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道明寺歌鈴「これが私のお菓子とイタズラ」
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1 :
◆u71RyimI2MeR
[sage saga]:2017/11/05(日) 16:58:51.98 ID:LfM8R5uto
道明寺歌鈴ちゃんのSSです。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1509868731
2 :
◆u71RyimI2MeR
[sage saga]:2017/11/05(日) 16:59:56.28 ID:LfM8R5uto
「まだ起きているんですか?」
と、しかめっ面でパソコンとにらめっこしているプロデューサーさんに声をかけました。そんなプロデューサーさんは生返事をしてまたキーボードを叩きはじめて。もう夜も遅いというのにずーっとこうです。流石にご飯を食べる時とお風呂に入る時は違いましたけど、それからはこんな調子で。
また明日もお仕事なんですから寝ましょうと言っても「あと少し」という返事が来るだけでどんどんあと少しが延びていきます。
むうぅ、って頬を膨らませても無反応で。ちょっと寂しいです。
3 :
◆u71RyimI2MeR
[sage saga]:2017/11/05(日) 17:00:46.62 ID:LfM8R5uto
「プロデューサーさーん……」
つんつんと突っついても「んー」ってこっちも見ないでいて。私のことを見てくれるくらいしてもいいのになぁ、なんて呟いたら見てくれるのでしょうか。そんなことを思いながらじーっと見つめます。真剣に画面を見つめるプロデューサーさんはかっこよくて。だけど私のことをおざなりにするプロデューサーさんはかっこよくなくて。
………むむぅ、困りました。多少強引でもプロデューサーさんを引っ張ってお布団に連れ込むべきか。それとも頑張るプロデューサーさんをこうやって見守っていた方が良いのか。休んで欲しいのは本心だけど、頑張っているのを邪魔するのも申し訳ないですし、だけど体調を崩してしまうところは見たくないですし。
……それに、ちょっとだけ、ちょーっとだけですけど、画面の中の私じゃなくてここにいる私のことを見て欲しいなぁ、なんて思いもあって。
4 :
◆u71RyimI2MeR
[sage saga]:2017/11/05(日) 17:01:27.55 ID:LfM8R5uto
そんな葛藤をしていたらスマホが揺れました。画面を見ると藍子ちゃんからの着信を知らせています。こんな時に藍子ちゃんだったらどうするかって聞きましたけど……と首を傾げながら、その場を離れて電話に出ます。
「もしもし?」
「こんばんは、歌鈴ちゃん。まだ起きてたんですね」
「ふふっ、藍子ちゃんこそ。でも電話なんてどうして……?」
「眠れないから、かな?」
向こうで藍子ちゃんがクスリと笑ったのが分かって思わず私も笑ってしまいました。
「なんだか藍子ちゃんがそういうのって珍しい気がします」
「そうですか? 未央ちゃんともたまにこうやって電話するんですよ。それにプロデューサーさんとも」
そう言った藍子ちゃんが嬉しそうで電話口の向こうでもきっとあの優しそうな笑顔を浮かべているんだろうなって、そんな気がします。
5 :
◆u71RyimI2MeR
[sage saga]:2017/11/05(日) 17:02:20.82 ID:LfM8R5uto
「…ってそうじゃないですよ! 歌鈴ちゃんはプロデューサーさんにどうして欲しいんですか?」
「どうして欲しい、ですか……」
「はい。例えばプロデューサーさんに構ってもらいたい! とかっ」
「ふぇっ!?」
藍子ちゃんのせいで変な声が出てしまいました。プロデューサーさんに聞かれてないですよね……?
「あ、やっぱり当たりですね!」
「ち、違いまふっ! ますっ!」
ぶんぶんと首を振って否定します。電話だと分かってますけど、ぶんぶんと首を振って。
「聞いてるのは私だけだからそんな隠さなくていいのに」
「うぅ……違うというか、構って欲しいのもそうですけど……」
「プロデューサーさんが心配?」
「ふぁい……」
「うーん……」
「そ、その! 藍子ちゃんのプロデューサーさんがそうしてたらどうします……?」
そういえばまだ返事がなかったなと思って聞いてみました。というかこれを聞きたくて連絡したのに……
6 :
◆u71RyimI2MeR
[sage saga]:2017/11/05(日) 17:03:13.02 ID:LfM8R5uto
「そうですね……その時はお茶でも淹れて休憩しませんか、って誘います」
「なるほど……お茶……」
「……零さないように気を付けてくださいね?」
「だ、大丈夫ですよっ! 木のコッブですから!」
「えっ、関係なくないですか?」
「えっ」
沈黙が場を包みました。
「えっと……あの、あ、そうだ!」
「ほえ?」
「今日……というか、昨日ですけど、せっかくのハロウィンなんですしトリックオアトリートなんて言って、いたずらと称して休ませてあげるというのは?」
「……!」
「歌鈴ちゃん?」
突如もたらされたぐっどあいでぃあに言葉が出ませんでした。ごめんなさいと謝りつつ、
「それいいですね…っ…!」
「ふふーん、でしょう?」
「むむむ……でも、ということはやっぱり仮装とかはした方が」
仮装と言っても今、そんな衣装あったっけと思い浮かべますが全く浮かびません。うーん……
7 :
◆u71RyimI2MeR
[sage saga]:2017/11/05(日) 17:03:46.97 ID:LfM8R5uto
「歌鈴ちゃんらしく巫女服でいいんじゃないですか?」
「仮装というか正装になるような……」
「いや、アイドルなら……ってあぁ、歌鈴ちゃんは巫女服をモチーフにした衣装ありましたね……」
なにかに納得したかのような藍子ちゃんの声が聞こえてきます。確かに巫女服をモチーフにした衣装がありますけどちゃんとアイドルらしい衣装もあるんですからねっ。と抗議したら「もちろん分かってますよ」とクスリと笑い声が聞こえてきました。
「まあ……そんな感じでいいと思いますよ? 可愛い歌鈴ちゃんにそんなこと言われたらきっと歌鈴ちゃんのプロデューサーさんも言うこと聞くんじゃないかな」
「はうっ……そ、そう、でしゅか…?」
「はいっ!」
力強い返事がきました。見えてないですけどあの満面の笑顔で頷いてるんだろうな、ってことが伝わってきます。そんな藍子ちゃんに背中を押されたら、やっぱり────
8 :
◆u71RyimI2MeR
[sage saga]:2017/11/05(日) 17:04:33.70 ID:LfM8R5uto
「プロデューサーさんっ!」
電話を終えて、着替えて戻ってきてもまだパソコンと向かい合っていたプロデューサーさんにぐいっと近寄ります。何事かと私の方を見たプロデューサーさんの顔が戸惑いの表情一色に染まっています。
「ふふっ、どうですか? 久々の巫女歌鈴です!」
どやって胸を張って。こうしてプロデューサーさんへと見せるのはなんだか久々な気もして。いつの間にかドキドキと高鳴っていた胸の鼓動には気付きませんでした。
「あぁ、似合ってる……けど、どうして」
「その……心配、なので…」
「心配……?」
私のその言葉に不思議そうに首を傾げるプロデューサーさん。私の方へと向き直ってくれたプロデューサーさんに、えいって抱きついて。
困ったようにおろおろするのも構わずに、ぎゅって抱きしめ続けて。
プロデューサーさんは逆らわないでくれました。きっと、私なんか振り払えるはずなのに。よく知っている温もりのはずなのに、何故かとても温かくて。
9 :
◆u71RyimI2MeR
[sage saga]:2017/11/05(日) 17:05:20.45 ID:LfM8R5uto
どれくらいそうしていたか分からなくて。落ち着いた私はプロデューサーさんに抱きかかえられていました。頭を撫でながら落ち着いたかと聞かれて、今更になって無性に恥ずかしくなってきました。
自覚したらもう抑えきれなくなって。撫でられた頭がかあっと暑くなって。我慢できなくなって、ぴょんって飛び降りたらプロデューサーさんに、
「と、トリックオアトリュ…っ…トリート、ですっ!」
……噛んじゃったけど、そう言いました。ああ、そういえばハロウィンだったっけ、とプロデューサーさんがきょろきょろと辺りを見回して頬を掻きました。
「あー、いや、お菓子はない、な」
「じゃ、じゃあイタズラですね!」
やっぱりお菓子はなくて、というか出されていたのはあらかじめ隠しておいたんですけど。思い通りの展開で嬉しくなって。明日、藍子ちゃんに会ったらお礼を言わないと!
10 :
◆u71RyimI2MeR
[sage saga]:2017/11/05(日) 17:05:57.96 ID:LfM8R5uto
「えへへ、これが歌鈴のイタズラですっ」
そう言って、プロデューサーさんを離しませんっ! って意思表示するみたいに抱きしめます。
まだ冷たいお布団の中でしっかりと抱きしめて。プロデューサーさんも嫌がらずに抱きしめかえしてくれました。抱きしめあっていたらじんわりと温もりがお布団全体へと広がっていって。
そうやって抱き合っていたら、プロデューサーさんがうとうとしだしました。やっぱりこうやって止めさせて良かったな、なんて思いながら今度は私が撫でました。擽ったそうな、眠たそうな声をあげてましたが構わずに撫で続けて。少しチクチクするプロデューサーさんの髪の毛も、小さく聞こえるプロデューサーさんの声も、どんなことでも幸せが感じられました。
11 :
◆u71RyimI2MeR
[sage saga]:2017/11/05(日) 17:06:47.82 ID:LfM8R5uto
そして聞こえてきたプロデューサーさんの規則的な寝息。それを聞いていたら私も段々と眠たくなってきて。
もう夢の世界へと旅立ったプロデューサーさんを見て、ゆっくりと顔を近付けて。
「……ふふっ、これが私の、歌鈴のトリートです……なーんてっ」
12 :
◆u71RyimI2MeR
[sage saga]:2017/11/05(日) 17:07:29.39 ID:LfM8R5uto
おしまい
読んでくださりありがとうございました。
1週間経ってないしまだハロウィンです。
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