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【艦これ】 外地鎮守府管理番号 88
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112 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/04(月) 01:22:03.55 ID:E98VE/OA0
おつおつ
いい女だなあw
113 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/04(月) 17:46:06.42 ID:04W75f2RO
>>111
そんな貴方に私の主砲で接射ならぬ顔射をしてあげよう
114 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/06(水) 22:59:33.69 ID:JXL6OIVo0
88だけじゃないな。
プリズンレディとかも紛れてる。
読み返しとくか・・・
115 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/23(土) 22:40:47.07 ID:UmeXCf690
だいぶ間が空きましたことをお詫びいたします
7割くらい書いててちゃぶ台返し、はい、アホです
>114 新谷先生の割と最近?かな?
ご指摘の様に『 RAISE〜レイズ 』が結構含まれてます
おっさんがおっさんしてていい漫画です、打ち切りっぽい最後ながらきれいにまとまってました
では、更新させていただきます、お時間よろしければお付き合いください
116 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/23(土) 22:41:59.40 ID:UmeXCf690
第六話 英雄の条件 前編
117 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/23(土) 22:43:32.38 ID:UmeXCf690
横須賀 海軍艦隊司令部
「あぁ、良く来たね。まぁ、座ってくれ。」
提督「長官からの呼び出しとあれば応じない訳にもいきませんので。」
長官「大佐。どうだね。また司令部に戻って来ないか?」
提督「長官。自分は司令部を追い出された身です。椅子磨きの話しでしたら他の方が宜しいかと。」
提督「便宜上、提督を名乗っていますが実質は88鎮守府の守衛みたいなもんです。」
長官「君は変わらんな。」
長官「例の時だって私に頼めばどうとでも出来ていた物を。」
提督「自分のした事に責任を持つことくらいは社会に出たての洟垂れでもやる事ですよ。」
提督「長官のお手を煩わせる事ではありません。」
提督「それより、本日呼び出した本題に移っていただきたいのですが。」
長官「あぁ、そうだな。年を取るとどうにもな。すまない。」
長官「今度大規模掃討作戦が行われる。そこに君の所から護衛を出してもらいたいんだ。」
提督「護衛・・・・、ですか。」
長官「あぁ。護衛だ。」
重々しく提督の言葉を繰り返す長官。
やや間が空き、提督が質問を切り出す。
118 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/23(土) 22:45:02.33 ID:UmeXCf690
提督「英雄でも作るおつもりですか?」
長官「君は察しが良くて助かるよ。」
長官「長きに渡る深海棲艦との戦いで国家は疲弊している。さらに戦況は一進一退。」
長官「明るいニュースが欲しくなるというものでね。」
提督「高度な政治判断という奴ですか。」
長官「戦果を水増しして大戦果などどやるよりはましだろう?」
提督「それはまぁ、そうですね。」
長官「今度の掃討作戦に出撃予定の娘達の中に大規模作戦参加20回になる娘がいるんだ。」
提督「ほう。叙勲ものですな。」
長官「あぁ。大規模作戦に複数回参加ともなると多くの艦娘が沈むか復帰不能な怪我による退役がざらだ。」
長官「軍に入って5回も参加し生還できればベテランと呼ばれる有様。」
長官「内規で20回参加して生還すれば多額の恩給を手にし
除隊する権利を与えるとされるが今まで手にした者などおらんしな。」
提督「画餅ですな。」
長官「だけに久しぶりの明るいニュースという奴だ。」
長官「政治屋のつらい所は国民に夢を見させてやらないといけないという奴でね。」
長官「国民に夢を見させる事が出来ない政治は先が無いからな。」
提督「 『 夢 』ですか・・・。」
長官「あぁ。夢だよ。」
提督「・・・・、政治屋が絡む話しですか。」
長官「我が国は文民統制を謳っているからね。」
長官「今の政権は良くやってくれてるよ。」
長官「英雄の誕生は首相閣下のお望みだよ。」
119 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/23(土) 22:46:12.42 ID:UmeXCf690
提督「この作戦の立案は。」
長官「お飾り元帥殿の腰巾着連中だ。だけに参加して欲しくはなかったのだがね。」
長官「軍令部の無能な働き者達の立案だ。」
提督「長官の心中お察しします・・・・。」
長官「君には苦労をかける。」
ガチャッ。
大淀「司令長官。御指示いただいていました分の資料を持ってまいりました。」
大淀「と。これは大佐。お久しぶりです。」
提督「今はただの牢番ですよ。敬語を使っていただかなくても結構ですよ。」
大淀「そういう訳には・・・。」
やれやれと肩をすくめる提督。
大淀「こちらが護衛対象の資料になります。」
提督「拝見させていただきます。」
パラパラと資料を捲る提督。
120 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/23(土) 22:47:10.23 ID:UmeXCf690
提督「・・・・・、失礼ですが長官。これは?」
長官「君に隠せるものではないと思っていたがやはり分かるかね。」
長官「所属鎮守府が極小規模ならではのイタズラといえなくないかね?」
提督「実に幸運を持っていると言えますが・・・。」
長官「実力がな。」
長官「なればこそ君の所の精鋭に護衛を頼みたいのだよ。」
提督「仕事、ですか。」
長官「あぁ、一応報酬として100万。服役囚の娘には10年分の刑期短縮を用意している。」
提督「あー・・・、支払いは円ではなくドルで願いたいですね。」
提督「後、刑期短縮の書類については海軍大臣の署名入りでお願いしたいです。」
長官「そうだったな。君の鎮守府のある所は円の威光が弱かったな。」
提督「紙くずとまではいきませんがやはり通用するのはドルですね。」
長官「国力の差は如何ともし難いな。」
提督「地力が違いますから。」
長官「全てにおいて乏しい我が国が体裁を保てるのも御威光のお陰だからな。」
皮肉とも自嘲ともとれる言葉を紡ぐ長官。
長官「では頼む。」
提督「了解しました。」
提督「では、私は鎮守府へ戻ります。」
バタム。
艦隊司令長官室の重厚なドアを閉め提督は帰っていった。
121 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/23(土) 22:47:53.16 ID:UmeXCf690
大淀「随分と安上がりですね。」
長官「嫌味を言ってくれる。」
大淀「大佐に随分な無茶振りと思いますが。」
長官「大佐は仕事といっていただろ?」
大淀「ええ。」
長官「任務と言わずに仕事と言い切る。真面目な奴だよ。」
長官「彼がもう少し出世や名声に興味を持っていたならあの地には居なかっただろうに。」
長官「つくづく惜しい男だよ。」
122 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/23(土) 22:49:25.17 ID:UmeXCf690
88鎮守府執務室
長門「それで私に旗艦をやってくれと?」
提督「あぁ。旗艦経験、鎮守府内での人望、艦種、戦闘経験。」
提督「それらを考慮して任せられる人材は長門しかいないと思ってね。」
長門「まったく実に貧乏籤を引いてくれる。」
提督「敵を殺す事に長けた奴なら味方を生かすための心得にも長けているだろ?」
提督「私が長門に用意してやれるのは刑期の短縮だ。
後はそうだな、必要な物が有れば明石に言ってくれ。代金に関しては海軍が持とう。」
長門「ほう。そういう気前の良いことを言っていいのか?」
長門「私が関係ないものまで買い込むかも知れんぞ?」
提督 フン。
提督「お前がそういう事はしないと分かっているから自由にさせるんだ。」
提督「メンバーについては不知火に連絡をしておいてくれ。」
提督「頼んだぞ。長門。」
長門「提督の頼みとあればな。仕方ないか。」フン
提督「すまん。」
長門「いいさ。この作戦が終わったら付き合ってくれ。」
長門「いっぱい奢れ。」
手で酒を飲むしぐさをする長門。
提督「俺は弱いぞ?」
長門「いいさ、とにかく付き合え。酌くらいは出来るだろ?」
頭をかき。
提督「分かったよ。」
123 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/23(土) 22:50:17.00 ID:UmeXCf690
鎮守府会議室
時雨「それで僕等に用っていうのは?」
長門「これを見て貰えないだろうか?」
いつものメンバーに渡すのは提督から預かった資料。
長門「必要な物については海軍がその費用を負担してくれるそうだ。」
摩耶「えらくまぁ、幸運?と言っていいのかこれ?」
摩耶「ひよっこの引率はちょっとなぁ・・・。」
川内「私は降りるよ。割りに合わなさ過ぎる。」
川内「報酬だって1万じゃ命を賭けるには安すぎる。」
長門「時雨は?」
時雨「刑期短縮っていうのは魅力的だね。」
時雨「でも、僕の普段の稼ぎから考えればわざわざ危ない橋を渡る必要性なんてないかな。」
雪風「幾らなんでもここの相場を知らない人間が設定したとしか思えませんね。」
グラ「検討に値しない物だな。」
三者三様、十人十色、全員がそれぞれに色々と意見を述べる。
しかし、その結論は。
受けるに値しない仕事。
124 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/23(土) 22:51:23.36 ID:UmeXCf690
時雨「長門はどうしてこれを受けようと思ったんだい?」
長門「そうだな。提督から言われた『 英雄 』と言う言葉に思う所があったからかな。」
摩耶「『 英雄 』ねぇ。」
長門「あぁ、昔に私がなれなかったものさ。」
長門「いや、なることを拒否したが正しいかな。」
摩耶「へぇ、姐さんにそんな過去がねぇ。」
長門「フッ。つまらん話しさ。気心の知れた仲間達と、と思ったが、他をあたろう。」
そう言い長門が会議室を出て行こうとする。
川内「長門。」
長門「ん?どうした川内?」
川内「長門がこだわる理由が其処にはあるんだね?」
長門「あぁ、まぁな。」
川内「ちょっと、屈んで。」
長門「?」
長門「!?」
長門「せっせんだい!?」(裏声)
川内「ふふ。まぁ、この間の借りもあるし報酬で足りない分についてはこれで勘弁してあげる。」
川内「慌てふためく顔。可愛いよ。」フフ
川内「じゃ、明石に必要な物を注文に行って来る。」
125 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/23(土) 22:52:22.16 ID:UmeXCf690
摩耶「姐さんもそんな顔するんだねぇ。」
摩耶「顔を真っ赤にしちゃって。乙女だねぇ。」ハハ
摩耶「この仕事が終わったら一杯奢ってくれよ。」
摩耶「あたしはそれでいいさ。」
川内の後に摩耶が続く。
グラ「シュタインベルガーだ。」
長門「・・・・・ワインのか?」
グラ「トロッケン以外は認めん。」
長門「分かった。」
グラ「Sehr gut では、私も明石の所に必要装備を注文に行くとしよう。」
時雨「長門。」
時雨「差し支えのない範囲でいいけど話してもらえるかい?」
長門「そうだな。仕事が終わってからでもいいか?」
時雨「勿論だよ。引き換えに受けようじゃないか。」
長門「分かった。約束しよう。」
雪風「艦隊名は『 雪風さんと愉快な仲間達 』で頼みます。」
長門「あぁ。その名前で届けておこう。」
雪風「では雪風も買い物へ行って来ます。」
126 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/23(土) 22:54:48.52 ID:UmeXCf690
明石の工廠兼酒保
明石「毎度ありがとうございますぅ。」ホクホク
明石「なんでしたらもっと買って下さっていいんですよ?」ニコニコ
長門「他人の財布だからといって無茶をするような奴は非常識だと思うぞ。」
長門「提督に無茶は言えんさ。」
明石「にしても皆さん色々特殊な物を注文してますよ。」
明石「川内さんは焼き討ちでもするつもりですかね。」
長門「織田信長じゃあるまいに。」
明石「アーチーチーアーチー。」
長門「燃えてるんだ廊下?」
明石「まぁ、それは置いといて。取り扱いは何でもありなのが明石商店なんですけどね。」
グラ「私の注文も頼む。」
長門「伯爵は何を頼むつもりだ?」
グラ「艦載機に積む煙幕弾だ。」
長門「また随分特殊な物だな。明石、取り寄せ可能なのか?」
明石「もっちろん。お金さえいただければクレムリン宮殿だって引っ張ってきてみせますよ。」
長門「そいつは頼もしい。」
長門「間に合うかな?」
明石「えぇ、問題なく。」
長門「そうか。では、お願いする。」
明石「でも、本当にいいんですかね?結構な金額いってますけど。」
長門「あぁ、必要な物だ。全てな。」
明石「まっ、何にどう使うかは深く聞かない事にしますよ。」
明石「経過がどうあれ最終的には敵を殺す事に違いはないですから。」
明石「皆さんが必要という以上は私は全力で揃えるだけですよ。」
そういい残し明石は山と形容した方がいいであろう注文伝票の束を抱え去っていった。
127 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/23(土) 22:55:41.45 ID:UmeXCf690
作戦決行前日
摩耶「一旦横須賀に集合してそこからよそ様の艦隊と組んで出撃ねぇ――。」
摩耶「提督から横須賀で1泊してくれとホテルのクーポン渡されたよ。」ッタク
長門「海軍関係者の泊まる所だからな。夜遊びは駄目だぞ。」
川内「何?摩耶は遠足のしおりに目を通してなかったの?」
時雨「おやつは5ドルまでだよ?」
雪風「バナナはおやつに入りますでしょうか?」
グラ「ふむ。バナナは主食だな。つまりお弁当の扱いだ。」
グラ「だが、揚げてしまうとバナナチップになるからお菓子、つまりおやつになるな。」
グラ「雪風、注意が必要だぞ。」
長門「こらこら。皆ふざけて無いでしっかりしてくれ。」
長門「横須賀についてからの事もあるから話しを先にしておくぞ。」
そして、作戦決行日を迎える。
128 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/23(土) 22:56:54.36 ID:UmeXCf690
横須賀艦隊司令部 出撃ドック近く海上
長門「我々はここで待機だ。」
川内「まぁ、こういう扱いは分かってたけどなんというかねぇ。」
摩耶「日陰者だから仕方ないさねぇ。」
一行は各鎮守府から集められた『 精鋭 』達とは別場所で待機させられていた。
時雨「出陣式か。」
雪風「打ち、勝つ、喜ぶ。で、打鮑、かち栗、昆布を食べるんですよ。」
グラ「日本の伝統的風習という奴か。」
長門「司令長官の話が終わったようだな。後は全員が出撃ドックからの出撃と言う奴だ。」
グラ「色々面倒なのだな。」
長門「日本人は形式に拘る民族だからな。験担ぎには拘るのさ。」
グラ「ふむ。」
「では、最後に音楽隊の音楽で盛大に見送りましょう!」
「音楽隊が演奏する曲はこの曲。」
「行進曲『 軍艦 』!」
トランペットの音に始まる金管楽器特有の甲高い音声にあわせ
太鼓やクラリネットといった各種楽器が一斉に演奏を始める。
聞きなれた行進曲。
その歌詞は国を守ることを誓い、国を守る為に殉ずる。
武人として防人としての心である。
長門「さてと、仕事の時間だ。」
旗艦である長門がそう呟くと彼女の仲間達はそれに同意するかのように頷くのだった。
129 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/23(土) 22:57:58.60 ID:UmeXCf690
何処かの海上
「日本近海に展開中の潜水艦部隊による哨戒網に敵艦娘の艦隊がかかりました。」
「向かっている方向と艦隊の規模は連絡来ているかしら?」
「連絡によると一旦大規模艦隊が北へ進路をとったそうです。戦艦棲姫様、如何しましょう。」
「そうね。十中八九、偽の進路でしょうね。途中で進路変更を行うに決まっているわ。」
「といっても艦娘の艦隊を差し向けるにあたって戦略的に重要な拠点は今、私達がいる場所が一番でしょうね。」
「ここがですか。」
「えぇ、現状を正しく分析するのであれば此処は敵にとって取っておきたい拠点となるわ。」
「あなたがこっちに遊びに来たのもその辺りをかぎつけたからでしょ?重巡棲姫。」
「まぁね。」
「私の旗下で動くのなら補給その他は保障するけど?」
「姫の名を冠する者は艦種の違いは有れど同格。」
「だったわね。いいわ。お互いに干渉なく自由に動きましょう?」
「じゃぁ、お互いに恨みっこ無しという事で。」
「えぇ、せいぜい私に戦功をとられないようにがんばることね。」
「その言葉、熨斗付けて返すよ。」
「それにしても・・・・。」
戦艦棲姫は一人胸中で考える。
(作戦参謀でも変わったのかしらね?無理をしてとるには敵に犠牲が多くなると思うのだけど。)
(私達からすれば失ったところで再度の奪還も容易いのに。)
(まぁ、愚かしくも攻めてくるというなら相手してあげるだけだわ。)
(他の姫達との会合でも一時的に失っても問題ないとされているし・・・・。気楽な防衛戦ね。)
戦艦棲姫は楽な防衛戦と考える、必要とあらば放棄も認められている。
適当に相手して敵を痛めつける、そして旗色が悪くなれば逃げればいい。
めんどうは重巡棲姫に押し付けて。
それを考えると鼻歌が出て海上でスキップすらしたくなる程であった。
こうして二人の姫が敵を迎え撃つべく動き始めていた。
130 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/23(土) 23:02:18.06 ID:UmeXCf690
今回の更新はこれにて終了です、イチャコラも無ければエロもなし
最近のSS需要の真逆を行き、1ことバスクリンが好きに書いてるこの作品をお読みいただいありがとうございます
乙レス、感想レス、励みになっています、本当に感謝です
このSSまとめに載ると中二とかつまらんとか言われるんだろうなぁと考えながら書いております
えぇ、中二なんて自覚してます、はい、次回も宜しければお付き合いください・・・・
131 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/24(日) 00:04:15.04 ID:nBBu7yDUo
乙
132 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/24(日) 01:37:33.26 ID:n5OnYxyA0
おつおつ
十分面白いし、ああいう論評気取りは気にせず思う存分書けばいいかとw
133 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/24(日) 20:37:43.49 ID:yEsbSDgT0
RAISEベースの方がメインキャストに犠牲者が少ないからいいな。
88ベースになってしまうと時雨以外轟沈するしかないww
ただ、シュタインベルガーはよくない、絶対ww
134 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/12/26(火) 01:12:04.95 ID:N2JWXn8A0
乙
135 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/28(木) 21:36:16.72 ID:/xlwmoUX0
次回で長門のお話しは終われると思います。
第七話 英雄の条件 中編
136 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/28(木) 21:37:57.82 ID:/xlwmoUX0
「司令官〜。助けてぇ くだっ ヒック うェエ――――ん。」
川内「泣くな!泣く暇あれば回避行動をしろ!」
ちっちゃなちっちゃな鎮守府。
与えられる任務といえば本土近海の哨戒任務。
「司令官!一緒に頑張っていきましょう!」
初期艦として配属され鎮守府の最高責任者である司令官と二人三脚で。
戦功を挙げていけば当然の様に更なる戦果を求められる。
無情な戦時体制化の常というのを理解していた司令官は
『 ほどほど 』と言う言葉をしっかりと理解していた。
だから鎮守府の規模が大きくなることはなかったが最前線に叩き込まれるという事はなかった。
そしてその『 ほどほど 』を体現する為に大規模作戦にも一応の参加はさせられていた。
鎮守府の規模に合わせて行われる強制徴募。
自己の鎮守府では最先任かつ錬度最高という事で自分が参加していた。
重量艦隊、横綱級、煌びやかとか豪壮華麗とか。
とにかくそういった美辞麗句が似合う精鋭達が道を作り舗装された安全な道を通って。
効率性と言うものを良く理解したパッケージサイズに纏められた物資を運ぶ輸送部隊に参加。
これが彼女、吹雪が今まで参加して見知った大規模作戦なのだ。
137 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/28(木) 21:38:49.90 ID:/xlwmoUX0
敵はまず出てくることもなく哨戒も主に通商破壊目当ての潜水艦相手。
大型艦は味方の先行部隊や警戒部隊の戦艦や空母、重巡といった艦娘が始末してくれている。
だから、吹雪にとって本当の意味での戦場と言うのを味わうのは今回の大規模作戦が最初だった。。
吹雪「あっ、あぁっ、あぁああ!!」
簡単な輸送作戦に参加して予め決められた回数、それも今まで達成した者等いなかった大規模作戦参加20回。
それを達成して多額の恩給を貰って軍を退役して後は余生を過ごす。
いや、実家のある故郷へ帰って畑仕事や、早い話、家業の農家を継いでいい人見つけて、幸せな家庭を。
もしよければ司令官と。それは甘酸っぱい、少女の描く夢。
そんな夢を描いていたのに。
138 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/28(木) 21:39:58.08 ID:/xlwmoUX0
目の前に広がっているのは一緒に作戦参加した他の鎮守府艦娘達の凄惨な光景だった。
有る物は腕を失い、有る物は既に形がない。
多くはフレッシュミートパイになり海上を漂っている。
『 者 』が『 物 』へ変わる。
剣林弾雨、山屍血湖。
白が三に赤が七。
激しい砲戦の後、見渡す限りの周囲は敵味方双方の死体が浮かんでいる状況だった。
それでも自分が生きている事が出来るのは自分の存在を広告的に利用しようとした
艦隊司令部の偉い人が手配をしてくれた頼もしいボディガードのお陰だろう。
長門「吹雪。ほうけている暇はないぞ。」
ポンと肩を叩かれ顔を向ければ頼もしい戦艦の艦娘の姿。
摩耶「姐さん。やっぱまずった感じ?」
長門「まずるもなにも、なぁ。」
顎をしゃくるその方向には奮戦空しく骸と成り果てた自分以外の輸送任務に付いていた艦娘。
長門「襲撃して橋頭堡の確保と同時に揚陸作戦と言うのはまぁ、分からないではないのだがな。」
雪風「いかんせん敵の砲台に足が生えている事を失念でもしていたのかと問いただしたいですね。」
憤懣遣る方なし、雪風が憮然とした表情で告げる。
そうなのだ敵の陸上砲台には足があり何処へでも移動できる。
139 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/28(木) 21:41:02.55 ID:/xlwmoUX0
長門「上陸時までこちらへの砲撃が無いのを怪しまないのがそもそも危機感の欠如であろうよ。」
時雨「とは言っても敵の主力は引きつけて先行した艦隊が叩いてはいるんだろうけど。」
長門「そういえば。提督曰くここは戦略的に見れば重要拠点ではあるが
現在構築できてる本土防衛線を崩してまで本来取りに来るべき地ではないそうだ。」
時雨「ここの重要性についての話しかな?」
長門「あぁ。作戦要綱の説明時にメリット、デメリットを教えてくれた。」
長門「付け加えるならデメリットが勝ると言っていたぞ。」
長門「はっきり言って状況は良くないな。」
吹雪「そっ、そんなにですか!?」
長門「そうだな。負け戦だ。」
凡そ躊躇われるであろう負けということをあっさりと認める長門。
時雨「じゃぁ、どうするかい?」
長門「尻に帆をかけて逃げるとしようか。」
摩耶「マラソンかい?」
長門「そうだなどちらかと言うなら鬼ごっこだな。」
雪風「捕まったが最後、罰ゲームが酷そうですね。」
長門「あぁ、その前にだ。伯爵、周囲の索敵状況を聞けるか。」
グラ「そうだな。悪い情報ならグロス単位で店開き出来るほどあるな。」
川内「あら、奥様聞きました?」
摩耶「えぇ。聞きましてよ?悪い情報のバーゲンセールですってよ?」
長門「それで、どんな状況なんだ?」
誰の目にもして負け戦と判じれるほどの危機的状況であるにも関わらずふざける余裕のある一同。
グラ「まぁ、その前に珈琲でも飲むことにしよう。」
吹雪「コっコーヒーィブレイクゥ?!」
吹雪が天を仰ぎ、あきれる様な頓狂な声をあげるのを余所にグラーフから珈琲を受け取る一同。
140 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/28(木) 21:42:21.55 ID:/xlwmoUX0
時雨「あぁ、流石だね。いい豆だ。」
吹雪「コーヒーなんて飲んでる場合じゃないでしょぉ!?」
長門「吹雪よ。戦闘経験が浅いのは分かるが鉄火場では冷静さを失ったものから命を落とすぞ。」
摩耶「そうそう。海底で魚の餌になりたくなければ少しは落ち着きなって。」
ほれと出される自分の分。
そのカップから立ち上る香りはとても芳醇で芳しく。
吹雪「美味しい。」
グラ「うむ。で、あろうな。」
満足げにうなずくグラーフ。
長門「さてと、落ち着いたところで状況整理だ。」
長門「幸いにして揚陸予定であった島側からの攻撃は現在沈黙している。」
雪風「陸からの砲撃が現状ない事を考えればを先行部隊が砲台を潰してくれてはいるようですね。」
長門「楽観は良くないがな。さて、伯爵、周囲の索敵状況、それから残存味方艦隊の状況を頼む。」
グラ「物資揚陸地点と決められた場所を中心として三方向から敵の艦隊が此方を包囲すべく進撃中。」
グラ「重ねていうならば進撃中の艦隊はバランスよく戦艦と空母が混ざっている。」
長門「ふむ。なかなか酷い状況だな。」
グラ「といっても最悪ではないな。周囲で統制を立て直しつつある味方艦隊と連絡を取ることは出来た。」
グラ「重傷者を抱えている艦隊とは連絡をとっていない。」
長門「成る程。いい知らせだ。」
吹雪「あの傷病者がいるのを放っていくんですか?」
川内「義理がない。」
摩耶「吹雪。気持ちは分かるけどあたしらには余裕が無いんだ。」
雪風「そうですね。現在の状況は既に撤退戦。敵は追撃、それも包囲殲滅戦になっています。」
雪風「傷病者。特に重傷者というのはここを抜けて帰り着いても再度の戦線復帰は厳しいでしょう。」
雪風「高速修復財が治せると言っても無いものを復活させる能力があるとは雪風は聞いた事が有りません。」
雪風「非常に遺憾ではありますが・・・・。」
臓腑から搾り出す。そんな表情を見せながら雪風が説明をする。
後方の輸送任務で安寧を浴してきた自分と比べその駆逐艦は、
陽炎型、その8番艦雪風はどれほどの修羅場を潜り抜けてきたのだろうか?
まさしく、無念。味方を見捨てざるを得ない状況に陥っていることへの怒り。
その双方が言葉に込められていた。
長門「無能な味方、特に上層部にそれが存在することは実に腹立たしいな。」
長門「とぼやいた所で始まらん。伯爵が接触してくれている味方と合流を急ごう。」
一同「了解。」
141 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/28(木) 21:43:26.48 ID:/xlwmoUX0
日向「いやぁ、敵包囲網の中にありながら
コーヒーブレイクのお誘いを受けてどんな奴かと顔を拝みにくれば。」
日向「君か。」
長門「何処かで逢っていたかな?」
日向「一文字三星の毛利紋と白兎のファンネルマーク。」
長門の煙突に書かれる固有識別マークを指差しながら返答する日向。
日向「『火車曳兎』『業火雷槌』その武勇を称える二つ名に事欠かない有名人だ。」
日向「総じて共通するは万夫不倒、敵を殺す悪鬼羅刹の伝説。」
日向「昔の新人艦娘時代に聞いた英雄譚だが
余りにむちゃくちゃな話過ぎてフーファイターか何かと思っていたよ。」
142 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/28(木) 21:44:59.56 ID:/xlwmoUX0
摩耶「ヒュウー。姉さんそんなにやばい伝説持ちなの?」
日向「あぁ、鉄底海峡作戦では探照灯で自身の位置をあえて知らせ
敵を大量に引きつけ全滅させた戦闘狂と聞いている。」
長門「そうするしかなかったんだ。昔の話だ。」
日向「とはいえその後の活躍はまったく音沙汰無しだったのでね。
流石に沈んだのかと思ったものだ。」
日向「それが、まさか、まさか。生きていたとは地獄に仏と言う奴だな。」
日向「呉軍管区第三鎮守府所属だ。私と空母が1名、駆逐が4名。世話になる。」
長門「外地鎮守府管理番号88所属だ。まぁ、よろしく頼む。」
握手をする二人。
日向「我々はそちらに対して経験が乏しい。総旗艦としての指揮はそちらにお願いしたい。」
長門「いいのか?我々が行く道は冥府魔道だぞ?」
日向「ここも地獄、そっちも地獄、なれば見知った顔がある方のがましだろ?」ニヤリ
長門「違いない。」ニヤリ
こうして長門達は合流した。
143 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/28(木) 21:45:46.20 ID:/xlwmoUX0
ル級「重巡棲姫様。まもなく包囲が完了します。」
重巡「戦艦は何て言ってる?」
ル級「島の裏側で万一に備えているので御自由にとの通信です。」
重巡「ふーん。戦果はこっちに譲ってくれるって訳か。ありがたいね。」
ル級「一気に攻め滅ぼしますか?」
重巡「悪くはないな。」
ル級「はぁ。」
重巡「今回、敵がこの地に突出してきてくれた御陰でね。
敵がきっちりと敷いてた敵本土防御警戒線に穴が開いてるのよ。」
144 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/28(木) 21:46:34.48 ID:/xlwmoUX0
ル級「あぁ、増援が見込めないのですか。」
重巡「理解の早い部下は何にもまして有難いわね。」
重巡「敵がわざわざ親切にもあけてくれた穴を利用しない手はない訳でね。
敵の本土進攻に向けていくつもの艦隊が動き始めている状態。」
ル級「終わった所には余力が有っても向けてはくれませんですよね。」
重巡「そういう事。なので残った手駒で追撃、戦果拡張をしないといけない。」
ル級「他所で火遊びをされるとこっちの薪が足りないという事ですか。」
重巡「そういう事。とりあえず、ここは私達が攻め勝ったと言えるかな。」
ル級「物量のごり押しでしたが・・・。」
重巡「まぁね。質的優勢は艦娘側だけど我々深海側は数量的優位に立てるからね。」
重巡「勝っている点で勝負をするのは自明の理でしょ?」
重巡「相手とのキルレシオが1対5で負けていても物量で押せるなら1の敵に10ぶつけてやればいい。」
重巡「単純に物量ですりつぶしてやればいい。」
145 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/28(木) 21:49:06.01 ID:/xlwmoUX0
ル級「次はどう動きます?」
重巡「そうだね。現状包囲網は完成しつつある。
そして敵が取ろうとした島を囲むように三方向から包囲する形。」
重巡「敵が教科書通りに動くなら島へ上陸して防御拠点を作りストロングホールドかな。」
ル級「上陸ですか。」
重巡「対艦という事なら陸地から砲撃する方が命中率はいいんだ。」
重巡「海の上は波が有って揺れるから陸上の拠点は狙いにくくなる。
対艦娘ということで海上ならお互いに直接射撃で狙えるけれど・・・。」
重巡「島に防御拠点でも作って遮蔽物に身を隠しながらこちらを砲撃という事になれば
間接射撃になる分こちらからの命中率は落ちる。
さらに敵からしてみれば救助が望めるならそうしたほうが生存率が高い。」
重巡「塹壕でも掘って砲身だけ此方に向ければ簡易トーチカみたいなものだな。」
ル級「上陸前に叩きますか?」
重巡「それが望ましいけれどこちらも敵の本土襲撃に向かわないといけないから
あんまり手勢を減らすわけにはいかないのよ。」
ル級「では、敵を島に追いやって適当に艦砲射撃で戦果拡張して撤収ということですか。」
重巡「敵の救援部隊が来るまで敵を包囲、攻撃しましたという実績を作った後に撤収
で、やることはやった言い訳は立つかな。」
重巡「追撃という意味ではバラバラの状態がやりやすいけど
纏まってくれているほうが包囲はやりやすいから敵が島に上陸するまで放置でいい。」
ル級「島の砲台小鬼が沈黙させられたのが痛いですね。」
重巡「しょせんは使い捨てだから気にすることはないさね。
残っていたところで上陸されれば瞬殺だろうしな。」
ル級「では全体に包囲の間隔を詰めて行きます。」
重巡「宜しく。」
重巡「包囲が完了したら適当に艦砲射撃で弾ばら撒いて撤収するよ。
ヲ級の艦載機に攻撃させようにも茂みが多いようじゃ難しいだろうし。」
ル級「茂みを焼き払えるだけの弾薬も残ってませんしね。」
重巡「次のパーティーへのお誘いも来てるしな。」
ル級「了解です!」
146 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/28(木) 21:50:58.97 ID:/xlwmoUX0
島の裏側
タ級「撤収準備完了しました。」
戦艦「お疲れ様。最低限の艦隊だけ残して撤収するわよ。」
タ級「よろしいのですか?」
戦艦「救援が来るまで敵も島に篭るでしょう。」
戦艦「当然こちらとしても島に篭られるのが一番厄介よ。」
戦艦「だから、あなたが敵に上陸して篭らせてもいいのかと聞くのも分かるわ。」
戦艦「でも、今は島に篭ってくれた方がこちらもありがたいの。」
タ級「?」
戦艦「敵が島に篭って救援を待つというのが大事。」
戦艦「敵の大艦隊を今回ほぼ壊滅まで持っていったわね?」
タ級「そうなりますね。大戦果です。」
戦艦「えぇ、そうね。そして敵は今回ここへ進撃した為に本来の防御線に穴を開けてしまっているほど。」
タ級「救援の為に戦力を割けばより厳しくなることは分かりますが・・・。」
戦艦「そうね。助けにくるのか?と言いたいのでしょ?」
戦艦「救援に来ずに見捨てるのではないか。って。」
タ級「はい。」
戦艦「その考えは私達から見れば至極当然よ。
でもね。軍隊という組織の中でそれをやっちゃまずいのよ。」
タ級「不味いのですか。」
自分達との考え方の違いに驚きつつも返答するタ級。
147 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/28(木) 21:52:42.50 ID:/xlwmoUX0
戦艦「えぇ、最低限、救援に向かったくらいのポーズはとっておかないとまずいわ?」
戦艦「ここに進撃して来た娘達は上の命令で向かってきたの。
馬鹿の独断専行や勝手な進軍とかではなく。
上が立案した勝ち目が薄い戦いを忠実に実行する為にね。」
タ級「結果はご覧の有様ですが。」
戦艦「だけにね、上が見捨てると他で同じような事になったときに
今度は自分達が見捨てられるんじゃないかって思う兵士が出るわ。」
タ級「恐怖の伝染ですか。」
戦艦「上が信用ならないと思われた軍組織というのは脆いものよ。」
戦艦「だけに形だけでも救援のポーズは必要なの。
今回の様に上の指示を忠実に守った兵士を相手にした場合はね。」
タ級「救援に来る様な事になりますと敵の防衛線の穴が広がりますね。」
戦艦「そう、それが狙い目な訳よ。重巡もそのギリギリラインまで包囲をして相手することでしょう。」
戦艦「私達にも召集がかかっているからこの地にあまり長く留まれないし。」
戦艦「敵がくれたチャンスは生かさないと。」
タ級「残していく戦力は最低限で宜しいのですか?」
戦艦「よっぽどの馬鹿でなければ島に篭るのが正解よ。」
戦艦「島の裏側に抜けて脱出を図るかもしれないけれど敵もそれなりに消耗しているに間違いないわ。」
戦艦「だから島で救援を待つのが正しい状況よ。」
タ級「それもそうですね。」
戦艦「さ、ここは残留部隊に任せて私達は敵の本土攻撃部隊として移動するわよ?」
タ級「補給艦の要請をしておきます。」
戦艦「お願いね。」
148 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/28(木) 21:53:39.55 ID:/xlwmoUX0
戦艦「あっ、そうそう・・・。」
タ級「はい?」
戦艦「いえ、やっぱりいいわ。補給艦の要請の連絡だけお願いね。」
タ級「了解。」
何かを言いかけ止める戦艦棲姫。
(敵の方が質的には優位なのは今も変わらずなのよね。)
(熟練の艦娘の中には私達姫級に匹敵する強さをもつ者達も偶にいるけれど・・・。)
(質的優勢で数的劣勢を跳ね返せるものかしら?)
(私達の方が数的優位にあるとは言え勝負は最後の時まで分からないものよね・・・。)
(いえ、流石に無いわね。)
何かに思い至り頭を振る。
(そんな狂人な真似をするとは思えないわ。)
(敵は島に篭って救援を待つでしょう。きっと。)
戦艦棲姫はそう考え一抹の不安を否定し本土進攻へ向けて移動を開始したのだった。
149 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/28(木) 21:58:12.19 ID:/xlwmoUX0
本日分はこれにて終了です
次回は包囲網からの脱出編で長門のお話は終了です
どうやって包囲網を抜けるのか?
勘のいい方はまさかなと思われているのではないでしょうか?
たぶん、正解です。それについては自分が次回どれだけ格好よく書けるかの問題です
乙レス、感想レスいつもありがとうございます、励みになっております
また、前回の更新時に暖かいお言葉を掛けていただき本当に感謝しております
では、また次回の更新もご都合宜しければお付き合い下さい
150 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/28(木) 22:59:32.55 ID:uFwczJ5A0
まだ作品中にバスクリン出てきてないな
151 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/29(金) 20:14:40.01 ID:RquaOuoEO
包囲網が完成されていたらアウトだが、まだ完成されていないなら自身の全戦力を特に敵の数が少ない一点に投入し、数で押しきる、のを繰り返す
というのは銀英伝であったけども・・・
152 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/30(土) 01:20:45.94 ID:pwUlzFCA0
おつおつ
フラグ建設への余念の無さよw
153 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/06(土) 23:01:12.49 ID:j06fqDe+0
皆様、新年明けましておめでとうございます
大晦日にふと思い立ち二人目武蔵を狙うべく4/7/7/2/20で3連
えぇ、着てくれましたよ
大和が
未着任だったので嬉しさもひとしお、と、ともにあぁ、そういえばこの娘達、資源馬鹿食いだったなぁと
育成の為に演習に出したりで改めて再認識しております
とはいえコスト分だけ仕事してくれるんで文句は言えません
今回の更新はかなり長めですがお付き合いいただけると幸いです
154 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/06(土) 23:03:09.27 ID:j06fqDe+0
第八話 英雄の条件 後編
155 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/06(土) 23:04:50.72 ID:j06fqDe+0
温故知新。
その意味は古い昔の事象から新しき知識を得ること。
昔に起きた現象や事件といったものを研究、見直すことで今に役立つ新しい発見を得るといった意味合いである。
特に戦争という物はお互いの戦力や地理的要因等が複雑に絡み合うため戦史研究、
特に敗者の立場から勝利するための条件を考える事は参謀等の作戦立案に携わるものには必須である。
つまり負けない為にはどうするべきか?
軍神とか名将とか名軍師、そう言った誉れを得ている者達も常勝無敗だった訳ではない。
彼らとて負けたことはあるのだ。だからこそ、負けた戦から学ぶことは多いのである。
そんな中、戦後の深海棲艦達との海戦史研究において一つ、『 常人には理解不能 』とまで言わしめた海戦がある。
どれだけ当時の状況がつまびらかになろうと情報が増えるほどに
『 狂人集団の所業也 』と言われ深海棲艦との海戦史において参考にならないとされる。
それは負けていた戦。決着が既についていた海戦を最後の最後にちゃぶ台返し。
いや、どんでん返し、とにかく力技でひっくり返した、海戦なのだ。
戦術や戦略、そんなものは糞食らえの動きでもって勝利をもぎ取ったのである。
その稀有な、まったくもって有り得ない海戦の火蓋が今、まさに切って落とされる所であった。
156 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/06(土) 23:07:46.18 ID:j06fqDe+0
長門「とりあえず周囲に残っている揚陸物資や
浮かんでいる艦娘達の艤装から回収できる分の弾薬、燃料は回収しよう。」
吹雪「み、皆さん、本当にそんな事されるのですか!?」
時雨「・・・、環境に優しく有効活用・・・かな?」
雪風「リサイクルです。」
周囲には味方が揚陸作戦時に襲撃を受けたため放棄された燃料や弾薬がドラム缶、或いは木箱に入ったまま浮かんでいる。
また、当たり前ながらその活動を止めた艦娘達の死体も当然ながら波間に漂っている。
摩耶「沈んで魚の餌になる前に生きてる仲間の役に立てた方がこの娘達への手向けになるってもんだろ。」
川内「吹雪も集めてきなよ。後、これ、回収したら一人に付き3枚ずつ持たせてね。」
川内が投げてよこすは50円玉の棒金。
川内「一文は現代価値で約20円だってさ。150円持って行けば渡し賃には困らないでしょ。」
そして、敵の包囲網が完成しつつある中、一同は手早く手近な艦娘の残骸等から回収できる限りの弾薬と燃料を回収する。
157 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/06(土) 23:08:59.63 ID:j06fqDe+0
日向「作戦の内容は聞いたがなんと言うか。」
摩耶「気にすんなって。これがあたしらの日常だからさ。」
こともなげに言う摩耶。
グラ「さぁて、こういうのは日本語でなんと言うのであったか?」
長門「あれだ、細工は流々。」
川内「仕上げはゆっくり。」
時雨「御覧じろ。だね。」
雪風「滾りますねぇ。」
日向「本当にいいのか?」
長門「後々を考えればこれが最適だ。」
日向「流石に踏んだ場数が違うか。」
日向「外地の鎮守府は猛者揃いと聞いていたが百聞は一見にしかず。」
日向「お手並み拝見と行こう。」
長門の提案に恭順する日向。
158 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/06(土) 23:11:28.37 ID:j06fqDe+0
吹雪「あの、私はどうしましょうか・・・。」
おずおずと、声を掛けて来る吹雪。
雪風「腹を下すと分かっていながら泥水を啜った事はありますか?」
雪風「艦娘として生まれたにも関わらず塹壕の中で泥濘に沈んだことがありますか?」
雪風「砲撃能力しか残っておらず簡易砲台として海岸線を敵の上陸から塹壕の中で守ったことがありますか?」
時雨「雪風。」
雪風「目の前で死んでいく仲間に楽にする為だけに砲弾をくれてやったことがありますか?」
時雨「雪風!」
自分にも何か出来る事はないか。
そうためらいがちに聞く吹雪にきつい言葉を返す雪風。
時雨「ごめんよ。雪風の言葉に悪気はないんだ。」
時雨「ただ、雪風は未熟な艦娘が激戦地に放り込まれ何も出来ずに死ぬのを見送ってきた事が多いから・・・・。」
時雨はこれまでの付き合いで雪風が外地鎮守府に流れ着いた経緯を本人から聞いている。
それは筆舌に尽くしがたく。
そして、まさしく敵、味方、双方の血が川と成程の激戦地を渡り歩いてきたことも知っている。
だけに戦力として不安な吹雪が自分達の艦隊と同じような行動を取れないことは理解しているし
させることへの危険性も理解していた。
厳しい言葉で突き放しているがその本質は自分達と来る事は危険であるとの警告と優しさ。
159 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/06(土) 23:12:23.80 ID:j06fqDe+0
吹雪「いえ、分かりました。」
時雨「ごめんよ。」
そして、彼女達は動き出した。
生き残る、そのたった一つの目的へ向けて。
160 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/06(土) 23:15:21.91 ID:j06fqDe+0
深海棲艦サイド
ル級「まもなく包囲網が完成します。」
重巡「敵の動きは?」
ル級「残存艦隊の再編成と周囲の味方だった者達の遺品の回収を完了したようです。」
重巡「こっちがわざとに時間を与えた甲斐はあったかな?」
ル級「お優しすぎやしませんか?」
重巡「はは。まぁ、確かにね。だがまぁ、あれだよ。」
重巡「これからあの世に行く事が決まっている相手に最期の情けを掛けてやった所で罰は当たらないだろ?」
ル級「はぁ・・・。」
重巡「生きている間に功徳を積まないと。」
既に勝っている事から生まれた余裕。
そして重巡棲姫はここから戦局が万に一つもひっくり返される事が無いと確信していた。
だからこそ、彼女は包囲対象である長門達を敢えて好きに動かせたのだ。
さながら、象が蟻を踏み潰すように簡単に潰せる。そう考えたために。
そして、これが彼女の深海棲艦としての生を終わらせる事となるとは彼女はつゆとも思わなかっただろう。
いや、考える事が出来る者が居たとしたらそれは『 神 』と呼ばれる者くらいだろう。
これから彼女の身に降り掛かった事はそれ程の事だったのだ。
161 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/06(土) 23:17:07.38 ID:j06fqDe+0
ル級「敵が動き出しました!」
重巡「おっ、バルサン炊き始めたな。」
もくもくと広がり始めるのは灰色の煙。
重巡「艦載機も使用しての煙幕展開か念のいったことだ。」
ル級「やはり上陸の瞬間が無防備になりますからね。」
そう、上陸というのはその瞬間が最も無防備になりやすい。
人類史上最大の上陸作戦と言われるかのノルマンディー上陸作戦でもその死亡者が集中したのは上陸時だったと言われる。
重巡「上陸時の隙を無くす為に煙幕たいてこっちからの砲撃時に目標を定めさせない積りなんだろ。」
重巡「基本に則った戦術だよ。」
ル級「にしては煙の量が多すぎやしませんか?」
重巡「けちって的になるよりかはましでしょ。」
ル級「こちらにも煙が流れてきていますが。」
重巡「包囲している艦隊全体が煙に覆われそうだな。」
重巡「一応全員に警戒の連絡をしておいて。」
ル級「了解です。」
包囲を行った艦隊が煙に包まれる。
重巡「さぁて、煙が晴れれば」
ル級「仕事ですね。」
重巡「あぁ、島に隠れた相手に砲弾を撃ち込むだけのお仕事だ。」ニタァ
敗北の危険とは勝利を確信したときが最も高いと言われる。
そう、重巡棲姫達はまさにこの瞬間、油断をしていたのだ。
それはこの包囲殲滅戦の前の戦闘で大勝をしていたから生まれた慢心でもあった。
その為、次の瞬間に入ってきた凶報への対応が一瞬遅れた。
162 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/06(土) 23:19:40.19 ID:j06fqDe+0
ル級「右翼に敵襲!?」
重巡「はぁ?」
間の抜けた返事。
数で言っても倍と言わない、いや、7倍、8倍にもなる艦隊の数で包囲しているのだ。
いくら煙幕で視界を奪ったと言っても解囲目的で突っ込むのは自殺行為。
重巡「敵の艦娘共は気でも触れたか?!」
錯乱による突撃かと思うのも無理は無く。
重巡「いや、今は襲撃を受けた右翼の包囲網の建て直しが重要か・・。」
重巡「ル級。私達のいる中央から右翼へ部隊を回して敵襲撃部隊の殲滅を急げ!」
下される命令は至って教本通り。
襲撃を受けた方へ増援を回し包囲している敵が抜け出るのを防ぐ。
至って標準的かつ当たり前の対応である。
但し、敵が並みであれば・・・・・である。
重巡「煙幕の範囲から出て対応したほうがいいのだろうか?」
そんな事を考えている間にも情勢は一気に変化する。
163 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/06(土) 23:22:04.47 ID:j06fqDe+0
ル級「敵の突入した艦隊が中央へ進行方向を変えてきています!」
混乱を伝える無線の中で敵の進行方向が変わった事を伝える知らせ。
重巡「はぁ?」
一瞬の間、そして敵の意図を理解する。
重巡「しまったぁ!!」
敵の襲撃にあった右翼へ支援艦隊を差し向けた矢先。
この瞬間で敵が進行方向を変える。
そうするとどうなるか?右翼への支援に向かわせた艦隊が完全に無駄になってしまうのだ。
そして、こちら中央の守りは当然減った部隊の分だけ薄くなる。
重巡「くそ!敵の位置が煙幕の所為で分からんぞ!」
ル級「電探が利きません!」
重巡「はぁ!?」
煙幕内を縦横無尽、それこそ荒野を駆けるようにこっちへ向かってきている敵がいるのだ。
視界が不良でも電探で味方を含めた艦の位置は調べられるはず。
お互いの位置が分かれば敵を迎え撃つための陣形を取れる。
そう思い周囲の仲間含めて電探の出力を最大にして位置の把握を行おうと指示をだしたのだが。
返ってきた返事は電探が故障でもしたのかと思うような台詞。
164 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/06(土) 23:24:03.01 ID:j06fqDe+0
ヒュウゥゥ。 ペタ。
重巡「ちぃ!」
風が運んできた何かが顔にへばりつく。
重巡「たく!何が起きているっていうんだ!」
顔についたそれを鬱陶しいと毒づきながら剥がした時に彼女は気がついた。
重巡「これは!!」
重巡「ちくしょう!ちくしょう!奴ら!煙幕はこれを撒くための布石かよ!」
ル級「どうされました!?」
重巡「奴ら、煙幕に紛れて電波欺瞞紙(チャフ)をばら撒いてやがった!」
大戦中に日本海軍が実際に使用した大き目の模造紙に錫を塗り細かく刻んだ物ではなく、それは純粋にアルミの細片。
だけにその効果は非常に高く。
グラ「明石が深海連中の電探を解析して周波数に合わせたサイズにしてあるからな。」
グラ「敵の電探は真っ白であろうよ。」
そう、電探が利かなくなったのは煙幕をはった後にグラーフが艦載機で用意していたチャフをばら撒いた為である。
165 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/06(土) 23:27:19.79 ID:j06fqDe+0
ル級「ですが、敵も電探が使えないのでは?」
重巡「馬鹿!敵は使う必要がないんだよ!」
重巡「敵がチャフを使うと分かってればヲ級の艦載機くらいは・・・、
いや、煙幕の中じゃ結局意味がない。えぇい、くそぉ!!」
理解が早いと評したさっきまでの自分を殴りたい、重巡は本気でそう思った。
重巡「敵の方が数が少ないんだ!」
そう、敵の意図は明白。煙幕で直接的な視界を奪い、電波欺瞞紙で間接的な目を奪う。
更にそこに襲撃をかければどうなるか、その答えあわせを今まさに日向が行おうとしていた。
日向「吹雪、艦隊の中央へ寄ってくれ。長門からの預かり者だからな。」
日向「君に何かあれば長門に全てが終わった後に私が沈められてしまう。」
朝潮「日向さん!お預かりした発火装置のセット完了しました!」
大潮「もう少ししたら通って来た所に置いてきた燃料がドーンと行きます!」
荒潮「まったく持って大胆ねぇ。」
日向「まったくな。」
加賀「ですがこの作戦は考え付いても実行に移すには余程の酔狂か軍事の天才で無いと躊躇われるかと。」
日向「まったくだ。」
満潮「そろそろよ!全速全進!」
日向を旗艦に長門達が突っ込み空けた右翼の穴を脇目も振らずに前進する一同。
使用する武器は機銃と日向の刀。
そして煙幕を張る前に発艦させ唯真っ直ぐに飛ばし、艦隊に先行する加賀の艦載機による機銃支援である。
なるべく音を立てず、出くわす敵は切り伏せる。
逃げる敵は追わずただ突破を目指すのみ。
166 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/06(土) 23:29:11.91 ID:j06fqDe+0
川内が朝潮達に渡したのは時限発火装置。それの目的は何か?
ドン!
ドラム缶に満杯にされた燃料が爆発する。その音はまるで砲撃音の如くである。
イ級1「!」
イ級2「!」
電波欺瞞紙でお互いの位置が分からない状態の中、敵が自分達包囲網の中に突っ込んで来ている。
そんな中で砲撃音がすれば?
敵が自分達の包囲網を抜けるために『 自分達に向けて砲撃を行った 』と誰しもが判断するだろう。
もしくは『 味方が敵を見つけ交戦に入った 』と。
朝潮達が仕掛けて爆発した燃料の爆発音を皮切りに始まったのは
お互いの姿と位置が確認できない状況下での深海棲艦同士の同士討ちである。
悲惨な事に右翼へは中央から増援が向けられていた。
その増援はこの様な状況にあっては『 突撃してきた敵の第二陣 』と思われても無理からぬ事である。
当然の如く交戦中の中に増援部隊も砲撃を行いながら突っ込んだため同士討ちは更に拡大していく。
167 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/06(土) 23:32:48.37 ID:j06fqDe+0
重巡「くそぉ!奴ら数が少ないことを逆手に取りやがった!」
今だ、回復しない電探に毒づきつつ周囲の警戒を固めるべく動く重巡棲姫。
嘗てローマ帝国を手玉に取り幾度も勝利を収めた名将ハンニバルはこう格言を残している。
曰く『 視点を変えれば不可能が可能になる 』
絶対的に数が少ない不利な状況。
しかし、見方を変え強引に言ってしまえば一点突破を最も少ない被害で出来るとも言える。
歴史を紐解けばそれなりに例はあるが日本で最も有名な物はこれであろう。
戦国時代を終焉へと導いた決定的な戦い。その合戦名は『 関ヶ原 』。
徳川時代の到来を決定付けたあの戦いにて少数で行われた敵包囲網の一点突破。
一見して不可能のようだがそれをやってのけた武人の集団が居る。
そう、関ヶ原の戦いの鬼島津の退き口である。
その戦力差、敵8000に対し自軍300(軍勢の人数については諸説あり)
敵軍の主力包囲網に突っ込み、退却の為に単純に最短ルートであったからという理由で敵本陣のある中央への『 撤退 』
本来、安全地帯へと逃げる事を意味する『 撤退 』を
敵の主力へ本陣へ向け『 撤退 』し逃走に成功させるという無茶である。
168 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/06(土) 23:36:36.34 ID:j06fqDe+0
重巡「あぁあああ!くそっ!くそっ!どうしてこうなった!」
ル級「右翼の状況がまったく不明です!」
未だ混乱の続く右翼。
重巡「ちくしょう!味方の被害を抑えるのが優先だ!敵の逃走は完全に無視しろ!敵に逃げられてもいい!」
重巡「右翼の砲撃を直ちに止めさせろ!」
ル級「はっ!直ちに連絡いたします!」
右翼の敵突破は完全無視。自軍の損耗を減らす、この時点では最良とまではいかなくとも最善の手。
しかし、重巡は失念していた、それだけ敵によってもたらされた混乱が大きかったとも言えるのだが。
そしてこれがこの艦娘達の解囲撤退戦に対する深海側の唯一の汚点にして最大の損失をもたらしたのだった。
重巡「敵にはなんて馬鹿げた作戦を立てる奴がいるんだ・・・。」
重巡「理屈でいけるかもしれないと思ってもそれを実行に移すほうも移すほうだ。」
重巡「正気の沙汰じゃない。」
自軍の建て直しの指示を出し状況整理の為に考え始めた重巡棲姫は失念していたある事を思い出し戦慄する。
重巡「中央へ突撃してきた敵艦隊はどこへ消えた?」
自身の頭の隅にはあった敵突撃部隊の突入という事象。
電探の無効化、それによる敵部隊の位置の把握が出来ていない。
考えるだけでこれ以上無い最悪の事態。
重巡棲姫は背中に冷たい物が流れるのを感じえずにはいられない。
169 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/06(土) 23:39:54.41 ID:j06fqDe+0
長門「こういう時の挨拶はこんにちは?かな?」
ル級「!!」
ドズン。
煙の中からぬらりと現れる一団。一撃で沈められるル級。
そう、長門達はしたたかに狙っていたのだ。
雪風「さようなら?でしょうか?」
時雨「いや、僕が思うにやっぱりここは初めましてだよ。」
摩耶「あぁ、確かに初対面だもんな。」
川内「でも、まさか本当に敵の本陣にぶち当たるとはねぇ。」
グラ「大将がいる周囲というのは自然と守りの人数が多くなるものだ。」
グラ「まして無線の発信量が多ければそこに指揮官がいると
名刺を配っているようなものであろうよ。」
川内「事前に大まかな位置は予測できてたしね。」
グラ「さてと。まぁ、あれだ。挨拶はさておき次に紡ぐべき言祝ぎは決まっているだろ?」
長門「そうだな。では、重巡よ。」
長門 時雨 雪風 川内 摩耶 グラ 「「「「「「 死ねぇ!!!!!!」」」」」」
相手に死ねと言うのを祝うとは性質の悪い冗談だがこの場面で言えば長門達にとっては祝福以外の何物でもない。
目の前の相手に対して行われる仰俯角が零の水平射撃。
撃てば目を瞑っていても当たる距離。
重巡「あぁああぁぁあああぁああぁ!!!!」
大音声での絶叫による断末魔と轟音。
ここに重巡棲姫はその艦生の幕を閉じた。
170 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/06(土) 23:41:51.01 ID:j06fqDe+0
長門「行きがけの駄賃にしては上出来だ。さて、仕事は終わった。煙幕を更に炊きながら逃げるぞ!」
指揮官を失った軍隊というのはさながら女王蜂を殺された蜜蜂の様な物で
統制だった動きを取れる訳もなく長門達は煙幕が効いている中、
一気に脱出を図り出会う敵は淡々と叩き潰していた。
彼女達は砲撃で敵を叩き潰しながらの撤退である。
その音は暗中模索で敵の位置を知ろうとしている敵に位置を教えることとなるがこれが更に敵に混乱を齎す。
何せ右翼で敵と交戦中と思いきや中央からも交戦中の音が聞こえ
更には指揮官である重巡棲姫と連絡が一切取れない。
まさかの挟撃かと思う深海棲艦達もいたことだろう。
ともなれば組織だった抵抗を出来る者もいる訳がなく、
かくして長門を含む生き残りの艦隊は文字通り悠々と包囲網からの脱出に成功したのだ。
171 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/06(土) 23:43:32.87 ID:j06fqDe+0
横須賀近海
長門「さてと、ここまで帰ってくれば後は問題ないだろう。」
日向「あぁ、実に鮮やかな退き口だったよ。」
長門「何、古典に倣っただけだ。褒められるような事ではないさ。」
日向「預かっていた吹雪にも怪我は無いし敵の指揮官を沈めての大殊勲だ。」
日向「流石に始めの負け戦を無かった事には出来ないだろうが
それを踏まえても君達の戦功は勲一等物だろ。」
日向「武人の誉れだな。」
長門「・・・、日向。我々はその栄誉にあずかる事はない。」
吹雪「そんな!私達は長門さん達がいなかったらあの地で死んでいました!」
長門「日向。我々の外地鎮守府の存在を知っているならそこに居る者達の素性を聞いたことはあるだろ?」
日向「無い訳ではないが。」
長門「我々は金が目的か自分たちが犯した犯罪の刑期分だけ働くことを強制させられた、いわば傭兵だ。」
加賀「そんな。」
長門「我々があの場に居たのもそこに居た吹雪を護衛して横須賀へ無事に帰還させる任務を受けていたからだ。」
摩耶「そそ。あたしらは仕事をしただけ。」
川内「重巡棲姫を潰した戦功はそっちが貰ってかまわないよ。」
雪風「というよりも仕事の内になってしまいますからね。」
時雨「そうだね。吹雪の護衛だから吹雪に危害を加える者の排除が主任務になるもの。」
グラ「まぁ、そういう事だ。」
長門「では、我々は日陰者らしく此処でおさらばすることにする。」
長門「縁あればまた何処かで。」
172 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/06(土) 23:46:12.70 ID:j06fqDe+0
日向「長門!」
長門「?」
日向「もし、もしも、何か困った事が起きたなら連絡をくれ!必ず駆けつける!」
長門「いいのか?そんなに安請け合いして。」
日向「共に三途の河辺を歩いた仲じゃないか。戦友の危機とあらば何を置いても駆けつけるさ。」
長門「戦友か。いい響きだな。日向が女で無ければ惚れていただろうな。」
日向「そっくりそのまま返そうか。」
かわされる握手。
長門「では今度こそ本当にさよならだ。」
そう言い長門達は去っていった。
吹雪「あんなに凄い人達がお金目的とか犯罪者とかだなんて。」
朝潮「本当なんでしょうか?」
日向「それについては我々が判じる事が出来ないな。
我々が見たのは彼女達の一面に過ぎないのだからな。」
日向「ただ、犯罪を犯したり、お金が目的であったりというのは
そうせざるを得なかったやむにやまれぬ事情が有るんだろう。」
加賀「せざるを得なかったですか。」
日向「あぁ。そうで無ければあれ程の武勇を振るう艦娘が日陰者として裏道を歩む事などある訳がないだろう。」
日向「今回にしても味方の我々を逃がす為に自分たちは陽動、さらには敵指揮官の斬首まで実行しているんだ。」
日向「英雄と呼ばれてもおかしくないんだ。」
日向「それ程の功績なんだ。」
いい終わり水平線の向こうまで長門達の姿が消えるのを見送る日向は唇をぎゅっと噛み締める。
大潮「英雄ですか?」
日向「あぁ、味方の為に自分の命を顧みず勇猛果敢に戦う者の事を古来より英雄と呼ぶ。」
日向「彼女達はまさしく英雄だよ。」
173 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/06(土) 23:50:11.76 ID:j06fqDe+0
数日後
朝目新聞 一面見出し
『 敵泊地を襲撃し我が国の艦隊は犠牲を出しつつも敵棲姫を撃破! 』
提督「敵重要拠点を襲撃し、敵旗艦の重巡棲姫を撃破。」
提督「撃破したのは呉所属の艦娘でその英雄的行為により逆転勝利が齎された。」
不知火「随分とあれな新聞ですね。」
不知火の辛辣なコメントを他所に更に読み上げる提督。
提督「また、本作戦には参加20回にもなる古参の駆逐艦が参加していた為その知識が大いに役立てられた。」
不知火「長門さん達からあがっている報告から随分とかけ離れています。」
提督「だが全てが嘘ではない。」
不知火「・・・。」
提督「不知火。プロパガンダってのは如何に1の事象を大きくするかを競うもんだ。」
提督「今回は本来なら歴史にその名を残すほどの大敗といっていいくらいの負け戦だったんだ。」
提督「それを長門達の奇策で逆転ホームランだ。」
提督「庶民ってのは英雄のような、早い話チートキャラが無双するなんて話が大好きでね。」
提督「本当に見るべきはどの様にして流れを押さえ、
その抑えた流れを勝ち筋にどうやって持って行ったか。
そして、それに至るまでにどうやって流れを作ったかなんだ。
誰がどんな戦功を上げたかとかの個人の動きなんて物は重要ではないんだがね。」
不知火「竹中重治ですね。」
提督「不知火は物知りだな。」
174 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/06(土) 23:52:35.36 ID:j06fqDe+0
提督「司令長官にその辺りの説明が面倒だな。」
不知火「司令、長官へ報告に行かれるのですか?」
提督「あぁ、書類をPDFで送っただけじゃ駄目らしい。」
不知火「せめて持参くらいはした方がいいかと思いますが。」
提督「この間仕事の話を伺いに行った時に椅子磨きの話しをされてね。
今度は机磨きの話をされるんじゃないかと思うと足も遠のくさ。」
不知火「ではお手数ですがこちらの書類もお願い出来ますでしょうか?」
提督「長門達が購入した物品の決済関連か。うん。よく纏めてある。手間かけたな。」
不知火「褒めてくださりありがとうございます。ですが・・・・。」
提督「ん?」
不知火「最後のページの物は流石に決裁が降りないのではないかと思います。」
そう言われ最終ページの内容を確認する。
そこには大量の酒類が購入された事か記載されていた。
175 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/06(土) 23:54:09.81 ID:j06fqDe+0
なんだこれは?と思い言葉に出しかけ、ふと、長門との会話を思い出す提督。
『 いっぱい奢れ 』
提督「あっ!あぁあぁ。成る程、そう来たか。」
提督「これは一本取られたな。」
不知火「?」
提督「いや、これの代金は私が持とう。まったく。大したもんだよ。」
一人何かを合点したように笑う提督。
コンコン
長門「提督よ。酒宴の用意が出来たぞ。不知火もどうだ?」
提督「まったく。長門、お前に一杯食わされたよ。」ニヤリ
長門「いっぱい食らうのはこれからだろ?」ニカッ
提督「あぁ、今夜は飲む。とことんな。不知火。飲むぞ!」
不知火「ぬい!?」
提督「俺の奢りだ遠慮はいらん。」
不知火「了解です。」
束の間の平和。
鎮守府の仲間が立てた武勲を酒の肴にこの日、宴会は大層な盛り上がりだったそうである。
176 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/07(日) 00:01:48.78 ID:tHi5baoo0
これにて長門編は一応終了です、長門が任務に拘った理由は次回にやります
今回の更新に収められませんでした、申し訳ないです
戦闘描写が入ると文字量が多くなるなと考えつつ他の方はどんな感じなんだろうかと考えてしまう今日この頃
皆様、ここまでお読みいただきありがとうございました
乙レス、感想レス、いつもありがとうございます、ではまた次回の更新もお読みいただけると幸いです
177 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/07(日) 00:22:43.38 ID:EoEQ+pTL0
おつ
島津の退き口しかないだろうとは思ったけど初手煙幕しか予想できなかった
誰を残すのかって方向に頭がいってしまったw
178 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/08(月) 12:37:22.27 ID:Zir6FnTA0
おつんこ
179 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/12(金) 21:43:55.66 ID:4CCLSpn50
大晦日に大和を引いて大型卒業したのですが武蔵の建造Up中という事で
折角なので2人目武蔵を狙うべく建造挑戦
ありがとうございます、2人目来ました、年始からすでに今年の運がストップ安な気配の1です
更新をさせていただきます、お時間よろしければお付き合い下さい
180 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/12(金) 21:45:36.17 ID:4CCLSpn50
第八話と九話の間の話 長門の過去と提督の同期と戦艦棲姫の知り合いと
181 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/12(金) 21:46:42.24 ID:4CCLSpn50
長門「時雨、ここに居たのか。」
時雨「あぁ、長門。上手いことやったね。提督が笑っていたよ。」
長門「まぁな。奢れと言っておいたからな。あいつは奢ると言った以上言葉は曲げんさ。」
時雨「そっか。それで、僕に何か用かな?」
長門「あぁ。作戦の前に話していた私が作戦の実行にこだわっていた理由について話をしなければと思ってな。」
時雨「そう言えば約束していたね。」
時雨「僕としてはもういいよと言いたいけれど、長門がそれで自分を許せそうにないからちゃんと聴こうか。」
長門「理解してくれて助かるよ。」
長門「さてと、それではまず、何をどう話したものか・・・・。」
酒が注がれたコップを片手に虚空を見つめる長門。
182 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/12(金) 21:48:25.53 ID:4CCLSpn50
長門「そうだな私がここに来る前の話しからしようか。」
長門「私のな、艦娘としての人生はな、この戦争の長さとほぼ同じだ。」
時雨「・・・・、それは。長門はそんなに初期から艦娘として戦っていたのかい?」
長門「たまたま適正があったというのもだが。
もともとは女性自衛官だったんだ。」
長門「だけに艦娘へと志願するのになにも躊躇はなかったさ。」
長門「それから訓練や戦闘に明け暮れる日々を過ごし
気付いたときには教導をやるようになっていた。」
時雨「エリートじゃないか。」
長門「新任のひよっこを激戦地に連れて行って実戦のやり方を叩き込むことを
エリートと呼べるならそうなんだろうな。」
長門「来る日も来る日も新規に着任した艦娘達を前線に連れて行き実戦での行き残り方を教える日々。」
長門「戦場と言うものは非情だ。最前線に新米を連れて行けば必ず一人、二人と轟沈が出る。」
長門「そんな事が続いて次第に私の心は何も感じなくなってしまった。」
長門「毎日のように誰が死んだ、
いや、死ぬならせめて味方の盾になって死ねぐらいに毒づいていたかな。」
時雨「初期の深海達との戦いは今よりずっと酷かったと聞いているから・・・、
それは長門の責任ではないと思うけど。」
長門「あぁ、すまんな。そう言って貰えるとありがたいが、
味方の骸を積み上げそれにより自己の武勲を積み上げる、
当時の私はそれを是としていたんだ。」
183 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/12(金) 21:50:00.20 ID:4CCLSpn50
長門「そんな生活に何も疑問を思わなかったんだ。
そんな生活を続けていくうちに戦場に出れば
敵を地獄に連れて行く火車だの雷槌だのありがたくもない二つ名が増えていった。」
長門「そんな渾名に反発するように戦闘を繰り返していたら、
いつしか英雄なんて言われていたよ。実に傍迷惑な話だった。」
時雨「ははは・・・。」
長門「そんなある日にな。
補充兵として来た駆逐艦の一人が吹雪だったんだ。」
長門「もちろん今回の護衛対象だった吹雪とは何も関係がない。」
長門「初めは他の娘達と同じようにすぐに沈むもんだと思っていた。」
長門「だが、私の戦い方の中から何か得るものがあったらしい。存外しぶとくてな。
いつしか私の副官的な役割をするようになっていたよ。」
昔を懐かしむように楽しく話す長門。
時雨「へぇ、それは随分な猛者じゃないか。今は何処の鎮守府に居るのかな?」
時雨「僕ももしかしたら何処かで会っていたかもしれない。」
長門「それは無いな。」
長門「私が最期を看取ったからな・・・・。」
時雨「あぁ・・・、ごめんよ。」
長門「最後に吹雪と出撃したのが鉄底海峡作戦なんだ。」
時雨「・・・・。そっか、あの地獄の釜底か。」
敵味方ともに大損害をだし勝者も無ければ敗者も無いとまで言われた海戦。
夜戦に次ぐ夜戦で敵味方入り乱れての同士討ちが発生した悲惨な海戦である。
一応、人類が辛勝したとは言われるがそこで採られた戦法は未だ賛否両論である。
184 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/12(金) 21:53:38.80 ID:4CCLSpn50
長門「捨て艦というのは実に気分がよくないもんだ。」
時雨「長門の艦隊もさせられたのかい?」
長門「いや、私が知る限りでは命令は来ていなかった。」
長門「そして、我々が指揮する艦隊は捨て艦などと言う非道をすることなく任務を遂行できたはずだったんだ。」
時雨「長門?」
長門「吹雪は近くで助けを求めてきた友軍艦隊の、
そう、捨て艦として連れてこられていた駆逐艦娘を助けに行って沈んだんだ。」
長門「無線で助けを求めてくるその娘達を私は助けるのは無理だと判断した。」
長門「なにせ夜戦で周囲は砲火が入り乱れていて敵味方の区別が既についていなかったからな。」
長門「それを吹雪は助けにいってな。
私は暗闇の中を駆けていった吹雪の後姿を未だに夢に見ることがある。」
長門「どんなに機関の出力を上げても追いつけないんだ。」
長門「なんとか見つけた時には既に息絶えていてな。
吹雪が必死の思いで救った駆逐艦の娘達に謝られたよ。」
長門「その後については日向が語ったようなまぁ、狂人の所業だ。」
長門「探照灯で敵に自分の位置をさらして誘蛾灯の如く集まってきた敵を殲滅。」
長門「敵を沈めまくって撃沈記録なんてものを打ち立てたのもこの海戦だったか。」
時雨「昔に聞いた事がある英雄的行為で勝利を齎した艦娘がいたって。」
時雨「長門のことだったんだね。」
長門「必死だっただけさ。
勝利を収め帰り着いた私を英雄として祭り上げようとした動きはあったが全て断ったよ。」
長門「吹雪を見殺しにしておきながら何が英雄だとな。
今まで散々見殺しにしてきておいて何をか言わんやというやつかもしれんがな・・・・。」
185 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/12(金) 21:55:46.73 ID:4CCLSpn50
時雨「それで長門はその後どうしたの?」
長門「吹雪の家族にせめて通常以上の遺族年金が出るように色々手をつくしたのだが全て拒否されてね。」
長門「吹雪は私に捨て艦作戦の命令が来ていることを敢えて上げていなかったようで
其れを命令違反とされた事が原因だったらしい。」
長門「私が指揮官だが武勲を挙げていたから処罰をする事が出来ず
結果的に死人に口無しと言うことだったのだろう。」
長門「軍令部の連中曰く、命令に基づき捨て艦をしなかった者達が
処罰されなかっただけでもありがたいと思えとね。
その後の私は参謀共が集まる軍令部に自然と向かっていた。」
時雨「まさか!?」
長門「そう、そのまさかだ。
鉄底海峡作戦の後に軍令部が敵の襲撃に遭ったとされているあの事件は私がやったものだ。」
長門「糞食らえ。正しくそう思ったな。
それで、捨て艦なんて物を考えた参謀共を皆ミートパイに転職させてやったのさ。」
長門「後は解体死刑宣告後に牢屋で提督にまだ戦う意思があるならここに来いと誘われ今に至るだ。」
時雨「今回の任務は長門にとって贖罪だったんだね。」
長門「あぁ。まぁ、自己満足だ。すまんな付き合わせて。」
時雨「いいさ。戦友でしょ?」
長門「ふ、はははは。確かに戦友だな。」
長門「死線を共に潜り抜けた戦友だ。」
長門「時雨、これからもよろしく頼む。」
急に畏まり頭を下げる長門。
時雨「もちろんだよ。長門。」
握りこぶしを前に出し。
長門はコンと時雨の作ったグーとぶつける。
長門「摩耶や川内は私がしでかした事件については知ってはいるがその原因については知らない。」
長門「時雨の気が向いたら話してやってくれ。」
そういい長門は川内達が宴会を続ける会場へと戻っていった。
186 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/12(金) 21:58:11.43 ID:4CCLSpn50
後日 横須賀艦隊司令部
提督「以上が先の撤退戦の詳細です。」
長官「戦略的敗北を戦術的力技でひっくり返すとはな。」
長官「実に痛快だな。」
長官「惜しむらくは非正規な事だな。」
提督「戦功の事ですか?」
長官「うむ。流石にブリキのバッジなんぞ君の所の艦娘は喜ばんだろ?」
提督「えぇ。腹の足しにもならないと言われてしまうでしょうね。」
長官「まぁ、とにかくよくやってくれたよ。」
提督「うちの鎮守府以外の被害は甚大だったようですが?」
長官「それについては責任を取ってもらったさ。」
長官「お飾りの元帥殿は勇退、これで元帥が3人になった。意見統一もしやすかろう。」
提督「かなりの思い切った形ですね。」
長官「それだけ失った兵の人数が多いという事だ。」
長官「言葉は悪いが艦娘そのものは補充をしやすい、が、熟練が頭につくと人的資源の損失は計り知れんよ。」
長官「作戦を立案した連中はもれなく『 栄転 』して貰った。」
長官「配属先へ移動する間に不幸な事故に遭わないといいのだがな。」ニタリ
提督(事故ね・・・。恐ろしいお方だ。)
187 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/01/12(金) 21:59:28.35 ID:4CCLSpn50
長官「おかげでずいぶんと風通しがよくなったぞ。」
提督「それはめでたい事ですね。では、私はこれにて。」
長官「やれやれ、内地勤務への誘いもさせてくれんとは。まったく。」
提督「机磨きはお断りしますよ。」
長官「そうか。では、礼代わりといってはなんだが
君が秘書官に纏めさせた書類については私の権限で全て決裁をしておこう。」
提督「ありがとうございます。では。」
長官「あぁ、そうそう。君の同期で男君という人物を知っているかね?」
提督「あぁ。よく知っていますよ。民間からのなかなか面白い経歴で入った人物ですよ。」
提督「彼がどうかしました?」
長官「あぁ、いや。その男君がたまたま君が来ているのを聞いて友好を暖めたいといっていたのでな。」
長官「暇が有れば会ってやってくれ。帰るのは明日だろ?」
提督「了解いたしました。」
そう言い提督は長官室を退出した。
そして、廊下を歩いている所で同期の男性に会う。
188 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/12(金) 22:01:39.39 ID:4CCLSpn50
提督「ん、おっ。」
男「いよう!久しいな。元気か?」
男「中央に出勤とは珍しいな。今日の夜は暇か?」
提督「あぁ、今しがた長官に会ってやれと言われた所だよ。」
男「そうか、じゃ、今晩の飯。付き合え。」ニカ
提督「分かったよ。」ヤレヤレ
居酒屋 竜飛
女将「あら、男さん。いらっしゃい。」ウフフ
提督「なかなか落ち着いたいい店だな。」
男「女将が美人で繁盛しているが売りは料理でね。」コンバンハ
女将「あら、美人だなんて。まずはお通しどうぞ。」
提督「店の名前なんだが。」モグモグ
男「まぁ、そういう事だ。俺の仕事絡みで艦娘を辞められた方が切り盛りされてる。」
男「他にも社会復帰の一環で艦娘を辞めた娘を預かっていただいたりする事があるんだ。」
提督「しかし女将さんに面影がないな。」マジマジ
男「証人保護の関係もあってな、艦娘を辞める際に整形で顔は変えているからなんだ。
骨格から変える妖精さんの謎技術で、ベテランの整形外科医ですら分からん。」ナイショナ?
提督「すごいもんだ。」マジマジ
女将「あら恥ずかしいですね。」ウフフ
男「あんまりジロジロ見ていると失礼だぞ?」
提督「あっ、あぁ、そうだな。」
男「久しぶりに会ったんだ。まぁ、飲もうじゃないか。」
189 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/12(金) 22:03:46.43 ID:4CCLSpn50
30分後
提督「それで、偶然を装って俺に何のようだ?」(小声)
男「気付いていたのか。」
提督「監査室で剃刀だの狂犬だの言われるお前が
俺みたいな窓際の地位の提督に声をかけるってのは何かあると思うだろ。」
男「同期の友好を暖めたいとは思わないのかねぇ。お前と言う奴は。」マッタク
提督「まぁ思わないでもないがお前が親切にする時は何か裏がある。」
男「酷い言われようだな。例の件のとき俺が色々動いたのを忘れたのか?」
提督「その件については感謝している。」
男「あの時は俺の直属の上司である元帥にかなり骨を折っていただいたぞ。」
提督「その代わりに問題児を押し付けられたがな。」
男「提督の適正者が少ないんだ。問題児とはいえその実力は折り紙つきの連中だ。」
男「限られた資源は有効に使うもんだろ?」
提督「その通りではあるが実に灰汁の強い連中ばかりよこしてくれる。」
男「お前さんなら上手く使いこなせると思っているさ。」
提督「よしてくれ。まったく・・・・。」
男「あぁ、そうそう。」
提督「ん?」
つ バスクリン
男「お前の所は風呂の事情がよくないと聞いてるぞ。
風呂でのリラックスタイムは重要だ。良い物をあげよう。」
提督「入浴剤か。ふむん。ゆずの香りかぁ。」
提督が差し出された入浴剤の缶を手に取る。
190 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/12(金) 22:05:10.87 ID:4CCLSpn50
カロン。
提督「!」
男(お前の所に以前送った時雨なんだが、あれの調査をしたのは俺なんだ。)
提督(ほう。)
男(あまりにも証拠が綺麗に整いすぎてて逆に怪しくてね。)
提督(それで再調査でもしているのか?)
男(あぁ、再調査も正式にやれないから個人でやっているんだがあまりにも何もないんだ。)
提督(何もない?)
男(あぁ、全てが綺麗に消されてしまっている。再調査が出来ないようにな。)
男(残っている証拠も全て不自然なまでに時雨が犯人になるように作為的に仕向けられてる。)
提督(それはなんとも不自然だな。)
男(元帥直属の監査室の人間である俺を直ぐにどうこう出来るとは思わないが。)
提督(とんだ爆弾だな・・・。)
男「まぁ、入浴剤を使うなら鎮守府に帰ってゆっくりと使ってくれ。」
男「外地は人の交流が少ないと聞くからこういうのも手に入りにくいだろ?」
提督「あぁ、なかなか手に入りにくい。帰ってゆっくりと楽しむよ。」
男「では、今日の再会に。改めて乾杯。」
提督「乾杯。」
提督は同期の男から入浴剤の缶に入った何かを受け取る。
それの中身は後程知ることになるのだが。
191 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/12(金) 22:08:53.56 ID:4CCLSpn50
北極海 座標不明
ヒュゴゥウゥ
北方水姫「外気温−34度。実にいい気温ね・・・・。」
戦艦棲姫「私にとっては寒いわ。」
水姫「私の艤装はパワータイプだから。」
戦艦「そういえばプロトモデルだったわね。」
水姫「えぇ、その所為で排熱が酷いのよ。制御系のオーバーヒートを防げるから外気温は低いほど調子が良いいの。」
水姫「それに排熱が酷いおかげもあって普段が薄着ですむというメリットも無くも無いわ?」
戦艦「出力重視ですものね。私の艤装が機動性重視のと比べると対極にあると言えなくもないかしら?」
水姫「それで今日はどういった用かしら?」
戦艦「先日の逆転敗北で重巡が沈んだでしょ?あれの責任を取らされて今は伝書鳩をやっているの。」
水姫「あら、ずいぶんね。でも、あなたの事だから世界の海を回れて楽しい位に思っているのじゃないかしら?」
戦艦「あら、ばれるのね。」
水姫「中枢棲姫もその辺り分かっててやってるわよ。それで、何を伝えに来たのかしら?」
192 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/12(金) 22:13:10.02 ID:4CCLSpn50
戦艦「かねてからの予定通りに再度の侵攻、上陸作戦を決行せよ。との事よ。」
水姫「重巡が沈んだとはいえ敵の数を減らすには成功したものね。」
水姫「再度の侵攻作戦をするには確かに今がチャンスではあるわね。」
水姫「了解したと伝えておいてもらえるかしら?」
戦艦「えぇ。分かったわ。」
戦艦「そうそう。先の作戦で重巡を沈めた連中だけど、もしかしたら此方にも来るかもしれない。」
戦艦「連中は超がつく熟練揃いだから万に一つも油断しないようにね。」
水姫「そうね。慢心が危険な事は重巡が身を持って教えてくれたしね。」
水姫「他山の石として気をつけるわ。」
戦艦「では。作戦の成功を祈っているわ。」
水姫「До свидания」
戦艦「えぇ、さようなら。」
ヒュゥゥゥ
戦艦(この吹雪は視界を悪くするわね・・・・。)
戦艦(視界不良の中で戦うなら戦いなれている彼女の方が有利でしょうね・・・。)
戦艦棲姫は北極海を超え何処かへ向かおうとしてた。
そして、また、先の作戦で開いた防御網の穴をつくべく北からの風とともに動き始める艦隊が居た。
193 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/12(金) 22:18:37.47 ID:4CCLSpn50
本日分は以上で終了です
次回から1の事前設定の中で一番軽い伯爵のお話の予定、後、少しだけ鎮守府に居る他の娘達に触れられたらなぁと思っています
イチャコラ?そんなもの知るか!な荒んだ設定でゆっくり進行しています
乙レス、感想レス、いつもありがとうございます、励みになります
いただいたレスは参考にさせて頂くこともあります(150様!バスクリン出てきたよ!←やっとかと怒られそう)
では、次回もよろしければお読みいただけると幸いです
194 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/12(金) 22:40:22.82 ID:sDNlazYA0
無理やりバスクリンw
195 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/12(金) 22:44:49.37 ID:KUbOVVFPo
キタ!バスクリン出た!これでかつる!
196 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/13(土) 02:10:23.00 ID:4xlW5HyA0
おつおつ
適材適所・有効な駒も活かしきれないと大変だな…
失敗しても元をサックり処分するだけ代謝も修正も早そうだけどw
197 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/17(水) 21:51:48.96 ID:n394wk2Q0
龍田改二、なかなか尖った性能ですね
AKIRAのピーキーすぎてお前には無理だよを思い出しました
使用場面が嵌れば面白そうな設定(現状ちょっと強い駆逐艦みたいな感じです)
村雨は文句無いです、グラが変わっただけでも大勝利です
では、本日の更新をさせていただきます
198 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/17(水) 21:53:25.32 ID:n394wk2Q0
第九話 ラッパが鳴って壁は崩れた 前編
199 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/17(水) 21:55:06.94 ID:n394wk2Q0
明石の工廠
時雨「うーん。」
雪風「いいものなんですが・・・・。」
明石「買ってくださいよぉ。」
時雨「Bofors 40mm 6連装。」
雪風「まさかの英国面。MkY。」
明石「歴史上最後の戦艦、ヴァンガードの兵装だったのを!」
時雨「日本お得意の小型化に成功。そして艦娘の兵装に?」
雪風「でも、これ戦艦アイオワ級初期兵装の4連装より増えてますから。」
時雨「僕らが積むと艤装の電探とか火器管制のリソースをかなり食うんじゃないかな?」
雪風「更に、絶対重いです。」
雪風「そして是を使おうと思ったら射撃管制システムセットで運用しないと本来の性能を発揮できないでしょうね。」
時雨「だろうね。そうなると電探から全て入れ替えないといけなくなっちゃう。」
雪風「つまり、お高いんでしょ?」
明石「今ならコミコミで何と大サービス450万!」
時雨 雪風「「高すぎだね(です)」」
200 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/01/17(水) 21:56:52.15 ID:n394wk2Q0
明石「駄目ですか・・・、それならこんなのはどうです?」ショボン
明石「超お買い得酸素魚雷!50本1000ドル!どうです!?」キラキラ
時雨「1本当たり20ドル?!」
雪風「ちゃんと進むんですか?!」
???「進むには進むけど爆発しないのが多いんだよね。」
時雨「初月それは本当かい?」
明石「いや。まぁ、中には不良品もありますよ。」
初月「確かに1、2本なら僕も何も言わないさ。
ただそれが10本中8本にもなるとさすがにね。」
時雨「不良品率80%・・・・。」
雪風「流石に何処の国製品かと聞きたくなりますね。」
明石「ちょっと初月さん!商売の邪魔しないで下さいよ!」
初月「僕らは命が掛かってるんだ。
不良品が原因で命を落としたなんてなったら笑い話にもなりゃしない。
それとも明石の所は代えの命まで売ってるって言うのかい!?」
時雨「じゃ、そういう事だから。」
雪風「またの機会に、です。」
明石「あぁ・・・。もうぅ・・・。」
201 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/17(水) 21:58:32.66 ID:n394wk2Q0
時雨「ありがとう初月。おかげでお金を無駄にせずに済んだよ。」
初月「それは良かった。」
初月「ところでグラーフを見なかったか?先ほどから探しているんだが。」
雪風「この時間なら食堂で珈琲道を窮めているんじゃないでしょうか?」
時雨「伯爵がどうかしたのかい?」
初月「あぁ、いや。新しく手に入れた艦載機の対艦性能を試したいという事で
昼食を報酬に演習に付き合う約束をしていたんだ。」
雪風「伯爵は艦載機マニアですよね。」
時雨「そうだね。この間はハウニブが手に入らないのかって明石に詰め寄っていた気がする。」
雪風「流石に空想科学の部類は無理なんじゃないでしょうか?」
初月「うーん、深海棲艦の艦載機はそれに近い気がしなくもないかな。」
そんな話を和気藹々としながら食堂についた一同。
202 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/17(水) 22:00:03.15 ID:n394wk2Q0
食堂
提督「うーん。これはコロンビアかな?」
不知火「キリマンジャロですね。いい豆を使用されています。」
グラ「ふふ。実にいい味だろう。」ムフー
提督「というか南米産の豆なんてどうやって?」
不知火「先日の物品購入書の購入明細一覧に入っていましたが。」
提督「?」
不知火「?」
どうやら先の決裁書類内での連絡の不備があったようである。
初月「グラーフ!」
グラ「あぁ。初月。と、もうそんな時間だったかな。」
初月「いや、まだ時間は大丈夫だ。」
グラ「そうか、それだったらコーヒーはどうだ?時雨達の分も淹れよう。」
グラ「時雨はエスプレッソ。砂糖たっぷり。」
グラ「雪風はラテ。上のラテアートは雪だるまをサービスだ。」
グラ「初月は・・・・。」
初月「カフェモカを。」
グラ「承知した。」
時雨 雪風 初月「「「美味しい〜。」」」ホフゥ
グラ「この戦争が終わったらコーヒーショップを開くんだ。」
雪風「分かりやすいフラグですね。」
時雨「伯爵は分かっててやってるから性質が悪いや。」フフ
初月「その、2人はグラーフの事を伯爵と呼んでいるけど。」
グラ「あぁ。私の艦娘としての名前がグラーフ・ツエッペリン伯由来という事もあるのだが、
そもそもの私の出自がフォンの称号を頂くシュペー家でもあるからなんだ。」
203 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/17(水) 22:02:02.62 ID:n394wk2Q0
提督「そういえば由緒正しいライン貴族だったな。」
グラ「あぁ。」
時雨「初月、それ以上は聞くべきではないよ。」
何かを尋ねようと口を開きかけた初月を制する時雨。
グラ「何、大した話ではない。
前に居た鎮守府のクズが空母の仲間や駆逐艦の娘達を強姦しようとしたのでな。
男性器を捻じ切って口に突っ込んでやっただけだ。」
グラ「後悔など微塵もないよ。」
グラ「そも、ポークビッツ程度のサイズだったんでな?
捻じ切った後に果たしてきちんと捻り取れたのかどうか2度ほど確認したくらいだ。」
提督「本来は海外艦の派遣協定に基づき本国へ即時送還だったんだがな。」
グラ「その節はAdmiralに実に迷惑をかけたな。」
グラ「だが、あのような問題のある奴を指揮官に据えるこの国もどうかと思うぞ。」
提督「それについては弁解の仕様がないな。」
グラ「まぁ、そんな訳もあって技術士官として派遣されていて何も得ずに帰国する訳にもいかなくてな。」
グラ「Admiralに骨を折ってもらってこの鎮守府所属として色々技術士官としての役目を果たしているという訳だ。」
提督「まぁ、そういう事だ。といってもグラーフの場合契約が特殊でな。」
提督「ここを出て行こうと思えばいつでも出て行けるはずなんだがな。」
グラ「ふふん。ここにいれば日本はおろかアメリカやイギリスの最新、
それも艦娘の兵装としては開発段階の物まで使えるのだ。」
グラ「情報という宝の山を前に帰国する等あり得ん。」キリッ
グラ「それに、かけがえのない友も出来たしな。」(不知火達へウインク)
提督「まぁ、好きにすると良い。ここにいる限りは俺の庇護下だ。」
提督「引渡し要求には応じんよ。・・・、時雨や他の者達についてもだ。」
提督「コーヒー、実に美味かった。ありがとうな。さてと、不知火。紙の整理に戻ろうか。」
不知火「了解しました。」
204 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/17(水) 22:03:33.51 ID:n394wk2Q0
演習場付近
グラ「さてと初月よ。演習に付き合ってもらおうか。」
グラ「見てくれこれを!」
ババーン! Fw-109 G-3改
時雨「伯爵の改造時装備のフォッケウルフと違うの?」
グラ「うむ。これは長距離爆撃型でな?私の装備のフォッケウルフより航続距離が長い!」
グラ「更に懸吊架も改良され搭載可能爆弾も1t爆弾と1.8t爆弾が可能になっているのだ!」ムフ―
時雨「スツーカの後継みたいなものかな?」
グラ「Nein!Nein !Nein !スツーカとは違うのだよ!スツーカとは!」
時雨「おっ、おぅ。」ヤヤヒキ
グラ「戦闘爆撃機という点では相違ないがスツーカは対地目標に特化している機体に対し
こっちは爆撃後に空戦も出来る。そうだな零62型爆戦の仲間と思ってくれていいぞ!」
雪風「これ、長くなるやつです?」
初月「複座なんだね。」マジマジ
グラ「そこに気づくとは流石だな初月。」
グラ「そう!旧型となりつつあったJu87が複座であったのにならい複座に改造したのだ!
だから形式名の後に改がついているのだよ!」
グラ「なので搭乗員妖精の機種転換が楽になった!」
グラ「さらにエンジンも高高度作戦が可能なD型の物を無理やり使用している!」
グラ「つまり高高度を長距離移動して爆撃が出来るというロマン機なのだ!」
時雨(最早艦載機じゃなくてもいいんじゃないかな?)
初月(僕もそう思うがそれは言わないのがやさしさなんじゃなかろうか?)
205 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/17(水) 22:04:51.99 ID:n394wk2Q0
雪風「あの。単純な疑問なんですが、
爆装重量等の関係で空母艦載機として飛ばせるのですか?」
グラ「フハハハ!問題ない!そこは私の艤装を色々と改造した。」
グラ「もともと派生元のFw109を発艦させていたのだ、カタパルトを改造する事によりそれも無事解決だ。」
グラ「見てくれこれを!」
ババーン! 蒸気カタパルト
時雨「どこから手に入れたのさ。」
グラ「大戦後の技術などという事はさておきこれを使えばだな?」
バシュ! メキャラ! バキッ! ←カタパルトフックが折れてバランス崩した音。
時雨 雪風「「あっ。」」
パッ! パッ! ←搭乗員妖精が落下傘にて脱出しました。
時雨「脱出は上手くいったみたいだね。」
グワーン ←海に向かって落ちていってます。
ドガーン!
初月「ふむ。木っ端微塵だな。」
時雨「カタパルトの打ち出す力が強すぎたみたいだね・・・・。」
グラ「あぁあああああ!!??」
グラ「あぁあああぁぁぁ・・・・・。」
初月「グラーフ、その、訓練をするのかい?」
グラ「あぁぁ・・・・。」
時雨「無理じゃないかな・・・。」
206 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/17(水) 22:05:30.96 ID:n394wk2Q0
雪風「今はそっとしておいてあげましょう。」
グラ「あぁあ・・・・。」
時雨「初月はこれから後の予定は?」
初月「瑞鶴と今度の空母狩りについて打ち合わせがあるくらいだ。」
時雨「そう。じゃぁ、伯爵が約束していた昼御飯は僕が御馳走するよ。」
時雨「食堂へ戻ろうか。」フフ
初月「いいのか?僕は結構食べるぞ?」
時雨「雪風ほどじゃないでしょ?」
雪風「雪風はそんなに食べませんよ?」
時雨「この間、炒飯空母盛完食してもう1杯食べてたよね?」
雪風「雪風、忘れました!」テヘッ
川内「にしても本当、どこに消えてるんだろうね?」シュタッ
初月「川内か。何処に潜んでいたんだ?」
時雨「それは気にしちゃ負けだよ。」
207 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/17(水) 22:06:07.54 ID:n394wk2Q0
雪風「忍者ですから。」
川内「明石の所に寄ったら三人で食堂に行ったって聞いたから探してたんだよ?」プクー
川内「私を除け者にするなんて、No―なんだからね?」
初月「金剛?」
川内「正解!じゃ、みんな!ご飯にしよ!」
雪風「ごっはん〜♪、ごっはん〜♪」
こうして四人は食堂へ再度向かったのだった。
208 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/17(水) 22:06:36.36 ID:n394wk2Q0
千島列島 付近海上
戦艦棲姫との会談後、1ヶ月後のある日
209 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/17(水) 22:08:00.90 ID:n394wk2Q0
水姫「再度の上陸作戦ね。」
リ級「吹雪は後、1週間程は続くかと思われます。」
水姫「吹雪が強いとレーダーの効きが悪いから攻める側には有利ねぇ。」ウフフ
水姫「気象条件が侵攻作戦へいい日を待った甲斐があったわね。」
リ級「千島を落とした後は単冠湾の敵泊地を落すと形ですか?」
水姫「可能なら。敵にしてみれば千島を落されるだけでもかなりの脅威。」
水姫「といっても単冠湾には大した戦力は残っていないでしょう。」
リ級「ソ級やイ級による強行偵察でもあまり有力な戦力は残っていないようです。」
水姫「先日の敵による反攻作戦でこちらが沈めた敵艦娘の所属を調べていった中で
北方方面の艦隊がそれなりに居たみたいよ。」
リ級「穴が大きく開いているという事ですね。」
リ級「ですが、攻めに行くには空母の数が少ない気もしますが。」
水姫「そうね。本当はもっと連れてきたかったのだけど私達の滑走路は海の上。」
水姫「敵の滑走路は陸上。ここが大きな違いね。」
210 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/17(水) 22:08:41.77 ID:n394wk2Q0
リ級「?」
水姫「今の冬時期、この海域は吹雪がきつい。攻める側の私達は発着艦が困難なのよ。」
水姫「ただでさえ視界不良に加え上下の感覚も狂わせる吹雪。おまけの強風。」
水姫「敵との交戦によるもの以外の喪失が増えるだけよ。」
リ級「敵も同じ状況だから空母は少なくて良いという事ですね。」
水姫「敵は陸の滑走路が使える分こちらよりマシでしょうけど、そうね。それほど変わりはないでしょうね。」
水姫「だけに島を取って拠点を作る必要性が高いのよ。」
水姫「今度の上陸作戦は成功させるわよ。」
リ級「了解です。」
211 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/17(水) 22:09:31.80 ID:n394wk2Q0
水姫「さぁ、敵には存分に踊ってもらいましょう?」
水姫「私達を北の海に閉じ込めた敵を打ち倒す。」
水姫「そう、冬から春を迎えるが如く。私達の時代を謳歌するわよ。」
リ級「さながら祭りですね。春を迎える事を喜び歓迎する祭り。」
水姫「そうね、『 春の祭典 』と言ったところかしら?」
リ級「北の海から艦娘、人間共を追い落としてやりましょう!」
水姫「えぇ。そうね。」ウフフフ
北の魔女。
かの一団は再びの侵攻を開始した。
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