神谷奈緒「マーキング」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/02(木) 07:25:38.57 ID:yaYFtgev0
※「アイドルマスター シンデレラガールズ」のSS

※キャラ崩壊あり、人によっては不快感を感じる描写もあるかも

※決して変態的なプレイをする話では無く、健全な純愛物を目指してます

※独自設定とかもあります、プロデューサーは複数人いる設定

以上の事が駄目な方はブラウザバック奨励

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1509575138
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/02(木) 07:26:48.28 ID:yaYFtgev0
前に書いた作品

智絵里「マーキング」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1476481390/

智絵里「マーキング」まゆ「2ですよぉ」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1476819940/

橘ありす「マーキング」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1477742473/

鷺沢文香「マーキング」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1480427177/

高森藍子「マーキング」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1483199905/

渋谷凛「マーキング」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1486239096/

島村卯月「マーキング」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1493044244/

3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/02(木) 07:27:53.68 ID:yaYFtgev0
緒方智絵里「私の特別な、あの人だけの贈り物」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1487022862/

緒方智絵里「私の特別な、あの人からの贈り物」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1489440695/

緒方智絵里「汚れた私は、お好きですか?」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1492205497/

緒方智絵里「特別な日の御祝い事」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1497654864/

緒方智絵里「あなたと過ごす、特別で怠惰な一日」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1499895048/

4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/02(木) 07:30:53.40 ID:yaYFtgev0
薄暗く狭い通路にカツン、カツンと無機質な音が響き渡る。


音の正体は通路の真ん中を歩く少女の足音。


彼女の履く学校指定の革靴により、歩く度に音を奏でていた。


「……」


少女は無言のまま、目的地を目指して足早に通路を歩いていく。


そんな彼女の周りには人影の一つ、物の一つすら在りはしない。


人通りの無い裏路地であるなら考えられるが、ここはアイドル事務所、CGプロダクションのあるビルの屋内。


来客も多く、働く職員やアイドルで溢れ返るこの場所なら、普通は少し歩くだけで誰かしらとすれ違うだろう。


しかし、少女の歩く先にも歩いてきた後にも、人の気配は感じられない。


その理由は単純にして明快。この通路を通る者が極端に少ないからである。


5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/02(木) 07:31:33.92 ID:yaYFtgev0
彼女を含めれば少数の人間のみしか利用しないこの通路。実は事務所のあるビルの地下に存在している。


この地下室、元々は備品や不必要品を置く為の場所。スペースとしては事務所のワンフロアと同程度。


部屋数は全部で四部屋あり、そのほとんどが倉庫としての目的で使われている。


なら、通路を歩く少女の目指す場所は四つある倉庫の内の一つなのか。いや、違う。


彼女の目指す先は通路の最奥。且つては倉庫として使われ、今は違う意図で使われている場所。


少女は部屋の前へと辿り着くと、緊張で手汗の滲む両手の平を制服のスカートで軽く拭き、気を落ち着かせる為に深呼吸を一つしてみせる。


「……すぅ……はぁ……」


しかし一つだけでは足りず、何度も何度も同じ動作を繰り返し、気が休まるまで少女は続ける。


そうして落ち着けた所で、彼女は手に持つ鞄のチャックを開き、中からある物を取り出した。


取り出したのはキーホルダーに通された鍵の束。掛かっているのは全部で四本。


その内の一本を手にすると、少女は目の前の扉の鍵穴に向けてそれを挿した。


6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/02(木) 07:33:40.46 ID:yaYFtgev0
挿した鍵を一回転させて、扉を開錠させる。普通ならここまでの動作だけで、部屋にへと入る事ができる。


だが、それだけでは終わらない。この部屋に付いている鍵は、一つだけでは無い。


少女は挿した鍵を抜き取ると、今度は別の鍵を手にし、もう一つある鍵穴にへと挿した。


そして先程と同じ様に開錠した後、挿した鍵を抜いてポケットの中にへとしまう。


更には別の位置に付いた鍵二つを、彼女はその手でガチャリと音を立てて開けていく。


鍵を使わずに手で開錠できるのは、それが鍵穴の裏側であるからだった。


合計して四つの鍵を開けると、少女はドアノブをギュッと掴み、扉をゆっくりと開いた。


部屋の中に入ると、そこは辺り一面をコンクリートの床と壁で覆われた灰色の世界。


地下である為に日の光は入ってこず、室内を照らすのは無駄に明るいLED照明のみ。


じめじめとした空気、倉庫として使われてきた過去もあり、全体的に薄汚れた印象の空間。


その空間の中央。ぽつんと置かれた机の奥に人影が一つあった。


7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/02(木) 07:34:09.38 ID:yaYFtgev0
人影―――椅子に座る壮年の男は目の前の仕事を黙々とこなしており、余程に集中しているのか、少女が入ってきた事にも気づいていない様子。


少女はそれを確認すると、直ぐにでも彼の下にへと駆け寄りたい欲求を抑えつつ、まずはとばかりに振り返って入ってきたばかりの扉と向かい合う。


開錠をしたのなら、施錠もするのも当然。彼女は入った時と同じ動作で、逆に四つある鍵を全て閉める。


加えてチェーンロックまで掛け、自分以外の誰かが外部から入ってこれない様に仕掛けた。


「……よし」


そこまでしてから少女はまた振り返ると、恐る恐るという足取りで男にへと近づいていく。


これは緊張からくるものでは無く、恐怖によってのもの。


そして彼女は机の前に立つと、只管と仕事に没頭している男に向けて声を発した。


8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/02(木) 07:35:10.89 ID:yaYFtgev0
「……お、お疲れ、様……T、さん」


「……」


少女が声を掛けるも、男から返事は返ってはこない。


しかし、目の前で声を掛けられてようやく存在に気がついたのか、男は作業をする手を止めて顔を上げ、少女と視線を合わせる。


顔を上げた事で照らし出されたのは、白髪の混じった黒髪に少しやつれ気味の両頬。


Tと呼ばれた男の相貌は実年齢よりも老けて見え、目元にはどす黒いクマが浮かび、まるで幽鬼の様な顔をしていた。


「……奈緒か」


Tは疲れ果てた口調で少女―――神谷奈緒の名を呼び、それから深くため息を吐いた。


「一体、何の用だ」


尋ねるには似つかわしくない強めの口調で彼はそう言った。


そう口にする言葉の裏に、はっきりとした拒絶の意思が込められている事を奈緒は感じ取った。


9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/02(木) 07:37:44.36 ID:yaYFtgev0
話し掛けて欲しくない、関わらずに避けて欲しい、と彼が思っている事は十分に理解はできた。


だが、そうしたTの思いを踏まえた上で奈緒は話を続ける。これは男の為だと自分に言い聞かせて。


「いや、その……ちょ、調子はどうかな……? って、思ってさ」


「……調子がどうか、だと?」


その質問を聞いた途端、Tの眉間にギュッと皺が寄る。


それからハッと鼻で笑った後、吐き捨てる様にしてこう口にした。


「お前にはこれが、良い様に見えるのか? こんな牢獄の様な地下室に閉じ込められ、延々と仕事をこなすだけの日々を送る私の姿が」


「そ、それは……」


奈緒は何かを言おうとするが、その後に続く言葉は出てこないし浮かばない。


Tからの問い掛けに彼女は答えられず、口を一文字にして噤んでしまう。


10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/02(木) 07:40:18.83 ID:yaYFtgev0
「……ははっ、そうだよな。見えないよな。こんな姿が良く見えるのであれば、そいつは最高の馬鹿だ」


そんな彼女の様を見てか、Tは嘲笑ってからそう言った。


「用事はそれだけか? なら、早く帰ってくれないか。仕事の邪魔だ」


更にそう付け加えた後、Tは視線を奈緒から外し、作業を再開し始める。


書類上にペンの走る音、紙を捲る際に生まれる乾いた音、カタカタとキーボードを叩く音。


言葉の無くなった世界にそれら三つの音が鳴り響き、辺りを徐々に支配していった。


「……ま、待って!」


だが、それらの音に抗うかの如く奈緒は声を発した。まだ話は終わっていないとばかりに大きく声を上げた。


しかし、作業を続けるTの手は止まらない。彼女の声には全く耳を貸さず、視線すら合わせない。


そんなTの否定的な態度を目の当たりにし、奈緒の心は傷つきずきりと痛みが走る。


11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/02(木) 07:45:08.24 ID:yaYFtgev0
あまりの辛さに涙が浮かび上がり、その場で泣き出してしまいそうだった。


が、それでも。それでも奈緒は泣き出しそうになるのをグッと堪えて、目の前の男に向けて言葉を続けた。


「ちょっとは、休まないか……?」


「……」


「Tさん……働いてばっかりで、疲れてるだろ……? 少しは息抜きでも……」


「……」


「ほ、ほら。あたし……今日はこれを持ってきたんだ」


無視される事に応えつつも、奈緒はそう言ってから鞄の中を漁り、そして目的の物を取り出す。


12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/02(木) 07:45:39.19 ID:yaYFtgev0
「アニメのDVD……だけどさ、けっこう面白い内容なんだ」


クリアケースの中に納められ、中央に小さく丸い穴の開いた一枚の薄っぺらい円盤。


表面にポップなタイトルロゴとキャラクターの描かれたそれを、彼女はTに見える様に掲げてみせた。


「きっと、Tさんも気に入ると思うし、だから……」


「奈緒」


作業する手を止め、懸命に言葉を続けようとする奈緒の声を遮り、Tは彼女の名前を口にした。


話の途中で腰を折られた奈緒はハッとなった後、それ以上は言葉を続けず、彼にへと視線を送る。


そこで見た彼の表情は、能面の様な凍りついた顔。


何も感じていない様な冷ややかな表情を目にし、奈緒の瞳には若干の怯えの色が入り混じる。


そんな奈緒に向けて彼ははっきりとこう告げたのだ。


「いい加減にしてくれ」


13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/02(木) 07:47:06.03 ID:yaYFtgev0
「気が散って仕方ない。早くここから出て行くんだ」


有無を言わさない強めの口調で、Tは奈緒に言葉を浴びせる。


「……何で、何でだよ……」


奈緒は縋り付こうとTに向けてそう問い掛けるが、彼から返答は返ってはこない。


彼は奈緒の顔を見ようともせず、書類に目を落としながらただただ黙っているだけだった。


「何で、そんな事言うんだよ、Tさん……」


Tの酷薄な態度にショックを受ける奈緒。


そして遂に堪え切れなくなったのか、彼女の瞳からは大粒の涙が零れ落ちる。


涙は幾度となく湧き上がり、幾度となく頬を伝っていき、彼女の顔を汚していく。


しかし、そんな奈緒の姿を目にしてもTは動じなかった。


泣きじゃくる彼女を宥めようともしない。何かしら声を掛けて落ち着かせようともしない。


徹底的に神谷奈緒という少女の存在を無視し、その心には何も響かなかった。









……の様に見せ掛け、彼はそう振る舞うのであった。


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