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千枝「過去から未来へ」
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/11/05(日) 09:00:58.00 ID:ze/1LDdAO
モバマスのSSです。
よろしくお願い致します。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1509840058
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/11/05(日) 09:02:42.55 ID:ze/1LDdAO
こんにちは。佐々木千枝です。
その日、私は同じ事務所の、尊敬するお姉さん、「三船美優」さんのお宅にお邪魔しました。
美優さんは、見た目ももちろんですが、仕草の一つ一つ、
表情のひとつひとつが大人の女性って感じで、千枝が一番憧れているお姉さんです。
ピンポーン
美優「はーい。あ、千枝ちゃん。どうぞ、いらっしゃい。」
千枝「お邪魔致します。」
うわぁ・・・すべてが無駄なく片付いていて、シンプルなのに、どこか上品で・・・
千枝「美優さんの部屋だぁ・・・」
美優「ふふふ。どうしたの?千枝ちゃん。」
千枝「いえ。なんだか、美優さんにぴったりなお部屋だなって思って。」
美優「そう?あ、今、お茶入れるね。寒いから、ココアがいいかな?」
千枝「あ、おかまいなく・・・」
ちょっと緊張している私に、そっと微笑んで、美優さんはキッチンへといきます。
本当に、「大人の部屋」という雰囲気です。千枝も、こんな部屋が似合う大人になりたいなぁ・・・
あ、窓からイチョウが見えるのですね。もうすっかり黄色くなって、とてもきれいです。
美優「おまたせ。」
千枝「ありがとうございます。いただきます。」
ふぅ・・・暖かい・・・それに、甘すぎなくて、美味しいです。それに、不思議な香りがします。
千枝「おいしい・・・これ、なんの香りですか?」
美優「よかった。私、キビ糖を使っているから、どうしても独特な香りがついちゃうのよね。」
美優「私は好きなんだけど、苦手って人もいると思うから、少し心配だったの。」
千枝「へぇ・・・。」
窓から入ってきた風が、ふわりとイチョウの香りを運んできました。
美優「もう、すっかり秋ね・・・」
そう言うと、美優さんは窓の外をみて、小さくため息をつきました。
その表情は、千枝の胸をキュッと締め付ける、千枝の大好きな表情でした。
千枝「秋に、何か思い出があるんですか?」
美優「そう、ね・・・」
そうして、美優さんはそっと、話しはじめました。
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/11/05(日) 09:04:35.70 ID:ze/1LDdAO
― − − −【美優 談】 − − − −
私が6歳の時だから、今からちょうど、20年前ね。その時の私は、髪をリボンで結んでいたの。
ちょうど、今のありすちゃんみたいな感じだったわ。
本当に、何も他の子と変わらない、特に目立つことのない、普通の女の子でした。
2学期になって、私の席の後ろに、男の子がきたの。その子も、普通の男の子だったな。
むしろ、周りの子と比べたら、大人しいくらいの子だったの。
ちょうどこんな、イチョウがきれいな頃だったわ。
その日、私は一番のお気に入りだった、黒に金の糸で縁取りされたリボンをしていたの。
授業が終わって帰る時、後ろの席の男の子が突然、私のリボンを取ったの。
本当に気に入っていたリボンだったから、凄く怒ったわ。そして、ずっと追いかけたの。
そして、校庭の端にあった大きなイチョウの木の下まできたの。
美優「ちょっと!返してよ!泥棒!!」
男の子「嫌だ!」
美優「なんでよ!!人の物を取るなんて、最低よ!泥棒は刑務所に入れられるんだから!」
男の子「泥棒でも、なんでもいいや。」
美優「なんでよ!!返しなさいよ!!」
男の子「嫌だったら、嫌だ!!」
美優「どうしてよ!」
男の子「だって・・・・」
そして、しばらくその子は下を向いていたのだけれど、ふと顔をあげて、はっきりと言ったの。
男の子「だって、ぼく、美優のことが好きだもん。」
そうして、その子はまた、走って行ってしまったわ。
私は、びっくりしちゃって、そこに立ってた。
この季節になると、今でも、あの時の「好きだもん」って言った声をふと、思い出すの。
顔は夕日がまぶしくて、覚えていないんだけどね。
― − − − − − − − − − − −
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/11/05(日) 09:06:27.71 ID:ze/1LDdAO
千枝「・・・その男の子とは、どうなったんですか?」
美優「それっきり。それからお互い、なんだか話をするのも恥ずかしくって。」
美優「それに、それからしばらくして、その子は突然、遠くへ引っ越してしまったわ。」
千枝「名前とか、顔とかは?」
美優「もう、すっかり忘れてしまったわ。」
千枝「そっかぁ・・・」
美優「きっと、すてきな男性になって、すてきな奥さんに出会って幸せに暮らしているわ。」
千枝「もし、その人がテレビとかで美優さんを見て、『あの時の!』って言って来たら?」
美優「ないと思うわ。だって、もう20年も前だもの。向こうも顔も名前も忘れているわ。」
美優「それに・・・忘れていてくれた方が、いいかも。」
千枝「なんでですか??」
美優「・・・ふふふ。なんででしょうね。私にもよくわからない。」
千枝「美優さんでも、わからないんですか?」
美優「そうよ。変ね。」
そうして、美優さんは、嬉しそうに笑いました。
私も、なんだかうれしくなって、一緒に笑いました。
美優「寒くなっちゃうから、窓、閉めるわね。」
そして、窓を閉めながら、こういいました。
美優「この話は、私と、千枝ちゃんと、その男の子、3人の秘密ね。」
千枝「はい!」
なんだか、大人の仲間入りをしたようで、とてもうれしかったです。
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/11/05(日) 09:09:44.28 ID:ze/1LDdAO
それからしばらくして、私は、事務所の友達の誕生会の準備をするのにプロデューサーさんのお宅に伺いました。
千枝「お邪魔しまーす。」
P「お、どうぞどうぞ。」
千枝「う〜ん。男の人の部屋ですね。」
P「そうか?」
はい。同じ大人なのに、美優さんの部屋とは全く違います。散らかっていたりはしないのですが・・・
P「今、飲み物入れるな。」
千枝「あ、はい。ありがとうございます。」
部屋を見渡すと、机の上に小さな筒がありました。古い物のようで、周りの色は褪せています。
その筒はフタが開いていて、中から何か出ています。
千枝「これは・・・リボン?」
とても古い、黒いリボンでした。そして、金の糸で縁取りがされています。
これって・・・美優さんの!!
P「おまたせ〜・・・あ。」
プロデューサーさんは、恥ずかしそうに、フタをして、引き出しにしまうと鍵をかけました。
そっかぁ。あの男の子はプロデューサーさんだったのですね。
あ、でも・・・美優さんは知らなくていいって言ってました。
千枝「ね、プロデューサーさん。プロデューサーさんは、美優さんのこと、好き?」
P「ブッ!!なんだい、急に。」
P「そっか。千枝は美優さんのこと、大好きだもんな。」
P「そうだな〜。凄く素敵な人だと思うよ。」
千枝「そうじゃなくて!女の人として、好き??」
P「・・・・・・」
プロデューサーさんはしばらく黙って、下を見ていましたが、ふっと、私の目をしっかりと見て、言いました。
P「うん。好きだ。」
P「でも、内緒な。」
その仕草は、美優さんが話してくれた、美優さんに「好きだもん」と言った男の子を思わせました。
千枝「うん!!ヘヘヘヘ。」
きっと、この二人なら大丈夫。私はうれしくなって、プロデューサーさんに抱き着きました。
P「え・・・!?ちょっと、千枝!??」
千枝「だ〜いすき!!」
プロデューサーさん、美優さんのこと、絶対に!幸せにしてくださいね。
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/11/05(日) 09:10:12.16 ID:ze/1LDdAO
以上です。ありがとうございました。
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