【艦これ】提督「クソッタレな世界を」長門「生き残るために抗おう」【安価スレ】

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1 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 15:51:39.42 ID:5kjN12kv0
このSSは、なんやかんやあって深海棲艦化した艦娘(深海棲艦含む)と仲良く過ごしていくスレです。

>>1は、16夏から先のことはよく分からないのでその辺りをご了承ください。

安価を出すところまでは書き溜めておりますので少々お待ちください。ウォスパ可愛い。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1509259899
2 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 15:52:31.20 ID:5kjN12kv0
「――全軍に、告ぐ。未来のため、に、命を棄てて、くれ」

声が震える。だが、それでも言わなければならない。

後ろには、下卑た笑みを浮かべる海軍大将と、銃をこちらへと向けている憲兵が。

軍の規律を守るための憲兵が個人と癒着しているなど破綻している。そう心の中で愚痴るが、何も変わらない。

玉砕命令が出されたことで、無線からは困惑の声が聞こえてくる。

――無理もない。突然『死ね』と命令されて『はいそうですか』となるわけがない。

いくら造られた存在の艦娘だとしても、心はある。彼女らは機械では、兵器ではないのだ。

だが、そう思っているのは自分だけ。他の人は道具としか思っていない。

どうしようもない事実がそこにある。

「――それは貴方の意志で出す命令か?」

胸を突き刺す冷たい声――我が鎮守府の艦娘の総括を務める旗艦『長門』のものだ――が無線から届く。

――怖い。

今まで苦楽を共にしてきた仲間から拒絶されるのが。

――だが、今自分がやったことが『それ』と同じことだ。

だから受け止めなくてはならない。

「どうした?提督」

「――ああ、俺自身の意志で出す命令だ」

――国のために、死んでくれ――。
3 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 15:53:34.78 ID:5kjN12kv0
言い切った。言ってしまった。

涙が止まらない。こんな命令を出す自分が惨めで。

死を恐れるあまり、仲間を切り捨ててしまった自分が愚かで。

「――了解。私たちが暁の水平線に勝利を刻む礎となろう」

優しく返された長門の声を最後に、無線から聞こえる音はノイズ一色となった。

心が壊れた音がした。

立つことすらままならず、地面に崩れ落ち、泣いた。ただひたすらに。

邪悪な笑い声が後ろから聞こえる。

――こんな世界、壊れてしまえばいい。

そして今世界を、自分を、呪った。
4 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 15:54:37.39 ID:5kjN12kv0
軍が所有する島への航路中。提督は甲板でただぼうっと突っ立っているだけだ。

「災難だったなぁ。部下が皆おっちんじまうなんて」

憲兵が近づいてきて嘲る。心底楽しそうな笑みを浮かべて。

「黙れ」

「あんたが悪いんだよ。深海棲艦の生態調査と嘯いて治療なんかしてさ」

「黙れ」

「大将の言う通りにしてればこんなことにはならなかったのになぁ!」

憲兵に腹を蹴り飛ばされる。もう暴力による痛みなど感じなくなった。

これは自分に対する罰。長門たちを死なせておいて、のうのうと生きている自分への。

「ほら立てよ。軍人ならシャキッとするべきだろ?」

言葉に従い立ち上がろうとする。同時に、空に暗雲が立ち込めてきた。

「はぁ。時化ってくるとかふざけんなよなぁ」

「そんな予報は無かったな」

「こりゃ揺れるな。あと少しで到着だったのに…ったく」

表向きには、天皇陛下から受け賜った艦隊を喪った罰として流刑されていることになっている。

――実際には、ただ秘密裏に行われる処刑でしかないのだが。

「ん?通信か。はいこちら警備部隊。…は?電探に感アリ?」

刹那、船体が大きく揺れる。

「つっ!」

「え…?あぁ…うわああぁぁぁあ!」

提督は衝撃に耐えられず甲板を転げ、憲兵は海へと投げ出された。

その後、砲撃が憲兵の落下地点に落ち、紅く染まる。

「深海棲艦か…!」

深海棲艦が現れる時、一定範囲の海域が時化るのだ。

このタイミングで出現したということは、当然だろうがこの船の撃沈だ。

どう足掻いても、ここで死ぬ。

人類では、艦娘に勝つことすら出来ないというのに、個々の性能で艦娘に数段勝っている深海棲艦に勝てるはずがない。

そして船に数発の魚雷が直撃、輸送船は爆沈した。
5 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 15:55:29.78 ID:5kjN12kv0
水底へと沈む体。肺の酸素が、次第に増していく水圧で押し出される。

歪んだ視界が捉えた幾重もの光。そのどれもが蒼い輝きを放っていた。

――予定よりは早く死ぬな。まぁ、自業自得ではあるか。

提督は嘗ての行いを振り返り自嘲する。『部下殺し』を犯した自分は死んで当然だ。

自分を信じて戦ってくれていた部下を見殺しに、いや『死ね』という命令を下した。

自分の命が惜しかった。ただそれだけで。

――何級だか知らないが、殺すならサクッと頭を潰してくれ。

然るべき報いが来ることを内心歓喜しながら、ニヤリと笑う。

――俺は痛いのが苦手でね。

意識が保てない。既に、脳への酸素の供給は止まっていた。このまま放っておいても、自然に命を落とすだろう。

――ドザエモンにする気とはえげつないな。苦しいじゃないか。

化けて出てやる、と死の間際に冗談を言い、意識を手放した。

――眼前にいた、白髪の女性に妙な既視感を覚えて。
6 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 15:56:58.17 ID:5kjN12kv0
――思えば、昔から自分は駄目な人間だった。

病弱な母の手助けもせず、部屋で本を読んでばかり。

学校では誰とも話をすることがなく、いつも図書室の片隅で本を読んで隠れていた。

気に掛けてくれた先生を避け、学校から逃げ出すこともあった。

本を読んで、勉強も怠ってはいなかったのに、秀才と言われるほどの頭も無かった。

そう、自分はどんなに頑張ろうと凡才でしかなかった。

実際には凡才以下だったのだろうが。

そして、無意義に過ごしていたある日、大本営から『赤紙』が送られてきた。

今まで迷惑を掛けた罪滅ぼしに、と軍属を選ぼうとする自分を母は必死に止めた。

だが、そんな母を振り払って海軍へと進んだ。その時の泣きじゃくる母の顔は、今でも忘れることができない。

どうしてその時母は泣いていたのか、今なら分かる気がする。

きっと母は、寂しかったのだ。

――今の自分ですら、寂しいのだから。

ただでさえ病弱で、夫はいなかった。そして、唯一の子供である自分が外に出ていく。

病弱なせいで心細かったであろう母に対する最低な親不孝だろう。

今、親不孝を重ねているのだが。

親より早く死ぬなど、それこそ最低だ。殉職手当で補えるものではない。

――どうしようもない息子でごめん。

それが、自分の言える懺悔の言葉だった。
7 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 15:58:05.22 ID:5kjN12kv0
海軍兵学校に入学して、一番に驚いたのは、艦船に乗って戦うのではなく、『艦娘』という船の魂――船魂という――を宿した少女たちを率いて戦うことだった。

実際に鎮守府に派遣され、眼にした少女はあまりにも非力に見えた。

その数瞬後にはバーベルのように持ち上げられていたが。

必死に采配を考え、引き際を見極め、何とか艦隊を維持してきた。

何度目かの大規模作戦の後。静かな夜に合わせるかのように、それは流れてきた。

「ウ…ァ…」

白い髪をした女性が砂浜に倒れていた。デスクワークの気晴らしに、と歩いていた時に、それと出会った。

「グゥ…!」

女性は立ち上がり、よろめきながらもこちらを睨む。しかし、また地面に倒れ伏す。

素人目に見ても酷い傷をしていた。頬には深い切り傷があり、全身の四割ほどが煤けていた。

恐らく戦闘で負った傷なのだろう。そして、態度からして彼女が敵だということはよく分かる。

「ウ…ウゥ…」

何度立ち上がろうとしても、手、足に力が入らないのか震えてばかりの女性。

敵なら助ける道理はない。だが、見捨てたら人として終わってしまう気がした。

「立てるか?…無理、だよな」

「触ル…ナ…」

この傷でよく意識があるな、と感心しながら、女性を背負う。

「っつつ…。文系にはしんどいな」

「ヤ…メ…」

体をもぞもぞと動かして、細やかな抵抗をする女性。

だが、傷ついた体では満足な抵抗も出来なかった。

「…辛いんだろう。だから助けるだけだ」

「これは、俺個人の意志で行うことだから。大丈夫、酷いことはしないよ」

「ウ…」

提督がそう言うと、抵抗を止める女性。無駄だと判断したのだろう。

満月の浮かぶ空を見て呟く。

――今日のことは一生忘れないだろうな。
8 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 15:58:44.15 ID:5kjN12kv0
眼が覚めると眼前には綺麗な天井が映っていた。

――ここはどこ?

女性――空母ヲ級――は思考する。

提督と思しき男性に背負われたところまでは憶えている。しかし、その記憶と今の状況が結び付かなかった。

――牢屋には見えない。恰好もおかしい。

清潔な白一色に染められた部屋。右腕には点滴の針が刺さっており、捕虜の恰好とは思えない。

ここは医療施設だ。まさか、あの男が――。

思考は、扉の開かれた音で中断された。

「…良かった。起きてたんだな」

ヲ級は訝しむ。男の手の上にあるトレーの中身は何なのか推察する。普通のオートミールなのか、それとも毒入りのものなのか。

「…警戒して当然か。ちょっと待ってて」

男――提督――は、その考えを見透かしているかのように行動する。

一口、そのオートミールを口にする。

「毒入りじゃない、と理解してくれればいいんだけど、な…」

自分よりも体の弱い男が食べたのだ。毒は無い。そう判断してヲ級は受け取る。

「…行動デ示シテクレテアリガトウ」

男は驚いたような顔をするが、すぐに微笑み答える。

「どういたしまして」

――彼なら信じてもいい。

些か早計だ、と心の片隅では思っていながらも、目の前の男が嘘を吐けるほど出来た人間ではない、と考える。

――なら、今はその好意に甘えよう。

口にしたオートミールは優しい味わいで、とても美味しかった。
9 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 15:59:33.38 ID:5kjN12kv0
「ドウシテ貴方ハ提督ニナッタノ?」

それは素朴な疑問。

提督は、ばつが悪い顔で答える。

「――逃げたかったんだろうな。きっと」

「逃ゲタカッタ?」

ヲ級はもう一度問う。しかし、返答は無かった。

「…ゴメン」

「君が気にすることじゃないよ」

提督は頭を撫でる。ぎこちなくはあったが、そのぎこちなさが心地良い。

「体は大丈夫か?」

ヲ級は首を横に振る。

「そうか…」

提督の顔が険しくなる。無理もない。今の彼は敵を匿っている反逆者だ。大本営にバレてしまえば銃殺刑は免れない。

「モシモノ時ハ、私ヲ殺セバイイ」

どうせまた生き返る、と言おうとしたところで、遮られた。

「殺すとか殺されるとかは嫌なんだ…。それに、君とこうして話が出来ているんだ…。なら、きっと他の人とも…」

――ああ、彼は優しすぎる。

ヲ級は思った。優しいが故に、非情になり切れないのだと。厳しく出来ないのだと。

「貴方ハ優シイネ。デモ、ソレガ貴方ノイイトコロ。無クサナイデネ」

貴方のそういうところが私は好きだから、と続けたら、提督は涙を流した。

「そんなことを言ったのは…。君と長門だけだよ…」

それは嬉し涙ではなく、虚しさから来る涙だったことをヲ級は知らない。
10 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 16:00:44.32 ID:5kjN12kv0
ヲ級との対話を終え、部屋を出る提督。すぐ傍の壁には、長門が寄りかかって立っていた。

「…すまない長門。このことは内密に…」

対する長門は平然と言い放つ。

「はて、何のことやら。私が見たのは、怪我をした民間人の手当てをする優しい提督だけなのだがな」

「え…?」

「ほら、食器は私が洗っておくから提督は休むんだ。彼女のことが気になって碌に寝てないだろう?」

――これが、連合艦隊旗艦の、日本を背負っていた艦の器の大きさか。

伊達ではない、と内心感嘆しながら、謝辞をする。

「ありがとう…。このお礼は今度必ず…」

「ふふふ。それなら今度酒でも共に嗜もうか」

「それくらいならお安い御用だよ」

手を振り給湯室へと歩いていく長門を見送る。

――やっぱり、長門には敵わないな。
11 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 16:02:09.05 ID:5kjN12kv0
――懐かしい記憶だ。

これが俗に言う走馬燈なるものなのだろう。きっと目を開けば閻魔大王とご対面だ。

さあ、どんな地獄を宛がわれるのか楽しみだ。

目を開くとそこには――。

――苔生した岩が見えた。

理解が追い付かない。たしかにあの時死んだはず――。

――意識を失っただけか?

だとすればここはいったい。

纏まらない思考を纏めようとするが、余計に悪化していく。

しかし、すぐ傍にいた『それ』を見た瞬間、思考が全て止まった。

「…ふふふ…。目が覚めて良かったよ」

「長…門…!?」

間違えたのかと思った。だが、間違っていなかった。あの時既視感を覚えた『それ』は、長門だったのだ。

「その…恰好は…」

綺麗だった長い黒髪は真っ白に。その亜麻色の瞳は朱色へと変わっていた。

「既に私『たち』は艦娘から離れた存在でね。深海棲艦に近い存在なのさ」

「――おれの所為か」

「原因としてはある。だがそれはきっかけでしかないよ」

これは私『たち』の意志だ。長門ははっきりとそう答えた。

「俺が悪いんだろう!憎いんだろう!ならば殺せ!それでお前たちが救われるなら喜んで…」

「――私『たち』は恨んではいないよ。寧ろ、貴方を救いにきたんだ」

「――」

「む…。頭がパンクしてしまったか?なら、一つ一つ教えていこうか」
12 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 16:03:01.10 ID:5kjN12kv0
「――まず、提督が無理していたのは全員にバレていたよ」

やっぱりか、と提督は落ち込む。あれほど声が震えていたのだから、当然かもしれないが。

「いや、寧ろバレて正解だったさ。もし、貴方自身が出した玉砕命令だと判断したなら、私たちは純粋な深海棲艦になっていたよ」

理解が追い付かない。大本営のデータベースには『沈んだ艦娘は全て深海棲艦と化す』と記されていたのだから。

「あながち間違いではないな。厳密には、憎悪や虚無感といった負の感情を抱いたまま沈めば『そうなる』のさ」

「私たちの心にあったのは『貴方を救いたい』という想い。それだけだ」

「…俺を救う理由なんて無いだろう…」

提督は、消え入りそうな声で呟く。その心は、もう壊れていた。

たとえ、信頼している人に再会しても、彼女らを裏切った自分の罪は消えない。

寧ろ、そんな愚かな自分を許容する彼女らを見て、どれほど愚かな存在だったのかを痛感させられている。

「…なら、なぜ貴方は泣いていたんだ?」

「それは――」

言いたくても言えなかった。男としてのプライドという、醜いものがそれを許さない。

「そんな顔をするな。抱きしめたくなってしまうよ」

クス、と女の子のような笑みを浮かべる長門を見た、提督の心は限界を迎えた。

「抱きしめろ。そして、そのまま縊り殺してくれ」

もう生きたくない、辛い思いをしたくない。提督はそうはっきりと言った。

「――生きるということは、苦しさの連続だよ。艦としての記憶が殆どの私が言うのも何だがな」

長門。日本を背負い、いや、背負ったが為に戦うこと――兵器としての使命を果たすこと――が出来なかった。そして、最期は水爆の標的艦にされ、水底で眠りについた。

そんな彼女が言う苦しさは、常人の考えられるそれではない。だが、提督の心は悲鳴を上げる。

「貴方は、私たち『兵器』を『人間』として見てくれた。『人間』として生きることの歓びを教えてくれた」

「私たちにとってはそれで充分なのさ。救う理由なんて、な」

壊れたはずの心が軋む。彼女らの想いを踏み躙ってもいいのか、と。

「…意味が分からないんだよ…!どうして俺を救おうだなんて…!」

提督の中では、彼女の言っていたことと、自分を救うことが結びついていなかった。
13 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 16:03:44.51 ID:5kjN12kv0
「なに、単純な推理さ。提督が出すような命令ではなかったからな。脅迫されている、と考えれば、あの行動にも納得がいく」

「態々全滅させるんだ。貴方を殺すための口実作り、といったところだろう」

淡々と進めていく長門。しかしその目は、真っ直ぐに提督を見つめていた。

「私は、貴方が殺されることなどあってはならない、と思っているからな。それに――」

――彼女たってのお願いだ、断れんよ。

と続けた。すると、岩陰から顔を出す女性が一人。

「君は――」

そこにいたのは――。

「わ…私のこと…。憶えて…る…?」

――間違いない。この頬の傷痕を持つ女性など一人しか知らない。

「ヲ…級…!?」
14 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 16:04:20.38 ID:5kjN12kv0
「私の名前ってそっちだとヲ級なんだ…。私に名前なんか無いんだけどね」

でも憶えてくれてて良かった、と微笑むヲ級。

「まぁ、敵として戦っていた以上、識別する必要があるからな」

そこに、提督が『ヲ級』と呼んだ理由を説明する長門。

ヲ級は納得したようで、本題を切り出す。

「私、あそこを逃げ出してからずっと提督を見てたの」

「もし、命に危険が及んだ時に助けてあげられるように」

「そして、長門たちが沈んだから提案したの」

――私たちと一緒に提督を助けよう、って。

ヲ級は、はっきりとそう言った。
15 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 16:05:11.69 ID:5kjN12kv0
対する提督は未だに理解出来ないでいた。

「何で君まで俺を助けようとするんだ!」

――理解は出来ている。だが、納得したくないのだ。

どうしようもないほど愚かな自分を助けようとする人がいることを。

「私は言ったよ。貴方の優しさが好きって」

「私は貴方の優しさに救われたから。だから、今度は私が助ける番なんだ」

「――」

もう嫌だ。彼女らに自分の存在が肯定される度に、自分を否定したくなってしまう。

「…まったく、世話の焼ける方だな」

呆然と立ち尽くす提督を、抱きしめる長門。慈愛に満ちた声で、優しく囁く。

「たとえ姿が変わっても、私は私だ。貴方を慕い、貴方を愛し、貴方のために戦う、長門型一番艦。連合艦隊旗艦の長門だ」

「それでも、貴方が私たちを拒むのならそれでいいよ。だけど――」

――自分を否定するのだけはやめてくれ。

言った。言い切った。一切の隠し事をせず、本心を伝えた。

提督は、それを拒もうとした自分に嫌悪感を抱いて、泣いた。

「ごめんな…。ごめんな…!長門…皆――」

――情けない提督でごめんな。

長門は微笑み、答える――。

――情けなくなどない、人間らしくていいじゃないか。

「うあぁ…。ああぁぁぁあ…」

枯れたと思っていた涙が、また目から流れていく。

壊れていた提督の心が、少しだけ癒えた。
16 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 16:05:56.13 ID:5kjN12kv0
涙は止まり、心は落ち着いた。冷静になった提督は、話を切り出す。

「…俺を助けた理由は分かったよ。だけど、目的が分からないんだ」

「目的は、提督と共に生きることさ。後は貴方の指示に従うだけだ」

即答する長門を見て、提督は苦笑する。

「欲を出してくれた方が嬉しいんだがな。俺は君たちに償いがしたいんだから」

「それなら、私たちと一緒にいると約束してくれ。別れるのは辛いからな」

またもや即答。

「…それ前提での話なんだが」

提督は頭を抱える。話が一向に進まないのだ。

「そうだ。私の仲間を紹介するね」

突然、手を叩いたヲ級がそう言った。

「仲間…って深海棲艦の方たちか?」

「うん」

ヲ級は当然のように頷いて肯定するが、提督の心には不安がよぎる。

「…深海棲艦化した長門たちはまだいい。完全に敵の立場の俺は排斥されるんじゃないか?」

提督の疑問はもっともだ。現時点で、提督が味方だと証明できるものはない。

元艦娘の娘らが証言することで、証明することは不可能ではないだろうが、失敗する確率が高い。

だが、ヲ級はその考えを否定する。

「私が逃げた時に助けてくれた仲間だから大丈夫。怖がらないで」

提督の顔を胸に沈める、ハグのおまけつきで。

「分かった。分かったから離してくれ」

必死にもがいて抵抗する提督。その光景を見ている長門はただ、微笑んでいた。
17 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 16:06:33.79 ID:5kjN12kv0
「…君が言うことなら、信用するしかないな」

「ありがとう」

解放され、手で顔を隠しながら提督は言う。それに対して、ヲ級は平然と答える。

「しかし…。これからどうすればいいんだろうな…」

ため息を吐き、岩の隙間から見える水中を眺める。

この場所は異常だと理解できた。少なくとも、水面から射す光量から見て数百m以上の水深の場所に、ここは位置している。

眼前の光景から、ここが水中にあることも理解できるが、水が入ってこないことが疑問だ。

「水が入らない理由は、空気の膜で隔絶しているからさ」

「ナチュラルに心を読まないでくれ」

長年の付き合いだ、と言う長門を見て頭を抱える。考えが読まれるって辛い。

「この場所は、鎮守府の施設を再現してる場所だよ。もう鎮守府と呼んでいいと思う」

そうか、と返し、この後どうするかを考える。

海水でベタベタになっていると思った体は、綺麗になっている。

おそらく、誰かが風呂に入れたか、体をタオルで拭いたりしたのだろう。

――迷惑を掛けたな。

そう心の中で謝罪し、行動を考えるがなかなか纏まらない。

出来の悪い頭が恨めしく感じた。


どうする?ナニする?↓2
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/29(日) 16:08:00.62 ID:hly1S63Ro
長門以外の艦にあえないか?
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/29(日) 16:14:04.58 ID:8vzxwIhD0
上で
20 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 16:18:01.43 ID:5kjN12kv0
誰に会いたい、とかのリクエストがあれば直下にどうぞ。無ければ自分の鎮守府から何人かピックアップします。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/29(日) 16:22:44.78 ID:DpZn0rmUo
陽炎
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/29(日) 16:23:34.78 ID:zbGFGW6ao
羽黒
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/29(日) 16:23:37.99 ID:hly1S63Ro
お任せします
24 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 16:49:02.68 ID:5kjN12kv0
十分ほど考えて、ようやく思いついたのが他の艦娘と会うことだ。

だが、まだ長門とヲ級しか見ていない提督としては、他の娘の安否を確認したいのだ。

提督は立ち上がり部屋を出ようとするが、ここがどこなのかすら分からない。

立ち上がった提督を見て、長門とヲ級は部屋を後にする。

その時に長門がアイコンタクトをする。

――貴方に会いたい娘がいるから、待っていてくれ。

提督は首を傾げながらも、了解の意を示す。

椅子に座って、見慣れない天井を見上げる。お世辞にもいい光景とは言えない。

しばらくすると、ドアの付いていない入口から、大きな黄色いリボンが首を出す。

そして、ひょこっと顔を出し、笑顔を浮かべる。

例によって、髪色や瞳の色が変わっていたが、明るい雰囲気から誰かは理解できた。

「司令〜!やっぱり無事だったのね!」

小走りで近寄ってくる陽炎。

その目尻には涙が溜まっており、今にも零れだしそうだった。

「陽炎か…。あの時は済まなかった…」

提督は誠心誠意、深々と頭を下げる。

それを見た陽炎は、提督の頭を掴み、上を向かせた。

「別に私は怒ってないわよ。怒ってるのは…浦風ね。後で顔合わせしてあげなさい」

提督の表情が曇る。普段温厚な浦風が怒っているのだから、よっぽどのことだと思ったからだ。

しかし、浦風もここにいることが分かって内心、安堵していた。
25 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 17:17:20.31 ID:5kjN12kv0
「まったく…。司令の置かれていた状況を知っちゃったら、私は怒ったりできないわよ」

蒼白い瞳が、真っ直ぐに提督を射抜く。その視線に耐えかねて、提督は目を背ける。

「はぁ…。そんな後ろ向きな司令は好きじゃないわ」

陽炎は手を離し、踵を返す。そして、再度口を開く。

「早くいつもの司令に戻って。いつもの司令と楽しく話すのが、私は一番好きなのよ」

ばーい、と手を振り部屋を後にした陽炎。先ほどまで手が添えられていた頬に手を当て、提督は下を向く。

「情けないな…。何もしてあげられない自分が…」

陽炎の手が震えていた。心に深い傷を負っていたはずの陽炎に、励まされた。

しかし、自分はそんな陽炎に何もしてあげられなかった。

そんな自分が、情けなかった。

「…俺が生きてる意味は、あるのかな」

何も出来ない自分が恨めしい。

そんな気持ちを表す言葉が、無意識のうちに口から出ていた。

「…駄目だ。こんなことを言っていたら。前向きにならないと」

顔を数回殴り、思考をリセットする。

「…痛いな。憲兵に殴られた時は何も感じなかったのに。なんでだろうな」

心が少しだけ癒え、痛みを痛みと認識出来るようになった体が、危険信号を脳へと伝えた。

「どうすればいいのかな…。皆に許してもらえるには…」

赤くなった手を見て呟く。その言葉を、陽炎は聞き逃さなかった。

「司令が思い詰めることは無いでしょ…!悪いのは大将たちなんだから…!」

蒼白い瞳は光を帯び、海中へと向けられる。

「司令をここまで追い詰めた責任…。いつか償って貰うわよ…」

陽炎は音を立てず、部屋へと戻った。


Hey提督!次やることを教えてくだサーイ!↓2
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/29(日) 17:20:04.92 ID:ON/HAjfF0
味方の人数と拠点の確認
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/29(日) 17:32:01.37 ID:9XHi10X2O
28 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 17:33:22.89 ID:5kjN12kv0
拠点はどこにしますでしょーか。サーバー、地名、好きなものを直下にお願いします。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/29(日) 17:36:39.65 ID:ULEweRtK0
リンガ
30 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 18:02:57.93 ID:5kjN12kv0
※元々居た鎮守府は>>1のを流用します。


提督は、未だ深い闇に包まれている外を見る。

僅かな光が照らしているそこは、本でしか見たことがない神秘的な景色。

だが、自分一人ではそこには行けない。入った直後に水圧でお陀仏だ。

先ほどの陽炎の顔を思い出す。喜んでいるようで、悲しんでいるようにも見える表情を。

そんな表情をさせてしまった自分に嫌悪感を抱きながら、これからどうするべきか考える。

「色々と知らないとな…。ここのことも、皆のことも」

現時点の状況を理解しなければ、行動を起こすことが出来ない。

そう判断した提督は、長門を捜しに行く。

部屋を出て、廊下を歩く。上も下も、全てが苔生した岩で構成されている。

左を見れば、辺り一面に海があり、右を見れば岩がある――。

――見れば見るほど不思議な場所だ。

そんな思いを抱きながら、あてもなく捜し続ける。が、後ろから声を掛けられてそれは中断された。

「話は終わったようだな。どうだった?」

いつものように、余裕を持った表情を浮かべる長門とは対称に、提督の表情は険しい。

「…前向きになれ、と言われたよ」

長門は顎に手を当てて微笑む。

「当然だな。もっと前向きに考えるべきだ。貴方は」

その言葉を聞いて、提督の表情は曇る。

「忘れてしまったよ…。前向きに考えるのがどんな感じだったか」

「…言い方が悪かった。いつものように振舞ってくれたらいい、ということさ」

「…頑張るよ」

長門は提督の手を握り、先導する。その間に、長門は一言呟いた――。

――私たちの期待が、存在が重みになっているなら、哀れだよ。私たちも。
31 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 18:20:48.42 ID:5kjN12kv0
長門に手を引かれて辿り着いた部屋には、妙に小綺麗な机と箪笥があった。

「出来る限り、執務室を再現してみたんだ。どうだろうか」

周りを見渡すが、壁が岩であること以外は元鎮守府のそれと変わらない。

「…凄いな。ここまで再現出来るのは」

「駆逐艦の娘たちが張り切ったからな。褒めてあげてくれ」

そうする、と返事をし、机の引き出しを開ける――。

――元鎮守府ではそこに名簿が入っていたはずだ。

その考えは当たっていた。そこには、綺麗に整頓された艦船名簿が入っていた。

パラパラと流し見ていくが、変わっているところは写真以外にはない。

いや、深海棲艦の者が増えてるところは大きく変わっている。

「人数は…結構増えてるな。場所も、ここはリンガ付近か。だいぶ遠くまで運んだんだな」

「追撃から逃れるためさ。仕方ない」

元鎮守府はラバウル。激戦区として名高かったエリアだ。

「ん…?」

気になるページがあったので、少しだけ戻る。

そこには、給糧艦である間宮や伊良湖の書類まであった。

「…どうして彼女たちもいるんだ」

その疑問はもっともだ。給糧艦は、その性質上戦闘には出れない。即ち、轟沈しない。

沈むことがない彼女たちがいるのはおかしかった。

「元鎮守府からスカウトしてきたのさ。一人でも欠けているのは嫌だろう?」

「…本気過ぎて怖いよ」

ここまでキッチリと準備していることが何より怖かった。

――もし、ここで自分が断っていたら。

そう考えたら身震いする。

「…ますます引くわけにはいかなくなったな」

頭を抱え、ため息を吐く。そして、腹を括った。


照らす月の下で安価です!↓2

本日は一旦終了します。続きは夜11時頃です。
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/29(日) 18:28:26.69 ID:ET6Fn7UI0
旦乙
安価下
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/29(日) 18:35:00.44 ID:n8BAt1O0o
深海の子達ともコミュニケーション取っておかないとね
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/29(日) 20:20:22.90 ID:Zu6b0YhQ0
一旦乙
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/29(日) 21:50:04.31 ID:qBLoBvVFo
どうする?的な安価で進むってことは安価の取り方次第でクーデターを起こす戦闘スレにも単なるイチャイチャスレにもなるってことかな?手広いな
36 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 22:09:28.76 ID:NDO9ejrc0
>>35、どのように進めるかは自由です。イチャコラしてもよし、大将たちを滅☆殺してもよし、です。

陸上に上がって行動するのも可能だったりしますが、人数に制限が出ますわよ。

予定よりも早く用事が終わったので再開なのじゃ。
37 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 22:41:20.61 ID:NDO9ejrc0
執務室に設置されている窓からも、水中が見える。

間取りがどうなっているか気になっている時、後ろで物音がした。

振り返ってみると、本のように積み重なっている深海棲艦たちが。

「あ、あはは…」

一番下にいるのはヲ級。重くないのだろうか。

「…ふむ」

長門は、数秒ほど思考してから部屋を出ていく。

「仲間なんだ。仲良くしてあげるんだぞ」

どちらに言ったのか分からなかったが、もし自分に向けたものだったら、と思い提督は返事をする。

それと同時に、深海棲艦たちも返事をした。

お互いがお互いを見合わせ、沈黙が流れる。気まずい空気が漂う中、レ級と思しき少女が口を開いた。

「本当に長門たちの提督なのか?」

情けない提督だがな、と返事をするが、レ級は笑う。

「情けない…!ここから逃げ出してない時点で結構タフだよあんた…!」

腹を抱えて転げ回るレ級を見ていると、昔近所に棲み着いていた野良犬を思い出してしまう。

そして無意識に、レ級の頭を撫でていた。

「ぷっ…ハハハハ…!面白い人だなあんた!」

逃げ出してないから面白いのか、このような反応をしたから面白いのか。提督は判断出来ない。

不意にレ級は立ち上がり、自己紹介を始める。

「っと、自己紹介してなかったな。僕は…艦娘からはレ級って呼ばれてる。航空、砲撃、魚雷、潜水艦攻撃、何でもござれってね」

深海棲艦に名前は無いし、好きに呼んでくれていいよ、とレ級は最後に付け加える。

「名前が無い?」

疑問がストレートに口から出てしまった提督は、慌てて謝罪する。

「あはは、いいって。真実なんだから怒りようがないよ」

「僕たちは、他の娘を『こんな奴』っていう感覚で憶えてるんだ」

「だから、固有名詞が無いんだよ」

当たり前のように言っているレ級に驚く提督。

だがそもそもこちらだって、敵のことを容姿でカテゴライズしてる程度で、正式名称を知っているわけではない。

「ゴメン、一つ訂正。潜水艦がいたら砲撃できないや」

頭に手を当てて無邪気に笑うレ級だが、その戦闘力は異次元だ。

防空棲姫という化け物のことがあるので、霞んで見えてしまうが。

それでも強力な存在ではあるが、もしまた敵になったと考えるだけで、頭が眩む。

味方とはいえ、目的が分からない時点で最悪の事態を想定していなければならない。
38 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 23:01:25.98 ID:NDO9ejrc0
「…私も、名前はない」

次に口を開いたのは、こちらが『北方棲姫』と呼んでるものだ。

実際に見てみると、写真よりも幼く見える。

「よろしく…」

ペコリ、とお辞儀をする北方棲姫に対して、提督の表情は苦々しい。

それと言うのも、色々な特殊作戦で、三式弾を搭載した長門たちに攻撃をさせていたからだ。

昔、作戦とはいえ何度も傷付けてしまったから、気まずいのだ。

「あの時は仕方なかった。だから気にしてないよ」

「う…」

穢れない瞳で、真っ直ぐ見据えられて思わず目を背ける。

――どうして、皆俺を敵視しないんだ。

レ級が話し始めてから、和やかな雰囲気が漂い続けている中で小さく呟く。

心を読んだように、北方棲姫が話し始める。

「今の提督は、私たちにとって、あの時助けられたヲ級…で合ってる?と同じ」

「だから、私たちも助ける。これが恩返しだって、お姉ちゃんに教えてもらったから」

「――」

――無駄じゃ、なかった。

提督は涙を流しながら、思う。

もし自分が助けてなかったら、襲撃された時点で死んでいた。いや、そもそも襲撃も起きず、射殺されていた。

自分が正しいと思ってしたことが今、実を結んだことを理解して、涙が流れた。

「大丈夫…?」

心配そうに、下から見上げてくる北方棲姫に、大丈夫、とだけ伝える。

その目には、少しずつ光が戻っていく。提督の心も、少しずつ前を向き始めた。


私自身も…時々安価が要りますね。↓2
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/29(日) 23:04:31.33 ID:Zu6b0YhQ0
深海鎮守府の現状を知りたい、歩き回る
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/29(日) 23:06:56.11 ID:qBLoBvVFo
そもそも何で戦争してるんだ?
ってか攻撃してたことを気にしてるけど戦闘してたのと同個体なの?
41 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 23:18:22.87 ID:NDO9ejrc0
うーん…。こりゃどっちを拾えばいいのかな。>>40は安価というより、自分への質問な気がします。誰か助けて。
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/29(日) 23:19:49.54 ID:Zu6b0YhQ0
安価はその上にする
>>40にはきちんと答える

両方やればいいんじゃない?
43 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 23:27:13.10 ID:NDO9ejrc0
>>41、ではそうします。アドバイス感謝です。まずは返答から。

>そもそも何で戦争してるんだ?

理由は触れる予定なので伏せたいけど、強いて言うなら人間側(大本営)の大ポカです。深海棲艦側は被害者。

>ってか攻撃してたことを気にしてるけど戦闘してたのと同個体なの?

ゲームで言うサーバー毎に、深海棲艦はそれぞれ同じ個体です。また、ゲーム内みたいに何百万人も提督はいません。

数百人程度がそれぞれの場所に配置されています。
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/29(日) 23:51:39.04 ID:PJE+rZTSO
優しいってか甘っちょろいだけよなぁ……
45 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/30(月) 00:07:43.98 ID:v0KaiZL80
提督たちは執務室を出て、鎮守府内を散策する。

ヲ級は所用があると言って、水中にそのまま飛び込んだ。

水が入ってこないか心配したが、杞憂だったようだ。

「しかし、凄い場所だな。ここは」

空気は安定して供給され、水が入ってこない。まさにファンタジーと言っていい光景だ。

「あーそれね。水が入ってこないのは、僕たちが使ってるバリアとかを応用してる…らしい」

「謎技術で運用されてるとか怖いんだが」

「そっちの建造とか入渠だって謎技術でしょ」

確かに、と提督は納得し、移動を再開する。

北方棲姫は左手で引き、レ級はなぜかおんぶしている。

思ったよりも軽かったが、それでも重い。特に尻尾の部分が。

「へへ〜。楽ちん」

「楽しい?」

「まあまあかな」

二人が他愛のないをしている間、提督は辺りを見回している。

――分かってはいたが、間取りは全然違うな。

自分の記憶があてにならないことに落胆して、提督はレ級たちに頼み事をする。

「すまないが、鎮守府の案内をしてくれないか?」

「分かった。まずはどこから?」

提督は数秒思考し、食堂とだけ答えた。

「了解。僕の指示通りに動いてよ提督号!」

提督は頷いて返答し、レ級が出す指示通りに動く。明らかにおかしい指示も混ざっていたが、それにも従った。

数分ほど掛けて食堂に到着したが、人が誰もいない。

「まあ今の時間はなー。間宮とかが準備してるくらいかな」

「…本当にいるのか。間宮さんたちも」

「美味いよ。間宮の飯」

「それくらい分かりきってるよ」

鎮守府に配属されて最初の数日間、母親の食事を思い出して食事の度に泣いていた。

それほどまでに、懐かしい味がした。

「そっか。なら次はドックとかだけど、正直教える必要は無いかな。すぐ近くだし」

レ級が指差した先には、短めの廊下と壁に複数の入り口があった。

「前二つが大浴場。奥の四つが普通の温泉的な風呂。インテリアを参考にしたやつ」

変なところにも全力なんだな、と口から零れそうになったが、どうにか押し止める。

「宿舎は反対側の廊下だよ。こんくらいでいい?」

「ああ。ありがとう」

宿舎と聞いて、提督は考える。

――この先に、皆が。

急に考えが纏まらなくなる。前を向き始めても、否定されるかもしれない、という考えが頭を離れない。

それでも、提督はどうするかを決めなければならない。


安価にしましょうか。↓1
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/30(月) 00:10:21.81 ID:5SxO1BJ/0
意を決して進む
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/30(月) 00:11:50.35 ID:W9ttOxxco
開幕ジャンピング土下座からの宙返り土下座
48 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/30(月) 00:15:41.29 ID:v0KaiZL80
>>47が予想を飛び越えてて草生えました。↓1、↓2に会いに行く艦娘をお願いします。複数指定可能です。
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/30(月) 00:19:53.39 ID:4O8Rrp0EO
第六駆逐体
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/30(月) 00:20:20.26 ID:3oeRSktAo
5航戦
51 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/30(月) 00:59:22.92 ID:v0KaiZL80
震える手を必死で抑える。

――覚悟は決めた。だから怯えるな。

そう自分に言い聞かせ、提督は一歩ずつ進んでいく。

気を利かせてくれたのか、二人はどこかに消えていた。

「ありがとう」

そう呟き、提督は宿舎へと入った。

宿舎の廊下は非常に短く、目視だが20mほどしかないと確認できた。

――昔はこの三倍はあったのにな。

本来とか違う景色を見て、提督は自分の責任を痛感する。

どうすれば回避できたのか。どうすれば皆が沈まない未来を選べたか。

そんなことばかり考えるが、過ぎたことを悔やんでも意味が無い。

「…そうだ。陽炎にも言われたじゃないか…。もっと前向きになれって…」

――どうすれば許してもらえるか。それだけを考えよう。

そう意気込み考えてみるが、手段は一つしかなかった。

「何を考えているんだ、俺は…。俺が出来ることなど、誠意を見せること…謝ることしかないじゃないか…!」

顔を上げ、目の前の部屋に入る。そこには、料理本を広げて話し合う第六駆逐隊の姿があった。

「皆…!ごめん…!あんな命令を出す、どうしようもない提督でごめん…!」

「それで、も…。皆がいる、のを見て…嬉しく思った…!そんな資格は…無いって分かって、るけど…嬉しかったんだ…!」

止まらない涙を拭い、必死に声を絞り出す。

「れでぃーを待たせるなんて…!ばかよっ…司令官はぁっ…!」

「不死鳥の通り名は伊達じゃないさ…。そう簡単には…死なないよ…」

「もう大丈夫よ司令官…!私がいるから…!だから…!」

「ひぐっ…。えぐっ…。本当に…助けられたのです…!司令官さんを…!」

「ごめんなぁ…。怖い思いをさせて…本当にごめん…!」

そして、皆を抱きしめながら泣き続けた。皆の涙が収まり、笑顔が戻るまで。
52 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/30(月) 01:28:13.49 ID:v0KaiZL80
「あの時は辛かったよ…。司令官があんな命令を出すとは、信じられなかったからね…」

涙が収まり、いの一番に口を開いたのは響。

淡いライトブルーの髪は黒く変色していた。

「そうだよな…。辛かったよな…。俺があんな命令を出さなかったら…」

「それは駄目だよ」

首を振って、響はそれを否定する。

「あの命令がなかったら、司令官は死んでいた。だから、きっとこれが最善だよ」

最善なんてない、と提督は心の中で漏らす。

「…この話はたらればでしかないよ。皆ここで生きている。私はそれだけでいいと思う」

「…そうだな」

咎められないのが、辛かった。自分の責任で起きた惨劇なのに、悪くないと庇われてるのが。

「そうよ!司令官が生きてるんだから、それでいいじゃない!」

「そ、そうなのです!司令官さんがここにいるなら、電たちがやったことにも意味があるのです!」

「ま、まあ?れでぃーの私はこれ以上欲張らないし?でっでも、ほうびはあってもいいわよね!?」

ずいっと顔を近づける暁。その大きな瞳に吸い込まれそうだ。

「…ありがとな。俺なんかのために」

褒美になるのか分からないが、一人一人順番に頭を撫でていく。

――思えば、昔もこうやって撫でていたな。

最近のことなのに、随分と懐かしく感じる。

「荷物も運んでくれたんだってな…。皆よく頑張ったよ。…俺が言っていいことじゃないだろうけど」

「えへへ。もっと私たちを頼ってくれてもいいのよ?」

――この言葉も懐かしい。ちょっと変わってるけど。

もう一度、皆を抱きしめる。そして、自分の罪の重さを再認識した。

――こんなに真っ直ぐ信じてくれてた娘を、俺は。

「してほしいことがあったら言ってくれ。俺に出来ることなら何でもするよ」

「あ!それじゃあ…」

第六駆逐隊は皆で顔を見合わせて、料理本の一ページを指差す。

「今度、このオムライスを味見して!」

皆のお願いはとても可愛らしかった。思わず、微笑んで応えてしまった。

許されるか分からなくても。否定されるとしても。それでも。

――俺は謝らないといけない。そうしないと、罪を、怒りを受け入れることすら出来ないから。


※本日はここまでです。次回は今週の火曜日(夜)予定です。駄文で申し訳ございません。お疲れ様でした。
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/10/30(月) 01:41:52.05 ID:5SxO1BJ/0
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/30(月) 08:40:48.36 ID:HlWyKjPmO
乙です
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/31(火) 18:26:31.39 ID:xkCC0BG8O
おつ
こういうの好きよ
56 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/01(水) 01:41:01.12 ID:IUY0b2Id0
やっとPCに触れた…。五航戦の分だけでも今回で終わらせます。
57 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/01(水) 02:06:40.30 ID:IUY0b2Id0
「今、ここにいる娘って誰がいる?」

提督の問いに、電がおずおずと答える。

「えっと…。今は電たちしかいないのです…」

「そっか…」

――誰もいないのなら仕方がない。

そう思った提督は、立ち上がって執務室へと向かおうとする。

「司令官!私たちは何があっても、司令官の味方よ!」

と、はっきりとした声で言う雷。満面の笑顔を見せる雷が眩しい。

部屋を出る前に、もう一度皆の頭を撫でて、部屋を後にする。

天井から吊るされたランプだけが照らす鎮守府。

薄暗い宿舎の通路を通り、食堂に出る。

そして、執務室へと通じる廊下を目前にしたところで、提督は出会った。

「提督…」

「提督さん…。目、覚めたんだ」

「翔鶴…。瑞鶴…。すまなかった…」

頭を下げる提督に対し、翔鶴は涙を流し喜ぶ。

しかし、瑞鶴は。

「そう。それで、何がすまなかったの?」

提督は息を吞む。明らかに、今までの娘とは反応が違う。

「…恨んでるか。当然だよな」

「…え!?恨む!?なんで、私が提督さんを恨む必要があるのよ!」

提督は困惑するが、瑞鶴は驚愕が止まらない。

全く違う反応をする二人を見て、翔鶴はただ、おろおろすることしか出来ない。
58 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/01(水) 02:51:01.96 ID:IUY0b2Id0
「…はぁ〜…。なるほどね…。提督さんの言いたいことは分かったわ」

提督は、なぜ恨んでいると考えたのか。その理由を瑞鶴に説明した。

「確かに、翔鶴姉についてのことは私も頭にきたわよ」

「だけど、それで提督さんを恨んで何かが変わるの?」

「…変わらないかもしれないが、怒りが収まったりするかもしれないだろう」

提督は苦言を呈すが、速攻で瑞鶴は斬り伏せる。

「その怒りは、簡単に収まったらいけないものでしょ!」

その気迫に提督は気圧される。

資材が少なく、采配が自由に出来なかった影響で、練度は平均をギリギリ超える程度だった。

相対的に未熟だった瑞鶴が見せた気迫は、加賀をも超えているように見えたのだ。

「提督さんが出した命令でショックを受けたのは事実よ!でも!提督さんが脅されてたことも知ってるの!」

「確かに私たちは沈んだわ。体も結構変わっちゃったし」

「…で、提督さんを恨んだら元に戻るの?戻らないに決まってるわよね」

瑞鶴の言葉を、聞き逃さないように心で聞く。瑞鶴の真っ直ぐな目は、提督の目を逸らさせることを許さなかった。

「過ぎたことをいつまでも悔やんだって、何も変わりはしないのよ」

「忘れちゃダメなことだけど、そこで躓いていたら何も出来ないわ」

「…あの時、翔鶴姉が沈んだ時もそうよ。どんなに悔やんでも、敵は待ってはくれなかった」

マリアナ沖海戦で、瑞鶴の姉、翔鶴は撃沈された。

そして、真珠湾攻撃に参加した空母の最後の生き残りとなった瑞鶴は、最期の戦場となったレイテ沖海戦を終えるまで、奮戦した。

「翔鶴姉がいなくなった時は悲しかった。だけど、ここで私が戦わなかったら、翔鶴姉の命は無駄になってた」

「提督さん。どんなに苦しんでも、辛い思いをしても、そこで止まったら皆無駄になっちゃうのよ?」

――本当にその通りだ。

瑞鶴の言葉は、提督の心を射抜いた。このままでは駄目だと、提督に思わせた。

「…提督さんが強い心を持ってないことは知ってる。だけど、進もうとすることは出来るはずよ」

「提督さんが前を向いているなら、私も一緒に戦うわ」

私たちの提督だもの、と付け加え瑞鶴は右手を握り、提督の左胸に当てる。

――だから、シャキッとしなさい。

提督は自分を叱責する。瑞鶴を見くびっていたことを。

「…強い娘だよ。瑞鶴は。お世辞抜きで、加賀にも勝るんじゃないかって思った」

「へっへーん。伊達に訓練を続けちゃいないわよ」

瑞鶴の言葉で提督はどこかが吹っ切れたのか、後ろめたい気持ちがいつしか無くなっていた。

「ありがとな、瑞鶴。おかげで悩んでる自分が馬鹿らしく思えたよ」

「これからも『五航戦』を御贔屓に!なんちゃって」

一連のやり取りを見た翔鶴は、心の底から安堵する。

――瑞鶴。あなたは、そんなに強くなってたのね。

嬉しさを覚える反面、ほんの少しだけ寂しさを覚える翔鶴だった。


目標、母港執務室の安価!やっちゃって!↓2

※今回はこれで終了です。次回は水曜日(夜)開始予定です。今度こそは…。
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/01(水) 04:09:44.89 ID:5/9Jd+4v0
kskst
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/11/01(水) 04:19:56.47 ID:dK6S4douO

「怒ってた」という浦風も気になるけど欲望を優先だ
安価は執務室で今後どうするか考え事をしていると鈴谷&熊野がやって来るで
人物指定が駄目なら前半だけでお願いします
61 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/01(水) 23:45:09.04 ID:ePE4RFG20
今日は日を跨ぐ前に戻ってこれました。今から再開なのです。
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/01(水) 23:50:44.85 ID:HG/9fzO50
把握
63 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/02(木) 00:22:22.70 ID:KDtnLI6e0
翔鶴たちと別れ、廊下を進んでいく。

翔鶴たちは、つい先ほどまで海中を警備していたらしく、入渠を済ませてくるようだ。

――海中で艦載機をどう使うのかな。

そんな疑問を浮かべながら、執務室を目指す。

気が付くと、執務室前に到着していた。

ドアノブに手を掛け、扉を開く。壁に無理矢理取り付けているからか、妙に重い。

本棚から海図を取り出し、艦船名簿の最初のページに記されている現鎮守府の緯度、経度から現在位置を把握する。

「…リンガ泊地から数十kmほど離れているのか。本気で探索されたら厳しいかもしれないな」

何も、潜水艦で海中を探索する必要はない。

駆逐艦や軽巡洋艦に、ソナーを積載して調べるだけでも充分脅威となり得る。

見つからないようにするために拠点を移すにしても、場所が限定されるだろう。

人が寄り付くことのない無人島か、今回のように海底に居を構えるくらいしか、今の我々では出来ない。

――もし、鎮守府の人たちの助けを得られれば。

一瞬思ってしまったことを掻き消す。

もう、他の人を頼ることは出来ない。

頼れるのは、信じられるのは、この鎮守府にいる仲間たちだけだ。

「…それでも、止まってはいられない、な」

皆から投げかけられた言葉を思い出し、集中する。

今の自分たちに出来ることを、ひたすら考える。

だが、そう簡単には思いつかない。
64 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/02(木) 00:53:54.15 ID:KDtnLI6e0
はぁ、と大きなため息を吐いて机に伏せる。

提督が今知っていることが少なすぎるため、考えから不確定要素が消えないのだ。

――誰か、色々な情報を知ってる人が来てくれたら。

「ちーっす。提督、元気になったんだって?」

「もう、はしゃいじゃって鈴谷ったらはしたないですわ」

「熊野だってソワソワしてたじゃん?」

「そ、それは言わないって約束したじゃありませんの!?」

その願いが神へと届いたのか、執務室に二人の来訪者が。

頭脳派の艦娘ではなかったが、提督には二人が救世主のようにも見えた。

「提督、なんでそんな神を崇めるような目してんの…?」

「タイミングが神だからさ…」

提督は、今まで何をしていたかを鈴谷たちに説明する。

「はっはぁ〜ん…。それで鈴谷たちが神様に見えたってわけね」

「私たちが持っている情報で良ければ、教えますわよ」

「本当に助かるよ」

熊野は、机に広げっぱなしにしている海図にメモをしていく。

「私たちのいる場所はここで合っていますわ。そして、現在リンガ泊地は拡張予定ですの」

「鈴谷たちの航空隊が確認したから、間違いないよ〜」

「資材の搬入量から考えて…。付近の小さな無人島にも簡易型の港を設置するようですわね」

「艦隊の配置可能数を増やすつもりか…。大規模な敵襲に備えてるのかな」

リンガもまた、ラバウルと同じく激戦区である。補強する理由としては、それだけでも充分だ。

「しかし…。よりにもよって、泊地の拡張よりも港増設に資材を充てるのか…?」

何かきな臭いものを感じるが、提督はそれがどういうものかが分からない。

「…いや、遊撃しやすくするための増設の可能性もあるか」

――今は、出来ることを見つけるのが優先だ。


まぁ、安価は嫌いではないけれど…。↓2
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2017/11/02(木) 00:57:38.68 ID:9gJ32t/d0
ksk
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/02(木) 01:07:03.82 ID:B9kwFYlS0
ちまちまあってもラチがあかない
広い場所で全員と会って今後どうするか、
どうして欲しいのか全体会議
67 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/02(木) 01:38:50.47 ID:KDtnLI6e0
提督は、鈴谷たちが入室してきた時の言葉を思い出す。

『ちーっす。提督、元気になったんだって?』

この言葉から推察するに、誰かが情報を全体に伝達している、ということだ。

「鈴谷、皆に集まるように言えるかな?」

閃いた提督は、鈴谷に問う。その答えは、たった一言だった。

「出来るよ」

「頼む」

「オッケー」

頷いた鈴谷は、一度海中に戻る。そして、耳元に艤装を取り出して口を開く。

――提督が皆に逢いたいっていってるよん。

口を開いた数秒後。雪崩のように艦娘たちが質問を投げかける。

「うるっさぁ…。頭パンクしそうだよ…」

一度艤装を外して、皆が落ち着くまで待つ。

その間、鈴谷は集合場所をどこにするか考えていた。

「鎮守府は無理矢理住めるようにしただけだからなぁ。皆が入るスペースは無いし…」

「…いや、食堂を一回片付けたらギリギリ入る…かな?」

全員を収容することが出来るか、鳳翔に話を聞く。

――鳳翔さん。食堂に全員入れるのって出来る?

返答はイエス。それを聞いた鈴谷は、瞬時に皆へと伝達する。

――やることが終わったら、食堂にすぐ集合して!

鈴谷の言葉を聞いた艦娘は、全員が同じタイミングで了解、とだけ言う。

「うっへぇ…。こういう時の連帯感凄いなぁ…」

自分が同じ立場に立っていたらどうなるかを考えるが、頭を数回横に振って思考を切り替える。

「…急いで風呂入んなきゃ。ベタベタした状態で出たくないし。あ、熊野に伝えておかなきゃね」

鎮守府に戻り、熊野を執務室から呼び出して先ほどのことを伝達する。

「承知いたしましたわ。提督には私が伝えておきます」

「ありがと!今度アイス奢るね!」

楽しみにしています、と熊野は返し、執務室に戻る。

――あああ!早く髪とか洗わないとー!

駆け足で風呂に向かう鈴谷だが、途中で一回ずっこけてしまった。
68 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/02(木) 02:26:07.97 ID:KDtnLI6e0
熊野から話を聞いた提督は、食堂を目指して執務室を出る。

「食堂に集合、か。やっぱり大きな部屋は全く無いんだな」

「少ない土地を有効活用した結果ですもの。仕方ありません」

「提督は食堂で待っていてくださいまし。私は他の方々に伝えてきますわ」

「…ありがとな」

丁寧なお辞儀をして、熊野は小走りで消える。

ゆっくり廊下を歩いていると、隣の水中からいきなり何かが飛び込んできた。

「ブゥッ!?」

「提督さん!意識は大丈夫なん!?うちが誰か分かる!?」

飛び込んできた何かの正体はすぐに判明した。

「浦…風…だろ…?」

「うん!浦風よ!」

衝撃で上手く回らない頭で、今の状況を分析しようとする。

同時に、浦風が怒っている、という陽炎の言葉を思い出す。

「そういえば…。浦風が怒ってるって聞いたんだけど…」

「そりゃ怒っとるよ!なんで脅迫されてたことを黙っとったんじゃ!」

提督は口を紡ぐ。そもそも、脅迫されたのは出撃後だったからだ。

大本営から出撃命令が出され、それに従って全艦を出撃させた。

この時に違和感を感じたが、命令無視は重罪。即ち、死に繋がることであったため、従うしかなかった。

――この時までは、脅迫されるとは露にも思わなかった。

「…事情があるようやね。だけど…それはうちにも言えんことなん…?」

涙を浮かべ、消え入りそうな声で問う浦風。

提督は、自分に嫌悪感を抱きながら答える。

「…脅迫されたのは出撃後なんだ。だから…言えなかった…」

「そう…なんや…ね…」

一筋の涙が零れる。それを拭いながら、浦風は言葉を紡いでいく。

「でも…。うちも、浜風も、皆が味方じゃけん…!もう、同じような目には遭わせんけん…!」

「だから…。隠し事はしないでほしいんよ…!辛くてたまらんから…!」

「…ああ。しないよ」

「約束したけえの…!」

胸に顔をうずめて泣く浦風を、提督は抱きしめることしかできなかった。


※本日はこれで終了となります。次回は今日の同じ時間よりも早く更新したい…。お疲れ様でした。
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/02(木) 05:25:36.43 ID:nYRxWOVZ0
大本営ほっとくのはよくないね
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/02(木) 08:56:57.13 ID:HODzsrC60


向こうは状況を完全に把握してないと思うからこのまま雲隠れしとく方がいいかも
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/02(木) 12:23:54.38 ID:JW7WT/sqO
開墾とかしてマイクラ+牧場物語でもしようぜ
72 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/03(金) 01:28:21.75 ID:B2nOe+T/O
すみません。今日ちょっと更新は無理そうです…。日曜日ならできるはずです。申し訳ない…。
73 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/05(日) 16:09:20.60 ID:uOvt1xf60
金曜は更新が出来なくて申し訳ございませんでした…。今から再開なんやて工藤。
74 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/05(日) 16:09:50.41 ID:uOvt1xf60
「恥ずかしいとこ、見せてもうたね…」

涙が止まり、頬を赤らめる浦風。提督は、申し訳なさそうに言葉を零す。

「俺がちゃんとしていたら、こんなことにはならなかったのかなぁ…」

その言葉を聞き逃さなかった浦風は、言葉を荒らげる。

「提督さんは頑張っとったよ!過ぎたことなんじゃけん、気にせんでええよ…」

しかし、語尾に近づくにつれて言葉が弱々しくなる。

「頭では、うじうじしてても、たらればを言っても仕方がないって理解しているんだ」

「だけど…。分かっていても、してしまうんだ…」

女々しい自分が嫌になる。仕方がないと分かっているのに、前向きに進もうと思っているのに、立ち止まってしまう自分が。

「…それは個人の問題じゃけん、うちは口出しできんよ」

「じゃが、無理して変えないけんもんとは思えんなぁ…」

そう言う浦風の顔は悲し気だった。

「…それより、これからのことを考えるんが先決じゃ」

「そのための招集なわけじゃろ?」

提督はゆっくり頷いて肯定する。

「ん。鈴谷さんが言ってたことから推測しただけやけど、そうだとは思っとったよ」

「早う食堂に行かんとね。皆を待たせるのは気が引けるけえ」

浦風は提督の手を引く。その顔は少し嬉しそうだった。

「ふふっ。傍から見りゃあ恋人のように見えとるんかね?」

「俺なんかが恋人になっても、どうしようもない気がするけどな」

提督の顔は、どこか虚しいようにも見えた。
75 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/05(日) 16:11:06.90 ID:uOvt1xf60
浦風に手を引かれ、食堂へと到着した。

そこには艦娘、深海棲艦合わせて二百余名がすし詰め状態になって待っていた。

やはり、艦娘は皆深海棲艦のような髪色になっている。

覚悟はしていたが、思っていたよりも提督の精神が摩耗する。

彼女たちをこうしてしまったのは、紛れもなく自分の責任なのだから。

そんな考えが、提督の頭から離れない。

「て…提督…。すまないがそこから話を頼む…」

人混みの中から何とか顔を出せた長門が指示を出す。

その指示を聞くと、浦風は提督から離れる。

「提督さんの言うことなら皆信じてくれるはずじゃけえ、そう緊張せんでもええよ」

その言葉はありがたかったが、提督の心を追い詰める。

――同じような目には遭わせられない。だが、俺が指示を出したらまた同じ結果が出るかもしれない。

――どういう指示を出せばいい?どういう指示を…。

そこで提督は閃く。それが、自分の存在を否定するようなものでも、躊躇わず選んだ。

「…脅迫されていたとはいえ、皆を沈めてしまったことは心から詫びる」

どんなことがあろうとも、実行してしまった時点で罪だから。

「俺を殴ってもいい。何なら、腕や脚の一二本もぎ取っても構わない」

それで、自分が傷つくことで赦されるのなら。

「だけど、俺一人では何も出来ない。何も知らない」

戦うことも、大した采配を執ることも出来ないから。

「だから、何か意見があるのなら、どんな些細なことでも言ってくれ!」

今の自分では、どうすればいいのか、どうするのが正解なのか、考えることすら出来ないから。


直下から↓3までにどうするかの案を募集します。案とそれを発言する艦娘をセットでお書きください。方言難しすぎて死ぬ…。
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 16:20:05.86 ID:8IadkhAi0
霞 大本営もこちらの動きを完全に把握していない
  だが提督が消えたから探して入ると思う
  当分はほとぼりが冷めるまで隠れる
  ただし訓練、それもこちらに付いてくれる深海潜艦と連携出来る様に合同で訓練する
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 17:13:14.95 ID:jVs3VjQ60
霧島
そもそもなぜ深海を保護したことでここまでされることになったのか
もっと元をただせばなぜ我々は戦うことになったのかを知るべき
深海と提督それぞれ知っている情報をすり合わせて何かわからないか確認
内容次第ではもっと遠くへ逃げるべきか近くで反攻の機を待つべきかわかるのでは?
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