【ミリマス】千鶴「これからは貴方と共に」

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25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/21(土) 02:26:00.40 ID:y2wSW8Jko

「当然でしょ。私の偽物なんて世界中の誰にも務まるわけないじゃない。
 それで? これがアンタの言ってた新人? 見た目は……まっ悪くないわね」

「はい! 千鶴さんとっても綺麗です!」

「うんうん。美希も良い感じって思うな」

 いきなり現役のアイドルに褒められた。こんなときは、とりあえずお礼を言わないと。

「えっと、ありがとうございますわ」

「ねぇねぇ、千鶴もアイドルになるの?」

 美希ちゃんが私の顔を覗き込みながら聞いてくる。

「え、ええ……ええ! そうですわ!」

 私の答えに満足したのか美希ちゃんはにっこりと笑顔になる。テレビで見たときよりもずっと可愛い。
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/21(土) 02:29:41.15 ID:y2wSW8Jko

「それはいいけど。その語尾のですわってなんなのよ」

 伊織ちゃんの発言に私の心臓が飛び跳ねた。そう言えば伊織ちゃんはあの有名な水瀬グループのお嬢様。正真正銘のセレブだ。

「実は二階堂さんも伊織と同じお嬢様なんだ。ですよね二階堂さん?」

 プロデューサーさんが追い打ちをかける。悪気の無い笑顔が今は痛い。
 案の定、伊織ちゃんは怪訝な表情で私を見ている。

「二階堂、二階堂……聞いたことないわね」

「お金持ちとは言ってもまだまだ新参者でして……お、おほほほ」

「ふーん。深くは聞かないでおいてあげる。そろそろ時間だしね」

 まだ疑いは晴れないらしい。もっと上手い言い訳を考えておかないと。
 それよりも時間、ということはライブがもうすぐ始まるみたいだ。

「おっともうそんな時間か。それじゃあ二階堂さんを席に案内してくるから」

「じゃあねー」

「また後でお話ししましょう、千鶴さん!」

「アンタもアイドルになるならしっかり見ておきなさいよね」

 離れていく三人に私は手を振って答える。

「もちろんですわ。わたくしも全力で応援しますわよ!」
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/21(土) 02:32:33.02 ID:y2wSW8Jko

 三人を見送ってから私とプロデューサーは関係者席まで移動した。舞台裏と違い、ここは熱気で満ち溢れている。
 プロデューサーから良かったら、と三人のイメージカラーのサイリウムを受け取った。

「そう言えば、アイドルのライブなんて初めてですわ」

 テレビで流れているのをチラッと見たことがあるだけで、それは遠い世界の出来事だった。
 だけど私は今ここにいる。そして、アイドルになろうとしている。

「不思議なものですわ。プロデューサーさんにスカウトされた、ただそれだけなのに」

 照明が落ちる。歓声が上がるもののそれはすぐに治まる。ステージには誰も立っていないのだから。
 まだか、まだかと期待が高まっているのが全身で感じ取れる。

「本当に、不思議ですわ」

 全く知らなかった世界なのに、今だって何も知らないはずなのに。
 私が求めているものがここにあると、私の心が叫んでいる。

『みんなー!! いっくわよー!!』

 それが始まりの合図。私は全力で声を出した。
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/21(土) 02:35:13.45 ID:y2wSW8Jko

 一生忘れない、そう思えるライブが終わった。半ば放心状態だった私の隣にいつの間にかプロデューサーさんが立っていた。

「楽しんでいただけましたか?」

「ええ、もちろんですわ。皆さんに今すぐにでもお礼が言いたいぐらいです」

「それはなによりです。では二階堂さん、改めて聞かせてください」

 プロデューサーさんは私を真剣な眼差しで見つめる。私は立ちあがってその眼差しを受け止めた。

「アイドルに、なりたいですか?」

 答えは決まっている。私は……わたくしはアイドルになりたい。

「……プロデューサーさん。いえ、プロデューサー」

「はい。なんでしょう」

「わたくしはトップアイドルになると言いました。でも具体的にどうすればトップアイドルになれるのか。
 どんな人がトップアイドルと呼ばれるのかまでは考えが及びませんでしたわ」

 一番になりたい、ただそう思ってトップアイドルと口にした。
 けれどそれが何を意味するのかわたくしは理解できていなかった。今までは。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/21(土) 02:37:11.28 ID:y2wSW8Jko

「少なくとも、あれを超えるステージを実現できなければトップアイドルにはなれない。そうですわよね」

「はい。そして彼女たちでさえ、トップアイドルの座を目指す途中にいる」

「ではわたくしは追い抜かないといけないのですわね」

 途方もない話だ。わたくしはスタート地点に立ったばかり。彼女たちは遥か先にいる。
 一人ではきっと不可能だ。でも、二人だったらできるかもしれない。

「一流のアイドルには、一流のプロデューサーが。そう、貴方が必要ですわ」

「……えっ?」

 呆気にとられるプロデューサー。わたくしは気にせず話を進める。

「わたくしはトップアイドルになります。わたくしが望み続ける限り、わたくしはトップアイドルを目指します。
 だけど、わたくしは何も知りません。ですから、プロデューサー」

 ほんの少し、震えた手を差しだす。
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/21(土) 02:37:49.17 ID:y2wSW8Jko


「貴方は、わたくしを導いてくれますか?」

31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/21(土) 02:49:04.32 ID:y2wSW8Jko

 プロデューサーは差しだされた手を見つめ、再びわたくしの目を見つめ。
 力強く、わたくしの手を握ってくれた。

「もちろんです。俺は、最初からそのつもりでスカウトしたんですから!」

 喜びで気が抜けそうになる。胸からこみあげる何かを必死に堪え、わたくしは笑顔を作る。

「では、よろしくお願いしますわ! プロデューサー!」

「はい。こちらこそよろしくお願いします、二階堂さん」

「あら? わたくしたちは共に歩んでいくのですから。千鶴、で結構ですわよ」

 苗字で呼ばれていては一緒に歩いているという気がしない。

「ええと、では千鶴さんと呼ばせてください」

「……さんも必要ないと言ってますのよ?」

「いやぁそれは流石に……なんだか落ち着かなくて」

 まぁいきなり呼び捨てもあれですわね。こういうのは順序が大事と言いますし。

「……いいでしょう。でも、いつか必ず千鶴と呼ばせますわよ? おーっほっほっほっほ、ゴホッゴホッ!」

「ちょっ、千鶴さん大丈夫ですか?」

「え、ええ。これぐらいなんてことありませんわ。それよりも皆さんに挨拶に行きますわよ」

「あの子たちならもう楽屋に入っていると思いますよ」

「楽屋ですわね。では、案内してくださいまし」

「はい、こっちです。人の行き来が激しくなりますので気をつけて行きましょう」
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/21(土) 02:51:17.85 ID:y2wSW8Jko

 プロデューサーに連れられて会場から出る前に、わたくしは振り返って会場全体を見回した。
 空っぽの座席、誰もいないステージ。そこにわたくしの理想を思い描く。
 わたくしがステージに立ち、大勢のファンがわたくしを迎えてくれる。何を思うだろう。どんな気分だろう

 それはきっとすぐにわかるはずだ。わたくしは、トップアイドルになるのだから。

「必ず叶えますわ。そうですわよね、プロデューサー」

 会場から出る。少し先で待つプロデューサーの元へ、わたくしは歩きだした。
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/21(土) 03:04:24.65 ID:y2wSW8Jko

おしまい、ということで二階堂千鶴の誕生日を記念して投稿してみました。
この作品、実はミリシタがリリースしてすぐに書き始めたのですが投稿する時期を逃してお蔵入りしてました。
ですが千鶴の誕生日ということで完成させて投稿したという次第です。

ミリシタの千鶴コミュ1から765プロに入るまでを妄想してみました。
千鶴の両親、兄の設定ももちろん妄想です。お父さんから破天荒さを、お母さんから気配り上手なところを受け継いでたらいいなぁと。

千鶴の魅力は共に歩いていこうと思えるところだと思っています。千鶴が手を差し伸べてくれるから私は頑張ろうと思えます。
そんな千鶴の魅力が少しでも伝わったら幸いです。

読んでくれた皆さん、本当にありがとうざいました。またどこかでお会いしましょう。
34 : ◆NdBxVzEDf6 [sage]:2017/10/21(土) 03:08:58.36 ID:Fw50dqIC0
http://i.imgur.com/mpCWPUM.png
http://i.imgur.com/BG4kowW.png
http://i.imgur.com/cycEbk9.png
あれを補完してる感じいいねえ
おつです、千鶴さん誕生日おめでとう!

>>1
二階堂千鶴(21)
http://i.imgur.com/v1Mtsnk.png
http://i.imgur.com/EJsnhZn.png
http://i.imgur.com/01SGcDl.jpg

>>24
水瀬伊織(15) Vi/Fa
http://i.imgur.com/cm3SO5F.png
http://i.imgur.com/ryy0RgG.jpg

高槻やよい(14) Da/An
http://i.imgur.com/LWnU2R6.png
http://i.imgur.com/MF7lCey.jpg

星井美希(15) Vi/An
http://i.imgur.com/98RlShW.png
http://i.imgur.com/407375s.jpg
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/21(土) 11:29:41.50 ID:lwaGrr7Vo
乙、こういう話に弱いんだ…家族とのやり取りの辺りとか特に好き
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