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福田のり子「私はアイドル」【ミリオンライブ】
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/10/28(土) 00:58:47.75 ID:zJC5eQxq0
―――
アタシ福田のり子はアイドルになった。
女の子にとっての憧れ。
男の人にとっては…違う意味で憧れ?なのかな?
そんなアイドルが、アイドルの中でも今をときめく星たちが集まる765プロで、
アタシはアイドルになった。
―――
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1509119927
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/10/28(土) 01:00:24.42 ID:zJC5eQxq0
―――
オツカレサマナノデス-!
キョウモガンバッタゾ..ブイ
ステ-ジキラキラデシタネ-
モウ!フワフワシテナイデ!シュウエンゴハキッチリストレッチシナイト
アハ!ダイセイコウダッタンダシイイジャン,ウチアゲハファミレスデイイカナ?
「みんなお疲れ!今日の公演もバッチリだったな」
「のり子もお疲れさま、ほれタオル。ちゃんと汗拭かないと風邪引くぞ」
「ふぃ〜…ありがとね、プロデューサー」
シアター公演も回数を重ね、ようやく舞台にも慣れてきた。
かわいい衣装を着てキラキラのステージの上でアイドルの歌を歌う。
ちょっと前のアタシには考えられなかったけど、それでも少しずつ、アイドルに近づけているのかなと、公演が終わるたび、そんなことを思う。
多少の前後はあるものの、シアターのみんなは大体同期と言っていい。
…なんだけど、ステージのセンターを務める子や照らすライトの何倍も輝く子を見ると、ただ、凄いなぁと、こういう子こそアイドルなのかなと、そんなことも思ってしまう。
シアターの公演ではオリジナルの楽曲の他に、765プロの先輩たちが歌ってきた楽曲を披露する、セルフカバーメドレーが組み込まれる。
このパートは凄い。
もちろんシアターオリジナルのステージも、ファンのみんなの声援とペンライトが嬉しく、頼もしい -初めてのソロ披露のときはずいぶん助けてもらった気がする- けれど、このパートばかりは少し、ほんの少し、不安を一緒に連れてくる。
音の壁、光の渦。
765の先輩たちが歌い、一緒に育ててきたステージが、真正面から向かってくる。
そのたびに、本当にアタシが、福田のり子が、765プロのアイドルでいいのかな、なーんて。
口に出したことはないけれど。
―――
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/10/28(土) 01:06:52.69 ID:zJC5eQxq0
―――
ステージがない日もアイドルはアイドルだ。
アイドルは楽しい。
TVやラジオ、雑誌など、向こう側にいた人たちが色んなところに連れて行ってくれる。
もちろん、連れ回されるのは性に合わない。
行く先々の現場が、期待してくれるファンが、通りすがりのファン候補生が、何より自分が、その一瞬一瞬を楽しめるように思いっきり楽しむ。
その甲斐あってか、今ではそこそこ仕事も増えて…そういえば最後の1日オフっていつだっけ?
今日もすっかり仲良くなったTV局での撮影が終わり、次の仕事の打ち合わせのため、暮れつつある太陽を背に、1人事務所へと帰路につく。
どんな楽しいことが待ってるかな。えへへ。
―――
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/10/28(土) 01:10:58.82 ID:zJC5eQxq0
―――
「のり子にはソロで『私はアイドル』を歌って貰おうと思う」
今日の報告と直近のスケジュール確認が終わり、次回公演のセットリストに話題が移ったところでの、プロデューサーの一言である。
「この前まつり達も歌ってたし、曲はわかるよな?連続での選曲にはなるけどファンからのアンケートで人気でさ、他の子が歌ってるところも見たい!って」
私はアイドル。
オリジナルは春香と伊織。
かわいらしい曲調とちょっと生意気な歌詞の、いわゆる"いかにも"な曲だ。
それにしても…
「ア、アタシは他の曲の方がいいんじゃないかな…はは」
「ほら、このセトリだとGO MY WAY!!とかポジティブ!とか、アタシっぽいっていうかファンのみんなも盛り上がると思うんだよね」
「私はアイドルは…ほら!翼とか茜なんかも似合うよね?」
あわててまくしたてる。
よりによって、といえば言葉が悪いけど、この曲は。
"かわいらしい曲調"の部分はアイドルなんだから覚悟を決めるとしても、問題は歌詞だ。
さっきは"ちょっと生意気"なんて言ったけど、そんなもんじゃない。
きっと本当にかわいくて、自信満々で、そういう子が歌ってこそのこの曲だ。と思う。
さてはドッキリか!このやろー!
と、プロデューサーを睨みつけてみれば、
…じっとアタシを見る目は真剣で
「んーそうか?でもな、あれだ。俺が聞きたいんだ。のり子の私はアイドル」
「ま、考えといてくれ」
そんなことを言われた。…気がする。
よく覚えていない。
―――
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/10/28(土) 01:13:51.03 ID:zJC5eQxq0
―――
考えといてくれ、なんて言われた割に、翌日からレッスンは始まって、アタシはといえばボーカルの先生と絶賛居残り中だ。
「のり子ちゃんの跳ねる声、この曲にはぴったりなんだから。まずは曲を自分のものにすること、次回までに頑張ってきてね」
レッスンスタジオ閉館の時間がくれば、その日が100%の出来だろうと…そうでなかろうと、レッスンは解散となる。
ちっとも達成感を得られないまま無茶な宿題だけを獲得し、帰宅することとなった。
"曲を自分のものに"って言われても…。
正直、レッスンがうまくいかないのは想定どおりだった。
曲も歌詞もしっかり頭に入ってる。
楽譜通り音はとれているはずだし、先生に言われた跳ねる声ってのもそれなりに意識して歌えたはずだ。
だけど、肝心の、この曲を歌うアイドルの気持ちっていうのがちっともわからない。
〜きっとわーたーしがいちばんっ
〜でもあなったーもそーこそこかも
…むぅ。
ほんとにこれアタシが歌うの?
―――
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/10/28(土) 01:18:48.36 ID:zJC5eQxq0
―――
悩みがあろうとあるまいと、アイドルはアイドルだ。
アイドルは忙しい。
今日のお仕事は律子さんと春香のラジオにゲストで出演。
劇場公演の宣伝も兼ねて。
60分番組の倍くらい喋ったところで収録か終わり、次の仕事までの空き時間に3人でお茶をすることになった。
「そういえばのり子ちゃん!次の公演、カバーコーナーでは何歌うの?乙女とかSTARTとか、私の歌やってくれたら嬉しいんだけどなー。きっと似合うと思うし!」
「そうね、でもそろそろ前向きな元気曲以外も挑戦してみていいんじゃない?、livEとか歌ってみたら映えるかも。っと、それで?プロデューサーはどの曲がいいって?」
「あはは…嬉しいことに春香の曲、なんだけどね」
「むぅ!わた春香さんの曲でその表情とは!さては太陽のジェラシーだ!あの曲難しいから」
「難しいけどのり子なら歌いこなせるんじゃない?浮かない表情ってことは…IWantものりのりでやるだろうし」
「IWant歌ってみたいなー…。はは、実はアタシの…私はアイドルを、聴いてみたいって」
「私はアイドル!懐かしいなー!楽しい曲だよね、うん、のり子ちゃんの声とぴったりかも!でもそれならなんで悩んでるの?」
「うん、先生もそう言ってくれるんだけど、どうも歌詞が」
「あの歌詞を歌ってる自分ってのが想像できなくて…」
―――
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