現状ではわざわざ島嶼防衛に人員を裂くのは限られたリソースの無駄と考えられます。」

K元帥「深海連中が島を攻略したところで奪還作戦をやれる兵力を持っているのは我々くらいなものだからな。」

I元帥「露助の連中も一度こちらに返した以上深海の連中に渡したからと言って領有権に文句も言えないだろう。」

Y元帥「とはいえな。」

長官「はっ。」

Y元帥「始めにも言ったが国民がそれを許してくれんのだよ。」

Y元帥「大衆意見という奴は利用しやすいが制御がし難くてね。」

Y元帥「北方四島の返還は我が国の悲願だった部分もある。

    それを相手が深海棲艦という得体の知れん相手に再度渡す。

    なんて事になったらどうなると思う?」

I元帥「幌筵はともかく択捉の単冠湾まで落ちると今の政権が持たん。」

I元帥「今の政権が倒れると中共どもを抑えるだけの手腕を持った後釜が居らんのだよ。」

K元帥「我々作戦畑の人間からしてみればさっさと渡して出血は少なくしておきたいものなんだがね。」

Y元帥「Kの言う事も最もだが時に最善手が最良手とは限らんよ。

    毒と分かっていながら食らわないといけない場合もある。」
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/27(土) 23:14:11.64 ID:qE+EAaJ40

I元帥「たればこそ、単冠湾は落される訳には行かんのだよ。」

I元帥「幌筵を生贄にすることになったとしてもだ。」

長官「ですが、あそこは。」

Y元帥「必要なものは用意しようじゃないか。」

Y元帥「兵站部の連中の尻を叩けと言うなら幾らでも叩こう。」

Y元帥「先の作戦で風通しを良くしたおかげもあってだいぶ動かしやすくなった。」

I元帥「確かにな。」

I元帥「ただ、今の我々は限界まで減量したボクサーみたいなものだ。」

I元帥「無駄を削ぎ落とし必殺の一撃を放つ。」

I元帥「その一撃は有効な場面で打たないと此方がカウンターを食らってしまう。

    無能な指揮官や事務職どもは一掃したがこれ以上は失えないのだよ。」

長官「はっ。」

K元帥「君も大将として長いから我々の置かれている現状は分かっているだろ。」

長官「はっ。」

K元帥「そして、私は知っているぞ。」

長官「はっ?」

K元帥「君が実践的な即応部隊を持っていることをな。
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/27(土) 23:15:18.90 ID:qE+EAaJ40

長官「・・・・・。」

K元帥「懲罰部隊的な扱いで集めた精鋭を君の子飼いの部下に指揮させているだろ。」

K元帥「それを出してくれ。」

長官「しかし、あれは。」

K元帥「二度は言わんよ。」

長官「了解しました・・・・。」

I元帥「では、会議もこれで。」

K元帥「あぁ、やらねばならぬことが多いからな。」

Y元帥「長官。必要な物があれば言うように。」

Y元帥「君の部下を動かすのに椅子が必要なら用意するぞ。」

Y元帥「作戦の立案に関してもそちらの裁量でやってくれてかまわない。」

I元帥「単冠湾が守れれば幌筵はくれてやっていい。」

I元帥「千日手に持ち込めれば十分だ。」

I元帥「頼んだよ。」



三元帥はそういい会議室を去っていった。

後には元帥達首脳部の、無能は要らないと暗に言った言葉に青ざめた参謀達と困ったなといった顔をした長官が残された。
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/27(土) 23:16:18.91 ID:qE+EAaJ40


長官「地位や物で動く奴ならどんなに楽なことか。」

長官「実に面倒な事になった。」



長官は一人ごちる。

子飼いの部下とはいったものの猟犬ではなく狼。

その首に首輪と手綱をつけることは難しい。

さらに首輪と手綱をつければ間違いなく動きが鈍くなる。



長官「獲物を良く狩る狂犬なれば繋いで忠犬にした結果獲物を獲らなくなるよりかはましか。」



どうしたものかと切れる手札の少なさを嘆かずにはいられない長官だった。
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/27(土) 23:17:09.18 ID:qE+EAaJ40

千島列島  幌筵島


リ級「敵の施設は破壊完了です。」

リ級「上陸姫様が施設設営を開始しています。」

水姫「幌筵はあっさりと落ちたわね。」

リ級「設営後は上陸姫様は撤収されるそうです。」

水姫「集積地に引き継ぐのでしょ?妥当だわ。」

水姫「それぞれがそれぞれの仕事をきちんとこなす。理想的じゃない。」

水姫「名は体を表すではないけれど上陸作戦が主任務ですもの。」

水姫「それで設営にどれくらい掛かるのかしら?」

リ級「拠点としての要塞化に2日程、とりあえずの使用で有れば後1時間ほどとの連絡です。」

水姫「物資の揚陸は時間が掛かるものね。それに破壊するより作るほうが大変だし。」

水姫「仕方の無い事ね。ただ、もう少し早くなるといいのだけど。」

リ級「天候が気になりますか?」

水姫「えぇそうね。単冠湾の連中を逃がさず沈めるには天候は悪いままのほうがいいもの。」

水姫「普通なら天候は良い方がいいのでしょうけれど私達は逆よ。」

水姫「・・・・・、私の部隊全員に通信を繋いでもらえるかしら?」

リ級「了解いたしました。」

259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/27(土) 23:18:57.23 ID:qE+EAaJ40

ブッ ブゥウゥン ザリザリザリ



リ級「部隊の全深海棲艦、通信のチャンネルが繋がりました。」



ブゥゥゥウン



水姫「勇敢なりし我が同胞諸君!貴官らの働きにより幌筵を陥落せしめることが出来た!」

水姫「諸君らの働きは全深海棲艦同胞に勇気を齎した!」

水姫「我が同胞、北の精鋭諸君!我等の悲願達成の時は近い!」

水姫「先だっての侵攻作戦時に我等は実に多くの血を流した。」

水姫「それは実に壮絶な戦いの末の物であった。」

水姫「敵は先の作戦で我等を退けた事により再度の侵攻作戦まで時があると油断した。」

水姫「そう、愚かしくも油断をしてしまったのだ。その結果がどうだ!?」

水姫「今!我等は敵の拠点幌筵を落し更に単冠湾へと手を伸ばそうとしている!」

水姫「諸君らが流した血は決して無駄では無かったのだ!」

水姫「我等が敵の拠点を落し、北の海から艦娘共を追い出すのだ!」

水姫「我等が北の海を掌中に納め北の海に我等有りと大いに喧伝してやろうではないか!」

水姫「我等が深海棲艦の未来を示し道を照らすのだ!」

水姫「我等深海棲艦に栄光あれ!」

ブツン

リ級「お見事な演説でした。」

水姫「これから敵の泊地を更に攻めないといけないのですもの。」

水姫「演説一つで士気が上がるのなら安いものよ。」



北方水姫の演説が終わった後、何処かから誰とも無く鬨の声が上がる。

幌筵を落した凱歌を歌う深海棲艦達の士気は高く。

その鬨の声は吹雪の音に掻き消される事無く海域に響き渡るのであった。
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/27(土) 23:25:31.30 ID:qE+EAaJ40
本日分は以上で終了です

幌筵、ぱらむしる、初見で読めた方いらっしゃいますでしょうか?私は読めませんでした

次回でたぶんグラ編は終われます、いや終わらせます……

1話が長い事が多くもう少しうまく纏めれたらなぁと思っています、申し訳ありません

水姫の演説は共産っぽくなるようしてみました、同胞とか栄光とか入れて多用したらそれっぽくなりますね

いただいている感想レスは参考にさせていただいたりもしています、いつもありがとうございます

では、次回もお時間よろしければおよみいただきますようお願いいたします
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/28(日) 01:06:02.12 ID:TAWkL2zA0
そう言えばゴーヤ達は提督には最初から心許していたんか?
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/28(日) 01:43:53.55 ID:6ZXjRU3A0
おつおつ
覇権を握る鍵をちらつかせればどこだって強欲になるのが当然とは言え、日本だけはボケてるんだろうな…と納得できるのが笑える所w
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/29(月) 04:41:40.80 ID:Ap+ND2CMo
乙です
毎回面白いっす
続き期待っす
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/04(日) 23:06:00.84 ID:stFP+DZS0
1です、最近寒いですが皆様体調にお気をつけ下さい

最初にお詫びをいたします、今回でグラーフ編終わってません、本当にすみません

色々話が長くなってしまっています、次回には戦闘パートでけりを………

ぐだぐだ進行で本当にすみません
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/04(日) 23:07:37.85 ID:stFP+DZS0

第十一話 ラッパが鳴って壁が崩れた 後編
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/04(日) 23:08:41.14 ID:stFP+DZS0

執務室


不知火「どうぞ。」

提督「ん。」

提督「上手くなったな。」

不知火「ありがとうございます。」

提督(コーヒー豆の件は不問にしておくか。不知火が淹れる技術が向上したので有れば安い買い物と言えなくは無い。)

不知火「司令。」

提督「ん?」

不知火「失礼な事を考えていませんか?」

提督「いや。」



司令部へ持参する書類の作成に二人が夜の時間を過ごしている時だった。

ジリリリリン。

司令部直通の古めかしい黒電話。それも、滅多に鳴らない電話である。

にも拘らず不知火が特に気合を入れて磨いているため艶々の電話が鳴る。

すぅっと一息、息を吸い。

見る者がいれば嫌々といった態度で。提督は電話に出た。
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/04(日) 23:09:53.90 ID:stFP+DZS0

ガチャリ。


提督「仕事ですか。」

長官「あぁ。」

提督「北が落ちましたか。」

長官「潜水艦娘から聞いたかね。」

提督「えぇ、大まかに敵の艦船の量を。」

長官「君からドイツとの情報員派遣交流に関する報告書をお持ちしますと連絡を受けていたからね、

   言わずとも分かっては居るだろうと思っていたよ。」

提督「理解しているのと受けるかどうかは別ですよ。」

長官「距離のことかね。」

提督「うちから出すにはちと遠いかと?」

長官「君らしくないな。」

提督「………。はぁ、航空輸送の手配まで済んでいらっしゃると言う事ですか。」

長官「分かっているなら無駄な話は省きたいな。」
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/04(日) 23:11:37.20 ID:stFP+DZS0

提督「いえいえ。楊修の様にはなりたくありませんので。

   しっかりと説明と作戦の発令を待ちませんと。」

長官「分かった。文書としての発令自体は明後日になるが君を指揮官として北の防衛戦を任せたい。」

提督「………、奪還ではなく防衛なんですね。」

長官「まさしく鶏肋だよ。」

提督「長官より上が関わっていらっしゃる。」

長官「あぁ、それもお三方、皆が君の指揮を御所望だよ。」

提督「ですと捨てるに惜しいというより捨てられない。」

長官「政治が絡むからな。」

提督「これは武者震いしますね。」

長官「はっはっは、戯言を。君がそんな玉かね?」

長官「謙遜を知っていることは君の美徳だが今は冗談にしか聞こえんよ。」

提督「どれくらいお出しいただけるんですか?」

長官「先の報告書の最後に付けてあった『 意見書 』。

   あれを参考に出撃参加の者には30万を最低限で保障しよう。守りの為の留守には10万。」

長官「後はそこの基準に沿った報酬の支払い。

   他も燃料に弾薬、修理に掛かる費用も持とうじゃないか。」

提督「至れり尽くせりですね。」

長官「こちらの手の内は見せた。そして切れるカードもこれだけだ。後は何も出んよ。」

269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/04(日) 23:12:38.50 ID:stFP+DZS0

提督「いえいえ、十分過ぎる援護射撃。ありがたく。」

提督「あぁ、申し訳ないのですがいくつかお骨折りいただいても宜しいですか?」

長官「君が要求をするかね。」



言外には珍しいという気持ちと無欲のように見えて欲が有るのだなと言う感想。



提督「早急に御用意いただきたいのですが何せ戦争は艦娘を含め様々な犠牲者が出ます。」

長官「うむ。」

提督「その為、既に落された泊地から撤退してきた部隊を再編するにあたって所属の問題が有ると思われます。」

長官「成る程。君は指揮系統を統一する為の権限を望むと。」

提督「はい。指揮系統が一本化されていない部隊を指揮するのは御免蒙りたいですね。」

長官「いいだろう。用意しよう。」
270 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/04(日) 23:14:16.18 ID:stFP+DZS0

提督「それからもう一つ。」

長官「ふむ。続けたまえ。」

提督「落された泊地を守る為に散った者もいるかと思います。」

提督「私が現地入りした際にはそれらを調べ直ぐにそちらへ御報告したいと思います。

   ですので特進と恩給の手配を願いたく思います。」

長官「成る程。君は優しいな。」

提督「いえ。私ほどの悪党は自分でも知りませんよ。」

長官「そうかね。ふむ。そうか。」

長官「故人になってしまったが私の古い友人は君の事を高く買っていたことを改めて思い出したよ。」

提督「教授にはお世話になりました。

   ですが落ちこぼれとして弟子の末席を汚していたに過ぎません。」

長官「彼は勝つ為の手段を選ばないという点において割り切り方がいいと言っていた。」

長官「そういう意味で正しく戦争を理解しているとも言っていたな。」

長官「正式な発令書は輸送時の飛行機の中で渡すことになるかと思うが

   発令自体はこの電話でされたと受け取ってくれ。」
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/04(日) 23:15:23.74 ID:stFP+DZS0

長官「他にはもう無いな。」

提督「では、最後に一つ………。」



そう言い提督は長官に話をする。



長官「ふむ。管轄が違うがまぁ、何とかなるだろう。ふん。宜しい。」

長官「手配をしておこう。では、頼んだよ。」

提督「了解いたしました。直ぐに行動へ移ります。」

長官「あぁ。機材の都合が付くまで1日かかる、明後日、XXX飛行場に行ってくれ。」

長官「時間の指定も改めて連絡しよう。ではな。」

提督「はっ。」



こうして深夜の電話で88鎮守府の人員が北の魔女達を迎え撃つ事が正式に決まった。



提督「不知火。まだまだ残業だ。すまんが手伝ってもらっていいか?」

不知火「朝まで二人でと言う事ですか。」ヌイ?

提督「ん。」

不知火「下着を替えてきます。」ヌイ!

提督「ん?」



情報収集は翌朝近くまで続いた。
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/04(日) 23:17:39.48 ID:stFP+DZS0

翌日 早朝


召集の全体放送が流れ鎮守府に所属しているゴロツキ共全員が押し合い圧し合い会議室になんとか納まる。



提督「皆集まったな。デカイ山だ。」

摩耶「儲け話は嬉しいねぇ。」

川内「他人の不幸は黄金の蜜味。」

時雨「エバラかな?」

雪風「焼肉のタレみたいな表現ですね。」

雪風の返しに一同が沸く。

長門「で、幌筵か?」フフン

提督「何で知ってるんだ?」アレ?

長門「明石がいい儲け話が有るって皆に10ドルで情報を売って廻っていたからな。」

川内「北で敵の大規模進軍が起きていて幌筵が落ちただろうからその救援に動くかもしれないってね。」



まったくと言う表情で顔を覆う提督。
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/04(日) 23:18:58.35 ID:stFP+DZS0

提督「明石の前じゃ迂闊に話も出来んな。」

提督「だが手間は省けた。そういう訳だ、留守当番の奴以外は全員遠征だ。」

川内「で、幾らなの?」

提督「出る奴は30万保障だ。」

川内「おっおぉ!!」

摩耶「こいつは久しぶりにでけぇな。」

提督「更に燃料、弾薬全部持ち。」

雪風「お代わりもいいですか!?」

提督「毒ガス訓練なんかしないから遠慮なくしとけよ。」



他人の財布で暴れられるとだけあって沸き立つ一同。



「Fucking Shit! どうして来月まで待てないんだ深海どもめぇ……。」



そして、不幸にも?留守の当番だった者達からは悔しがる声多数。

274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/04(日) 23:20:22.33 ID:stFP+DZS0

瑞鶴「私は寒いところ苦手だからパース。」



しかし、儲け話にまったく興味を示さない者も居た。



川内「やったぁ!大儲け確定だぁ!」



空母組みの稼ぎ頭それが出ない。

それだけで撃沈報酬が増えることは確定的なので川内が喜びの声を上げる……。

が。



提督「青目だ。」



会議室の長卓にだらし無く足を上げていた瑞鶴の目つきが変わる。



瑞鶴「間違いないの?」

提督「情報収集してる段階だが何隻か見たんだそうだ。」

提督「現地は今時期吹雪が強い。

   それを考えれば艦載機を扱うのに長けてる奴が出張っていてもおかしくないだろ?」

瑞鶴「始めに言え禿げ。いいわ。あんたの指示に従ってやるわ。」

瑞鶴「でも、青目の連中は私の獲物よ。好きにやらせて貰うわよ?」

提督「あぁ、存分にやれ。」

275 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/04(日) 23:21:56.44 ID:stFP+DZS0

瑞鶴「初月。」

初月「あぁ、君の背中は僕が守ろう。」

提督「そういう訳だから皆、ヲ級フラッグシップには気をつけろよ。」

提督「間違えて口説きに行くと旦那の艦攻からバイブ(魚雷)を尻に食らう羽目になるからな。」

川内「やだ、提督、表現が卑猥!」イヤン!

摩耶「アナルにバイブかよ。」エロオヤジ!

瑞鶴「他の撃沈報酬は欲しい奴が持ってけばいいわ。ただ青目だけは私の獲物よ。」

時雨「心得たよ。」

提督「現在確認されている敵の総旗艦は北方水姫だ。心しておいてくれ。」

提督「現地までの移動だが北海道まで輸送機で行きその後根室から単冠湾まで航行だ。」

長門「ファーストクラスかな?」

提督「エコノミーだ。」



輸送機が人員輸送用ではなく貨物輸送用というやり取りにやれやれとかケチだのといった反応が返ってくる。



提督「遠足のしおりは無いが各自必要なものはきちんと準備しておけよ。」

提督「出発は明日だ。」

提督「必要な買い物がある奴は今日中にしておけ。」

提督「以上。解散!」
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/04(日) 23:23:09.62 ID:stFP+DZS0

明石の工廠



グラ「私の口座に入っている金を全部渡そうじゃないか。」

グラ「こいつを頼む。」

明石「いや、これは……。」

グラ「金さえ出せばクレムリンだって引っ張ってくるんだろ?」

明石「いえ、そのですね?」

グラ「足りないと言うなら今度の出撃で貰える稼ぎも全て渡そうじゃないか。」

明石「………、グラーフさん。何がそこまであなたを駆り立てるっていうんです?」

グラ「私のな。」

グラ「私の艦娘としての。」

グラ「Graf Zeppelin の魂が囁くんだ。」

グラ「奴を倒せとな。」

明石「最期はバルト海でソ連の標的艦でしたっけ。」

グラ「たまには血と魂が囁くままに戦うもよしであろうよ。」
277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/04(日) 23:24:20.24 ID:stFP+DZS0

明石「剣呑ですね。」

明石「とはいえ。よござんす。

   納得いく理由があるならこの明石。腕を奮いましょう。」

グラ「頼んだ。」

明石「秋津洲さん!店番おねがいしますよ!今日は稼ぎ時ですからね!」

明石「私は今からとっておきのヤバイ奴らを用意しなきゃいけなくなりましたんで宜しくお願いしますよ!」

秋津洲「まかされたかも!」



出撃に向け必要な物を買いに集まってくる艦娘達の相手を秋津洲に任せ

明石は工廠の奥へ引っ込んでいったのだった。
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/04(日) 23:26:04.28 ID:stFP+DZS0

執務室



提督「第一種軍装の全着用品を引っ張り出すのは久しぶりだな。」

不知火「似合っています。」



不知火から白色の皮手袋を受け取り手に嵌めその感触を確かめる。



提督「あぁ、ありがとう。手入れが十分行き届いていたみたいだな。」

提督「染み一つ無く綺麗なものだ。」



肩から参謀飾緒を下げ軍帽を被り確認する。



提督「不知火。北海道土産は何がいい?」

不知火「観光気分ですか?」

提督「そんな所だ。」



提督が久しぶりに出す着用品の確認をしている所に長門がやって来る。



長門「提督がきっちりとした服装をするのは珍しい。」

提督「司令部に挨拶に行くとき意外は堅苦しい服装していたところで意味がないのでな。」
279 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/04(日) 23:27:17.24 ID:stFP+DZS0

長門「成る程、一休禅師の真似事でもする気か。」

提督「人は見た目が九割だからな。」

提督「この格好で突っかかってくるアホは、まぁ、そういう事だ。」

長門「ぶれないな。」

提督「なに、権限は貰ってる。後は解釈の仕方の問題だ。」

提督「状況に応じて拡大解釈もするのが士官の仕事だ。」

提督「掃除機で部屋を円く掃除すると隅っこに埃が残るだろ?」

長門「あぁ、そうだな。」

提督「そういう事だ。」



提督もまた出撃に備えていた。

提督が発令の電話を受けて2日後

提督達は単冠湾のある択捉島へ現地入りしていた。
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/04(日) 23:29:42.83 ID:stFP+DZS0

単冠湾泊地 鎮守府建屋内執務室


A大佐「君が中央から派遣された者かね?」

提督「えぇ、これが人事発令書です。そしてこちらが作戦命令書です。」

B中佐「我々がここの指揮を執る。大佐が連れてきた部隊は我々が預かろう。」

提督「こちらの泊地はC少佐が指揮を執っていると伺っていたのですが

   お二人はどちらの所属でしたのでしょうか?」



同じ大佐の階級でも所謂先任という奴が軍隊という組織では幅を利かせるものだったりする事がままある。

自分より年若そうなといっても壮年というより中年といった提督を、じろりと見やるA大佐。



A大佐「幌筵の守備隊として守っていたが?」

提督(成る程、敗残の将か。資料と間違いないようだな。とすれば中佐は太鼓持ちか。)

提督(作戦命令書に目を通すことすらしないか。やれやれ。)

提督「これは失礼しました。私が連れてきた部下は外におりますれば。」

提督「御足労をお掛けして申し訳ありませんが、挨拶させますので外へ宜しいでしょうか?」



提督が案内するは鎮守府外埠頭。
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/04(日) 23:32:31.27 ID:stFP+DZS0

A大佐「いったい何処に……。」



げしと大佐の背中を一蹴り。



B中佐「貴様!な……。」



二の句を告げさせず同じく中佐も一蹴り。

どぶんと豪快な水音が二つした後に長門が近づいてくる。



長門「提督。幌筵から逃げてきた艦娘達を食堂へ集合させたぞ。」

提督「C少佐は?」

長門「あぁ、捕まえておいた。」

長門「で、提督は?」



胡乱な者を見る目つきで見る長門。その目は始末をしたのかと言いたげである。



提督「言っただろ?権限は貰っていると。」

提督「指揮系統の簡略化。無駄な嘴を減らしただけだ。権限の範囲内だよ。」

長門「………。」

提督「言いたい事は分かるがな。

   これから一致団結して事に当たらないといけないのに指揮官を減らしてどうすると言いたいんだろ?」

提督「俺が借りられるだけの虎の威を突っ張ってんのにそれが分からん奴は後々癌にしかならん。」

長門「そうか。」

提督「昔から言うだろ小人閑居、不善を為すってな。」



袖を通さず肩口に掛けたトレンチから煙草を取り出し火をつける提督。



提督「これ一本を吸いきるまでに浮かんでこなければ名誉の戦死だ。」

提督「司令部に特進と恩給の申請をしてやらんとな。」

長門「そうか。遺族が居ればありがたくて涙が出るだろうな。」

提督「居なけりゃ恩給は国庫行きだ。居ないで貰いたいもんだよ。」



じじっとフィルター付近まで煙草が燃えきるまでしばし。



提督「万に一つも生きちゃ居まい。さてと、食堂へ行くか。」

長門「確認しなくていいのか?」

提督「生きて戻ってくるガッツがあるなら愚痴の一つくらいは聞いてやるさ。」

提督「聞くだけは只だからな。今は生きている方が大事だ。」

長門「違いない。」

282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/04(日) 23:33:50.89 ID:stFP+DZS0

食堂

食堂には幌筵から逃げてきた艦娘達が集められていた。

単冠湾の施設でもって負傷した者達は傷を治している。

その順番は提督の指示で軽症者、つまりドックの占拠時間が短いものからの入渠が優先されている。

食堂には修理を終えた者、まだ修理を待っている者達、その双方が集まっている。

食堂前方に現れた提督に艦娘達の視線が集まる。



提督「まず、海軍を代表して君達に謝罪をさせてもらいたい。」



頭を下げる提督。



提督「君達が幌筵から撤退するに当たって死守を命じ、

   のうのうと自分達は生き延びた愚か者二名は不幸な事故によって戦死した。」



広がる動揺。ざわざわと騒ぎ出す室内。

ここで提督の目から涙が一筋、頬を伝う。



提督「君達の様な熟達した艦娘を失う事の愚かさを上層部は何も考えていない。」



提督は単冠湾に着いた後、撤退してきていた彼女達一人ひとりに労いの言葉を掛けて回っていた。
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/04(日) 23:35:24.82 ID:stFP+DZS0

提督「私は君達が粗末に扱われた事に実に強い怒りを感じている!」



怒りのままに提督が食堂の長卓を叩くとざわめく艦娘達が水を打ったように静まり返る。

そして一斉に提督の方を向きその次に紡がれるであろう言葉に耳を傾ける。



提督「私は私の権限において君達に約束しよう。

   今後、君達がこの北の地で過ごすにあたって十分な物資の支援が受けられることを。」

提督「そして、これは君達の散っていった仲間の命を金に変える様で心苦しいが

   死んだ艦娘の子の遺族へは手厚い保障を。

   またここで生きている君達へもきちんとした保障が払われる事を上へ働きかけよう。」

提督「そして、実に伏してお願いしたい。

   幌筵を落した敵は今も此方へ向け進撃してきている。

   今、この地で敵を押し留めなければ北海道、本州と敵は侵攻してゆくだろう。」

提督「身勝手なお願いかもしれない。しかし、ここに今、戦える戦力として居るのは君達しかいないのだ。」

提督「すまないが、力を貸して貰えないだろうか。」



食堂に集まった艦娘達へ向け演説を行った後、頭を下げ力を貸してくれと頼む提督。

しばしの沈黙の後、代表格の艦娘がゆっくりと立ち上がり口を開く。
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/04(日) 23:36:15.91 ID:stFP+DZS0

龍驤「なんや本営から応援に来たとか聞いとったから

   どんな偉ぶった奴が来るんかと思うとったけど随分腰の低い司令やなぁ。」

龍驤「幌筵から逃げてきたうちらに文句を言うでなく労いを一人一人に掛けて回っとったし。」

龍驤「さっきまでうだうだ言ってたうちんとこの司令に爪の垢でも飲ませたいくらいやわ。」

龍驤「あんたん所の艦娘は大事にして貰っとるんやろなぁ。」

提督「………。」

龍驤「うちらに死守せえ言うたアホんだらが生きとったなら出撃する振りして逃げようかと思ってたんやけどなぁ。」

龍驤「あんたの言うように逃げたら本土にまで侵攻してくるわなぁ。」



そして、また沈黙。
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/04(日) 23:37:41.89 ID:stFP+DZS0

龍驤「しゃぁないわ。あんたに力貸したるわ。」

提督「すまない。感謝する。」

龍驤「感謝は敵を倒してからにしときぃ。しっかりとした指示。頼むで。」



ぱんっと提督の背中を叩く龍驤。



提督「では、敵からこの単冠湾を守る為C少佐との話し合いがあるので

   今暫く待っていて貰えるだろうか?」

龍驤「ええで、行ってき、待ってるで。うちらん命(タマ)あんたに預けるわ。」

提督「ありがとう。」



提督から自然と差し出された手に龍驤は握り返す。



龍驤(なんや分厚い手やな。苦労を知ってる手や。叩き上げなんやなぁ。)



しげしげと眺め感想をしばし。



提督「そろそろ手を離して貰っても?」

龍驤「ん。あぁすまんな/// 待ってるで!」

286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/04(日) 23:39:21.45 ID:stFP+DZS0


執務室前廊下


川内「持ってきた寒冷地迷彩服、全員に配布終わったよ。」

提督「幌筵の娘達にもか?」

川内「うん!」

提督「ありがとう、助かる。」

川内「にしても食堂の演説聞いてたけど。提督はアカデミー賞でも狙う気なのかな?」ニシシ



その笑顔は悪戯っぽく。



提督「お前にばれるようじゃオスカーは無理だな。」

川内「役者だねぇ。」

提督「役者にもなるさ。お前らと違って、涙も下げる頭も只だ。」

提督「東郷元帥じゃねぇが皇国の興廃この一戦にあり。だ。」

提督「負けると色々国が持たねぇ。つまり後がないんだ。」

川内「戦力的な問題?後、それ秋山真之だよ?」

提督「誰の発言かはこの際いいだろ。後、戦力より政治的な問題だ、上が絡んでるならな。」

提督「とりあえず今は説明する時間が惜しい。うちのごろつき共は?」

川内「舌なめずりして待ってるよ。」
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/04(日) 23:41:11.15 ID:stFP+DZS0

提督「よし。後は少佐に英雄として起って貰うだけだな。」

川内「悪党だねぇ。でも、楽しそうだね、提督。」

川内「私ね、楽しそうにしてる提督、これで結構好きだよ。」ニュフフ

提督「ふん。惚れたか?」

川内「あっ、それは無いかな。禿げはちょっとね。」

提督「つれない奴だなぁ。まぁ、いい。動かせるうちの総力だ。敵は殲滅だよ。」

提督「連中にこの地で春の陽を拝ませる訳にはいかんのでな。」

川内「春はいいよね。太陽の日差しが暖かくてさ。」

提督「そうだな。太陽の陽は等しく暖かいが連中に向いてもらっちゃ困る。」

提督「太陽の神様、イアリロだったか?」

川内「なにそれ?」

提督「北の魔女だったか?北方水姫の別名。スラブの方の神様でな男性神だ。」

提督「男の神ならいい女が揃ってるこっちの味方をしてくれるだろうさ。」

提督「なんせ幌筵を生贄にしてるんだ。見返りは貰わんと。」

川内「悪党っぽい台詞だね―――。」

提督「さて、時間だ。敵の艦隊には袖幕へ御退場願おうか。」



そう言い提督は執務室の中へ入って行った。
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/04(日) 23:48:36.34 ID:stFP+DZS0
本日分の更新は以上でございます、話があんまり進まない

提督の人となりはだいたい分かっていただけたかなぁと

自分で書いていてなんですがおっさんが提督しているSSって滅多に見ないですね、まぁ、需要が無いですもんね………

自分で言ってて凹んでしまった……、はい、お読みいただいている奇特なあなたに感謝です

新谷先生の漫画は台詞回しも作品の肝だったりするので真似するのが難しいです、毎度の苦労

次回こそは終われると思います、後、グラ編の後は予定は未定です

こいつの過去話とかどんななの?とか有りましたらレスいただきますとネタとして使わせていただくかもです!

ではでは、ここまでお読みいただき本当にありがとうございました!
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/05(月) 01:47:58.67 ID:Tz9q5OzA0
おつおつ
難しい部分を活かしきる技量とか表現力が大変だからなあ…
まあ好き放題暴れまわるギャグ路線な提督やら、ガチで世界の存亡を賭けて戦う世界線もあったりで様々かとw
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/05(月) 20:00:16.41 ID:ltFct9JA0
明石とぬいぬいとかもかもが見たいな
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