【艦これ】提督「クソッタレな世界を」長門「生き残るために抗おう」【安価スレ】

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1 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 15:51:39.42 ID:5kjN12kv0
このSSは、なんやかんやあって深海棲艦化した艦娘(深海棲艦含む)と仲良く過ごしていくスレです。

>>1は、16夏から先のことはよく分からないのでその辺りをご了承ください。

安価を出すところまでは書き溜めておりますので少々お待ちください。ウォスパ可愛い。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1509259899
2 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 15:52:31.20 ID:5kjN12kv0
「――全軍に、告ぐ。未来のため、に、命を棄てて、くれ」

声が震える。だが、それでも言わなければならない。

後ろには、下卑た笑みを浮かべる海軍大将と、銃をこちらへと向けている憲兵が。

軍の規律を守るための憲兵が個人と癒着しているなど破綻している。そう心の中で愚痴るが、何も変わらない。

玉砕命令が出されたことで、無線からは困惑の声が聞こえてくる。

――無理もない。突然『死ね』と命令されて『はいそうですか』となるわけがない。

いくら造られた存在の艦娘だとしても、心はある。彼女らは機械では、兵器ではないのだ。

だが、そう思っているのは自分だけ。他の人は道具としか思っていない。

どうしようもない事実がそこにある。

「――それは貴方の意志で出す命令か?」

胸を突き刺す冷たい声――我が鎮守府の艦娘の総括を務める旗艦『長門』のものだ――が無線から届く。

――怖い。

今まで苦楽を共にしてきた仲間から拒絶されるのが。

――だが、今自分がやったことが『それ』と同じことだ。

だから受け止めなくてはならない。

「どうした?提督」

「――ああ、俺自身の意志で出す命令だ」

――国のために、死んでくれ――。
3 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 15:53:34.78 ID:5kjN12kv0
言い切った。言ってしまった。

涙が止まらない。こんな命令を出す自分が惨めで。

死を恐れるあまり、仲間を切り捨ててしまった自分が愚かで。

「――了解。私たちが暁の水平線に勝利を刻む礎となろう」

優しく返された長門の声を最後に、無線から聞こえる音はノイズ一色となった。

心が壊れた音がした。

立つことすらままならず、地面に崩れ落ち、泣いた。ただひたすらに。

邪悪な笑い声が後ろから聞こえる。

――こんな世界、壊れてしまえばいい。

そして今世界を、自分を、呪った。
4 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 15:54:37.39 ID:5kjN12kv0
軍が所有する島への航路中。提督は甲板でただぼうっと突っ立っているだけだ。

「災難だったなぁ。部下が皆おっちんじまうなんて」

憲兵が近づいてきて嘲る。心底楽しそうな笑みを浮かべて。

「黙れ」

「あんたが悪いんだよ。深海棲艦の生態調査と嘯いて治療なんかしてさ」

「黙れ」

「大将の言う通りにしてればこんなことにはならなかったのになぁ!」

憲兵に腹を蹴り飛ばされる。もう暴力による痛みなど感じなくなった。

これは自分に対する罰。長門たちを死なせておいて、のうのうと生きている自分への。

「ほら立てよ。軍人ならシャキッとするべきだろ?」

言葉に従い立ち上がろうとする。同時に、空に暗雲が立ち込めてきた。

「はぁ。時化ってくるとかふざけんなよなぁ」

「そんな予報は無かったな」

「こりゃ揺れるな。あと少しで到着だったのに…ったく」

表向きには、天皇陛下から受け賜った艦隊を喪った罰として流刑されていることになっている。

――実際には、ただ秘密裏に行われる処刑でしかないのだが。

「ん?通信か。はいこちら警備部隊。…は?電探に感アリ?」

刹那、船体が大きく揺れる。

「つっ!」

「え…?あぁ…うわああぁぁぁあ!」

提督は衝撃に耐えられず甲板を転げ、憲兵は海へと投げ出された。

その後、砲撃が憲兵の落下地点に落ち、紅く染まる。

「深海棲艦か…!」

深海棲艦が現れる時、一定範囲の海域が時化るのだ。

このタイミングで出現したということは、当然だろうがこの船の撃沈だ。

どう足掻いても、ここで死ぬ。

人類では、艦娘に勝つことすら出来ないというのに、個々の性能で艦娘に数段勝っている深海棲艦に勝てるはずがない。

そして船に数発の魚雷が直撃、輸送船は爆沈した。
5 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/10/29(日) 15:55:29.78 ID:5kjN12kv0
水底へと沈む体。肺の酸素が、次第に増していく水圧で押し出される。

歪んだ視界が捉えた幾重もの光。そのどれもが蒼い輝きを放っていた。

――予定よりは早く死ぬな。まぁ、自業自得ではあるか。

提督は嘗ての行いを振り返り自嘲する。『部下殺し』を犯した自分は死んで当然だ。

自分を信じて戦ってくれていた部下を見殺しに、いや『死ね』という命令を下した。

自分の命が惜しかった。ただそれだけで。

――何級だか知らないが、殺すならサクッと頭を潰してくれ。

然るべき報いが来ることを内心歓喜しながら、ニヤリと笑う。

――俺は痛いのが苦手でね。

意識が保てない。既に、脳への酸素の供給は止まっていた。このまま放っておいても、自然に命を落とすだろう。

――ドザエモンにする気とはえげつないな。苦しいじゃないか。

化けて出てやる、と死の間際に冗談を言い、意識を手放した。

――眼前にいた、白髪の女性に妙な既視感を覚えて。
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