【ミリマス】うちの琴葉知りませんか?

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11 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/11/08(水) 04:04:54.19 ID:08pW5gpZ0

「伝えたいことがあるんじゃない? 例えば自分の身代わりを探してるとか」

「どっちがこの世界に残されるか、そんな試し合いをしてるとでも?」

「違うの?」

「違うわ」

「だって、ここは"私の世界"じゃないんだもの」

再び二つが一つになった声が響く。
妙だ、変だ、どちらともなく近づいて、なにかズレてると訝しむ。

「じゃあ、一体ここは誰の世界?」

「私の知ってる劇場は、海沿いの土地に建っている」

「ここは違う」

「プロデューサーは頼りになるけどだらしなくて」

「それは合ってる」

「親友を一人だけ選ぶなら」

「一人だけなんて選べない!」

「初めてやったお仕事は――」

「思い出に残ってる出来事は――」

二つの記憶をすり合わせ、一つにしていく作業の中……私たちは重大な事実に気づいたのだ。

「見てこれ! 劇場お知らせの掲示板……公演ポスター? それが一体どうしたの」

劇場の前に作られたイベント告知用の掲示板。
そこに貼られていたポスターに答えはしっかり書かれていた。

「所属アイドル総出演――」

「全部で五十人が集まる大舞台……」

そう、私はしっかりハッキリ覚えている。
私がいる世界の765プロのアイドルの数は全部で総勢五十二人。

だけどこの劇場のある世界には……アイドルは五十人しかいないのだ。
12 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/11/08(水) 04:05:28.09 ID:08pW5gpZ0

「そっちは?」

「もちろん五十二人」

「なら、私たちどっちも……」

「……オリジナルじゃない。別にいるんだ……本当の私。一番最初の田中琴葉」

でも、その時私は気がついた。気づいてしまうと怖くなって、思わず自分の肩を抱いた。
私は、そう、今の私は、"一体誰と話してるの?"

「……いつから?」

問いかけに答える分身はいつの間にやら消えていた。

気づけば私は一人きり、たった一人で閉じ行く劇場のある世界にぽつねんと立っていたのだから。
13 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/11/08(水) 04:06:39.72 ID:08pW5gpZ0
===

「……で、オチは?」

「え?」

「いや、だからその夢の話のオチだよオチ。一人きりになってから、琴葉は一体どうしたのさ」

まるで話が見えないと、プロデューサーが首を捻る。
私はそんな彼にコーヒーのカップを渡しながら。

「だから、そこで目が覚めたんです。よくあるじゃないですか。怖い夢を見てる時は、本当に怖くなった瞬間飛び起きるって」

「ほう」

「つまり、その……と、飛び起きちゃったワケですよ。だから、この話にオチも続きもありません」

朝の事務所のワンシーン。

泊まり込みの仕事だったという彼は眠気覚ましのコーヒーを飲み、「うん、苦い」と満足そうな声を出した。

私も自分のマグカップに入れたコーヒーを持って彼の対面のソファに腰かけると。
14 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/11/08(水) 04:08:05.44 ID:08pW5gpZ0

「やっぱり物語にはキチンとした落としどころがあるべきですか? ……例え、それが夢の中の話だったとしても」

尋ねて待つこと十数秒。プロデューサーは頬を掻くと

「俺が興味を持ったのは」

「はい」

「オリジナルの……琴葉だっけ? 一番最初の、田中琴葉」

「ええ……。結局、彼女は出て来ませんでしたけど」

「その琴葉がいた劇場の毎日は、ロングランだったのかなーってね」

「ロングラン? ……ああ、ロングラン公演とかの」

「そっ。例え夢の中の琴葉だったとして、その子もここにいる琴葉みたいに
笑顔の絶えない毎日を送って過ごしてたのかな……なんてことが気になってさ」

瞬間、私は面白くなくなった。
拗ねるように眉を寄せて見せるとカップを手にして前のめり。

「それ、ある種の琴葉差別です」

「なんだいそりゃ。まーたこの子は変なことを言いだして――」

「夢の中の私のことよりも、目の前にいる私にもっと興味を持って下さい。
……でないと、気づいた時には私がいなくなってるかも」

「はは、まさか」

「そのまさかが無いとは言い切れません」
15 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/11/08(水) 04:08:42.78 ID:08pW5gpZ0
===

そうして、舞台は切り替わった。

今度は机を前にして椅子に座り、"野球をしてはいけません"なんて紙に書いてる私がいる。

……はぁ、まただ。いつまでも終わらずにいればいいなんて、心が名残惜しみ過ぎるのも考え物。

私が本当の劇場に辿りつける日は、一体いつになるんだろう?
16 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/11/08(水) 04:16:03.66 ID:08pW5gpZ0
===
以上おしまい。こちとら何度も事務所がオンボロビルに戻ってるんだ。
劇場だって何度でも、宇宙の果てまで飛ばしたらぁ! …の精神。

そうそう、もしも迷子になってる琴葉を見かけた方はミリシタまでの地図を描いて渡してあげてくださいね。

では、お読みいただきありがとうございました。

17 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage]:2017/11/08(水) 04:30:38.22 ID:08pW5gpZ0
>>10訂正
〇「多分、ここが最初の765劇場。……なら、アナタがオリジナルキャストなの?」
×「多分、ここがホントの765劇場。……なら、アナタがオリジナルキャストなの?」
18 : ◆NdBxVzEDf6 [sage]:2017/11/08(水) 04:50:18.28 ID:yV9KnhTf0
不思議な話だ、乙です

田中琴葉(18)Vo/Pr
http://i.imgur.com/8iH4EFK.jpg
http://i.imgur.com/BfHWCZo.jpg

そういえば魅裏怨のcdが出る前からだったね
http://i.imgur.com/6P203EL.jpg
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/08(水) 05:33:47.60 ID:6FKBrej10
ゼノの世界まで巡ったんか、この琴葉……w
Pの数だけ世界があるようなもんだからな、アイマス。
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/08(水) 07:15:55.74 ID:+YH6YyPAO
乙乙
もうすぐ迎えに行くぞ…

律子が苦労人って何処だっけと思ったらぷちますか
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/08(水) 11:14:46.34 ID:eBEeMGlwO
ゆっくりでもたどり着いてくれればいいさ
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/08(水) 18:33:57.45 ID:o1fzzCyno
箱マス、ゼノ、SP、DS、プチますか
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