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【ミリマスSS】桃子「あなたに歌えば」
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1 :
◆uYNNmHkuwIgM
[saga sage]:2017/10/31(火) 22:22:06.27 ID:sIBhOQZK0
元ネタ
『singin' in the darling(終わりのテーマ)/青木佑磨』
『嘘/学園祭学園』
『ココロがかえる場所/LTP12』
『茜ちゃんメーカー エピローグ』
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1509456125
2 :
◆uYNNmHkuwIgM
[saga sage]:2017/10/31(火) 22:22:33.84 ID:sIBhOQZK0
『誰かが見た夢の中 それは幸せな』
3 :
◆uYNNmHkuwIgM
[saga sage]:2017/10/31(火) 22:23:39.35 ID:sIBhOQZK0
こんな日が来ることはわかってた。
桃子はアイドル。アイドルって『偶像』って意味なんでしょ?
偶像って、言っちゃえば『嘘』みたいな存在。
桃子が喋るたびに流れるテキスト。画面を叩けば流れるポーズを決めたアイドル。再生ボタンを押せば流れる歌。
嘘の世界で、嘘の夢を嘘みたいに抱きしめて、でも確かに桃子はそこで生きていた。お兄ちゃんもそうだったでしょ?
でもきっと、続けてきた嘘も最後。ふっと息を吹きかけると、ロウソクの火みたいにあっさり消えちゃうんだ。
だから桃子は嘘をつき続けるよ。次もまた笑って出会えるように。
4 :
◆uYNNmHkuwIgM
[saga sage]:2017/10/31(火) 22:25:13.18 ID:sIBhOQZK0
いつもの劇場。
次のライブに向けてレッスンする桃子たち。みんなの顔つきがいつもと違う。きっとわかってるんだね、このライブの意味。
レッスンルームの扉が開いて、いつもの見慣れた顔が見える。頭にはやっぱり寝癖。もぅ、桃子が何回言ってもこうなんだから。
お兄ちゃんの挨拶を聞きながら、ツカツカと近づく。
桃子「おはよう。お兄ちゃんまた寝癖ついてるよ!身だしなみはきちんとして!桃子のプロデューサーなんだから!」
お兄ちゃんはすまんすまんと苦笑いして頭をぽりぽりとかく。いつもの朝のやりとり。うん、桃子の演技はやっぱりカンペキ。
5 :
◆uYNNmHkuwIgM
[saga sage]:2017/10/31(火) 22:27:46.24 ID:sIBhOQZK0
レッスンの次はドラマの撮影に行く。
シアターの駐車場までお兄ちゃんと歩く。お兄ちゃんの歩幅は桃子よりもずっと大きい。結局この歩幅の差は縮まらなかったけど、このリズムがとても心地よかった。
お兄ちゃんはライブの後の新しい予定について嬉しそうに話す。クマさんのぬいぐるみのCMのお仕事、お菓子の販促キャンペーンのお仕事、お仕事の合間にはみんなを遊園地に連れて行ってくれるみたい。
ひとつひとつの予定に耳を傾けて想像する。うん、どれもステキな予定。桃子はお仕事も遊園地も全部楽しみたいな。
ズキッと心が痛む。お兄ちゃんにはバレないように、しっかりと前を向いて歩く。
桃子が演じたドラマじゃ、こんな時にキセキが起こるんだ。最後のステージを見たお兄ちゃんは全部気がつくの。それで世界の崩壊は防がれて、ラストシーンじゃ2人遊園地の観覧車の中で嬉しそうに笑うの。
じゃあ桃子は頑張らないとね。カンペキに歌って踊って、お兄ちゃんの心に届けるの。終わって欲しくないし、続いて欲しいから。
決意を込めて歩幅は大きくなる。お兄ちゃんと歩幅を合わせて、ぴったりと隣を歩く。
6 :
◆uYNNmHkuwIgM
[saga sage]:2017/10/31(火) 22:28:46.88 ID:sIBhOQZK0
そしてライブの幕は上がる。
みんなで円陣を組んで、ブーってブザーが鳴って、暗い袖からピカピカ輝くステージに飛び出してく。
目の前にライトの海が広がる。桃子がわーってあおると、その海にばーって波ができる。
お客さんの盛り上がりも最高!絶対に良いライブになるって確信する。
7 :
◆uYNNmHkuwIgM
[saga sage]:2017/10/31(火) 22:30:42.14 ID:sIBhOQZK0
それぞれのソロに移って、桃子は出番をモニターの前で待つ。
トントンと肩を叩かれて振り向くと、お兄ちゃんが飲み物を持って来てくれたみたい。
ありがとうって受け取って、ゴクリと少しだけ飲む。お兄ちゃんを見ると、ひとつも緊張なんてない穏やかな顔だった。
何年か前はすっごい緊張してアタフタしてて『お兄ちゃんがそんな顔してたら、アイドルのみんなも緊張しちゃうからちゃんとして!』なんてお説教したこともあったっけ。
ずっと一緒に歩いて、桃子はすっごく成長できた。それはお兄ちゃんも一緒なんだねって、少し嬉しくなる。
きっとまだまだ、桃子もお兄ちゃんもやり残したものもやりたいこともたくさんある。これからもひとつひとつ叶えていきたい。
桃子「お兄ちゃん、桃子のステージちゃんと見ててね」
だから、これまでの桃子を全部ステージに置いてこよう。キセキが起きても起きなくても、絶対に後悔だけはしたくないから。
8 :
◆uYNNmHkuwIgM
[saga sage]:2017/10/31(火) 22:33:26.76 ID:sIBhOQZK0
曲は『ココロがかえる場所』。ユニットの曲だからソロで歌うのは初めて。
ひとつひとつのフレーズに心を込める。ステージにいるはずなのに、目の前にはたくさんの風景が浮かぶ。
いちばんに浮かぶのはやっぱり最初の日。目の前のダメダメなお兄ちゃんにため息ついて、小言を言ったっけ。なんだか、今も変わってないね。
でも最初から、ほんのちょっぴりだけは信頼してたんだよ。この人は桃子のために頑張ってくれるかもって。それは全然変わったね。ありがとう。
次に浮かぶのは雪歩さんの熱い体温、ロコさんと千鶴さんの優しさ。自分のことばっかで、ダメダメだった桃子を許してくれた。
だからね、桃子は優しくなれたんだ。桃子は1人じゃないって気がついたんだ。ありがとう。
景色はレッスンルームに変わってく。のり子さんが怒ってる。奈緒さんと亜利沙さんがなだめてくれて、春香さんが手を差し伸べてくれた。
桃子ね、知らなかった。あんなに家族ってあったかいって。初めて人を頼ることは恐くないって知ったんだ。ありがとう。
まだまだいろんな景色は流れる。まだすべてが未来系だった日々。それが今じゃみんな過去形で、あったかさに切なさが混じって気持ちがぐちゃぐちゃになりそう。
桃子はそのままそれを声に乗せる。過去と未来をぐちゃぐちゃに丸めて、今に全部叩きつける。
忘れたくないよ全部の過去を。無くしたくないよ全部の未来を。お願い、キセキ、起こって。
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