【モバマス】龍崎薫「せんせぇはやさしいのに……」

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82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 02:13:13.67 ID:Hl7zZ10GO

あい「しかし、まさか薫に話していたとは思わなかったよ」


ちひろ「私も驚きました。仮眠室で聞いたと言っていましたね」


あい「眠る直前に聞いたんだが、一人でいるのは寂しいからと、薫が眠るまで傍にいてあげたようだ」


あい「その時に指輪を見て、気になったから聞いたらしい。先生と二人だけの秘密、そう言っていたよ」


ちひろ「無邪気って凄いですね……」


あい「子供は疑問に真っ直ぐだからね」


ちひろ「………あいさん、プロデューサーさんは何と言っていたんですか?」
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 02:14:53.27 ID:Hl7zZ10GO

あい「彼は最後まで担当者と揉めていたよ」


あい「そっちが任せると言った以上、代役は有り得ない。そう言って車に乗ったんだ」


あい「私はそこまでしなくても良いと言ったんだが、これは私の為の仕事だからと言って聞かなかった」


ちひろ「………プロデューサーさん、何をしているんでしょうね」


あい「分からない。ただ、このままでは代役を立てるか仕事を断るしか方法はないと思う」


ちひろ「…………」


ガチャ


P「……東郷さん、いてくれて良かった」
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 02:16:18.95 ID:Hl7zZ10GO

あい「えっ?」


ちひろ「あっ、プロデューサーさん……」


P「千川さん、ありがとうございます。それから、ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」ペコリ


ちひろ「い、いえっ、そんな……頭を上げて下さい。と言うか、何で事務所に?」


P「仕事の話がまとまりましたので、その報告に来ました」


あい「………」


ちひろ「えっ、でもまだ……」チラッ
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 02:17:56.11 ID:Hl7zZ10GO

あい「いいんだ。ちひろさん、申し訳ないが少し外してくれないか」


ちひろ「分かりました。じゃあ、薫ちゃんは私がーー」


薫「んっ。あっ、せんせぇ……」


P「……薫もいたのか、丁度良かった。そのままでいいから話を聞いてくれないか」


ちひろ「(何だか分からないですけど、外した方が良さそうですね)」ソソクサ


P「薫、眠いなら寝てもいいんだよ? あいお姉ちゃんとは静かにお話しするから」


薫「ううん、起きてる……せんせぇ、あのね?」
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 02:21:59.67 ID:Hl7zZ10GO

P「ん? どうしたんだい?」


薫「かおるね、約束破っちゃったの。ごめんなさいっ……」


P「……そっか」


薫「おこらないの?」


P「まさか、怒ったりしないよ。何か理由があったんだろう?」


薫「う、うんっ!」


P「なら、それでいいんだ」


ナデナデ


薫「えへへ……でも、ほんとにいいの?」


P「薫が間違ってないと思うなら、それでいいんだよ……」
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 02:24:16.90 ID:Hl7zZ10GO

あい「………」


P「さて、次は僕の話を聞いてくれるかな?」


薫「はーい」


P「ありがとう」


あい「……それで、仕事の話とは? 君は先ほど『まとまった』と言っていたね」


P「ええ、東郷あいは下ろさない。ただ、アイドルを一人追加させて欲しいと言って話を決めました」


あい「追加?」


P「はい、追加です」


あい「美優さんか楓さん辺りかな?」


P「向こうもそう思っているでしょうね。ですが違います。もう一人は、薫です」
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 02:25:41.35 ID:Hl7zZ10GO

あい「馬鹿な。そんなこと認められるわけがーーー」


P「いえ、認めさせます。この仕事は僕と東郷さんと薫で成功させるんです」


薫「かおるは? かおるは何をするの?」


P「薫には、あいお姉ちゃんの隣にいて欲しいんだ。一人は寂しいだろうからね」


薫「それだけ? あいお姉ちゃんといっしょにいればいいの? お仕事なのに?」


P「そう、一緒にいるだけでいいんだ」


P「だけど、これはとっても大事なことなんだ。薫、僕とあいお姉ちゃんを助けてくれないか」


薫「うんっ、いいよ!」ニコッ
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 02:27:33.02 ID:Hl7zZ10GO
また明日書きます。ありがとうございました。
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 02:30:30.66 ID:d5UUAbsMO
Pさん大人気ない大人に見えてしまう
仕事仕事というなら自分も割り切れと
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 02:35:57.16 ID:pbXhIdbJo
割り切らなくなってく変遷の話だろうに

92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 04:23:56.68 ID:GVJ80Itto
おつ
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 15:20:51.17 ID:MN2cPlzoO

あい「君は」


P「?」


あい「君は何故、そこまで私を? 素直に代役を立てた方が楽に済むはずなのに」


P「どんなアイドルを起用するかはそちらに任せる。そう言ったのは向こうです」


P「そう言っておきながら、あんな理不尽な理由で約束を反故するようなことがあってはならない。違いますか」


あい「……君は冷静さを欠いているんじゃないか? 意地になっているようにも見える」


あい「こんなことは言いたくないが、以前の君は冷たいくらいに冷静で、熱くなるタイプではなかった」
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 15:21:54.23 ID:MN2cPlzoO

P「……そうかもしれせんね」


あい「なのに何故、そこまで拘るんだ?」


P「以前にもこういったことはありましたが、今回のように酷く侮辱されたのは初めてです」


P「だから認めさせたい。東郷あいというアイドルを、貴方の持つ魅力を見せてやりたい」


P「貴方は素晴らしいアイドルです。僕はそう断言出来る。だから……」


P「あんな偏った見方しか出来ない人間に、東郷あいはこんなものではないと分からせたい」
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 15:23:15.56 ID:MN2cPlzoO

あい「………」


P「不快な想いをしたばかりで気乗りしないとは思います。ですが、その上でお願いします」


P「どうか、最後まで付き合って下さい。僕の、我が儘に……」


あい「………馬鹿だな、君は。そんなことを言われたら、断れるわけが……ないだろう……」


薫「あいお姉ちゃん? だいじょうぶ?」サスサス


あい「心配しなくても大丈夫だよ。これは、嬉しくて泣いているだけだから……」


P「……………」
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 15:24:27.55 ID:MN2cPlzoO

薫「せんせぇ」


P「ん?」


薫「かおるにはむずかしくて分からなかったけど、せんせぇはあいお姉ちゃんが大好きなんだね」ニコッ


P「ああ、僕はあいお姉ちゃんが大好きだ。だから、負けて欲しくないんだよ。何があっても」


あい「!!」


薫「大好きだって!」


あい「あ、ああ、そうだね。とても嬉しいよ」
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 15:25:37.14 ID:MN2cPlzoO

薫「ねーねー、あいお姉ちゃんは?」


あい「え?」


薫「あいお姉ちゃんは、せんせぇのこと好き?」


あい「………好きだよ。大好きに決まってる」


薫「せんせぇ、大好きだって!」


P「うん、ちゃんと聞いてたよ」ニコッ


薫「うれしい?」


P「勿論。あいお姉ちゃんに大好きって言われて嬉しくない人なんていない」
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 15:27:06.23 ID:MN2cPlzoO

薫「そっかー、えへへっ」


P「……薫も、あいお姉ちゃんが大好きなんだね」


薫「うんっ、あいお姉ちゃんもせんせぇも大好きっ!」


P「そうか……」


あい「………」


P「…………ん? もう、こんな時間か。薫を送らないとな」


ちひろ「あ、薫ちゃんなら私が送りますよ?」ヒョコ
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 15:28:30.35 ID:MN2cPlzoO

P「……千川さん」


ちひろ「お二人にはまだ話すべきことがあると思いますので……薫ちゃん、行きましょう?」


薫「えーっ……」


P「薫、実はまだお仕事の話は終わっていないんだ。また今度、沢山お話ししよう」


薫「ほんとっ!?」


P「約束するよ。だから、今日はもう休みなさい」
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 15:31:28.72 ID:MN2cPlzoO

P「いいね?」


ナデナデ


薫「えへへ……うん」


ちひろ「(……何だか、本当にお父さんみたい)」


ちひろ「さ、薫ちゃん、行きましょう?」


薫「はーい!」


ちひろ「じゃあ、送ってきますね」


P「千川さん、ありがとうございます」


ちひろ「いえいえ」


薫「あいお姉ちゃん、せんせぇ、おつかれさまでー!!」
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 15:34:50.91 ID:MN2cPlzoO

P「うん。お疲れさま、薫」


あい「薫、お疲れさま。ありがとう」


ガチャ パタン


あい「………」


P「………」


あい「……一つ、気になったことがあるんだ。聞いてもいいかな」


P「何を聞いても構いませんが、答えるかどうかは内容によります」


あい「ついさっき、薫と話している時の君の顔は、何だか……その、悲しそうに見えた」
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 15:40:38.92 ID:MN2cPlzoO

P「………」


あい「いや、あれは一つの感情が生み出せる表情じゃない。複雑な想いを感じた」


あい「答えなくとも構わない。ただ、何故そんな顔をするのかと疑問に思ったんだ」


P「……そこまで見えている貴方なら、僕が答えずとも分かると思います」


あい「…………そうか。では、これ以上は何も聞かないことにするよ」


P「そうしてくれると助かります」


あい「……私から話を脱線させておいて何だが、仕事の話に戻そう。何故、薫を?」


P「それは、これを見て思い付きました」ペラッ
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 15:42:50.75 ID:MN2cPlzoO

あい「ブーケを持った花嫁、寄り添う女の子」


あい「なるほど、こういった写真も掲載されているんだね」


P「ええ、撮影はこれで行こうかと思います」


P「カメラマンの方には既に見本を見て頂いて了承は得ています」


あい「見本?」


P「見本と言っても千川さんにお借りしていた写真ですが、かなりの好感触でした」


あい「しかし、カメラマンの了承を得ても担当者は首を縦には振らないだろう」


P「でしょうね。ですから、先に撮影します。担当者抜きで、ですが」


あい「……大胆と言うか無謀と言うか、最近の君には驚かされてばかりだよ」
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 15:44:18.95 ID:MN2cPlzoO

P「あの担当者がいてはまともに撮影も出来ない。ですから、先に撮影するんです」


P「そして、出来上がった写真を見て貰う。それで、この仕事は終わりです」


あい「あの担当者が納得すると思うのかい?」


P「心配ありませんよ」


P「首を縦に振るしかない、納得せざるを得ない、最高の写真が出来上がりますから」


あい「………はぁ、その自信がどこから来るのか、是非とも教えて欲しいよ」


P「先程も言ったでしょう。東郷あいは素晴らしいアイドルだと」
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 15:44:24.32 ID:Tnuyc8g6O
妻と一緒に子供も亡くしたのかな
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 15:55:48.95 ID:MN2cPlzoO

あい「私を素晴らしいアイドルだと思う。それが、自信の源?」


P「はい。だから、今回の仕事も必ず成功します」


P「これは貴方に限ったことではなく、この事務所のアイドル全員に言えることです」


P「躓くことや停滞することはあっても、前を見ている限り終わりはない。先に進める」


あい「………」


P「努力して努力して、前へ前へ……」


P「そこから更に突き進んで行くアイドル達。僕は、その姿を見ていたい」


あい「……口は災いの元と言うが、君はもっと喋った方が良い。その気持ちは言葉にして伝えるべきだよ」
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 15:57:05.54 ID:MN2cPlzoO

P「そうですか? 口にすると安くなるような気がするんですが……」


あい「君の言葉は安くならないよ。それだけの熱意があるのなら大丈夫さ」


P「……そうですか。ありがとうございます」


あい「ところで、彼女達とは話したかい?」


P「いえ、千川さんが話してくれると言ってくれたので……」


あい「それでは駄目だよ。君自身が、君自身の言葉で話さなければ意味がない」


あい「私もそうだったが、彼女達も君のことを誤解していると思うんだ」
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 15:59:35.15 ID:MN2cPlzoO

P「誤解?」


あい「心の冷えた人。関わりを避ける人。自分達に幻滅して突き放しているのではないか。とね」

 
P「……意外と繊細なんですね」


あい「フフッ、女性は実に繊細で面倒な生き物だよ?」ニコッ


P「貴方も、ですか?」


あい「フフッ、そうかもしれないね」


P「……上手く行くかは分かりませんが、きちんと向き合って話してみます」


あい「大丈夫。きっと上手く行くさ……」
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 17:03:17.76 ID:1IV85vrO0
・実は薫の父親
・妊娠中の奥さんを事故で亡くした

さぁどっち
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 18:02:57.22 ID:hYZl/4Czo
Pの正体はダークサイドに堕ちたアナキンに決まってんだろこれだからSS速報素人は困る
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 21:49:16.47 ID:bKaEfe0G0
今日はもうないのか?
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 22:06:20.07 ID:MN2cPlzoO

P「あ、一つ忘れていました」


あい「?」


P「ウエディングドレスの参考資料を……ちょっと待って下さい。えっと、これになりますね」


あい「ふむ、結構な種類があるんだね」


P「大まかに分けて8種類」


P「しかし、袖の有無や裾の広がりなど細かに分類すると凄まじい量になるので省いています」


あい「そ、そんなにあるのか。知らなかったよ」


P「本来であれば、今日の現場で実物を見て判断して貰うはずだったのですが……どれが良いですか?」
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 22:08:59.55 ID:MN2cPlzoO

あい「私が選んでいいのかい?」


P「ええ、それもこちらで選んで良いとのことです。向こうも指定された型を用意するだけで済みますからね」


P「ですので、この中から東郷さんが気に入ったものを選んで下さい」


あい「……そうは言われても、これはちょっと悩んでしまうな。色々あるようだし」


P「急がなくても良いですよ。後日、改めて実物を見てからでも遅くはないので」


あい「それでは先方に迷惑を掛けてしまう」


あい「あの担当者はどうでもいいが、カメラマンや、衣装を運んだスタッフの方々には申し訳ないことをしてしまった」
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 22:13:15.26 ID:MN2cPlzoO

あい「あれらをまた運び直すとなれば相当なものだろう」


あい「だから、ドレスは思い切ってこの場で決めてしまおうと思う」

 
P「……そうですか、分かりました。では、この中から二つ選んで下さい」


あい「二つ、二つか……」


ペラッ ペラッ


あい「……先程は少しばかり浮かれていたが、冷静になって考えると選択肢は少ないな」


あい「8種類あると言っても、私が着られるのはこのスレンダーライン以外にないだろう」


P「もう一種類。他にはないですか?」
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 22:15:03.68 ID:MN2cPlzoO

あい「……自分ではこれしかないと思う」


あい「どれにも言えることだが、私にはお姫様のような恰好は似合わない」


P「そんなことはないと思いますが」


あい「私の中の私はそうなんだ。だから、もう一つは君が決めてくれないか?」


P「僕が?」


あい「プロデューサーとして、東郷あいというアイドルにはどんなドレスが似合うのか、意見を聞かせて欲しい」
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 22:16:39.68 ID:MN2cPlzoO

P「……そうですね」


あい「………」


P「マーメイドライン。これが良いかと思います」


あい「私が選んだものと、あまり形状が変わらないものだね」


P「いえ、裾の広がりが違います。これでは分からないでしょうが、印象はかなり異なる」


P「東郷さんは裾が大きく膨らんだものを避けているようなので、これにしました」


あい「…………」


P「東郷さんの意向を抜きに、個人的に着て欲しいのは、このAラインです」
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 22:19:04.35 ID:MN2cPlzoO

あい「わ、私がこれを?」


P「これまでのイメージとは違った、新しい東郷あいを見せられると思います」


P「これにティアラやグローブなどの小物を取り入れれば、更に良くなるはずです」


P「この場合は袖なしで肩あり、露出は控え目なものが良いでしょう」


あい「(……僅かに折り目が付いている……君は、あれからずっと考えてくれていたのか)」


あい「(本当に何も知らなかったんだな。勝手にこんな人間だろう決め付けて……)」


P「このドレスを選んだ理由はもう一つあります。撮影現場は教会だけでありません」
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 22:40:17.14 ID:MN2cPlzoO

P「海、波打ち際での撮影もあります」


P「マーメイドラインでも構いませんが、裾が膨らんでいる方が風を受けた場合に映えるかと思います」


P「……それを考慮すると、プリンセスラインも良いかもしれませんね」


P「それから、カメラマンの要望によっては撮影に費やす時間も長くなる。天候に左右されることもあるでしょう」


P「カメラマンが夕陽が欲しいとなれば、それまで待たなければならない」


P「薫がいるのであまり無理はさせないでしょうが、納得の行くものが出来るまでやってみましょう」


あい「(彼がこんなにも真摯で熱心な人間だなんて思いもしなかった)」


あい「(寄り添うべきは私達の方だったのかもしれないな。そうすれば、もっと早くにこうなれたかもしれない……)」
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 22:42:16.00 ID:MN2cPlzoO

P「話が逸れましたね。次はドレスの色です」


P「このように様々な色がありますが、僕はやはり、純白が良いかと思います」


P「東郷さんは肌が白いですから、見劣りするようなこともないでしょう。どうですか?」


あい「…………」


P「東郷さん?」


あい「え? ああ、すまない。あまりに熱心に話すものだから、少々驚いてしまった」
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 22:44:45.35 ID:MN2cPlzoO

P「……あの、聞いていました?」


あい「勿論、ちゃんと聞いていたよ。私は、君の意見を取り入れようと思う」


あい「撮影に使用するウエディングドレスは、マーメイドラインとAラインにする」


P「良いんですか?」


あい「これまでとは違った『東郷あい』を見せたい。君はそう言ったね」


P「ええ、それはそうですが東郷さんはーー」


あい「私も挑戦してみたいんだ」


あい「どこまでやれるかは分からないが、全力でやってみようと思う」
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 00:39:13.97 ID:cuwXkIIhO

P「ありがとうございます」


あい「礼を言われるようなことじゃない。互いに全力で仕事に取り組む。そうだろう?」


P「それは、僕が車内で言ったことですね」


P「その、覚えてくれているのは嬉しいのですが、恥ずかしいので止めて下さい」


あい「フフッ、茶化したつもりはないんだけどね」


P「そうですか。では、仕事の話は以上で終わりです。夜も遅いですし、そろそろーー」


あい「担当者の件はどうするんだい? そう長く目を欺けるとは思えない」
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 00:41:11.55 ID:cuwXkIIhO

P「何をしてでも、何とかします。何も心配はいりませんよ」


あい「…………」


P「その辺りの調整も含めて、撮影日が決まり次第、連絡します」


あい「了解した。ただ、無茶な真似はしないでくれ」


P「分かりました。では、僕はこれで失礼します。送りましょうか?」


あい「いや、私はちひろさんが事務所に戻って来てから帰ることにするよ」


P「そうですか。では、お先に失礼します」
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 00:43:26.76 ID:cuwXkIIhO

あい「今日は済まなかったね。色々と」


P「……そんなことはありません。では」


あい「ああ、お疲れさま」


P「お疲れさまです」


ガチャ パタン


あい「やれやれ、素っ気ないのは相変わらずか。少しくらい粘ってもいいだろうに……」


P『はい。だから、今回の仕事も必ず成功します』

P『これは貴方に限ったことではなく、この事務所のアイドル全員に言えることです』

P『躓くことや停滞することはあっても、前を見ている限り終わりはない。先に進める』


あい「ふぅ、どうやら彼の熱に当てられたようだ。何だか、顔が熱いな……」
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/14(火) 00:54:28.73 ID:cuwXkIIhO
会話が長い上に話が進んでなくて申し訳ない。
また明日書きます。ありがとうございました。
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/14(火) 01:02:10.77 ID:Q8UdD4zW0
おもしろい
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/14(火) 01:03:17.88 ID:PVMrXqgeO
おつつ
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/14(火) 01:53:16.66 ID:Z7Zr5kv00
担当者「フッ、ようやく本気になってくれたか…それでこそケツを叩いた甲斐があるというものだ」
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/14(火) 02:56:39.48 ID:Pxu7MRx2O
やめろ担当者イケメンすぎるw
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/14(火) 09:09:55.65 ID:CGUAUEhF0
薫も担当者の差し金の可能性…?
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 13:22:14.83 ID:esCiUhQLO

数日後 教会


薫「わー、おっきいねー!」


あい「フフッ、そうだね」


薫「かおるもけっこんしきしたいなぁ」


あい「ん? 結婚式?」


薫「あいお姉ちゃん、けっこんしきするんでしょー?」


あい「ち、違う違う。結婚式じゃないよ」


あい「これはお仕事。ドレスを着て、カメラマンに写真を撮って貰うんだ」
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 13:24:47.77 ID:esCiUhQLO

薫「かおるも?」


あい「そうだよ?」

あい「薫も素敵なドレスを着て写真を撮って貰うんだ。彼もそう言っていただろう?」


薫「んー? せんせぇは、あいお姉ちゃんがおよめさんになるって言ってたよ?」


あい「……まあ、間違ってはいない。のか?」


薫「せんせぇは?」


あい「細かい打ち合わせがあるとかで、先に行って待っててくれと言っていたよ」
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 13:26:37.36 ID:esCiUhQLO

薫「あいさつ?」


あい「うん、そうだね。それもある」


あい「他にも色々なことをお話して、撮影をどうするか決めるんだ。さ、そろそろ行こうか」


薫「はーい」

ーーー
ーー


P「皆さん、撮影を始める前にお話があります」


ザワザワ


P「先日は大変失礼なことをしてしまい、誠に申し訳ありませんでした」ペコリ


P「カメラマン、衣装や美粧など、此処にいるスタッフの方々全員に深く謝罪します」
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 13:28:44.24 ID:esCiUhQLO

P「それから、もう一つ」


P「先日の件は私個人の意志であり、アイドルの意志ではありません」


P「全てはプロデューサーとして冷静さを欠いた私の責任であります」


P「……それでも協力してくれた皆さんには、心より感謝申し上げます」


P「このような私の我が儘を聞いて下さり、誠にありがとうございます」


P「良い撮影が出来るよう私も尽力します。皆さん、改めて、本日は宜しくお願い致します」ペコリ

ーーー
ーー


薫「……せんせぇ、おそいね」パタパタ


あい「もうすぐ来るさ。もう少しの辛抱だよ」
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 14:11:13.96 ID:esCiUhQLO

ガチャ


あい「!!」


スタイリスト「お待たせしました!」


あい「あっ…いえ、そんなことは……」


スタイリスト「?」


薫「せんせぇは?」


スタイリスト「せ、先生?」


あい「あ、プロデューサーのことです。彼はどこに?」


スタイリスト「プロデューサーさんなら、カメラマンさんと打ち合わせしてますよ?」
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 14:12:27.77 ID:esCiUhQLO

あい「……そうですか」


あい「あ、申し訳ない。今日は宜しくお願いします。さ、薫」


薫「あっ、そうだった。きょうはよしろしくおねがいしまー!!」


スタイリスト「ふふ。はい、宜しくお願いします」ニコッ


スタイリスト「さて、あいさんはヘアメイクやコーディネートなどがありますので、私と別室へお願いします」


あい「分かりました。あの、薫は?」


スタイリスト「あ、ごめんなさい。薫ちゃんのお着替えは此処で別のスタイリストが行います」
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 14:15:23.34 ID:esCiUhQLO

薫「かおるは何をきるの?」


スタイリスト「プロ…じゃなかったわね。先生の選んだ可愛いワンピースよ?」


あい「(いつの間に……)」


薫「せんせぇが!?」


スタイリスト「そうよ? 薫ちゃんの為だけに選んだの。だから、楽しみにしててね?」ニコッ


薫「えへへ、やったー!」


スタイリスト「ふふ。すぐに衣装を持ったお姉さんが来るから、ちょ〜っとだけ待っててね?」
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 14:20:05.56 ID:esCiUhQLO

薫「はーい!」


スタイリスト「じゃっ、行きましょうか」


あい「(先程から気になってはいたが、やけに元気な人だ。元気というか、機嫌が良いのか?)」


スタイリスト「あいさん? どうしました?」


あい「いえ、何でもありません。行きましょう。薫、また後でね」

薫「あいお姉ちゃん!」

あい「ん?」クルッ

薫「およめさんなったら、すぐ来てね!」

あい「フフッ、分かった。これからお嫁さんにしてもらうから、少しばかり待っていてくれ」
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 14:23:14.43 ID:esCiUhQLO

薫「はーい!」


スタイリスト「じゃっ、行きましょうか!」


あい「(先程から気になってはいたが元気な人だな。元気というか機嫌が良いのか?)」


スタイリスト「あいさん? どうしました?」


あい「いえ、何でもありません。行きましょう。薫、また後でね」


薫「あいお姉ちゃん!」


あい「ん?」クルッ


薫「およめさんなったら、すぐ来てね!」


あい「フフッ、分かった。これからお嫁さんにしてもらうから、少しばかり待っていてくれ」
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 15:27:22.72 ID:esCiUhQLO

>>>>>

スタイリスト「どうですか?」


あい「……言葉も出ないよ。自分がこんな恰好をするなんて夢にも思っていなかった」


あい「これがウエディングドレス。確か、マーメイドラインだったか」


あい「こんなに細かなところまで……服飾の技術とは凄いものだな……」


スタイリスト「ふふっ」


あい「あ、申し訳ない。あまりに綺麗なものだから、つい」


スタイリスト「あいさんも綺麗ですよ? ドレスに負けないくらい、綺麗です」
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 15:28:55.56 ID:esCiUhQLO

あい「……そうだろうか」


あい「正直なところ、あまり自信がないよ。満足の行く写真が出来るかどうか」


あい「何より、彼の期待に応えられるかどうか、不安でならないんだ」


スタイリスト「プロデューサーさんは自信満々でしたよ?」ニコッ


あい「フフッ、彼らしいな」


スタイリスト「……プロデューサーさんのような人と一緒に仕事が出来るなんて、正直羨ましいです」
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 15:29:57.34 ID:esCiUhQLO

あい「?」


スタイリスト「プロデューサーさん、さっき、スタッフ全員の前で頭を下げたんです」


スタイリスト「先日は申し訳なかったって……あの時は、明らかに担当者さんの対応が悪かったのに」


あい「!?」


スタイリスト「でも、スタッフの中には怒っている人もいました。撮影は重労働ですから……」


スタイリスト「だから、彼はしっかり謝って、スタッフ一人一人にお礼を言ったんです」
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 15:31:10.96 ID:esCiUhQLO

あい「(だから遅れたのか……)」


スタイリスト「誠実だなって、そう思いました」


スタイリスト「当たり前を当たり前に出来る人って、中々いないですから……」


あい「あれは彼の責任じゃない。私が堪えていれば、ああはならなかった」


スタイリスト「ふふっ、プロデューサーさんも同じことを言ってました」


あい「えっ?」


スタイリスト「アイドルには何の責任もない。全ては私の責任だ。って……」


あい「…………」
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 15:37:41.77 ID:esCiUhQLO

スタイリスト「あいさん、自信持って下さい」


スタイリスト「私達がどんなに一生懸命メイクをしても、それを生かすも殺すも、あいさん次第です」


あい「!!」


スタイリスト「私達は私達の仕事をしました。この先は、あいさんの仕事です。だから、頑張って下さい」


あい「……ありがとう。お陰で気合いが入ったよ」


あい「こんなに綺麗なメイクをして貰ったんだ。思い切り、精一杯やってみるよ」


スタイリスト「お力になれたようで良かったです」ニコッ


スタイリスト「さあ、そろそろ薫ちゃんの所に行きましょう? きっと楽しみに待ってますよ?」
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 18:13:01.18 ID:jEXquGDcO

>>>>>

薫「せんせぇ」


P「ん?」


薫「あいお姉ちゃんのところには行かないの?」


P「薫を一人には出来ないからね」


P「それに、そろそろ来る頃だろう。迎えは必要ないよ」


薫「せんせぇは見たくないの? かおるは早く見たいなー」


P「あいお姉ちゃんのことかい?」


薫「うんっ、およめさんのあいお姉ちゃんが見たい! きらきらかなー?」ニコニコ
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 18:15:58.76 ID:jEXquGDcO

P「きっときらきらしてるよ。これまでの何倍も、きらきらしてるはずだ」


P「だから待つんだ。楽しみは後に取って置いた方が良いからね」


薫「……そっかー。ねえ、せんせぇ」


P「何だい?」


薫「このワンピース、せんせぇが選んでくれたんだよね?」


P「そうだよ? それは僕が選んだんだ。薫に似合うと思ってね。駄目だったかな……」


薫「ううん!すっごくすっごくうれしいよ! 色んなの着たけど、一番好き!」
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 18:17:41.76 ID:jEXquGDcO

P「一番? 本当に?」


薫「ほんとだよ?」


P「………そうか」


薫「どうしたの?」


P「えっ、いや……薫は優しいと思ってね」


薫「?」


P「……薫、今日は僕も精一杯頑張る。だから、あいお姉ちゃんを助けて欲しい」
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 18:19:35.76 ID:jEXquGDcO

薫「たすける? なにすればいいの?」


P「きっと緊張するだろうから、あいお姉ちゃんの傍にいて欲しいんだ」


P「お話ししたり、手を繋いだり……それが、あいお姉ちゃんの力になる」


薫「いつもしてるよ?」


P「あははっ、そうか。じゃあ、何も心配は要らないな。薫がいれば大丈夫だ」


コンコンッ


P「あ、はい。どうぞ」
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 18:22:10.92 ID:jEXquGDcO

薫「どうぞー!」


ガチャ


あい「………」


P「…………」


薫「うわー!ほんとにおよめさんだー! せんせぇ、あいお姉ちゃんきれいだね!」


あい「………な、何か言ってくれないか」


P「…………」


薫「せんせぇ?」


P「あ、ああ、綺麗だね。凄く、綺麗だ」
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 18:38:45.70 ID:jEXquGDcO

あい「そ、そうかい?」


P「ええ、とても綺麗です。それしか言葉が出ません。思った通り、似合いますね」


あい「あ、ありがとう……衣装が衣装なだけに、少々恥ずかしいな……」


P「……っ、準備が出来たようなのでカメラマンを呼んできます。ソファに座って待っていて下さい」ガタッ


あい「えっ? そ、そうか……じゃあ、頼むよ」


ガチャ パタン


薫「あいお姉ちゃん、おひめさまみたいだね!」


あい「お姫様か……そんなことを言われたのは初めてだよ。ありがとう、薫」


ナデナデ


薫「えへへ」


あい「(しかし、彼はどうしたんだ?)」


あい「(ほんの一瞬だが、明らかに表情が曇った。一体何故?まさか……)」


あい「(いや、邪推はするな。今は何も考えるべきじゃない。これから撮影なんだ、集中しよう)」
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 21:04:05.31 ID:2os6s9XXO

>>>>>

カメラマン「二人並んで歩いてみて下さい。あのベンチまでお願いします」


カメラマン「これは感覚を掴む予行演習のようなものなので、リラックスしてお願いします」


あい「はい、分かりました。薫、行こう」


薫「歩くだけ?」


あい「そう、歩くだけ。あのベンチまでだね」


コツ コツ


薫「なんか、お散歩みたいだね」


あい「フフッ、そうだね。天気も良いし、気温も丁度良い」


カメラマン「…………(うん、やはり良い)」カシャッ
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 21:06:44.81 ID:2os6s9XXO

薫「あっ、お花がさいてる!」トテテ


あい「か、薫、ちょっと待ってくれ。この恰好だと上手く走れないんだ」コツコツ


カメラマン「…………」カシャッ


薫「ほら、これ見てー!」


あい「うん、確かに綺麗だ。見覚えはあるんだが、名前が出て来ないな……」


カメラマン「………」カシャッ


あい「さ、寄り道はここまでしによう」


薫「うん。あっ、そうだった!」


あい「ん?」
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 21:08:12.20 ID:2os6s9XXO

薫「あいお姉ちゃん、おててつなごー?」


あい「フフッ、いいよ」ギュッ


カメラマン「!!」カシャッカシャッ


薫「えへへ、楽しいねー」


あい「そうだね。撮影とは思えないよ」


薫「かおるも。こーんなポーズとったりするのかと思ってた」


あい「フフフッ、そうだね。いつもとは違って、新鮮な気分だよ……」


カメラマン「(この表情も良いな)」カシャッ
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 21:09:50.35 ID:2os6s9XXO

あい「ほら、到着したよ。座ろうか」


薫「うん。でも、きょうかいって広いんだねー」


あい「薫はまだ小さいからね。余計にそう感じるんだよ」


薫「へー、大人になったら小さくなるの?」


あい「いや、そういうわけじゃ……」


カメラマン「(うん、あいさん一人でも行ける)」カシャッ


カメラマン「(当初は薫ちゃんが引き出しているのかと思っていたけど、どうやら違うみたいだ)」カシャッ


カメラマン「(あいさん自身が世間のイメージに引っ張られている可能性が高い。蓋をしてるような感じだ)」カシャッ
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 21:11:23.94 ID:2os6s9XXO

薫「おひさま、ぽかぽかしてるね」


あい「眠っちゃ駄目だよ?」ニコッ


薫「だいじょうぶ、お仕事だから」


あい「フフッ、薫は偉いね」


カメラマン「そのままお願いします。次は近くから撮りますね」


あい「あ、はい」


薫「……かおるもほしかったなー」
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 21:12:38.36 ID:2os6s9XXO

あい「欲しい? 何をだい?」


薫「あいお姉ちゃんがつけてる、おひめさまみたいなやつ」


あい「この、ティアラかい?」


薫「うん……」


あい「付けてあげようか。ほら」スッ


薫「えへへ、やった。かおる、おひめさま?」


あい「フフッ、うん。薫はお姫様だよ」


カメラマン「(どれも良いな。何枚でも撮りたくなる。やはり、彼の提案は間違っていない)」チラッ


P「………」コクンッ
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 21:14:12.95 ID:2os6s9XXO

P「撮影は上手く行ってるみたいだね」


薫「あっ、せんせぇ!」


P「どいだい薫、撮影は楽しい?」


薫「うんっ、とっても楽しいよ!」


P「そうか、何かあったらすぐに言うんだよ? 東郷さんはどうですか?」


あい「あ、ああ。もっと緊張するものと思っていたけれど大丈夫そうだ」


P「そうですか。では、引き続きお願いします」


あい「(いつも通りだ……)」


あい「(さっきのは思い過ごしだったか? 少々意識し過ぎていたのかもしれないな)」
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 21:15:35.51 ID:2os6s9XXO

P「………」チラッ


カメラマン「………」コクンッ


カメラマン「ちょっと休憩しましょう」


カメラマン「次は中で撮影しますので、お二人は中に移動していて下さい」


あい「分かりました」


薫「はーい」


ーーー
ーー



P「どうですか? このまま行けますか」


カメラマン「はい、行けると思います。次はあいさん一人の絵を撮ってみようかと。ですが……」
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/14(火) 21:17:18.17 ID:2os6s9XXO

P「一人だと固い、ですか?」


カメラマン「はい、その通りです。自身のイメージに引っ張られている感じが否めない」


P「……なる程」


カメラマン「薫ちゃんがいると、良い意味で自分に意識が集中していない。そこを撮りたいですね」


カメラマン「応急的処置と言うと妙ですが、薫ちゃんと一緒に傍にいて頂けますか?」


P「構いませんが、どの辺りがいいでしょう?」


カメラマン「……私の後ろにいて下さい」


カメラマン「出来れば、何と言いますか……こう、ふわりとした表情が欲しいので」


P「分かりました。そうしてみます」
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/14(火) 22:27:14.43 ID:8/EwfPXX0
自身の結婚式を思い出したのかねぇ
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/15(水) 00:03:33.90 ID:+AIcdb8QO

>>>>>

あい「一人で?」


P「ええ、二人の絵は撮れたので。次からは東郷さん一人の絵が欲しいそうです」


あい「二人の絵は撮れた? あれは予行演習じゃなかったのかい?」


P「いえ、あれが本番です」


あい「は?」


P「緊張するかと思ったので、そう言うように頼んでおきました」シレッ


あい「……なる程、まんまとやられたわけだ」
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/15(水) 00:04:46.16 ID:+AIcdb8QO

P「使い古された手ですけどね」


P「一発勝負。賭けのようなものでしたが、意外と簡単に騙されてくれたので助かりました」


あい「悪かったね、単純で……」プイッ


P「いえ、そんなことは……気分を害したのなら謝ります」


あい「…………フッ、フフッ、冗談だよ」


P「仕返しですか?」


あい「お返しだよ。本音を言うと、騙されて良かったと思っているんだ」


あい「君の言う通り、あのままでは緊張していただろうし、ああしてくれて助かったよ」
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/15(水) 00:06:25.97 ID:+AIcdb8QO

P「それは良かったです。ですが、次はそうも行きません」


あい「……ああ、分かっているよ」


P「カメラマンは、自分のイメージに囚われない東郷さんを撮りたいそうです」


P「薫といた時のような、自分を意識しない姿。ふわりとした表情が欲しいと言っていました」


あい「中々に酷なことを言ってくれるね。言われて出来るくらいなら苦労しないよ?」


あい「私は私だ。私を辞めることは出来ない。意識するなと言われても、それは無理だ……」
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/15(水) 00:08:08.48 ID:+AIcdb8QO

P「そこで、一つ提案があります」


あい「?」


P「僕と薫はカメラマンの背後にいます。レンズではなく、僕を見て下さい」


あい「(よくもまあ、さらりと言えるものだ。こっちの身にもなって欲しいね)」


P「僕で駄目なら薫を抱っこして目線の高さにすることも出来ますが、どうします?」


あい「いや、いいよ。それでは薫も大変だろう。そこで、私からも一つ、お願いがある」
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/15(水) 00:09:18.78 ID:+AIcdb8QO

P「何でしょう?」


あい「君も、私を見ていてくれないか」


P「そのつもりです。撮影が終わるまでは、目を離す気はありません」


カメラマン「撮影再開しまーす!」


あい「……頼んだよ」


P「ええ、任せて下さい」


カメラマン「良い感じに日が差してますね。あいさん、そこの窓辺に立ってみて下さい」
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/15(水) 00:11:37.56 ID:+AIcdb8QO

あい「はい」


コツコツ


P「薫、おいで。あいお姉ちゃんの撮影が始まるから、こっちで一緒に見よう」


薫「はーい」トテトテ


あい「(ちひろさんも言っていたが、本当の親子のようだ。父親、夫か……)」


カメラマン「右手を耳の辺りに、髪をかき上げるようにして下さい」


あい「こんな感じ、かな?」


カメラマン「そうです。そのまま、ちょっと照れたような、はにかんだ感じで……」
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/15(水) 00:12:56.57 ID:+AIcdb8QO

あい「………」


P「………」


カメラマン「(凄い。まるで別人だ)」カシャッカシャッ


あい「………」


P「………」


カメラマン「良いですよ。次は少し変えてみましょうか。ちょっと左に、光を背にして」


あい「はい」


カメラマン「もう少し左……はい、そこです。胸に手を当てて下さい。両手を重ねるように」
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/15(水) 00:14:38.82 ID:+AIcdb8QO

あい「こうかな?」


カメラマン「はい。祈るような感じで目を伏せて……はい、そうです」カシャッ


あい「(彼と薫の姿は見えないが、視線は感じる。悪い気はしない。寧ろ心地良い)」


カメラマン「そのまま、目を閉じて下さい」カシャッ


あい「……はい」


カメラマン「少し、見上げるように」


あい「(……私はどう見える? 君の望む姿を見せられているかい?)」
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/15(水) 00:16:24.76 ID:+AIcdb8QO

薫「……あいお姉ちゃん、きれいだね」


P「うん、そうだね。とっても綺麗だ。でも、もっと綺麗になるよ……ほら」


あい「(……最近になって随分と印象が変わったけれど、私はまだ、君を知らない)」


カメラマン「ブーケ、お願いします。両手で、そうです。ちょっと横を向いて、視線を落として……」


あい「(もっと知りたいと、そう思うのは、我が儘だろうか?)」


カシャッ カシャッカシャッ


カメラマン「(撮るたびに変わっていく、資料で見た姿とはまるで違う。引き受けて良かった)」


カシャッ カシャッカシャッ


カメラマン「……はい、お疲れ様でした。今日はここまでにしましょう」
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/15(水) 00:19:00.95 ID:fmVDW9q1O
担当者(ふふ、計算通りだ)
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/15(水) 00:34:28.81 ID:a6iwGZ9JO
どんだけ担当者有能なんだよw
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/15(水) 01:40:05.22 ID:Co2+Pwzb0
担当者は最初からあいさん自身も気づいていなかった可能性、魅力を見出していたのか。そしてPのことも同時に試していた訳だな…
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/15(水) 01:46:37.19 ID:+AIcdb8QO

夜 事務所

ガチャ

P「戻りました」


あい「ちひろさん、ただいま」


ちひろ「あ、プロデューサーさん、あいさん、お帰りなさい。撮影はどうでしたか?」


P「今日の撮影は無事に終わりました。撮影はまだありますので、ここからが本番ですね」


ちひろ「大変そうですね……あれ、薫ちゃんは?」


P「これ以上遅くなると体に悪いので送りました。はしゃいでいたので、疲れもあるでしょう」


P「東郷さんにお風呂と着替えはして貰ったので大丈夫だとは思います」


あい「布団に入ったらすぐに眠ってしまったよ。体調を壊さなければいいが……」
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/15(水) 01:48:22.68 ID:+AIcdb8QO

ちひろ「(二人共、保護者と言うか守護者ね)」


ちひろ「薫ちゃんはどうでした?」


P「長時間の撮影でしたが最後まで頑張ってくれました。薫がいなければ、これは出来なかったでしょう」


ちひろ「えっ!? もう現像してきたんですか?」


P「ええ、全て良かったですが、その中でも評価の高いものを現像して貰いました」


ちひろ「あの、見ても良いですか?」


P「ええ、構いませんよ」スッ
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/15(水) 01:49:31.57 ID:+AIcdb8QO

ちひろ「……うわぁ、これは凄いですね」


ちひろ「得に、この祈ってるような写真。これは綺麗とかなんてものではなく、神秘的ですよ」


ちひろ「写真には詳しくないですけど、これなら納得せざるを得ないんじゃないですか?」


P「その為の写真でもありますからね」


ちひろ「えっ?」


あい「どういうことだい?」


P「実は撮影中に担当者から電話がありまして、これから会いに行かなければなりません」
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/15(水) 01:52:19.79 ID:+AIcdb8QO

あい「もう、気付かれたのか……」


P「いずれは発覚することです。こうなることは分かっていました」


P「あの担当者がいれば撮影など出来なかったので、こればかりは仕方がありません」


あい「……大丈夫なのかい?」


P「撮影したこと自体に憤慨している様子でしたが、これを見せれば黙るでしょう」


P「依頼してきたのは向こうです。アイドルは任せると言ったのも向こうです」


P「何より、このウエディングモデルの企画を潰すわけにもいかないでしょう」


あい「しかし、相手は感情が昂ぶっているんだよ? どうなるかなんて分からないじゃないか」


P「そうですね。相手が、あまり軽率な行動に出ないことを祈るばかりです」
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/15(水) 01:54:44.02 ID:+AIcdb8QO

ちひろ「(冷静だなぁ)」


P「では、時間もないので行ってきます。千川さん、東郷さんをお願いします」


ちひろ「は、はい。気を付けて」


あい「………」


P「……では、失礼します」


ガチャ パタン


あい「……きっと無理だ。話になるかも分からない」


ちひろ「えっ?」

177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/15(水) 01:57:36.15 ID:+AIcdb8QO

あい「前にも話したが、あの担当者は私を毛嫌いしているようなんだ」


あい「男のような奴には任せられない。そんなことを何度も言われたよ」


あい「お前がウエディングドレスを着るのかと嗤われもした」


あい「何があろうと、私を起用する気はないと言っていたんだ。そんな相手に……」


ちひろ「で、でも、あの写真があれば大丈夫ですよ」


あい「私だってそう願いたいさ! でも、どうにもならないことだってあるんだ!」


ちひろ「……あいさん」


あい「彼が私の為に持ってきてくれた仕事だ。精一杯やった。あれを見た時、自分でも良い出来だと思ったよ」


あい「……だけど、不安なんだ。どうしようもなく、不安なんだ……」
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/15(水) 02:01:36.92 ID:+AIcdb8QO
明日書きます。ありがとうございました。
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/15(水) 02:02:20.46 ID:9myC5DwE0

楽しみにしてる
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/15(水) 02:40:49.73 ID:fmVDW9q1O
明日も担当者の活躍に期待
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/15(水) 03:12:48.54 ID:EaH1VZzwO

>>>>

担当者「随分とふざけた真似をしてくれた」


担当者「まさか、私が別の撮影現場にいる日を狙って撮影するとはな。馬鹿にしているのか?」


P「いえ、そんなつもりはありません」


P「実に優秀なスタッフなので、貴方が不在でも撮影は可能だと判断したまでです」


P「それに、貴方のような有能な人間の貴重な時間を無駄にさせるわけには行きませんから」


担当者「……バーテンダー、ビールをくれ」


バーテンダー「どうぞ」コトッ


担当者「ふーっ。お前は、自分が置かれている立場を分かっているのか?」


P「ええ、分かってるつもりです」
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