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盗賊「勇者様!もう勘弁なりません!」
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1 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/05(日) 18:29:33.93 ID:G6b6DZ3fo
――――――
何を考えているんだ!どうしてそうなるの!?くたばれ勇者!勘弁してください!
勇者を追う旅を続けて早一年
俺たちは、幾度この言葉を吐き出したことか
俺は、『勇者課勇者補助係』の一員、まあいわゆる公僕ってやつだ
虚飾を一切排した、実にお役所的で素敵な部署名だろ
お役所のネーミングセンスってのは、世間一般とちょいとずれている
一言で言うならば名は体を表すの極致ってやつだ
この部署、名結構気に入っているんだ
何故かって?
そりゃあ、『勇者』って言葉が入ってるからさ
だれだって、幼いころは英雄に憧れたことがあるだろう?
俺だってそうさ、今でこそ木っ端役人だがな
この俺が可愛い幼子だった頃、いや嘘だ、すまない
俺に、そんな時期は無かったな
正しくは「憎たらしい糞ガキだった頃は」だ
鼻水たらしながら、正義の味方になることを目指したもんさ
そんな俺がさ、仮にも勇者の名が入った部署にいるんだ
まるで俺も勇者パーティーの一員みたいじゃないか
ちょっとだけ、誇りを持つぐらい許されて然るべきだろ
まあ、素敵な部署名のことはさて置き、残念なことが一つある
『勇者』という素敵な響きと比べて、実際の業務内容は家畜の糞尿にも劣るってことだ
糞にも劣るもんなんて、俺は知らねえが、つまりは想像を絶するってことだ
お役所的に言えば、俺たちの仕事は『勇者の管理及び指導』
これじゃあ、ちょっとわかりにくいよな
勇者が魔王討伐の旅のさ中に、やらかした、しでかした物事を
適切な行政手続きに則り、解決に導く
要は、勇者の後始末部隊というわけだ
これが、実に憎々しい
この一年、俺たちは勇者にフルスイングで振り回され続けた
奴は手加減と言うものを知らないし、社会常識を知らないし、俺らの苦労も知らねえ
常に全力、常にクリティカルヒット、そして行き着く暇もなく次の問題を巻き起こす
しかも、無意識にだ
おかげで俺たち勇者補助係の目は、ぐるんぐるんに回っており
酔い覚ましに熱い蒸留酒をかっ込み、ゲロと勇者の悪態を吐き出す装置と化してしまった
ただ一人、最初からに勇者に心酔しきっている盗賊ちゃんを除いては
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1509874173
2 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/05(日) 18:30:19.51 ID:G6b6DZ3fo
――――――
プロローグ
商人「勇者が、魔王に寝返りやがった!」
――――――
3 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/05(日) 18:30:47.81 ID:G6b6DZ3fo
商人「おいおいおい!勇者は、魔王と和睦したって話だったじゃねえか!」
商人の怒気を含んだ声が辺りに響き渡る
魔王城を臨む小高い丘、索敵は既に済ましてあり
更に賢者によって張られた結界により、その声が魔物に届く心配はない
それを知ってか知らずか、商人は自身の感情をストレートに声にのせる
商人「勇者が魔王に寝返った!?俺たちを裏切ったってことか!?一体、どうなってるんだよ!」
商人「勇者め!世界を救うって約束したじゃないか!俺たちを要職に押し上げてくれるって約束したじゃないか!」
騎士「落ち着きなさい、商人くん。私たちは、そんな約束を勇者とした覚えは一切ないし」
騎士「なにより出世は、自力で頑張るものだよ?」
ひときわ大人びた声で、まるで子供を諭すかのように商人を諫めるのは騎士
頑強な肉体と、ガラスの心を一つの器に宿す最年長者にして勇者補助係の係長、言い換えれば現場責任者だ
その内ポケットには、彼のストレスとの戦う術
彼の精神を体現したかのような、繊細な胃を癒す薬が無数に蓄えられている
騎士「とりあえず詳細を聞こう、盗賊さん頼むよ」
盗賊「はい。魔王城は警備も固く、盗み聞きできたのはホンの一部ですけど」
盗賊の仕事は、情報収集だ
彼女は、義賊であった父親から数多の盗賊スキルを伝授されるものの
盗みを働いたことは無く、彼女の持つ盗みや殺しの技術は日々の生活に全くの不要で
あまつさえ、持て余していたほどだ
その宝の持ち腐れという盗賊にとっては何とも皮肉めいた状況を、ひっくり返したのが大臣である
彼女のスキルを見出した大臣は、あろうことか囚われた彼女の父親、義賊の開放を条件に
その忠誠を得、果たして盗賊は穏やかな生活を飛び出し勇者補助係の一員となった
4 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/05(日) 18:31:15.27 ID:G6b6DZ3fo
盗賊「はい。魔王城は警備も固く、盗み聞きできたのはホンの一部ですけど」
商人「魔王城に忍び込むだけでも、相当なものだよ」
盗賊「鍛えてますから」
盗賊「―――勇者様ですが、どうも王国への不信感を魔王にケシカケられちゃったみたいです」
盗賊「結論を言うと、魔王軍に勇者一行全員が参入する形になっちゃいました」
騎士「王国への不信感か・・・あちゃー、心当たりが多すぎて何の反論もできないなあ」
商人「は?心当たりなんて何もないんですけど。王国への不信感ですって?あのバカ勇者が、そんな人並みな考え持てるわけないでしょう」
商人「魔王が、実は可愛い幼女で、幼女趣味の変態勇者が一目惚れちまったってのほうが、まだ納得できるぜ」
盗賊「かぁ!!!!!」キッ
威嚇の声と同時に盗賊の目がカッと見開かれ、瞳孔が大きく広がる
手はカタカタと小刻みに震えながら、少しずつ腰の小刀へと伸びていく
勇者を冒涜した商人への殺意と同時に、一年を共にした商人への仲間意識、その二つのせめぎ合い
盗賊の葛藤が、その震える手からうかがえる
幸いにもその異常な姿は、商人に勇者への暴言を思いとどませるに至った
商人「ひぃ!すみません!言いすぎました!」
盗賊の勇者への心酔
彼女のそれは、既に信仰の域に達していた
5 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/05(日) 18:31:45.10 ID:G6b6DZ3fo
賢者「―――商人君、心当たりが無いって言いました?貴方も一枚どころか二枚も三枚も噛んでるんですよ?」
商人「・・・?はっきり言ってくれ、どういうことだ?」
この旅の中、勇者の行動が要因となって起こった事件や、問題は
商人の悪知恵、突飛なアイディアによって打開されてきた
では、勇者補助係のエースは商人であるか?そう問われると、疑問である
なぜならば、商人ひねり出すアイディアは手続きの隙間、法の穴に針を通すものであり
これらを実現できたのは、あらゆる行政手続きを修め、その偉業をもって称される
勇者補助係の頭脳、賢者の力が大きかったからである
賢者「では、はっきり申し上げましょう」
賢者「平和のために邁進する勇者に、奴隷承認の肩書を押し付けたり」
騎士「あ・・・」
賢者「妙齢?の侯爵家の娘さんと、勇者を本人の同意なく結婚させちゃったり」
商人「う・・・」
賢者「挙句の果てには、本来ならば勇者に追いつき共に魔王に立ち向かうべき立場にありながら
賢者「職務放棄して合流を拒否しちゃったり」
盗賊「んむぅ・・・」
賢者の言葉が、皆に旅の思い出を想起させた
勇者に起因したとは言え、勇者を貶めかねない解決方法をとってしまったことへの罪悪感が
彼らから、反論の言葉を奪っていた
6 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/05(日) 18:32:40.53 ID:G6b6DZ3fo
賢者「私たちの数々の悪行が、勇者に不信感を与えた。そんなところじゃないですかね?」
商人「さ、最後のはスピーディーに世界の平和を実現するために必要だったんだから不可抗力だ!」
賢者「不可抗力の意味はきちがえてますけど、まあ勇者からしたらそういうことでしょう?」
騎士「ぐうの音も出ないねえ」
盗賊「ぐぅ」
騎士「しかし―――まずいことになってしまったな」
騎士が空を仰ぐ、手にはロケットが握られている
その中には王国に残してきた、妻と娘の肖像画が入っていることを皆は知っていた
賢者「そうですね。非常にまずい」
盗賊「ああ・・・人類の救世主である勇者様が魔王に寝返ったなんて国に知れたら」
盗賊「多くの人々が希望を失ってしまうことは明らかですもんね・・・」
商人「いや、そうじゃあねえな盗賊ちゃん、ちょいとズレてるぜ」
商人の言葉に、盗賊が首をかしげる
7 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/05(日) 18:33:06.75 ID:G6b6DZ3fo
盗賊「どういうことですか?」
騎士「私たちの仕事の結果が、勇者離反を招いたと大臣に知れたら・・・」
賢者「私たちは希望どころか、職を失いかねませんね」
商人「ああ、なんてことだ・・・。この仕事が終わったら、それなりの褒賞がもらえると思ってたのに・・・」
盗賊「み、皆さんはこの期に及んで、まだそんな保身のこと考えているんですか!」
盗賊「もっとほら、こう!あるでしょ!いろいろと考えることがっ!」
商人「大事な話だぞ、俺たちの生活が懸かってるんだ」
賢者「私たち独り身は、まだマシですよ。子持ち妻持ちの騎士さんを見てごらんなさい」
騎士「アワアアアアア」
盗賊「・・・むぅ」
騎士の狼狽ぶりに、盗賊が口を噤んだとき
その声は、4人に等しく届いた
8 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/05(日) 18:33:33.05 ID:G6b6DZ3fo
『 政令207号に基づき 』
賢者「ん?商人くん何か言いました?」
商人「いや、俺は何も・・・」
騎士「こ、ここここれは・・・・」
盗賊「この声・・・」
抑揚が抑えられ、録音された機械音声のような無感情なそれは
対照的に、騎士と盗賊に多大な緊張感を与えた
二人は、声の主に心当たりがあった
かつて、職場でよく聞いた声
『 勇者課勇者補助係4名に速やかな出頭を要請する 』
商人「なんだ!今の声!頭の中に直接っ・・・!」
盗賊「あれ!?なんか光が!体中から光の粒が出てきてます!」
賢者「これは、召喚魔法!?」
騎士の顔から、赤みが消える
あらゆるところから、汗が吹き出し、涙がこぼれ、目は泳ぎ、足は震え、口は開き
遂には、職長足らんとするプライドまで放棄され、心の底から張り裂けんばかりの叫びが飛び出た
騎士「うわああぁぁああああ査問だ!ばれたんだ!勇者の件が、ばれてたんだあああああ!」
『 召喚魔法 サモン !! 』
瞬間、溢れた光の粒が最高潮に達し
魔王城を臨む小高い丘から、騎士の叫びと共に、4人の姿は忽然と消えた
9 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/05(日) 18:36:09.47 ID:G6b6DZ3fo
盗賊♀「ゆ、勇者様!もう勘弁してくださいっ///」
魔王「もし儂の味方になれば、有給をやろう」 勇者「ゆうきゅう」
上記SSの続きです。ゆっくり頑張ります。
今日はこれにて、失礼します。
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/11/05(日) 20:01:20.47 ID:HAenH3rN0
乙
勇者一行より補助係一行のほうが勇者してるように見える不思議
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/05(日) 20:12:27.68 ID:XPrcaNN90
ぶっちゃけ、勇者に最初から特権とか与えとけば補助係は要らなかったというね。
勇者絡みの予算の大半は大臣が着服してるし。
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/05(日) 23:12:59.70 ID:TL58rE9NO
一番の問題は国家そのものだったと彼らが気付く日は来るのか、期待
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/11/06(月) 01:17:27.48 ID:fsPfWJWf0
>>11
特権なんぞ与えたら、それを行使した勇者一行に批判が集中する。それを回避して押し付けるためのクッション課がこいつらなんだよ。
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/06(月) 08:11:47.20 ID:fhVrAcSp0
査問と、サモンが架かってんのかw
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/06(月) 17:08:55.37 ID:n+OEwMurO
>>13
民衆とか勇者とかに特権の存在を隠しときゃ良くね?
伝説の剣なんて王命使ってでも勇者に渡さないといけない代物だし。
結局は上の杜撰さが原因というね。
16 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:52:41.91 ID:1/6b/enLo
――――――
第一章
騎士「縁故採用はほどほどに!」
――――――
17 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:53:08.14 ID:1/6b/enLo
光が収まり、4人に視界が戻る
大臣「よくぞ、戻った諸君」
高く、筋の通った鼻、あご一杯に蓄えられた白いひげ
齢60を超えてなお、年齢を感じさせられない力強い声
行政府の長にして、4人の直属の上司である大臣そのひとである
騎士「ひぃっ!だだだだ大臣!ご機嫌麗しゅうごごごご」
盗賊「え?ここは、王城・・・?どういうことですか?何が起こったんですか?」
賢者「召喚魔法ですよ盗賊ちゃん」
商人「召喚魔法?なんじゃそりゃ」
賢者「貴方も知らないんですか。まあ、召喚魔法が行使される機会なんて滅多にないですし、知らなくて当然か」
賢者「召喚魔法は、その名の通り支配下にあるものを強制的に召喚する魔法です」
騎士「し、召喚魔法は王国議会か行政の長である大臣の承認がないと使えない・・・つまり」
商人「俺たちは大臣に呼び戻されたってわけか」
大臣は4人のやり取りを、黙ってみていた
もともと厳格な人間ではあるが、そこには普段以上の剣呑な雰囲気を漂わせている
大臣「お勉強は、それぐらいでよろしいかな君たち」
18 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:53:34.48 ID:1/6b/enLo
騎士「はっ!し、失礼しました」
大臣「さて、早速だが要件を伝えよう」
商人(勇者の離反の件だよな・・・ばれるの早すぎじゃないか?)
賢者(そうとは限りません・・・ま、まずは、話を聞いてみましょう)
大臣「実はな、昨晩、城内にある宝物庫が荒らされているのが見つかった」
大臣は続ける
大臣「昨晩と言ったが・・・実のところ賊が、いつ城内に侵入したのか不明なのだ」
賢者「つまり、発覚したのは昨晩ですが、犯行は更に以前に行われていたと・・・」
騎士は、大臣の様子から、勇者離反の件の叱責を受けることを予想していた
結果、思い過ごしであったことから、少し余裕を取り戻していた
騎士「それは城内を警備している近衛兵団も面目丸つぶれですね」
大臣「ふん、近衛兵団の無能共め。王の直属だからと言って調子に乗っていたんだろう」
盗賊(うわあ、辛辣・・・)
大臣「まあ、多少は考慮すべき事情もあるがな」
19 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:54:00.91 ID:1/6b/enLo
騎士「それで、その事件と私たちが呼び出されたのは関係があるんですか?」
大臣「うむ、それなのだ」
大臣「とにかく時間との勝負でな、詳細については省かせてもらうが、どうもこの事件」
大臣「勇者の関与が疑われる」
商人「ははあ、どおりで勇者の後始末部隊の俺たちが呼び出されるわけだ」
大臣「事態は急を要する。諸君らには、早速だが現場を抑えてもらう」
盗賊「そ、その前に大臣!ご報告したいことがあります!」
大臣「ん?」
商人(うわあああああ!こいつ!この良い子ちゃんっ!!!!勇者の件、ちくる気だ!!)
騎士(あ・・・終わった・・・妻よ、娘よすまない・・・お父さん無職になっちゃった・・・)
賢者(させませんっ!沈黙魔法 サイレントっ!)
盗賊「むっ・・・むぐぐ」グギギギギギギ
沈黙魔法、言葉の通り相手に沈黙を強いる魔法である
抵抗もむなしく、一言も声を発することができなくなった盗賊は商人を睨みつけている
保身のために、勇者の裏切りを隠蔽しようとする3人への怒り
その矛先は、ほぼすべて商人に向かったのだ
20 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:54:29.89 ID:1/6b/enLo
商人(うわあ!こっち睨んでる!魔法をかけたの俺じゃねえよ!ちょっと考えればわかるだろ!)
騎士「大臣、私から申し上げましょう!」
何が起こっているのか、ただ一人理解していない大臣は
その不審さに疑問を抱きながらも、騎士に答えた
大臣「こちらも急いでいる、手短に頼む・・・」
騎士「現在、勇者一行は魔王城内に侵入したことを確認しております!おそらく、魔王との最終決戦となっているでしょう」
騎士「我ら勇者補助係としても、すぐにでも勇者の援護に向かいたいと思います!」
大臣「そうであったか。そちらの、現状を把握していなかったのは申し訳ない」
大臣「だが、残念なことに呼び出してしまった以上、諸君らを魔王城に送り返す術は無い」
大臣「それこそ、伝説の勇者が用いたという転移魔法でも使わない限りはな」
大臣「仮に転移魔法が使えたとしても、今回の事件は最重要案件だ。最優先で取り掛かってもらう」
賢者(勇者と魔王の決戦、人類と魔族の頂上決戦以上に優先されることなんてあるんですか・・・?)
賢者の疑問を察してか、騎士が大臣に問いかけた
21 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:54:55.93 ID:1/6b/enLo
騎士「・・・理由をお聞かせ頂けますか?」
大臣「『ただただ職務に忠実たれ』、騎士である君が忘れたとは思わないが・・・?」
騎士がその教育の過程で、みっちり仕込まれる騎士三訓のひとつ
『ただただ職務に忠実たれ』
大臣が、騎士の疑問に答える必要はないという意思の表れであった
騎士「・・・なるほど、わかりました。では仕方ありませんね」
騎士「こちらの仕事を片付けてから再度、魔王城へ向けて出立します」
大臣「そうしてくれ」
騎士「とりあえず、現場に向かいますけど。仕事はどこですれば?できればデスクが欲しいんですけど・・・?」
勇者補助係は、発足以来このかた一つ所に留まることなく職責を果たしてきた
それゆえに、彼らは王城内に机を持っていなかったのだ
大臣「当然だな、よし現場の宝物庫にデスクを運び込ませよう」
商人「はい?宝物庫の中で仕事しろって言ってるんですか?」
大臣「説明している暇はない、必要なものはすべて用意する」
22 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:55:21.64 ID:1/6b/enLo
大臣「盗賊、君には私と騎士君たちの連絡役になってもらう」
大臣「辞令だ、現時点を持って大臣付き秘書官に任命する」
盗賊「え、あ、はい」
盗賊(あ、いつのまにか、魔法解けてた・・・)
騎士「ちょ、ちょっと大臣!タダでさえ人手不足なのに、いま盗賊さんを引き抜かれたら!」
常にオーバーワークに晒されてきていた騎士の必死の懇願である
しかし、その願いは大臣には届かない
むしろ話を遮られたことによって、大臣の顔がみるみる赤く赤く染まっていく
大臣「いい加減にしろ騎士っ!先ほどから、自身の立場も忘れ!口をはさみおって!」
大臣「時間がないと、何度言ったらわかるのだ!」
大臣「必要なものは全て用意すると言ったろう!人員は随時、補充する!」
上司の突然の叱責に、4人は圧倒され唖然としてしまっていた
その様子を感じ取った大臣は、再度、檄が飛ぶ
大臣「いつまで、だらだらしている!さっさと自分の仕事に取り掛からんかぁっ!」
騎士「はっはいっ!!!」
ひとり盗賊を残して、3人は回れ右で、場所も知らぬ宝物庫へと歩を進めた
賢者は、その明晰な頭脳で大臣の不審な態度について考えをめぐらせ
同様に商人は、その明晰ではない頭脳で事態の分析をはかろうとして
明晰ではないながらも自らの限界を悟り
とりあえず、考えることをやめた
23 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:55:50.30 ID:1/6b/enLo
――――――
騎士「ここが、そうなのか?」
近衛兵「・・・はい」
近衛兵の案内によって、3人は迷路のように入り組んだ王城の廊下を進み
遂に、宝物庫へとたどり着くことができた
赤く巨大な扉に閉ざされた、その部屋は
いかにも、大事なものが閉まってありますと自己主張するかの如く様相であった
商人「うむ、案内御苦労!というか、俺は宝物庫の場所は知ってたんだけどな」
賢者「酒保勤めだった商人君が、なんでまた宝物庫の場所なんて?」
商人「賢者、知らないのか?この宝物庫な王城で唯一、魔法で封印された部屋なんだぜ」
賢者「魔法で?それは、また厳重ですね」
商人「ああ、なんでも専用の魔法の鍵でしか開くことができないそうだ」
賢者「へえ、それはすごい」
商人「なんでも、王家に伝わる伝説の装備の数々が保管してあるとか」
24 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:56:17.51 ID:1/6b/enLo
商人「俺も噂で聞きつけてな、一回見学に来たことがあるんだよ」
賢者の知らないことを自身が知っていたせいか、商人は自慢げである
賢者「しかし、そうなると疑問ですね」
商人「なにがだ?」
賢者「だって、専用の魔法の鍵でしか開かないわけでしょ?」
賢者「当然、そのカギは担当部署もしくは、王自身が持っているわけですよね」
賢者「しかし、結果として宝物庫は暴かれてしまった」
賢者「まっさきに疑われるのは、鍵を持っていた人物では?」
商人「まあ、ここからは噂をもとに当時の俺が調べたことだ」
商人「この宝物庫を唯一開ける、魔法の鍵な」
商人「実は、数十年前から行方がわからなくなってるらしい」
賢者「あらら」
商人「というわけで、この大事な大事な宝物庫は王城の中でその名の通り開かずの間となっていた」
25 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:56:43.79 ID:1/6b/enLo
商人「というわけだ」
騎士「つまり、だれが魔法の鍵を持っていてもおかしくないってことだね」
賢者「へえ・・・そうだったんですか」
賢者「しかし、商人君。やけに詳しいですねえ・・・?噂をもとにそこまで調べ上げたんですか?」
騎士「まさか、忍び込もうなんて考えたわけじゃないよね?」
商人「ままま、まさか!興味本位ですよ騎士さん」
商人の狼狽ぶりは、その言葉とは裏腹に真実を雄弁に語っていた
賢者「なるほど。合点がいきました」
騎士「なにがだい?」
賢者「事件の発覚が遅れた理由ですよ。魔法で封印されているなら、常に近衛兵を配置する必要もないですからね」
騎士「なるほど、大臣の言っていた考慮すべき事項というのは、そのことか。近衛兵団も災難だったねえ」
近衛兵「では、我々は部屋の外におりますので」
賢者「ところで、中には誰もいないようですが?捜査は進んでいないのですか?」
26 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:57:10.39 ID:1/6b/enLo
近衛兵「はい・・・宝物庫の中に近衛兵が入ることは禁じられています」
商人「それまたどうして?」
近衛兵「城内に賊の侵入を許し、あまつさえそれに昨日まで気づかなかった我々に行政府は不信感を抱いています」
賢者(行政府が不信感・・・大臣がお怒りってことですね)
近衛兵の言葉に、騎士は大臣の叱責の様相を思い出し、近衛兵への同情を深めた
近衛兵「故に、この事件の捜査については行政府直轄の者を充てると・・・大臣からの要請で」
騎士「なるほど、本来ならばあなた方の管轄に我々が呼ばれたのは、そうした理由からか」
騎士「心中お察しする」
近衛兵「・・・」
騎士の同情からの言葉に、近衛兵は沈黙で答えた
賢者(勇者の関与については、大臣管轄の行政府で内々に処理したいということでしょうか?)
騎士(うーん、それはちょっと早計かな)
商人「では、失礼しまーす」
27 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:57:36.71 ID:1/6b/enLo
商人「さて、まずは何から始めましょうか」
騎士「まずは、現場をあらためよう」
賢者「・・・結構、広いですねここ。水道に、かまど、クローゼットにベッドまで置いてある・・・とても宝物庫とは思えない」
賢者の言葉通り、部屋には宝物庫とは思えないほど設備が充実している
騎士「いざというときには、王族のシェルターとして使う予定があったのかもな」
商人「お、宝箱はっけーん」
商人「・・・ま、当然カラか」
賢者「元から、カラだったのかもしれませんよ」
騎士「うん、もともと何が保管してあったのか知る必要があるね」
賢者「近衛兵さんに管理簿を持ってきてもらいましょうか」
騎士「そうだね、我々の最初の仕事は管理簿と現状を照らし合わせることから始めよう」
騎士「何が盗まれたかわからないと、仕事にならないしね」
近衛兵に声をかけようと、騎士が後ろを振り返える
しかし、そこにはあるはずの近衛兵の姿はない
あるのは、真っ赤な巨大な扉だけであった
いつの間に閉めたんだろう、疑問に思いながら騎士は扉に近づいた
商人「ん、どうしました騎士さん?」
騎士「宝物庫の扉が、開かない」
28 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:58:03.03 ID:1/6b/enLo
――――――
え?私が考える理想の勇者像かい?
そりゃあ何より、常に冷静で理性的にあることだな
勇者の伝説は、国民のほぼすべて老若男女が知っている
だから、どうしてもその一挙手一投足のすべてを人々は目で追ってしまう
まあ、言ってしまえば勇者にはプライベートってものがないわけだ
ちょっと同情しちゃうね
でも、そこは勇者だから致し方ない事さ
勇者には特権も一杯あるんだから、それぐらいは我慢してもらわないとね
おっと話がずれそうだ
そうそう、人々は常に勇者を見ている
もちろん、見ているだけじゃあ済まない
子供たちは、強く優しく何物も等しく救う勇者に憧れ
大人たちは、何物にも縛られず正義を貫く勇者の姿に自分自身を正す
つまり、人々は勇者の模範的な正義を
自らに取り込むことによって、更なる善性を得
そうして、できあがった社会倫理は親から子へ、子から孫へと受け継がれ
後の世をさらに良くしていく
いわば、正義のスパイラルさ
29 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:58:32.59 ID:1/6b/enLo
だからこそ、今代の勇者には怒りすら覚える
確かに、彼は彼なりの正義に基づいて行動している
しかしその、正義の執行の仕方がよくない
私たち、4人が、勇者補助係の私たちが
この一年で、どんな酷い目にあったことか
私の胃は、この一年間で酷く痛めつけられたんだよ
彼は、国を出て最初の関所でいきなり大問題を引き起こした
信じられるか?勇者は、たった子供二人を通す為に、関所の扉を魔法で打ち破ってしまったんだ
もちろん、然るべき理由があったことは推測できる
でもね、やり方が手荒すぎる
ちゃんと関所の人間と話し合って、お互い理解したうえで関所を超えるべきなんだ
たとえ、それに多少の時間がかかったとしてもだ
だけど、彼はそうしなかった
ただ感情的に、関所の人間と口論して
挙句の果てに、門を破った
それじゃあ、だめだ
人々の模範には成り得ない
だってそうだろ?
勇者のやり方を子供たちが覚えたら
自分のわがままを押し通す為に、暴力に頼ることになってしまう
うん、だからこそ私は思うんだ
勇者は常に理性的でなくちゃ
30 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:59:13.19 ID:1/6b/enLo
――――――
商人「・・・おらっ!どりゃあああああ!ごんがああああああ!・・・・開かない!」
商人「おいっ!近衛兵!扉の後ろにいるんだろっ!わかってるんだぞ!」
商人「おいおいおい!冗談で済むうちに、さっさと開けろ阿呆!」
商人の怒りようは尋常ではなかった
商人「そうか!開けないか!わかった!てめえ、覚えていやがれ!」
商人「俺が外に出た暁には!てめえの鼻に口に耳にへそに、けつの穴まで含めた全ての穴を栓でふたしてやるからな!」
賢者が扉に駆け寄り、扉の外にいるであろう近衛兵に呼びかける
賢者「おーい!近衛兵さーん!ちょっと外に出たいんですけど!」
返事はない
しかし、賢者は扉の後ろに人の気配があることを感じ取っていた
賢者は、扉の前であらゆる悪態を吐き出す商人を押しどけ、二度ほど扉を押してみる
そしてふと思いついたかのように、扉の隙間から外の様子をうかがった
賢者「いや・・・これ、外から閂がされてますよ・・・開かないわけだ」
商人「なんだと?おい!こら近衛兵っ!いい大人がイタズラか!?」
商人の悪態に根負けしたかのように、扉の外から声が届いた
31 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:59:41.13 ID:1/6b/enLo
近衛兵「・・・皆さんを、外に出すわけには参りません」
商人「はいー???」
近衛兵「陛下からの勅令です。宝物庫より何物も持ち出すことなかれ、と」
商人「馬鹿言ってんじゃねえぞ!俺たちは何も、くすねちゃいねえよ!」
宝物庫から何物も持ち出すことなかれ
賢者は、一瞬でその答えを導き出す
賢者「いや、そうではないです」
賢者「宝物庫から何物も、ということは宝物庫に入った私たちも・・・出すわけにはいかない、と」
商人「な?そんな理屈が通るか!」
騎士「近衛兵さん!冗談はよしてくれ!このままじゃ、仕事が進まないじゃないか!」
苛立ちからか、騎士の言葉も荒くなる
しかし、近衛兵からの返答は無かった
賢者「対話する気は無いようですね・・・」
商人「まじかよ」
騎士「・・・どうも、我々のあずかり知らぬ所で何か大きな事が起こっているようだね」
商人「くそっ・・・厄介なことになってきやがった」
商人は、まるで己が子をなでるがごとく、少し張ったお腹を優しくさする
そして、僅かではあるものの、しかし確かにそこにある便意を感じながら
自らに訪れるであろう少し先の不幸を慮ることしかできなかった
32 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 19:33:51.32 ID:1/6b/enLo
――――――
一方、大臣と盗賊の二人は長い長い廊下をゆっくりと歩いていた
盗賊「大臣、どちらに向かっているんですか?執務室とは逆方向ですが」
大臣「うむ、盗賊よ。貴様、隠していることがあるな?」
盗賊「・・・」
思い当たることはあった、勇者の裏切りの件である
先ほどは、大臣にまっさきに報告すべきと思ったものの
いざ大臣と二人きりになってしまうと、まるで告げ口をするような罪悪感に苛まれてしまっていた
大臣「答えぬか」
大臣は大仰にため息をついたものの、そこに怒りは感じられない
盗賊は察する。この人は全てを知ったうえで問いかけているのだ
自らが試されているということを
盗賊「・・・勇者が魔王軍に寝返りました」
大臣の頬がゆるむ
大臣「であるか。ふむ、盗賊よ貴様の忠誠心は未だ残っているようだな」
大臣「てっきり、自らの実父が囚われていることを忘れたのかと思うたぞ」
33 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 19:34:17.09 ID:1/6b/enLo
盗賊の父は、長きにわたって、その名に恥じぬ働きをしてきた
すなわち、盗人稼業に精を出してきたのである
しかし、年のためか遂には官憲によって捕まり王城地下牢獄に囚われるに至った
盗賊が、大臣のもとで粉骨砕身職務に励むのも、その父への恩赦を願っての事だった
盗賊「ご存知とは思いませなんだ」
大臣「勇者の監視役は、貴様だけではないということだ盗賊」
大臣「なに、隠す必要は無いのだ」
盗賊「・・・?」
大臣「今より、陛下に謁見し、貴様が見た勇者の顛末を語ってもらう」
盗賊「勇者の裏切りを・・・?陛下に直接ですか」
大臣「ああ、その通りだ。ただ一つ、注意してもらいたいことがあってな」
大臣「そこで、貴様の忠誠心をはからせてもらった」
盗賊「・・・何を隠して、何を伝えればよろしいですか」
大臣「ほお、察しが良くて助かる。一年間、き奴らに良い指導を受けたと見える」
大臣「よい役人になったではないか、盗賊よ」
盗賊「お褒めいただき光栄です」
大臣「言葉遣いも良い。陛下の前にも十分に出せそうだな」
大臣「話して良いのは、事の顛末だけだ。勇者が裏切った事実のみを伝えろ」
大臣「私ら・・・いや貴様らの仕事ぶりについては黙っていろ」
盗賊「わかりました。」
盗賊「ところで・・・」
一瞬、盗賊の目に殺気がやどる
大臣は、それを察しながらも意にも返さず答える
大臣「案ずるでない。もう少しなのだ、この件が片付けば必ず約束は守る」
34 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 22:50:34.07 ID:1/6b/enLo
――――――
王「そうか勇者が・・・」
王「まあ奴には奴なりの正義があるのだろう、致し方ないことだ」
盗賊の報告に、王は意外なほど冷静であった
大臣「勇者一行は、魔王軍の協力を得、王都に戻ってくるでしょう」
大臣「勇者が戻ってきたら最後、彼はその特権である陛下への奏上を行うことが予想されます」
勇者には、世界を平和へと導く行ううえで様々な特権が与えられている
王への奏上は、その最たるものの一つである
ひとたび、勇者の奏上が始まれば
何人たりとも、それを妨げることができない
この特権は、かつて己が財産を増やすことに邁進し政治を疎かにした王に
時の勇者が、その武力を誇示することなく対話により王を諫め
勇者の言葉に心打たれた王が、改心したことに由来する
大臣「勇者は、魔族の賃金是正を訴えることでしょう」
大臣「もし、奏上の内容が国民にしれれば・・・」
大臣「勇者の名声を鑑みるに、国民が勇者の考えに同調する可能性もございます」
大臣「そうなれば、民によって構成される衆民院の議員共も黙ってはいないでしょう」
王「魔族の賃金是正か・・・そもそもの今回の魔王討伐の発端はこれであったな」
大臣「魔王が悪いのです。もともと、この国の制度に基づいて労働力を提供を申し出たくせに」
大臣「それが、相場より安いと分かった途端。賃金是正の交渉を行うなど、言語道断でございます」
35 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 22:50:59.46 ID:1/6b/enLo
その言葉に、盗賊は耳を疑った
なぜならば、盗賊を含めた多くの国民は魔王を悪の根源と認識し
それを勇者が打倒すことで、平和が訪れると信じていたからである
大臣の言葉は、魔王にも魔族なりの道理があることを示唆していた
つまり、盗賊が信じていた勇者による平和のための戦いは
実のところ国家間の利益の奪い合い、すなわち戦争であったのだ
王「魔族すら救うか、傲慢ではあるが聞こえは良い。さもあらん」
大臣「ですので、陛下に置かれましては勇者を即刻、その任から解いていただきたく」
王「ふむ・・・」
王の歯切れの悪さに、大臣は明らかに苛立ちを見せていた
大臣「何を悩まれるのです!勇者が王国へ戻ってくるまで、半年もかかりますまい!」
大臣「陛下、いまのうちに先手を打ちましょう。勇者から、その奏上の権利を奪うのです!」
近衛兵長「大臣、口がすぎるぞ!いま貴様の目の前に、おわすは王陛下なるぞ!」
王の間の脇に控えていた、近衛兵長が敵意をまるだしに大臣へと歩み寄った
6尺にも及ぶ長身の近衛兵長が詰め寄るも、大臣は物怖じもせず続けた
大臣「なにを逡巡されているのですか、陛下!?」
王「のう、大臣よ」
36 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 22:51:26.53 ID:1/6b/enLo
王「儂は、国民がそう願うのなら身を引く覚悟はできておるのだ」
王「この国は儂がおらずとも回るよう儂自身の手によって作り替えた、そのための行政府や議会なのだ」
王「国民が勇者の志に供にし儂に退陣を求めるならば、それはこの国の国民が真に自立したことを意味する」
王「それは、儂も望むところなのだよ、大臣」
大臣「し、しかし陛下!私や陛下が居なくては国は回りませぬ」
近衛兵長「傲慢であるぞ!控えろ大臣よ!」
大臣「近衛風情が、口をはさむな!」
近衛兵長「ふん、陛下に異議を唱えるならば貴様自身の手で勇者を罷免すればよい!」
大臣「勇者の指名が陛下の専任事項であることは貴様も知っておろう!その解任もまた同様だ!」
近衛兵長「わかっている!だから口を出すなと言っているのだ!」
二人の応酬から、盗賊はそこにある確執を感じ取っていた
王直属である近衛兵団、行政の長である大臣、仕事を行ううえで
これまでも幾度となく両者はぶつかり合ってきたのであろう
しかし、それは両者の間に留まるだけのものであろうかと、盗賊はふと疑問に思った
近衛兵長は、王に最も近しい人物と目されている
その近衛兵長と大臣の対立は、言い換えれば陛下と大臣の対立に置き換えられるのではないだろうか
だとしたら、今の自分はどうなのだ
大臣の部下である、私や勇者補助係の皆は?
身の振り方を考えようにも、父の存在が、盗賊にそれを思いとどまらせるのであった
37 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 22:51:52.38 ID:1/6b/enLo
王「はっはっは、そのへんにしておけ二人とも」
王「勇者の件については、先に述べたとおりだ。これ以上の議論は必要あるまい」
大臣が苦虫を噛み潰したように顔をしかめる
大臣「承知いたしました。陛下・・・」
大臣「しかし、勇者が王都に嵐を巻き起こすことは必至。私は私の権限において、それを防ぐ手立てを講じます」
近衛兵長「何をする気だ?」
大臣「しれたこと。魔王軍に寝返った勇者を、王都にたどり着く前に迎撃する」
王「よいよい、好きにせい。軍の運用は行政府の管轄、儂に物言う権利はないは」
近衛兵団「しかし、勇者の力は人間による軍程度で止められるとは思えんがな」
大臣「ほう。ならば、王国でも勇者に劣らぬとされる貴様の兵を貸してくれても構わんのだぞ近衛兵長」
近衛兵長「ならぬな。我ら近衛兵団は、王の下を離れ職責を果たすことなどできぬ」
大臣「わかっておるさ。だから、口を出すなと言っておる」
先ほどの、近衛兵長の言葉を真似て大臣は逆襲を果たす
今度は、近衛兵長が苦虫を噛み潰す番となったようだ
大臣の顔には、少しの満足感が浮いて出ていた
38 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 22:52:20.79 ID:1/6b/enLo
王「ところで大臣、そこにおる盗賊は勇者課の一員であったな?今は、勇者課を離れ大臣付きの秘書官と聞いたが?」
突然の指名に、盗賊は驚き顔をあげた
大臣「はい、さようでございますが・・・?」
大臣(なんだ?なぜ盗賊に興味を抱く、何の意図をがあるんだ?)
王「ふむ、ということは勇者課に欠員がでたわけであるな?」
大臣(狙いは盗賊ではなく、勇者補助係のほうか・・・!)
大臣「はい、しかしすぐに人員を補充・・・」
大臣の言葉を遮り、王は続けた
王「実はな、かねてより我が友人の娘の就職先を頼まれておってな」
王「勇者課に欠員ができたなら、ぜひ、そこに置いてやってほしいのだ」
大臣「し、しかし、勇者課の仕事には専門的な知識と経験が必要になります!」
王「安心せい。優秀な娘であることは間違いない。儂のお墨付きだ、問題なかろう」
大臣「陛下!なにより勇者課は、行政府でも最たる過酷な仕事量を持っております!とても陛下のご友人のご息女を置くような場所では!」
大臣「別の部署にも空きはございます!是非、そちらに!」
王「いやいや、その娘はな、勇者に憧れと言うか、恋というか、そういった類のものを抱いておってな」
39 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 22:52:48.01 ID:1/6b/enLo
王「書類上だけでも、勇者に触れる機会がある場所に勤めたいと言うのだよ」
大臣「し、しかし!」
大臣の必死の抵抗に、王は業を煮やし、一気にまくし立てた
王「大臣、儂はその権力を行政府や議会に委譲したがな、それでも人事権の一部を行使する程度の力は残っておるのだよ」
王「だが、権力の乱用と言うのはどうも儂は苦手でのう」
王「まあ、大臣が駄目だと言うなら仕方ない。どれ、久方ぶりに権力を押し通してみるのも良いかと思うのだが、どう思う?」
大臣「・・・っ!畏まりました!陛下の仰る通りに・・・」
王「ははは、すまんな」
この日、盗賊は多くの役人がその経験から学ぶ一つの事柄を
僅かな時間から習得するにいたった
盗賊(権力者って恐ろしい・・・)
そう、権力者とは恐ろしいものなのである
40 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 22:53:14.61 ID:1/6b/enLo
――――――
近衛兵「皆さん、お届け物です」
商人「普通にドア開けるやがったな近衛兵・・・あんだけ開けろって言っても無視しやがったのに」
開かれた扉の向こうには、近衛兵が5名
いずれも屈強な肉体であることが、見て取れる
そして彼らは、部屋には一歩も入ろうとしない
近衛兵「出ることは叶わんが、入れる分には問題がない」
賢者「お届け物だと言いましたね?何を持ってきたんですか」
近衛兵「盗賊と言う娘が持ってきた。頼まれていた仕事机と、宝物庫の管理帳簿、それとメモだそうだ」
商人が扉に近寄り
部屋から出ることなく、近衛兵からメモを奪い取った
商人「どれどれ」
みなさんお疲れ様です!
先ほど頼まれた机と、あと必要だと思って宝物庫の管理簿もさらってきました
みなさんの状況は、近衛兵さんに伺いました。大臣にどうにかならないか相談してみます。
商人の横からメモを覗き込んでいた賢者がためいきをついた
賢者「さすが盗賊ちゃんですね、察しもいいし、何より仕事も早い」
商人「まったくの同意見だな」
騎士「ん、商人君。裏にも続いているぞ」
41 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 22:53:40.57 ID:1/6b/enLo
追伸
ひとつ忘れていました!追加の人員もお連れしましたので、仲良くしてあげてください!
騎士「・・・いくらなんでも仕事が早すぎないか」
賢者「大臣の手回しでしょ?さすがに、そこまでは盗賊ちゃんでも無理でしょう」
商人「で、追加の人員はどこに?」
商人の問いかけに、近衛兵の脇から一人の少女が飛び出し答えた
???「ここにいますわ!みなさん、初めまして!遊び人と申しますの!」
遊び人「よろしくお願いしますわ!」
騎士「」
商人「」
賢者「」
遊び人「あ、あれ?皆さん、どうしました?」
42 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 22:54:06.93 ID:1/6b/enLo
――――――
第一章 騎士「縁故採用はほどほどに!」 完
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/10(金) 22:29:52.77 ID:Kn+V4KdA0
バニーかな?
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/12(日) 02:03:37.07 ID:kQ+HlO3DO
乙
45 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 07:51:25.99 ID:A5nbTyvS0
――――――
第二章
賢者「し、死んでる・・・!」
――――――
46 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 07:51:55.91 ID:A5nbTyvS0
大臣「陛下の勅命で、宝物庫を閉鎖だと!?」
大臣の怒りの籠った声が、執務室に響いた
盗賊「はい、中にいる補助係の皆さんとは面会することすらできませんでした」
大臣「近衛兵を締め出し、なんとか直属の補助係で現場を抑えたというのに」
大臣「肝心の、宝物庫内部の情報を持ち出せないとは」
大臣「何が国民が望めば退陣するだ!しっかり隠蔽工作図ってるではないか、あの狸おやじめ!」
盗賊「・・・大臣、よろしければ。現在の状況を教えていただけないでしょうか」
大臣は、盗賊の言葉に一時怒りを忘れ頭を働かせ始める
以前より、大臣は信頼のおける部下というものを持たなかった
それは、彼が非常に優秀であり。そして完璧主義者であったからだ
部下にやらせるぐらいなら、自身でやったほうが質の高い仕事ができる
その自信は彼を周囲から孤立させるものとなったが、彼が意に介すことは無かった
しかし、ここにきて手駒の少なさを大臣は痛感する
信頼のおける仲間、志を同じくする者、情報の漏洩、裏切り
ありとあらゆる可能性を、目まぐるしく計算し
そして大臣は一つの答えを弾き出した
大臣「よかろう。貴様には、しっかり働いてもらわなねば困る。事の次第を知っていた方が、動きやすかろう」
大臣「ただし、貴様の父のこと忘れるでないぞ。これは、貴様のこれまでの仕事ぶりを信頼してのものだと知れ」
大臣の結論は、『脅して使う』
盗賊を信頼してのものでは無いことは、明らかであった
47 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 07:52:23.77 ID:A5nbTyvS0
――――――
〜少し前
「陛下!おられますか!?」
王の書斎に、一人の男が飛び込んできた
ろうそくの明かりに照らされた男の顔には、びっしりと汗が浮かんでいる
その表情が、由々しき事態が起きていることを物語っている
王「そのように声を張らずともよい近衛兵長、儂はここにおる」
王「一体、どうしたというのだ?酷い汗だぞ」
近衛兵長「あの開かずの間の宝物庫が・・・暴かれた」
王は、ゆっくりと目を閉じ
大きく息を吐いた
王「・・・犯人はわかっておるのか?」
近衛兵長「まだだ・・・だが、ひとまず部屋は封鎖しておいた」
近衛兵長「一般兵に中を調べられたらまずい、俺の兵にも俺が行くまで決して部屋に入らぬよう厳命した」
近衛兵は、まるで知己と話すがごとく口ぶりである
しかし、王がそれを咎めることはない
48 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 07:52:50.86 ID:A5nbTyvS0
王「そうか・・・鍵が失われて幾十年。いつかは来るものと覚悟はしていた」
王「王家終焉の時が・・・遂に来たか」
近衛兵長「まだだ!まだ終わりではない!」
王の言葉に、近衛兵長は強く反発した
近衛兵長「この国には、まだアンタが必要だ!終わらすわけにはいかない!」
近衛兵長「捜査は、俺が直々に行う!必ず、犯人を捕らえてみせる!」
「・・・しばし待て近衛兵長よ」
近衛兵長はギョッとして、声の先を探る
声の主である大臣は、書斎の扉を押して部屋の中に入ってきた
近衛兵長「大臣!?貴様いつからそこに!?」
王「・・・聞いておったのか」
大臣「申し訳ありません陛下!」
大臣「血相を変えた近衛兵長の姿を見たものですから。何事かと、馳せ参じた次第」
49 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 07:53:23.04 ID:A5nbTyvS0
近衛兵長「それで、私たちの話を立ち聞きしていたと申すか!?貴様は礼儀も知らんのか!」
大臣「礼儀ね・・・よくぞそのような言葉が吐けるな」
大臣「近衛兵如きが、陛下に対してあの口の利きよう。如何に信厚き者と言え許されることではないぞ!」
近衛兵長「ぐ・・・」
大臣「ところで、宝物庫が暴かれたそうですな。それは一体、いつのことですかな近衛兵長?」
近衛兵長が視線を王に向ける
王「構わん、申せ」
近衛兵長「・・・まだわかってはおらん」
大臣「なるほど、この王城の警備は貴公ら近衛兵団の仕事であったな」
近衛兵長「あぁ・・・」
大臣「怠慢であるとは思わんか?宝物庫を暴かれただけでなく、その日時もいつかわからんと申すか」
近衛兵長「・・・!だからこそ、汚辱は自らの手で晴らして見せる!」
近衛兵長「必ずや、犯人の首を陛下の御前に!」
50 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 07:53:50.27 ID:A5nbTyvS0
大臣「陛下、捜査は我が部下にお任せください」
近衛兵長「な、なにを申すか大臣!」
大臣「いや、先ほどはああ申したが。私は近衛兵団の精強さを以前から評価していたのだ」
大臣「近衛兵団の一兵卒ですら、かの勇者に届き得る力を持つとすら考えている」
突然の賛辞に、近衛兵長は困惑した
大臣「その近衛兵団を出し抜くほどの賊、そうありましょうか?」
王「まるで、賊に心当たりがあるかの言いようだが・・・?」
大臣「その様なことができる者は、この国にただ一人・・・勇者にございます」
近衛兵長「なっ!?」
王「なるほど・・・」
大臣「勇者のしでかした事件の後始末は、私直属の勇者補助係の主要業務」
大臣「彼らは、この一年勇者を追い続けておりました。現状において、勇者に最も詳しい者どもでございます」
大臣「捜査も迅速に行うことが可能です」
51 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 07:54:18.07 ID:A5nbTyvS0
大臣「それに加えて、私直属であるがゆえに情報の機密性は非常に高い」
王「わが懐を探るつもりか・・・」
大臣「そのような気は毛頭ございません!」
大臣「陛下には、いえ王家には何やら重大な秘密がある様子」
大臣「しかし、私もまた国を守る者。どのような事実があれど、口外するようなことは誓ってありませぬ」
近衛兵長「王っ!捜査は我々にお任せください!」
近衛兵長が、大臣を押しやり王に縋りつき声を荒げた
もはや論理の欠片もない、それは懇願としか言いようのない叫びであった
大臣「なりませぬ!近衛兵団は一度とはいえ失態を犯しました!故に、この捜査に近衛兵が関わるようなことがあってはなりません」
王「・・・なるほどな。一理ある」
近衛兵長「陛下っ!」
王「よい、まずは犯人を特定する。それが先決だ」
王「大臣、お主に任せることとしよう」
52 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 07:54:45.52 ID:A5nbTyvS0
――――――
ギィ、、、バタンと扉が大きな音を立てて閉まる
騎士と賢者の2人は、その音に正気を取り戻した
騎士「はっ!・・・いやあ、すまなかったね。まさか新人が、君のように可愛い女の子だとは思っていなかったものだからさ」
賢者「つ、ついつい驚いちゃいましたよ。いやあ、まいったなあ」
商人「」
遊び人「あらあら、見かけほどは若くはありませんわよ?」
ウフフと笑いかけながら、少女は商人へと近づき
大きく振りかぶって、商人の背中を平手で叩いた
遊び人「先輩!起きてくださいまし!今は、業務時間内ですよ!」
商人「はっ!・・・おっと、これは新人の前でダラシナイところを見せちゃったなあ、はっはっは」
正気を取り戻したものの、商人の目に生気は宿っていない
期待した新人が遊び人と知れた今、それも致し方のないことであった
騎士「じ、じゃあ、新人教育は賢者くんに任せようかな」
賢者「よおし!お兄ちゃんがビシビシ鍛えるからね!」
取り繕った二人の言葉に、遊び人は大きな大きなため息をついた
53 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 07:55:12.92 ID:A5nbTyvS0
遊び人「・・・まあいいでしょう、お手柔らかにお願いいたします」
商人は、その様子を見て新人の太々しさに不安を募らせる
賢者「で・・・とりあえず、どうします?」
遊び人「はい?早速、業務に取り掛からないのですか?」
騎士「そうだった!」
騎士「遊び人さん、この部屋は近衛兵によって完全に封鎖されているんだ!」
騎士「うかつだった!遊び人さんが部屋に入るのは、なんとしても阻止しなくちゃならなかったのに・・・私としたことが」
遊び人の表情には、まだ少女特有のあどけなさが見て取れる
幼い子をもつ騎士であるが故の、遊び人への気遣いであった
遊び人「あらあら、私も侮られたものですね」
商人「おいおい、遊び人ちゃん。ちょっと上司への口の利き方がおかしかないか?」
騎士の好意を、まるで気にも留めない遊び人の答えに
商人が、苛立ちを抑えることなど出来るはずも無かった
いつになく険しい、その表情に遊び人はたじろいだ
遊び人「あっ!これは、失礼しました。なにぶん、まだ慣れていないものでして・・・」
遊び人「失礼いたしましたわ。騎士様」
先ほどの佇まいとは打って変わって、その姿に見合った裏表のない返しに
遊び人の正直さがにじみ出ていた
54 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 07:55:40.16 ID:A5nbTyvS0
騎士「・・・構わないよ。それより『侮られた』と言ったね?」
遊び人「はい騎士様。新人として、皆様の置かれている状況は事前に勉強してきましたのよ」
遊び人は自慢げに答える
賢者「部屋に入ったら、出られないということは知っていたと?」
遊び人「その通りですわ、先輩」
商人「おいおい、本当に状況を分かっているのか?」
遊び人「社会には往々にして、こういったことがあると聞いております」
商人(・・・そ、そうなのか?)
賢者(少なくとも、私は初めてですけど)
遊び人「仕事が終わるまで帰れない。つまりこれは!一般社会で言うところの『缶詰』というものですわ!」
商人「遊び人ちゃんは、一体どこで社会について勉強してきたんだ・・・?」
賢者「さて・・話が一巡したようですね。で、どうしましょうか」
騎士「・・・仕事しようか」
55 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 07:56:06.09 ID:A5nbTyvS0
商人「えー、まじすか」
騎士「外からの情報も得られない、こちらの情報も持ち出せない」
騎士「つまり、私たちに現状を打開する手段はないということだ」
騎士「ならば、やることは一つ『仕事』だ」
遊び人「業務時間内ですしね!社会人は仕事してナンボです!」
商人「遊び人が社会人を語るのか・・・」
賢者「騎士さんの仰る通りですね」
賢者「では、さっそく盗賊ちゃんが持ってきてくれた資料と部屋の状況を照らし合わせてみましょうか」
遊び人「応っ!」
騎士「・・・賢者くん」
賢者「・・・言葉使いは、仕事しながら覚えてもらうこととしましょう」
遊び人「あら・・・///私、また言葉遣いを間違いました?」
56 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 07:56:33.31 ID:A5nbTyvS0
――――――
知性。勇者に求められるものは、それに尽きますね
そう、現勇者が持ち得ていないものです
だからと言って彼が勇者の資質を持ち得ていないとは思えません
足りない部分は、パーティーメンバーで補えばいい
しかし残念ながら、現勇者パーティーには武闘派しかいない
会ったことはありませんが、この一年間彼らの行動を追ってそう感じました
言ってしまえば、脳筋パーティーですね
とある砂漠の国で、勇者が王家の墓地から勝手に聖剣を持ち出してしまったことがありました
あの時、私たちが事後処理を怠っていたらどうなったでしょうか
旧砂の王家である侯爵家と、中央政府の対立軸が生まれていた可能性すらあります
偏った力の使い方をすると、どうしても世界に歪みが生まれます
そして、その歪みはは正さねばならない
つまるところ私たちのような別パーティーで、バランスをとる必要があるということです
勇者が勇者足り得ているのは、私たちのおかげと言っても過言ではない
私たちのサポートなしでは、勇者は各所で軋轢を生む害悪となっていたでしょうから
もし勇者パーティーに、勇者の暴走を抑えるブレーキ役が一人でもいれば
私たちは必要なかったことでしょう
まあ武力が必要と言うのもわかります。魔族と戦うのに口ばかりでは、どうにもなりませんからね
しかし、現勇者には是非とも知性を身に着けていただきたい
もしそれが無理なのであれば、次代の勇者に期待することとしましょう
57 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 07:57:00.50 ID:A5nbTyvS0
――――――
騎士「それじゃあ、管理簿を読み上げるから。保管庫の現状と照らし合わせてね」
騎士「えーまずは・・・何だこれ?」
賢者「ちょっと見せてもらえますか?」
騎士から管理簿を受け取り、目を落とす
「ん?」声にもならない、音が喉から漏れる
終いには首を傾げ、ため息まで漏れた
賢者「これは、旧字で書かれていますね・・・」
騎士「旧字かあ・・・この管理簿も、相当古いものだし当然か」
騎士「じゃあ、悪いけど賢者くんに読み上げてもらおうかな」
賢者「えっと、期待してもらって申し訳ありませんが・・・旧字はちょっと」
騎士「ええっ!?賢者くん旧字読めないのかい!」
賢者「すみません・・・読めないことは無いんですが、ちょっと時間がかかりそうです」
騎士「いや、謝る必要は無いよ。読めないのは私も同じだ」
騎士がチラリと商人に目をやった
それに気づき、商人が胸を張って答えた
商人「ふふん、当然私も読めません」
騎士「だろうね・・・」
58 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 07:57:36.67 ID:A5nbTyvS0
遊び人「では、僭越ながら私が読み上げましょう」
商人「ん、よろしく!」
商人「ってなるかボケ!」
賢者「遊び人ちゃん・・・旧字を読めるんですか?」
遊び人「ええ、わたくし詩歌も嗜むものですから。旧字も扱えますのよ」
商人「あ、遊び人のくせに?」
賢者「ちょっと気になっていたのですが、遊び人さん言葉遣いがちょっとアレですよね」
遊び人「あら、ごめんあそばし」
賢者「もしかして、どこかの貴族の御子弟なのでは?」
遊び人「・・・まあ、そうです」
遊び人の表情が陰る。探られたくない腹であることは明らかであった
騎士は、その表情を見逃さない
急な人員の削減、にもかかわらず同日中に補充される人員
幼い容姿に、その仰々しい言葉遣い、そして役人にあるまじき遊び人の採用
全てが、遊び人の採用が縁故によるものだと物語っていた
なれば、世渡りに長けた騎士のとる手段は一つであった
それは、『藪はつつかない』ことである
59 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 07:58:04.03 ID:A5nbTyvS0
騎士「け、賢者くん親族に関する詮索は失礼だよ」
騎士の思惑を察知し、賢者も同調する
賢者「これは、私としたことが。失礼しました」
商人「しかし貴族の娘が、遊び人とはなあ。厳格な教育に反発して、グレちゃった感じか?」
空気を読まない商人に、賢者は顔をしかめた
しかし、遊び人の表情から陰はとれていた
「バレたら、もうしかたない」の心境なのだろう
遊び人「定職に就かず、遊び惚けている者は世間一般に遊び人でしょう?」
遊び人「私は詩歌を詠んだり、あとは花を生けたり、茶を嗜んだりして日々を過ごしてきました」
遊び人「まさに遊び人ではございませんか!」
騎士&賢者&商人(み、雅な遊び人だーっ!)
60 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 07:58:30.40 ID:A5nbTyvS0
――――――
大臣「遊び人か・・・どう思う、盗賊よ」
盗賊「申し訳ありません。探ってみましたが、彼女に関する情報は一切出てきませんでした」
盗賊「少なくとも、ここ10年は王都付近に住んでいたとは思えません」
大臣「そうであるか、だが・・・私は彼女に会ったことがあるような気がするのだ」
大臣は、記憶を探るように頭を掻いた
会ったことがあるなら思い出せ。盗賊は強く念じるが
その思いは届かなかった
大臣「いや、忘れてくれ」
大臣「王の友人の娘とは言っていたが、王の間者と見るのが筋であろうな」
盗賊「ではどうして、彼女が勇者補助係に加わることをお許しになったのですか?」
大臣「断っても、王が捻じ込んだであろうよ」
大臣「なれば、無理をする必要はない。いまはまだ、陛下との対立が表面化するのは避けたいのだ」
盗賊「大臣は・・・陛下をどうされるおつもりなのですか?」
大臣の鋭い眼差しが、盗賊に突き刺さる
61 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 07:58:56.63 ID:A5nbTyvS0
盗賊(あまり調子にのるなよ・・・ってとこかな)
盗賊の沈黙に気をよくしたのか、大臣は雄弁に語り出した
大臣「陛下は、衆民議会の設置による権力の分散や、行政府を設け官僚制を導入する等、国の政治構造の改革に力を注いできた」
大臣「確かに、権力の分散は一人の愚かな権力者を抑制し、官僚制の導入は合理的な行政を我々にもたらした」
大臣「しかし、弊害もある」
大臣「議会では日々終わらぬ権力闘争が行われ、官僚共は規則に縛られることに快感を覚えたのか、その志を失った」
大臣「いまや国政の滞りは著しいものなのだ」
大臣「国政の滞り、それはすなわち国にとっての大きな損失だ。損失は常に回避すべきであると、私は考える」
大臣「あの宝物庫にはな、この国の政治体制を変える大きな大きな火種が眠っているのだよ」
盗賊「つまり、陛下の弱みを握って傀儡と・・・?」
大臣「私を、侮るなよ盗賊」
大臣「権力が、行政府や議会に分散している昨今。陛下を傀儡と化したところで何になる」
大臣「仮に意のままに陛下を操る術を手に入れたとしても、何のメリットもない」
62 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 07:59:30.37 ID:A5nbTyvS0
盗賊「しかし、陛下の発言は議会にも強い影響を持つと聞いております」
大臣「まあ、半分正解だ。陛下がその影響力を発揮できるのは、議会の内の衆民院においてのみだ」
大臣「陛下がこれまで行ってきた改革は、臣民の意見をより多く取り入れるもの。当然、衆民院からの支持を得られるのも当然だ」
大臣「だが一方で、権力構造の変革を望まない貴族たちにとっては陛下は疎ましい存在なのだよ」
盗賊「つまるところ、大臣は何を為すおつもりなのですか?」
大臣「私は、ただな。ただ、この国をより良くしたいだけなのだ。」
大臣「私自身の手によってな」
はぐらかされたか、滑らかになった舌から何か真意が出てこないものか
盗賊の淡い期待は、あっさりと裏切られた
実のところ、自身の父親のことは気にもかけていない
盗賊(父さんなら、そのうち飽きたら牢を破って逃げ出すだろう)
彼女に盗賊のスキルを授けた、張本人である父を信頼してのことである
では、彼女は何故大臣の手駒に甘んじているのか
それは、宝物庫に閉じ込められた勇者補助係の仲間を思っての事であった
盗賊「宝物庫には、一体何が隠されているのですか・・・?」
大臣「それはまだわからん。だが、王家が終焉を迎えるほどの何かがあったことは確かなのだ」
大臣「そして、その手掛かりは今、我が配下である勇者補助係によって押さえられている!」
大臣は再び、盗賊へと眼差しを向ける
その目には、炎のように熱く強い意志がメラメラと宿っていた
大臣「盗賊よ!何としても、中と連絡をとる手段を考えるのだ!」
63 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 08:00:03.09 ID:A5nbTyvS0
――――――
遊び人「次はA−301棚ですね。宝箱が三つあると思いますが」
賢者「ああ、これですね。全部開けられています」
遊び人「そこには、王国金貨300枚と魔力回復剤、あと王者の剣があったようです」
賢者「あちゃー根こそぎですね」
遊び人「次は、書架に行きましょうか」
商人「そちらは調べておいたぜ。どの本も、埃を被ったままだ」
商人「勇者が手を付けた様子はない」
遊び人「あら、それを確認するための読み合わせでは?先輩」
騎士「もっともだな、面倒だが商人君。書架も照らし合わせてくれ」
商人「えーまじすか」
遊び人「ほら先輩、子供みたいに駄々をこねない!いい男が台無しですよ!」
商人「へえーい・・・」
64 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 08:00:30.48 ID:A5nbTyvS0
賢者「・・・いいですね彼女」
騎士「まったくだ。どうやら我々は、二年連続で当たり新人を引いたらしいな」
賢者「商人君の扱いにも手馴れてます、とても少女とは思えませんよ」
騎士「お母さん気質なのかもなあ。どことなく盗賊ちゃんを彷彿させるよ」
賢者「ところで、騎士さん。宝箱を調べてわかったことですが・・・」
騎士「ほとんどの箱が荒らされている中で、手が付けられていない物がいくつかあったようだね」
賢者「黄金のツメ、聖者の短剣、黒檀のブーメラン・・・」
騎士「勇者パーティーは、勇者、戦士、魔法使い、僧侶の4人だったね」
賢者「いずれも、彼らには装備できない物ばかりです」
賢者「対して、剣や錫杖、大杖、その他消耗品は一切合切持っていかれています」
騎士「まあ、断定はできないけど、人の者を黙って勝手に持っていく感じは勇者そのものだね」
遊び人「はい、次の棚です『サルでもわかる 女の堕とし方講座 上中下巻』」
商人「あっ!遊び人ちゃん!下巻だけ無くなってる!」
65 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 08:01:00.07 ID:A5nbTyvS0
遊び人「あらあら、犯人は助平に違いありませんわ」
遊び人「次は、『名画 裸婦画集 上下巻』」
商人「ぐへへ・・・って!函だけ残して上下巻ともに中身が抜かれてる!!」
賢者「・・・」
騎士「・・・まあ、勇者も年頃だし」
賢者「盗賊ちゃんには黙っておきましょう」
騎士「そうしよう・・・」
遊び人「黙っておくも何も、連絡手段がないですけど」
商人「あ、腹案ありまーす」
66 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 08:01:26.60 ID:A5nbTyvS0
――――――
『うわああああああ!もう駄目だ!もう駄目だああああああ!』
宝物庫を中心に、王城全てに響き渡らんほどの叫び声が広がった
長時間の番を強いられ、意識がとびかけていた近衛兵は一瞬で臨戦態勢へと切り替わった
『お、落ち着いてください!商人くん!』
『何かちょうど良いものは無いのか!あ!これなんてどうだ!空の宝箱!』
『商人先輩!これです!これに出してください!』
『い、いやだあああああ!みんなの前で、うんこ垂れるなんてプライドが許さねええええ!』
『ほら!尻に魔法かけますから!沈黙魔法サイレント!はい!これで、音は漏れません!!』
『そういう問題じゃねえええええ!!!・・・・あっ』
『商人くん!?どうした!返事をしろ!』
一転して、沈黙が降りる
『し、死んでる・・・』
67 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 08:02:01.40 ID:A5nbTyvS0
近衛兵「」
ほぼ丸一日閉ざされていた、宝物庫の大きな扉が
近衛兵の手によって開かれた
近衛兵「お、おい!一体何をしてるんだ!」
遊び人「あ!近衛兵さん!助けてください!商人さんが商人さんが!!」
商人「も、もう駄目だあ・・・近衛兵が勅命を守らねえわけがねえ・・・」
商人「おれたちは・・・一生この中で暮らすんだ、おれのうんことともに・・・」
遊び人「いやああああああああ!」
商人「いっそ、殺してくれえ・・・」
近衛兵「わ、わかった!しばし待て!近衛兵長に相談してくる!」
開かれた扉を、力強く締め
念入りに閂を差し込み
近衛兵は、自身の上司への相談へと走り出した
商人「・・・行ったか?」
賢者「そのようですね」
68 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 08:02:28.30 ID:A5nbTyvS0
商人「おい!盗賊ちゃん居るんだろ!?」
商人「まどろっこしいのは抜きだ!機会は今しかない!」
商人は扉の向こうに、わずかながら気配を感じ取った
盗賊「・・・まだ漏らしてませんよね?」
商人「演技だよ!いや!このままが続けば演技じゃなくなるが!」
盗賊の登場に、一堂に安堵の息が漏れた
しかし、職長としての責任感故か騎士には焦りが見えた
騎士「盗賊さん!情報をくれ!一体、外はどうなってるんだ!?」
盗賊「ちょっと手短には話せそうにないです。こちらの状況は、なんとかお知らせする方法を考えます」
盗賊「先に中の情報をもらえますか?」
賢者「・・・帳簿と照らし合わせた結果、持ち出された品々から犯人が勇者である可能性は高いです」
盗賊「それだけですか?えっと・・・宝物庫の中に帳簿に載ってない品々なんかは、ありませんでしたか?」
盗賊の物言いに、商人の頭に疑問符が浮かぶ
69 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 08:02:54.68 ID:A5nbTyvS0
騎士「いや、今のところはそれだけだ」
盗賊「わかりました。引き続き、調査をお願いします」
盗賊「ところで、遊び人さんは居ますか?」
遊び人が扉へと一歩近づき答えた
遊び人「お話は伺っております。貴方が盗賊さんですね」
盗賊「・・・貴方がどのような方かは存じ上げませんが、仲間を裏切るような真似だけは為さらないように」
騎士「・・・?」
遊び人「あらあら、見くびられたものですね」
盗賊「それと、商人さんには気を付けてください。何かされたら、すぐに大声を出すんですよ」
商人「どういう意味だ!失礼だぞ!」
遊び人「ふふふ、気を付けるのは商人さんの方かも知れませんわよ」
商人「えっ・・・///」
70 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 08:03:23.06 ID:A5nbTyvS0
賢者「頬を染めないでください。気持ち悪い」
騎士「盗賊さん、私や賢者くんも居るから安心しなさい」
盗賊「ふふっ、そちらは楽しそうでいいですね・・・」
騎士「それはどう言う・・・?」
盗賊「おっと、近衛兵が戻ってきたみたいです」
盗賊「これにて失礼、にんにん!」
扉の向こうから、盗賊の気配が消えた
賢者「どうも様子がおかしいですね・・・」
騎士「無理をしているようだね・・・」
商人「たく、これだから真面目ちゃんは。手の抜き方も教えておくべきだったな・・・」
騎士の眉が、片方だけすこし吊り上がったところで
再び、扉の外に人の気配が現れた
近衛兵長「おい!まだ漏らしてないよな!?」
71 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 08:03:53.82 ID:A5nbTyvS0
賢者「・・・」
商人「・・・」
賢者と商人が、視線をあわせ
そしてうなずいた
商人「あああああああああ!ああああああああ!」
賢者「ああ・・・プライドと便意の狭間で揺れているのですね商人くん・・・っ!」
近衛兵長「すぐに厠に連れて行ってやる!ただし、外部と接触など許さんからな!」
近衛兵長「逃げ出そうともするなよ!近衛兵を甘く見るなよ!」
商人「ああ!ありがとう!ありがとうごじゃいますううううううう!」
72 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 08:04:20.60 ID:A5nbTyvS0
――――――
商人「ふう・・・今回は、まじでやばかったな」
商人「危うく、人としての尊厳を失うところだった」
用を足しながら、商人は頭を回す
外には監視役、さすがに垂れてるところは見られてないが)
ついでに盗賊ちゃんと接触できたら良いと思ったが、そう甘くはないか
いやいやいや、糞垂れてる最中に接触なんてできるか・・・
そう思いなおし、紙に手をのばしたところで商人は気が付いた
紙にはびっしりと小さい文字がしたためられていた
それは盗賊からの手紙であった
そこにはことの経緯と、大臣の不穏な様子
そして遊び人のことが書かれていた
商人「へ、ヘビィな話になってんなあ」
誰にも届かぬほどの小さい子で、商人はつぶやいた
73 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 08:04:47.10 ID:A5nbTyvS0
――――――
商人「たーだーいまーっと」
賢者「・・・」
騎士「・・・」
遊び人「・・・あ、お帰りなさいませ」
明らかに空気が重い
3人は宝物庫に一つ置かれていたキングサイズのベッドを取り囲んでいる
商人「おいおい、みんな辛気臭い顔してどうしたんだ?」
賢者「これを・・・見つけてしまいました」
商人「お、犯人の尻尾でも捕まえたのか?遂に勇者も年貢の納め時だな」
おどけた商人が、賢者の肩越しにベッドを覗き込んだ
商人「って、なんじゃこりゃあああああああ!」
ベッドには、既に事切れた男が一人
紛れもない、国王その人であった
74 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/19(日) 08:05:53.94 ID:A5nbTyvS0
――――――
第二章 賢者「し、死んでる・・・!」 完
75 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/19(日) 13:51:12.83 ID:YsHLIzW20
!?
76 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/19(日) 15:25:08.01 ID:ZBYdMcUA0
そっちかーい!
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/20(月) 12:14:33.07 ID:1TGd1Mf20
宝物庫を開けるのに魔法の鍵が必要で
開いてた宝物庫を近衛が閉めて再度開けれるってことは近衛が鍵もってるの?
それとも封印そのものは一回といてしまうと魔法をかけなおさない限り宝物庫はあきっぱってことなのかしら?
頭が悪くて申し訳ない
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/20(月) 12:51:22.00 ID:G/jqcYpa0
近衛兵は鍵がないので、閂で扉を閉じています
79 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/28(火) 20:26:11.70 ID:hItoX4V0o
地の文が、会話のテンポを邪魔してる気がする
80 :
◆CItYBDS.l2
[sage]:2017/11/29(水) 16:34:09.86 ID:zwiWKevq0
前向きに検討させていただきます
81 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/29(水) 17:11:39.24 ID:yxf4viMDO
地の文は無いほうが私もいいかな?
テンポで言えばだけど
ただ書き手がどっちがいいか変更しようか迷っててアンケとってるわけじゃないし好きなように書けばいいさ
82 :
◆CItYBDS.l2
[sage]:2017/11/29(水) 17:16:53.27 ID:zwiWKevq0
善処します
83 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/29(水) 17:58:51.98 ID:mvNf94BDO
俺は地の文有っても全く気にならないから今まで通りで良いです
84 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/29(水) 18:14:24.09 ID:kTgnaRRuO
今までどおりでよい
85 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/29(水) 22:40:34.11 ID:y+MDKrcA0
気にならないから今まで通りで良い
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