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盗賊「勇者様!もう勘弁なりません!」
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1 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/05(日) 18:29:33.93 ID:G6b6DZ3fo
――――――
何を考えているんだ!どうしてそうなるの!?くたばれ勇者!勘弁してください!
勇者を追う旅を続けて早一年
俺たちは、幾度この言葉を吐き出したことか
俺は、『勇者課勇者補助係』の一員、まあいわゆる公僕ってやつだ
虚飾を一切排した、実にお役所的で素敵な部署名だろ
お役所のネーミングセンスってのは、世間一般とちょいとずれている
一言で言うならば名は体を表すの極致ってやつだ
この部署、名結構気に入っているんだ
何故かって?
そりゃあ、『勇者』って言葉が入ってるからさ
だれだって、幼いころは英雄に憧れたことがあるだろう?
俺だってそうさ、今でこそ木っ端役人だがな
この俺が可愛い幼子だった頃、いや嘘だ、すまない
俺に、そんな時期は無かったな
正しくは「憎たらしい糞ガキだった頃は」だ
鼻水たらしながら、正義の味方になることを目指したもんさ
そんな俺がさ、仮にも勇者の名が入った部署にいるんだ
まるで俺も勇者パーティーの一員みたいじゃないか
ちょっとだけ、誇りを持つぐらい許されて然るべきだろ
まあ、素敵な部署名のことはさて置き、残念なことが一つある
『勇者』という素敵な響きと比べて、実際の業務内容は家畜の糞尿にも劣るってことだ
糞にも劣るもんなんて、俺は知らねえが、つまりは想像を絶するってことだ
お役所的に言えば、俺たちの仕事は『勇者の管理及び指導』
これじゃあ、ちょっとわかりにくいよな
勇者が魔王討伐の旅のさ中に、やらかした、しでかした物事を
適切な行政手続きに則り、解決に導く
要は、勇者の後始末部隊というわけだ
これが、実に憎々しい
この一年、俺たちは勇者にフルスイングで振り回され続けた
奴は手加減と言うものを知らないし、社会常識を知らないし、俺らの苦労も知らねえ
常に全力、常にクリティカルヒット、そして行き着く暇もなく次の問題を巻き起こす
しかも、無意識にだ
おかげで俺たち勇者補助係の目は、ぐるんぐるんに回っており
酔い覚ましに熱い蒸留酒をかっ込み、ゲロと勇者の悪態を吐き出す装置と化してしまった
ただ一人、最初からに勇者に心酔しきっている盗賊ちゃんを除いては
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1509874173
2 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/05(日) 18:30:19.51 ID:G6b6DZ3fo
――――――
プロローグ
商人「勇者が、魔王に寝返りやがった!」
――――――
3 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/05(日) 18:30:47.81 ID:G6b6DZ3fo
商人「おいおいおい!勇者は、魔王と和睦したって話だったじゃねえか!」
商人の怒気を含んだ声が辺りに響き渡る
魔王城を臨む小高い丘、索敵は既に済ましてあり
更に賢者によって張られた結界により、その声が魔物に届く心配はない
それを知ってか知らずか、商人は自身の感情をストレートに声にのせる
商人「勇者が魔王に寝返った!?俺たちを裏切ったってことか!?一体、どうなってるんだよ!」
商人「勇者め!世界を救うって約束したじゃないか!俺たちを要職に押し上げてくれるって約束したじゃないか!」
騎士「落ち着きなさい、商人くん。私たちは、そんな約束を勇者とした覚えは一切ないし」
騎士「なにより出世は、自力で頑張るものだよ?」
ひときわ大人びた声で、まるで子供を諭すかのように商人を諫めるのは騎士
頑強な肉体と、ガラスの心を一つの器に宿す最年長者にして勇者補助係の係長、言い換えれば現場責任者だ
その内ポケットには、彼のストレスとの戦う術
彼の精神を体現したかのような、繊細な胃を癒す薬が無数に蓄えられている
騎士「とりあえず詳細を聞こう、盗賊さん頼むよ」
盗賊「はい。魔王城は警備も固く、盗み聞きできたのはホンの一部ですけど」
盗賊の仕事は、情報収集だ
彼女は、義賊であった父親から数多の盗賊スキルを伝授されるものの
盗みを働いたことは無く、彼女の持つ盗みや殺しの技術は日々の生活に全くの不要で
あまつさえ、持て余していたほどだ
その宝の持ち腐れという盗賊にとっては何とも皮肉めいた状況を、ひっくり返したのが大臣である
彼女のスキルを見出した大臣は、あろうことか囚われた彼女の父親、義賊の開放を条件に
その忠誠を得、果たして盗賊は穏やかな生活を飛び出し勇者補助係の一員となった
4 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/05(日) 18:31:15.27 ID:G6b6DZ3fo
盗賊「はい。魔王城は警備も固く、盗み聞きできたのはホンの一部ですけど」
商人「魔王城に忍び込むだけでも、相当なものだよ」
盗賊「鍛えてますから」
盗賊「―――勇者様ですが、どうも王国への不信感を魔王にケシカケられちゃったみたいです」
盗賊「結論を言うと、魔王軍に勇者一行全員が参入する形になっちゃいました」
騎士「王国への不信感か・・・あちゃー、心当たりが多すぎて何の反論もできないなあ」
商人「は?心当たりなんて何もないんですけど。王国への不信感ですって?あのバカ勇者が、そんな人並みな考え持てるわけないでしょう」
商人「魔王が、実は可愛い幼女で、幼女趣味の変態勇者が一目惚れちまったってのほうが、まだ納得できるぜ」
盗賊「かぁ!!!!!」キッ
威嚇の声と同時に盗賊の目がカッと見開かれ、瞳孔が大きく広がる
手はカタカタと小刻みに震えながら、少しずつ腰の小刀へと伸びていく
勇者を冒涜した商人への殺意と同時に、一年を共にした商人への仲間意識、その二つのせめぎ合い
盗賊の葛藤が、その震える手からうかがえる
幸いにもその異常な姿は、商人に勇者への暴言を思いとどませるに至った
商人「ひぃ!すみません!言いすぎました!」
盗賊の勇者への心酔
彼女のそれは、既に信仰の域に達していた
5 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/05(日) 18:31:45.10 ID:G6b6DZ3fo
賢者「―――商人君、心当たりが無いって言いました?貴方も一枚どころか二枚も三枚も噛んでるんですよ?」
商人「・・・?はっきり言ってくれ、どういうことだ?」
この旅の中、勇者の行動が要因となって起こった事件や、問題は
商人の悪知恵、突飛なアイディアによって打開されてきた
では、勇者補助係のエースは商人であるか?そう問われると、疑問である
なぜならば、商人ひねり出すアイディアは手続きの隙間、法の穴に針を通すものであり
これらを実現できたのは、あらゆる行政手続きを修め、その偉業をもって称される
勇者補助係の頭脳、賢者の力が大きかったからである
賢者「では、はっきり申し上げましょう」
賢者「平和のために邁進する勇者に、奴隷承認の肩書を押し付けたり」
騎士「あ・・・」
賢者「妙齢?の侯爵家の娘さんと、勇者を本人の同意なく結婚させちゃったり」
商人「う・・・」
賢者「挙句の果てには、本来ならば勇者に追いつき共に魔王に立ち向かうべき立場にありながら
賢者「職務放棄して合流を拒否しちゃったり」
盗賊「んむぅ・・・」
賢者の言葉が、皆に旅の思い出を想起させた
勇者に起因したとは言え、勇者を貶めかねない解決方法をとってしまったことへの罪悪感が
彼らから、反論の言葉を奪っていた
6 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/05(日) 18:32:40.53 ID:G6b6DZ3fo
賢者「私たちの数々の悪行が、勇者に不信感を与えた。そんなところじゃないですかね?」
商人「さ、最後のはスピーディーに世界の平和を実現するために必要だったんだから不可抗力だ!」
賢者「不可抗力の意味はきちがえてますけど、まあ勇者からしたらそういうことでしょう?」
騎士「ぐうの音も出ないねえ」
盗賊「ぐぅ」
騎士「しかし―――まずいことになってしまったな」
騎士が空を仰ぐ、手にはロケットが握られている
その中には王国に残してきた、妻と娘の肖像画が入っていることを皆は知っていた
賢者「そうですね。非常にまずい」
盗賊「ああ・・・人類の救世主である勇者様が魔王に寝返ったなんて国に知れたら」
盗賊「多くの人々が希望を失ってしまうことは明らかですもんね・・・」
商人「いや、そうじゃあねえな盗賊ちゃん、ちょいとズレてるぜ」
商人の言葉に、盗賊が首をかしげる
7 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/05(日) 18:33:06.75 ID:G6b6DZ3fo
盗賊「どういうことですか?」
騎士「私たちの仕事の結果が、勇者離反を招いたと大臣に知れたら・・・」
賢者「私たちは希望どころか、職を失いかねませんね」
商人「ああ、なんてことだ・・・。この仕事が終わったら、それなりの褒賞がもらえると思ってたのに・・・」
盗賊「み、皆さんはこの期に及んで、まだそんな保身のこと考えているんですか!」
盗賊「もっとほら、こう!あるでしょ!いろいろと考えることがっ!」
商人「大事な話だぞ、俺たちの生活が懸かってるんだ」
賢者「私たち独り身は、まだマシですよ。子持ち妻持ちの騎士さんを見てごらんなさい」
騎士「アワアアアアア」
盗賊「・・・むぅ」
騎士の狼狽ぶりに、盗賊が口を噤んだとき
その声は、4人に等しく届いた
8 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/05(日) 18:33:33.05 ID:G6b6DZ3fo
『 政令207号に基づき 』
賢者「ん?商人くん何か言いました?」
商人「いや、俺は何も・・・」
騎士「こ、ここここれは・・・・」
盗賊「この声・・・」
抑揚が抑えられ、録音された機械音声のような無感情なそれは
対照的に、騎士と盗賊に多大な緊張感を与えた
二人は、声の主に心当たりがあった
かつて、職場でよく聞いた声
『 勇者課勇者補助係4名に速やかな出頭を要請する 』
商人「なんだ!今の声!頭の中に直接っ・・・!」
盗賊「あれ!?なんか光が!体中から光の粒が出てきてます!」
賢者「これは、召喚魔法!?」
騎士の顔から、赤みが消える
あらゆるところから、汗が吹き出し、涙がこぼれ、目は泳ぎ、足は震え、口は開き
遂には、職長足らんとするプライドまで放棄され、心の底から張り裂けんばかりの叫びが飛び出た
騎士「うわああぁぁああああ査問だ!ばれたんだ!勇者の件が、ばれてたんだあああああ!」
『 召喚魔法 サモン !! 』
瞬間、溢れた光の粒が最高潮に達し
魔王城を臨む小高い丘から、騎士の叫びと共に、4人の姿は忽然と消えた
9 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/05(日) 18:36:09.47 ID:G6b6DZ3fo
盗賊♀「ゆ、勇者様!もう勘弁してくださいっ///」
魔王「もし儂の味方になれば、有給をやろう」 勇者「ゆうきゅう」
上記SSの続きです。ゆっくり頑張ります。
今日はこれにて、失礼します。
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/11/05(日) 20:01:20.47 ID:HAenH3rN0
乙
勇者一行より補助係一行のほうが勇者してるように見える不思議
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/05(日) 20:12:27.68 ID:XPrcaNN90
ぶっちゃけ、勇者に最初から特権とか与えとけば補助係は要らなかったというね。
勇者絡みの予算の大半は大臣が着服してるし。
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/05(日) 23:12:59.70 ID:TL58rE9NO
一番の問題は国家そのものだったと彼らが気付く日は来るのか、期待
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/11/06(月) 01:17:27.48 ID:fsPfWJWf0
>>11
特権なんぞ与えたら、それを行使した勇者一行に批判が集中する。それを回避して押し付けるためのクッション課がこいつらなんだよ。
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/06(月) 08:11:47.20 ID:fhVrAcSp0
査問と、サモンが架かってんのかw
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/06(月) 17:08:55.37 ID:n+OEwMurO
>>13
民衆とか勇者とかに特権の存在を隠しときゃ良くね?
伝説の剣なんて王命使ってでも勇者に渡さないといけない代物だし。
結局は上の杜撰さが原因というね。
16 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:52:41.91 ID:1/6b/enLo
――――――
第一章
騎士「縁故採用はほどほどに!」
――――――
17 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:53:08.14 ID:1/6b/enLo
光が収まり、4人に視界が戻る
大臣「よくぞ、戻った諸君」
高く、筋の通った鼻、あご一杯に蓄えられた白いひげ
齢60を超えてなお、年齢を感じさせられない力強い声
行政府の長にして、4人の直属の上司である大臣そのひとである
騎士「ひぃっ!だだだだ大臣!ご機嫌麗しゅうごごごご」
盗賊「え?ここは、王城・・・?どういうことですか?何が起こったんですか?」
賢者「召喚魔法ですよ盗賊ちゃん」
商人「召喚魔法?なんじゃそりゃ」
賢者「貴方も知らないんですか。まあ、召喚魔法が行使される機会なんて滅多にないですし、知らなくて当然か」
賢者「召喚魔法は、その名の通り支配下にあるものを強制的に召喚する魔法です」
騎士「し、召喚魔法は王国議会か行政の長である大臣の承認がないと使えない・・・つまり」
商人「俺たちは大臣に呼び戻されたってわけか」
大臣は4人のやり取りを、黙ってみていた
もともと厳格な人間ではあるが、そこには普段以上の剣呑な雰囲気を漂わせている
大臣「お勉強は、それぐらいでよろしいかな君たち」
18 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:53:34.48 ID:1/6b/enLo
騎士「はっ!し、失礼しました」
大臣「さて、早速だが要件を伝えよう」
商人(勇者の離反の件だよな・・・ばれるの早すぎじゃないか?)
賢者(そうとは限りません・・・ま、まずは、話を聞いてみましょう)
大臣「実はな、昨晩、城内にある宝物庫が荒らされているのが見つかった」
大臣は続ける
大臣「昨晩と言ったが・・・実のところ賊が、いつ城内に侵入したのか不明なのだ」
賢者「つまり、発覚したのは昨晩ですが、犯行は更に以前に行われていたと・・・」
騎士は、大臣の様子から、勇者離反の件の叱責を受けることを予想していた
結果、思い過ごしであったことから、少し余裕を取り戻していた
騎士「それは城内を警備している近衛兵団も面目丸つぶれですね」
大臣「ふん、近衛兵団の無能共め。王の直属だからと言って調子に乗っていたんだろう」
盗賊(うわあ、辛辣・・・)
大臣「まあ、多少は考慮すべき事情もあるがな」
19 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:54:00.91 ID:1/6b/enLo
騎士「それで、その事件と私たちが呼び出されたのは関係があるんですか?」
大臣「うむ、それなのだ」
大臣「とにかく時間との勝負でな、詳細については省かせてもらうが、どうもこの事件」
大臣「勇者の関与が疑われる」
商人「ははあ、どおりで勇者の後始末部隊の俺たちが呼び出されるわけだ」
大臣「事態は急を要する。諸君らには、早速だが現場を抑えてもらう」
盗賊「そ、その前に大臣!ご報告したいことがあります!」
大臣「ん?」
商人(うわあああああ!こいつ!この良い子ちゃんっ!!!!勇者の件、ちくる気だ!!)
騎士(あ・・・終わった・・・妻よ、娘よすまない・・・お父さん無職になっちゃった・・・)
賢者(させませんっ!沈黙魔法 サイレントっ!)
盗賊「むっ・・・むぐぐ」グギギギギギギ
沈黙魔法、言葉の通り相手に沈黙を強いる魔法である
抵抗もむなしく、一言も声を発することができなくなった盗賊は商人を睨みつけている
保身のために、勇者の裏切りを隠蔽しようとする3人への怒り
その矛先は、ほぼすべて商人に向かったのだ
20 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:54:29.89 ID:1/6b/enLo
商人(うわあ!こっち睨んでる!魔法をかけたの俺じゃねえよ!ちょっと考えればわかるだろ!)
騎士「大臣、私から申し上げましょう!」
何が起こっているのか、ただ一人理解していない大臣は
その不審さに疑問を抱きながらも、騎士に答えた
大臣「こちらも急いでいる、手短に頼む・・・」
騎士「現在、勇者一行は魔王城内に侵入したことを確認しております!おそらく、魔王との最終決戦となっているでしょう」
騎士「我ら勇者補助係としても、すぐにでも勇者の援護に向かいたいと思います!」
大臣「そうであったか。そちらの、現状を把握していなかったのは申し訳ない」
大臣「だが、残念なことに呼び出してしまった以上、諸君らを魔王城に送り返す術は無い」
大臣「それこそ、伝説の勇者が用いたという転移魔法でも使わない限りはな」
大臣「仮に転移魔法が使えたとしても、今回の事件は最重要案件だ。最優先で取り掛かってもらう」
賢者(勇者と魔王の決戦、人類と魔族の頂上決戦以上に優先されることなんてあるんですか・・・?)
賢者の疑問を察してか、騎士が大臣に問いかけた
21 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:54:55.93 ID:1/6b/enLo
騎士「・・・理由をお聞かせ頂けますか?」
大臣「『ただただ職務に忠実たれ』、騎士である君が忘れたとは思わないが・・・?」
騎士がその教育の過程で、みっちり仕込まれる騎士三訓のひとつ
『ただただ職務に忠実たれ』
大臣が、騎士の疑問に答える必要はないという意思の表れであった
騎士「・・・なるほど、わかりました。では仕方ありませんね」
騎士「こちらの仕事を片付けてから再度、魔王城へ向けて出立します」
大臣「そうしてくれ」
騎士「とりあえず、現場に向かいますけど。仕事はどこですれば?できればデスクが欲しいんですけど・・・?」
勇者補助係は、発足以来このかた一つ所に留まることなく職責を果たしてきた
それゆえに、彼らは王城内に机を持っていなかったのだ
大臣「当然だな、よし現場の宝物庫にデスクを運び込ませよう」
商人「はい?宝物庫の中で仕事しろって言ってるんですか?」
大臣「説明している暇はない、必要なものはすべて用意する」
22 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:55:21.64 ID:1/6b/enLo
大臣「盗賊、君には私と騎士君たちの連絡役になってもらう」
大臣「辞令だ、現時点を持って大臣付き秘書官に任命する」
盗賊「え、あ、はい」
盗賊(あ、いつのまにか、魔法解けてた・・・)
騎士「ちょ、ちょっと大臣!タダでさえ人手不足なのに、いま盗賊さんを引き抜かれたら!」
常にオーバーワークに晒されてきていた騎士の必死の懇願である
しかし、その願いは大臣には届かない
むしろ話を遮られたことによって、大臣の顔がみるみる赤く赤く染まっていく
大臣「いい加減にしろ騎士っ!先ほどから、自身の立場も忘れ!口をはさみおって!」
大臣「時間がないと、何度言ったらわかるのだ!」
大臣「必要なものは全て用意すると言ったろう!人員は随時、補充する!」
上司の突然の叱責に、4人は圧倒され唖然としてしまっていた
その様子を感じ取った大臣は、再度、檄が飛ぶ
大臣「いつまで、だらだらしている!さっさと自分の仕事に取り掛からんかぁっ!」
騎士「はっはいっ!!!」
ひとり盗賊を残して、3人は回れ右で、場所も知らぬ宝物庫へと歩を進めた
賢者は、その明晰な頭脳で大臣の不審な態度について考えをめぐらせ
同様に商人は、その明晰ではない頭脳で事態の分析をはかろうとして
明晰ではないながらも自らの限界を悟り
とりあえず、考えることをやめた
23 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:55:50.30 ID:1/6b/enLo
――――――
騎士「ここが、そうなのか?」
近衛兵「・・・はい」
近衛兵の案内によって、3人は迷路のように入り組んだ王城の廊下を進み
遂に、宝物庫へとたどり着くことができた
赤く巨大な扉に閉ざされた、その部屋は
いかにも、大事なものが閉まってありますと自己主張するかの如く様相であった
商人「うむ、案内御苦労!というか、俺は宝物庫の場所は知ってたんだけどな」
賢者「酒保勤めだった商人君が、なんでまた宝物庫の場所なんて?」
商人「賢者、知らないのか?この宝物庫な王城で唯一、魔法で封印された部屋なんだぜ」
賢者「魔法で?それは、また厳重ですね」
商人「ああ、なんでも専用の魔法の鍵でしか開くことができないそうだ」
賢者「へえ、それはすごい」
商人「なんでも、王家に伝わる伝説の装備の数々が保管してあるとか」
24 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:56:17.51 ID:1/6b/enLo
商人「俺も噂で聞きつけてな、一回見学に来たことがあるんだよ」
賢者の知らないことを自身が知っていたせいか、商人は自慢げである
賢者「しかし、そうなると疑問ですね」
商人「なにがだ?」
賢者「だって、専用の魔法の鍵でしか開かないわけでしょ?」
賢者「当然、そのカギは担当部署もしくは、王自身が持っているわけですよね」
賢者「しかし、結果として宝物庫は暴かれてしまった」
賢者「まっさきに疑われるのは、鍵を持っていた人物では?」
商人「まあ、ここからは噂をもとに当時の俺が調べたことだ」
商人「この宝物庫を唯一開ける、魔法の鍵な」
商人「実は、数十年前から行方がわからなくなってるらしい」
賢者「あらら」
商人「というわけで、この大事な大事な宝物庫は王城の中でその名の通り開かずの間となっていた」
25 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:56:43.79 ID:1/6b/enLo
商人「というわけだ」
騎士「つまり、だれが魔法の鍵を持っていてもおかしくないってことだね」
賢者「へえ・・・そうだったんですか」
賢者「しかし、商人君。やけに詳しいですねえ・・・?噂をもとにそこまで調べ上げたんですか?」
騎士「まさか、忍び込もうなんて考えたわけじゃないよね?」
商人「ままま、まさか!興味本位ですよ騎士さん」
商人の狼狽ぶりは、その言葉とは裏腹に真実を雄弁に語っていた
賢者「なるほど。合点がいきました」
騎士「なにがだい?」
賢者「事件の発覚が遅れた理由ですよ。魔法で封印されているなら、常に近衛兵を配置する必要もないですからね」
騎士「なるほど、大臣の言っていた考慮すべき事項というのは、そのことか。近衛兵団も災難だったねえ」
近衛兵「では、我々は部屋の外におりますので」
賢者「ところで、中には誰もいないようですが?捜査は進んでいないのですか?」
26 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:57:10.39 ID:1/6b/enLo
近衛兵「はい・・・宝物庫の中に近衛兵が入ることは禁じられています」
商人「それまたどうして?」
近衛兵「城内に賊の侵入を許し、あまつさえそれに昨日まで気づかなかった我々に行政府は不信感を抱いています」
賢者(行政府が不信感・・・大臣がお怒りってことですね)
近衛兵の言葉に、騎士は大臣の叱責の様相を思い出し、近衛兵への同情を深めた
近衛兵「故に、この事件の捜査については行政府直轄の者を充てると・・・大臣からの要請で」
騎士「なるほど、本来ならばあなた方の管轄に我々が呼ばれたのは、そうした理由からか」
騎士「心中お察しする」
近衛兵「・・・」
騎士の同情からの言葉に、近衛兵は沈黙で答えた
賢者(勇者の関与については、大臣管轄の行政府で内々に処理したいということでしょうか?)
騎士(うーん、それはちょっと早計かな)
商人「では、失礼しまーす」
27 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:57:36.71 ID:1/6b/enLo
商人「さて、まずは何から始めましょうか」
騎士「まずは、現場をあらためよう」
賢者「・・・結構、広いですねここ。水道に、かまど、クローゼットにベッドまで置いてある・・・とても宝物庫とは思えない」
賢者の言葉通り、部屋には宝物庫とは思えないほど設備が充実している
騎士「いざというときには、王族のシェルターとして使う予定があったのかもな」
商人「お、宝箱はっけーん」
商人「・・・ま、当然カラか」
賢者「元から、カラだったのかもしれませんよ」
騎士「うん、もともと何が保管してあったのか知る必要があるね」
賢者「近衛兵さんに管理簿を持ってきてもらいましょうか」
騎士「そうだね、我々の最初の仕事は管理簿と現状を照らし合わせることから始めよう」
騎士「何が盗まれたかわからないと、仕事にならないしね」
近衛兵に声をかけようと、騎士が後ろを振り返える
しかし、そこにはあるはずの近衛兵の姿はない
あるのは、真っ赤な巨大な扉だけであった
いつの間に閉めたんだろう、疑問に思いながら騎士は扉に近づいた
商人「ん、どうしました騎士さん?」
騎士「宝物庫の扉が、開かない」
28 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:58:03.03 ID:1/6b/enLo
――――――
え?私が考える理想の勇者像かい?
そりゃあ何より、常に冷静で理性的にあることだな
勇者の伝説は、国民のほぼすべて老若男女が知っている
だから、どうしてもその一挙手一投足のすべてを人々は目で追ってしまう
まあ、言ってしまえば勇者にはプライベートってものがないわけだ
ちょっと同情しちゃうね
でも、そこは勇者だから致し方ない事さ
勇者には特権も一杯あるんだから、それぐらいは我慢してもらわないとね
おっと話がずれそうだ
そうそう、人々は常に勇者を見ている
もちろん、見ているだけじゃあ済まない
子供たちは、強く優しく何物も等しく救う勇者に憧れ
大人たちは、何物にも縛られず正義を貫く勇者の姿に自分自身を正す
つまり、人々は勇者の模範的な正義を
自らに取り込むことによって、更なる善性を得
そうして、できあがった社会倫理は親から子へ、子から孫へと受け継がれ
後の世をさらに良くしていく
いわば、正義のスパイラルさ
29 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:58:32.59 ID:1/6b/enLo
だからこそ、今代の勇者には怒りすら覚える
確かに、彼は彼なりの正義に基づいて行動している
しかしその、正義の執行の仕方がよくない
私たち、4人が、勇者補助係の私たちが
この一年で、どんな酷い目にあったことか
私の胃は、この一年間で酷く痛めつけられたんだよ
彼は、国を出て最初の関所でいきなり大問題を引き起こした
信じられるか?勇者は、たった子供二人を通す為に、関所の扉を魔法で打ち破ってしまったんだ
もちろん、然るべき理由があったことは推測できる
でもね、やり方が手荒すぎる
ちゃんと関所の人間と話し合って、お互い理解したうえで関所を超えるべきなんだ
たとえ、それに多少の時間がかかったとしてもだ
だけど、彼はそうしなかった
ただ感情的に、関所の人間と口論して
挙句の果てに、門を破った
それじゃあ、だめだ
人々の模範には成り得ない
だってそうだろ?
勇者のやり方を子供たちが覚えたら
自分のわがままを押し通す為に、暴力に頼ることになってしまう
うん、だからこそ私は思うんだ
勇者は常に理性的でなくちゃ
30 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:59:13.19 ID:1/6b/enLo
――――――
商人「・・・おらっ!どりゃあああああ!ごんがああああああ!・・・・開かない!」
商人「おいっ!近衛兵!扉の後ろにいるんだろっ!わかってるんだぞ!」
商人「おいおいおい!冗談で済むうちに、さっさと開けろ阿呆!」
商人の怒りようは尋常ではなかった
商人「そうか!開けないか!わかった!てめえ、覚えていやがれ!」
商人「俺が外に出た暁には!てめえの鼻に口に耳にへそに、けつの穴まで含めた全ての穴を栓でふたしてやるからな!」
賢者が扉に駆け寄り、扉の外にいるであろう近衛兵に呼びかける
賢者「おーい!近衛兵さーん!ちょっと外に出たいんですけど!」
返事はない
しかし、賢者は扉の後ろに人の気配があることを感じ取っていた
賢者は、扉の前であらゆる悪態を吐き出す商人を押しどけ、二度ほど扉を押してみる
そしてふと思いついたかのように、扉の隙間から外の様子をうかがった
賢者「いや・・・これ、外から閂がされてますよ・・・開かないわけだ」
商人「なんだと?おい!こら近衛兵っ!いい大人がイタズラか!?」
商人の悪態に根負けしたかのように、扉の外から声が届いた
31 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 18:59:41.13 ID:1/6b/enLo
近衛兵「・・・皆さんを、外に出すわけには参りません」
商人「はいー???」
近衛兵「陛下からの勅令です。宝物庫より何物も持ち出すことなかれ、と」
商人「馬鹿言ってんじゃねえぞ!俺たちは何も、くすねちゃいねえよ!」
宝物庫から何物も持ち出すことなかれ
賢者は、一瞬でその答えを導き出す
賢者「いや、そうではないです」
賢者「宝物庫から何物も、ということは宝物庫に入った私たちも・・・出すわけにはいかない、と」
商人「な?そんな理屈が通るか!」
騎士「近衛兵さん!冗談はよしてくれ!このままじゃ、仕事が進まないじゃないか!」
苛立ちからか、騎士の言葉も荒くなる
しかし、近衛兵からの返答は無かった
賢者「対話する気は無いようですね・・・」
商人「まじかよ」
騎士「・・・どうも、我々のあずかり知らぬ所で何か大きな事が起こっているようだね」
商人「くそっ・・・厄介なことになってきやがった」
商人は、まるで己が子をなでるがごとく、少し張ったお腹を優しくさする
そして、僅かではあるものの、しかし確かにそこにある便意を感じながら
自らに訪れるであろう少し先の不幸を慮ることしかできなかった
32 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 19:33:51.32 ID:1/6b/enLo
――――――
一方、大臣と盗賊の二人は長い長い廊下をゆっくりと歩いていた
盗賊「大臣、どちらに向かっているんですか?執務室とは逆方向ですが」
大臣「うむ、盗賊よ。貴様、隠していることがあるな?」
盗賊「・・・」
思い当たることはあった、勇者の裏切りの件である
先ほどは、大臣にまっさきに報告すべきと思ったものの
いざ大臣と二人きりになってしまうと、まるで告げ口をするような罪悪感に苛まれてしまっていた
大臣「答えぬか」
大臣は大仰にため息をついたものの、そこに怒りは感じられない
盗賊は察する。この人は全てを知ったうえで問いかけているのだ
自らが試されているということを
盗賊「・・・勇者が魔王軍に寝返りました」
大臣の頬がゆるむ
大臣「であるか。ふむ、盗賊よ貴様の忠誠心は未だ残っているようだな」
大臣「てっきり、自らの実父が囚われていることを忘れたのかと思うたぞ」
33 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 19:34:17.09 ID:1/6b/enLo
盗賊の父は、長きにわたって、その名に恥じぬ働きをしてきた
すなわち、盗人稼業に精を出してきたのである
しかし、年のためか遂には官憲によって捕まり王城地下牢獄に囚われるに至った
盗賊が、大臣のもとで粉骨砕身職務に励むのも、その父への恩赦を願っての事だった
盗賊「ご存知とは思いませなんだ」
大臣「勇者の監視役は、貴様だけではないということだ盗賊」
大臣「なに、隠す必要は無いのだ」
盗賊「・・・?」
大臣「今より、陛下に謁見し、貴様が見た勇者の顛末を語ってもらう」
盗賊「勇者の裏切りを・・・?陛下に直接ですか」
大臣「ああ、その通りだ。ただ一つ、注意してもらいたいことがあってな」
大臣「そこで、貴様の忠誠心をはからせてもらった」
盗賊「・・・何を隠して、何を伝えればよろしいですか」
大臣「ほお、察しが良くて助かる。一年間、き奴らに良い指導を受けたと見える」
大臣「よい役人になったではないか、盗賊よ」
盗賊「お褒めいただき光栄です」
大臣「言葉遣いも良い。陛下の前にも十分に出せそうだな」
大臣「話して良いのは、事の顛末だけだ。勇者が裏切った事実のみを伝えろ」
大臣「私ら・・・いや貴様らの仕事ぶりについては黙っていろ」
盗賊「わかりました。」
盗賊「ところで・・・」
一瞬、盗賊の目に殺気がやどる
大臣は、それを察しながらも意にも返さず答える
大臣「案ずるでない。もう少しなのだ、この件が片付けば必ず約束は守る」
34 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 22:50:34.07 ID:1/6b/enLo
――――――
王「そうか勇者が・・・」
王「まあ奴には奴なりの正義があるのだろう、致し方ないことだ」
盗賊の報告に、王は意外なほど冷静であった
大臣「勇者一行は、魔王軍の協力を得、王都に戻ってくるでしょう」
大臣「勇者が戻ってきたら最後、彼はその特権である陛下への奏上を行うことが予想されます」
勇者には、世界を平和へと導く行ううえで様々な特権が与えられている
王への奏上は、その最たるものの一つである
ひとたび、勇者の奏上が始まれば
何人たりとも、それを妨げることができない
この特権は、かつて己が財産を増やすことに邁進し政治を疎かにした王に
時の勇者が、その武力を誇示することなく対話により王を諫め
勇者の言葉に心打たれた王が、改心したことに由来する
大臣「勇者は、魔族の賃金是正を訴えることでしょう」
大臣「もし、奏上の内容が国民にしれれば・・・」
大臣「勇者の名声を鑑みるに、国民が勇者の考えに同調する可能性もございます」
大臣「そうなれば、民によって構成される衆民院の議員共も黙ってはいないでしょう」
王「魔族の賃金是正か・・・そもそもの今回の魔王討伐の発端はこれであったな」
大臣「魔王が悪いのです。もともと、この国の制度に基づいて労働力を提供を申し出たくせに」
大臣「それが、相場より安いと分かった途端。賃金是正の交渉を行うなど、言語道断でございます」
35 :
◆CItYBDS.l2
[saga]:2017/11/08(水) 22:50:59.46 ID:1/6b/enLo
その言葉に、盗賊は耳を疑った
なぜならば、盗賊を含めた多くの国民は魔王を悪の根源と認識し
それを勇者が打倒すことで、平和が訪れると信じていたからである
大臣の言葉は、魔王にも魔族なりの道理があることを示唆していた
つまり、盗賊が信じていた勇者による平和のための戦いは
実のところ国家間の利益の奪い合い、すなわち戦争であったのだ
王「魔族すら救うか、傲慢ではあるが聞こえは良い。さもあらん」
大臣「ですので、陛下に置かれましては勇者を即刻、その任から解いていただきたく」
王「ふむ・・・」
王の歯切れの悪さに、大臣は明らかに苛立ちを見せていた
大臣「何を悩まれるのです!勇者が王国へ戻ってくるまで、半年もかかりますまい!」
大臣「陛下、いまのうちに先手を打ちましょう。勇者から、その奏上の権利を奪うのです!」
近衛兵長「大臣、口がすぎるぞ!いま貴様の目の前に、おわすは王陛下なるぞ!」
王の間の脇に控えていた、近衛兵長が敵意をまるだしに大臣へと歩み寄った
6尺にも及ぶ長身の近衛兵長が詰め寄るも、大臣は物怖じもせず続けた
大臣「なにを逡巡されているのですか、陛下!?」
王「のう、大臣よ」
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