男「元奴隷が居候する事になった」【安価有】

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299 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/03(水) 09:41:21.49 ID:TKKPjbVqO
あけましておめでとうございます。
お身体を大切に、無理はなさらぬよう…
300 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/03(水) 14:24:27.45 ID:Ic+MS72qo
>>298
あけましておめでとうございます。
御自愛ください
301 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/04(木) 07:49:44.14 ID:nQQw/K0bO
天龍で草
お体に気をつけて過ごしてください
302 :(´ω`) :2018/01/08(月) 05:16:54.74 ID:SgrNZwah0
体調にお気をつけて無理せず更新してください…
私も年末にインフルエンザにやられたクチです…
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/09(火) 21:03:28.39 ID:xcA863R90
楽しみに待っていますよ
304 :NATHAN [sage]:2018/01/15(月) 01:40:12.44 ID:UDMIs4Zw0
保守
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/15(月) 17:01:08.96 ID:Hql4hg9c0
保守
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/16(火) 15:30:51.79 ID:Ng5+RBxr0
肺炎一歩手前でした。(挨拶省略)

週末には元の住まいに戻れるとの事なので、ようやくまともに書けそうです。
長らく投下できずに申し訳ありません……。
新年のあいさつや体調を気遣って頂けるレス、スレが落ちないための保守など有難うございます。心が温まりました。

ところで、私のようなぽんこつは脳内でよく物語のイメージソングを垂れ流してしまう性(さが)でして。
それを皆様にも共有したいと思い、このスレを想起しながら聞いた曲を一つ紹介させてください。
https://www.youtube.com/watch?v=I79m_otKgJI


本編に関しては、今週の土曜か日曜辺りにでも改めて覗いて頂けると幸いです。
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/16(火) 16:45:55.87 ID:LZPRrAq90
待ってます!
308 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/17(水) 17:57:05.64 ID:uGMrt0jSO
まだかなー?
309 :名無し [sage]:2018/01/17(水) 19:21:59.54 ID:DbbzBz000
肺炎手前とは危なかったですね・・・。
無理をなさらずに更新してくださいね、待ってます(∩´∀`)∩
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/19(金) 23:35:49.01 ID:zdfdEQWn0
保守
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/20(土) 00:03:24.21 ID:Qhwvu5580


【二人のエピソード】  


季節は夏
夏祭りで花火を見る



【視点:男 or サンディ】






【サンディの最近の趣味】


猫観察

 
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/20(土) 00:08:37.57 ID:Qhwvu5580


部屋の窓から見える敷地に、桔梗の花が濃紫の花弁を慎ましく覗かせていた。

梅雨の空けたこの時期は吹く風みなに湿気が纏わりついているような気がする。

その風色が頬を撫でると涼やかさを少し感じた。

本格的に始まる夏が一歩一歩近づいているような兆しで、

緩やかでも確実に四季が巡っているのだと再確認できる。

朗らかな気持ちに流され軽く背伸びをしようと手を伸ばす。

ずきり、と右の肘が少しだけ疼いた。先月の怪我が未だ完治していないようだ。

この手の傷は何度か負った事がある。手酷いものではないので、そのうち治るだけでも良しとしておこう。

そのまま軽くストレッチでもしようかと思うと、不意に後ろから呼びかけられる。


「お兄さん、今日も行ってきます」


声のした方向を向くと、そこには少しだけ日に焼けた健康的な肌色の少女が居た。

名前はサンディ。去年の秋から一緒に住んでいる同居人だ。

 
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/20(土) 00:10:47.04 ID:Qhwvu5580


七分袖の白いシャツにショートパンツ。

そして日除けの麦わら帽子を被った格好で、

ピシッと音が立つような真っ直ぐな姿勢を向けてくれる。


「おぉ、今日も元気だね。ちゃんと飲み物は持ったかい?」

「はい、万全です。ぬかりはありません」


ふんす、を鼻を鳴らすような動作をしつつ、

肩にかけたポシェットから清涼飲料水を出して見せてきた。可愛い。

ポシェットの中には飲み物の他に筆記用具とノート、

そして塩飴、更にはGPS付防犯アラームが常備してある。

五月の事件以降、特に防犯アラームだけは絶対に手放さないよう言いつけていた。

素直な彼女はしっかりと言いつけを守ってくれているようだ。

よしよし、とサンディの頭を麦わら帽子の上からぐりぐり撫でてみる。

ショートパンツの裾をぎゅっと摘まんでサンディは僕の手を受け入れてくれた。

もじもじしている仕草からして、ひょっとすると照れているのだろうか。

それがまた何とも可愛らしいと思い、もう少しだけ愛おしむように撫でてみた。

君の今日が幸せでありますように、と。

ひとつまみだけ愛を添えて。

 
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/20(土) 00:15:31.60 ID:Qhwvu5580


「お、お兄さん!そろそろ修行に行ってきますね!」

「はい、いってらっしゃい」


玄関前で一度振り返って僕に向けて手をぱたぱた振り、サンディは外出した。

最近サンディは一人で外に出る事ができるようになった。

さらに外出先で趣味に興じるようになったのも非常に喜ばしい。

昔はどこに行くにしても僕が傍にいたが、以前に比べれば随分と快活に変わってくれたものだ。

もちろん彼女に気付かれないよう、当面の間は組織に頼んで護衛をつけてもらってはいるが。

外で遊ぶのも健康的で子どもらしいから大変喜ばしい事である。

ただ、遊ぶ、というのはひょっとするとサンディ的には語弊があるのかも知れない。

そう、あくまで彼女にとっては“修行”なのだ。

修行の内容は、猫の観察。ほんと愛らしすぎて悶死しそう。

 
315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/20(土) 00:19:25.70 ID:Qhwvu5580


なぜサンディが修行などという言葉を使うようになったのか。

事の発端は彼女と一緒に図書館へ行ったときに遡る。

あの子に知識の幅を持たせるために、僕はそこへよく連れていくのだ。

図書館に赴き、いつもの如く読書用スペースに各々本を数冊持ってきた。

僕はノンフィクション小説、そして新書コーナーにあった本を幾つか見繕う。

サンディは多種多様な本を六冊持ってきた。

背表紙を見る限りは本当にジャンル不問の模様。

まさか青色申告関連の本まで読むのかい、君は。

もし本当にその手の専門書の内容を理解できているのならば、

年中火の車である我が探偵事務所の経営を一緒に回してほしい。

切に。切に。いや本気八割くらいで切に。

 
316 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/20(土) 00:22:50.23 ID:Qhwvu5580

サンディが持ってきた本の中でも特に僕が目を引いたのは、職業に関する本だった。

そういったものは僕も就職活動をしていた頃に読んだ事がある。

どういう職種や職業があるのか、どうやったらなれるのか、どのくらい稼げるのか。

夢への道筋、その先の現実、そんな未来の在り方が書かれているような内容だ。

ひょっとすると、サンディには将来の夢があるのだろうか……。

小さな声で問いかけてみた。


「サンディ、将来は何になりたいの?」


それを聞いたサンディは顔を真っ赤にした。まさかの地雷だったか。

彼女は耳まで紅潮させつつ、なにやら索引ページから探し始めた。

そして本をパラパラと捲ると、彼女はその項目を開いて僕にそっと差し出した。

そこにはこう書いてあった。



 『 探偵 』  と。

 
317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/20(土) 00:29:03.20 ID:Qhwvu5580


サンディはその項目を一所懸命に読んでいた。

その中で彼女が学んだ重要な点は、職業内容。

特に今の自分に出来そうな所をブラッシュアップしていた

探偵の探しものは人や動物。専門的に人を探す所もあるが、大体は動物を取り扱う方が多い。

そしてサンディは動物探しなら自分にも手伝えるかも知れないという結論に至った。

いつか自分が探偵の仕事を手伝えるようになるために、最近は“修行”を始めたというわけだ。

 
318 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/20(土) 00:31:30.30 ID:Qhwvu5580

これは只の余談になる。

それからしばらく僕らは読書に耽り、読み終えていない本を借りて図書館を後にした。

車の中で互いに今日読んだ本の感想を語りつつ、その合間で僕はふと思った。

読書をさせてみることで気づいたが、彼女の日本語に関する語学力は同年代よりもかなり高い。

難しい言葉をすらすらと読めて、且つ漢字の読み書きは中学生と同じかそれより上のレベル。

どうしてこんなに日本語が堪能なのか。それをふと聞いてみた。

曰く、日本に連れていかれるのは自分が奴隷になった早期の段階で決まっていたと。

国外の売却先であるご主人様に迷惑かけないように、

日本語、というか学問の分野に関しては相当仕込まれたとか。

それを聞き終えた後、衝動的に僕は彼女を抱きしめた。

突然抱き着かれたサンディは僕の胸のうちであわあわと慌てふためいたが、

ひとしきり手をパタパタさせたあと、観念したように僕の背中へとおもむろに手を伸ばしてくれた。

常人では耐えきれないような、そんな辛い経験を経て覚えた日本語は嫌いなのかも知れない。

彼女のことを鑑みず、勉強が出来る理由を聞いた事に対して「ごめんね」と呟く。

すると僕の耳元でサンディは囁く。


「あの辛かった時間も、こうして貴方とお喋りするためにあったと思うと、幸せなんです」


僕はまた、ぎゅっと彼女を抱きしめた。

 
319 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/20(土) 00:36:59.88 ID:Qhwvu5580


閑話休題。

それからサンディは探偵見習いと自称して、その修行のために動物の動きを見ていた。

僕らの住まいは周囲に野良猫が多いから、観察の場としては打って付けだろう。

サンディは動物好きという事もあり、まさに趣味と実益を兼ねている。

最近は猫の気持ちになりたいから、と猫耳付カチューシャを所望された事があった。

用途をもう少し深く訊ねると、それをつけて動物探索のために町内を闊歩するつもりだったとか。

現状あまり人目についてはいけないサンディだが、流石に色々と注目されそうなので却下した。

だが、シュンとしたあの子を見てしまうと僕の心はどうにも脆弱になってしまう。

家の中だけならいいよ、と買ってあげたのはここだけの話に留めておいてほしい。

 
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/20(土) 00:39:22.52 ID:Qhwvu5580


最近の修行場所は近所の空き地に住まう猫たちの観察が主流のようだ。 

今日もそこに向かっており、持っていたノートに何やら色々と書いているのだろう。

そういえば、実際に修行している場面って見た事がなかったなと思い出す。


……尾行してみるか。


決して仕事が入らず暇なワケではない。

ハードボイルド探偵として、それこそ修行の一環を最近怠っていたのを失念していたのだ。

ここ一つ、サンディに本物の探偵の尾行をお見せしよう。いや見せたら尾行にならないけれど。

傍から見れば女子小学生に付き纏うアラサー青年になるという事か。

なるほどちょっと死にたくなる光景だ。

サンディに持たせている防犯アラーム、初めて鳴り響く相手が僕じゃありませんように。

 
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/20(土) 00:40:01.88 ID:Qhwvu5580
今宵はここまで。続きは近日。
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/20(土) 01:11:26.33 ID:T2FWtZAZo
おつ
ネコミミサンディを家に監禁(語弊)とか……マスターこっちです
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/20(土) 06:51:47.59 ID:YUXyrn6S0
五月の事件とは一体…気になる
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/20(土) 07:57:31.75 ID:Tt+9yqQ5O
おつ、楽しみ!
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/21(日) 00:21:41.91 ID:eL2mP0RHO
乙です。サンディ…
やっぱり翔太郎で再生される…
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/21(日) 02:17:09.20 ID:gEuhmUohO
更新きてるー!うれしい!!
サンディぐぅかわなんだよなあ……
327 :m [sage]:2018/01/21(日) 06:14:41.99 ID:T8WsVcJI0
更新キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
待ってます!
328 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/26(金) 14:25:27.29 ID:NrLW8VxQ0
相変わらず癒される...
無理しない程度でいいので更新待ってます
329 :m [sage]:2018/01/29(月) 02:10:19.02 ID:ZHfM2+Rs0
ほしぅ
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/31(水) 03:17:09.62 ID:VSRPkGtqO
ほしゅ
331 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/01(木) 04:28:50.39 ID:g3o3GpUFO
保守
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/01(木) 04:30:01.93 ID:g3o3GpUFO
保守
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/03(土) 12:43:19.75 ID:y3/GEi8TO
ほしゅるん
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/07(水) 02:06:10.28 ID:gEc+r8DH0
保守
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 19:20:57.49 ID:e9FipieJ0
保守
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/09(金) 17:56:28.17 ID:ROQA8ONmO
ほっこりしたくなったらたまに読み直してる
更新のんびりまってます
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/09(金) 18:08:50.20 ID:K3sHqXN7O
ほしゅ
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 06:40:53.93 ID:AYOUkIcBO
保守
読み返したけどやっぱ癒されるわ……
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 13:42:04.15 ID:DiJEXGug0
保守
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [m]:2018/02/13(火) 00:23:47.81 ID:EfUJyyZh0
保守ううう!!!!!!!!
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/13(火) 00:45:48.34 ID:nmHWO3L10
何度読み返してもホッコリする…
続きを気長に待ってます
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/13(火) 08:44:12.76 ID:mXkgRK7bO
つづきのんびり待ってます
小説とかになればいいのに
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/13(火) 23:05:22.49 ID:95Pvhgo00
保守
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/14(水) 00:22:11.55 ID:lqfaoJaX0
ほしゅ
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/17(土) 01:20:42.45 ID:V0xcROtO0
保守
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/17(土) 15:32:02.67 ID:Jku2EmAH0
今更だけど保守いらんぞここ
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/18(日) 00:21:23.56 ID:iDaniB1b0
保守
348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/19(月) 17:13:27.12 ID:IrgpWKrk0
月日が経つのは早いもので。年が明けたと思っていたら、いつの間やら年度末。
企業戦士リーマンが忙殺される頃であり、漏れなく私もその屍の一部になっておりまして。
この時期の慌ただしさは毎年の事ながら未だ慣れません。
只々「楽がしたい」という雑念と煩悩に塗れて日々を過ごしている昨今です。
探偵と元奴隷の小話は今しばらくお待ちをば。
保守に関して調べてみましたが、二ヶ月ルールなるものがあるようで特に無くとも大丈夫のようです。
落ちないようにレスして下さった方々のお気持ちに感謝を。
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/20(火) 06:45:11.64 ID:S1KcoW/4O
生存報告来てて安心。のんびり待ってますので、余裕ができて気が向いたら書いてくだちぃ。
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/27(火) 00:45:08.17 ID:R+LLoqif0
生きてたぁ!
よかったぁ…前の肺炎で体調悪化されたのかと…
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/05(月) 23:00:19.09 ID:iSeL06nIo
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/16(金) 23:46:06.96 ID:zXRklIi+0
久しぶりに読み直した。
あーすばらしい(語彙力)
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/17(土) 13:23:13.59 ID:yaP+5VPlO
定期的に読み返したくなるクオリティ
のんびり待ってますので、どうか無理をなさらぬように
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/01(日) 23:40:05.39 ID:DDWde19wo
まだ待ってます
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/02(月) 05:33:08.83 ID:nA3eOcSSO
まだまだ待てますよー。
それじゃあ読み返してくるか……。
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/03(火) 01:30:22.83 ID:Da7jFV5NO
行間まで読みこんで隅々まで考察した結果…
サンディが尊い…その他に言葉はいらぬ…
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/08(日) 22:59:43.41 ID:RgvwPJJBO
4月だし今まで以上に忙しいんだろうなぁ……のんびり待ってますので頑張ってください。
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/19(木) 06:24:20.05 ID:DE8J+aTm0
新年度を迎えて繁忙期も治まるかと思いきや、何故か慌ただしさは増すばかり。
自身の時間の使い方を見直す機会なのやも知れない……。
今週末は久々に連休が取れそうなので、その際に投下できれば良いかと。
お手透きの方はお目通し頂けると幸いです。
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/19(木) 10:51:49.69 ID:Culsvb3oo
待ってましたぁ!無理しないで頑張ってくだせぇ
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/19(木) 12:28:51.50 ID:jfaifRPVO
待ってるぜええええ
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/21(土) 22:55:23.72 ID:aP2GD9YT0


蝉の声が遠くで聞こえてくる。

本格的な時雨の音が鳴り始めるほどではない。

しかし夏の暦を捲るには充分だろう。

照りつける日射しの強さが肌を焦がしていくような錯覚を感じた。

無意識に手を上に掲げて影を作る。

日除けにもならないが、まぁ幾分はマシだろう。

群青色のクリアスカイ。暑い季節は苦手だが、この空の色合いは割と好ましい。

深い藍をした空に白い線が一本引かれていた。

飛行機雲だ。これもまた夏の空の風物詩。

ただ、これが見えるのは天候が崩れる兆候でもある。

早めに切り上げるべきかどうかの良い判断材料になってくれるだろう。

それは何の事かって?


子どもの尾行に決まっているじゃないか。


……文字面だけだと、やたら業が深くなるなぁ。

 
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/21(土) 23:12:21.36 ID:aP2GD9YT0

とあるキッカケで一緒に住んでいる同居人のサンディ。

昔過ごしていた環境の影響からか塞ぎがちな子だったが、最近は朗らかな笑顔を見せてくれるようになった。

そんな彼女の趣味、もとい修行の一環は猫の観察。

一体どういう風に観察対象をチェックしているのか、実は前々から気になっていた。

観察ノートを見せてほしいと言ったら「恥ずかしいので……ちょっと……」と濁されたので

以来僕からはあまりその事に触れないようにしていたのだ。

まぁ、保護者として遠目から成長を見守ってみたいという気持ちは父性に似たサムシングだろう。


そんな僕は今現在、アロハシャツに身を包みサングラスをかけて電柱の陰に潜んでいる。

視線の先には空き地の土管を見つめる同居人の姿。

正確には土管ではなくその上に鎮座している三毛猫だろう。

なるほど、あの猫が観察対象か。

ふと目線を右に逸らしてみると、電柱の付近に立つカーブミラーに映るぐぅの音も出ない変質者と目が合った、気がした。

その格好はアロハシャツにサングラス。紛う事なく自分の姿だった。

ハードボイルドは今日だけ家に置いてきた事にしておこう。
 
363 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/21(土) 23:17:28.19 ID:aP2GD9YT0

彼女が今いるのは近所の空き地。

そこに長らく放置されている土管の上に、猫が数匹ほど座っている。

人慣れしているのか逃げる様子も特に無い。

その中心にいる三毛猫の首には鈴が付いていた。飼い猫だろうか。

くしくしと手で顔を掻いたり、大きい欠伸をしていた。

ふとサンディの方を見てみる。

顔でも痒いのだろうか。右手の甲で何度か頬をさするような仕草をしていた。

もう少しだけ注視してみる。

サンディは一生懸命に猫を見ながら口を大きく開けた。

くあぁぁ、と欠伸をするような吐息を漏らすが、顔は真剣そのもの。

これはまさか……猫の真似をしているのだろうか。

更にもう少し観察を続けてみる。

猫が伸びをする姿勢をすると、彼女もまた同じポージングをしていた。

うむ、確定だ。猫の素振りを真似ているぞこの子。

 
364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/21(土) 23:18:16.19 ID:aP2GD9YT0

謎の感情に心臓がキュッとなる。うっ、と思わず声が出そうになった。

それと同時に自分が隠れている電柱とは対面にそびえている電柱の陰で、

黒いスーツに身を包んだ女性が胸の中心を抑えつつ悶えている様子が見えた。

うっ、と声を上げてそうな素振りをしている。

変質者発見。いや違う、向こうから見たら僕もそんな感じだった。

対面側の彼女はあれか、組織から派遣されたサンディの護衛の人か。

不意打ちでこんなの見せられたらそうなる気持ちは重々理解できるので今回は不問にしておこう。

 
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/21(土) 23:34:21.12 ID:aP2GD9YT0

悶えるのを耐え続ける怪しげな大人たちに囲まれている。

そんな小さな地獄絵図を露知らず、サンディは猫の観察を続けている。

猫の挙動や仕草を真似つつ、ノートに何某かをカリカリと綴っていた。

書いている内容に全く想像がつかないのがまた何とも言えない。

ふと、あの子のいる空き地が薄暗くなった。

よくよく見たら空き地だけではなく、自身のいる辺り全体がどんよりとしている。

空を見上げると厚い雲が太陽を遮っている。

すん、と鼻腔をくすぐるのは仄かな梅雨の香り。夕立の顔(かんばせ)が上から覗き込んでいる。

それに感化されたかのように、遠雷がゴロゴロと重い音を響かせた。

雨が降り出すのはそう遠くないだろう。

サンディもそれに気づいたのか、ポシェットにノートをしまいこみ、帰宅の準備を始めている。

僕と対面側の女性もそそくさと帰り支度を整え、その場を後にした。

帰路に着く自身の脳裏には、先ほどの空き地で過ごしていたサンディの情景。

彼女の無邪気なその様に、しとど濡れるアスファルト以上に僕の心は潤っていた。

なんだか小さな世界に蔓延る幸せが彼女を包んでくれているようで。


 
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/21(土) 23:58:43.19 ID:aP2GD9YT0


「ただいま、帰りました」


おかえり、と僕は言葉を返す。少しだけ肩で息をしながら。

急いでアロハシャツから着替えて出迎えたのが要因だ。

彼女は訝しむ様子もなく、洗面所で手洗いうがいを終えて、

冷蔵庫にしまってある冷えた麦茶を取りに向かった。

台所の奥から声が聞こえてくる。お兄さんも麦茶を飲みませんか、と。

一杯もらおうかなと返事をしつつ、自分の手元にある小型カメラに目線を下ろす。

そこに写るのは先ほどの空き地にいたサンディの一部始終。

撮ってはみたものの、これは多分バレたら怒られるだろうな……。

そっと削除にカーソルを合わせて決定ボタンを押してみた。

可愛らしい様子であったが、写真を撮る際はやはり本人に許可を取ってなんぼというもの。

少しだけ勿体ない気もしたけれど、これでいいのだ。

軽くため息をついたところでペタペタと台所の方からスリッパの音が近づいてくる。


「はい、お麦茶です」


サンディはそう言いながら、そっと優しく麦茶を僕の前に差し出してくれた。

謎の丁寧語が妙に可愛らしくてついぞ口元が綻んでしまう。

 
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/22(日) 00:11:22.19 ID:L18Uo7f10

お盆を胸の前に添えてにこやかな笑顔を向けてくれる彼女。

いい表情をするようになったなぁ、と何だか嬉しくなってしまう。

ふと思い立ち、カメラを起動した。


「サンディ、一枚撮らせて」

「はい?」


パシャリ、と一枚。

カメラの中には無防備な笑顔のサンディが映し出されていた。

急に撮られて驚いたのか、あわあわと狼狽する彼女が愛くるしい。

顔の熱さを誤魔化すように手をパタパタさせて、その後にサッサッと前髪を整えている。

不意打ちみたいに許可を取ってみたが、これはもう一枚くらい良さそうかな。

僕は彼女を自分に軽く抱き寄せて、自撮りのような様でファインダーを降ろしてみる。

真っ赤な顔をした少女とハードボイルド探偵の様子が一枚増えた。

何気ない僕らの只の日常の一ページ、積み重ねていきたい幸せの名残。

今度連れて行く予定の夏祭りで、更に枚数が増やせたらいいなと思ってしまうのだ。


 
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:13:12.05 ID:L18Uo7f10
少しだけ投下させて貰いました。
読んでくれるのなら、それだけで有難い。
肝心の夏祭りは次の投下時にでも。
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/22(日) 00:26:54.05 ID:2Fob7RNIo
おつおつ
こんなん不審者量産されちまう
来週からも頑張ろう
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/22(日) 01:57:18.95 ID:LdAz9hcmo
良い……
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/22(日) 05:19:15.87 ID:0MyZ8VqAo
お疲れ様です
372 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/22(日) 07:34:31.38 ID:riq/95pMo
嗚呼尊い
373 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/23(月) 19:07:04.98 ID:JilGHsPSO
癒されました・・・
374 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/24(火) 07:07:35.96 ID:OFor3nMTO
乙かれ様です
ニャンディ…
375 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/26(木) 07:03:00.60 ID:kGaOfU7hO
更新されてるぅううううう!!!???
気づくのが遅くなってしまった……更新お疲れさまでした。とても尊い……。
376 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/05(土) 03:26:17.31 ID:E8sYXJhQ0
語彙が来い(しゅき)
377 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/15(火) 02:41:49.95 ID:cZXKolcGO
>>376お前が語彙にナルンダヨォ!
ニャンディはそういえばお魚さんが好きだったね。
懐かしい食事として今度は回るお寿司連れて行ってあげたい想像したかわいいやばいしぬ
378 :sage :2018/06/01(金) 02:59:52.22 ID:ud9NdqNj0
夏祭り編は夏に投下するのかな
乙だね
379 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/02(土) 23:29:02.09 ID:kHWgRYZzO
まだ期待して待ってますよー!
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/06(水) 08:41:05.35 ID:CLNIGgDD0
久々に半休が取れて、特に予定も無し。
小話書くなら今のうちということで、今日の夕方頃に少しだけ投下します。
夏祭りになるか幕間になるかは検討中。
381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/06(水) 10:40:00.17 ID:BHQxpnkQO
ありがとうございます!
お忙しい中お疲れ様です
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/06(水) 13:04:04.96 ID:/Vv2tK3YO
可愛さに癒やされながら追いついた

元奴隷という共通点からかサンディが某同人ゲームの娘で再生されてしまう
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/06(水) 18:48:06.70 ID:CLNIGgDD0
思った以上に時間がかかって申し訳ありません。
本日夕方までに書き上げられるのは難しかったです……。
近日中には必ず投下しますので、気が向いた際にお目通し頂ければ幸いです。
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/06(水) 19:09:19.02 ID:q9UdEIMG0
ところで思ってたんだけど酉つけないの?
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/09(土) 00:16:08.60 ID:JHw0RtO20


夜明けの空に蛍が哭いた。

時刻は午前四時を少し過ぎた頃。

薄い青を纏う空は雲一つ無い。淑やかな景色だ。

窓を開けると、白みがかった月の横に寄り添うような星が見える。

それと同時に、人肌程度のぬるい湿気を重ね着した風が部屋に忍び込む。

香水のように仄かに鼻腔をくすぐる朝露の香り。

季節が巡る。

彼女と過ごす初めての夏は、いつの間にか本格的に始まっていた。

 
386 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/09(土) 00:19:14.38 ID:JHw0RtO20

早起きをしたので寝室の窓際で夏の朝を噛みしめていると、

ベッドの方から「うぅん……」と声が聞こえてきた。

そちらの方に振り返って音の出処を確認してみると、

同居人のサンディから発せられていた声だったようだ。

寝汗で冷えているかも知れない。

近づいて軽く頬を撫でてみるが、特に汗をかいたような形跡はなかった。

頬を撫でた際、寝ている彼女は軽く微笑んだ。

起こさない程度に冗談半分で顎の下を少し擦ってみると、

嬉しそうな、くすぐったそうな顔をしてむにゃむにゃ声を上げている。

日々の修行の成果か、徐々に猫の魂がインストールされているのかも知れないな。
387 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/09(土) 00:21:43.91 ID:JHw0RtO20

それにしても、幸せそうな寝顔をしてくれるなぁ。

ここに来た時は毎夜の如く魘されていて、ひどい歯ぎしりをしていた彼女が

今はこうして穏やかな眠りを享受できている。

本当に喜ばしいことだ。

きっと彼女を怖がらせるような外敵がいないという、安心した環境下がそうさせてくれるのだろう。

そこに少しでも僕が介添え出来ているのなら、それだけで良い。

いつか僕の元を離れて、それから先の世界を生きる彼女。

今のように安寧で過ごしてくれるよう、少しずつ整えていかなければならない。


サンディと過ごし始めてから早九ヶ月。

当初の予定だった一年契約は、今のところ相手先からの変更は無し。

季節が巡る。時の流れは寄せては返す波のように。

出会いの季節に近づいて、別れの季節へ還っていく。

388 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/09(土) 00:23:14.30 ID:JHw0RtO20


「おはようございます、お兄さん」

「おはよう、サンディ」


目を爛々と輝かせたサンディは元気よく挨拶をしてくれる。

よく眠れた証拠だろう。

彼女は颯爽と台所に向かい、朝ごはんの準備を始めた。

料理の楽しさを知ったのか、居候なりの気遣いか。はたまた両方か。

もはや我が家の朝食に関してはサンディの領分と成っていた。

僕としては非常に有り難い限り。

まぁ任せっぱなしも何なので、洗い物くらいは担わせてもらってはいるが。
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/09(土) 00:26:12.38 ID:JHw0RtO20

コトコトとお味噌汁がうっすら噴きそうな、美味しそうな音が聞こえてくる。

エプロンを着けたサンディは慣れた手つきでコンロを止めて、お玉で軽く中身を一掬い。

ふーっ、ふーっ、と息を吹きかけて熱を冷まし、ずずっと啜る。

次の瞬間には花が咲くような目映い笑顔。どうやら美味しく出汁が取れたようだ。

やたら素敵な表情をするので、ちょっとだけ味見をしたくなる。


「サンディ、サンディ。僕もちょっと味見がしたいな」

「はい、勿論です。味の濃さは如何でしょうか?」


そう言いながら同居人は再びお玉に汁を掬い、

またしてもふーふーしながら一所懸命に冷ましてくれる。

これは何とも至れり尽くせり。

息を吹きかけるサンディに、からかいがてら擽るように告げてみた。


「なんだか新婚さんみたいだね」

「ふーーーーーーーーーーーー!!!???」


サンディの吐く息の量が凄まじい事になり、お玉の中身は全てキッチンの排水溝に吸い込まれた。

390 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/09(土) 00:33:59.42 ID:JHw0RtO20

目線は宙を浮き、握ったお玉を剣道の竹刀の構えのように僕に向けてきた。

しどろもどろの擬人化、とは今の彼女を指すのかも知れない。


「いや、え、あの、その、そ、そんなつもりでは……その……!!」

「いやゴメンゴメン、驚かせちゃったね」


耳まで真っ赤にしている彼女が何とも可愛らしい。

僕がカラカラ笑うと、サンディはもうっと言いながら改めて一口分だけお味噌汁を掬う。


「はいお兄さん。ご自身でふーふーしてくださいね」


どうやらちょっぴり拗ねてしまったようだ。それすらも愛おしい。

391 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/09(土) 00:38:16.71 ID:JHw0RtO20

僕は自分で軽く二息ほど吹きかけ温度を覚まし、さっそく味見をしてみる。

うん、良い出汁が出ている。これは随分と料理上手になったもんだ。

年齢的にはまだ幼いという言葉が当て嵌まるのに、本当に君はしっかりしている。

思わずサンディの頭に手を置いて、くしゃくしゃと軽く撫でてみた。

彼女はうひゃっ、と声を上げて驚いてはいたものの、少し俯きがちに僕の手を享受してくれた。


「うん、美味しい。サンディは良いお嫁さんになるよ」

「ほ、本当ですか!!」


とても嬉しそうな顔で喜んでくれるサンディ。

良いお嫁さんになるのは本心だ。確定事項と言ってもいい。

まだまだ小さいけれど、もう数年もすれば

世の男性が放ってはおけない素敵なレディになるだろう。

あとは悪い虫が寄って来ないよう、撃退方法を伝えておくのが僕の役目か。
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/09(土) 00:43:03.39 ID:JHw0RtO20


サンディはもじもじしながら、僕に一つ質問を投げかけた。


「お、お兄さんは、私のそういう姿を見たいとか、思いますか……?」

「勿論だよ。君のウェディングドレスを見る事を、僕の人生目標にでもしようかなぁ」


なんて冗談交じりに言ってみる。

するとサンディは大きい目をキラキラさせたかと思うと、とたん僕の胸に飛び込んできた。

顔を胸元に埋められて後頭部しか見えないゆえ、どういう表情をしているのか読み取る事はできない。

うずまってきた胸の内側で彼女は言葉を紡いだ。


「じゃあ、いちばんちかくで、みてくださいね……!!」

393 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/09(土) 00:43:55.58 ID:JHw0RtO20


バージンロードを歩く父の代役という意味だろうか。

とりあえず、うんと答える。

すると彼女はうずめた顔を僕の胸にぐりぐり摺り寄せてきた。

僕の後ろに回されている手もギュっと力が入って、抱きしめられているような感じになっている。

ここまでサンディが表現するのは珍しい。嬉しいのだろうか。

とりあえず頭を再び撫でながら僕は言う。


「とりあえず、朝ごはんの準備しよっか」

「…………は、はいっ!」

394 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/09(土) 00:44:46.40 ID:JHw0RtO20


和食で彩られた朝食。今日も彼女の料理の上達具合を味と共に楽しめた。

僕は食器洗い、サンディは食後のお茶の準備をこなし、穏やかな朝の時間が始まる。

テレビを点けると朝のニュースが流れている。

サンディは食い入るようにゴシップに見入っていた。君って割とそういうネタ好きだよね……。

その合間に僕はポストから朝刊を取る事に。

ポストの中には新聞に紛れて、町内会のチラシが投函されていた。

内容は「夏祭りにおける道路規制について」。

そういえば今日は夕方からお祭りだったな、と思い出す。
395 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/09(土) 00:47:03.75 ID:JHw0RtO20

お祭りは特に花火に気合を入れていて、近くの湖に面したところで打ち上げる事になっている。

割と規模の大きい打ち上げ花火が見られるから、近隣住人における夏の風物詩にもなっているのだ。

そのチラシを片手に事務所へ戻り、

芸能人の飲酒問題に興味津々のサンディさんの背中に向かって問いかける。


「サンディ、今日はお祭りに行かないかい?」

「……はい?」


お祭りが何たるかいまいちピンと来ていないのだろうか。

首を傾げる動作がキュートで愛らしい。

後ほど祭りの活気と花火の綺麗さを軽くレクチャーする必要がありそうだ。



僕と君はいつか離れる事になっている。

それまでに、うつくしいものを一つでも、君に差し上げたいんだ。

396 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/09(土) 00:49:17.97 ID:JHw0RtO20
今宵はここまで。今回は幕間がてらの二人の近況の話。
次回こそ夏祭り編。
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/09(土) 03:04:14.85 ID:/FOcTVXeo
おつ
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/09(土) 08:28:06.16 ID:DKEQHvuzO
>夜明けの空に蛍が哭いた

すごい美文だとおもいました(小並感)
次更新も楽しみにしてます
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