【FGO】イリヤと天の衣

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1 : ◆4soo/UO.k6 [saga]:2017/11/08(水) 21:13:47.73 ID:CHTpgRYyo
きっと、私があの子に出会うことはないと思っていた。

二度と触れ合うことは出来ないと。

あの顔を見ることも、あの声を聴くことも、もう私には届くはずのない夢となった。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1510143227
2 : ◆4soo/UO.k6 [saga]:2017/11/08(水) 21:15:31.12 ID:CHTpgRYyo
そう、思っていたのに……運命は私とあの子を惹き会わせた。


同じ時間と、同じ世界で育ったあの子ではないけれども、

間違いなくあれは私の……私達の想い出の結晶だ。


遠い記憶の果て、尚も忘れることはない。

冷たくて、凍えるような心を溶かしてくれた。

寒くて寂しい私達を、彼女の笑顔が暖めてくれた。

その声が、私達に未来をくれたのだ。
3 : ◆4soo/UO.k6 [saga]:2017/11/08(水) 21:16:11.97 ID:CHTpgRYyo
それは、今も変わらない。

あの子が―――別の世界の存在であっても―――生きていてくれるだけで、

それだけで私は満足だった。


満足していた―――遠くから見守ることが出来る、それだけで本当に良かった。

あの子は、何もわからないだろうから……これで良かったの。


良かった、こことは違う世界でも、あの子が幸せそうで。

本当に良かった、元気でいてくれて。本当に、本当に。
4 : ◆4soo/UO.k6 [saga]:2017/11/08(水) 21:17:09.75 ID:CHTpgRYyo

「―――……あのぉ、もしもし?何してるんですか。ストーカーですかね?」


ここでの暮らしは平気だろうか?

あんなに元気で転んだりしたら大変。

不自由な思いはしてないだろうか?

聞きたいことは沢山あるけれど、私の声を届けるわけにはいかない。

こうして居られるだけで―――


「無視はいけませんよー?無視は。

イリヤさんに何か御用でしたら、このルビーちゃんを通していただかなければね!」


―――何?さっきから頭の傍をブンブンと、ハエ?

なんか喋っているような、気のせいかしら?
5 : ◆4soo/UO.k6 [saga]:2017/11/08(水) 21:18:14.82 ID:CHTpgRYyo

「だんまり、ですかぁ?……仕方がないですね、これは実力行使も」

「ちょっと!誰なの、さっきから……うるさいと見つかっちゃうわ」

「聞こえてるじゃないですかー!だったら、ちゃんと反応してくれないと……ん?」

「聞こえてる、聞こえてるから!静かに―――」


ステッキが喋っている。

流石はカルデアと呼ばれるここ。

私が言えることではないけれど、よくよく不思議なことに縁があるものね。


「―――あれ、貴女……イリヤさんのお母様では?」

「え?」


変な形のステッキが、私のことを知っている?


「おかしいですねー?何故ここに」

「私を、知っているの?あの子を―――イリヤのことも」

「それはもう!なんたってイリヤさんはマス―――」


気を取られている隙に、私は足音が近づいてくるのを聞き逃してしまった。

気が付いた時には遅い、遅すぎた。何もかも、今までも。
6 : ◆4soo/UO.k6 [saga]:2017/11/08(水) 21:19:24.88 ID:CHTpgRYyo

「―――ルビー!声が聞こえたと思ったら、こんな所で何してるの!!」

「あ―――」


あの子の声が、すぐそこで聞こえる。

このまま何も言わずに消えることも出来た。

でも、私はその声に……その姿に、その顔に、その全てに気を取られていた。

どうしようもなかった。どうすることも出来なかった。


―――だって、すぐそこに居るんですもの。


もう出会うことはないと、二度と触れ合うことは出来ないと、

運命を受け入れたはずなのに、私の願望が……すぐ、そこに。


「ち、違うんですよイリヤさん!見て下さいこの方を!!」

「また誰かに迷惑かけたんじゃ……かけたんじゃ―――え?」

「あ……ああ……イリヤ……」

「え、えっ……嘘、ママ……?」


彼女が、私に語りかける。


―――お母様!


記憶の欠片が、私の心に語りかける。

ここにいるあの子と、私に残った記録の中にいるあの子が。


その日―――私は運命に出会った。
7 : ◆4soo/UO.k6 [saga]:2017/11/08(水) 21:20:53.40 ID:CHTpgRYyo

「―――えぇ……えぇええええええ!ママぁ!?な、なんで」

「あの、イリヤ、違うの……私は」

「前からなぁーんかママに似た声が聞こえるような気がしてたけど、

やっぱり居たんだ……ママ、ママだよね?」

「あのね、イリヤ……私は―――」


「イリヤさん、良かったですねぇ!まさかーこんな所で親子感動のご対面とは!!

流石はカルデア、何でもありとは恐れ入りました」

「……もうっ!あなたは黙ってて!!

あなたがうるさくするからイリヤに見つかったのよ?そこで反省しなさい!!」

「あっはい……」


こんな形でイリヤに見つかってしまうとは。

どうしましょう、どうしたら良いだろう。

どうしたら、“彼女をなるべく悲しませないように”出来るだろうか。
8 : ◆4soo/UO.k6 [saga]:2017/11/08(水) 21:21:54.62 ID:CHTpgRYyo

「イリヤ……いえ、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン」

「え……は、はい……?」

「私は……私は……」


私は……あなたの……!


「私はあなたの母親では、ありません」

「え?」

「私はアイリスフィール……アイリスフィール・フォン・アインツベルン」

「???……あの、ママ……だよね……名前も声も、顔も同じなんですけど……」


「そうね、きっとそうなのでしょうね。でも、違うの。

わからない?私は、このカルデアに召喚されたサーヴァント。

聖杯の力で、聖杯の端末として、繋がらない世界から呼び出された仮初めの器。

あなたの知らない世界の理。あなたの知る必要のない、失われた奇跡の魔法。

天の衣を纏いし者、それが今の私なの」


「わ、わからないんですけど……」
9 : ◆4soo/UO.k6 [saga]:2017/11/08(水) 21:23:25.73 ID:CHTpgRYyo

「だからね、姿や形が同じだとしても、まったく別の存在ということ。

あなたのママは、あなたの世界のママ。

私は、この世界では消えてしまったアイリスフィール、ということよ」

「消えた……?」


「私は英霊ではないのだけれど。

……そうね、もうアイリスフィールとしての私は死んでしまっているの。

本当なら、どこにもいないはずの存在なのよ」

「どこにも……ここにいるのに?」


「そう、だからこれは一時の夢のようなもの。

……あなたが見ている私は、あなたの母親の形をしているだけの、ただの残滓よ」

「ざ、ざんし……?(って何かなルビー)」

「(残り物、みたいな意味ですよイリヤさん……)」
10 : ◆4soo/UO.k6 [saga]:2017/11/08(水) 21:24:05.09 ID:CHTpgRYyo

「じゃ、じゃあ……えっと、ママ……じゃなくて……?

アイリ、さん……は―――わたしのことを、知らないの?」

「それは……」


―――そんなわけ、あるはずがない。

どんな姿になったって、片時も忘れることはない。

あなたと過ごした僅かな日々を、全てが輝いていたあの景色を、

私が人として生きた証を、その想い出をくれた感謝を、イリヤと、イリヤと。
11 : ◆4soo/UO.k6 [saga]:2017/11/08(水) 21:25:07.71 ID:CHTpgRYyo

「えっと……わたし、イリヤって言います。

小学五年生で、メイドのセラとリズ、それとお兄ちゃんと暮らしてます。

後、最近うるさい妹も出来て……パパとママは仕事でよく出かけててあんまり家にいません。

それからそれから……」

「イリヤさん、イリヤさん」


「一応……魔法少女、的な?そんな感じの……はい、あれです……」

「イリヤさん、もっと胸を張って言って下さいよ!

もっとあざとく!もっと可愛く!もっとアピールして!!」
12 : ◆4soo/UO.k6 [saga]:2017/11/08(水) 21:25:54.77 ID:CHTpgRYyo

「なんで!?……うぅ、恥ずかしいよ……ママの前でとか……違う人でも」

「いや、いいですよー。その恥らう姿が丁度良いんですよー。

こんな特殊な事象で動いてる世界ですからね。ここだけで出来ることもしていかないと!」

「ルビーはちょっとくらい自重して!みんな真面目に戦ってるんだよ!?

わたしたちだって、少しくらい気を引き締めてないと、マスターさんに怒られちゃうよ」


そう、私達はこの世界のために戦っている。

戦うために呼ばれた力、マスターと契約したサーヴァント。

この子が呼ばれたということは、戦う運命からは逃れられないことを意味している。
13 : ◆4soo/UO.k6 [saga]:2017/11/08(水) 21:27:33.03 ID:CHTpgRYyo

「イリヤ……」

「あっ!ごめんなさい、それでですねー……えっと、うんと……あのそのわたしは……」


「……イリヤ……戦うことは、怖くない?痛い思いは、していない?」

「え?……あの……」


「あなたが望むのなら……私は……」

「だ、大丈夫です!……本当は少しだけ、怖いなーとか思ったこともあるけれど!

マスターさんは優しいし、マシュさんとも仲良くなれたし、ここにはクロもいるから。


―――わたし、怖くないよ。痛いことからは、ルビーが守ってくれるしね!」

「ええ、ええ!そうですとも、我が可愛いくぁいいマスターに傷を付ける輩など!

例え超常のサーヴァントと言えど、このルビーちゃんが許しませんよー!!」
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