女「勝手に不老不死を押し付けられた」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/09(木) 00:59:49.89 ID:TQBLlgixO
女「どこからともなく声が聞こえてきてさ」

女「そいつが言うに、そいつはずっと不老不死だったらしいけど」

女「もう俺は生きるのに疲れた、だから死にかけのお前にこの命をやるって言われた」

女「お前は俺の同じように死ねなくなるが、とりあえず今は生きることが出来る」

女「死にたくなったらそれをまた誰かに押しつけろ、って」

女「迷惑しちゃうよね」

女「あの時馬車で死んどけばよかったなあ」

男「…」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1510156789
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/09(木) 01:02:18.07 ID:TQBLlgixO
男「…それが今お前が上から降ってきて生きてる理由か?」

女「そう」

男「…どうすんだよこの血の量…絶対何かあったって思われるだろ」

女「申し訳ないねー、まさかこんな所に人がいるなんて思わなくてさー」

女「信じられないだろうけど、私本当に不老不死なんだ」

男「…いや…信じるけど…目の前で脳みそぶちまけたのにムクリと起き上がるの見ちまったから…」

女「へへへ」

男「…何がへへへだこっちはトラウマもんだ」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/09(木) 01:05:54.60 ID:TQBLlgixO
女「それにしてもあなたも物好きだよねー、こんなところに一人で来るなんて」

男「悪いかよ」

女「悪くは無いよ、まぁでも不気味かな」

女「こんなところに一人で来るやつなんてまともじゃないから」

男「…お前と一緒にすんなよ、俺はまともだよ」

女「まともかなぁ〜?わざわざこんなところに車で来たやつが?」

女「何でスーツなの?その手の紙は何?どうしてそんなに悲しい顔してるの?」

男「…」

女「全然まともじゃないでしょ〜、この自殺志願者」

男「…」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/09(木) 01:08:52.83 ID:TQBLlgixO
男「なんで分かった?」

女「そりゃー何百年も生きてたらわかるよ、死にたいだろうなーってやつの顔」

女「ま、それだけなら珍しくないけれど、そんな顔しながら人気のないところに来るやつはたいてい実行に移すやつ」

女「何があったのか知らないけどさー、自殺なんて馬鹿な事やめときなよ」

男「お前が言うのかよ、たった今自殺したやつが」

女「あなたと一緒にしないで欲しいな、私はもう十分自分の人生を全うした、やってないことと言えば天寿を全うすることだけ」

女「あなたの密度の薄い人生と同列に語らないでほしいな」

男「…」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/09(木) 01:12:26.28 ID:TQBLlgixO
男「生きてりゃ誰にだって辛いことはある、俺の何もわからんくせに勝手に自分の方が辛いみたいな事言ってんじゃねえよクソ女」

女「こんな美人にそれだけ罵声を浴びせられるくせに死んじゃおうとするなんて根性無し」

女「大体さあ、死んじゃったら何も残らないよ、そこんとこ分かってる?」

男「…」

女「私一回臨死体験してるから知ってるんだよねー、死ぬって冷たいよ、寂しいよ」

女「周りが真っ暗になって、自分という存在さえ認識出来なくなってくる」

女「それが永遠に続く」

女「怖いとは思わないの?」

男「俺にとっては、今の方が断然怖い」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/09(木) 01:15:42.48 ID:TQBLlgixO
女「同じ自殺者のよしみだよー、私に話してみなよ、何が辛いのかさ」

男「お前に話すことなんて何もない、鬱陶しいからもう話しかけてくんな」

女「死ぬことを崇高なことだと思っちゃいけないよ、生きてることが何より誇らしいことなんだから」

男「たった今自殺したやつに言われたくないね」

女「だからさー、私はもう充分生きたって言ってるじゃん、それにどうせ死ねないんだし」

男「いいからもう話しかけんなよ、うざってえんだよ」

女「今ここであなたが死にかけたら、私はあなたに不老不死を押し付けるけどいい?」

男「…」

男「…は?」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/09(木) 01:18:30.72 ID:TQBLlgixO
女「だからさ、もしこのままあなたがここで自殺するなら私は自分の不死性をあなたに押し付けるって言ってるの」

女「言っとくけど傷の修復の速さは並大抵の人間程度だから、痛いよー、死にかけから這い上がるのって」

女「まさに、あの時死んでおけばよかったー!って思っちゃうよ?」

男「…なんだそりゃ、死ぬなって脅しがあるかよ」

女「そう、だからどっちにしてもあなたは死ねないの」

男「なんで俺に執着するんだよ!適当にほかのやつに押し付ければいいだろ!!」

女「なんでだろうね」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/09(木) 01:21:36.28 ID:TQBLlgixO
女「それで、どうするの?」

男「…クソ…うざってえ…!」

女「お?」

男「もういい!今日は帰る!てめえもとっととどっかに消えろ!」



ガチャ、バタン!

男「…クソっ…!何なんだよ…!」

男「もういい…!とりあえずほかの所で…死んでやる…」ブロロロロ

車の屋根の上

女(死ぬなって言ったのになんで死のうとするかなー)

女(まぁでもそりゃそうか、死ぬなって言って自殺者が減ったら苦労しないもんね)

女(おー、綺麗な星空だ、今隕石降ってきたら死ねるなー)
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/09(木) 01:23:22.32 ID:TQBLlgixO





男「…ん」

男「…はっ…!」

男(…ここは…天国!?そうか!俺はとうとう死んだんだな!)

男「天国に来たのか!」

女「残念だねここはベッドの上、そして昨日も言ったけど人は死んだら天国じゃなくて無に帰る」

男「うわあああああっ!?」

女「理解出来たならとっとと死にたい理由があるだろうところに行きなよ、これでも食べてさ」コトッ

男「な、なんでお前がここにいるんだよ!」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/09(木) 01:27:45.03 ID:TQBLlgixO
女「それわざわざ聞く必要ある?免許証から住所調べて連れてきたんだけど」

男「…出ていけ!!」

女「出ていったらまた死のうとするでしょ?」

男「俺が死ぬのに何の問題があるんだよ!死ぬなとでもいうつもりか!お前の勝手なエゴを俺に押し付けんな!」

男「勝手にこんなところまできやがって、俺の人生を知ったように語りやがって!迷惑なんだよ!」

女「あのさあ、私は別にいいことをしてるつもりなんてさらさらないよ?」

女「ただ興味があるだけだよ、死にたい奴ってどういう生活を送ってるのか」

女「暇なんだよねー、だからあなたを観察させてちょうだいな」

男「…お前…最っ低だな…!クズが!」

女「結構結構」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/10(金) 19:46:09.72 ID:2y2OYBR8O
乙、見てるよ
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/11(土) 11:06:15.16 ID:5md5v0n+O
男「…」

男「…ちっ」

女「食べないの?」

男「お前みたいなやつが作った食いもんなんて食べられるわけないだろ」

女「…」

男「…いいか、覚えとけ、俺はお前の目を盗んで必ず死んでやるからな」

女「いいよ、私はあなたに気が付かれないようにあなたを監視しとく」

女「私の目をかいくぐって死ねるもんなら死んでみればいいよ」

男「はっ、お前の不死性とやら、遠くにいても押し付けることが出来んのかよ」

女「鋭いねー、出来ないよ」

男「はは、だったら簡単だな」

女「触れないとこの呪いを押し付けることは出来ない」

女「だからあなたがもし私の監視の目から消えちゃったら…」

女「あなたを止めるために、大きな事件を起こすかも」

男「…は?」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/11(土) 11:08:59.07 ID:5md5v0n+O
女「あなたの名前を叫びながら周りの人たちを傷つけて回るかもしれない」

男「…お前…俺だけじゃなくて…他のやつも巻き込むつもりか…?」

女「自殺したい人が周りの人間に迷惑をかけたくない、という訳じゃない」

女「残された遺族にとって、自殺という選択は確実に迷惑になる」

女「…でも、あなたは自分の家族と周りの人間を切り離して考えるタイプでしょう?」

男「…」

女「もしくは既に、迷惑をかける人がいないか」

女「どっちにしたって簡単だね」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/11(土) 11:12:11.22 ID:5md5v0n+O
男「…なんでお前にそんなことがわか…!」

女「人の命を救おうってやつが優しくないわけがない」

女「どういう理由があるにせよ、救うと決意した人間の心は固く優しい、そして脆い、途中で歪むこともあるだろうけどね」

女「そういう事に従事しているあなたの自殺という選択、職業、たったこれだけの情報でも少なくない」

女「あなたには大事に思う家族がいない、どっちとして捉えても、ね」

女「そしてだからこそこんな方法が、あなたという人種に痛いほど効く」

男「…」

女「…どう?間違ってる?お医者さん…?」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/11(土) 11:25:14.32 ID:5md5v0n+O
男「…ね、死ね…死ね…!死んじまえ!」

男「てめえなんかあの時に死んじまえばよかったんだ!」

男「命を命とも思わねえクズが!お前が不老不死になったのはこの世で一番許されない罪だろうよ!!」

女「…」

男「何でてめえみたいなやつが不老不死なんだよ!」

男「…死ね!てめえなんか…!」

女「…」

男「…今日帰ってきて、お前がまだ居たら、お前を殺す」

女「…んん…?」

男「…痛みはあるってさっき言ったもんな、だからお前が出ていくまで殺してやる」

女「出来もしないくせに」

男「さあな、でも少なくとも俺はそうするって決めた」

男「ようく考えとけ、死ぬべきだったクソ女」

女「…」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/11(土) 11:32:00.80 ID:5md5v0n+O
男「…」

院長「…おはよう、男くん」

男「…院長…おはようございます」

院長「…うん、昨日よりは少し顔色が良くなったかな」

男「…そんなこと…」

院長「…君はまだ未熟だ、たくさんの経験をして、その技術を伸ばしてもらいたい」

院長「…恥ずかしい話だが、救いにもならないとは思うが」

院長「仕方の無いことだと割り切ることが一番だよ、こんな話をもう何度もしたけどね」

院長「今は辛いだろうけど、それは確実に君の経験として蓄えられる、君の挫折は無意味では無いんだよ」

男「…」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/11(土) 11:36:28.59 ID:5md5v0n+O
院長「手術室は猫箱とも言える、たとえ中でどんなに不合理で理不尽なことが起こっていたとしても、真実を知るものが口を閉ざす限りそれは永遠に闇の中だ」

院長「過激な例えだが、あの部屋の中で患者をわざと死なせてしまったとしても、口を閉ざす限りそれが明るみに出ることは無い」

院長「それをいい事に、自分のせいではないと開き直る者もいる、そんな人達は大成しない、いずれどこかでボロが出る」

院長「君のように、重く受け止める姿勢が大切なんだよ、当たり前だ、私たちが扱っているのは命だからね」

男「…だから、気を落とすなですか…?」

男「失敗なんてこれまで数え切れないほどしてきました…!でもそれでも俺が今まで目的を失わずに続けられたのはそれが取り返しのつくものばかりだったからです…!」

院長「…」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/11(土) 11:39:37.00 ID:5md5v0n+O
男「…でも…命がかかってる時に失敗してはダメでしょう…!」

男「命を救うことが本文の医者が、奪ってしまっては元も子も無いでしょう…!!」

男「体力の限界…?いや違う…!あの幼い女の子は俺のサポートミスで死んだ…!」

男「…院長は良かれと思ってこの事を付してくれてるのかも知れません…!でもあれは明らかに俺のミスです…!」

男「沢山罵られました…先輩からも、あのこのお母さんからも…!」

男「当然です、絶対に失敗してはいけないところで失敗してしまったんですから…!」

男「…あの子は…」

男「…」

男「俺が殺したも同然です…!」

院長「…」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/11(土) 11:53:19.46 ID:5md5v0n+O
男「…俺は…辛いです」

男「…命を奪った俺が、こんなふうにのうのうと生きていることが…」

男「…死ぬほど辛いです」

院長「…」

院長「…君は全力だった、失敗自体は別としても、君の普段を咎める人が今まで一人でもいたかい?」

男「…」

院長「…医療ミス、これはとても根深い問題だ」

院長「…我々医療に従事するものはね、経験のため、発展のためどうしても犠牲とする必要がある」

院長「…いいや、犠牲としなければいけない」

院長「じゃないと、本当に死んだ意味が無い」

男「…命ですよ…?」

男「…生きていたんですよ!?」

院長「…そうだ」

院長「そして、それを奪ったのは、この病院だ」

男「…違う!!!俺だ!!」

院長「…」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/11(土) 11:58:15.03 ID:5md5v0n+O




男(…医療ミスは医術につきもの)

男(そらそうだ…人間が行う手前、失敗の可能性が常につきまとう)

男(…何が悪かったわけじゃない)

男(…先輩がカバーしきれなかったわけじゃない、あの子が手術に耐えきれないほど弱っていた訳でも無い)

男(道具や設備の管理がおざなりだったわけでもない、当然誰に責任がある訳でも無い)

男(ただ、俺が未熟だっただけだ)

先輩「よう」

男「…あ」

先輩「死にそうな顔してるな、お前」

男「…」

先輩「何も言葉が出ねえってか、そうだよな、お前のせいであの子は死んだんだから」

男「…っ」

先輩「そして、お前の未熟っぷりを見抜けず任せちまった俺に一番の責任がある」

男「違っ…」

先輩「違わねえよ、なんにも違わん」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/11(土) 12:00:12.70 ID:5md5v0n+O
先輩「もっとよく知っておくべきだった、お前の得手不得手、人となり」

先輩「すべてを吟味して考慮した上で、お前に出来る最適な仕事を任せるべきだった」

先輩「それをするのが主治医の俺の役目、怠った俺のミスだ」

男「…何でですか…?」

男「どう考えても俺が悪いでしょ!?」

男「明らかに俺のせいじゃないですか!なのにどうして先輩も院長も…!」

先輩「責められて楽になりたい奴にかける言葉はねえからだよ」

男「…っ」
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